説明

工業製品の目視検査支援装置

【課題】画像モニタ中の要検査部位の画像を直接に動かすイメージで自在に動かして必要な部位を必要な方向から撮影した画像を表示させるようにすること。
【解決手段】正面用ビデオカメラ2a及び斜め用ビデオカメラ2bからなるカメラユニット2と、検査対象の回路基板1を保持する保持部3と、これを配したベース部4と、これに立ち上げたカメラユニット2を支持する門形フレーム5と、ベース部4に構成した保持部3のY方向移動機構4aと、カメラユニット2の回転機構6a及びZ方向移動機構6bと、門形フレーム5に構成したカメラユニット2のX方向移動機構5aと、画像信号を再生する画像モニタ7と、各部を制御する制御部8と、動作指示用の指示用リモコン装置9と、画像モニタ7中の要検査部位を操作するイメージでX、Y方向への変位操作、Z方向の伸縮操作、X、Y方向の傾き操作又は回転操作が可能な3Dマウス14とで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC、LSI、VLSI等のIC類や抵抗器及びコンデンサ類等の電子部品を取り付けた電子回路基板その他の工業製品を目視検査する際に使用する工業製品の目視検査支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電気・電子装置類又はそれらの構成要素を製造するために、回路基板の所定取付部位に各種電子デバイスや種々の回路要素を自動挿入装置等により挿入し、半田付け処理を行って電子回路基板を形成する回路基板実装技術が広く採用されている。この種の回路基板実装に当たっては、回路基板にICやLSI、或いは抵抗器やコンデンサ等の各種回路要素が正しい位置に正しい向きで配置されているか、確実に半田付け処理が施されているか等を検査しなければならない。
【0003】
現在広く使用されている電気・電子部品類は、装置を小型軽量化し、或いは省電力化の要請から小型化され、より高い集積化が図られている。従って製造にあたっては充分な注意を払ってもなお間違いが起こり易く、より慎重な検査が必要になっている。
【0004】
更に極めて小さな部品類や微細な回路要素類を半田接合する必要性も増している。各種の携帯機器類に使用される電子回路、或いは電子部品類にあっては、電子部品及び回路要素類を自動半田処理装置によって接合する工程も不可欠となってきているが、半田接合の良否も同様に製品品質を左右する。
【0005】
そのため、複雑化並びに小型化され高密度に実装された電気・電子回路基板の製造工程の最終段階では厳重な検査を行う必要性が一層高くなっている。従来、このような検査は製造工程中の検査ラインに於いて裸眼による目視検査や顕微鏡等の光学拡大装置を援用しての目視検査が行われていた。しかし小型化し、かつ複雑になった部品類を高密度に実装した電気・電子回路基板を裸眼又は顕微鏡のような光学拡大装置を使用して目視検査するのは容易ではなく、その検査の負担が大きくなり、かつ検査ミスも生じ易くなり、これに対応して、これらの電子回路基板の目視検査には目視検査支援装置(特許文献1)が使用されるようになり、これによって、検査ミス等は低減し、検査要員の負担も軽減されるに至っている。
【0006】
しかし以上のように検査ミスが低減し、検査要員の負担の軽減が進んだと云っても、まだそれらは十分であるとまでは云えず、更に検査対象の小型化も一層進行し、実装密度も一層高くなり、このままでは検査ミスがまた拡大する可能性もある。前記のように、既に単に検査要員の努力に期待することで解決できる段階は越えており、検査ミスの増大を回避するためには、検査対象に対する検査要員の目視検査を一層適切に支援する支援手段を確保することが必要である。
【0007】
なお、以上は、特に電子機器の回路基板を例にとって説明したが、他の分野でも検査に於ける問題は同様のものになってきている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−255274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような従来技術の不都合を解消し、一層小型化が進行し、更に実装密度の高くなった電気・電子回路基板又はその他の工業製品の目視検査を検査対象を正面用及び斜め用のビデオカメラで撮影し、これを画像モニタに再生し、その検査対象の画像を検査要員が目視することにより不良の有無を検査するに際して、該画像モニタ中の検査対象の要検査部位の画像を検査の必要に応じて直接に操作するイメージで自在に動かして該画像モニタ中に必要な部位を必要な方向から撮影した画像を表示させ、これによって正確な目視検査を可能とし、結果として、見落としのない確実な検査を疲れを生じさせずに行えるように支援する工業製品の目視検査支援装置を提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1は、検査対象を保持する保持手段と、該検査対象の要検査部位を正面方向から撮影する正面用ビデオカメラ及び要検査部位を斜め方向から撮影する斜め用ビデオカメラとを組み合わせたカメラユニットであって、該正面用カメラの光軸を中心に回転させる回転手段を備えたカメラユニットと、前記検査対象を、該カメラユニットに対して相対的にX、Y、Zの三次元方向の全部又は一部の方向に移動させ得るように、該検査対象及び該カメラユニットの双方又は一方に備えた移動手段と、前記カメラユニットの正面用ビデオカメラ及び斜め用ビデオカメラの撮影した画像信号を再生し得る画像モニタと、前記保持手段及び前記カメラユニットをそれぞれ移動させる移動手段、前記カメラユニットを回転させる回転手段、前記カメラユニット及び前記画像モニタのそれぞれを、検査対象の要検査部位を順次予め設定した順序と撮影態様で撮影して前記画像モニタで再生すべく制御する制御装置と、該制御装置に撮影の進行の指示及び手動制御の切換の指示を与える指示装置と、手動で該制御装置に操作信号を送る手動操作装置と、で構成した工業製品の目視検査支援装置に於いて、
前記手動操作装置として、それ自体がX、Y、Z方向への変位操作、X、Y方向への傾き操作及び回転操作を可能であるものを採用し、かつ前記制御装置に、該手動操作装置からそのX、Y、Z方向への変位操作、X、Y方向への傾き操作又は回転操作に基づく各操作信号を受けた場合に、前記画像モニタ中に表示される前記検査対象の要検査部位の画像に該手動操作装置の操作に対応するX、Y、Z方向への変位動作、X、Y方向への傾き動作又は回転動作を生じさせるように、前記移動手段の移動動作、前記カメラユニットの回転手段の回転動作及び前記カメラユニットの正面用ビデオカメラ又は斜め用ビデオカメラの選択を制御する制御機能を付与した工業製品の目視検査支援装置である。
【0011】
本発明の2は、本発明の1の工業製品の目視検査支援装置に於いて、前記手動操作装置として、それ自体がZ方向への変位操作を可能とするものに代えてZ方向への伸縮操作が可能なそれを採用したものである。
【0012】
