説明

巻き芯及び巻き芯に巻き付けられたウエハ加工用テープ

【課題】離型フィルム上に、接着剤層及び粘着フィルムを有するウエハ加工用テープをロール状に巻き取った場合に、接着剤層での転写痕の発生を十分に抑制できるウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯を提供する。
【解決手段】離型フィルム31と、離型フィルムの表面上に設けられた所定の平面形状を有する接着剤層32と、接着剤層を覆い、且つ、接着剤層の周囲で離型フィルムに接触するように設けられた所定の平面形状を有するラベル部33aと、ラベル部の外側を囲むように設けられた周辺部33bとを有する粘着フィルム33とを含むウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯10であって、少なくとも接着剤層に対応する位置に形成され、巻き付け圧力を緩和する緩和部11と、巻き付けられるウエハ加工用テープの幅方向で、かつ、緩和部の外側に形成され、ウエハ加工用テープを支持する支持部12とを有する巻き芯。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯に関し、特に、ダイシングテープとダイボンディングフィルムの2つの機能を有するダイシング・ダイボンディングフィルムを有するウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体ウエハを個々のチップに切断分離(ダイシング)する際に半導体ウエハを固定するためのダイシングテープと、切断された半導体チップをリードフレームやパッケージ基板等に接着するため、又は、スタックドパッケージにおいては、半導体チップ同士を積層、接着するためのダイボンディングフィルム(ダイアタッチフィルムともいう)との2つの機能を併せ持つダイシング・ダイボンディングフィルムが開発されている。
【0003】
このようなダイシング・ダイボンディングフィルムとしては、ウエハへの貼り付けや、ダイシングの際のリングフレームへの取り付け等の作業性を考慮して、プリカット加工が施されたものがある。
【0004】
プリカット加工されたダイシング・ダイボンディングフィルムの例を、図4及び図5に示す。図4、図5(A)、図5(B)は、それぞれダイシング・ダイボンディングフィルム40を備えたウエハ加工用テープ30の概要図、平面図、断面図である。ウエハ加工用テープ30は、離型フィルム31と、接着剤層32と、粘着フィルム33とからなる。接着剤層32は、ウエハの形状に対応する円形に加工されたものであり、円形ラベル形状を有する。粘着フィルム33は、ダイシング用のリングフレームの形状に対応する円形部分の周辺領域が除去されたものであり、図示するように、円形ラベル部33aと、その外側を囲むような周辺部33bとを有する。接着剤層32と粘着フィルム33の円形ラベル部33aとは、その中心を揃えて積層され、また、粘着フィルム33の円形ラベル部33aは、接着剤層32を覆い、且つ、その周囲で離型フィルム31に接触している。そして、接着剤層32と粘着フィルム33の円形ラベル部33aとからなる積層構造により、ダイシング・ダイボンディングフィルム40が構成される。
【0005】
ウエハをダイシングする際には、積層状態の接着剤層32及び粘着フィルム33から離型フィルム31を剥離し、図6に示すように、接着剤層32上に半導体ウエハWの裏面を貼り付け、粘着フィルム33の円形ラベル部33aの外周部にダイシング用リングフレームRを粘着固定する。この状態で半導体ウエハWをダイシングし、その後、粘着フィルム33に紫外線照射等の硬化処理を施して半導体チップをピックアップする。このとき、粘着フィルム33は、硬化処理によって粘着力が低下しているので、接着剤層32から容易に剥離し、半導体チップは裏面に接着剤層32が付着した状態でピックアップされる。半導体チップの裏面に付着した接着剤層32は、その後、半導体チップをリードフレームやパッケージ基板、あるいは他の半導体チップに接着する際に、ダイボンディングフィルムとして機能する。
【0006】
ところで、上記のようなウエハ加工用テープ30は、図4及び図5に示すように、接着剤層32と粘着フィルム33の円形ラベル部33aとが積層された部分が、他の部分よりも厚い。このため、図7に示す従来の巻き芯50、すなわち、回転中心に円筒状の空洞部53が形成された巻き芯50を用いて、図8に示すように、ウエハ加工用テープ30を製品としてロール状に巻いた際、接着剤層32と粘着フィルム33の円形ラベル部33aとの積層部分に、粘着フィルム33が除去されることにより形成された粘着フィルム33と離型フィルムとの段差が重なりあい、柔軟な接着剤層32表面に段差が転写される現象、すなわち図9に示すような転写痕(ラベル痕、シワ、又は、巻き跡ともいう)が発生する。このような転写痕の発生は、特に、接着剤層32が柔らかい樹脂で形成される場合や厚みがある場合、及びテープ30の巻き数が多い場合などに顕著である。そして、転写痕が発生すると、接着剤層と半導体ウエハとの間に空気を巻き込み、密着せず、その結果、接着不良を引き起こし、ウエハの加工時に不具合が生じるおそれがある。
