説明

巻回型電池およびその製造方法

【課題】 電池の体積効率を向上でき、かつ製造コストを削減できる巻回型電池を提供する。
【解決手段】 巻回型電池10は、集電体の両面に正極活物質層が形成された帯状の正極1と集電体の両面に負極活物質層が形成された帯状の負極5とがセパレータ3を介して、内周側のセパレータ3の一端と正極1の一端とがほぼ同じ位置から巻回されてなる。すなわち、電極よりも延出された不要なセパレータが巻回された部分が存在しない、従来よりも簡素化された構造をとる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、正極と負極とがセパレータを介して巻回されてなる巻回型電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機器や携帯型ゲーム機器などの電子機器は、小型化、高性能化が進んでおり、これに伴い電源として用いられる電池の高エネルギー密度化、高容量化が求められている。リチウムイオン二次電池は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池、ニッケルカドミウム(Ni−Cd)電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため、特に有望である。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、円筒形、角型など用途に合わせて種々の形状を作製することが可能であり、いずれも帯状に形成された正極部材と、負極部材及びセパレータとを交互に重ね合わせた積層電極体を巻芯に巻き付ける、いわゆる巻回方式によって作製される。
【0004】
図9は、従来の巻回型電池の構造を表した模式図である。図9に示すように、巻回型電池110は、集電体の両面に正極活物質層が形成されてなる帯状の正極101と、集電体の両面に負極活物質層が形成されてなる帯状の負極105とが、セパレータ103を介して多数回数巻回されてなる。正極101の両面には、ゲル電解質層102が形成されている。負極105の両面には、ゲル電解質層104が形成されている。正極101の一端には、正極タブ106が接合され、負極105の一端には、負極タブ107が接合される。
【0005】
図9において、参照符号108a〜108fは、絶縁性を備えた被覆剤(以下、保護テープと適宜称する)である。電池の内部ショートの発生を低減するため、正極101の端部に接合された正極タブ106を被覆する保護テープ108aが貼着され、対向する部分の負極105を覆うように保護テープ108b、保護テープ108fが貼着される。また、負極105の端部のゲル電解質層104から露出する部分を被覆する保護テープ108cが貼着され、対向する部分の正極101を覆うように保護テープ108d、保護テープ108eが貼着される。
【0006】
図10は、従来の巻回型電池の正極および負極を引き延ばした状態の一部拡大断面図である。図10に示すように、負極111は、負極集電体115の両面に負極活物質層114が積層されてなる。内部ショートの発生を防止するため、負極111と正極112とを分け隔てるためのセパレータ113を備える。
【0007】
図10に示すように、正極112は、正極集電体116の両面に正極活物質層117が積層されてなる。正極集電体116の一端には、正極タブ119が例えばスポット溶接などにより接合されて、設けられる。正極タブ119は、厚みを有し、特に内部ショート発生の要因となるおそれがあるので、保護テープ120によって被覆される。
【0008】
図11は、従来の巻回型電池の製造方法を説明するための図である。図11に示すように、この巻回装置は、原反R121と、原反R121から導出される正極121、セパレータS121、負極122およびセパレータS122とから構成される。原反R121には、正極121、セパレータS121、負極122、セパレータS122がそれぞれ巻き取られている。ゲル電解質電池の場合は、例えば、予めゲル電解質が塗布された正極および負極を巻き取ったものが使用される。
【0009】
巻回型電池110は、原反R121から導出されるセパレータS121およびセパレータS122を例えば巻き芯123に予め巻き付け、正極121と負極122とを入れて、その後巻芯123で所定回数巻回することにより、作製される。下記の特許文献1には、従来の巻回型電池の製造方法が記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開平10−321220号公報