本発明の3は、本発明の1又は2の工業製品の目視検査支援装置に於いて、前記カメラユニットの正面用ビデオカメラ及び斜め用ビデオカメラとして、その一方又は双方にズーム機能を有するそれを採用し、
前記制御装置に、前記手動操作装置のZ方向への操作による操作信号を受けると、前記カメラユニットの対応する正面用ビデオカメラ又は斜め用ビデオカメラにズーム動作させるように制御する制御機能を付与したものである。
【0013】
本発明の4は、本発明の1、2又は3の工業製品の目視検査支援装置に於いて、前記手動操作装置のX、Y、Z方向への操作による操作量及び回転操作による操作量と、これに基づく前記画像モニタ中に表示される前記検査対象の要検査部位の画像の変位量及び回転量の各々の対応関係を調節可能に構成したものである。
【0014】
本発明の5は、本発明の1、2、3又は4の工業製品の目視検査支援装置に於いて、前記制御装置に、前記手動操作装置のX、Y、Z方向への操作、X、Y方向への傾き操作又は回転操作による各操作信号を受けた場合に、前記カメラユニットに該手動操作装置の操作に対応するX、Y、Z方向への変位動作、斜め用ビデオカメラの選択と該斜め用ビデオカメラの対応方向への向きの変更動作又は回転動作をさせるように、前記移動手段及びカメラユニットの回転手段の一方又は双方を制御する制御機能を付与し、これに切り換えて動作させた場合は、前記画像モニタ中に該カメラユニットの動作の結果である前記検査対象の要検査部位の画像を表示するようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1の工業製品の目視検査支援装置によれば、プログラムにしたがって順次撮影される検査対象の要検査部位について、検査要員が自ら主導して詳細に目視検査を行いたい場合には、手動操作に切り換え、画像モニタに表示されている検査対象の要検査部位をX、Y、Z方向に変位させるべく操作すること、X、Y方向に傾斜させるべく操作すること及び回転させるべく回転操作することの各々が可能であり、しかもそのような操作を、該画像モニタに表示されている検査対象の要検査部位を直接に操作するイメージで前記手動操作装置それ自体をX、Y、Z方向に変位操作し、X、Y方向に傾き傾斜操作し、或いは回転操作することによって行うことが可能である。
【0016】
このように、画像モニタ中に表示されている要検査部位の変位動作や傾き動作、或いは回転動作を、それを直接に操作するのと同様の手動操作装置に対する操作で実現できるため、画像モニタ中に表示されている要検査部位に対する操作が検査要員の実感に沿ったものとなり、その操作がより適切に行え、該要検査部位の目視したい部位をその意思に沿ってよりスムーズに画像モニタ中に表示することが可能になり、目視検査をより能率的に行い得ることになる。
【0017】
本発明の2の工業製品の目視検査支援装置によれば、前記手動操作装置として、そのZ方向の変位操作に代えて、Z方向の伸縮操作が可能なものを採用することとしたため、それ自体の構成が簡単になり、操作も簡単になったものである。
【0018】
本発明の3の工業製品の目視検査支援装置によれば、前記手動操作装置をZ方向に変位又は伸縮させる操作をすることにより、画像モニタ中に表示される検査対象の要検査部位を上昇又は下降させることに代えて拡大・縮小させることとしたものである。このようにすることも、操作者である検査要員の実感に沿った操作となり、より自在に要検査部位の表示状態を適切に操作することが可能となり、目視検査を確実かつスムーズに行えることになる。
【0019】
本発明の4の工業製品の目視検査支援装置によれば、前記手動操作装置に対する操作量と画像モニタ中に表示される要検査部位の変位量又は回転量との対応関係を、操作者である検査要員個人の実感に合致するように調節可能であり、そのため、検査要員は、該手動操作装置をその実感に従って操作することにより、目視検査のために画像モニタ中に表示される要検査部位をより適切にその意図に従って適切に変位させ又は回転させることが可能となり、目視検査をよりスムーズにかつ正確に行うことができることになる。
【0020】
なお、前記手動操作装置をX、Y方向に傾き操作した場合は、傾き操作量に拘わらず、画像モニタ中に表示される要検査部位の傾き角度は一定にならざるを得ない。これは、一つは、前記カメラユニットに配された斜め用ビデオカメラの取付角度が固定されているからであり、もう一つは、検査対象を保持する保持手段が保持角度の変更を可能とする構成ではないからである。従ってこれらを角度変更可能に構成すれば、前記操作部のX、Y方向への傾き操作量に応じて、画像モニタ中に表示される要検査部位の傾きを操作することも可能となる。
【0021】
本発明の5の工業製品の目視検査支援装置によれば、操作者である検査要員が、画像モニタ中に表示される検査対象の要検査部位を変位させ、傾かせ又は回転させる操作よりも、該要検査部位を撮影するカメラ側を操作し、その結果が画像モニタに反映されて表示される方が自らの実感に合致すると考える場合は、そのように切り換えて使用することが可能である。そのため、検査要員は、手動操作装置をその実感に従って操作することにより、目視検査のための画像モニタ中の要検査部位をより適切にその意図に従って適切に変位させ、傾かせ又は回転させることが可能となり、よりスムーズかつ正確に目視検査を行うことができることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、検査対象を保持する保持手段と、該検査対象の要検査部位を撮影する正面用ビデオカメラ及び斜め用ビデオカメラを備え、該正面用ビデオカメラの光軸を中心に回転させる回転手段を備えたカメラユニットと、該検査対象及び該カメラユニットの双方又は一方に備えた移動手段と、前記カメラユニットの正面用ビデオカメラ及び斜め用ビデオカメラの撮影した画像信号を再生する画像モニタと、前記移動手段、前記回転手段、前記カメラユニット及び前記画像モニタのそれぞれを、検査対象の要検査部位を順次予め設定した順序と撮影態様で撮影して前記画像モニタで再生すべく制御する制御装置と、指示装置と、手動操作装置とで構成した工業製品の目視検査支援装置に於いて、
前記手動操作装置として、それ自体がX、Y、Z方向への変位操作、X、Y方向への傾き操作及び回転操作が可能であるものを採用し、かつ前記制御装置に、該手動操作装置からそのX、Y、Z方向への変位操作、X、Y方向への傾き操作又は回転操作に基づく各操作信号を受けた場合に、前記画像モニタ中に表示される前記検査対象の要検査部位の画像に該手動操作装置の操作に対応するX、Y、Z方向への変位動作、X、Y方向への傾き動作又は回転動作を生じさせるように、前記移動手段の移動動作、前記カメラユニットの回転手段の回転動作及び前記カメラユニットの正面用ビデオカメラ又は斜め用ビデオカメラの選択を制御する制御機能を付与した工業製品の目視検査支援装置である。
【0023】
前記保持手段は、検査対象の種類によって適切な構成が選択されるべきであり、特定の構成のそれに限定する理由はない。
