説明

嵩高シート

【課題】繊維の毛羽立ちや繊維の抜けが起こりづらい嵩高シートを提供すること。
【解決手段】繊維ウエブ11a,11bを水流交絡させて形成された繊維集合体11を具備する。繊維集合体11は、繊維密度が大きく且つ厚みの小さい第1区域21と、第1区域21よりも繊維密度が小さく且つ第1区域21よりも厚みの大きい第2区域22とを有する。第2区域22は、閉じた形状の第1区域21によって取り囲まれている。第2区域22は複数の凸部31及び凹部32を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として繊維材料からなる嵩高シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、網状シートの片面若しくは両面に、繊維ウエブの繊維絡合で形成された不織布状の繊維集合体が、その構成繊維間の絡合と共に該網状シートに対しても絡合状態で一体化されたシートを提案した(特許文献1参照)。このシートは、その表面が実質的に平坦になっている。ここのシートでは、繊維絡合の程度を下げ繊維自由度を上げて髪の毛などのダストを絡めて捕集しようとすると、繊維絡合の程度が低いことに起因して、繊維の毛羽立ちや繊維の抜けが起こりやすい傾向にある。
【0003】
更に本出願人は、繊維ウエブを水流交絡させて形成された繊維集合体及び網状シートを具備し、該繊維集合体から構成される多数の凹凸部を有するシートであって、前記水流交絡によって前記繊維ウエブの構成繊維間が絡合していると共に該構成繊維と前記網状シートとが絡合して両者が一体化されているシートも提案した(特許文献2参照)。このシートは、上述のシートに比較して、シートの全域に凹凸部を有している点で相違するものである。この凹凸部は、前記繊維集合体に対して施した水流交絡でその構成繊維が再配列し且つ該繊維集合体がその厚さ方向に屈曲様になることで形成されている。また、凹凸部自身が形態保持性を有している。このシートは、上述のシートに比較して、繊維の毛羽立ちや繊維の抜けが起こり難いものである。しかし、このシートを例えばウエットタイプのシートとして用いる場合、拭き取り時の抵抗が大きくなりやすい傾向にある。また、含浸させた液が一度に放出されやすい傾向にある。
【0004】
【特許文献1】特開平7−184815号公報
【特許文献2】特開2001−336052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前述した従来技術のシートよりも更に性能が向上した嵩高シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、繊維ウエブを水流交絡させて形成された繊維集合体を具備し、
該繊維集合体は、繊維密度が大きく且つ厚みの小さい第1区域と、第1区域よりも繊維密度が小さく且つ第1区域よりも厚みの大きい第2区域とを有し、
第2区域が、閉じた形状の第1区域によって取り囲まれており、
第2区域が複数の凸部及び凹部を有する嵩高シートを提供するものである。
【0007】
また本発明は、前記の嵩高シートの製造方法であって、
繊維ウエブの構成繊維同士を絡合させて繊維集合体を形成し、
多数の凹凸部を有する第1パターニング部材上に多数の開孔を有する第2パターニング部材が設置された凹凸賦形部材上に、該繊維集合体を配し、
該繊維集合体へ向けて高圧水流を噴射して、該開孔内において露出している該凹部内に該繊維集合体の一部を突出させて、該開孔内において露出している該凹部に対応する形状の第2区域を形成すると共に、第2パターニング部材上に位置する該繊維集合体から第1区域を形成する嵩高シートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の嵩高シートは、繊維密度が大きく且つ厚みの小さい第1区域と、繊維密度が小さく且つ厚みの大きい第2区域とを有するので、繊維の毛羽立ちや繊維の抜けが起こりづらい。特に本発明の嵩高シートを清掃用シートとして用いると、ダストの捕集性能を始めとする清掃性能が向上する。とりわけ、洗浄液を含浸させた清掃用のウエットシートとして用いる場合、清掃の操作性や洗浄液の徐放性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明の嵩高シートの一実施形態の斜視図が示されている。図2は、図1におけるII−II線断面図である。本実施形態の嵩高シート10は、主として繊維材料から構成されている繊維シートである。嵩高シート10は、繊維ウエブの水流交絡で形成された繊維集合体11と、繊維集合体11の内部に配された網状シート12とから構成されている。繊維集合体11と網状シート12とは、水流交絡によって繊維集合体11の構成繊維が網状シート12と絡合し、両者が一体化している。
【0010】
繊維集合体11はその構成繊維の絡合のみによって形成されていることが好ましい。こうすることで、熱可塑性樹脂からなる繊維を融着することで結合した繊維集合体と異なり、嵩高シート10は肌触りが良くなり、嵩高シート10を例えば清掃用シート、特に床用の清掃用シートとして用いた場合には、髪の毛や細かなダスト等の汚れの捕集性及び保持性に優れるようになる。
【0011】
嵩高シート10は、第1区域21及び第2区域22を有している。第2区域22は、第1区域21によって取り囲まれている。図1に示すように、第1区域21は菱形の格子状の形状をしている。第1区域21の菱形格子は、嵩高シート10の平面方向にわたって連続している。第2区域22は第1区域21の各格子内にそれぞれ位置している。第1区域21は連続した閉じた形状をしているので、第2区域22は、第1区域21によって区画され個々独立している。第2区域22は、第1区域21の菱形格子の格子内の形状に対応した菱形をしている。
【0012】
