説明

市場回収発泡樹脂容器のリサイクル方法と装置

【課題】市場から回収した発泡樹脂シート成形容器を、これまでよりもより少ないエネルギーでまたより低コストで、短時間に再生樹脂としてリサイクルする。
【解決手段】市場から回収した発泡樹脂シート成形容器を、平均大きさほぼ7〜300cmに粗粉砕して粗粉砕物とする。粗粉砕物に必要な洗浄処理を行った後、洗浄後の粗粉砕物に対して加熱乾燥することなく、物理的な脱水処理によって含水量をほぼ18wt%以下とする。ほぼ18wt%以下に脱水処理された粗粉砕物を、平均大きさほぼ0.2〜6cmに細粉砕して細粉砕物とし、それを溶融押出機に投入して、減容と溶融を行い再生溶融樹脂とする。加熱乾燥処理が不要であり、それにより、低エネルギー、低コスト化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市場から回収された発泡樹脂シート成形容器を再生樹脂としてリサイクルするための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂製の容器は、食品の収容容器あるいはトレーとして、広く市場で用いられている。現在、使用後の発泡樹脂製の容器をどのように処理すべきかが、社会的な課題となっており、市場から回収した発泡樹脂製の容器を再び原料用の樹脂に戻す、すなわち再生樹脂としてリサイクルすることについて、いくつかの提案がなされている。
【0003】
特許文献1には、発泡スチロールをリモネンなどの有機溶剤に熔解し、その後、この有機溶剤を気化させて分離することで、ペレット化した再生樹脂を得るようにしたリサイクル装置が記載されている。また、特許文献2には、発泡していないPETボトルなどをリサイクルするために、PETをフレークに粉砕し、このフレークを熱洗浄水などを使用して洗浄し、次いですすぎを行い、すすぎ工程を経たPETフレークを水切りして熱風乾燥装置により熱風乾燥処理を行うようにしたリサイクルPETフレークの洗浄方法と装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−179466号公報
【特許文献2】特開2002−320932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のリサイクル方法では、発泡スチロールを容易に溶かすことのできる有機溶媒を使用するため、リサイクルして得たペレットに含まれる有機溶剤の除去と除去した有機溶剤を回収する必要がある。有機溶剤の除去には、大がかりな真空装置などの付帯設備が必要であり、多くのエネルギーと時間を必要とし、さらに再生樹脂としては、有機溶剤を例えば50ppm未満の許容濃度まで減少させることも求められる。特許文献2に記載の方法および装置では、有機溶剤を使用しないので、有機溶剤の除去に要するエネルギーと時間は必要としないが、すすぎ工程を経たPETフレークを水切りして熱風乾燥を行う必要があり、熱風乾燥に多くのエネルギーを必要としている。
【0006】
そのようなことから、一度使用された樹脂製品から原料樹脂として使用可能な再生樹脂を得るには、多くのエネルギーと時間を要しているのが現状であり、環境への負荷が大きくなっている。そのために、より少ないエネルギーでまたより短い時間で再生樹脂を得ることのできる、使用済み樹脂のリサイクル方法と装置が求められている。
【0007】
本発明は上記の要請に答えることのできる樹脂のリサイクル方法と装置を提供することを課題としており、より具体的には、市場から回収した発泡樹脂シート成形容器を、少ないエネルギーでまた短い時間で再生樹脂としてリサイクルすることのできる方法と装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、樹脂製品、特に発泡樹脂シートを熱成形して得られた樹脂製品の場合、それを粉砕した後に洗浄などの目的で水につけた場合、洗浄水は破断面から粉砕物の内部に入り込んでしまい含水率が高くなってしまうことを知見した。一方、表面に付着している水分は、加熱乾燥処理を行わなくても、遠心分離のような物理的脱水処理によって、短時間で除去できることも知見した。
【0009】
また、発泡樹脂製品からの再生樹脂を得るには、発泡樹脂製品の粉砕品を溶融押出機に投入して、減容と溶融を行いペレット化する必要がある。その際に、投入される粉砕品の含水量が大きいと、溶融押出機から溶融樹脂が安定した状態で押し出せず、良質の再生樹脂が得られないことから、溶融押出機に投入するときの粉砕樹脂の含水量は、使用する溶融押出機での脱気性能によって変動があるとしても、ほぼ18wt%程度以下であることが望ましいことを見出した。
