説明

巻取の端面検査装置

【課題】 ワインダー工程で形成された巻取の端面の良否を機械的に検査し、迅速な検査を図り、作業者の熟練に負うことがない巻取の端面検査装置を提供する。
【解決手段】 ワインダー工程で形成された巻取Rを次工程へ搬送する搬送路Tを挟んで照明手段21とラインレーザー装置31とを有する投光機器2f、2b及び撮影手段4f、4bを一対ずつ配設し、投光機器2fと撮影手段4fとで搬送路Tを搬送される巻取Rの前側の端面Fの検査を、投光機器2bと撮影手段4bとで巻取Rの後側の端面Bの検査をそれぞれ行わせる。検査は端面Fを検査した後に搬送路Tを移動させて端面Bの検査を行う。検査はこれら端面F、Bの画像を撮影手段4f、4bで取得し、該画像に対してグレースケール処理を施して、欠陥となる対象物11、12、13の存否を確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長尺の帯状物が巻き取られて形成された巻取の端面の状態を検査する装置であって、特に紙の巻取についてその搬送路上で端面の検査を行えるようにした巻取の端面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工場においては、紙は抄紙機で巻取として製造されるが、製造された巻取は幅員が大きく、生産性の向上のためますます大きくなる傾向がある。他方、新聞社や印刷会社、包装資材会社等の需要者では、広幅で大きな径の巻取を扱う機械装置を所有しておらず、製紙工場としても出荷の際には広幅な巻取は扱いにくく、輸送の際にも支障が生じるおそれがある。このため、製紙工場では、抄紙機で製造された巻取を需要者が所有する印刷機等の機械能力に応じて、適当な幅員及び径の小巻取に加工したり、所定の寸法の平判紙に裁断したりして出荷している。前記巻取を小幅の小巻取に加工するためには、巻取をワインダー装置に供して巻き解きながらスリッターナイフで切断する。
【0003】
このとき、スリッターナイフの刃の切れ味が低下した場合には、紙の繊維の切断が不完全となって引きちぎられて、切り口不良による毛羽立ちが発生する場合がある。切り口不良が発生すると美観を損なうと共に、裁断面に紙粉が付着し、この紙粉が印刷に影響したり、プリンター等の出力機器中に溜まったりして、機器の故障の原因となるおそれがある。
【0004】
紙等の帯状物を巻き取るワインダー工程では、該帯状物の製造装置で製造された帯状物を芯材に巻き取ることによって巻取を形成する。このとき、帯状物は走行しながら巻き取られるため、走行時の蛇行により巻取の端面が一定に揃わず、端面に凹凸が形成されてしまう場合がある。あるいは、部分的な坪量の変動により紙幅の変化が生じて、端面に凹凸が形成されてしまう場合がある。
【0005】
また、ワインダーで適当な幅員及び径の小巻取に加工するときに、穴や異物付着等の欠陥処理する際、加減速し運転、停止を行っている。この加減速時の張力変動に伴う紙の蛇行によっても巻取端面の凹凸が発生する。
【0006】
さらに、ワインダー装置で加工された小巻取をコンベヤにて搬送する際や、ワインダー装置により加工された複数本に分割された小巻取を同時に前記コンベヤに払い出してストッパへ到達する際において、小巻取が斜めに転がって小巻取同士が擦れて端面に汚れが生じる場合がある。
【0007】
巻取を製品として出荷する際に、端面に発生した凹凸の凹み幅が所定の寸法内に収まっていない場合や端面に切り口不良が発生している場合、汚れが生じている場合には、印刷、裁断するなどの当該巻取を加工する工程で不具合が生じてしまうから、当該巻取は製品として不適なものとなってしまう。このため、巻取の端面の凹凸や切り口不良、汚れの有無等の不具合を管理することは、巻取等の帯状物製造、加工工程において重要な検査項目となっている。
【0008】
従来、巻取の端面の凹凸の計測や毛羽立ちの有無の検査等は目視や物差しなどを用いた手作業によって行われていたが、測定にバラツキが生じたり、測定者の熟練等に依ったりするところがあって検査の精度が一定でないおそれがあった。しかも、抄紙機の進歩や高速化などによりワインダー工程における処理速度が上昇し、目視や手作業では追随できなくなった。他方、印刷輪転機の高速化や印刷仕様の複雑化などによって、巻取の品質に対する要求が厳しくなる傾向にある。このため、全ての巻取について迅速な検査の実施が必要となった。