【0007】
上記転写痕の発生を抑制するためには、フィルムの巻き取り圧を弱くすることが考えられるが、この方法では、製品の巻きズレが生じ、例えばテープマウンターへのセットが困難となる等、フィルムの実使用時に支障を来すおそれがある。
【0008】
また、特許文献1には、上記のようなラベル痕の発生を抑制するために、剥離基材上の接着剤層及び粘着フィルムの外方に、接着剤層及び粘着フィルムの合計の膜厚と同等又はそれ以上の膜厚を有する支持層を設けた接着シートが開示されている。特許文献1の接着シートは、支持層を備えることで、接着シートにかかっていた巻き取りの圧力を分散するか或いは支持層に集め、転写痕の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−2173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1の接着シートでは、剥離基板上の、半導体装置を製造する場合等に必要とされる接着剤層及び粘着フィルム以外の部分に、支持層が形成されることから、支持層の幅に制限があり、接着剤層及び粘着フィルムの外径に対して支持層の幅が狭く、ラベル痕の抑制効果が十分ではないという問題が生じていた。また、支持層は一般的に粘着性を有さず、剥離基材(PETフィルム)と十分に貼り付いていないことから、支持層の最も狭い部分において剥離基材から浮き、ウエハにダイシング・ダイボンディングフィルムを貼り合わせる際に、上述した浮いた部分が装置に引っかかり、ウエハが損傷してしまうという問題が生じていた。
【0011】
なお、支持層の幅を広くすることも考えられるが、ウエハ加工用テープ全体の幅も広くなるため、既存設備の使用が困難となる。また、支持層は、最終的に廃棄される部分であることから、支持層の幅を広げることは材料コストの上昇に繋がる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、離型フィルム上に、接着剤層及び粘着フィルムを有するダイシング・ダイボンディングフィルムを有するウエハ加工用テープをロール状に巻き取った場合に、接着剤層への転写痕の発生を十分に抑制することができるダイシング・ダイボンディングフィルムを有するウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上のような目的を達成するため、本発明のウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯は、
離型フィルムと、前記離型フィルムの表面上に設けられた所定の平面形状を有する接着剤層と、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層の周囲で前記離型フィルムに接触するように設けられた所定の平面形状を有するラベル部と、前記ラベル部の外側を囲むように設けられた周辺部とを有する粘着フィルムとを含むウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯であって、
少なくとも前記接着剤層に対応する位置に形成され、巻き付け圧力を緩和する緩和部と、
巻き付けられるウエハ加工用テープの幅方向で、かつ、前記緩和部の外側に形成され、ウエハ加工用テープを支持する支持部とを有することを特徴とする。
【0014】
上述した発明のウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯によれば、所定の平面形状を有する接着剤層と、接着剤層を覆い、且つ、接着剤層の周囲で離型フィルムに接触するように設けられた所定の平面形状を有するラベル部とからなるダイシング・ダイボンディングフィルムとして利用される部分に対応する位置に、巻き芯の支持部が形成されていないことから、巻き付け圧力が軽減(緩和)されるため、接着剤層での転写痕の発生を十分に抑制することができる。
【0015】
また、本発明に係るウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯として、緩和部および支持部は、円筒形状を有しており、かつ、緩和部は支持部を大径とすることにより形成されることが好ましい。
【0016】
上述した発明のウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯によれば、巻き付けられるウエハ加工用テープの幅方向で、かつ、緩和部の外側に形成された大径の支持部に対して、小径の緩和部を形成することが可能となり、緩和部と支持部とを別個独立の部材として設けることなく、巻き付け圧力を緩和する緩和部を巻き芯の形状により形成することができる。
【0017】
なお、緩和部の形状は、緩和部と支持部とを階段状にする場合のほか、緩和部が支持部と曲面により接続されていることも好ましい。
【0018】
さらに、本発明に係るウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯として、巻き取りローラあるいは送り出しローラに装着するための円筒状の空洞部が回転中心に形成されていることが望ましい。