【0024】
前記カメラユニットの正面用ビデオカメラは、文字通り、検査対象の要検査部位を正面から撮影する撮影手段であり、斜め用ビデオカメラは、要検査部位を斜め方向から撮影する撮影手段である。前記のように、このカメラユニットは、正面用ビデオカメラの光軸を中心として回転するための回転手段を備えたものであり、斜め用ビデオカメラは、前記正面用ビデオカメラの側方にこれと一体に構成するものとすれば、該回転手段で該カメラユニットを回転させると、該斜め用ビデオカメラは該正面用ビデオカメラの周りを周回動作することになる。こうして要検査部位を360度のいずれの方向から斜めに撮影することも可能になり、好都合である。なお、この斜め用ビデオカメラの斜め方向の角度は45度前後が適当であるが、角度を固定せず必要に応じて変更可能に構成しても良い。
【0025】
また前記カメラユニットの正面用ビデオカメラ及び斜め用ビデオカメラは、その一方又は双方にズーム機能を有するそれを採用することもできる。
【0026】
前記回転手段としては、例えば、電動モータを駆動源とする一般的な機構を採用することができる。
【0027】
前記移動手段は、検査対象を、前記カメラユニットに対して相対的にX、Y、Zの三次元方向の全部又は一部の方向に移動させ得るように、該検査対象及び該撮影手段の一方又は双方に備えるべきものである。
【0028】
前記移動手段は、前記検査対象を、前記カメラユニットに対して、相対的にX、Y、Zの三次元方向、即ち、横方向、縦方向及び高さ方向の全部又は一部の方向に移動させ得るように、前記保持手段及び該カメラユニットの一方又は双方に備えさせるものである。例えば、検査対象を保持した保持手段にはY方向にのみ移動可能な移動手段を構成し、他方、カメラユニットには、X方向及びZ方向に移動可能な移動手段を構成するようなことができる。或いは前記保持手段にのみ移動手段を構成することも、カメラユニットにのみ移動手段を構成することも可能である。これらのように一方にのみ移動手段を構成する場合は、各々の移動手段が、X方向、Y方向及びZ方向の全ての方向に移動可能なように構成すべきことになる。
【0029】
前記移動手段は、具体的には、種々の既存の周知の技法を採用して実現することができる。例えば、X−Y案内テーブルの運動機構等に利用されるボールスプライン機構、リニアモータ機構、電磁力利用直線運動機構等を利用して構成することができる。
【0030】
前記画像モニタは、前記カメラユニットの正面用ビデオカメラ又は斜め用ビデオカメラの撮影した検査対象の要検査部位の画像信号を、前記制御手段の制御信号に従って選択的に再生するものである。検査要員は、この画像モニタに拡大されて再生表示された画像を観察して各要検査部位の目視検査を行うものであるのは云うまでもない。
【0031】
以上の画像モニタとしては、大型のCRTディスプレー又は液晶ディスプレー等を採用することもできるし、眼前に装着して使用する眼前装着形の画像モニタを採用することもできる。
【0032】
また前記制御装置は、前記撮影手段で、検査対象の要検査部位を、順次、適切な位置で適切な高さ位置で撮影して前記画像モニタで再生すべく、前記保持手段及び前記カメラユニットをそれぞれ移動させる移動手段、前記カメラユニットを回転させる回転手段、前記カメラユニット並びに前記画像モニタのそれぞれを制御するものであり、その制御には既存の一般の技術を用いることができる。
【0033】
前記カメラユニットの正面用及び斜め用ビデオカメラの双方にズーム機能を備えたものを採用した場合は、前記制御装置は、該カメラユニットの正面用ビデオカメラ又は斜め用ビデオカメラで、検査対象の要検査部位を、順次、適切な方向から適切な拡大率で撮影して前記画像モニタで再生すべく、前記保持手段及び前記カメラユニットをそれぞれ移動させる移動手段、前記カメラユニットを回転させる回転手段、前記カメラユニットの正面用ビデオカメラ及び斜め用ビデオカメラ並びに前記画像モニタのそれぞれを制御するように構成する。
【0034】
また前記制御装置は、前記カメラユニットの正面用ビデオカメラ及び斜め用ビデオカメラの出力する画像信号を、その色調調整や必要な説明等のための文字重ね処理等を行った上で、前記画像モニタに出力するように構成することもできる。
【0035】
更に、前記制御装置は、前記カメラユニットの正面用ビデオカメラ及び斜め用ビデオカメラの出力する画像信号を、上記の処理をした上で又はしないで、該制御装置に付属させた記憶手段に保存しておき、これを順次前記画像モニタに出力するように構成することもできる。この場合は、前記カメラユニット、前記回転手段及び移動手段等に、画像モニタに於ける1ステップ前の要検査部位の画像の表示中に次のステップの撮影のための動作をさせ、常に一つ先の要検査部位の撮影を進めておくように制御することにより、検査要員の判断時間内に撮影を進め、次の要検査部位の画像の表示までに待ち時間を殆どなくすることができる。
【0036】
前記指示装置は、制御装置に、当該の要検査部位の目視検査が終了したことを報知して、次の要検査部位の撮影動作に進行させるべく指示を与えたり、見直しのために終了した要検査部位の撮影動作を再度行わせるべくの指示を与える等のための手段である。更に、新たな要検査部位の検査に入った段階等に於ける手動操作の切換の指示を与える手段でもあり、これによって前記手動操作装置による手動操作を行い得るようにする。リモコンタイプの装置に構成するのが使用上都合が良い。
【0037】
また前記手動操作装置は、手動により種々の操作信号を発生し、この操作信号を前記制御装置に送って、所定の制御動作を行わせるための手段である。このような手動操作装置としては、それ自体がX、Y、Z方向への変位操作(Z方向に関してはその方向への変位操作に代えて伸縮操作が可能なものも含む)、X、Y方向への傾き操作及び回転操作が可能であるものであれば、種々のそれを自由に採用することができる。
【0038】
例えば、3Dマウスと称される市販の装置を採用することが可能である。この3Dマウスは、平面から見て円形のマウス本体と、その中央から立ち上がる短円柱状の操作部とからなり、X、Y方向への変位操作は、該マウス本体をそのように変位動作させることにより行い、Z方向へは変位操作に代えて伸縮操作を該操作部をZ方向に伸縮操作することで行い、X、Y方向への傾き操作は該操作部をX又はY方向に傾けることで行い、かつ回転操作は該操作部をその軸心を中心に回転させることで行うことができるものであり、それぞれその操作量に応じたアナログの操作信号を出力する。従ってこの操作信号は、該3Dマウスとの間にA/D変換器を介在させてこれによってA/D変換して前記制御装置に入力することになる。
【0039】
また前記制御装置には、以上の手動操作装置の採用に伴って、そのX、Y、Z方向への変位操作(Z方向へはその方向への伸縮操作を含む)、X、Y方向への傾き操作及び回転操作による該手動操作装置からの各操作信号を受けると、前記画像モニタ中に表示される前記検査対象の要検査部位の画像に該手動操作装置の操作に対応するX、Y、Z方向への変位動作、X、Y方向への傾き動作又は回転動作をさせるように、前記移動手段及び前記カメラユニットの回転手段を制御する制御機能を付与することとする。
