説明

工作機械

【課題】主軸装置等の自重による傾きやコラムの傾きに伴う加工誤差を抑制する。
【解決手段】工作機械は、主軸20を有するラム7及びこれを支持するサドル8を含む主軸ヘッド6と、主軸20の軸方向と直交する方向において前記主軸ヘッド6をその重心位置の両側の位置でそれぞれ上下方向に案内しながら支持する複数のコラム10と、主軸ヘッド6をコラム10に沿って移動させる昇降駆動機構16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平軸回りに工具を回転駆動しながらワークを加工する横中ぐり盤等の工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水平軸回りに工具を回転駆動させながらワークを加工するものとして、特許文献1に記載されるような横中ぐり盤が公知である。この横中ぐり盤は、水平方向に延びる主軸及びこの主軸を駆動するモータ等が搭載された主軸装置(ラム)及びこの主軸装置を前記主軸と平行な方向に移動可能に支持するサドルからなる主軸ヘッドと、この主軸ヘッドを、前記サドルを介して上下方向に移動可能に支持するコラムと、このコラムを水平方向であって前記主軸装置の移動方向と直交する方向に移動可能に支持するベッドとを備えており、前記主軸の先端に切削工具が装着され、かつ、当該切削工具と主軸とが一体に回転駆動された状態で、前記主軸装置、サドル及びコラムの移動が個別に制御されることにより、工作物載置台上に置かれたワークを前記切削工具により加工する。
【0003】
この横中ぐり盤では、一つのコラムの側面に主軸ヘッドが片持ち状態で支持されており、主軸ヘッドがコラム側面に沿って上下方向に移動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭48−27382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、主軸ヘッドがコラム側面に沿って片持ち状態で案内されながら支持される従来の横ぐり装置では、主軸ヘッドの荷重によりコラムが主軸ヘッド側に撓む(傾く)ことが考えられる。また、主軸ヘッド自体がコラムに対して傾くこと、つまり、主軸ヘッドの上部がコラムから離れる方向に自重で傾くことも考えられる。このようなコラムの傾きや主軸ヘッド自体の傾きは非常に僅かなものであるが、主軸に装着された切削工具に位置誤差をもたらすとともに主軸ヘッドの円滑な移動の妨げとなり、結果的に、ワークの加工精度に影響を与える。そのため、従来は、コラム断面の大型化によりコラムの強度を高め、また、主軸ヘッドの軽量化を図ることにより、コラムの傾き等を抑制して加工精度への影響を抑えることが行われていた。
【0006】
しかし、コスト面からコラム断面積を十分に確保することができない場合があり、また、主軸ヘッドの軽量化にも自ずと限界があるため、これらの対策では不十分である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、主軸ヘッドの重みでコラムが傾くことや、主軸ヘッド自体がその自重により傾くことを有効に防止して、より高い精度でワークを加工できる工作機械を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、工具を水平軸回りに回転させながら当該工具によりワークを加工する工作機械であって、主軸装置およびこの主軸装置を支持するサドルを備え、かつ、前記主軸装置が、水平方向に延びて前記工具が先端に装着される主軸およびこの主軸の回転駆動機構を含む主軸ヘッドと、前記主軸の軸方向と直交する方向において前記主軸ヘッドをその重心位置の両側の位置でそれぞれ上下方向に案内しながら支持する複数のコラムと、前記主軸ヘッドを前記コラムに沿って移動させる昇降駆動機構とを備えているものである。
【0009】