【0009】
巻取の端面に対する検査を迅速に行うべく、本件出願人は、巻取ロール鏡面の凹凸測定装置(特許文献1参照。)や、紙の裁断面の品質を検査する方法(特許文献2参照。)等を提案した。
【0010】
特許文献1には、巻取ロールの鏡面の凹凸を非接触にて計測する巻取ロール鏡面の凹凸測定装置において、計測すべき鏡面から適宜距離を隔てて、該鏡面とほぼ平行な方向を長手方向として延設したガイド手段と、上記鏡面の直径方向に沿って摺動自在に上記ガイド手段に案内支持された測距手段とからなり、上記測距手段を上記ガイド手段に案内させて前記巻取ロールの直径方向とほぼ平行な方向に走査しながら、上記鏡面までの距離を測定して該鏡面の凹凸を計測する巻取ロール鏡面の凹凸測定装置が、提案されている。
【0011】
また、特許文献2には、一定寸法に裁断され裁断面を揃えて山積みされた紙山の裁断面の品質を検査する方法であって、紙山の側面に対して山積み方向とほぼ垂直で且つ紙山の側面に対して斜め方向から照明光線を入射し、前記紙山の側面に対してほぼ垂直な方向からCCDカメラで紙山の側面を撮影し、得られた画像データを数値データに変換し、画像処理により、毛羽立ち部分と想定される濃度数値の大きい部分と、毛羽立ちの陰の部分と想定される濃度数値の小さい部分を抽出し、抽出した画素数と画像全体の画素数との比率から、紙の裁断面の品質のランク付けを行うようにした紙山の裁断面の品質を検査する方法が、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−304050号公報
【特許文献2】特開2001−228142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に開示された凹凸測定装置では、走査装置を昇降させると共に、走査装置に沿って測距装置を移動させながら、該測距装置から鏡面までの距離を測定し、この距離の変化から凹凸を検出するものである。このため、測定時間が長くなってしまい、ワインダー工程での処理速度の上昇に十分に追随できないおそれがある。
【0014】
また、特許文献2に開示された紙の裁断面の品質を検査する方法では、所定の寸法に裁断された平判紙が山積みされた紙山の裁断面である側面をCCDカメラで撮影し、その撮像を画像処理して裁断面の良否の判定を行うようにしたものである。平判紙の紙山を形成する際のレイボーイにより側面が揃えられた状態となるため、側面に凹凸が形成されることがない。このため、平判紙の紙山では毛羽立ちの状態を検査して当該紙山の良否の判定を行うのみである。
【0015】
そこで、この発明は、巻取の端面の状態を極力迅速に検査して、該巻取の良否の判定を迅速に行えるようにした巻取の端面検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る巻取の端面検査装置は、ワインダー工程で形成された巻取の端面の状態を検査する巻取の端面検査装置において、前記巻取の搬送路の近傍に、該搬送路を搬送される巻取の端面に臨ませた照明手段と、前記照明手段により照明された前記端面を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により取得された端面画像により端面の状態を検査する画像解析処理装置とを備えていることを特徴としている。
【0017】
前記搬送路中を搬送されている巻取の端面の検査を行えるようにしたものである。前記撮影手段により端面の画像を捕捉し、該画像に基づいて前記画像解析処理装置で端面の検査を行うようにしたものである。
【0018】
また、請求項2の発明に係る巻取の端面検査装置は、前記照明手段と撮影手段とを前記搬送路の近傍に一対ずつ配設し、一方の対の照明手段と撮影手段とで巻取の一方の端面の検査に供し、他方の対の照明手段と撮影手段とで巻取の他方の端面の検査に供することを特徴としている。
【0019】
巻取の端面の前側と後側のそれぞれの画像を個別に取得できるよう、照明手段と撮影手段とを、前側端面用と後側端面用のそれぞれに配設したものである。
【0020】