【0010】
前記したように、発泡樹脂シートを熱成形して得られた樹脂製品の粉砕物の場合、洗浄処理などで表面に付着した水分は、物理的脱水処理によって短時間で除去することができる。したがって、市場からの回収品を最初の粗粉砕と次の細粉砕との二段階で行い、粗粉砕した状態で水やアルカリもしくは石鹸を使用して洗浄処理を行い、洗浄後の粗粉砕物を脱水処理した後に、細粉砕して溶融押出機に投入する。その際に、粗粉砕物の大きさを所定の範囲のものとすることで、粗粉砕物一定容積当たりでの前記破断面から粉砕物の内部に入り込んでいる水分量を低く抑えることができる。そのために、洗浄後の粗粉砕物に対して加熱乾燥処理を行わなくても、遠心分離のような物理的脱水処理を行うのみで、溶融押出機へ投入するのには何の支障もない程度にまで含水量を下げることを、短時間に、しかも少ないエネルギーで実現できることも知見した。本発明は上記の新たな知見に基づいてなされたものである。
【0011】
すなわち、本出願の第1の発明は、市場から回収した発泡樹脂シート成形容器を再生樹脂としてリサイクルするための方法であって、前記市場回収発泡樹脂容器を平均大きさほぼ7〜300cmに粗粉砕して粗粉砕物とする工程と、前記粗粉砕物を水洗浄する工程と、前記水洗浄後の粗粉砕物をアルカリもしくは石鹸を含むほぼ30〜70℃の温水で洗浄する工程と、前記温水洗浄後の粗粉砕物を加熱乾燥することなく物理的な脱水処理によって含水量をほぼ18wt%以下にする工程と、前記ほぼ18wt%以下に脱水処理された粗粉砕物を平均大きさほぼ0.2〜6cmに細粉砕して細粉砕物とする工程と、前記細粉砕物を溶融押出機を利用して減容と溶融を行い再生溶融樹脂とする工程と、を少なくとも含むことを特徴とする市場回収発泡樹脂容器のリサイクル方法である。
【0012】
また、本出願の第2の発明は、市場から回収した発泡樹脂シート成形容器を再生樹脂としてリサイクルするための装置であって、前記市場回収発泡樹脂容器を平均大きさほぼ7〜300cmに粗粉砕して粗粉砕物とするための粗粉砕機と、生成された前記粗粉砕物を水洗浄するための水洗浄機と、前記水洗浄後の粗粉砕物をアルカリもしくは石鹸を含むほぼ30〜70℃の温水で洗浄するための温水洗浄機と、前記温水洗浄後の粗粉砕物を加熱乾燥することなく物理的な脱水処理にて含水量をほぼ18wt%以下にすることのできる脱水機と、前記脱水処理された粗粉砕物を平均大きさほぼ0.2〜6cmに細粉砕して細粉砕物とするための細粉砕機と、前記細粉砕物の減容と溶融を行い再生溶融樹脂とするための溶融押出機と、少なくとも含むことを特徴とする市場回収発泡樹脂容器のためのリサイクル装置である。
【0013】
前記したように、市場回収発泡樹脂容器を再生樹脂としてリサイクルするには、水による洗浄処理が必要であり、溶融押出機を用いて溶融樹脂とするためには洗浄に用いた水分の多くを粉砕物から除去する必要があるが、本発明によれば、この水分の除去を熱風乾燥のような加熱乾燥処理を行うことなく、物理的な脱水処理のみによって行うことが可能となる。そのために、使用エネルギーの削減と処理時間の短縮の双方が可能となり、環境への負荷を軽減することのできるリサイクル処理方法および装置となる。
【0014】
本発明において、遠心分離のような物理的な脱水処理では、粗粉砕物の表面に付着した水分は短時間で除去することができるが、粉砕面から内部に浸入した水分の除去は難しい。したがって、脱水処理後の粗粉砕物の単位容積(例えば100L)当たりでの含水量(各粗粉砕物の粉砕面から内部に浸入した水分の総量)は、当該粗粉砕物が溶融押出機を溶融しながらに通過するときに、そのベント口から蒸気として排出できる量にほぼ等しいかそれ以下に抑える必要がある。
【0015】
本発明者らの実験では、従来発泡樹脂のリサイクル処理に用いられている一般的な溶融押出機を使用する場合に、市場回収発泡樹脂容器の粗粉砕物を平均大きさ7cm程度よりも小さい大きさに粉砕すると、粗粉砕物の単位容積当たりの粉砕面の総和が大きくなりすぎて、ベント口から蒸気として排出できる能力を超えることとなり、安定して再生樹脂が得られなかった。また、市場回収発泡樹脂容器の粗粉砕物を平均大きさが300cmよりも大きい場合には、粗粉砕物を次工程に移送する際に、配管で詰まったりする支障が生じることがあった。したがって、本発明において、市場回収発泡樹脂容器を平均大きさほぼ7〜300cmに粗粉砕して粗粉砕物とすることが、必要な発明構成事項となる。