このように、主軸ヘッドがその重心位置の両側の位置でそれぞれコラムにより案内されながら移動する工作機械によれば、各コラムは、前記主軸の軸方向と直交する方向に拘束され、同方向への変位が規制される。そのため、主軸ヘッドの荷重に拘わらず各コラムの鉛直状態が良好に保たれる。また、主軸ヘッド自体がその自重によりコラムに対して傾くことも有効に防止される。
【0010】
この工作機械において、前記主軸ヘッドのサドルは、前記主軸ヘッドの重心位置の両側の位置にそれぞれ形成され、かつ、前記主軸の軸方向と平行な方向にそれぞれ並ぶ複数の案内用貫通孔を備え、前記複数のコラムは、前記案内貫通孔にそれぞれ挿通された状態で前記サドルを案内するものであるのが好適である。この構成によれば、主軸ヘッドをより安定的に上下方向に案内することができる。
【0011】
この場合、前記各案内用貫通孔は断面円形であり、前記各コラムは、前記案内用貫通孔の内周面に摺接する外周面を有し、その全周に亘って一定の肉厚を有する円筒状であるのが好適である。この構成によれば、各コラムが熱変形により撓む(傾く)ことを効果的に抑制でき、各コラムの鉛直状態を良好に保って主軸ヘッドを円滑に案内することが可能となる。すなわち、主軸ヘッドがコラム側面に沿って片持ち状態で案内される従来の工作機械では、例えばコラムは断面矩形の中空形状であり、コラム断面の肉厚は、主軸ヘッドの支持強度を確保すべく、当該主軸ヘッドが支持される側(ヘッド支持側面部という)の肉厚がそれ以外の肉厚よりも大きく設定されている。このようなコラム形状では、コラム断面内の熱容量が偏在する。具体的には、ヘッド支持側面部の熱容量に比べてそれ以外の部分の熱容量が小さい。そのため、機械周囲の外気温度が上昇すると、例えば前記ヘッド支持側面部に比べてこれに対向する側の側面部の伸縮量が大きくなってコラム自体が主軸ヘッド側に撓み(傾く)、逆に機械周囲の外気温度が下降するとコラム自体が主軸ヘッドとは反対側に撓むおそれがある。これに対し、本発明の工作機械では、主軸ヘッドがその重心位置の両側の位置でそれぞれコラムにより支持されるため、上記の通り、コラムが主軸ヘッドの荷重により撓むことがなく、従来のように、強度確保のためにコラム断面の肉厚を局部的に厚くする必要がない。従って、案内貫通孔にコラムが挿通された状態で前記サドルを案内する構成を採用した上で、さらに各案内用貫通孔を断面円形とし、前記各コラムを、前記案内用貫通孔の内周面に摺接する外周面を有し、その全周に亘って一定の肉厚を有する円筒状とすることが可能となる。そして、このような構成によれば、コラム断面内の熱容量が均一となるため、コラム断面内に不均等な熱変形が発生してコラムが撓む(傾く)ことを防止することができ、各コラムの鉛直状態を良好に保って主軸ヘッドを円滑に案内することが可能となる。
【0012】
なお、この工作機械において、前記主軸装置は、前記主軸の軸方向への移動が可能で、かつ、その一部が前記サドルから外側に突出することが可能となるように前記サドルに支持されており、前記主軸ヘッドは、前記主軸装置を前記軸方向に移動させるための主軸移動機構を備え、前記昇降駆動機構は、前記主軸ヘッドのうち主軸先端側の位置に昇降駆動力を与える第1昇降駆動機構と主軸後端側の位置に昇降駆動力を与える第2昇降駆動機構とからなり、これら第1昇降駆動機構及び第2昇降駆動機構を制御する制御手段をさらに備え、この制御手段は、前記主軸が水平に保たれるように、前記軸方向における主軸装置の配置に応じて、前記第1昇降駆動機構により前記主軸先端側に与えられる駆動量と第2昇降駆動機構により前記主軸後端側に与えられる駆動量とに差を持たせるものであってもよい。この工作機械によれば、主軸装置を前進させ、サドルから主軸装置を突出させた状態で、主軸先端の工具でワークを加工することを可能としながら、このようにサドルから主軸装置が突出することによる主軸の傾き(すなわち主軸先端が下がること)を是正することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の工作機械によれば、主軸ヘッドの重みでコラムが傾くことや、主軸ヘッド自体がその自重により傾くことを有効に防止して、より高い精度でワークを加工することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる工作機械の全体を示す正面図である。