第1区域21及び第2区域22は、それらの繊維密度及び厚みによって区別される。具体的には、第1区域21は、第2区域22に比較して繊維密度が大きく且つ厚みが小さくなっている。一方、第2区域22は、第1区域21に比較して繊維密度が小さく且つ厚みが大きくなっている。その結果、嵩高シート10においては、その一方の面側において、厚みの大きな第2区域22と、厚みの小さな第1区域21とが形成されている。これら第1区域21及び第2区域22が形成されていることで、嵩高シート10は嵩高な構造になっている。
【0013】
厚みの大きな第2区域22は、複数の凸部31及び凹部32を有している。凸部31は、第2区域22を構成する繊維集合体が、第2区域22の一方の面側から他方の面側に突出して形成されている。そして凸部31間に凹部32が位置している。その結果、第2区域22は全体として凹凸形状となっている。
【0014】
凸部31は、それぞれ略同じ大きさで、やや細長い幅狭な山型形状をしており、規則的に設けられている。凸部31は凹部32によって区切られた個々独立した形状をしているが、シート10の幅方向及び/又は長手方向に関し、一部がつながって連続体となっていても良い。
【0015】
このように嵩高シート10は、厚みが大きく凸状となっている第2区域22と厚みが小さく凹状となっている第1区域21とを有し、更に第2区域22が凸部31及び凹部32を有するという二重の凹凸構造となっている。その結果、嵩高シート10を例えばドライタイプの清掃用シートとして用いた場合、特に床用の清掃用シートとして用いた場合に、フローリングの溝や凹凸面に対する汚れの清掃性に優れ、パン粉等の比較的大きな汚れの捕集性及び保持性に優れたものとなる。また、髪の毛や細かなダスト等の汚れの捕集性および保持性に優れたものとなる。また、嵩高シート10を、液が含浸されたウエットの清掃用シートとして用いた場合、清掃の操作性が向上する。特に拭き取り時の抵抗が小さくなる。また洗浄液の徐放性が向上する。
【0016】
また、繊維密度の小さな第2区域22が、閉じた形状をしており且つ繊維密度の大きな第1区域21によって取り囲まれていることで、第2区域22における繊維自由度を高めつつ、同領域22における繊維の毛羽立ちや繊維の抜けを効果的に防止することができる。
【0017】
第1区域21が、第2区域22よりも繊維密度が高いことは先に述べた通りであるが、第1区域21の繊維密度それ自体は0.020〜0.65g/cm3、特に0.035〜0.50g/cm3であることが、繊維自由度の高い第2区域22における繊維の毛羽立ちや繊維の抜けを効果的に防止する点から好ましい。一方、第2区域22の繊維密度は、第1区域21の繊維密度よりも低いことを条件として、0.005〜0.65g/cm3、特に0.01〜0.40g/cm3であることが、嵩高シート10を清掃用シートとして用いた場合のダスト捕集性の向上の点から好ましい。
【0018】
上述の繊維の毛羽立ち及び繊維の抜け並びに繊維自由度に関連して、繊維集合体11の構成繊維の繊維長は20〜100mm、特に30〜70mmであることが、繊維自由度を高めつつ、繊維の毛羽立ち及び繊維の抜けを防止する観点から好ましい。繊維集合体11が複数の繊維を含む場合には、それらの繊維の平均繊維径が前記の範囲内であることが好ましい。
【0019】
第1区域21及び第2区域22の繊維密度は、次の方法で測定される。嵩高シート10から所定の面積の第1区域21及び第2区域22をそれぞれレーザー厚み計で50mmの長さ測定し、極大点10ケ所の平均を計算し厚みとする。また、重量を測定し、測定された重量を面積で除して坪量を算出する。測定された厚みと、算出された坪量とから繊維密度を算出する。算出された繊維密度の平均値を、本発明における繊維密度と定義する。
【0020】
第2区域22は、第1区域21よりも厚みが大きくなっている。従って嵩高シート10を例えば清掃用シートとして用いた場合、清掃対象面と接触するのは主として第2区域22となり、第1区域21は清掃対象面に接触しづらい状態になっている。その結果、嵩高シート10と清掃対象面との接触面積が低減するので、嵩高シート10を、例えば液が含浸されたウエットタイプの清掃用シートとして用いる場合に、拭き取り時の抵抗が小さくなる。この観点から、第2区域22はその厚みが1.0〜5.0mm、特に1.2〜4.0mmであることが好ましい。一方、第1区域21はその厚みが0.1〜1.5mmであることが好ましい。
【0021】
第2区域22に比較して、第1区域21は清掃対象面に接触しづらい状態になっているが、清掃に全く関与しない領域とはなっていない。なぜなら、第1区域21は、繊維密度が高くなってはいるものの、繊維の絡合のみによって形成されているので、ダストの絡み取り性を有しているからである。これに対して、例えばヒートエンボス加工によって形成された凹部は、繊維どうしが融着した状態になっているので、ダストの絡み取り性を有していない。
【0022】
第1区域21及び第2区域22の厚みは、次の方法で測定される。嵩高シート10から所定の面積の第1区域21及び第2区域22をそれぞれレーザー厚み計で50mmの長さ測定し、極大点10ケ所の平均を計算し、この平均値を、本発明における厚みと定義する。
【0023】
第1区域21と第2区域22の面積比は、嵩高シート10を、例えば液が含浸されたウエットタイプの清掃用シートとして用いる場合に、拭き取り時の抵抗に影響を及ぼす。即ち、第2区域22の面積が第1区域21の面積に比較して過大になると、第2区域22の接触面積が増大しすぎて、拭き取り時の抵抗が大きくなってしまう。一方、第1区域21の面積が第2区域22の面積に比較して過大になると、繊維自由度の高い第2区域22の面積が少なくなりすぎて、ダストの絡み取り性が低下する傾向にある。また、液の含浸性や、含浸された液の徐放性も低下する傾向になる。これらのことを勘案すると、第1区域21の面積率は20〜90%、特に25〜80%であることが好ましく、第2区域22の面積率は10〜80%、特に20〜75%であることが好ましい。
【0024】