【0019】
上述した発明のウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯によれば、緩和部及び支持部の形状に影響を与えることなく、空洞部を形成することができる。
【0020】
また、本発明に係る巻き芯に巻き付けられたウエハ加工用テープは、上述の巻き芯に巻き付けられたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯によれば、離型フィルム上に、接着剤層及び粘着フィルムを有するダイシング・ダイボンディングフィルムを有するウエハ加工用テープをロール状に巻き取った場合に、接着剤層での転写痕の発生を十分に抑制することができる。また、本発明に係る巻き芯に巻き付けられたウエハ加工用テープによれば、接着剤層での転写痕の発生を十分に抑制され、接着剤層と半導体ウエハとの間に空気を巻き込み、半導体チップをリードフレームやパッケージ基板、あるいは他の半導体チップに接着する際に、接着不良を引き起こし、ウエハの加工時に不具合が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(A)は本実施形態に係る巻き芯の断面図であり、(B)は概要図である。
【図2】本実施形態に係る巻き芯を用いてウエハ加工用テープを巻き付けた状態を説明する図である。
【図3】他の実施形態に係る巻き芯の断面図である。
【図4】従来のウエハ加工用テープの概要図である。
【図5】(A)は従来のウエハ加工用テープの平面図であり、(B)は断面図である。
【図6】ダイシング・ダイボンディングフィルムとダイシング用リングフレームとが貼り合わされた状態を示す断面図である。
【図7】(A)は従来の巻き芯の断面図であり、(B)は側面図である。
【図8】従来の巻き芯を用いてウエハ加工用テープを巻き付けた状態を説明する図である。
【図9】従来のウエハ加工用テープの不具合を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本実施形態に係るウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯を説明する図であって、図1(A)はは本実施形態に係る巻き芯の断面図であり、図1(B)は概要図である。図2は本実施形態に係る巻き芯を用いてウエハ加工用テープを巻き付けた状態を説明する図である。図3は他の実施形態に係る巻き芯の断面図である。はじめに、本実施形態に係る巻き芯に巻き付けられるウエハ加工用テープについて説明する。なお、本実施形態に係る巻き芯に巻き付けられるウエハ加工用テープは、図4及び図5に示される長尺状のウエハ加工用テープ30である。
【0024】
<ウエハ加工用テープ>
以下、本実施形態に係る巻き芯に巻き付けられるウエハ加工用テープの各構成要素について詳細に説明する。
【0025】
(離型フィルム)
ウエハ加工用テープに用いられる離型フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系、ポリエチレン系、その他、離型処理がされたフィルム等周知のものを使用することができる。離型フィルムの厚さは、特に限定されるものではなく、適宜に設定してよいが、25〜50μmが好ましい。
【0026】
(接着剤層)
接着剤層は、半導体ウエハ等が貼り合わされてダイシングされた後、チップをピックアップする際に、粘着フィルムから剥離してチップに付着し、チップを基板やリードフレームに固定する際の接着剤として使用されるものである。従って、接着剤層は、チップをピックアップする際に、個片化された半導体に付着したままの状態で、粘着フィルムから剥離することができる剥離性を有し、さらに、ダイボンディングする際において、チップを基板やリードフレームに接着固定するために、十分な接着信頼性を有するものである。
【0027】
接着剤層は、接着剤を予めフィルム化したものであり、例えば、接着剤に使用される公知のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、メラミン樹脂等やその混合物を使用することができる。また、チップやリードフレームに対する接着力を強化するために、シランカップリング剤もしくはチタンカップリング剤を添加剤として前記材料やその混合物に加えることが望ましい。
【0028】
接着剤層の厚さは特に制限されるものではないが、通常5〜100μm程度が好ましい。また、接着剤層は粘着フィルムの全面に積層してもよいが、予め貼り合わされるウエハに応じた形状に切断された(プリカットされた)接着フィルムを積層してもよい。ウエハに応じた接着フィルムを積層した場合、図6に示すように、ウエハWが貼り合わされる部分には接着剤層32があり、ダイシング用のリングフレームRが貼り合わされる部分には接着剤層32がなく粘着フィルムの円形ラベル部33aのみが存在する。一般に、接着剤層は被着体と剥離しにくいため、プリカットされた接着剤層を使用することで、リングフレームRは粘着フィルムに貼り合わすことができ、使用後のフィルム剥離時にリングフレームへの糊残りを生じにくいという効果が得られる。