【図2】工作機械を示す側面図である。
【図3】ラム(主軸装置)及びサドルの構成を示す平面図(一部断面図)である。
【図4】ラム(主軸装置)及びサドルの構成を示す背面図(図3のIV方向矢視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0016】
図1及び図2は、本発明にかかる工作機械を示しており、図1は正面図で、図2は側面図で工作機械をそれぞれ示している。同図に示す工作機械は、いわゆる床上型中ぐり盤であり、切削工具等の工具を水平軸回りに回転させながら、図外の定盤上に設置されるワークを当該工具により加工するものである。
【0017】
この工作機械は、同図に示すように、ベッド2と、ベース4と、主軸ヘッド6と、コラム10と、クロスビーム12と、主軸ヘッド6の昇降駆動機構16とを備える。
【0018】
ベッド2は、当該工作機械が設置される所定の床面上に設置されるものである。このベッド2は、その上面部に、前記床面に沿って互いに平行に真っ直ぐに延びる4本のガイドレール2aを備えている。そして、これらガイドレール2a上に前記ベース4が移動可能に支持されている。
【0019】
ベース4は、後述するコラム10を支持するものである。このベース4は、ベース駆動機構により駆動され、上記ガイドレール2aに沿ってそれらの長手方向、すなわち同図中に示すX軸方向に移動する。ベース駆動機械は、上記ガイドレール2aに加え、図略のモータと、前記ガイドレール2aと平行に配置されてベッド2のナット部分(図略)に螺合挿入されるボールねじ軸(図略)とを備えており、前記モータの駆動により前記ボールねじ軸をその軸回りに回転させることによりベース4を前記ガイドレール2aに沿って移動させる。すなわち、このベース駆動機構は、いわゆるねじ送り機構により構成されている。
【0020】
そして、このベース4上に、前記主軸ヘッド6およびコラム10等が配されている。
【0021】
前記主軸ヘッド6は、ラム7(本発明の主軸装置に相当する)と、これを支持するサドル8と、ラム7の前記進退駆動機構14とを含む。
【0022】
前記ラム7は、バイトを備えた中ぐり棒等の工具(図示省略)を回転駆動するものである。このラム7は、同図中のY軸方向、すなわち前記X軸方向と水平面内で直交する方向に延び、先端に工具の装着部を備える主軸20と、この主軸20をその軸回りに回転可能に支持する図外のクイル及び前記主軸を回転駆動するための図外のモータ及び減速機構等からなる回転駆動機構と、主軸20を含む前記クイル及び回転駆動機構等を一体にY軸方向に移動可能に支持するとともに当該クイル等をY軸方向に進退駆動する図外の進退駆動手段等を備えており、前記モータの駆動により主軸20を回転させることにより、前記装着部に装着された工具を当該主軸20と一体に回転させる。
【0023】
前記サドル8は、前記ラム7をY軸方向に移動可能に支持するものである。
【0024】
図3及び図4に示すように、このサドル8には、Y軸方向に貫通する空間Sが形成されており、前記ラム7は、この空間S内に収容された状態で当該サドル8に対してY軸方向に移動可能に支持されている。詳しくは、X軸方向における前記ラム7の両側面にそれぞれY軸方向に延びるガイドレール22が固定される一方、前記空間Sを形成するサドル8側の内側面のうち前記ラム7の側面に対向する面に、前記ガイドレール22をその長手方向の複数の位置でそれぞれ移動可能に保持する保持部24が設けられている。当実施形態では、この構成により、X軸方向においてラム7がその重心位置の両側の位置でそれぞれサドル8により支持されている。なお、図示の例では、ラム7の各側面には、それぞれ2本のガイドレール22が上下に所定間隔を隔てて固定されており、他方、サドル8には、各ガイドレール22がそれぞれその長手方向の2箇所で保持されるように各ガイドレール22に対して保持部24が設けられている。
【0025】
