説明

工作機械

【課題】 工具支持体の基準部と工具の先端との間の距離を計測することができて、加工寸法精度向上が可能な工作機械を提供する。
【解決手段】 主軸6等のワーク支持体と、刃物台7等の工具支持体とを備え、両者を相対移動させて切削加工を行う工作機械に適用される。前記相対移動の方向(X軸方向)に沿う刃物台7の基準部7sと工具先端18t間の距離L3を計測する刃先・基準部間計測手段61を設ける。刃先・基準部間計測手段61は、例えば、前記基準部7sと工具先端18tとを同時撮影可能な撮像装置62と、この撮像装置64で同時撮影された画像を処理して前記距離L3を演算する画像処理手段63とでなる。撮像装置62は、前記基準部7sと工具先端18tとを別々に検出する2台としても、あるいは1台で移動させて検出するようにしても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋盤、ドリル、研削盤等の工作機械、特に工具交換における刃先位置の再現性の保証や、熱変位補正等のための計測機能を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤等の工作機械では、切削熱や機械運転に伴う各部位の発熱のために、ベッドや他の各部位の熱膨張,熱変形が生じる。このような熱膨張,熱変形は、加工精度の低下に繋がる。冷却装置を装備してその対策とするものもあるが、熱膨張を十分に抑えるには、冷却装置が大掛かりとなり、また冷却だけでは加工精度を確保することができない。そのため、従来より、熱膨張を計測して工具の切り込み量等の熱変位補正を行なうものが種々提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
また、従来、工具交換における刃先位置の再現性を保証する手法として、試し加工による加工寸法から管理する手法や、タッチセンサ等による刃先検出器を設けて刃先位置を管理する手法が用いられている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−144191号公報
【特許文献2】特許第2706420号公報
【特許文献2】特許第3577887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記工具の切り込み量等の熱変位補正を行なう手法としては、ワークを支持する主軸の中心と、工具支持体における工具取付けの基準部との距離を個別に計測することで、これら主軸中心と工具支持体の基準部間の距離を精度良く求め、高精度な熱変位補正を行えるものを提案した(例えば、特願2009−251736号)。
しかし、この提案例では、主軸中心と工具支持体の基準間の距離は精度良く計測されるが、工具支持体の基準部に対する工具の刃先位置の変化は考慮されていない。そのため、工具交換した場合における刃先位置の再現性が保証されず、加工精度の向上に、今一つ 不十分である。
【0006】
工具交換における刃先位置の再現性を保証する従来手法である試し加工では、その試し加工や、加工後の測定、測定結果に応じた補正値の入力に作業時間を要し、稼働率の低下を招く。従来の刃先検出器では、機体カバー等に設置される旋回アームにタッチセンサを設けるものであるため、機械的にμmオーダでの精度を再現性の点から実現することが難しく、工具種類の取付間違いの検出や、ラフな位置管理しか行えない。
【0007】
この発明の目的は、工具支持体の基準部と工具の先端との間の距離を計測することができて、加工寸法精度の向上が可能な工作機械を提供することである。
この発明の他の目的は、前記工具支持体の基準部と工具の先端との間の距離を、より精度良く計測することである。
この発明のさらに他の目的は、工具支持体の基準部と工具の先端との間の距離を、簡単な構成で計測することができる工作機械を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、より加工寸法精度の向上が可能な工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の工作機械は、ワーク(W)を支持するワーク支持体(6)と、工具(18)を所定の基準部(7s)に取付けて支持する工具支持体(7)とを備え、前記ワーク支持体(6)と工具支持体(7)とを相対移動させてワーク(W)に工具(18)の先端(18t)を接触させてワークに対する切削加工を行う工作機械であって、前記相対移動の方向(X軸方向)に沿う前記工具支持体(7)の前記基準部(7s)と前記工具の先端(18t)間の距離を計測する刃先・基準部間計測手段(61,61A,61B,61C)を設けたことを特徴とする。前記基準部(7s)は、例えば工具支持体(7)における前記相対移動方向を向く面であるか、または点、または部分である。
【0009】
この構成によると、工具支持体(7)の基準部(7s)と工具の先端(18t)間の距離(L3)を計測する刃先・基準部間計測手段(61,61A,61B,61C)を設けたため、工具交換により工具支持体(7)に対する工具(18)の取付位置に変化があっても、工具支持体(7)の基準部(7s)と工具の先端(18t)間の距離(L3)を実際の計測によって認識できる。そのため、工具先端(18t)位置を高精度に管理し、加工寸法精度の向上が可能となる。
【0010】
この発明において、前記刃先・基準部間計測手段(61)は、前記基準部(7s)と工具の先端(18t)とを同時撮影可能な撮像装置(62)と、この撮像装置(62)で同時撮影された前記基準部(7s)と工具の先端(18t)を含む画像を処理して前記基準部と工具の先端(18t)間の距離(L3)を演算する画像処理手段(63)とでなるものであっても良い。