【0029】
(粘着フィルム)
粘着フィルムは、ウエハをダイシングする際にはウエハが剥離しないように十分な粘着力を有し、ダイシング後にチップをピックアップする際には容易に接着剤層から剥離できるよう低い粘着力を有するものである。例えば、基材フィルムに粘着剤層を設けたものを好適に使用できる。
【0030】
粘着フィルムの基材フィルムとしては、従来公知のものであれば特に制限することなく使用することができるが、後述の粘着剤層として放射線硬化性の材料を使用する場合には、放射線透過性を有するものを使用することが好ましい。
【0031】
例えば、その材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合物、ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテンもしくはペンテン系共重合体、ポリアミド−ポリオール共重合体等の熱可塑性エラストマー、およびこれらの混合物を列挙することができる。また、基材フィルムはこれらの群から選ばれる2種以上の材料が混合されたものでもよく、これらが単層又は複層化されたものでもよい。基材フィルムの厚さは、特に限定されるものではなく、適宜に設定してよいが、50〜200μmが好ましい。
【0032】
粘着フィルムの粘着剤層に使用される樹脂としては、特に限定されるものではなく、粘着剤に使用される公知の塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。
【0033】
粘着剤層の樹脂には、アクリル系粘着剤、放射線重合性化合物、光重合開始剤、硬化剤等を適宜配合して粘着剤を調製することが好ましい。粘着剤層の厚さは特に限定されるものではなく適宜に設定してよいが、5〜30μmが好ましい。
【0034】
放射線重合性化合物を粘着剤層に配合して放射線硬化により接着剤層から剥離しやすくすることができる。その放射線重合性化合物は、例えば光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分量化合物が用いられる。
【0035】
具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートや、オリゴエステルアクリレート等が適用可能である。
【0036】
また、上記のようなアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナートなど)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られる。なお、粘着剤層には、上記の樹脂から選ばれる2種以上が混合されたものでもよい。
【0037】
光重合開始剤を使用する場合、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を使用することができる。これら光重合開始剤の配合量はアクリル系共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
【0038】
<第1実施形態>
図1に示すように、本実施形態に係る巻き芯10は、ウエハ加工用テープの巻き付け面側に、小径の緩和部11と、大径の支持部12とが形成されたダンベル型の巻き芯である。緩和部11は、ウエハ加工用テープの(接着剤層と、接着剤層を覆う粘着フィルムのラベル部とからなる)ダイシング・ダイボンディングフィルムの接着剤層に対応する位置に設けられ、支持部12は、緩和部11の外側に、粘着フィルムの周辺部33bを支持するように形成されている。また、巻き芯の回転中心に円筒状の空洞部13が形成されている。
【0039】
巻き芯の材料は、特に限定されるものではなく、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、鉄など、取り扱い容易さや、重量などの観点から選択することができる。
【0040】
(緩和部11)
緩和部11は、図1に示すように、巻き芯10の回転中心軸から支持部12より小径の円筒面により形成されている。そして、緩和部11の両端には、緩和部11と垂直な緩和部側部14が形成されている。従って、緩和部11と、緩和部11と比較して大径の支持部12とは、階段状になるように形成されている。緩和部11の深さ(d)は、1mm未満であると転写痕の抑止効果が得られず、40mmを超えるとウエハ加工用テープ30の巻取りが困難になるため、1mm以上40mm以下であることが好ましい。
【0041】
(支持部12)
支持部12は、巻き芯10の回転中心軸方向に対して、巻き芯の外側方向両方に形成され、緩和部11より大径の円筒面を外面とする。従って、支持部12を含む他の部材と別個独立の部材として設けることなく、巻き付け圧力を緩和する緩和部11を巻き芯10の形状のみによって形成することができる。支持部12の幅(d)は、1mm未満ではウエハ加工用テープ30の巻取りが困難になるため、1mm以上であることが好ましい。なお、緩和部11は、接着剤層32に対応して設けられており、半導体加工用テープ30の幅(図5におけるd)を考慮すると、必要以上に巻き芯10全体の大きさを大きくしないようにする観点から、35mmを超える必要はない。