【0040】
また、前記カメラユニットの正面用カメラ及び斜め用カメラの双方にズーム機能を持たせた場合に、これに伴って、前記制御装置には、同時に、前記手動操作装置のZ方向への変位操作又はZ方向の伸縮操作による操作信号を受けた場合に、該カメラユニットの対応する正面用ビデオカメラ又は斜め用ビデオカメラにズーム動作させるように制御する制御機能を付与することができる。
【0041】
また前記手動操作装置のX、Y、Z方向への変位操作による変位量(Z方向についてはその方向の伸縮量を含む)及び回転操作による回転量と、これに基づく前記画像モニタ中に表示される前記検査対象の要検査部位の画像の変位量及び回転量の対応関係を調節可能に構成する。この調節は、該手動操作装置の変位量、伸縮量又は回転量と出力操作信号の関係を調節すること又は制御手段側で受け取った操作信号に種々の演算処理を施すこと等によって行うことができる。
【0042】
更に前記制御装置には、以上の手動操作装置の変位操作(Z方向の伸縮操作を含む)、傾き操作又は回転操作が、直接に画像モニタ中に表示される要検査部位に加えられる変位操作、傾き操作又は回転操作となるイメージに制御するのに代えて、手動操作装置の変位操作(Z方向の伸縮操作を含む)、傾き操作又は回転操作がカメラユニットに加えられるそれであるイメージに制御するように構成することも可能である。
【0043】
即ち、前記制御装置に、前記手動操作装置のX、Y、Z方向への変位操作(Z方向の伸縮操作を含む)、X、Y方向への傾き操作及び回転操作による該手動操作装置からの各操作信号を受けると、前記カメラユニットに該手動操作装置の操作に対応するX、Y、Z方向への変位動作、斜め用ビデオカメラの選択及びそのX、Y方向の選択された方向への位置の変更動作又は回転動作をさせるように、前記移動手段及びカメラユニットの回転手段を制御する制御機能を持たせるように構成する訳である。
【0044】
これに切り換えて操作すると、前記画像モニタ中に該カメラユニットの動作の結果である前記検査対象の要検査部位の画像が表示されることになる。
【0045】
従って本発明の工業製品の目視検査支援装置によれば、予め前記制御装置に当該の検査対象関係用のプログラムを動作させ、かつ先行して行われた外観検査装置から受け取った検査対象に関する外観検査結果データを読み込ませた上で、前記保持手段にその指示に従って検査対象を支持させ、順次、その動作ステップを進行させ、目視検査の支援動作を行わせることができる。これを順を追って説明する。
【0046】
前記保持手段に画像モニタの表示で指示された検査対象を保持させて動作を開始させると、まず前記指示装置の指示に従って制御装置が制御動作し、前記各部を動作させる。予め定められたプログラムにしたがって、かつ前記外観検査結果データに基づいて、最初の要検査部位を撮影すべく、前記移動手段が動作し、保持手段及びカメラユニットの一方又は双方に移動動作をさせ、カメラユニット及び保持手段に保持された検査対象が、相互に、要検査部位を撮影するのに適当な所定の位置関係になり、撮影が行われる。
【0047】
このまま継続すると、プログラムに従って、要検査部位の撮影が行われることになるが、前記指示装置を操作して、制御装置に、手動操作に切り換える旨の指示を与えることができる。そして手動操作に切り換えると、検査要員によって前記手動操作装置に加えられる操作が有効になる。
【0048】
これをより具体的に説明すると、前記手動操作装置自体をX、Y、Z方向に変位操作し(Z方向には、手動操作装置の構成により、伸縮操作する。以下同じ)、或いは回転操作し、その操作信号が制御装置に送信されると、画像モニタ中に表示されている要検査部位が、これに該手動操作装置に加えられたのと同様の変位操作動作又は回転操作が加えられた如くに、検査対象を保持した保持手段とカメラユニットとの移動手段の動作及びカメラユニットの回転手段の動作が制御され、各々の移動手段の構成にしたがい、相互に、相対的に、X方向、Y方向又はZ方向に動き、カメラユニットは正面用カメラの光軸を中心に回転動作する(当然前記手動操作装置の変位動作又は回転動作とは異なる)。なお、以上に於いては、手動操作装置の傾き操作が行われていないので、正面用ビデオカメラが選択されている。
【0049】
前記手動操作装置を、X、Y方向に傾ける傾き操作をすると、その操作信号を受けた制御装置によって、前記カメラユニットの斜め用ビデオカメラが選択され、かつ該斜め用ビデオカメラは傾けられたのと反対側に回転移動すべく、該カメラユニットの回転手段が制御され、画像モニタに表示された要検査部位の画像は、該手動操作装置の傾き操作をした傾き方向と同方向に傾いた状態に表示されることになる。こうして要検査部位を斜めから見たい場合に対応できる。正面用ビデオカメラに戻したい場合は、該手動操作装置をX、Y方向の逆方向に傾ける傾き操作をすれば良い。
【0050】
こうして、前記画像モニタには、前記手動操作装置に加えた変位操作(伸縮操作を含む)、傾き操作又は回転操作が、直接にその中に表示されている要検査部位に加えられた如くに、該要検査部位が変位動作し、傾き動作し又は回転動作して、該要検査部位は、検査要員の希望する位置及び高さから見た状態に、或いは傾いた状態に表示されることになる。こうして目視検査はより確実に行われ得るものとなる。更に、以上のように、前記手動操作装置に加えられる操作は、画像モニタに表示されている要検査部位に直接加えるイメージで行われるものであるため、検査要員にとって分かり易く、その操作がスムーズかつスピーディに行い得られるものとなる。
【0051】
なお、前記のように、カメラユニットの正面用ビデオカメラ及び斜め用ビデオカメラにズーム機能を備えたものを採用した場合は、例えば、制御装置を、これが前記手動操作装置のZ方向の変位操作(伸縮操作)による操作信号を受けると、正面用ビデオカメラ又は斜め用ビデオカメラをズーム動作を行うべく制御するように構成することが可能であり、そのように構成した場合は、当然、そのような手動操作装置の操作により現在選択されている正面用ビデオカメラ又は斜め用ビデオカメラをズーム動作させ、これによって、前記画像モニタに、要検査部位の所望のサイズの画像を表示させることができることになる。またその操作は、検査要員の実感に合致し易い操作であり、スムーズに該検査要員の意識に沿った操作ができ、目視検査が、よりスムーズかつ能率的に行われ得ることになる。
【0052】
なおまた、前記のように、前記手動操作装置のX、Y、Z方向への変位操作による変位量及び回転操作による回転量と、これに基づく前記画像モニタ中に表示される前記検査対象の要検査部位の画像の変位量及び回転量の対応関係を調節可能に構成した場合は、検査要員が、その調節を適切に行うことにより、前記手動操作装置に操作を加えた場合に、画像モニタ中に表示される要検査部位の画像の動作をより一層その実感に一致するものとすることができる。
