説明

工作機械の工具取扱い装置

【課題】本発明は、技術的に簡単に構成され、小さな空間で工具交換器の十分に長い移動距離を可能とする、工作機械の工具取扱い装置を提供する。
【解決手段】本発明は、工具の移送のための移送位置(7)を有する工具マガジン(5)を有し、該移送位置と交換位置の間で移動可能な工具交換器(33)を含み、該工具交換器が回転可能な二重把持部(36)と、該工具交換器(33)が取り付けられる基礎(10)上で移動可能な支持構造(20、31)を有している、工作機械の工具取扱い装置に関する。機械上の狭い空間での速い工具交換を実現するために、支持構造は、基礎(10)上で同じ方向にスピンドル駆動装置によって変位される上方スライド(31)と下方スライド(20)を有し、単一の駆動モータ(40)が2つのスピンドル駆動装置を駆動するために設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具の移送位置を有する工具マガジンを有し、該移送位置と工作機械の交換位置の間で移動可能な工具交換器を含み、該工具交換器が回転可能な二重把持部と、該工具交換器が取り付けられる基礎上で変位可能な支持構造を有している、工作機械の工具取扱い装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の工具取扱い装置は、独国特許10 2008059 422号で公知であり、上下動可能で長手軸周りに回転可能な支柱の端部に取り付けられた回転可能な工具二重把持部を有する工具交換器を有している。単一の駆動モータと、カムバレルと中間ギアを有する機械カム歯車は、工具二重把持器の上下動と回転動作を生み出すのに供する。カムバレルは、上部前方に、工具二重把持部の回転駆動のためのタペットを有している。カム曲線は、工具二重把持部の上下動のためのカムバレルの周面に設けられている。工具二重把持部の支柱と、カムバレルと、中間ギアは、モータスピンドルドライブによって基礎上で変位可能にされるハウジング状のスライドに収容されている。カムバレルと、マルタクロス歯車と、中間ギアと、支柱の軸は、連続的に配置され、スライドは、対応する小さな空間を占有するように、狭い幅を有している。しかしながら、この公知の取扱い装置は、技術的に広範囲にわたっており、例えば、マルタクロス歯車と、二重把持部の縦方向と回転の両動作順序のために、装置の最大可能な移動距離が制限されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許10 2008059 422号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、技術的に簡単に構成され、小さな空間で工具交換器の十分に長い移動距離を可能とする、工作機械の工具取扱い装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、支持構造が頂部に配置され、同一方向に変位可能な2つのスライドを有し、直線駆動装置が2つのスライドのそれぞれに取り付けられ、2つの直線駆動装置が共通のモータによって駆動されることにより、工具マガジン上の移送位置とワークスピンドル上の交換位置の間の工具交換の伸縮自在の全体動作が達成されるという事実によって、本発明により達成される。
【0006】
本発明の特別の利点は、マガジンから個々の工具を取り出し、対応して位置決めされた工具交換器に工具を運ぶ、従来技術において概して使われている追加の取扱い装置が、必要とされず、作用の順序が加速され、技術が簡単になることである。2つのスライドの同心方位と好ましくは同期した可動性は、工具交換器の長い移動距離を達成し、マガジンとワークスピンドルの交換位置間の大きな中間距離が追加の移送装置の必要なく橋渡しされる。これは、特に、下方スライドの最大可能な移動距離が必要な移動経路よりも短い場合に適用される。最大可能な移動距離は、上方スライドの追加の距離によって十分に引き延ばされる。
【0007】
本発明の好ましい設計によれば、2つのスライドの移動動作のための2つの直線駆動装置は、2つのベルト駆動装置を介して2つのスピンドル駆動装置間に配置された単一の駆動モータに接続されているスピンドル駆動装置である。
【0008】
有利には、2つのスピンドル駆動装置のねじ付きスピンドルは、互いに平行であり、支持構造の異なる高さに配置されており、これにより、特に狭い構造と技術的に簡単な駆動装置を提供する。ここで、一方のねじ付きスピンドルは、スピンドルナットを介して適切に連結され、他方のねじ付きスピンドルは、スピンドル自身を介して、適切には、連続Vベルトやねじ付きベルトを介して、駆動モータに連結されている。小さな必要空間を伴う2つのベルト駆動装置のための有利な配置は、駆動モータが2つのねじ付きスピンドルの間の中間高さで支持構造に配置されていると、よい。
【0009】
本発明の他の好ましい実施例によれば、下方スピンドル駆動装置によって駆動される下方スライドは、2つの案内レールを介して横に移動可能な基礎に支持されている。この下方スライド上には、2つの案内レールが長手方向に整合されて取り付けられ、その上で、上方スライドは、上部スピンドル駆動装置によって工具交換器と共に変位可能となっている。
【0010】
以下では、本発明の実施例が、図面を参照して詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】スイベルフライスヘッドと、本発明による工具取扱い装置の実施例からなる工作機械の概略全面図である。
【図2】概略斜視図における工具取扱い装置を示す。