前記進退駆動機構14は、ラム7をY軸方向に送り駆動するものであり、ラム7を挟んでその両側、具体的にはX軸方向の両側にそれぞれ配置されている。
【0026】
各進退駆動機構14は、前記ガイドレール22に加え、このガイドレール22と平行に延び、ラム7の側面に設けられたナット部分32に螺合挿入されるボールねじ軸26と、これを駆動するモータ28及び減速機構30とを含み、各昇降駆動機構16のモータ28がそれぞれボールねじ軸26をそれらの軸回りに同期させた状態で駆動することにより、ラム7を図3中に実線及び二点鎖線に示すようにY軸方向に移動させる。
【0027】
前記コラム10は、前記主軸ヘッド6を上下方向、すなわち図1及び図2に示すZ軸方向に案内しながら支持するものであり、ベース4上に立設された柱状の部材である。当例では、ベース4上には、X軸方向に所定の間隔で並ぶ2本のコラム10、10(以下、適宜コラム10a、10aという)と、これら前側コラム10a、10aに対してそれぞれY軸方向に当該前側のコラム10a、10aと同じ間隔で並ぶ2本のコラム10、10(以下、適宜コラム10a、10aという)の合計4本のコラム10が立設されており、これら4本のコラム10により前記主軸ヘッド6が支持されている。
【0028】
より具体的には、図2及び図3に示すように、主軸ヘッド6の前記サドル8には、X軸方向における前記空間Sの両側、すなわちラム7の両側であってそれぞれ当該両側の位置においてY軸方向に所定間隔を隔てた位置にZ軸方向に貫通する貫通孔36(本発明の案内用貫通孔に相当する)が形成され、これら貫通孔36に対してその内周面に摺接する状態で各コラム10が挿通されている。この構成により、当例では、主軸ヘッド6がその重心位置よりもX軸方向外側の位置でそれぞれ前側のコラム10a、10a及び後側のコラム10b、10bにより案内されながら支持される。
【0029】
なお、各コラム10及び各貫通孔36は共に断面円形の形状を有している。当例では、コラム10は、その全周及び全長に亘って一定の肉厚を有する円筒形とされ、これによりコラム10の熱容量がその全周及び全長に亘って一定となっている。つまり、コラム10の熱変形がその全周及び全長に亘って均等に生じるようにされており、これにより機械周囲の外気温度の変化に伴う熱変形によりコラム10が撓む(傾く)ことが抑制される。
【0030】
そして、これら4本のコラム10の上端部に、図1及び図2に示すようにクロスビーム12が結合され、これにより、当該工作機械では、ベース4、コラム10及びクロスビーム12からなる高剛性の構造体が構築されている。
【0031】
前記昇降駆動機構16は、サドル8をZ軸方向に移動させる送り機構であり、各コラム10の近傍の位置にそれぞれ設けられている。図1〜図4に示すように、各昇降駆動機構16は、コラム10に沿ってZ軸方向に延び、かつ、サドル8に設けられたナット部分44に螺合挿入されるボールねじ軸40と、これを駆動するモータ42とを含み、各昇降駆動機構16のモータ42がそれぞれボールねじ軸40を同期させた状態で駆動することにより前記サドル8をZ軸方向に移動させる。当例では、図3に示すように、各昇降駆動機構16のボールねじ軸40は、X軸方向に並ぶコラム10a、10a(コラム10b、10b)の各中心位置よりも外側の位置であって、かつ、Y軸方向に並ぶコラム10a、10bの各中心位置よりも外側の位置に配置されている。
【0032】
なお、図2中の符号50は、この工作機械の動作を制御する制御装置であり、この制御装置50は、前記進退駆動機構14のモータ28や昇降駆動機構16のモータ42等の各モータを統括的に制御する。特に、ラム7を前進駆動する際には、制御装置50は、ラム7の位置(Y軸方向の位置)に応じて各昇降駆動機構16の前記モータ42を駆動制御する。具体的には、制御装置50は、主軸20が水平に保たれるように、ラム7の配置に応じて、前側の昇降駆動機構16(本発明の第1昇降駆動機構に相当する)により主軸ヘッド6に与える駆動量と後側の昇降駆動機構16(本発明の第2昇降駆動機構に相当する)により主軸ヘッド6に与えられる駆動量とに差を持たせる。すなわち、図3に示すようにラム7が前進すると、その自重によりラム先端が僅かに下側に傾くため、制御装置50は、主軸ヘッド6の後側(図3では上側)が前側よりも下がるように前後のモータ42を駆動制御する。このように主軸ヘッド6の上下方向の傾きが微調整されることにより主軸20が水平に保たれる。なお、主軸ヘッド6(サドル8)には、上記の通り前記コラム10が挿通されているため、主軸ヘッド6の傾き調整は僅かな範囲である。
