説明

差圧/圧力伝送器及びその製造方法

【課題】差圧/圧力伝送器のダイアフラムが反応する過大圧の設定値を任意に設定する。
【解決手段】高圧側受圧部及び低圧側受圧部を有する本体1と、本体1に設置された圧力センサ2と、高圧側受圧部に設けられた高圧側センターダイアフラム19と、凸形状の面を有する高圧側固定金具7と、低圧側受圧部に設けられた低圧側センターダイアフラム20と、凸形状の面を有する低圧側固定金具8とを含む差圧/圧力伝送器において、高圧側固定金具7の凸形状の面を高圧側センターダイアフラム19に押し当てて螺合機構により押し当て量を変化させることを可能とし、低圧側固定金具8の凸形状の面を低圧側センターダイアフラム20に押し当てて螺合機構により押し当て量を変化させることを可能とした構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業計測に用いられる差圧/圧力伝送器に関し、過大な圧力が印加されてもセンサに圧力が伝達されず、センサ破損を防止する差圧/圧力伝送器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の差圧/圧力伝送器は、特許文献1及び特許文献2に記載のように、予め凸形状に形成された予加重ダイアフラムを接液面へ押圧接触させて配置し、過大圧力以下では常に本体ボディーに密着している状態にあり、過大圧力が印加されたときに初めて本体ボディーから離れ、過大圧力を吸収する構成になっている。
【0003】
また、特許文献3には、保護ダイアフラムの外周部の平面と受圧部本体の対応する外周面(外周接座面)とを当接させることによって、周設後に受圧部材(固定金具)によって予加重を与える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−117086号公報
【特許文献2】特開2006−126214号公報
【特許文献3】特開2009−192288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、差圧/圧力伝送器において、予め凸形状に変形したダイアフラムをその形状を維持したまま溶接した場合、ダイアフラムが反応する過大圧のばらつき(誤差)が大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、差圧/圧力伝送器のダイアフラムが反応する過大圧の設定値を任意に設定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の差圧/圧力伝送器においては、本体に高圧側センターダイアフラム及び低圧側センターダイアフラムを溶接し、本体に螺合した高圧側固定金具の凸形状の面を高圧側センターダイアフラムに押し当てて固定し、本体に螺合した低圧側固定金具の凸形状の面を低圧側センターダイアフラムに押し当てて固定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保護ダイアフラムが変位する過大圧力の値を任意に設定することができる。
【0009】
また、本発明によれば、保護ダイアフラムの溶接を平板状のダイアフラムと同様の方法で溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】実施例の差圧/圧力伝送器の構成を示す断面図である。
【図1B】図1Aの低圧側固定金具8を示す部分拡大断面図である。
【図2】従来の差圧/圧力伝送器の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を用いて詳しく説明する。
【0012】
図1Aは、実施例の差圧/圧力伝送器の構成を示す断面図である。
【0013】
本図において、差圧/圧力伝送器は、本体1に半導体センサ2(圧力センサ)、高圧側シールダイアフラム3、低圧側シールダイアフラム4、高圧側センターダイアフラム5、低圧側センターダイアフラム6、高圧側固定金具7及び低圧側固定金具8を設けたものである。高圧側シールダイアフラム3とこれを付設した高圧側固定金具7との間には高圧側シールダイアフラム室11が形成され、低圧側シールダイアフラム4とこれを付設した低圧側固定金具8との間には低圧側シールダイアフラム室12が形成されている。また、本体1と高圧側センターダイアフラム5との間には高圧側センターダイアフラム室19が形成され、本体1と低圧側センターダイアフラム6との間には低圧側センターダイアフラム室20が形成されている。