【0011】
予め巻き芯123に巻き付けたセパレータS121およびセパレータS122は、図10において、LaおよびLbで示される。LaおよびLbは、負極活物質層114より延出された部分であり、セパレータとして機能する必要のない部分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、従来の巻回型電池は、不要なセパレータが存在していたため、電池の体積効率を下げていた。また、セパレータは、非常に高価なものであり、従来は、このように不要なセパレータ部分LaおよびLbが配置される構造であったので、電池の製造コストが高くなっていた。
【0013】
したがって、この発明の目的は、電池の体積効率を向上でき、かつ製造コストを削減できる巻回型電池およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、この発明は、
帯状集電体の両面に正極活物質層が形成されてなる正極と、
帯状集電体の両面に負極活物質層が形成されてなる負極と、
正極と負極との間に介在された電解質およびセパレータとを備え、
正極と負極とがセパレータを介して巻回されてなる巻回型電池であって、
巻回型電池の内周側のセパレータの一端と正極の一端とが、またはセパレータの一端と負極の一端とがほぼ同じ位置から巻回されてなることを特徴とする巻回型電池である。
【0015】
この発明は、
正極および負極の両面にゲル電解質層を形成し、
正極および負極の少なくとも一方のゲル電解質層上にセパレータを載置し、巻回することを特徴とする巻回型電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、巻回型電池の内周側のセパレータの一端と正極の一端とが、またはセパレータの一端と負極の一端とが、ほぼ同じ位置から巻回されてなることを特徴とする巻回型電池であるので、電池の体積効率を向上でき、かつ製造コストを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、この発明の一実施形態の巻回型電池を模式的に表した斜視図である。この巻回型電池は、電解質がゲル電解質の巻回型電池を表している。図1に示すように、巻回型電池10は、負極41と正極42とがセパレータ43を介して積層され、巻回されている。
【0019】
巻回型電池10は、絶縁材料からなる外装フィルムにより覆われて密閉されている。負極41および正極42の両面には、ゲル電解質層46が形成されている。正極42の両面のゲル電解質層46上には、セパレータ43が載置され重ね着けられている。タブ45は、帯状の負極41および正極42のそれぞれの一端部に接合されている。
【0020】
タブ45の接合は、例えばスポット溶接により行う。タブ45の接合は、巻回後に限定されるものでなく、巻回前に行ってもよい。タブ45は、図示を略した外装フィルムの周縁部である封口部に挟み込まれる。また、タブ45が外装フィルムと接する部分には、樹脂フィルムが配されている。
【0021】
図2は、この発明の一実施形態の巻回型電池の構造を表した模式図である。図2に示すように、巻回型電池10は、内周側のセパレータ3の一端と正極1の一端とがほぼ同じ位置となるように、正極1と負極5とがセパレータ3を介して多数回数巻回されてなる。なお、内周側のセパレータ3の一端と正極1の一端とがほぼ同じ位置にあるとは、内周側のセパレータ3の一端が正極活物質層の一端から正極の一端との間に位置することをいう。
【0022】
正極1は、例えば、帯状の形状を有する正極集電体と、この正極集電体の両面に形成された正極活物質層とからなる。正極集電体の両面に設けられた正極活物質層の長さはそれぞれ異なる。具体的には、体積効率の向上のため、正極1の最外周には、正極活物質層が設けられず、正極集電体の片面が露出している部分(以下、片面露出部と称する)を有するのに対して、正極1の内周には、正極活物質層が両面に設けられている。正極活物質層上には、ゲル電解質層2が形成される。また、正極1の内周側および外周側の端部には、正極活物質層に覆われず正極集電体が露出した部分(以下、正極集電体露出部と称する)が設けられている。
【0023】
内周側の正極集電体露出部には、正極タブ6が溶接されている。そして、この正極タブ6を覆うように、内周側の正極集電体露出部の一端が保護テープ8aで被覆されている。このように保護テープ8aを設けることで、正極1と負極5との接触を避け、内部ショートの発生を防止できる。