この構成の場合、前記基準部(7s)と工具(18)の先端(18t)とを同時撮影するため、その画像処理によって、前記基準部(7s)と工具(18)の先端(18t)間の距離(L3)を演算し、精度良く求めることができる。
【0011】
この発明において、前記刃先・基準部間計測手段(61A)は、前記基準部(7s)および前記工具(18)の先端(18t)をそれぞれ撮影する2台の撮像装置(621 ,622 )と、これら2台の撮像装置(621 ,622 )で得た2つの画像をそれぞれ処理して、各画像内での基準位置に対する前記基準部(7s)および前記工具(18)の先端(18t)の座標位置を求める画像処理手段(63A)と、この画像処理手段(63A)により求められた前記基準部(7s)および前記工具(18)の先端(18t)の座標位置と、前記2つの画像の前記基準位置の間の実際の距離(LX)のデータとから前記基準部(7s)と前記工具の先端(18t)間の距離(L3)を演算する画像処理結果合成手段(65)とでなるものとしても良い。前記の「実際の距離(LX)」とある部分の「実際の」とは、画像上の距離ではないことを意味する。
基準部(7s)と工具(18)の先端(18t)とを同時撮影する場合は、広範囲の撮像を行うことになるため、基準部(7s)と工具先端(18t)間の距離(L3)を高精度に求めるためには、撮像装置の画素数を多くすることが必要となり、また画像処理の処理データ量が多くなって処理に時間がかかる。しかし、上記のように、2台の撮像装置(621 ,622 )で基準部(7s)と工具先端(18t)を別々に撮像することで、狭い範囲の撮像で済み、撮像装置(621 ,622 )の画素数が少なくても高精度に基準部と工具先端(18t)間の距離(L3)を求めることができる。また、画像処理の処理データ量が少なくて済み、迅速に計測することができる。したがって、高精度な計測が迅速に行える。
【0012】
この発明において、前記刃先・基準部間計測手段(61B)は、前記基準部(7s)および前記工具(18)の先端(18t)を、これら基準部(7s)と工具(18)の先端(18t)の離間方向(X軸方向)に移動してそれぞれ個別に撮影する撮像装置(62B)と、この個別に撮像された前記基準部(7s)の画像と前記工具(18)の先端(18t)の画像をそれぞれ処理して、それぞれの画像内での基準位置に対する前記基準部および前記工具の先端(18t)の座標位置を求める画像処理手段(63B)と、この画像処理手段(63B)により求められた前記基準部(7s)および前記工具(18)の先端(18t)の座標位置と、前記撮像装置の移動距離のデータとから前記基準部と前記工具の先端(18t)間の距離を演算する画像処理結果合成手段(65B)とでなるものであっても良い。
この構成の場合も、基準部(7s)と工具先端(18t)を別々に撮像することで、狭い範囲の撮像で済み、撮像装置(62B)の画素数が少なくても高精度に基準部(7s)と工具先端(18t)間の距離(L3)を求めることができる。また、画像処理の処理データ量が少なくて済み、画像処理手段(63B)の能力が低くても演算処理時間を短くできる。
【0013】
この発明において、前記刃先・基準部間計測手段(61C)は、接触により位置を検出する一つの接触式センサ(67)と、この接触式センサ(67)で計測した前記基準部(7s)および工具(18)の先端(18t)の位置の検出値の差から、前記基準部(7s)と工具(18)の先端(18t)間の距離(L3)を求める距離演算手段(68)とでなるものであっても良い。
接触式センサ(67)を用いる場合、計測のための動作時間を要するが、刃先・基準部間計測手段(61C)が簡素な構成で済む。
【0014】
この発明において、前記ワーク支持体(6)のワーク(W)を支持する基準位置であるワーク支持体側基準位置(O)と、前記工具支持体(7)の前記基準部(7s)との間の距離(L4)を計測する基準間距離計測手段(29)を設けても良い。
前記基準間距離計測手段(29)を設けてワーク支持体側基準位置(O)と工具支持体(7)の前記基準部(7s)との間の距離(L4)が計測されると、前記刃先・基準部間計測手段(61,61A,61B,61C)で計測された工具支持体(7)の基準部(7s)と工具先端(18t)間の距離を差し引くことで、ワーク支持体側基準位置(O)と工具(18)の先端(18t)位置との間の距離が分かる。このワーク支持体側基準位置(O)と工具(18)の先端(18t)位置間の距離(L3)は、ワークの加工後寸法に該当し、ワークの加工される径を実際に計測して加工できることになる。したがって、より高精度に加工寸法精度の向上が図れる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の工作機械は、ワークを支持するワーク支持体と、工具を所定の基準部に取付けて支持する工具支持体とを備え、前記ワーク支持体と工具支持体とを相対移動させてワークに工具の先端を接触させてワークに対する切削加工を行う工作機械であって、前記相対移動の方向に沿う前記工具支持体の前記基準部と前記工具の先端間の距離を計測する刃先・基準部間計測手段を設けたため、工具支持体の基準部と工具の先端との間の距離を計測することができて、加工寸法精度の向上が可能となる。
【0016】