【0053】
また、前記のように、前記制御装置に、前記手動操作装置のX、Y、Z方向への変位操作、X、Y方向の傾き操作及び回転操作による各操作信号を受けると、前記カメラユニットに該手動操作装置の操作に対応するX、Y、Z方向への変位動作、斜め用ビデオカメラの選択と傾き操作と反対側への回転移動動作、又は回転動作をさせるように、前記移動手段及びカメラユニットの回転手段を制御する制御機能を付与すべく構成し、これに切り換えて動作させた場合は、前記画像モニタ中には、前記操作部の操作による該カメラユニットの動作の結果である前記検査対象の要検査部位の画像を表示させることができることになる。
【0054】
これを言い換えれば、前記手動操作装置をX、Y、Z方向に変位操作し、X、Y方向に傾き操作し又は回転操作することにより、カメラユニットをその通りに変位動作させ又は回転動作させ、若しくは、斜め用ビデオカメラの選択すると共に、該斜め用ビデオカメラを該手動操作装置の傾き操作と反対側に位置することとなるように回転移動動作をさせ、画像モニタには、その結果である検査対象の要検査部位の画像を表示させるものである。検査要員によっては、この方がより実感に合う場合もあり、その場合に好都合である。
【0055】
なお、前記したように、前記カメラユニットで撮影した検査対象の要検査部位の画像は、前記制御装置で画像処理した上で画像モニタに出力することとした場合は、色調調整等の処理が施された上で画像モニタに出力され、より鮮明な見やすい画像で観察を行うことができるようになる。
【0056】
こうして手動操作による目視検査が終了して検査要員が前記指示装置で、以上の手動による目視検査が終了した旨の信号を入力すると、前記制御装置によって制御され、検査対象の次の要検査部位を撮影すべく、前記移動手段が動作し、保持手段及びカメラユニットの一方又は双方に移動動作をさせ、カメラユニット及び保持手段に保持された検査対象が、相互に、次の要検査部位を撮影するのに適当な所定の位置関係になり、その撮影が行われる。
【0057】
この後、そのまま継続すると、プログラムに従って、該要検査部位の撮影が行われることになるが、前記指示装置を操作して、制御装置に、手動操作に切り換える旨の指示を与えれば、先に述べたような手動操作による該要検査部位の撮影が行われることになる。
【0058】
これが当該の検査対象の全ての要検査部位について繰り返されれば、その目視検査は終了し、画像モニタに表示された次の検査対象の目視検査に移行する。次の検査対象は、云うまでもなく、以上に述べたのと同様の手順によって行う。
【0059】
なお、要検査部位の目視検査を、手動操作ではなく、プログラムに従ったそれを継続した場合は、要検査部位について一般的に必要と考えられる方向又は部位の撮影が順次行われ、それが画像モニタに表示される。従ってこの場合も正確な目視検査を行うことは可能である。手動操作による場合は、更に実感に従って要検査部位を動かしながらその目視検査を行える利点がある訳である。以上のプログラムに従った目視検査は既存の技術であるからその詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、この実施例の工業製品の目視検査支援装置は、電子回路基板1の各部の検査用に構成したものであり、その主要な構成要素は、二つのビデオカメラからなるカメラユニット2と、検査対象である電子回路基板1を保持する保持部3と、該保持部3を配した平面から見て方形のベース部4と、該ベース部の一辺側に立ち上げた、該カメラユニット2を支持する門形フレーム5と、該ベース部4に構成された前記保持部3のY方向移動用のY方向移動機構4aと、前記カメラユニット2に付設した回転機構6a及び昇降方向に動かすZ方向移動機構6bと、前記門形フレーム5に構成したカメラユニット2のX方向移動用のX方向移動機構5aと、画像モニタ7と、画像モニタ7と一体に配した制御部8と、制御部8に指示を与える指示用リモコン装置9と、X、Y方向の変位動作、Z方向の伸縮動作、X、Y方向の傾き操作又は回転動作を加えることにより、画像モニタ7中に表示される要検査部位の画像を、その操作と同様にX、Y、Z方向に変位動作させ、傾き動作させ、又は回転動作させるべく、制御部8に指示を与える3Dマウス(手動操作装置)14とである。
【0061】
前記カメラユニット2は、図1及び図2に示すように、正面用ビデオカメラ2aと斜め用ビデオカメラ2bとで構成する。特に図1に示すように、正面用ビデオカメラ2aを中心に配し、その上部から支持片を突出させ、この支持片に上記斜め用ビデオカメラ2bを取り付ける。上記斜め用ビデオカメラ2bは、この実施例では、その光軸と該正面用ビデオカメラ2aの光軸とのなす角度が45度になるように取り付けたものである。なおこのカメラユニット2に於いては、中心に配した正面用ビデオカメラ2aの上部に前記斜め用ビデオカメラ2bの反対側に突出させたバランサ2cを配し、前記回転機構6aによる回転時その他にバランスを取り、揺動等の発生を抑えるようにする。
【0062】
前記正面用ビデオカメラ2a及び前記斜め用ビデオカメラ2bは、いずれもズーム機能を有し、かつ被写界深度を充分深く取り得るように、絞り機能を有するものを採用した。この実施例では、特に補助ランプは設けていないが、被写界深度を深く取ると充分な露出が得られなくなる場合には検査対象の要検査部位を照明するための補助ランプ類を付することができる。
【0063】
前記回転機構6aは、前記正面用ビデオカメラ2aの光軸を中心に回転させることができるように構成する。前記正面用ビデオカメラ2aの上部に円筒状の機箱10を配し、その中に前記回転機構6a及びZ方向移動機構6bを構成する。これらの回転機構6a及びZ方向移動機構6bは、電動モータを駆動源とし、既存の技法によって構成したものである。該回転機構6a及び該Z方向移動機構6bの回転及びZ方向移動動作を伝達するZ方向移動用及び回転用の軸部材を前記機箱10から垂下させ、その下端に前記正面用ビデオカメラ2aの上部を結合する。こうしてカメラユニット2は回転機構6aによる回転作用及びZ方向移動機構6bによるZ方向移動の作用を受けることができることになる。
【0064】
前記X方向移動機構5aは、門形フレーム5の水平部に沿って、即ち、X方向に前記機箱10を移動可能に構成する。前記カメラユニット2、前記回転機構6a及び前記Z方向移動機構6bを、前記機箱10を介して、同時に、X方向に移動可能に構成するものである。前記X方向移動機構5aも電動モータを駆動源として既存の技法により構成したものである。
【0065】
前記保持部3は、電子回路基板1の両端部を爪片等により確実に保持できるように構成したものであり、前記ベース部4にY方向に平行に配したレール部材4b、4bに移動自在に配したものである。前記Y方向移動機構4aは、上記レール部材4b、4bに移動自在に配された保持部3をY方向に移動させ得るように構成したものであり、駆動源として電動モータを採用した一般の技法により構成したものである。