また、請求項3の発明に係る巻取の端面検査装置は、前記巻取の端面に臨ませてラインレーザー装置を設け、前記ラインレーザー装置からラインレーザーを照射し、該ラインレーザーの投影像を前記撮影手段により撮影し、この撮像を前記画像解析処理装置に供して端面の凹凸を検査することを特徴としている。
【0021】
ラインレーザーは物体の表面に直線等をほぼ正確に照射することができるため、この直線の画像から端面の凹凸を検査するようにしたものである。
【発明の効果】
【0022】
この発明に係る巻取の端面検査装置によれば、ワインダー工程で形成された巻取を、次工程である巻取包装工程等へ搬送する搬送路の途中において、端面の検査を行うことができるから、全ての巻取について検査を行う場合でも、ワインダー工程の処理速度の上昇に追随することができ、巻取の生産効率の向上に貢献する。
【0023】
また、請求項2の発明に係る巻取の端面検査装置によれば、巻取の両方の端面について迅速な検査を行うことができる。
【0024】
また、請求項3の発明に係る巻取の端面検査装置によれば、平面であれば直線として現れるラインレーザーの投影像を画像処理によって該直線に対する変化を測定するから、端面に形成された凹凸を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明に係る巻取の端面検査装置の構成を説明する概略の平面図である。
【図2】この発明に係る巻取の端面検査装置の、巻取と撮影手段とラインレーザー装置との関係を示す概略の斜視図である。
【図3】巻取と撮影手段及び照明手段との位置関係を説明する図である。
【図4】巻取と撮影手段及びラインレーザー装置との位置関係を説明する図である。
【図5】画像解析処理装置と、撮影手段とラインレーザー装置、照明手段21との関係を説明する概略のブロック図である。
【図6】この発明に係る巻取の端面検査装置による検査を実施する手順を説明するフローチャートである。
【図7】端面に生じる凹凸の検査を行うための画像である。
【図8】図7に示す画像の一部を拡大して示す画像である。
【図9】図7に示す端面に生じた凹凸を、画像解析処理装置によって処理した画像を示すもので、二値化後を示す画像である
【図10】端面に生じる凹みの量を検査するためにラインレーザーを照射した状態を示す画像であり、芯材の部分の画像を併せて示している。
【図11】端面に生じる切り口不良の画像を示す芯材の周辺を拡大して示す画像である。
【図12】切り口不良を解析するブロブ解析に係る画像である。
【図13】端面に生じる切り口不良の検査を行うための画像であって、拡大して示している。
【図14】切り口不良を解析するブロブ解析に係る画像である。
【図15】端面に生じる汚れの検査を行うための画像であって、拡大して示している。
【図16】図15に示す端面に生じた汚れを、画像解析処理装置によって処理した画像を示すもので、二値化前後を示す画像である
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る巻取の端面検査装置を具体的に説明する。
【0027】
図1は、この発明に係る端面検査装置1を巻取Rの搬送路Tの近傍に配置した状態の概略の平面図である。搬送路Tは、例えばスラットコンベヤ等によるコンベヤにより形成されており、図上矢標Qで示す方向に巻取Rを搬送するようにしてあり、巻取Rは軸方向が搬送方向と一致する状態で搬送されるようにしてある。したがって、該巻取Rは、端面F、Bが搬送方向の前後を指向した状態で搬送路T上を搬送される。なお、端面検査装置1のうちの端面Fについて検査するものを端面検査装置1fとし端面Bについて検査するものを端面検査装置1bで示してある。
【0028】
搬送路Tを挟んで一方の側には照明手段21とラインレーザー装置31とを備えた一対の投光機器2f、2bが配設され、他方の側には一対の撮影手段4f、4bが配設されている。前記投光機器2fと撮影手段4fとは搬送路T上を搬送される巻取Rが前端面測定位置Pfに位置した際に、前側の端面Fを臨むように配されており、前記投光機器2bと撮影手段4bとは同じく巻取Rが後端面測定位置Pbに位置した際に、後側の端面Bを臨むように配されている。
【0029】