【図3】左端位置(a)、中間位置(b)、右端位置(c)における工具取扱い装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、機械フレーム1と複数の座標軸に変位可能な機械加工ユニット2を有する数値制御フライス盤を概略示している。図示した実施例における、この機械加工ユニット2は、取り付けられた駆動モータを有するスイベル加工スピンドル4が支持される比較的重量のあるロータリスイベルヘッド3を有している。図示した位置では、加工スピンドル4は、水平方向に向けられる。フライス盤の側には、工具マガジン5が、この場合には、工具ホルダ6と個々の工具の移送位置7を有する縦方向チェーンマガジンとして形成されて設けられている。
【0013】
基礎10は、基部8上の案内レール9において、図1の紙面に垂直な方向に変位可能である。図2から分かるように、この基礎10は、2つの側壁10a、10bと連続する底板10cを有している。案内レール11a、11bは、2つの側壁10a、10bの上面に固定されている。ベアリングブロック12、13がそれぞれ、底板10cの前後端に固定的に取り付けられ、ねじ付きスピンドル15の各ベアリング装置が2つの案内レール11a、11bに平行に水平に整合して設けられている。スピンドルナット16は、ねじ付きスピンドル15上に担持され、フランジを介して縦の、この場合矩形の支持板17にしっかりと連結されている。長手方向には静止している、ねじ付きスピンドル15の回転動作によって、スピンドルナット16と支持板17は、スピンドルの長手方向に変位する。図1と図2において、スピンドルナット16と支持板17は、図3cに相当する、後端位置にあり、ここで工具は、加工スピンドル4に変えられる。
【0014】
支持板17は、複数の寸法安定性縦横板から組み立てられる安定板構造20に固定的に連結される。この板構造の2つの側壁21、22は、シュー24、25を介して基礎10の2つの案内レール11a、11bに変位可能に支持されている。案内レール28、29を有する2つの相互平行棒は、上部支持板27に連結され、その上に案内シュー30が滑動支持されている。2つの案内レール28、29は、2つの下方案内レール11a、11bと同じ方向に整合されている。上方スライド31は、レールの長手方向において、案内シュー30を介して2つの案内レール28、29上に滑動支持されており、上方スライドは、支持板構造に形成され、工具交換器33を頂部板32上に保持している。
【0015】
この工具交換器33は、伸縮自在の管35が担持される上部に狭いハウジング34を有しており、長手軸の周りにモータによって回動可能とされる。二重把持部36は、この伸縮自在の管35の自由端に設けられている。
【0016】
上記した実施例では、下方板構造20が下方スライドを形成し、上方板構造31が上方スライドを形成している。2つのスライド20と31は、図3aから図3cを参照して詳細に説明されるように、互いに同期移動をしている。2つの無端駆動ベルト41、42を共通駆動軸を介して駆動する電気モータ40は、下方スライド20と上方スライド31のための共通駆動ユニットとして機能する。上部駆動ベルト42は、プーリ43を介して上部ねじ付きスピンドル44を駆動し、その前端は、ブロック45に支持される。このスピンドル駆動装置のねじ付きナット46は、上方スライドを形成する板構造31に取り付けられた大規模支持板47に固定的に連結されている。
【0017】
基礎10と、下方スライド20と、上方スライド31は、工具把持部36のための支持構造を形成する。上部ねじ付きスピンドル44は、歯付きまたは駆動ベルト42と、スピンドルに取り付けられるプーリ43を介してモータ40によって駆動される。スピンドルナット46がこの上部ねじ付きスピンドル44に回転可能に支持されるので、スピンドルナット46は、スピンドルの長手方向のねじ付きスピンドル44の回転の間、上方スライド31と共に変位される。
【0018】
下方スピンドル駆動装置15、16は、無端駆動ベルト41を介して共通のエンジン40によってナット16で駆動される。単一のモータ40によって2つの等しく整合されたねじ付きスピンドル15と44を共通に駆動することにより、もう一つの駆動モータを節約することができ、第2駆動装置の削除による小型構造と、複雑なマシニングセンタの小さな空間で特に重要な取扱い装置の狭い幅を達成することができる。
【0019】
図3aから図3cは、工具マガジンから加工スピンドルまで工具把持部36によって移送する間の本発明の取扱い装置の動きの順における3つの状態を示している。図3aの左端位置においては、工具は、マガジンから取り出され、図3cの右端位置において、この工具は、工具把持部36の半回転後に、機械のロータリスイベルヘッドの加工スピンドル4に挿入される。工具把持部36の全体の動きは、図3aから図3cに示すように、取り付けられるモータ40を備えた下方スライド20の直線動と、動方向に取り付けられた工具交換器33と一緒の上方スライド31の直線動からなる。図3aから図3cの3つの図からわかるように、工具交換器33の全体の動きは、この実施例では、2つのスライド20と31の同期的に進行する個々の動きによって連続する一連の動きで行われる。
【0020】