前記刃先・基準部間計測手段が、前記基準部と工具の先端とを同時撮影可能な撮像装置と、この撮像装置で同時撮影された前記基準部と工具の先端を含む画像を処理して前記基準部と工具の先端間の距離を演算する画像処理手段とでなる場合は、工具支持体の基準部と工具の先端との間の距離を、精度良く計測することができる。
【0017】
前記刃先・基準部間計測手段が、前記基準部および前記工具の先端をそれぞれ撮影する2台の撮像装置と、これら2台の撮像装置で得た2つの画像をそれぞれ処理して、各画像内での基準位置に対する前記基準部および前記工具の先端の座標位置を求める画像処理手段と、この画像処理手段により求められた前記基準部および前記工具の先端の座標位置と、前記2つの画像の前記基準位置の間の実際の距離のデータとから前記基準部と前記工具の先端間の距離を演算する画像処理結果合成手段とでなる場合も、工具支持体の基準部と工具の先端との間の距離を、精度良く計測することができる。
【0018】
前記刃先・基準部間計測手段が、前記基準部および前記工具の先端を、これら基準部と工具の先端の離間方向に移動してそれぞれ個別に撮影する撮像装置と、この個別に撮像された前記基準部の画像と前記工具の先端の画像をそれぞれ処理して、それぞれの画像内での基準位置に対する前記基準部および前記工具の先端の座標位置を求める画像処理手段と、この画像処理手段により求められた前記基準部および前記工具の先端の座標位置と、前記撮像装置の移動距離のデータとから前記基準部と前記工具の先端間の距離を演算する画像処理結果合成手段とでなる場合も、工具支持体の基準部と工具の先端との間の距離を、精度良く計測することができる。
【0019】
前記刃先・基準部間計測手段が、接触により位置を検出する一つの接触式センサと、この接触式センサで計測した前記基準部および前記工具の先端の位置の検出値の差から、前記基準部と工具の先端間の距離を求める距離演算手段とでなる場合は、工具支持体の基準部と工具の先端との間の距離を、簡単な構成で計測することができる。
【0020】
前記ワーク支持体のワークを支持する基準位置であるワーク支持体側基準位置と、前記工具支持体の前記基準部との間の距離を計測する基準間距離計測手段を設けた場合は、実際の加工寸法となるワーク支持体側基準位置と工具の先端間の距離を計測により精度良く求めることができて、より加工寸法の精度の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る工作機械おける工作機械本体の平面図と制御装置の概念構成のブロック図とを組み合わせた説明図である。
【図2】同工作機械本体の斜視図である。
【図3】同工作機械の加工動作を示す部分平面図である。
【図4】同工作機械の主軸台部分の正面図である。
【図5】同工作機械の撮像装置の画像の説明図である。
【図6】他の実施形態に係る工作機械おける工作機械本体の平面図と制御装置の概念構成のブロック図とを組み合わせた説明図である。
【図7】同工作機械の撮像装置の画像の説明図である。
【図8】さらに他の実施形態に係る工作機械おける工作機械本体の平面図と制御装置の概念構成のブロック図とを組み合わせた説明図である。
【図9】さらに他の実施形態に係る工作機械おける工作機械本体の平面図と制御装置の概念構成のブロック図とを組み合わせた説明図である。
【図10】図1の説明図を詳細化した説明図である。
【図11】同工作機械の計測動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の第1の実施形態を図1〜図5、および図10と共に説明する。この工作機械は、ワークWを支持するワーク支持体である主軸6と、工具18を所定の基準部7sに取付けて支持する工具支持体である刃物台7とを備え、主軸6と刃物台7とを相対移動させてワークWに工具18の先端18tを接触させてワークWに対する切削加工を行う工作機械である。前記相対移動の方向(X軸方向)に沿う前記刃物台7の前記基準部7sと工具18の先端18t間の距離L3(計測対象寸法)を計測する刃先・基準部間計測手段61を設けている。また、主軸6のワークWを支持する基準位置であるワーク支持体側基準位置(この例では主軸軸心O)と、刃物台7の前記基準部7sとの間の距離L4を計測する基準間距離計測手段29を設けている。以下、具体的に説明する。
【0023】
この工作機械は数値制御式の工作機械であり、機械部分である工作機械本体1と、この工作機械本体1を制御する制御装置2とで構成される。工作機械本体1は、主軸移動型の旋盤であり、ベッド3上に送り台4を介して設置された主軸台5に、主軸6が回転自在に支持され、ベッド3上に刃物台7が、支持台26を介して設置されている。支持台26は、ベッド3に固定して設置されている。刃物台7はタレットからなり、支持台26に回転割出可能に支持されている。
【0024】
図2に示すように、送り台4は、ベッド3に設けられたX軸案内9上を、主軸6の軸心Oに対して直交する水平な主軸半径方向(X軸方向)に移動自在に設置され、ベッド3上に設置されたサーボモータ等のモータ10とその回転出力を直線動作に変換する送りねじ機構11とからなるX軸移動機構12によって左右に進退駆動される。送りねじ機構11は、ねじ軸とナットとからなる。
【0025】
図4のように、主軸台5は、送り台4上に設けられたZ軸案内13上に主軸軸心方向(Z軸方向)に移動自在に設置され、送り台4上に設置されたモータ14とその回転出力を直線動作に変換する送りねじ機構15からなるZ軸移動機構16によって前後に進退駆動される。前記送りねじ機構15は、ねじ軸とナットとからなる。主軸6の回転駆動は、主軸台5に内蔵の主軸モータ(図示せず)よって行われる。主軸6の前端にはチャック17が着脱可能に設けられている。チャック17は、チャック半径方向に移動する複数のチャック爪17aにより、ワークWを把持可能である。