【0033】
以上のように構成された工作機械では、ベッド2の側方部に設置される図外の定盤上にワークが固定される。そして、主軸20の先端に装着された工具が当該主軸20と一体に回転駆動された状態で、当該工具がX軸、Y軸及びZ軸の各方向に移動することにより当該工具により前記ワークの加工が行われる。具体的には、ベース4がX軸方向に、ラム7がY軸方向に、主軸ヘッド6がZ軸方向にそれぞれ駆動されることにより前記工具がX軸、Y軸及びZ軸の各方向に移動する。
【0034】
そして、このようなワークの加工に際して、当該工作機械によれば、主軸ヘッド6がその重心位置の両側(X軸方向の両側)の位置でそれぞれコラム10a、10bにより案内されながら支持されるため、各コラム10a、10bは、X軸方向に拘束される。そのため、主軸ヘッド6の荷重に拘わらず各コラム10の鉛直状態が良好に保たれる。また、主軸ヘッド6自体がその自重によりコラム10に対して傾くことも有効に防止される。
【0035】
特に、この工作機械では、主軸ヘッド6のサドル8に形成された貫通孔36にコラム10が挿通され、コラム10の外周面に沿って貫通孔36の内周面が摺接することによりサドル8が案内されるため、主軸ヘッド6はその水平姿勢を良好に保った状態で安定的にZ軸方向に案内される。従って、この工作機械によれば、主軸ヘッド6の重みでコラム10が傾くことや、主軸ヘッド6自体がその自重によりコラム10に対して傾くことによる加工誤差を効果的に排除して、より高い精度でワークを加工できるようになる。
【0036】
しかも、この工作機械では、上記のようにコラム10がその全周及び全長に亘って一定の肉厚を有する円筒形とされ、これによりコラム10の熱容量がその全周及び全長に亘って一定となるように各コラム10が形成されているので、機械周囲の外気温度の変化に伴いコラム10に不均等な熱変形が生じることが抑制される。よって、各コラム10が熱変形により水平方向に撓むことが有効に防止される。すなわち、例えばコラムの段面内の形状や肉厚が左右で異なるような場合には、この肉厚等の違いにより左右の熱容量が異なるため、機械周囲の外気温度の変化に伴いコラム長手方向の伸縮量が左右で不均一となり、この伸縮差によりコラムが左側又は右側に撓み変形することが考えられる。しかし、上記の工作機械によれば、コラム10がその全周及び全長に亘って一定の肉厚を有する円筒形であるため、熱変形により水平方向に撓むことが有効に防止される。従って、機械周囲の外気温度の変化に伴いコラム10の上記のような撓みに起因して主軸ヘッド6の円滑な移動が妨げられ、また、工具の位置がずれてワークの加工精度に影響を与えるといった不都合を未然に防止することができるという利点もある。
【0037】
また、この工作機械では、主軸ヘッド6においてラム7を前進させる際には、当該ラム7の自重による傾きを是正するように主軸ヘッド6(サドル8)の上下方向の傾きが調整されるため、ラム7の前進時にその自重により工具の位置が下がるといった現象を抑制することができる。従って、この点でもワークをより高い精度で加工できるようになる。
【0038】
ところで、以上説明した工作機械(床上型中ぐり盤)は、本発明の好ましい実施形態の例示であってその具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、主軸ヘッド6のサドル8に形成された貫通孔36にコラム10が挿通されることにより各コラム10がサドル8の内側(サドル8の外縁よりも内側の位置)に配置されているが、各コラム10はサドル8の外側(サドル8の外縁よりも外側の位置)に配置されていてもよい。この場合には、サドル8は、各コラム10よりも内側の位置で当該コラム10に沿ってZ軸方向に案内される。