図2は、前記撮影手段4f、4bとラインレーザー装置31との関係を示している概略の斜視図である。前記撮影手段4f、4bは巻取Rの端面の全域を撮影範囲としてあり、この範囲における画像を取得できるものとしてある。また、前記ラインレーザー装置31から照射されるラインレーザーLは、鉛直方向に沿った直線であって巻取Rのほぼ中心を通過するようにしてある。
【0030】
また、図3に示すように、前記撮影手段4f、4bの光軸4fo、4boは端面F、Bに対する角度がほぼ60度となるように設置され、前記照明手段21の21o光軸は、巻取Rの中心軸を対称軸として、前記撮影手段4f、4bの光軸4fo、4boと対称となるようにしてある。すなわち、照明手段21の光軸21oも端面F、Bに対する角度がほぼ60度であり、巻取Rの中心軸を挟んで撮影手段4f、4bと反対側に配されている。
【0031】
また、図4に示すように、前記ラインレーザー装置31の光軸31oは、端面F、Bに対してほぼ30度の角度となるようにしてある。
【0032】
前記照明手段21やラインレーザー装置31、撮影手段4f、4bはこれらの動作の制御や取得された撮像等の情報の処理を行う画像解析処理装置としての管理装置5に接続されている。この管理装置5と撮影手段4、ラインレーザー装置31、照明手段21との関係のブロック図を図5に示してある。端面検査装置1f、1bの撮影手段4f、4bは、前記管理装置5とLAN(Local Area Network)により接続されている。
【0033】
前記管理装置5には、画像解析処理を担当する操作監視用パソコン51と画像解析表示パソコン52とが含まれている。これらそれぞれのパソコンにはキーボードやマウス等の入力装置とモニター装置による表示装置51a、52aが接続されている。前記操作監視用パソコン51にはPLC(Programmable Logic Controller)シーケンス装置53が接続されている。
【0034】
前記PLCシーケンス装置53は、前記搬送路Tを形成する巻取搬送装置54に対し、検査に係る一連の動作信号、製品情報等の巻取データ55を取り合っている。また、PLCシーケンス装置53には警報装置56が接続されており、検査対象である巻取Rの端面F、Bに不良がある場合には、警報の吹鳴と、警告灯等の点灯や点滅によって作業者に不良品の存在を知らしめるようにしてある。
【0035】
以上により構成されたこの発明に係る巻取の端面検査装置の作用を、図6に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
【0036】
アプリケーションソフトを起動させて、この端面検査装置1による検査を行える状態とする(ステップ601)。次いで、測定時の登録設定を行う(ステップ602)。これは、端面F、Bの測定に供される巻取Rの径や長さ等の寸法、良否の判定の基準となるしきい値等のデータを登録するものである。この状態で検査の準備が完了する。
【0037】
前記搬送路Tを、ワインダー工程で形成された巻取Rが搬送され、前側の端面Fが前端面測定位置Pfに位置したならば、前記ラインレーザー装置31を作動させてラインレーザーを、巻取Rの端面Fに対する測定位置に照射し(ステップ603)、前記照明手段21を作動させて端面Fが照明されるようにしてある(ステップ604)。次いで、撮影手段4fにより端面Fの画像を取得し(ステップ605)、取得された画像を画像データのファイル形式のうちのTIFファイルとして取得する(ステップ606)。このTIFデータに対してROI(Region of Interest)処理範囲が設定される(ステップ607)。なお、この処理範囲は、ステップ602で登録設定された情報に基づいているものである。すなわち、端面Fの画像のデータ分析を行うに際して、全体を像として見るのではなく、限られた領域単位で分析されるようにしてある。
【0038】
次いで、GAIN処理を行って画像の輝度の補正を行うと共に(ステップ608)、光学系や撮像系の特性による輝度ムラに対して一様な明るさの画像になるよう補正するためのシェーディング処理を行って画像の輝度ムラを補正する(ステップ609)。次いで、エッジフィルター処理を行って画像中の検査に係る対象物の輪郭を明確にする(ステップ610)。また、画像を適宜数の領域に分割し、各領域ごとに濃度ヒストグラムを調べ、当該領域にエッジが含まれていると判断された場合は、その領域の性質に最も適したしきい値を設定する、エッジ処理または動的しきい値処理を行う(ステップ611)。