【0026】
図2において、刃物台7は、支持台26に対してX軸方向に沿う水平な回転中心T回りに回転自在であり、タレットフェース等と呼ばれる正面の外周部の円周方向複数箇所に、工具ホルダ18aを介してバイトや回転工具等の工具18が取付けられる。刃物台7の正面の外周部が、工具18を取付ける前記所定の基準部7sとなる。なお、各図では刃物台7に取付けられた工具18を1個のみ図示し、他は図示を省略してある。刃物台7は、その正面形状が、図示のような円形であっても、多角形状であっても良い。
刃物台7は、軸受8(図10参照)を介して支持台26に回転自在に支持された中空軸7cの先端に固定されており、割出用モータ(図示せず)で中空軸7cを回転させることにより、任意の工具18が主軸6に対向する位置に旋回割出しされる。
【0027】
図1において、前記刃先・基準部間計測手段61は、前述のように刃物台7の前記タレットフェースからなる基準部7sと工具18の先端18t間の距離L3(計測対象寸法)を計測する手段であり、前記基準部7sと工具先端18tとを同時撮影可能な撮像装置62と、この撮像装置62で同時撮影された前記基準部7sと工具先端18tを含む画像を処理して前記基準部7sと工具先端18t間の距離L3を演算する画像処理手段63とでなる。
【0028】
刃物台7の基準部7sは、撮像装置62によって直接に撮像しても良いが、この実施形態では、画像処理が容易なように、刃物台7の基準部7sに被検出部材7Sを設け、この被検出部材7Sの裏面を基準部7sとなるタレットフェースと同一平面上に位置させている。撮像装置62は、具体的には被検出部材7Sを撮像することで、被検出部材7Sの裏面位置が基準部7sであるとして画像処理および上記距離L3の演算を行う。以下の説明では、被検出部材7Sを撮像する場合も、単に基準部7sを撮像するとして説明する。
【0029】
撮像装置62は、固体撮像素子を用いたCCDカメラ等からなり、主軸台5の側面に取付部材64を介してZ軸方向の前向きに取付けられている。後述の各実施形態の撮像装置もこれと同様の構成である。撮像装置62の設置位置は、前記基準部7sと工具先端18tとを同時撮影可能な位置であれば良く、ベッド3等に設置しても良い。
【0030】
画像処理手段63は、前記制御装置2の一部として設けられているが、制御装置2とは独立した画像処理装置であっても良い。画像処理手段63は、例えば図5に画像Gの例を概念的に示すように、画像Gにおける工具先端18tと基準部7s(画像に対する符号は実態物の符号である)を、特徴点抽出等の画像処理によって認識し、これら工具先端18tと基準部7s間のX軸方向の実際の距離L3を、画像G上の距離と実際の距離との、既知データを用いた比較によって求める。この既知データは、例えは、設定された倍率であっても良く、また撮像装置62の設置位置や、撮像装置62と画像Gの中心等の原点(換言すれば撮像域の原点)GPとの間のZ軸方向の距離であっても良い。また、撮像装置62と撮像域の原点GPとを結ぶ直線がZ軸方向に傾いている場合はその傾き角度を用いて補正した補正値を用いる。撮像装置62が主軸台5等の可動物に設置されている場合は、その可動物の位置を常に同じ位置として撮像する。各回の撮像を行うときの撮像装置62の位置と基準部7sの位置関係が同じであれば、上記の倍率が定まる。
【0031】
図1において、基準間距離計測手段29は、前述のように、ワーク支持体側基準位置(この例では主軸軸心O)と、刃物台7の基準部7sとの間の距離L4を計測する手段であるが、この例では、主軸軸心Oの位置を計測する主軸側位置計測手段20と、刃物台7の基準部7sの位置を計測する刃物台側位置計測手段30と、両計測手段20,30の計測結果から上記距離L4を演算する演算手段40とでなる。演算手段40は、この計算した距離L4と、画像処理で計算された前記距離L3から、主軸軸心Oと工具先端18tとのX軸方向の距離Lを計算する機能を併せ持つ。主軸側位置計測手段20および刃物台側位置計測手段30の具体例は、後に図10と共に説明する。
【0032】
なお、加工のために認識することが必要な距離は、加工完了後や加工中のワークWの径であって、この径は、主軸軸心Oと工具先端18tとのX軸方向の距離Lである。この距離を直接に計測することが困難であるため、上記距離L3,L4を計測し、距離Lを求めている。
【0033】
図1において、制御装置2はコンピュータ式の数値制御装置からなり、加工プログラム41の各命令を、演算制御部42で解読して実行し、工作機械本体1の各駆動源に制御命令を与える。加工プログラム41のX軸方向の移動命令41aは、移動先を示す指令値の位置へ刃物台7をX軸方向へ相対的に移動させる命令であり、演算制御部42により、X軸のモータ10を駆動する命令として出力される。
【0034】
演算制御部42は、熱変位補正手段43を有していて、加工プログラム41におけるX軸方向の移動命令41aの指令値に対し、モータ10へ出力する指令値を、前記演算手段40によって算出された主軸軸心・刃先間相対距離Lを用いて補正する。熱変位補正手段43は、例えば、演算手段40から主軸軸心・刃先間相対距離Lが入力されると、その値が更新されるまでは常に記憶しておき、その記憶した値を用いて補正を行うものとされる。この場合、主軸側位置計測手段20および刃物側位置計測手段30が位置計測を行い、演算手段40によって算出される主軸軸心・刃先間相対距離Lの値が更新されると、その後に行う熱変位補正手段43の補正量が変わることになる。熱変位補正手段43による補正量については、後で説明する。