【0024】
正極の両側に配されるセパレータ3は、第1および第2のセパレータとからなり、正極集電体の両面に設けられた、それぞれの長さが異なる正極活物質層の長さに応じて規定され、第1のセパレータと第2のセパレータとの長さは異なる。具体的には、例えば、正極集電体の両面に設けられた正極活物質層の長さとほぼ同じに選定されている。ここで、2枚のセパレータのうち、巻回型電池10の中心から近い方を第1のセパレータ、中心から遠い方を第2のセパレータと称する。このように、2枚のセパレータを用いて、それぞれの長さを正極活物質層の長さに応じて異なるように選択することで、セパレータの使用量を必要最小限に抑えることができる。第1のセパレータは、正極1の最外周における片面露出部に対向しており、第2のセパレータより長い。
【0025】
負極5は、例えば、帯状の形状を有する負極集電体と、この負極集電体の両面に形成された負極活物質層とからなる。負極集電体の両面に設けられた負極活物質層の長さはそれぞれ異なる。負極活物質層上には、ゲル電解質層4が形成される。また、負極5の内周側および外周側の端部には、負極活物質層に覆われず負極集電体が露出した部分(以下、負極集電体露出部と称する)が設けられている。負極5は、正極1より更に内側から巻回されている。
【0026】
また、内周側の負極集電体露出部には、負極タブ7が溶接されている。そして、内周側の負極集電体露出部には、内周側の正極集電体露出部の一端および正極タブ6に対向する位置に保護テープ8bおよび8fを有する。
【0027】
巻回型電池10は、電極よりも延出されたセパレータの先行巻きされた部分が存在せず、従来より簡素化した構造を有する。この結果、電池の体積効率を向上できる。
【0028】
(正極)
図3は、この発明の一実施形態の正極の一部拡大断面図である。図3に示すように、正極24は、例えば正極活物質層27がアルミニウム箔等の金属泊である正極集電体28の両面に形成されている。
【0029】
正極活物質層27上には、ゲル電解質層26が形成されており、このゲル電解質層26上にセパレータ25が載置され重ね着けられている。
【0030】
正極集電体28の一端部には、正極タブ29が溶接されている。正極タブ29は、保護テープ30によって被覆されている。保護テープ30で正極タブ29を覆うことによって、内部ショートの発生を抑制でき、歩留まりを向上できる。
【0031】
図3に示すように、セパレータ25は、正極活物質層27上に形成されたゲル電解質層26にのみ載置され重ね着けられているのが好ましい。ゲル電解質層26は、正極活物質層27上にのみ重なっているので、セパレータ25を必要最小限に抑えることができ、この結果、製造コストを削減でき、且つ電池の体積効率を向上し、電池容量を増大できる。
【0032】
セパレータ25は、ゲル電解質層26上に載置されると電解液を吸収してゲル電解質層26に貼り付くので、セパレータ25をゲル電解質層26に、容易に重ね着けることができる。また、ゲル電解質層26にセパレータ25が重ね着けられることにより、巻きずれなく巻回できる。
【0033】
正極活物質層27は、十分な量のLiを含むものが望ましい。例えば、一般式LiMXY(ただしMはCo,Ni,Mn,Fe,Al,V,Tiの少なくとも1種を表す。)で表される、リチウムと遷移金属からなる複合金属酸化物やLiを含んだ層間化合物等を好適に用いることができる。
【0034】
(負極)
図4は、この発明の一実施形態の負極の一部拡大断面図である。図4に示すように、負極21は、負極活物質層23が負極集電体22の両面に積層されている。負極活物質層23上には、ゲル電解質層が形成されている。負極集電体22としては、例えば、銅箔などの金属箔を用いる。
【0035】
負極活物質層23としては、対リチウム金属2.0V以下の電位で電気化学的にリチウムをドープ・脱ドープする材料であれば、何れの材料でも用いることができる。例えば、難黒鉛化性炭素、人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭、カーボンブラック類等の炭素質材料を用いる。
【0036】
また、リチウムと合金を形成可能な金属およびその合金も用いることができる。例えば、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ等の比較的電位が卑な電位でリチウムをドープ脱ドープする酸化物やその他窒化物なども同様に用いることができる。