【0042】
(空洞部13)
空洞部13は、円筒状の空洞部であって、巻き芯10の回転中心軸と中心軸を同じくする。そして、巻き取りローラあるいは送り出しローラに装着するために使用される。巻き芯10の回転中心軸から、空洞部13の曲面までの距離は、緩和部11までの距離よりも小さくなるように形成される。従って、空洞部13は、緩和部11及び支持部12の形状に影響を与えることがない。
【0043】
本実施形態に係る巻き芯10を用いてウエハ加工用テープ30を巻き付けた状態を図2に示す。巻き芯10の外側に形成された2つの支持部12により、ウエハ加工用テープを支持していることから、ウエハ加工用テープに対して所望の巻き取り圧をかける一方、接着剤に位置に対応する緩和部11により、ウエハ加工用テープ(接着剤層)に対して巻き芯を押し付けることがないことから、巻き付け圧力が軽減(緩和)される。この結果、接着剤層での転写痕の発生を十分に抑制することができる。
【0044】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る巻き芯20は、第1実施形態に係る巻き芯10の緩和部側部14を曲面としたものである。図3に、第2実施形態に係る巻き芯20の断面図を示す。巻き芯20は、ウエハ加工用テープの巻き付け面側に、小径の緩和部21と、大径の支持部22とが形成された変形ダンベル型の巻き芯である。緩和部21は、図3に示すように、巻き芯20の回転中心軸から支持部22より小径の円筒面である緩和部21と、緩和部21から連続的に湾曲する曲面である緩和部側部24とから形成されている。
【0045】
なお、緩和部21は、ウエハ加工用テープのダイシング・ダイボンディングフィルムの接着剤層に対応する位置に設けられ、支持部22は、緩和部21の外側に、粘着フィルムの周辺部33bを支持するように形成されている。また、巻き芯の回転中心に円筒状の空洞部23が形成されている。
【0046】
<<実施例>>
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。巻き芯に巻き付けられるウエハ加工用テープを以下のようにして作成した。まず、支持基材(基材フィルム)及び粘着剤組成物1を調整した後、支持基材上に粘着剤組成物1の乾燥後の厚さが20μmになるように前記粘着剤組成物を塗工し、110℃で3分間乾燥させて粘着フィルムを作成した。次いで、接着剤組成物1を調整し、接着剤組成物を離型処理したポリエチレン−テレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーに、乾燥後の厚さが20μmになるように前記接着剤組成物を塗工し、110℃で3分間乾燥させて剥離ライナー上に接着フィルムを作成した。そして、前記粘着フィルム及び前記接着フィルムを図4に示す形状に裁断した後、前記粘着フィルムの粘着剤層側に前記接着フィルムを貼り合わせて、ウエハ加工用テープ1を作成した。以下に、支持基材、粘着剤組成物1及び接着剤組成物1の調整方法を示す。
【0047】
(支持基材の調整)
市販の低密度ポリエチレンよりなる樹脂ビーズ(日本ポリエチレン(株)製 ノバテックLL)を140℃で溶融し、押し出し機を用いて厚さ100μmの長尺フィルム状に成形した。
【0048】
(粘着剤組成物の調整)
まず、放射線硬化性炭素−炭素二重結合および官能基を有する化合物(0)として、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよびメチルメタクリレートからなり、質量平均分子量70万、ガラス転移温度−64℃、放射線硬化性炭素−炭素二重結合量0.9meq/gを有する共重合体化合物を作製した。この化合物(0)100質量部に対して、硬化剤としてポリイソシアネート化合物コロネートL(日本ポリウレタン株式会社製、商品名)3質量部を加え、さらに光重合開始剤としてイルガキュア184(日本チバガイギー株式会社製、商品名)5質量部を加えることにより、放射線硬化性の粘着剤組成物1を得た。
【0049】
(接着剤組成物の調整)
<接着剤組成物>
エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量197、分子量1200、軟化点70℃)50重量部、シランカップリング剤としてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1.5質量部、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン3質量部、平均粒径16nmのシリカフィラー30質量部からなる組成物に、シクロヘキサノンを加えて攪拌混合し、更にビーズミルを用いて90分間混錬した。これにアクリル樹脂として化合物(1)の溶液を(1)が100重量部分だけ加え、硬化剤としてコロネートLを1質量部加え、攪拌混合して接着剤組成物1を得た。
【0050】
(ウエハ加工用テープ1)