第2区域22が凸部31及び凹部32を有していることは先に述べた通りであるが、この凸部31及び凹部32は、繊維集合体11に対して施した水流交絡による構成繊維の再配列・再絡合により形成されている。それによって凸部31及び凹部32はそれ自身でその形態を保持している。従って、凸部31及び凹部32は荷重に対してへたり難いものとなっている。凸部31及び凹部32が形成されることに起因して、嵩高シート10の見掛け厚みは、凸部31及び凹部32が形成される前の繊維集合体11の厚みよりも大きくなる。
【0025】
「繊維の再配列・再絡合により形成されている」とは、水流交絡により一度弱く絡合された繊維集合体が凹凸賦形部材上で再度水流交絡されることにより、繊維が該賦形部材の凹凸部に沿って配列し直し、再び絡合されることをいう。
【0026】
凸部31及び凹部32は、繊維集合体11が厚さ方向に屈曲様になることで形成されている。そして、屈曲様の繊維集合体11に形成された多数の屈曲部が凸部31及び凹部32にそれぞれ相当する。前述の通り凸部31及び凹部32は繊維の再配列によって形成されているが、その場合、高圧水の圧力によって、凸部31の構成繊維が凹部32の方へ流れ込むことに起因する繊維の分配は極めて低い程度に抑えられている。尚、繊維の分配が更に進むと、凸部31のあったところに孔があいてしまう。繊維の分配が起こらないように繊維集合体11を屈曲様とさせるには、例えば水流交絡の際に加えられるエネルギーを調整すればよい。
【0027】
嵩高シート10においては、その第1区域21が多数の小凸部41を有している。小凸部41は略ドーム状をなしており、その内部は中空になっている。小凸部41は第1区域21の全域にわたって規則的に形成されている。小凸部41は、その厚み(高さ)が、第2区域22の厚み(高さ)よりも小さくなっている。第1区域21に小凸部41を形成することで、凸形状が形成されダストの絡み取り性が向上するという利点がある。
【0028】
平面視したとき、小凸部41はその形状が円形であり、その直径は0.5〜5.0mm、特に1.0〜4.0mmであることが好ましい。また、小凸部41は、第1区域21の面積に対して10〜90%、特に15〜70%の面積率で形成されていることが好ましい。
【0029】
次に、嵩高シート10を構成する繊維集合体11及び網状シート12について説明する。繊維集合体11は、繊維ウエブの水流交絡によりその構成繊維同士が絡合して形成された不織布状のものである。繊維集合体11は、好ましくは構成繊維の絡合のみによって形成されているので、構成繊維の融着や接着のみによって形成されているウエブと比べてその構成繊維の自由度が大きい。このため、その構成繊維による髪の毛や細かなダスト等の汚れの捕集性および保持性に優れると共に肌触りが良い。
【0030】
繊維集合体11を構成する繊維としては、例えば、本出願人の先の出願に係る米国特許第5,525,397号明細書の第4欄3〜10行に記載の繊維が使用できる。繊維集合体11は、繊度は5dtex以下の繊維を50重量%以上、特に3.5dtex以下の繊維を70重量%以上含んでいることが、嵩高シート10に孔あきが発生することの防止、十分な嵩高さの発現及び維持の点から好ましい。また清掃用シートとして用いる場合、髪の毛の汚れの捕集性及び保持性に優れることからも好ましい。繊維集合体11の坪量、構成繊維の繊維長は、加工性、コスト等を総合的に勘案して嵩高シートの用途に応じて決定される。例えば嵩高シート10を清掃用シートとして用いる場合、繊維集合体11の坪量は30〜100g/m2 、特に40〜80g/m2 が嵩高シート10に孔あきが発生することの防止、十分な嵩高さの発現、及び嵩高さの維持の点から好ましい。繊維集合体の表面物理的特性を向上させ、またダストの捕集性を向上させ得る界面活性剤や潤滑剤を、繊維集合体に賦与してもよい。
【0031】
嵩高シート10に液を含浸させてウエットタイプの清掃用シートとして用いる場合には、繊維集合体11は親水性繊維、例えばセルロース繊維やポリアクリロニトリル繊維を含むことが好ましい。セルロース繊維としては、レーヨン、リヨセル、テンセル、コットンの繊維などが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。合成繊維を親水化処理して用いても良い。親水化処理の方法としては、親水化剤による表面付着処理や練り込みなどが挙げられる。親水化剤としては、一般的な繊維用界面活性剤などを用いることができる。親水化剤は、初期親水性能だけでなく耐久親水性能があることが好ましい。初期親水性及び耐久親水性の評価法としては、綿玉法(初期親水性:カードウェブ1.0gを丸め、直径7cmの玉状にし、静かに水面に置いてから綿玉が完全に沈むまでの秒数。耐久親水性:浴比1:200の純水(綿玉1gに対して純水を200g用いる)で30分間振とう機で振とう後、乾燥した綿で初期親水性と同様の評価を行い秒数を求める)などが挙げられる。そして、この方法で測定された初期親水性が0.1〜20秒、耐久親水性が0.2〜30秒であることが好ましい。親水性の度合いとしては、JIS L1907 5.1.2に規定されるバイレック法で、シート10の縦方向及び横方向ともに、10分後の吸い上げ高さが2mm以上あることが好ましい。
【0032】
清掃性、操作性、シートの風合いを良好にする観点から、セルロース繊維に加え、その他の合成繊維を繊維集合体11に含ませることができる。その他の合成繊維としては、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリアミド繊維、アセテート系繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル系繊維等が挙げられる。これらの合成繊維は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。使用する繊維の断面形状は特に制限されず、円形断面の他、C形、Y形、中空、β形などの異形断面でもよい。
【0033】