【0037】
(セパレータ)
セパレータ25としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系微多孔膜を用いる。
【0038】
(電解質)
ゲル電解質層26は、電解質が非水溶媒に溶解された非水電解液がマトリックスポリマにてゲル化されてなる。
【0039】
非水電解液としては、有機溶媒(非水溶媒)に電解質塩を溶解させた非水電解液を用いることができる。非水電解液は、有機溶媒と電解質とを適宜組み合わせて調整される。有機溶媒としては、この種の電池に用いられるものであればいずれも用いることができる。例示するならば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4メチル1,3ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等である。
【0040】
マトリックスポリマとしては、非水電解液を吸収してゲル化するものであれば、種々の高分子を用いることができる。例えば、ポリ(ビニリデンフルオロライド)やポリ(ビニリデンフルオロライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)などのフッ素系高分子、ポリ(エチレンオキサイド)や同架橋体などのエーテル系高分子、また、ポリ(アクリルニトリル)等を使用できる。マトリックスポリマとしては、特に酸化還元安定性から、フッ素系高分子を用いることが望ましい。電解質塩を含有させることによりイオン導電性を付与する。
【0041】
電解質塩としては、この種の電池に用いられるものであればいずれも用いることができる。例示するならば、LiClO4、LiAsF6,LiPF6、LiBF4、LiB(C654、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiCl、LiBr、LiN(CF3SO22等が挙げられる。
【0042】
固体電解質としては、リチウムイオン導電性を有する材料であれば無機固体電解質、高分子固体電解質いずれも用いることができる。無機固体電解質は、窒化リチウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。高分子固体電解質は、電解質塩とそれを溶解する高分子化合物からなる。高分子化合物としては、ポリ(エチレンオキサイド)や同架橋体などのエーテル系高分子、ポリ(メタクリレート)エステル系、アクリレート系などを単独または分子中に共重合若しくは混合して用いることができる。
【0043】
この一実施形態では、電解質としてゲル電解質を備える巻回型電池について説明するが、この発明は、この一実施形態に限定されるものではない。例えば、電解質として電解液を備える巻回型電池にもこの発明を適用可能である。
【0044】
図5は、液系電池の正極の一部拡大断面図である。図5に示すように、正極24は、ゲル電解質層26を有していない。正極活物質層27は、正極集電体28の両面に積層されている。正極活物質層27上には、セパレータ25が重ね着けられている。正極集電体28の一端部には、正極タブ29が溶接されている。
【0045】
正極活物質層27上にセパレータ25を重ね着ける方法としては、例えば、電解液等により、セパレータ25を予め湿らしておいて、正極活物質層27上に載置して重ね着ける方法、または、接着剤により、正極活物質上層27にセパレータを重ね着ける方法
が挙げられる。接着剤としては、例えば公知の接着剤を用いることができる。
【0046】
図5に示す正極24において、正極活物質層27のみを覆うように、セパレータ25が重ね着けられるので、正極24よりも延出されたセパレータの先行巻きされた部分が存在せず、巻回型電池10は、従来より簡素化した構造を有し、電池の体積効率を向上できる。
【0047】
図6は、液系電池の負極の一部拡大断面図である。図6に示すように、この発明による負極21は、負極活物質層23が負極集電体22の両面に形成されている。負極集電体22の一端部には、負極タブ31が溶接されている。
【0048】
(作製方法)
図7は、この発明の一実施形態の巻回型電池の製造方法の一例を説明するための図である。図7に示すように、例えば、この巻回装置は、負極41が導出される原反R1と、正極42が導出される原反R1と、巻芯44とを備える。
【0049】