【0035】
熱変位補正手段43は、演算手段40または熱変位補正手段43に記憶されている主軸軸心・刃先間相対距離Lに応じて、加工プログラム41のX軸移動命令41aを演算制御部42で実行し、図3のように加工するときに、そのX軸移動命令41aの指令値を補正する。この補正は、例えば、主軸軸心・刃先間相対距離Lと設計寸法との差を、前記指令値に加算する補正とする。なお、熱変位補正手段43は、例えば前記演算手段40の計算結果に対して補正量を定める演算式またはテーブル等の関係設定手段を有していて、この手段を用いて定めた補正量によって前記指令値を補正するようにしても良い。前記関係設定手段で定める関係は、例えば、実際の運転結果等に基づき、演算手段40で求められる距離と指令値との差に対する補正量等の関係を定めたものとしても良い。このように熱変位補正手段43により補正を行うことにより、熱変位に対応して精度良く補正できて、加工精度が向上する。
なお、一日のうち、例えば1時間おき等の設定時間毎、あるいは設定時刻毎に計測を行い、演算手段40の演算結果を更新しておくことで、適切な熱変位補正が行える。
【0036】
上記構成の作用を説明する。主軸軸心Oと刃物台7の基準部7sとの間の距離L4を基準間距離計測手段29によって計測するが、この距離L4を計測しただけで、工具長さを既知として計算したのでは、制御上で必要な主軸軸心Oと工具先端18t間の距離Lを精度良く求めることができない。工具交換によって刃物台7に対する工具18の取付位置に誤差が生じた場合、その誤差が加工誤差となる。
これに対して、この実施形態では、工具支持体である刃物台7の基準部7sと工具18の先端18t間の距離L3を計測する刃先・基準部間計測手段61を設けたため、工具交換により刃物台7に対する工具18の取付位置に変化があっても、刃物台7の基準部7sと工具先端18t間の距離L3を実際の計測によって認識できる。そのため、工具先端18tの位置を高精度に管理し、加工寸法精度の向上が可能となる。
【0037】
刃先・基準部間計測手段61は、この例では、前記基準部7sと工具先端18tとを同時撮影可能な撮像装置62と、この撮像装置62で同時撮影された前記基準部7sと工具先端18tを含む画像を処理してその間の距離L3を演算する画像処理手段63とでなるものとしている。このように、基準部7sと工具先端18tとを同時撮影するため、その画像処理によって、基準部7sと工具先端18t間の距離L3を演算し、精度良く求めることができる。その結果、主軸軸心Oと刃物台7の基準部7s間の距離L4の計測値とを用いて、主軸軸心Oと工具先端18t間の距離Lを精度良く求めることができ、高精度に加工することができる。
【0038】
図6,図7は、この発明の他の実施形態を示す。なお特に説明した事項の他は、図1〜図5,図10と共に前述した第1の実施形態と同様である。この実施形態では、刃先・基準部間計測手段61Aは、前記基準部7sおよび前記工具18の先端18tをそれぞれ撮影する2台の撮像装置621 ,622 と、これら2台の撮像装置621 ,622 で得た2つの画像G1,G2(図7)をそれぞれ処理して、各画像G1,G2内での画像原点等の基準位置G1O,G2Oに対する前記基準部7sおよび前記工具先端18tの座標位置G1Xs,G2Xtを求める画像処理手段63Aと、この画像処理手段63Aにより求められた前記基準部7sおよび前記工具先端18tの座標位置G1Xs,G2Xと、前記2つの画像G1,G2の前記基準位置G1O,G2Oの間の実際の距離LXのデータとから前記基準部7sと前記工具先端18t間の距離L3を演算する画像処理結果合成手段65とでなる。なお、上記の「実際の距離LX」における「実際の」とは、前述のように、画像上の距離ではないことを意味する。
【0039】
撮像装置621 ,622 は、固体撮像素子を用いたCCDカメラ等からなり、主軸台5の側面に取付部材64を介してZ軸方向の前向きに取付けられている。両621 ,622 は、互いに、基準部7sと工具先端18t間の想定の距離だけ離して配置してあり、画像の視野は、それぞれ基準部7sおよび工具先端18tを撮像可能であるが、工具18の全体入らない視野とされている。撮像装置621 ,622 の設置位置は、前記基準部7sと工具先端18tとをそれぞれ撮影可能な位置であれば良く、ベッド3等に設置しても良い。
【0040】
画像処理結果合成手段65は、例えば制御装置2に設けられる。画像処理結果合成手段65において、2つの画像G1,G2の基準位置G1O,G2Oの間の実際の距離LXのデータは、記憶部(図示せず)に設定しておくが、この距離LXは、マスタ工具(図示せず)等を用いた適宜の試験やシミュレーション等の求めたり補正して設定しても良い。
基準間距離測定手段29の演算手段40には、画像処理結果合成手段65で求めた基準部7sと前記工具先端18t間の距離L3が入力される。
【0041】
この構成の場合、2つの撮像装置621 ,622 を用いるため、基準部7sと工具先端18t間の距離L3を、画素数の少ない撮像装置621 ,622 であっても、精度良く計測できる。すなわち、第1の実施形態のように、基準部7sと工具先端18tとを同時撮影する場合は、広範囲の撮像を行うことになるため、高精度に距離L3を求めるためには、撮像装置62の画素数を多くすることが必要となり、また画像処理の処理データ量が多くなって処理に時間がかかる。しかし、上記のように、2台の撮像装置621 ,622 で基準部7sと工具先端18tを別々に撮像することで、各画像G1,G2は狭い範囲の撮像画像で済み、撮像装置621 ,622 の画素数が少なくても高精度に基準部7sと工具先端18t間の距離L3を求めることができる。また、画像処理の処理データ量が少なくて済み、迅速に計測することができる。したがって、高精度な計測が迅速に行える。