【0014】
本体1の内部には、高圧側封入液通路17、低圧側封入液通路18及び低圧側圧力伝達通路21が設けてある。高圧側センターダイアフラム室5、低圧側センターダイアフラム6、高圧側シールダイアフラム室11、低圧側シールダイアフラム室12、高圧側封入液通路17、低圧側封入液通路18及び低圧側圧力伝達通路21には、封入液が充填されている。高圧側封入液通路17は、高圧側センターダイアフラム室5と低圧側シールダイアフラム室12との間を連通している。低圧側封入液通路18は、低圧側センターダイアフラム室6と高圧側シールダイアフラム室11との間を連通している。低圧側圧力伝達通路21は、低圧側シールダイアフラム室12と半導体センサ2の低圧側感圧部との間を連通している。
【0015】
高圧側固定金具7には高圧側シールダイアフラム封入液通路15が設けてあり、低圧側固定金具8には低圧側シールダイアフラム封入液通路16が設けてある。
【0016】
高圧側シールダイアフラム3は、圧力による可動範囲を増やすために波板状になっているが、全体としては略平板状であり、高圧側の圧力を受ける部位(高圧側受圧部)となっている。一方、低圧側シールダイアフラム4も同様の形状を有し、低圧側の圧力を受ける部位(低圧側受圧部)となっている。
【0017】
高圧側固定金具7は、高圧側センターダイアフラム5に接する高圧側圧接座面13を凸状に形成してあり、高圧側センターダイアフラム5を本体1に押し当てている。一方、低圧側固定金具8は、低圧側センターダイアフラム6に接する低圧側圧接座面14を凸状に形成してあり、低圧側センターダイアフラム6を本体1に押し当てている。また、高圧側固定金具7は、高圧側シールダイアフラム3を保持し、低圧側固定金具8は、低圧側シールダイアフラム4を保持している。
【0018】
高圧側センターダイアフラム室19は、本体1に設けられた高圧側封入液通路17を介して、低圧側固定金具8に設けられている低圧側シールダイアフラム封入液通路16に繋がり、さらに、低圧側固定金具8に設けられている低圧側シールダイアフラム室連結通路32に繋がり、低圧側シールダイアフラム室12に繋がっている。なお、高圧側封入液通路17は、低圧側センターダイアフラム6の外周端部の外側位置に接続され、低圧側シールダイアフラム室連結通路32を介して低圧側シールダイアフラム封入液通路16に連通している。また、低圧側シールダイアフラム封入液通路16の一端は、低圧側センターダイアフラム6の中心部に対向した位置に設けてあり、他端は、低圧側シールダイアフラム4の中心部に対向した位置に設けてある。
【0019】
低圧側センターダイアフラム室20は、本体1に設けられた低圧側封入液通路18を介して、高圧側固定金具7に設けられている高圧側シールダイアフラム封入液通路15に繋がり、同じく高圧側固定金具7に設けられた高圧側シールダイアフラム室連結通路31に繋がり、高圧側シールダイアフラム室11に繋がっている。なお、低圧側封入液通路18は、高圧側センターダイアフラム5の外周端部の外側位置に接続され、高圧側シールダイアフラム室連結通路31を介して高圧側シールダイアフラム封入液通路15に連通している。また、高圧側シールダイアフラム封入液通路15の一端は、高圧側センターダイアフラム5の中心部に対向した位置に設けてあり、他端は、高圧側シールダイアフラム3の中心部に対向した位置に設けてある。
【0020】
高圧側センターダイアフラム5及び低圧側センターダイアフラム6は、円板形状であり、中央部分に設けられた中央平坦部と、中央平坦部の周囲を囲んで外側に設けられた同心円状の波部と、この波部の周囲を囲んで外側に設けられた外周平坦部とを有する。
【0021】
なお、高圧側センターダイアフラム5及び低圧側センターダイアフラム6の波部は、一重でもよく、または二重以上でもよい。
【0022】