ゲル電解質電池においては、例えば、予め塗布することにより、ゲル電解質層46が両面に形成された電極が原反R1に巻回される。塗布の方法としては、公知の方法を用いることができる。ゲル電解質層46には、セパレータ43が載置される。セパレータ43がゲル電解質層46に載置されると、セパレータ43は、湿った状態となり、ゲル電解質層46に容易に重ね着けることができる。
【0050】
ゲル電解質46の塗布およびセパレータ43の重ね着けは、原反R1を形成する前に限定されず、原反R1を形成する後に行ってもよい。原反R1から導出する負極41と、正極42とが、巻芯44に巻き付けられて、その後、所定回数巻回されることにより、巻回型電池が作製される。
【0051】
図7に示す巻回型電池の製造方法は、セパレータ43を予め電極に重ね着けて巻回するので、従来4つ必要であった原反R1を2つに削減できる。したがって、巻回装置の構成をより簡略にすることができる。
【0052】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図8は、この発明の他の実施形態の巻回型電池10の構造を表した模式図である。この発明の他の実地形態の巻回型電池10では、図8に示すように、セパレータ3は、正極1の一端をその両面側から覆うように正極1の近傍位置から巻回されている。参照符号11の示す部分は、上述の一実施形態のセパレータに比して延長されている部分を示す。これ以外の巻回型電池10の構成は、上述の一実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0053】
この発明の他の実施形態の巻回型電池10では、正極1の一端と正極タブ6とを、保護テープ8とセパレータ3により保護するので、巻回型電池10に対して繰り返し圧力が加えられた場合にも、内部ショートの発生をより抑制できる。したがって、上述の一実施形態よりも耐久性を更に向上できるという利点を得ることができる。
【0054】
また、内周側のセパレータ3を延長して正極タブ6上に重ねた構造となすことにより、巻き始めに、セパレータ3と正極1とを同時にチャックでき、この結果、巻回型電池10の製造が容易なものとなる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によりこの発明を説明する。具体的に化合物名や数値等を例示して説明しているが、この発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
まず、以下のように、負極を作製した。フィラーとなる石炭系コークス100重量部に、バインダーとなるコールタール系ピッチ30重量部加え、約100℃で混合した。その後、プレスにて圧縮成型し、炭素成型体の前駆体を得た。次に、この前駆体を1000℃以下で熱処理して得た炭素材料成型体に、さらに200℃以下で溶融させたバインダーピッチを含浸し、1000℃以下で熱処理するという、ピッチ含浸/焼成工程を数回繰り返した。そして、この炭素成型体を不活性雰囲気で2800℃にて熱処理し、黒鉛化成型体を得た後、粉砕分級し試料粉末を作製した。
【0057】
ここで、得られた黒鉛材料についてX線回折測定を行った。その結果、(002)面の面間隔は、0.337nmであり、(002)面のc軸結晶子厚みは、50.0nmであった。ピクノメータ法による真密度は2.23であり、BET法による比表面積が1.6m2/g、レーザ回折法による粒度分布は平均粒径が33.0μm、累積10%粒径が13.3μm、累積50%粒径が30.6μm、累積90%粒径が55.7μm、黒鉛粒子の破壊強度の平均値が7.1kgf/mm2、嵩密度が0.98g/cm3であった。
【0058】
そして、上記混合試料粉末90重量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)10重量部とを混合して負極合剤を調製し、溶剤となるN−メチルピロリドンに分散させてスラリー(ペースト状)にした。
【0059】
負極集電体には、厚さ10μmの帯状の銅箔を用い、負極合剤スラリーをこの集電体の両面に塗布、乾燥させた後、一定圧力で圧縮成型して800mm×120mmの大きさに切り出して帯状負極を作製した。
【0060】
負極タブは、直径50μmの銅線又はニッケル線を75μm間隔で編んだ金属網を裁断して作製した。この負極タブを負極集電体未塗布部にスポット溶接することにより、外部接続用の端子とした。
【0061】