【0040】
また、実施形態では、主軸ヘッド6を案内するコラム10として、主軸ヘッド6の重心位置の両側(X軸方向の両側)の位置にそれぞれY軸方向に並ぶ三本のコラム10が配置されているが、勿論、重心位置の両側にそれぞれ三本以上のコラム10が配置されていてもよい。
【0041】
また、実施形態では、コラム10及びその貫通孔36は断面円形であるが、勿論、これ以外の断面形状であってもよい。但し、コラム10の熱変形によるワークの加工精度への影響を排除する観点からは、実施形態のように断面円形とするのが望ましい。
【0042】
また、上記実施形態では、主軸ヘッド6において、ラム7は、X軸方向における当該ラム7の両外側の位置でサドル8に支持されているが、下側から支持されていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
2 ベッド
4 ベース
6 主軸ヘッド
7 ラム(主軸装置)
8 サドル
10 コラム
12 クロスビーム
14 進退駆動機構
16 昇降駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を水平軸回りに回転させながら当該工具によりワークを加工する工作機械であって、
主軸装置およびこの主軸装置を支持するサドルを備え、かつ、前記主軸装置が、水平方向に延びて前記工具が先端に装着される主軸及びこの主軸の回転駆動機構とを含む主軸ヘッドと、
前記主軸の軸方向と直交する方向において前記主軸ヘッドをその重心位置の両側の位置でそれぞれ上下方向に案内しながら支持する複数のコラムと、
前記主軸ヘッドを前記コラムに沿って移動させる昇降駆動機構と、を備えることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械において、
前記主軸ヘッドのサドルは、前記主軸ヘッドの重心位置の両側の位置にそれぞれ形成され、かつ、前記主軸の軸方向と平行な方向にそれぞれ並ぶ複数の案内用貫通孔を備え、
前記複数のコラムは、前記案内貫通孔にそれぞれ挿通された状態で前記サドルを案内することを特徴とする工作機械。
【請求項3】
請求項2に記載の工作機械において、
前記各案内用貫通孔は断面円形であり、前記各コラムは、前記案内用貫通孔の内周面に摺接する外周面を有し、その全周に亘って一定の肉厚を有する円筒状であることを特徴とする工作機械。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の工作機械において、
前記主軸装置は、前記主軸の軸方向への移動が可能で、かつ、その一部が前記サドルから外側に突出することが可能となるように前記サドルに支持されており、
前記主軸ヘッドは、前記主軸装置を前記軸方向に移動させるための主軸移動機構を備え、
前記昇降駆動機構は、前記主軸ヘッドのうち主軸先端側の位置に昇降駆動力を与える第1昇降駆動機構と主軸後端側の位置に昇降駆動力を与える第2昇降駆動機構とからなり、
これら第1昇降駆動機構及び第2昇降駆動機構を制御する制御手段をさらに備え、
この制御手段は、前記主軸が水平に保たれるように、前記軸方向における主軸装置の配置に応じて、前記第1昇降駆動機構により前記主軸先端側に与えられる駆動量と第2昇降駆動機構により前記主軸後端側に与えられる駆動量とに差を持たせることを特徴とする工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−96313(P2012−96313A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245375(P2010−245375)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000191180)新日本工機株式会社 (51)
【Fターム(参考)】