【0066】
前記画像モニタ7は種々のそれを採用可能であるが、この実施例では、アナログカラー画像信号を受け取ってこれを再生することのできるCRTディスプレーを採用した。
【0067】
前記制御部8は外部記憶装置11を備えており、そのプログラム記憶領域11aには、与えられた検査対象データに基づいて、検査対象である全電子回路基板1、1…の各々の全要検査部位の撮影順序、各要検査部位の撮影のための各部の動作等について定めたプログラムが保持してあり、また前記指示用リモコン装置9からの手動操作への切換信号を受けると、前記3Dマウス14による手動操作を許容し、更に該3Dマウス14のX、Y方向の変位操作、Z方向の伸縮操作、X、Y方向の傾き操作及び回転操作による操作信号を受けると、前記画像モニタ7中に表示される要検査部位をその通りに変位し、傾き又は回転することとなるように、前記X方向移動機構5a、Y方向移動機構4a、Z方向移動機構6b及び回転機構6aを動作させ、カメラユニット2の斜め用ビデオカメラを選択するべく制御するためのプログラムも保持してある。
【0068】
また前記制御部8の外部記憶装置11の画像記憶領域11bには、前記電子回路基板1の要検査部位の内で判断の難しい部位についての正常な状態を示す画像データを保持させ、データ記憶領域11cには、先行する外観検査装置の検査の結果、不良が見出された電子回路基板1、1…を特定するデータ、要検査部位である各々の不良箇所及びその内容を示すデータが保持させてある。
【0069】
前記指示用リモコン装置9は、プログラムに従った自動目視検査を行う場合は、前記制御部8に検査要員から動作の開始を指示し、当該の要検査部位の目視検査の終了を報知して次の要検査部位への移行を促し、または見直しのために既に終了した要検査部位の再度の撮影動作を指示する等の手段として構成したものである。また該指示用リモコン装置9は、手動による目視検査を行う場合には、要検査部位の検査に入った段階で、その切換スイッチを操作することで手動操作の切換の指示を与える手段でもあり、そのような切換スイッチも用意してある。更にこの場合は、3Dマウス14の操作部14bのZ方向押し引き操作(伸縮操作)による画像モニタ7中の要検査部位に対する作用を、その昇降動作とするか又はズーム動作とするかの選択をする手段でもある。選択操作をしなければ昇降動作が優先して選択される。
【0070】
また前記指示用リモコン装置9は、手動で目視検査を行っている場合も、当該の要検査部位の検査箇所が複雑で正確に記憶し難い等の事情がある場合には、前記外部記憶装置11の画像記憶領域11bから該要検査部位の正常な状態の画像データを読み出し、その正常な画像と現在の検査対象の要検査部位の画像とが交互に再生されるようにする操作機能をも備えたものである。
【0071】
前記3Dマウス14は、図1及び図3に示すように、平面から見て円形台状のマウス本体14aと、その上に立ち上がった短円柱状の操作部14bとからなり、X、Y方向への変位操作は、該マウス本体14aをそのように変位動作させることにより行い、Z方向へは変位操作に代えて伸縮操作を該操作部14bをZ方向に伸縮操作することで行い、X、Y方向への傾き操作は該操作部14bをX又はY方向に傾けることで行い、かつ回転操作は該操作部をその軸心を中心に回転させることで行うことができる。なお、図3中では、X、Y方向への変位は、大文字のX、Yで指示した矢印で示し、Z方向への伸縮操作は、大文字のZで指示した矢印で示し、X、Y方向への傾き操作は、各々小文字のx、yで指示した矢印によって示し、回転操作は大文字のRで指示した矢印によって示してある。
【0072】
該3Dマウス14は、以上の各操作によって、それぞれX方向変位操作信号、Y方向変位操作信号、Z方向伸縮操作信号、X方向傾き操作信号、Y方向傾き操作信号又は回転操作信号を生成する。これらの操作信号は、それぞれの操作量に応じたアナログ信号であり、図2に示すように、該3Dマウス14と前記制御部8との間に介在させたA/D変換器15でA/D変換して該制御部8に入力する。
【0073】
しかして前記カメラユニット2の正面用ビデオカメラ2a及び斜め用ビデオカメラ2bの画像信号出力は画像切換部12を介して前記画像モニタ7に接続し、また前記外部記憶装置11の画像記憶領域の画像データはA/D変換器13でアナログ画像信号に変換され、その画像信号が前記切換部12を介して前記画像モニタ7に入力されるべく接続してある。データ記憶領域11cのデータは、制御部8からの要求により読み出されるべく、該制御部8に接続している。
【0074】
また制御部8は、前記カメラユニット2の正面用ビデオカメラ2a、斜め用ビデオカメラ2b、回転機構6a、Z方向移動機構6b、X方向移動機構5a、Y方向移動機構4a、画像切換部12及び外部記憶装置11を制御すべく制御信号線で結合している。
【0075】
従ってこの実施例の工業製品の目視検査支援装置によれば、データ記憶領域11cのデータに基づき、前記画像モニタ7に表示された指示に従い、前記保持部3に検査対象である電子回路基板1を保持させ、前記指示用リモコン装置9で動作の開始を指示すると、前記保持部3がY方向移動機構4aの動作により、Y方向に必要なだけ移動し、かつ前記カメラユニット2が、Z方向移動機構6b及びX方向移動機構5aの動作により、それぞれZ方向及びX方向に必要なだけ移動し、更に回転機構6aが回転動作して、カメラユニット2を回転動させ、対象の電子回路基板1の最初の要検査部位がカメラユニット2の正面用カメラ2aと対面状態になり、その撮影が行われることとなる。
【0076】
この段階で、プログラムに従った自動目視検査ではなく、手動による目視検査を行いたい場合は、前記指示用リモコン装置9の切換スイッチを操作して手動操作に切り換える。
【0077】
最初の要検査部位がICの正面から観察しその型番を確認するものであれば、それが前記データ記憶領域11cのデータに基づいて前記画像モニタ7に表示される。当然、カメラユニット2の正面用ビデオカメラ2aで撮影される。そこで検査要員は、該画像モニタ7中に表示されている要検査部位を見ながら、これが正立していなければ、正立状態になるように、前記3Dマウス14の操作部14bを回転操作する。すると、その操作信号が制御部8に入力され、これに基づいて制御部8は前記回転機構6aを動作制御し、該操作部14bに対して加えられた回転動作と同様に画像モニタ7中の要検査部位が回転するように、該回転機構6aを制御する。こうして前記カメラユニット2が必要な回転を行い、画像モニタ7中に表示されている要検査部位は3Dマウス14の操作部14bに加えられたのと同様の回転動作を行い、正立状態となる。
【0078】
このとき、型番の表示が小さくて読み取りにくい場合は、該3Dマウス14の操作部14bを更にZ方向の+方向、上下方向の上方に引き上げるべく操作すると、その操作信号が制御部8に入力され、これに基づいて制御部8は前記Z方向移動機構6bを動作制御し、該操作部14bに対して加えられた引き上げ動作と同様に画像モニタ7中の要検査部位を引き上げるように、該Z方向移動機構6bを制御する。こうして前記カメラユニット2が必要な下降動作を行い、画像モニタ7中に表示されている要検査部位は3Dマウス14の操作部14bに加えられたのと同様の上昇動作を行い、より近接状態の画像となる。