繊維集合体の内部に配されている網状シート12は、全体として矩形の格子状に形成された樹脂製のネットである。網状シート12は、その通気度が0.1〜1000cm3/(cm2・sec)あることが好ましい。この範囲の通気度であれば網状シート12としてネット以外に、不織布、紙、フィルム等を用いることもできる。繊維集合体11はその構成繊維間で絡合しているのみならず、繊維集合体11の構成繊維が網状シート12と絡合及び/又は融着していることが好ましい。これによって嵩高シート10の引っ張り強度が向上している。網状シート12がネットである場合、その線径は好ましくは50〜600μm、更に好ましくは75〜350μmである。また、線間距離は好ましくは2〜30mm、更に好ましくは4〜20mmである。網状シート12の構成材料としては、例えば、米国特許第5,525,397号明細書の第3欄39〜46行に記載の材料が使用できる。なお、網状シート12の構成材料として熱収縮性のものを用いることは妨げられない。尤も網状シート12は、熱収縮性でないか、又は熱収縮性であるとしても140℃で3分間加熱した後の熱収縮率が3%以下の低熱収縮性であることが好ましい。
【0034】
嵩高シート10は、その坪量が40〜200g/m2 、特に50〜100g/m2 であることが、シートに適度な厚手感が賦与されると共に、加工適性の向上が図られる点から好ましい。また、液の含浸性が十分となる点からも好ましい。
【0035】
図3には、図1及び図2に示す実施形態とは異なる形態の嵩高シート10が示されている。図3に示す嵩高シート10は、第1区域21及び第2区域22の形状が、図1及び図2に示す嵩高シートと相違している。詳細には、第2区域22は菱形の格子状の形状をしている。但し、この格子は連続したものではなく、断続的なものである。断続的になっている第2区域22の間は、第1区域21になっている。従って、第1区域21は、第2区域22の菱形格子の格子内の形状に対応した菱形をしている部分21aと、断続的になっている第2区域22の間に位置している部分21bとから構成されている。そして、部分21a及び部分21bからなる第1区域21によって、第2区域22が取り囲まれた状態になっている。第1区域21は、嵩高シート10の平面方向にわたって連続しているので、第2区域22は、第1区域21によって区画され個々独立している。
【0036】
図3に示す嵩高シート10は、第1区域21及び第2区域22の形状が上述の通りとなっていることに起因して、第1区域21の面積率が、第2区域22の面積率よりも大きくなっている。面積率がこのような関係にある本実施形態の嵩高シート10によれば、これを清掃用シートとして用いた場合に、操作性が軽くなるという効果が奏される。なお、本実施形態の嵩高シート10に関し、特に説明しない点については、図1及び図2に示す嵩高シートに関する説明が適宜適用される。
【0037】
次に、図1及び図2に示す嵩高シート10の好ましい製造方法を、図4を参照しながら説明する。本実施形態の嵩高シート10の製造方法においては、網状シート12の各面に上層繊維ウエブ11a及び下層繊維ウエブ11bをそれぞれ重合する重合工程と、水流交絡によって繊維ウエブ11a及び11bの構成繊維間を絡合させて繊維集合体を形成すると共に該構成繊維を網状シート12と絡合させて、これらが一体化された積層体13を形成する交絡工程と、該積層体13に凹凸を付与する凹凸賦与工程とが、この順で進行する。
【0038】
図4に示す製造装置50は、重合部60、交絡部70、凹凸賦与部80及び脱水部90に大別される。重合部60は、繊維ウエブ1la及び1lbをそれぞれ製造するカード機61及び62と、繊維ウエブl1a及びl1bの繰り出しロール63,63と、網状シートの繰り出しロール64とを備えている。交絡部70は、周面が透水性になっているドラム71と、ドラム71の周面に向けて高圧水流を噴射するようになっている複数の第1のウォータージェットノズル72とを備えている。凹凸賦与部80は、周面が透水性になっているドラム81と、ドラム81の周面に向けて高圧水流を噴射するようになっている複数の第2のウォータージェットノズル82とを備えている。脱水部はサクションボックス91を備えている。
【0039】
図5には、凹凸賦与部80の要部が拡大して示されている。ドラム81の周面には、多数の凹凸部を有する第1パターニング部材83が、該周面に沿って設置されている。第1パターニング部材83の上には、多数の開孔を有する第2パターニング部材84が、ドラム81の周面に沿って設置されている。
【0040】
凹凸賦与部80における第1パターニング部材83について、図6(a)〜図6(c)を参照しながら更に説明する。図6(a)は第1パターニング部材83の要部拡大平面図であり、図6(b)は図6(a)におけるb−b線断面図であり、図6(c)は図6(a)におけるc−c線断面図である。第1パターニング部材83は、直線状の線状材83aとスパイラル状の線状材83bとから構成されている。直線状の線状材83aは、その横断面が例えば円形や楕円形であり、その複数本が等間隔で互いに平行に位置するように配列されている。また直線状の線状材83aは同一平面上に位置するように配列されていることが好ましい。そして、隣り合う2本の直線状の線状材83aに1本のスパイラル状の線状材83bが巻き付いている。隣り合うスパイラル状の線状材83bの巻きの方向及び巻きのピッチは何れも同じになっている。スパイラル状の線状材83bは、同一径の円形断面を有する二本の線状材を並列・一体化させた横断面形状を有するものである。勿論、一本又は三本以上の線状材を用いてもよい。そして、スパイラル状の線状材83bは、その横断面においてこの二本の線状材の中心を結ぶ線が、該スパイラル状の線状材83bの何れの位置においても直線状の線状材83aと平行になるように巻かれている。スパイラル状の線状材83bは、その横断面が円形でも楕円形でもよい。両線状材83a,83bは金属や合成樹脂から構成されている。
【0041】
図6(c)に示すように、スパイラルの線状材83bは、その巻きの軸方向からみて、楕円形を描くように巻かれている。この場合、楕円の長軸が、直線状の線状材83aの配列面と平行となるように、スパイラル状の線状材83bは巻かれる。スパイラル状の線状材83bは、円形や三角形を描くように巻かれてもよい。