支持基材、粘着剤組成物1、接着剤組成物1を用いて、前述した方法で支持基材、エネルギー線硬化型粘着剤層、接着フィルムがこの順に積層されたウエハ加工用テープ1を作成した。作成したウエハ加工用テープ1の形状は、図5に示すように、テープ幅(d)が290mm、接着剤層の直径(d)が220mm、ラベル部の直径が270mm、さらに、ウエハ加工用テープの中心線上に、接着剤層及びラベル部の中心が重なるように形成した。
【0051】
(巻き芯)
図1及び図3に示すように、支持部の幅(d,d’)と、支持部の直径(d,d’)と、空洞部の直径(d,d’)と、巻き芯長手方向の長さを一定にして、支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d,d’)を変化させたダンベル型巻き芯(実施例1〜5)と変形ダンベル型巻き芯(実施例6〜10)を、ABS樹脂により、以下の形状に作成した。
【0052】
(実施例1)
支持部の直径(d)を148mm、支持部の幅(d)を30mm、支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d)を1.0mm、空洞部の直径(d)を76.2mm、巻き芯長手方向の長さを290mm、さらに、支持部と緩和部と空洞部の中心を巻き芯回転中心と一致させるダンベル型巻き芯を実施例1として作成した。
【0053】
(実施例2)
支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d)を5.0mmとする以外、実施例1のダンベル型巻き芯と同様に作成したダンベル型巻き芯を実施例2として作成した。
【0054】
(実施例3)
支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d)を15.0mmとする以外、実施例1及び2のダンベル型巻き芯と同様に作成したダンベル型巻き芯を実施例3として作成した。
【0055】
(実施例4)
支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d)を30.0mmとする以外、実施例1〜3のダンベル型巻き芯と同様に作成したダンベル型巻き芯を実施例4として作成した。
【0056】
(実施例5)
支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d)を40.0mmとする以外、実施例1〜4のダンベル型巻き芯と同様に作成したダンベル型巻き芯を実施例5として作成した。
【0057】
(実施例6)
緩和部側部を湾曲する曲面として、支持部の直径(d’)を148mm、支持部の幅(d’)を30mm、支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d’)を1.0mm、空洞部の直径(d’)を76.2mm、巻き芯長手方向の長さを290mm、さらに、支持部と緩和部と空洞部の中心を巻き芯回転中心と一致させる変形ダンベル型巻き芯を実施例6として作成した。
【0058】
(実施例7)
支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d’)を5.0mmとする以外、実施例6のダンベル型巻き芯と同様に作成したダンベル型巻き芯を実施例7として作成した。
【0059】
(実施例8)
支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d’)を15.0mmとする以外、実施例6及び7のダンベル型巻き芯と同様に作成したダンベル型巻き芯を実施例8として作成した。
【0060】
(実施例9)
支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d’)を30.0mmとする以外、実施例6〜8のダンベル型巻き芯と同様に作成したダンベル型巻き芯を実施例9として作成した。
【0061】
(実施例10)
支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d’)を40.0mmとする以外、実施例6〜9のダンベル型巻き芯と同様に作成したダンベル型巻き芯を実施例10として作成した。
【0062】
(比較例1)
支持部の直径(d)を148mm、支持部の幅(d)を30mm、支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d)を0.8mm、空洞部の直径(d)を76.2mm、巻き芯長手方向の長さを290mmとし、ABS樹脂製により、支持部と緩和部と空洞部の中心を巻き芯回転中心と一致させるダンベル型巻き芯を比較例1として作成した。
【0063】
(比較例2)
また、緩和部側部を湾曲する曲面として、支持部の直径(d’)を148mm、支持部の幅(d’)を30mm、支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d’)を0.8mm、空洞部の直径(d’)を76.2mm、巻き芯長手方向の長さを290mm、さらに、支持部と緩和部と空洞部の中心を巻き芯回転中心と一致させる変形ダンベル型巻き芯を比較例2として作成した。
【0064】
以下に示す評価方法により、転写痕の抑制性を評価した。