正極は、以下に述べるように作製した。まず、正極活物質を作製した。炭酸リチウム0.5モルと、炭酸コバルト1モルとを混合し、この混合物を、空気中、温度880℃で5時間焼成した。得られた材料についてX線回折測定を行った結果、JCPDSファイルに登録されたLiCoO2のピークとほぼ一致していた。
【0062】
このLiCoO2を粉砕し、平均粒径8μmの粉末とした。そして、このLiCoO2粉末95重量部と、炭酸リチウム粉末5重量部とを混合し、この混合物91重量部と、導電剤として鱗片状黒鉛6重量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3重量部とを混合して正極合剤を調製し、N−メチルピロリドンに分散させてスラリー(ペースト状)にした。
【0063】
正極集電体として、厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔を用い、上記正極合剤スラリーをこの集電体の両面に均一に塗布、乾燥させた後、一定圧力で圧縮成型して640mm×118mmの大きさに切り出して帯状正極を作製した。
【0064】
正極タブは、直径50μmのアルミニウム線を75μm間隔で編んだ金属網を裁断して作製した。この正極タブを負極集電体未塗布部にスポット溶接することにより、外部接続用の端子とした。
【0065】
電解質には、PVdF系ゲル電解質を用いた。まず、フッ化ビニリデンにヘキサフルオロプロピレンが7重量%の割合で共重合された、分子量が重量平均分子量で70万のポリマ(A)と31万のポリマ(B)とを、A:B=9:1の重量比で混合したマトリックスポリマを作製した。そして、マトリックスポリマと非水電解液とポリマの溶剤であるジメチルカーボネート(DMC)とをそれぞれ重量比1:4:8の割合で混合したものを70℃にて攪拌し溶解させゾル状の電解質とした。
【0066】
電解液には、非水溶媒として、EC(エチレンカーボネート):PC(プロピレンカーボネート)とを重量比で60:40となるように混合し、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を用い、0.8mol/kgとなるように調製した。
【0067】
次に、このゾル状の電解質をバーコーターを用いて塗布し、70度の恒温槽で溶剤を揮発させて、正極及び負極の面上にゲル電解質層を形成した。そして、形成されたゲル電解質層上にセパレータを貼り付け、セパレータがゲル電解質層部分のみ重ねられた構造とした。その後、この正極と負極とを積層し、平たく巻回して、扁平型の巻回型電池素子を作製し、この電池素子をラミネートフィルムに減圧封入することにより、厚さ3.8mm、幅35mm、高さ62mmのゲル電解質電池(実施例1)を作製した。
【0068】
<実施例2>
内周部のセパレータを負極タブ上に重ねた構造とした以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ3.8mm、幅35mm、高さ62mmのゲル電解質電池(実施例2)を作製した。
【0069】
<比較例1>
実施例1と同様の手法により、正極、負極、セパレータを作製し、負極、正極、セパレータを巻回する際に、まず金属製の巻き芯に、セパレータを1.5周分巻き芯として、負極を挿入し、半周した後正極を挿入し、所定回数巻回して、巻回型電池素子を作製し、実施例1と同様にこの電池素子をラミネートフィルムに減圧封入することにより、厚さ3.8mm、幅35mm、高さ62mmのゲル電解質電池(比較例1)を作製した。
【0070】
<評価>
実施例1、実施例2および比較例1の電池容量と実施例1、実施例2の比較例1に対する内周セパレータの削減枚数および厚みの削減を測定した後、測定結果をまとめた表を作成した。下記の表1は、実施例1、実施例2および比較例1の内周セパレータの削減枚数、厚みの削減、電池容量を表している。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例1は、表1に示すように、比較例1と比べて内周セパレータが10枚分削減されていた。実施例1は、1枚20μmのセパレータを使用しており、厚みを200μm薄くできた。また、実施例1の電池容量は860mAhであった。
【0073】
以上より、実施例1は、比較例1と比べて厚み200μmに相当する量の活物質を充填でき、その結果、比較例1の電池容量800mAhより60mAh増量できることがわかった。
【0074】
実施例2は、表1に示すように、実施例1と異なりタブ上にもセパレータが重なっており、比較例1と比べて内周セパレータが8枚分削減されていた。実施例2は、1枚20μmのセパレータを使用しており、厚みを160μm削減できた。また、実施例2の電池容量は、853mAhであった。