【0042】
図8は、この発明のさらに他の実施形態を示す。なお特に説明した事項の他は、図1〜図5,図10と共に前述した第1の実施形態と同様である。この実施形態では、刃先・基準部間計測手段61Bは、前記基準部7sおよび前記工具18の先端18tを、これら基準部7sと工具先端18tの離間方向(X軸方向)に移動してそれぞれ個別に撮影する撮像装置62Bと、この個別に撮像された前記基準部7sの画像と工具先端18tの画像(図示せず)をそれぞれ処理して、それぞれの画像内での基準位置に対する前記基準部7sおよび工具先端18tの座標位置を求める画像処理手段63Bと、この画像処理手段63Bにより求められた基準部7sおよび工具先端18tの座標位置と、撮像装置62Bの移動距離のデータとから前記基準部7sと工具先端18t間の距離L3を演算する画像処理結果合成手段65Bとでなる。
【0043】
撮像装置62Bは、基準部7sと工具先端18tの離間方向(X軸方向)に相対的に移動可能に設置されていれば良いが、この例では、主軸台5の側面に取付部材64を介してZ軸方向の前向きに取付けられている。
【0044】
画像処理結果合成手段65Bは、例えば制御装置2に設けられる。画像処理結果合成手段65Bにおいて用いる撮像装置62Bの移動距離のデータは、例えば主軸位置計測手段20に、撮像装置62Bが基準部7sおよび工具先端18tを撮像するときの位置を計測させ、その計測結果から前記移動距離のデータを得ている。この他に、画像処理結果合成手段65Bにおいて用いる撮像装置62Bの移動距離のデータは、固定の設定値とし、撮像装置62Bが基準部7sおよび工具先端18tを撮像するときの位置を精度良く制御するようにしても良い。
【0045】
この構成の場合も、基準部7sと工具先端18tを別々に撮像することで、狭い範囲の撮像で済み、撮像装置62Bの画素数が少なくても高精度に基準部7sと工具先端18t間の距離L3を求めることができる。また、画像処理の処理データ量が少なくて済み、画像処理手段63Bの能力が低くても演算処理時間を短くできる。
【0046】
図9は、この発明のさらに他の実施形態を示す。なお特に説明した事項の他は、図1〜図5,図10と共に前述した第1の実施形態と同様である。この実施形態では、刃先・基準部間計測手段61Cは、接触により位置を検出する一つの接触式センサ67と、この接触式センサ67で計測した前記基準部7sおよび工具先端18tの位置の検出値の差から、前記基準部7sと工具先端18t間の距離L3を求める距離演算手段68とでなる。
【0047】
接触式センサ67は、例えばタッチプルーブ等の接触子が接触したときにオン信号を出力するセンサを用いている。接触式センサ67は、刃物台7に対してX軸方向に相対移動可能な物に設置されていれば良いが、この例では、主軸台5にセンサ出入り機構69を介して設置されている。センサ出入り機構69は、前記基準部7sと工具先端18tの離間方向(X軸方向)に沿う水平な旋回軸心Q周りに起倒回動自在なように主軸台5に設置された旋回アーム70と、この旋回アーム70を回動させるアーム駆動源71とでなる。接触式センサ67は、旋回アーム70の先端に設置されている。アーム駆動源7は電動式のモータやロータリアクチュエータであっても良く、また直動式の流体圧シリンダであって、リンク(図示せず)等を介して旋回アーム70を旋回させるものであっても良い。接触式センサ67は、この実施形態では、刃物台7の基準部7sに設けられた前記被検出部材7Sの裏面に接触することで、基準部7sを検出するようにしている。
【0048】
距離演算手段68は、接触式センサ67が基準部7sを検出したときの接触式センサ67のX軸方向の位置である主軸台5のX軸方向位置と、接触式センサ67が工具先端18tを検出したときの主軸台5のX軸方向位置とを、主軸側位置計測手段20等のX軸方向位置検出手段から取り込み、基準部7sと工具先端18t間の距離L3を求める。
【0049】
距離演算手段68は、例えば制御装置2に設けられる。基準間距離計測手段29は、距離演算手段68の出力する基準部7sと工具先端18t間の距離L3を計算に用いる。
【0050】
この構成の場合、接触式センサ67を用いるため、計測のための動作時間を要するが、刃先・基準部間計測手段61Cが簡素な構成で済む。
【0051】
なお、上記各実施形態の他に、刃先・基準部間計測手段として、撮像装置の代わりに、レーザスキャニング装置(図示せず)を用いても良い。レーザスキャニング装置を用いる場合、例えば図8の実施形態と同様に、レーザスキャニング装置を主軸台5か、またはX軸方向に移動自在の別の移動体(図示せず)に設置し、主軸台の移動によって基準部7sおよび工具先端18tをレーザスキャニング装置が検出したときのレーザスキャニング装置の位置のデータから、基準部7sと工具先端18t間の距離L3を求めるようにする。レーザスキャニング装置は、この他に、光学的にスキャン可能なものとして、ベッド3等に位置固定に設置し、光学的スキャンによって基準部7sと工具先端18tを検出し、両者の間の距離L3を計測するものとしても良い。
【0052】
次に、図10,図11と共に、前記主軸側位置計測手段20および刃物側位置計測手段30の具体例を説明する。同図は、図1〜図5に共に説明した第1の実施形態の詳細である。
【0053】