以上の構成において、高圧側センターダイアフラム5及び低圧側センターダイアフラム6は、過大圧が印加されて初めて動作するダイアフラムであり、過大圧以下では、常に高圧側固定金具7又は低圧側固定金具8に密着するよう組立てられている。即ち、高圧側センターダイアフラム5及び低圧側センターダイアフラム6は、片側にのみ動作するダイアフラムであり、高圧側固定金具7又は低圧側固定金具8にて圧接された圧力以上の過大圧が印加されるたときに初めて変形して、過大圧を吸収する。
【0023】
なお、差圧測定装置において使用する圧力レンジに対応して、過大圧に対して高圧側センターダイアフラム5及び低圧側センターダイアフラム6が動作する圧力(以下、「動作圧力」と呼ぶ。)は任意に設定できるようにする必要がある。このため、図1Bに示すように、高圧側固定金具7及び低圧側固定金具8の位置を螺合機構101(ねじ)により調節し、高圧側センターダイアフラム5及び低圧側センターダイアフラム6にかかる圧力を変化させることにより、動作圧力を任意に設定できるようにする。高圧側センターダイアフラム5及び低圧側センターダイアフラム6の凸形状は、動作圧力が変化しても、動作圧力までは常に高圧側固定金具7又は低圧側固定金具8の高圧側圧接座面13又は低圧側圧接座面14に接しているようにする。この結果、良好な特性を得ることができる。
【0024】
高圧側センターダイアフラム5及び低圧側センターダイアフラム6と本体1との接合には、通常、溶接等が用いられる。
【0025】
図2は、従来の差圧/圧力伝送器の例を示す断面図である。
【0026】
本体101の内部に充填された封入液121の通路及び半導体センサ102の構成は、原理的には、実施例と同様である。
【0027】
本図においては、図1Aに示す高圧側固定金具7又は低圧側固定金具8を設けていない。高圧側シールダイアフラム103と高圧側センターダイアフラム105との間には高圧側シールダイアフラム室111が設けてあり、低圧側シールダイアフラム104と低圧側センターダイアフラム106との間には低圧側シールダイアフラム室112が設けてある。
【0028】
本図の構成の場合、固定金具がないため、高圧側センターダイアフラム105及び低圧側センターダイアフラム106を設置する際、凸形状に変形させた後、本体1に溶接する。このため、高圧側センターダイアフラム105及び低圧側センターダイアフラム106の動作圧力のばらつきが生じやすい。また、溶接の際、高圧側センターダイアフラム105及び低圧側センターダイアフラム106の凸形状を維持するための治具等が必要となり、溶接作業手順が複雑になる。
【0029】
これに対して、図1A及び1Bに示す実施例の場合、高圧側センターダイアフラム5及び低圧側センターダイアフラム6を高圧側固定金具7又は低圧側固定金具8で固定し、螺合機構101により高圧側固定金具7及び低圧側固定金具8が高圧側センターダイアフラム5及び低圧側センターダイアフラム6に作用する圧力を調節できるようにし、動作圧力を任意に設定することができ、信頼性も向上する。また、高圧側センターダイアフラム5及び低圧側センターダイアフラム6を略平板状としたまま溶接することができ、その後、高圧側固定金具7又は低圧側固定金具8を本体に螺合するとともに凸形状に変形するため、溶接の際に治具等で固定する必要がなくなり、溶接作業手順を簡略化することができる。また、高圧側センターダイアフラム5及び低圧側センターダイアフラム6の外周部分に取付平坦部が設けられているため、溶接の際の固定及び位置決めが容易となり、均一且つ強固な溶接等の固定が可能となる。
【0030】
以下、さらに、本発明の効果について説明する。
【0031】
本発明の差圧/圧力伝送器は、固定金具圧接座面によりあらかじめ凸形形状に押し当てられたセンターダイアフラム(保護ダイアフラム)が、過大圧が印加されて初めて移動する。したがって、計測範囲内においては保護ダイアフラムが移動しない。
【0032】
また、従来、シールダイアフラムに印加された圧力は、保護ダイアフラムを介してセンサへ伝播されていた。このため、保護ダイアフラムが過大圧以下の圧力でも移動し、応答に遅れが生じていた。しかし、本発明によれば、過大圧以下の圧力で保護ダイアフラムの移動がないため、シールダイアフラムへの圧力が直ちにセンサに伝播されることとなり、入力圧力への応答性が向上する。