【0039】
動的しきい値処理(ステップ611)が完了したならば、画像データの二値化を行ってグレースケール処理を行う(ステップ612)。次いで、クロージング処理(ブロブ検出)を行い(ステップ613)、二値化された白黒画像に対して膨張・収縮処理を行うことによって、画像をより鮮明にする。すなわち、注目画素の周辺に1画素でも白い画素があれば白に置き換える膨張(Dilation)処理を行い、周辺に1画素でも黒い画素があれば黒に置き換える収縮(Erosion)処理を行って、画像の濃淡検査に供する。次に、画素をさらに細分化するサブピクセル処理(寸法測定)が行われる(ステップ614)。すなわち、対象物の境界や位置を求めるとき、それらの検出・計測精度は、二値化処理後の画像では1画素となるが、対象物の境界近傍の輝度勾配を利用することにより1画素以下と高くすることができる。例えば、対象物の寸法計測では、境界近傍の輝度勾配を微分することによって境界を高精度に求めることができるものである。
【0040】
そして、ステップ606からステップ614までに行われた画像処理によって取得された抽出物、いわゆるブロブの面積比率、長さ、幅、グレースケール値等の特徴量の設定を行うブロブの判定が行われる(ステップ615)。この判定を基に、巻取Rの端面Fの良否について判定し、その結果を前記表示装置52aに表示し(ステップ616)、取得されたデータと画像とを実績として保存する(ステップ617)。
【0041】
次いで、巻取Rを搬送路Tで搬送して、端面Bを後端面測定位置Pbに位置させて、前記ステップ603からステップ617までの手順を実行することによって、後側の端面Bの良否を判定する。
【0042】
次に、前記フローチャートの手順によって巻取Rの端面についての良否判定を具体的に説明する。
【0043】
図7は、前記撮影手段4で取得した巻取Rの端面の表示装置51aに表示された画像であり(ステップ605)、例えば図8に認められるように、周方向に沿った凹みが形成されている。この取得された画像のグレースケール処理(二値化処理)を行ったものを図9に示してあり、グレースケール処理(二値化処理)の前の状態を併せて示してある。このグレースケール処理後の画像について、巻取Rの周方向に沿って全周に渡って検査の対象物が存している場合には、該対象物が凹みであると判定する(ステップ615)。
【0044】
また、図10はラインレーザーLが照射された状態(ステップ603)を示しており、この画像に対してグレースケール処理を行う(ステップ612)。また、光切断法によりラインレーザーLの輝線形状から断面形状を抽出し、断面形状で凹み部分の量を計測する(ステップ614)。この断面形状に現れた段差が凹凸を形成している部分であり、この軸方向の座標を算出する。この軸座標と図9に認められた対象物の凹み幅の軸座標とが近接している部分を抽出する。そして、凹み量と凹み幅とを予め登録設定された設定値(ステップ602)と比較して、設定値を越える場合には欠陥としての凹凸が存在していると判定されることになる。
【0045】
図11は巻取Rの端面に切り口不良が形成された状態を示す画像である。この画像からグレースケール処理(ステップ612)によって得られた二値化画像を図12に示してある。この二値化画像を基に対象物である切り口不良の形状を解析する。切り口不良は円周上の全周に渡っていない場合が殆どであるため、対象物である切り口不良は幅と長さで判別し、判別された凸の幅方向の最大値幅と長さを記録する。この凸の幅が設定された設定値(ステップ602)を越える場合には該切り口不良は欠陥として判定されることになる。
【0046】
なお、前記ラインレーザーLによって切り口不良を計測可能な場合には、該ラインレーザーLの照射から得られる断面形状で凸部分の量を計測する方法を併用することも可能である。
【0047】
図13は巻取Rの端面に切り口不良が形成された状態を示す画像である。この画像からグレースケール処理(ステップ612)によって得られた二値化画像を図14に示してある。この二値化画像を基に対象物として切り口不良の形状を解析する。円周上の全周に渡っている対象物を切り口不良と判別し、判別された切り口不良の幅方向の最大値を幅として記録する。この記録された幅が設定された設定値(ステップ602)を越える場合には該切り口不良は欠陥として判定されることになる。