主軸側位置計測手段20は、第1基準位置P1に対する前記主軸半径方向(X軸方向)の主軸軸心Oの位置を計測する手段であり、スケール21と読取部22とからなる。スケール21は棒状の部材であり、送り台4における主軸半径方向位置が主軸6の軸心Oの付近の箇所に基部21aが取付けられ、この基部21aから主軸半径方向に沿って延びている。なお、前記「軸心付近」とは、軸心位置を含む意味であり、スケール21の基部21aを軸心位置に取付けた場合に比べて、熱変位で生じる計測結果の違いが無視できる程度に離れた範囲を「軸心付近」と称している。以下で言う「軸心付近」も、前記と同様な意味である。スケール21は、図示の例では送り台4の前面にスペース部材25を介して取付けられているが、他の箇所、例えば送り台4の上面または下面の前端付近に取付けてもよい。スケール21の読取部22を向く面の所定の範囲には、主軸半径方向に沿って目盛り23が付けられている。読取部22は、スケール21の目盛り23を読み取るものであり、ベッド3上の位置となる第1基準位置P1に、取付部材24を介して位置固定に取付けられている。例えば、読取部22は光学式のものであり、検知用光を投光しその反射光を受光することで目盛り23を読み込む。あるいは、読取部22は、磁気式のものであってもよい。
【0054】
スケール21における目盛り23の付けられた範囲は、チャック17aに把持され加工可能な最大径のワークW(図3)の外径に刃物台7の工具18の刃先が接する位置に主軸台5が位置するときに読取部22が対応する位置から、主軸6の軸心Oが前記工具12の刃先と同じ主軸半径方向位置となるときに読取部22が対応する位置である原点位置までの範囲、またはその範囲内の1点もしくは複数の点で最大熱変位量が計測できる長さの範囲とされている。この実施形態のように、主軸台5が主軸半径方向へ移動可能である場合に、前記のようにスケール22の目盛り23を必要不可欠な最小の範囲にだけ付ければ、主軸台5の移動に対応して必要な位置計測を行うができる。目盛り23の範囲を最小にすることで、コスト低下が図れる。さらに、加工時での主軸台5の移動に対応する範囲については目盛り23を細かくし、加工時以外、例えばワーク交換、チャック交換等の際にだけ主軸台5が移動する範囲については目盛り23を粗くすれば、より一層のコスト低下を図れる。目盛り23をスケール22の全長にわたって設けてもよい。
【0055】
刃物側位置計測手段30は、第2基準位置P2に対する刃物台7の前記基準部7sの主軸半径方向(X軸方向)の位置を検出する手段であり、スケール31と読取部32とからなる。スケール31は丸棒状の部材で、基部31aが刃物台7の回転中心に取付けられ、主軸半径方向すなわち回転中心Tに沿って中空軸7cを貫通して延びている。スケール31の基部31aは刃物台7に固定であるが、基部31a以外は中空軸7cに対し回転自在かつ進退自在である。スケール31の中空軸7cから突出した端部に、読取部22に対応させて、主軸半径方向に並ぶ目盛り33が全周に付けられている。読取部32は、スケール31の目盛り33を読み取る円環状のものであり、ベッド3上の位置となる第2基準位置P2に、取付部材34を介して位置固定に取付けられている。読取部32も、光学式のものであっても、磁気式のものであってもよい。
【0056】
主軸側位置計測手段20の読取部22および刃物側位置計測手段30の読取部32は、互いに主軸半径方向位置を完全に一致させるか、または両読取部22,32の主軸半径方向位置の差による主軸半径方向の熱変位を無視または推定できる程度に揃える。すなわち第1基準位置P1と第2基準位置P2との主軸半径方向位置を揃える。
【0057】
主軸側位置計測手段20の読取部22および刃物側位置計測手段30の読取部32の各読取値は、制御装置2の演算手段40に入力される。この実施形態では、演算手段40が制御装置2に設けられているが、制御装置2とは別に設けても良い。
演算手段40は、主軸側位置計測手段20の読取部22の読み取り値と、刃物側位置計測手段30の読取部32の読み取り値とから、前記主軸半径方向(X軸方向)における主軸軸心Oと刃物台7の基準部7sとの間の距離を演算し、この距離と、刃先・基準部間計測手段61(61A,61B,61C)で求められた工具支持体7の基準部7sと工具先端18t間の距離L3とから、主軸軸心Oと工具18の先端間の距離である主軸軸心・刃先間相対距離Lを演算する手段である。
【0058】
図11に、常温時の主軸台5および刃物台7の位置(実線)と、昇温時の主軸台5および刃物台7の位置(二点鎖線)とを示す。常温時(例えば15°C)の主軸軸心・刃先間相対距離L0は、工作機械および工具18の既知の寸法から求まる。演算手段40は、主軸側位置計測手段20の読取部22および刃物側位置計測手段30の読取部32の各読取値から昇温による主軸台5の主軸半径方向の熱変位量ΔL1および刃物台7の主軸半径方向の熱変位量ΔL2を求め、その熱変位量ΔL1,ΔL2を常温時の主軸軸心・刃先間相対距離L0に加算することで、運転中の主軸軸心・刃先間相対距離Lを演算する。
【0059】
さらに詳しく説明する。
主軸側位置計測手段20は、スケール21の目盛り23を読取部22で読み取る。読取部22はベッド3上に位置固定に取付けられているため、読取部23の読取値から、スケール21が取付けられた送り台4の主軸半径方向位置が分かる。この送り台4の位置に、送り台4と主軸台5の位置関係を加えることで、主軸台5の主軸半径方向位置が分かる。すなわち、第1基準位置P1と主軸軸心Oとの間の距離L1が分かる。送り台4は加工時に主軸半径方向に移動するが、その移動量を別の検出手段(図示せず)で検出し、検出された移動量を加算することで、常に主軸台5の主軸半径方向位置を求めることができる。その主軸台5の主軸半径方向位置から、常温時に対する加工時の主軸半径方向の熱変位量ΔL1が求まる。