【0079】
なおこのとき、ズーム機能を用いることが適当であると検査要員が考えた場合は、前記のように、前記指示用リモコン装置9を操作して、ズーム側に切り換えて前記操作部14bをZ方向に操作する。この場合は、引き上げる操作をすると、その操作信号が制御部8に入力され、今度は、前記カメラユニット2の正面用カメラ2aをズーム動作すべく制御し、画像モニタ7中に表示される要検査部位の画像は拡大されることになる。
【0080】
こうして検査要員は自らの実感に沿った操作を3Dマウス14の操作部14bに加えて、画像モニタ7中の要検査部位にその通りに、この場合は、正立させて、拡大し、型番を読みやすい状態にして誤りがあるか否か確認することができる。
【0081】
なお、以上に於いて、画像モニタ7中に表示されている要検査部位が横方向又は縦方向にずれていて型番の全体が見えない場合は、該要検査部位をその型番の全体が見えるように動かすイメージで、3Dマウス14のマウス本体14aをその方向、即ち、X方向又はY方向に変位させる変位操作をし、これよって該要検査部位をその通りに動かして型番の全体を画像モニタ7中に表示させる。
【0082】
該3Dマウス1のマウス本体14aをX方向又はY方向に変位させる変位操作をすると、その操作信号が生成されて、これらが前記A/D変換器15を介してA/D変換されて制御部8に入力され、該制御部8によって、画像モニタ7中に表示されている要検査部位を該マウス本体14aに加えられた変位操作と同様に動かすように、X方向移動機構5a及びY方向移動機構4aが制御され、カメラユニット2が動かされて、その結果を得ることができる。
【0083】
こうして、検査要員は、いずれにしても画像モニタ中に表示されている要検査部位を見て、それを所望の方向等に直接に動かすイメージで3Dマウス14のマウス本体14a又は操作部14bをその通りに操作することで、そのイメージ通りの要検査部位の動きを生じさせることができる。そのため、要検査部位を検査に都合の良い状態にスムーズに動かして正確な目視検査を行うことができる。
【0084】
なお、当該の要検査部位の検査箇所を正常な該部位の画像と比較したい場合は、前記指示用リモコン装置9を操作すると、前記外部記憶装置11の画像記憶領域11bからその要検査部の正常な状態の画像データが読み出され、該画像データがD/A変換器13でD/A変換され、得られたアナログ画像信号が前記画像切換部12を介して前記画像モニタ7に入力され、当該の要検査部位の画像と交互に再生されることになる。検査要員は正常な画像と、当該の要検査部位の画像とを見比べて検査作業をより容易かつ正確に行うことができることとなる。
【0085】
こうして該当する要検査部位の目視検査が終了した後は、検査要員は、前記指示用リモコン装置9を操作して、当該の要検査部位の目視検査の終了を報知して次の要検査部位への移行を促すと、制御部8の制御動作により、データ記憶領域11cから次の要検査部位が読み出され、前記したように、各部の動作が制御されて、対象の電子回路基板1の次の要検査部位がカメラユニット2の正面用カメラ2aと対面状態になり、その撮影が行われることとなる。
【0086】
この段階で、そのままプログラムの進行に従えば、自動目視検査を進行させることになるが、手動による目視検査を行いたい場合は、前記したのと同様に、前記指示用リモコン装置9の切換スイッチを操作して手動操作に切り換える。
【0087】
次の要検査部位がICの基板1への取付状態を検査するものである場合は、画像モニタ7中の要検査部位を見ながら、該ICの確認すべき所定の部位のピンを斜め方向から見ることができるように、前記3Dマウス14の操作部14bをX、Y方向の該当する方向に傾き操作する。すると、その操作信号が前記A/D変換器15でA/D変換されて前記制御部8に入力され、前記カメラユニット2の斜め用ビデオカメラ2bが選択され、更に該斜め用ビデオカメラ2bが該所定の部位のピンを斜め方向から撮影することが可能となる位置に移動するように、前記回転機構6aが制御され、該斜め用ビデオカメラ2bがそのように位置決めされる。従って要検査部位である該所定部位のピンは斜め方向から撮影されて、前記画像モニタ7にその画像が表示される。即ち、ICの所定の辺の斜め方向から撮影されたピンが該画像モニタ7に表示されることになる。なお、このとき、該要検査部位が画像モニタ7の中央部に位置しないなどによって観察し難い場合は、3Dマウス14のマウス本体14aをX、Y方向に変位操作して、中央方向に移動させ、観察しやすくする。この場合は、制御部8によってY方向移動機構4a及びX方向移動機構5aがそのように適切に動作すべく制御され、そのような結果が得られる。
【0088】
これは、以上のように、要検査部位をその観察に必要な方向に傾けるイメージで前記3Dマウス14の操作部14bを傾き操作することによって、その操作信号を生成させ、これをA/D変換器15でA/D変換して制御部8に入力し、該制御部8によって、上記イメージ通りの結果を生じさせるべく、斜め用ビデオカメラ2bを選択し、これを撮影に適する向きに動かすべく、回転機構6aを動作させることによるものと、3Dマウス14のマウス本体14aの先に述べた変位操作とによるものである。そして、その結果、即ち、該当部位を斜めから見た状態の画像を得るものである。
【0089】
以上に於いて、画像モニタ7中に表示されている要検査部位の画像が小さい場合は、前記と同様に3Dマウス14の操作部14bを引き上げる操作(Z方向の操作)をして、画像モニタ7中の要検査部位を引き上げる。これでも更に小さくて観察しにくいようであれば、これも前記したのと同様に、前記指示用リモコン装置9を操作して、ズーム側に切り換えて前記操作部14bを引き上げる操作(Z方向+側の操作をする)をすると、その操作信号がA/D変換器15を介して制御部8に入力され、今度は、前記カメラユニット2の斜め用カメラ2bをズーム動作すべく制御し、画像モニタ7中に表示される要検査部位の画像は拡大されることになる。
【0090】
こうして該ICの要検査部位であるピンの接続状態は適切な斜め方向から適切な大きさの画像となって観察可能となる。検査要員は、こうしてICの基板1への取付状態を斜め方向から観察することができるため、これが浮いたりせず、しっかりと取り付けられているか否かを検査することができる。なお、この場合も、検査要員は画像モニタ7中の要検査部位を見ながらこれを直接に操作するイメージで3Dマウス14の操作部14bを操作して、その通りの要検査部位の動きを生じさせることができ、スムーズかつスピーディに正確な目視検査が可能となる。画像モニタ7中の要検査部位それ自体を動かすイメージで3Dマウス14の操作部14bを操作してその結果が得られるものであり、検査要員の感覚に合致する良好な操作感を得ることができると云うこともできる。