(転写痕の抑制性の評価方法)
実施例1〜5のダンベル型巻き芯と、実施例6〜10の変形ダンベル型巻き芯と、比較例1のダンベル型巻き芯と、比較例2の変形ダンベル型巻き芯とを用いて、290mm幅のウエハ加工用テープ1〜3を、15Nの一定張力で300枚を巻き取り、ロール体を作成した。そして、ロール体を、14日間、5℃の環境下で冷蔵保管した。その後、目視観察により、シワの有無を判定した。
【0065】
表1に評価結果を示す。表中、○はシワの発生は無かったことを、×はシワの発生があったことを、△はシワがうっすらあっても、ウエハ接合時にエアを巻き込むほどのシワではなかったことを示す。
【0066】
【表1】

【0067】
支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d,d’)が1.0mm未満のダンベル型巻き芯の比較例1と変形ダンベル型巻き芯の比較例2では、シワの発生を確認した。さらに、支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d,d’)が1.0mm以上で5.0mm未満のダンベル型巻き芯の実施例1〜2と変形ダンベル型巻き芯の実施例6〜7とでは、うっすらではあったがシワを確認したが、ウエハ接合時にエアを巻き込むほどのシワではなかった。一方、支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d,d’)が15.0mm以上のダンベル型巻き芯の実施例3〜5と、変形ダンベル型巻き芯の実施例8〜10とでは、シワの発生を確認できなかった。従って、支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d,d’)が1.0mm未満の場合、転写痕の発生抑制の効果はないことが確認された。一方、本実施形態に係るダンベル型巻き芯及び変形ダンベル型巻き芯いずれにおいても、40mmを超えた場合、ウエハ加工用テープの巻き取りが困難となった。
【0068】
また、支持部幅(d,d’)が1.0mm未満の場合、ウエハ加工用テープの巻き取りが困難となった。
【0069】
以上より、本実施形態に係るウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯によれば、支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ(d,d’)を所定の値にすることにより、ウエハ加工用テープをロール状に巻き取った場合に、接着剤層での転写痕の発生を十分に抑制することができた。
【符号の説明】
【0070】
10,50:巻き芯
11,21:緩和部
12,22:支持部
13,23,53:空洞部
14,24:緩和部側部
30:ウエハ加工用テープ
31:離型フィルム
32:接着剤層
33:粘着フィルム
33a:円形ラベル部
33b:周辺部
40:ダイシング・ダイボンディングフィルム
,d’:支持部幅
,d’:支持部表面から緩和部表面までの緩和部の深さ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型フィルムと、前記離型フィルムの表面上に設けられた所定の平面形状を有する接着剤層と、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層の周囲で前記離型フィルムに接触するように設けられた所定の平面形状を有するラベル部と、前記ラベル部の外側を囲むように設けられた周辺部とを有する粘着フィルムとを含むウエハ加工用テープをロール状に巻き付ける巻き芯であって、
少なくとも前記接着剤層に対応する位置に形成され、巻き付け圧力を緩和する緩和部と、
巻き付けられるウエハ加工用テープの幅方向で、かつ、前記緩和部の外側に形成され、ウエハ加工用テープを支持する支持部とを有する、
ことを特徴とする巻き芯。
【請求項2】
前記緩和部および前記支持部は、円筒形状を有しており、
前記緩和部は前記支持部を大径とすることにより形成されることを特徴とする請求項1記載の巻き芯。
【請求項3】
前記緩和部は前記支持部と曲面により接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の巻き芯。
【請求項4】
巻き取りローラあるいは送り出しローラに装着するための円筒状の空洞部が回転中心に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の巻き芯。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の巻き芯に巻き付けられたウエハ加工用テープ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−163577(P2010−163577A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9030(P2009−9030)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】