【0060】
また、刃物側位置計測手段30は、スケール31の目盛り33を読取部32で読み取る。読取部32はベッド3上に位置固定に取付けられているため、読取部32の読取値から、スケール31が取付けられた刃物台7の主軸半径方向位置が分かる。すなわち、第2基準位置P2と刃物台7の工具先端18tの位置との間の距離L2が分かる。その刃物台7の主軸半径方向位置から、常温時に対する加工時の主軸半径方向の熱変位量ΔL2が求まる。なお、ここでは、刃物台7の熱変位量を、刃物台7に取付けられた工具18の刃先位置の熱変位量と見なしているが、工具刃先位置の熱変位量は、刃物台7の熱変位量に対して適宜の補正を加えて求めるようにしても良い。
【0061】
先に述べたように、演算手段40は、これらの求められた熱変位量ΔL1,ΔL2を、常温時の主軸軸心・刃先間相対距離L0に加算することで、運転中等の昇温時の主軸軸心・刃先間相対距離Lを演算する。この主軸軸心・刃先間相対距離Lは、常温時の主軸軸心・刃先間相対距離L0に熱変位による寸法変化が加味されたものであり、現時点の正確な距離を示している。演算手段40の演算結果は、演算手段40または熱変位補正手段43(図1)に記憶される。主軸軸心・刃先間相対距離Lを求めるのに代えて、主軸軸心・刃先間相対距離Lの変化を求めてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…工作機械本体
2…制御装置
3…ベッド
5…主軸台
6…主軸(ワーク支持体)
7…(刃物台)工具支持体
7s…基準部
7S…被検出部材
18…工具
18t…先端
20…主軸側位置計測手段
21…スケール
22…読取部
29…基準間距離計測手段
30…刃物台側位置計測手段
31…スケール
32…読取部
40…演算手段
61,61A,61B,61C…刃先・基準部間計測手段
62,621 ,622 ,62B…撮像装置
63,63A,63B…画像処理手段
65…画像処理結果合成手段
67…接触式センサ
G,G1,G2…画像
GP…原点
G1O,G2O…基準位置
G1Xs,G2Xt…距離
G1Xs,G2X…座標位置
L…主軸軸心・刃先間相対距離
L3…距離(計測対象寸法)
L4…距離
O…主軸軸心(ワーク支持体側基準位置)
W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持するワーク支持体と、工具を所定の基準部に取付けて支持する工具支持体とを備え、前記ワーク支持体と工具支持体とを相対移動させてワークに工具の先端を接触させてワークに対する切削加工を行う工作機械であって、
前記相対移動の方向に沿う前記工具支持体の前記基準部と前記工具の先端間の距離を計測する刃先・基準部間計測手段を設けたことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記刃先・基準部間計測手段は、前記基準部と工具の先端とを同時撮影可能な撮像装置と、この撮像装置で同時撮影された前記基準部と工具の先端を含む画像を処理して前記基準部と工具の先端間の距離を演算する画像処理手段とでなる請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
前記刃先・基準部間計測手段は、前記基準部および前記工具の先端をそれぞれ撮影する2台の撮像装置と、これら2台の撮像装置で得た2つの画像をそれぞれ処理して、各画像内での基準位置に対する前記基準部および前記工具の先端の座標位置を求める画像処理手段と、この画像処理手段により求められた前記基準部および前記工具の先端の座標位置と、前記2つの画像の前記基準位置の間の実際の距離のデータとから前記基準部と前記工具の先端間の距離を演算する画像処理結果合成手段とでなる請求項1記載の工作機械。
【請求項4】
前記刃先・基準部間計測手段は、前記基準部および前記工具の先端を、これら基準部と工具の先端の離間方向に移動してそれぞれ個別に撮影する撮像装置と、この個別に撮像された前記基準部の画像と前記工具の先端の画像をそれぞれ処理して、それぞれの画像内での基準位置に対する前記基準部および前記工具の先端の座標位置を求める画像処理手段と、この画像処理手段により求められた前記基準部および前記工具の先端の座標位置と、前記撮像装置の移動距離のデータとから前記基準部と前記工具の先端間の距離を演算する画像処理結果合成手段とでなる請求項1記載の工作機械。
【請求項5】
前記刃先・基準部間計測手段は、接触により位置を検出する一つの接触式センサと、この接触式センサで計測した前記基準部および前記工具の先端の位置の検出値の差から、前記基準部と工具の先端間の距離を求める距離演算手段とでなる請求項1記載の工作機械。
【請求項6】
前記ワーク支持体のワークを支持する基準位置であるワーク支持体側基準位置と、前記工具支持体の前記基準部との間の距離を計測する基準間距離計測手段を設けた請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−213840(P2012−213840A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81603(P2011−81603)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】