【0042】
図6(b)に示すように、スパイラル状の線状材83bは、直線状の線状材83aの配列面83cを基準面として、その上面側に多数の最高部83dを有しており、一方その下面側に多数の最低部83eを有し、これによって第1パターニング部材83は多数の凹凸部を有している。第1パターニング部材83における凸部は、図6(b)中、符号83fで示される位置、即ち、前記最高部83d及びその近傍の位置である。一方、第1パターニング部材83における凹部は、図6(b)中、符号83gで示される位置、即ち、隣り合う2つの最高部83d間の位置である。
【0043】
第1パターニング部材83における隣り合う直線状の線状材83a間の間隔ap は、製造される嵩高シート10における凸部31の長さを決定する。また、スパイラル状の線状材83bにおける巻きの1周期長(ピッチ)bp が、製造される嵩高シート10における凸部31のピッチを決定し、スパイラル状の線状材83bの横断面の幅bd が凸部31の幅を決定する。更に、スパイラル状の線状材83bにおける巻きの径(楕円の短径)bh が、製造される嵩高シート10の第2区域22における厚みを決定する。
【0044】
直線状の線状材83aの幅ad は好ましくは0.5〜5 mm、更に好ましくは1〜3mmであり、ピッチap は好ましくは2〜20mm、更に好ましくは3〜15mmである。また、スパイラル状の線状材83bの幅bd は好ましくは0.5〜10mm、更に好ましくは1〜6mmであり、巻きのピッチbp は好ましくは1〜12mm、更に好ましくは2〜7mmである。更にスパイラル状の線状材83bの巻きの径(短径)bh は好ましくは3〜18mm、更に好ましくは5〜15mmである。両線状材83a,83bにおける各値が前記範囲内であることによって、得られる嵩高シート10の第2区域22に十分な凹凸形状を賦与できる。第1パターニング部材83は、ある程度の厚みがあることが好ましく、具体的にはその厚みが3〜25mm、特に5〜15mmであることが、十分に高い嵩高さを賦与し得る点、及び凹凸賦与の際のエネルギー効率の点から好ましい。
【0045】
図7には、凹凸賦与部80における第2パターニング部材84が示されている第2パターニング部材84は、菱形の格子状をした板状体である。格子によって取り囲まれた部分は菱形の開孔84aになっている。つまり第2パターニング部材84は多数の開孔84aを有している。この開孔84aとは別に、格子の部分には、多数の透孔84bが規則的に設けられている。透孔84bは、開孔84aよりも小さなサイズになっている。第2パターニング部材84は、例えばステンレス等の金属やプラスチックから構成されている。耐久性を考慮すると金属製であることが好ましい。なお図8に示す第2パターニング部材84は、図3に示すシート10を製造する場合に用いられるものである。
【0046】
このような構成の製造装置50において、先ず、重合部60におけるカード機61,62の各々から連続的に繊維ウエブ1la及びl1bがその繰り出しロール63、63を介してそれぞれ繰り出される。一方、カード機61,62の間には網状シート12のロール12aが配設され、ロール12aの繰り出しロール64から網状シート12が繰り出される。そして網状シート12の両面に、繊維ウエブ1la及び1lbがそれぞれ重ね合わされて重合体65が形成される。
【0047】
交絡部70において、重合体65は透水性ドラム71の周面に抱かれた状態下に、第1のウォータージェットノズル72から噴出される高圧のジェット水流によって交絡処理される。これによって、重合体65中の繊維ウエブ1la,1lbの構成繊維間が絡合されて繊維集合体が形成される。これと共に該構成織維が網状シート12と絡合して、これらが一体化された積層体13が得られる。この積層体13は、網状シート12を内部に含むスパンレース不織布である。この場合、積層体13における繊維集合体を構成する繊維は低絡合状態であることが好ましい。その絡合状態は交絡係数で表して0.05〜2N・m/g、特に0.2〜1.2N・m/gであることが好ましい。積層体13における繊維集合体を構成する繊維の絡合状態をこの範囲でコントロールすることにより、後述する凹凸賦与部80における凹凸賦与時に穴空きなどを生ずること無く、明瞭な凹凸形状が賦与された嵩高シートを得ることができる。そして、この嵩高シートを例えば清掃用シートとして使用すると、髪の毛などの繊維状ダストを良好に捕集・保持することができる。
【0048】
交絡係数は構成繊維間の絡合状態を表す尺度であり、一体化された積層体13の繊維集合体11における、その繊維配向に対する垂直方向の応力−ひずみ曲線の初期勾配で表され、その値が小さいほど繊維間の絡合が弱いといえる。このとき、繊維配向とは引張強度試験時の最大点荷重値が最大となる方向であり、応力は引張荷重をつかみ幅(引張強度試験時の試験片幅)及び繊維集合体11の坪量で割った値であり、ひずみは伸び量を示す。
【0049】
なお図4においては、重合体65の一方の面のみに高圧のジェット水流が噴射されて交絡処理が行われたが、これに代えて重合体65の各面にジェット水流を噴射して、各面から交絡処理を行ってもよい。
【0050】
積層体13は、凹凸賦与部80において、第1パターニング部材83上に第2パターニング部材84が設置された凹凸賦形部材上に配される。該賦形部材上に配された状態下に、積層体13に向けて、第2のウォータージェットノズル82から高圧のジェット水流が噴射されて該積層体13が部分的に加圧される。この状態を図9に示す。図9に示すように、積層体13のうち、第2パターニング部材84の開孔84a(図7参照)内において露出している第1パターニング部材83の凹部内に、積層体13における繊維集合体の一部が突出する。突出する部分は、第1パターニング部材83の凹部83g(図6参照)上に位置する部分である。その結果、突出した部分は凹部83gに対応する凹部32となる。凸部83f(図6参照)上に位置する部分は突出されず、凸部31とる。このようにして、凸部31及び凹部32を有する凸状の第2区域22が形成される。繊維集合体が突出して第2区域22が形成されることで、第2区域22はその繊維密度が、ジェット水流の噴射前よりも低くなる。