この工作機械の機械加工ユニット3、4の大きな質量のために、長い距離を横切る工具交換の目的の速い移動が、制限された範囲でのみ可能である。したがって、非常にわずかな質量が動かされねばならないために、工具交換器が所要の移動を行うようにするのが有利である。本発明の取扱い装置においては、工作機械の下方領域では、下方スライドの自由な長手方向の動きのために制限された経路のみが利用できるので、下方スライドと上方スライドの個々の動きからなる動きが必要とされる。これは、例えば、図1で、右端位置にある下方スライド20が機械フレーム1の左側部に当接し、このため、更に右に移動することができないということである。図1では、工具交換器33を備えた上方スライド31は、図3cによる右端位置にある。工具交換のために、工作機械ユニット3が図1の左に比較的短い距離を動くことが必要で、工具は、工具把持部36から加工スピンドル4に係合することができる。上方スライド31が下方スライドと同じ方向に変位されるので、機械の上部領域において追加的な移動距離が生じ、工具把持部または加工スピンドルの交換位置に滑らかに到達するのである。2つのスライド20、31の同一方向における同期した変位は、速い工具交換を可能とする。
【0021】
本発明は、図示し上記した実施例に限定されるものではなく、工具交換器33の選択的な並進運動の技術的および機能的な同等物に及ぶ。例えば、2つのスライドと、その直線駆動装置は、縦方向に向けられ、工具交換器の縦の動きをなしてもよい。更に、2つのスライドの走行動作は、制御された順序、すなわち、時間をずらせて連続的に進んでもよい。この場合、長い走行経路に適合される下方スライドは、マシニングヘッドの交換位置へと上昇する上方スライドの前に、その走行動作を終了しているべきである。そのような場合、工具交換器は、いわば、下方スライドの走行経路の端部で待機状態になり、上方スライドの動きによる交換操作の直前に交換位置に動かされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具のための移送位置(7)を有する工具マガジン(5)と、前記移送位置と交換位置の間で移動可能な工具交換器(33)であって、回転可能な二重把持部を有する、工具交換器と、基礎(10)上で移動可能な支持構造(20、31)であって、前記工具交換器(33)が取り付けられる支持構造とを有する、工作機械の工具取扱い装置において、前記支持構造が、互いの頂部に配置され同一の方向に変位可能な2つのスライド(20、31)を有し、直線駆動装置(15、16;44、45)が前記2つのスライド(20、31)にそれぞれ取り付けられており、前記2つの直線駆動装置が共通の駆動モータ(40)によって駆動されることを特徴とする工具取扱い装置。
【請求項2】
前記2つの直線駆動装置(15、16;44、45)が各々ねじ付きスピンドル(15;44)とスピンドルナット(16;45)からなることを特徴とする、請求項1に記載の工具取り扱い装置。
【請求項3】
前記2つのスピンドル駆動装置が、2つのベルト駆動装置(41、42)を介して駆動モータ(40)に連結されていることを特徴とする、請求項2に記載の工具取り扱い装置。
【請求項4】
前記2つのスピンドル駆動装置(15、44)が互いに平行に向けられ、下方スライド(20)と上方スライド(31)によって形成された支持構造において異なる高さに設けられていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の工具取り扱い装置。
【請求項5】
下方ねじ付きスピンドル(15)のスピンドルナット(16)がベルト駆動装置(41)を介して連結され、上方ねじ付きスピンドル(44)が上方ベルト駆動装置を介して共通駆動モータの出力軸に連結されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の工具取り扱い装置。
【請求項6】
前記支持構造(20、31)における駆動モータ(40)が2つのねじ付きスピンドルの間の中間高さに配置されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の工具取り扱い装置。
【請求項7】
前記駆動モータ(40)が、プレート構造として実現される下方スライド(20)の内部空間に固定的に取り付けられることを特徴とする、請求項6に記載の工具取り扱い装置。
【請求項8】
前記支持構造が、下方スピンドル駆動装置(15、16)によって駆動され、基礎(10)の2つの案内レール(11a、11b)上で変位可能な下方スライド(20)と、2つの別の案内レール(28)上の下方スライド(10)上で変位可能な上方スライド(31)を有し、回転可能な二重把持部(36)を有する工具交換器(33)が上方スライド(31)上に取り付けられ、共通駆動モータ(40)が下方スライド(20)に設けられ、共通モータによって駆動される各スピンドル駆動装置が各スライド(20、31)に設けられていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の工具取り扱い装置。
【請求項9】
狭いハウジング(34)に回転可能に支持された工具交換器(33)の伸縮自在な支持管(35)がスピンドル駆動装置(15、16;44、45)の方向に直交して配置されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の工具取り扱い装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【公開番号】特開2012−218146(P2012−218146A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−85131(P2012−85131)
【出願日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【出願人】(506381599)ディッケル マホ プロンテン ゲーエムベーハー (16)
【Fターム(参考)】