【0075】
以上より、実施例2は、比較例1と比べて厚み160μmに相当する量の活物質を充填でき、その結果、比較例1の電池容量800mAhより53mAh増量できることがわかった。
【0076】
また、実施例2は、タブ上のセパレータの重なり部分が増加しており、増加分セパレータが必要となるので、電池容量の増量は、実施例1より若干少なくなることがわかった。しかしながら、実施例2は、巻き始めにセパレータと正極を同時にチャックできるので、製造しやすいというメリットがあることがわかった。
【0077】
この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、正極だけではなく、セパレータを予め負極に重ね付けることもできる。また、この発明の適用できる電池の構造は、扁平型に限定されず、円筒形、角型とこの発明の範囲内で、あらゆる構造に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】この発明の巻回型電池を模式的に表した斜視図である。
【図2】この発明の巻回型電池の構造を表した模式図である。
【図3】この発明の正極の一部拡大断面図である。
【図4】この発明の負極の一部拡大断面図である。
【図5】この発明の正極の他の例の一部拡大断面図である。
【図6】この発明の負極の他の例の一部拡大断面図である。
【図7】この発明の巻回型電池の製造方法の一例を説明するための図である。
【図8】この発明の巻回型電池の他の例の構造を表した模式図である。
【図9】従来の巻回型電池の構造を表した模式図である。
【図10】従来の正極および負極の一部拡大断面図である。
【図11】従来の巻回型電池の製造方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0079】
1、24、42・・・正極
2、4、26、46・・・ゲル電解質層
3、25、43・・・セパレータ
5、21、41・・・負極
6、29・・・正極タブ
7、31・・・負極タブ
8、30・・・保護テープ
10・・・巻回型電池
22・・・負極集電体
23・・・負極活物質層
27・・・正極活物質層
28・・・正極集電体
44・・・巻芯
45・・・タブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状集電体の両面に正極活物質層が形成されてなる正極と、
帯状集電体の両面に負極活物質層が形成されてなる負極と、
上記正極と上記負極との間に介在された電解質およびセパレータとを備え、
上記正極と上記負極とが上記セパレータを介して巻回されてなる巻回型電池であって、
上記巻回型電池の内周側の上記セパレータの一端と上記正極の一端とが、または上記セパレータの一端と上記負極の一端とが、ほぼ同じ位置から巻回されてなることを特徴とする巻回型電池。
【請求項2】
請求項1において、
上記セパレータは、第1および第2のセパレータからなり、
上記正極および上記負極のうち最外周側となる電極は、当該電極の両面に形成された活物質層の長さが異なり、
上記電極の両面に形成された活物質層の長さに応じて、第1および第2のセパレータの長さが異なるように選択されていることを特徴とする巻回型電池。
【請求項3】
請求項1において、
上記正極活物質および上記負極活物質は、リチウムイオンをドープ・脱ドープし得る活物質であることを特徴とする巻回型電池。
【請求項4】
正極および負極の両面にゲル電解質層を形成し、
上記正極および上記負極の少なくとも一方の上記ゲル電解質層上にセパレータを載置し、巻回することを特徴とする巻回型電池の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
上記正極および上記負極は、帯状集電体の両面に活物質が積層されてなり、
上記活物質は、リチウムイオンをドープ・脱ドープし得る活物質であることを特徴とする巻回型電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−260904(P2006−260904A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75492(P2005−75492)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】