【0051】
一方、積層体13のうち、第2パターニング部材84上に位置する繊維集合体は、高圧のジェット水流の噴射を受けても、その突出が第2パターニング部材84によって規制される。尤も、第2パターニング部材84に形成された透孔84b(図7参照)の部分においては、高圧のジェット水流の噴射によって繊維集合体が突出する。このようにして、小凸部41を多数有する第1区域21が形成される。繊維集合体の突出が規制される第1区域21は、その繊維密度がジェット水流の噴射前と殆ど変化しない。
【0052】
以上の通りの操作によって、凹凸形状が賦与された嵩高シート10が得られる。第2区域22における凸部31の形状等は、第1パターニング部材83の種類や、交絡部70及び凹凸賦与部80おける高圧ジェット水流によって繊維集合体に加わる絡合エネルギーに応じて決定される。この絡合エネルギーはウォータージェットノズルのノズル形状、ノズルピッチ、水圧、ノズル段(本)数及びラインスピード等の条件によってコントロールされる。
【0053】
得られた嵩高シート10は、脱水部90に設置されたサクションボックス91によって脱水され、更に乾燥されて巻き取られる。嵩高シート10は連続したシート状態となっており、これをロール状に巻き取ってもよいし、必要な長さに切断してもよい。このようにして得られた嵩高シート10における凹凸賦与された第2区域22の繊維集合体11の交絡係数は、凹凸賦与前の交絡係数と同程度であること、即ち0.05〜2N・m/g、特に0.2〜1.2N・m/gであることが好ましい。
【0054】
以上の通り、本製造方法によれば、第1パターニング部材83及び第2パターニング部材84として種々のものを組み合わせて用いることによって、所望の凹凸形状が賦与された嵩高シートを容易に得ることができる。
【0055】
このようにして得られた嵩高シート10は、例えばウエットタイプやドライタイプの清掃用シート並びにマスク及びガーゼ等の衛生用品に好適に使用できる。ウエットタイプの清掃用シートとして用いる場合には、水性洗浄剤が含浸される。
【0056】
水性洗浄剤としては、25℃での粘度が20〜30000mPa・sのものを用いることが好ましい。この範囲の粘度の水性洗浄剤を用いることにより、(1)清掃初期に床に放出される水性洗浄剤の量が低減されて、清掃の最初から最後までの水性洗浄剤の放出量が均一になり、(2)広い面積の被清掃面に対する清掃持続性が向上し、(3)清掃初期でも水性洗浄剤の放出量が低いので、清掃シートの被清掃面に対する摩擦抵抗値が低下し、(4)清掃初期でも水性洗浄剤の放出量が低いので、清掃シート表面の繊維自由度が大きく、髪の毛や綿ボコリを繊維によって絡み取って保持するという利点がある。詳細には、水性洗浄剤の粘度が20mPa・s未満であると、清掃初期に床に放出される水性洗浄剤の量を低減させにくいことがある。30000Pa・sを超えると、水性洗浄剤をシートに含浸することが困難になる場合がある。清掃初期の水性洗浄剤放出量の低減及びシートへの水性洗浄剤の含浸工程でのハンドリング性を一層向上させる点から、前記粘度は100〜1000mPa・s、特に300〜800mPa・sであることがより好ましい。粘度はブルックフィールド型粘度計を用いて測定される。使用ローター及び回転数は、水性洗浄剤の粘度に応じて適宜変更する。
【0057】
水性洗浄剤は、水不溶性の固体粒子を実質的に含んでいないことが好ましい。水性洗浄剤に水不溶性の固体粒子が配合された場合、清掃対象面にその固体粒子が残留し、二度拭きを要することがある。ただし、不純物等として微量、例えば0.1重量%程度まで含まれていても差し支えはない。
【0058】
水性洗浄剤は水を媒体とし、界面活性剤、アルカリ剤、増粘剤及び水溶性溶剤を含有することが好ましい。水性洗浄剤に含有される各成分はすべて実質的に水溶性であることが好ましい。水性洗浄剤中に含有される不揮発残留成分については、10重量%以下であることが清掃後の仕上がり性の面で好ましく、特に5重量%以下、とりわけ1重量%以下であることが好ましい。
【0059】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の何れもが用いられ、特に洗浄性と仕上がり性の両立の面から、ポリオキシアルキレン(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エーテル、アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)グリコシド(平均糖縮合度1〜5)、ソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エステル、及びアルキル(炭素数6〜22の直鎖又は分岐鎖)グリセリルエーテル等の非イオン活性剤並びにアルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン等のアルキル炭素数8〜24の両性界面活性剤が好適に用いられる。界面活性剤は、水性洗浄剤中に、0.01〜1.0重量%、特に0.05〜0.5重量%含有されることが、洗浄性及び被清掃面の仕上がり性の面で好ましい。
【0060】
アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、硫酸水素ナトリウム等のアルカリ性の硫酸塩、第1リン酸ナトリウム等のリン酸塩、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩、アンモニア、モノ、ジ又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のβ−アミノアルカノール並びにモルホリン等が挙げられ、特に感触とpHの緩衝性の点でモノ、ジ又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のβ−アミノアルカノール並びにモルホリンが好ましい。アルカリ剤は、水性洗浄剤中に、0.01〜1重量%、特に0.05〜0.5重量%含有されることが、洗浄性及び感触の面で好ましい。