【0033】
また、固定金具に螺合機構を設け、固定金具の位置を調節できるようにし、固定金具が保護ダイアフラムに作用する圧力を変化させることにより、動作圧力点を差圧測定装置の使用する圧力レンジに対応して任意に設定することができる。
【0034】
また、圧力は、固定金具側から加えられるため、荷重は平坦部が受けることになり、センターダイアフラムの繰り返し作動によって接合が外れる等の不具合が生じるおそれは少ない。
【符号の説明】
【0035】
1:本体、2:半導体センサ、3:高圧側シールダイアフラム、4:低圧側シールダイアフラム、5:高圧側センターダイアフラム、6:低圧側センターダイアフラム、7:高圧側固定金具、8:低圧側固定金具、11:高圧側シールダイアフラム室、12:低圧側シールダイアフラム室、13:高圧側圧接座面、14:低圧側圧接座面、15:高圧側シールダイアフラム封入液通路、16:低圧側シールダイアフラム封入液通路、17:高圧側封入液通路、18:低圧側封入液通路、19:高圧側センターダイアフラム室、20:低圧側センターダイアフラム室、21:低圧側圧力伝達通路、31:高圧側シールダイアフラム室連結通路、32:低圧側シールダイアフラム室連結通路、101:螺合機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧側受圧部及び低圧側受圧部を有する本体と、この本体に設置された圧力センサと、前記高圧側受圧部に設けられた高圧側センターダイアフラムと、凸形状の面を有する高圧側固定金具と、この高圧側固定金具を覆う高圧側シールダイアフラムと、前記低圧側受圧部に設けられた低圧側センターダイアフラムと、凸形状の面を有する低圧側固定金具と、この低圧側固定金具を覆う低圧側シールダイアフラムとを備え、前記本体と前記高圧側センターダイアフラムとの間に高圧側センターダイアフラム室を形成し、前記高圧側固定金具と前記高圧側シールダイアフラムとの間に高圧側シールダイアフラム室を形成し、前記本体と前記低圧側センターダイアフラムとの間に低圧側センターダイアフラム室を形成し、前記低圧側固定金具と前記低圧側シールダイアフラムとの間に低圧側シールダイアフラム室を形成し、前記高圧側センターダイアフラム室と前記低圧側シールダイアフラム室との間を連通する高圧側封入液通路と、前記低圧側センターダイアフラム室と前記高圧側シールダイアフラム室との間を連通する低圧側封入液通路と、前記低圧側シールダイアフラム室と前記圧力センサの低圧側感圧部との間を連通する低圧側圧力伝達通路とを有し、前記高圧側固定金具及び前記低圧側固定金具は、前記本体に螺合され、前記高圧側固定金具の凸形状の面は、前記高圧側センターダイアフラムに押し当てられ、前記低圧側固定金具の凸形状の面は、前記低圧側センターダイアフラムに押し当てられていることを特徴とする差圧/圧力伝送器。
【請求項2】
前記高圧側センターダイアフラムは、前記高圧側固定金具によって変形し、前記低圧側センターダイアフラムは、前記低圧側固定金具によって変形していることを特徴とする請求項1記載の差圧/圧力伝送器。
【請求項3】
前記高圧側センターダイアフラム及び前記低圧側センターダイアフラムは、変位する過大圧を任意に設定できることを特徴とする請求項1又は2に記載の差圧/圧力伝送器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の差圧/圧力伝送器の製造方法であって、前記本体に前記高圧側センターダイアフラム及び前記低圧側センターダイアフラムを溶接し、前記高圧側固定金具の凸形状の面を前記高圧側センターダイアフラムに押し当てて本体に螺合し、前記低圧側固定金具の凸形状の面を前記低圧側センターダイアフラムに押し当てて本体に螺合することを特徴とする差圧/圧力伝送器の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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