【0091】
該ICのピンの接続状態を四方から観察する必要がある場合は、この後、画像モニタ7中のICの画像の内の、次に目視検査したい他の辺が中央に位置するように3Dマウス14のマウス本体14aを移動(X、Y方向に変位)させ、該辺をそのピンを観察するのに都合の良い方向に傾けるべく、操作部14bを傾き操作(X、Y方向の傾き操作)すれば、その後は先に述べたように動作して、画像モニタ7には、その辺が斜めになった画像が表示され、良好に観察できることになる。他の二辺についても同様に操作すれば良いのは云うまでもない。
【0092】
こうして要検査部位である該ICの接続状態の目視検査が完了した後は、前記したように、前記指示用リモコン装置9を操作して当該の要検査部位の目視検査の終了を報知して次の要検査部位への移行を促す。この後は、制御部8の制御動作により、データ記憶領域11cから次の要検査部位が読み出され、前記したように、各部の動作が制御されて、対象の電子回路基板1の次の要検査部位がカメラユニット2の正面用カメラ2aと対面状態になり、これが撮影され、画像モニタ7に表示されることになる。
【0093】
このまま継続することとし、前記指示用リモコン装置9を操作し、その進行を促進させると、自動目視検査が進行することになる。これは、以上に説明した手動で行った目視検査と基本的には同様な動作となるが、一般化された動作になる。要検査部位の検査目的に応じた一般的に必要と考えられる方向等から撮影され、画像モニタ7に表示されることになり、該指示用リモコン装置9の操作により、進行するようになっている。これは、既存の技術の内容であるので、詳細については省略する。
【0094】
該指示用リモコン装置9で、手動操作を選択すれば、また新しい要検査部位について手動目視検査が進行するが、それは既に説明した通りのやり方で進行する。手動目視検査又は自動目視検査で全ての検査対象の全ての要検査部位の目視検査が終了すれば、検査作業は終了する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】一実施例の工業製品の目視検査支援装置の概略斜視図。
【図2】一実施例の工業製品の目視検査支援装置の各部の機能的な関係を示したブロック図。
【図3】3Dマウスの斜視図。
【符号の説明】
【0096】
1 電子回路基板
2 カメラユニット
2a 正面用ビデオカメラ
2b 斜め用ビデオカメラ
2c バランサ
3 保持部
4 ベース部
4a Y方向移動機構
4b レール部材
5 門形フレーム
5a X方向移動機構
6a 回転機構
6b Z方向移動機構
7 画像モニタ
8 制御部
9 指示用リモコン装置
10 機箱
11 外部記憶装置
11a プログラム記憶領域
11b 画像記憶領域
11c データ記憶領域
12 画像切換部
13 D/A変換器
14 3Dマウス
14a マウス本体
14b 操作部
15 A/D変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象を保持する保持手段と、該検査対象の要検査部位を正面方向から撮影する正面用ビデオカメラ及び要検査部位を斜め方向から撮影する斜め用ビデオカメラとを組み合わせたカメラユニットであって、該正面用カメラの光軸を中心に回転させる回転手段を備えたカメラユニットと、前記検査対象を、該カメラユニットに対して相対的にX、Y、Zの三次元方向の全部又は一部の方向に移動させ得るように、該検査対象及び該カメラユニットの双方又は一方に備えた移動手段と、前記カメラユニットの正面用ビデオカメラ及び斜め用ビデオカメラの撮影した画像信号を再生し得る画像モニタと、前記保持手段及び前記カメラユニットをそれぞれ移動させる移動手段、前記カメラユニットを回転させる回転手段、前記カメラユニット及び前記画像モニタのそれぞれを、検査対象の要検査部位を順次予め設定した順序と撮影態様で撮影して前記画像モニタで再生すべく制御する制御装置と、該制御装置に撮影の進行の指示及び手動制御の切換の指示を与える指示装置と、手動で該制御装置に操作信号を送る手動操作装置と、で構成した工業製品の目視検査支援装置に於いて、
前記手動操作装置として、それ自体がX、Y、Z方向への変位操作、X、Y方向への傾き操作及び回転操作を可能であるものを採用し、かつ前記制御装置に、該手動操作装置からそのX、Y、Z方向への変位操作、X、Y方向への傾き操作又は回転操作に基づく各操作信号を受けた場合に、前記画像モニタ中に表示される前記検査対象の要検査部位の画像に該手動操作装置の操作に対応するX、Y、Z方向への変位動作、X、Y方向への傾き動作又は回転動作を生じさせるように、前記移動手段の移動動作、前記カメラユニットの回転手段の回転動作及び前記カメラユニットの正面用ビデオカメラ又は斜め用ビデオカメラの選択を制御する制御機能を付与した工業製品の目視検査支援装置。
【請求項2】
前記手動操作装置として、それ自体がZ方向への変位操作を可能とするものに代えてZ方向への伸縮操作が可能なそれを採用した請求項1の工業製品の目視検査支援装置。
【請求項3】
前記カメラユニットの正面用ビデオカメラ及び斜め用ビデオカメラとして、その一方又は双方にズーム機能を有するそれを採用し、
前記制御装置に、前記手動操作装置のZ方向への操作による操作信号を受けると、前記カメラユニットの対応する正面用ビデオカメラ又は斜め用ビデオカメラにズーム動作させるように制御する制御機能を付与した請求項1又は2の工業製品の目視検査支援装置。
【請求項4】
前記手動操作装置のX、Y、Z方向への操作による操作量及び回転操作による操作量と、これに基づく前記画像モニタ中に表示される前記検査対象の要検査部位の画像の変位量及び回転量の各々の対応関係を調節可能に構成した請求項1、2又は3の工業製品の目視検査支援装置。
【請求項5】
前記制御装置に、前記手動操作装置のX、Y、Z方向への操作、X、Y方向への傾き操作又は回転操作による各操作信号を受けた場合に、前記カメラユニットに該手動操作装置の操作に対応するX、Y、Z方向への変位動作、斜め用ビデオカメラの選択と該斜め用ビデオカメラの対応方向への向きの変更動作又は回転動作をさせるように、前記移動手段及びカメラユニットの回転手段の一方又は双方を制御する制御機能を付与し、これに切り換えて動作させた場合は、前記画像モニタ中に該カメラユニットの動作の結果である前記検査対象の要検査部位の画像を表示するようにした請求項1、2、3又は4の工業製品の目視検査支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−162671(P2009−162671A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1767(P2008−1767)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(399016075)株式会社 日立技研 (2)
【Fターム(参考)】