【0061】
増粘剤としては、天然多糖類、セルロース系高分子及びデンプン系高分子等の半合成高分子、ビニル系高分子及びポリエチレンオキシド等のその他合成高分子、粘土鉱物等の水溶性高分子が挙げられる。特にベタツキ感、ヌルツキ感の低いポリアクリル酸系増粘剤若しくはアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体系増粘剤又はこれらの混合物が好ましい。これらアクリル酸系増粘剤は、ナトリウム塩の状態で粘性を発現するのが好ましい。増粘剤は、水性洗浄剤中に、0.01〜2重量%、特に0.02〜1重量%含有されることが、被清掃面の仕上がり性の点で好ましい。
【0062】
水溶性溶剤としては、1価アルコール、多価アルコール及びその誘導体から選ばれる1種以上のものが好適である。特に仕上がり性の点から蒸気圧267Pa(2mmHg)以上のものが好ましい。例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましい。水溶性溶剤は、水性洗浄剤中に、1〜50重量%、特に1〜20重量%含有されることが、臭い及び皮膚刺激性の低減の点から好ましい。
【0063】
水性洗浄剤には、前述の成分に加えて除菌剤を含有させることもできる。これによって、水性洗浄剤に、洗浄効果に加えて除菌効果を付与することができる。除菌剤としては、過酸化水素、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、第4級アンモニウム塩、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸ナトリウム、天然除菌剤等が挙げられ、特に配合安定性と除菌性能の点から、第4級アンモニウム塩、天然除菌剤のポリリジン等が好ましく用いられる。除菌剤は、水性洗浄剤中に、0.005〜2重量%、特に0.01〜1重量%含有されることが、除菌効果と皮膚刺激性低減とのバランスの点から好ましい。
【0064】
更に、水性洗浄剤には必要に応じ、香料、防黴剤、色素(染料、顔料)、キレート剤、ワックス剤等を含有させることもできる。
【0065】
水性洗浄剤の媒体である水は、水性洗浄剤中に、50〜99.9重量%、特に80〜99重量%含有されることが、被清掃面の仕上がり性の点から好ましい。
【0066】
水性洗浄剤は、シート重量〔即ち、未含浸状態(乾燥状態)のシート10の重量基準〕あたり150〜500重量%含浸されていることが好ましい。含浸率が150重量%に満たないと、シミ汚れや土ボコリに対する十分な清掃性能が得られなくなる場合がある。500重量%を超えると床への洗浄剤の放出量が多くなりすぎて床に汚れや土ボコリが残留してしまい、さらに一部の木質系の床に対して悪影響を及ぼす場合がある。清掃性の一層の向上の点から、水性洗浄剤の含浸率は200〜400重量%であることがより好ましい。水性洗浄剤のシート10への含浸率は、水性洗浄剤を積シート10に含浸させてそのままの状態またはマングル処理等で過剰の水性洗浄剤を除去した後、シート10の重量に対して無荷重下で測定される。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。
【0068】
〔実施例1〕
図4に示す製造装置を用いて図1に示す嵩高シートを製造した。用いた原料は以下の表1に示す通りである。また、水性洗浄剤は、水/エタノール/2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール/ドデシルグルコシド(縮合度1.4)/増粘剤(カーボポールETD2020、日光ケミカル社製)=93.73/6/0.1/0.1/0.07(重量比)からなるものであった(粘度:500mPa・s/25℃)。カーボポールETD2020はアクリル酸・メタクリル酸アルキル(炭素数10〜30)共重合体である。水性洗浄剤の不揮発残留成分は0.17%であった。水性洗浄剤の含浸率は350重量%とした。得られたシートについて、髪の毛の捕集率、ワイパーの操作性、ダストの捕集率、表面の毛羽抜け防止性、洗浄剤の1畳目の放出量を、以下の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0069】
〔髪の毛の捕集率〕
クイックルワイパー〔花王(株)製〕に、凹凸形状が外方を向くようにシートを装着した。30cm×60cmのフローリング(松下電工製 ウッディタイルMT613T)上に約10cmの髪の毛を5本散布し、その上にシートを乗せて一定のストローク(60cm)で2往復清掃してシートに捕集された髪の毛の本数を測定した。この操作を連続6回実施して、30本中何本の髪の毛が捕集されたかを測定した。捕集された髪の毛の数を30で除し、これに100を乗じて、その値を髪の毛の捕集率(%)とした。
【0070】
〔ダストの捕集率〕
クイックルワイパー〔花王(株)製〕にシートを装着した。100cm×100cmのフローリング(松下電工製 ウッディタイルMT613T)上にJIS試験用ダスト7種(関東ローム層、細粒)を0.1g散布し(ハケを用いて全面に均一散布)、フローリングを1往復で4列清掃した。この操作を連続6回した後、汚れたシートを乾燥させて重量(シート+洗浄剤不揮発成分+ダスト)を測定し、含浸前に測定したシート重量と理論上残留する洗浄剤不揮発成分重量を差し引いてダストの捕集量を算出した。捕集されたダストの重量を、散布した全ダスト重量(0.6g=0.1g×6回)で除し、これに100を乗じて、その値をダストの捕集率(%)とした。
【0071】
〔ワイパーの操作性〕