【0048】
なお、対象物が、切り口不良であるか凹みであるかは、凹み量の有無によって判別する。また、前記ラインレーザーLによって切り口不良を計測可能な場合には、該ラインレーザーLの照射から得られる断面形状で凹凸部分の量の変化を計測する方法を併用することも可能である。
【0049】
図15は巻取Rの端面に汚れが生じた状態を示す芯材の近傍の画像である。この画像がグレースケール処理(ステップ612)によって得られた二値化画像を図16に示してある。この二値化画像を基に対象物である汚れの形状・範囲を解析する。この範囲が設定された設定値(ステップ602)を越える場合には、該汚れは欠陥として判定されることになる。
【0050】
以上説明した、凹凸や切り口不良等の対象物が欠陥か否かは、紙の銘柄や坪量等の紙質に応じて基準が異なる場合があり、これを登録設定(ステップ602)の際に、しきい値として設定する。例えば、凹凸の設定値としては、幅:最小0.1mm、最大3mm 長さ:最小100mm、最大4000mm、凹み深さ:最小0.3mm、最大5mmとする。また、切り口不良の設定値としては、幅:最小5mm、最大200mm、長さ:最小60mm、最大4000mmとする。また、汚れの設定値としては、幅:最小1mm、最大1500mm、長さ:最小1mm、最大4000mm、面積比率:3割以上とする。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明に係る巻取の端面検査装置によれば、ワインダー工程から次工程へ搬送路中で巻取の端面の検査を、撮影手段によって取得された端面の画像によって行うことにより、作業者の熟練等に負うことなく迅速な検査を行えるので、ワインダー工程で加工する巻取の生産の効率化を向上させる。
【符号の説明】
【0052】
R 巻取
F 前側の端面
B 後側の端面
L ラインレーザー
T 搬送路
Q 搬送方向
Pf 前端面測定位置
Pb 後端面測定位置
1f、1b 端面検査装置
2f、2b 投光機器
21 照明手段
4f、4b 撮影手段
31 ラインレーザー装置
5 管理装置
51 操作監視用パソコン
52 画像解析表示用パソコン
51a、52a 表示装置
53 PCLシーケンス装置
54 巻取搬送装置
55 巻取データ
56 警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワインダー工程で形成された巻取の端面の状態を検査する巻取の端面検査装置において、
前記巻取の搬送路の近傍に、該搬送路を搬送される巻取の端面に臨ませた照明手段と、
前記照明手段により照明された前記端面を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により取得された端面画像により端面の状態を検査する画像解析処理装置とを備えていることを特徴とする巻取の端面検査装置。
【請求項2】
前記照明手段と撮影手段とを前記搬送路の近傍に一対ずつ配設し、
一方の対の照明手段と撮影手段とで巻取の一方の端面の検査に供し、
他方の対の照明手段と撮影手段とで巻取の他方の端面の検査に供することを特徴とする巻取の端面検査装置。
【請求項3】
前記巻取の端面に臨ませてラインレーザー装置を設け、
前記ラインレーザー装置からラインレーザーを照射し、
該ラインレーザーの投影像を前記撮影手段により撮影し、この撮像を前記画像解析処理装置に供して端面の凹凸を検査することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻取の端面検査装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−44526(P2013−44526A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180068(P2011−180068)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】