クイックルワイパー〔花王(株)製〕に、凹凸形状が外方を向くようにシートを装着して、フローリング板(松下電工製 ウッデイタイルEタイプ KER501)を片手で拭き始める時のワイパーの操作性を以下の基準で評価した。
○:片手で軽く拭け、押してから引く際のターン時にもワイパーの清掃部ヘッドが浮かない。
○〜△:片手で軽く拭けるが、ターン時にもワイパーの清掃部ヘッドが若干浮くことがある。
△:片手で軽く拭けるが、押してから引く際のターン時にワイパーの清掃部ヘッドが浮く。
×:ワイパーを押し始める時に非常に力が必要で、さらにターン時には清掃部ヘッドが逆さにひっくり返ることがある。
【0072】
〔表面の毛羽抜け防止性〕
シートにおける凹凸形状が形成されている面に対し機械的に摩擦試験を行い、脱落した繊維の量より、以下の基準で評価を行った。
○:ほとんど脱落せず問題ない。
△:若干脱落する。
×:かなり脱落する。
【0073】
〔洗浄剤放出量〕
花王(株)製のクイックルワイパーに、凹凸形状が外方を向くようにシートを装着してフローリングを10畳拭き続けた時の1畳あたりに放出される洗浄液量を測定した。1畳拭くごとにシートを清掃部ヘッドから外してその重量を測定することで洗浄液量を測定した。清掃方法は約90cmの距離を1往復拭くのを1ストロークとし、それを1畳の長手方向(180cm)に2列、短手方向(90cm)に4列拭いて1畳の清掃を完結した。
【0074】
〔実施例2〕
水性洗浄剤の含浸率を250%に変えた以外は実施例1と同様にして、図1に示す形態の嵩高シートを得た。得られた嵩高シートについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を表1に示す。
〔実施例3〕
水性洗浄剤の含浸率を250%に変え、且つ第2パターニング部材として図8に示すものを用いた以外は実施例1と同様にして、図3に示す形態の嵩高シートを得た。得られた嵩高シートについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0075】
〔比較例1〕
水性洗浄剤の含浸率を250%に変え、且つ第2パターニング部材を用いない以外は実施例1と同様にしてシートを得た。このシートには第1区域21は形成されていない。得られたシートについて、実施例1と同様の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例のシートは、比較例のシートに比して、髪の毛の捕集率が高く、ワイパーの操作性が良好であり、繊維の毛羽立ちや繊維の抜けが生じにくいことが判る。また、洗浄剤の徐放性が均一化していることも判る。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の嵩高シートの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】本発明の嵩高シートの別の実施形態を示す斜視図(図1相当図)である。
【図4】図1に示す嵩高シートを製造するための好適な装置を示す模式図である。
【図5】図4における凹凸賦与部の要部を拡大して示す模式図である。
【図6】図4の凹凸賦与部における第1パターニング部材を示す図である。
【図7】図4の凹凸賦与部における第2パターニング部材を示す図である。
【図8】図4の凹凸賦与部における別の第2パターニング部材を示す図である。
【図9】図5に示す凹凸賦与部による凹凸賦形の状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0079】
10 嵩高シート
11 繊維集合体
11a,11b 繊維ウエブ
12 網状シート
21 第1区域
22 第2区域
31 凸部
32 凹部
41 小凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維ウエブを水流交絡させて形成された繊維集合体を具備し、
該繊維集合体は、繊維密度が大きく且つ厚みの小さい第1区域と、第1区域よりも繊維密度が小さく且つ第1区域よりも厚みの大きい第2区域とを有し、
第2区域が、閉じた形状の第1区域によって取り囲まれており、
第2区域が複数の凸部及び凹部を有する嵩高シート。
【請求項2】
繊維集合体の内部に網状シートが配されており、該繊維集合体の構成繊維が網状シートに交絡している請求項1記載の嵩高シート。
【請求項3】
第1区域の繊維密度が0.020〜0.65g/cm3で、厚みが0.1〜1.5mmであり、第2区域の繊維密度が0.005〜0.65g/cm3で、厚みが1.0〜5.0mmである請求項1又は2記載の嵩高シート
【請求項4】
坪量が40〜200g/m2で、繊維集合体の構成繊維の繊維長が20〜100mmである請求項1ないし3の何れかに記載の嵩高シート。
【請求項5】
第1区域の面積率が20〜90%で、第2区域の面積率が10〜80%である請求項1ないし4の何れかに記載の嵩高シート。
【請求項6】
第1区域が、多数の小凸部を有する請求項1ないし5の何れかに記載の嵩高シート。
【請求項7】
請求項1記載の嵩高シートの製造方法であって、
繊維ウエブの構成繊維同士を絡合させて繊維集合体を形成し、
多数の凹凸部を有する第1パターニング部材上に多数の開孔を有する第2パターニング部材が設置された凹凸賦形部材上に、該繊維集合体を配し、
該繊維集合体へ向けて高圧水流を噴射して、該開孔内において露出している該凹部内に該繊維集合体の一部を突出させて、該開孔内において露出している該凹部に対応する形状の第2区域を形成すると共に、第2パターニング部材上に位置する該繊維集合体から第1区域を形成する嵩高シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−154359(P2007−154359A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351123(P2005−351123)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】