【0016】
市場から回収した発泡樹脂シート成形容器は表面に汚れが残っているものがある。その汚れを落とすことは、良質の再生樹脂を得るのに必要な処理である。本発明において、粗粉砕物を水洗浄するのは、たんぱく質系の汚れを落とすのに必要な発明構成事項であり、水洗浄後の粗粉砕物をアルカリもしくは石鹸を含むほぼ30〜70℃の温水で洗浄することは、油脂分の汚れを落とすのに必要な発明構成事項である。
【0017】
前記したように、発泡樹脂製品の粉砕品を溶融押出機に投入して減容と溶融を行い、良質の再生樹脂として安定して溶融押出機から押し出すためには、溶融樹脂中の含水量はできるだけ低いことが望ましい。そのためには、溶融押出機に投入するときの粉砕樹脂の含水量は、多くとも18wt%とすることで、ほぼその全量をベント口から排出することができる。したがって、本発明において、前記温水洗浄後の粗粉砕物を加熱乾燥処理することなく物理的な脱水処理によって短時間にしかも少ないエネルギーで含水量をほぼ18wt%以下にすることは、必要な発明構成事項となる。
【0018】
通常の溶融押出機において、投入された発泡樹脂の粉砕物を良好に減容しかつ溶融するには、粉砕物の大きさは平均ほぼ0.2〜6cmであることが望ましい。したがって、本発明において、前記ほぼ18wt%以下に脱水処理された粗粉砕物を平均大きさほぼ0.2〜6cmに細粉砕して細粉砕物とすることは、必要な発明構成事項となる。
【0019】
本発明において、前記細粉砕物は溶融押出機内に投入され、従来と同様に、減容と溶融処理を受ける。その過程で、前記したように、細粉砕物に浸入していた水分は、溶融押出機に設けられているベント口から外気に放出される。水分を放出することで含水量がほぼ0wt%にまで低くされた良質の再生樹脂は、溶融押出機の押出口から安定して押し出されていき、冷却後にペレットに裁断されるか、シート状とされる。そして、得られた再生樹脂は、それ単独であるいはバージン樹脂と混ぜられて、再び容器、トレー等に成形される。
【0020】
本発明において、使用する溶融押出機は単体の押出機であってもよく、直列に第1の溶融押出機と第2の溶融押出機とが配列した形態の多段押出機であってもよい。後者の場合には、第1の溶融押出機の溶融樹脂押出口と第2の溶融押出機の溶融樹脂取入口との連結部に減圧室が形成された多段溶融押出機を用いるようにしてもよい。連結部に減圧室を備えた多段溶融押出機を用いる場合には、再生樹脂に含まれる揮発分などをさらに除去することができるので、一層良質な再生樹脂を得ることができる。
【0021】
本発明において、市場から回収した発泡樹脂シート成形容器の樹脂種、発泡倍率、形状および大きさは、任意であり、特に制限はない。粗粉砕物としたときに、その粉砕面からの水の浸入量が少ないことから、独立気泡の多い発泡スチロール系樹脂容器のリサイクルに本発明を適用することは好適である。発泡倍率は、市場から回収される多種類の発泡樹脂シート成形容器の発泡倍率に左右されるが、強度や断熱性の点からほぼ5〜22倍の範囲の容器が多く、これらの容器に好適に本発明を適用することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、市場から回収した発泡樹脂シート成形容器を、少ないエネルギーで、短い時間で、かつ真空乾燥装置や熱風乾燥装置を使用することなく、再生樹脂として有効にリサイクルすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるリサイクルシステムの一例を説明する工程図。
【図2】本発明によるリサイクル装置の一例を説明する第1の図。
【図3】第1の図に続く第2の図。
【図4】本発明で使用する溶融押出機の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態を、図1に示す工程図および図2〜4に示す装置の図を参照しながら説明する。
【0025】
本発明においてリサイクルの対象となる樹脂容器は、市場から回収した発泡樹脂シート成形容器である。市場から回収される樹脂容器には、多くの種類のものが混在しているのが通常であり、最初に、その中から発泡樹脂シートの成形容器を選別する(S10)。選別の後、必要に応じて、選別した樹脂容器に対して洗浄処理を行う(S11)。この処理(S11)は省略してもよい。なお、リサイクル処理の対象となる樹脂容器は発泡樹脂シートの成形容器とする。選別作業は、手作業で行うこともあり、発泡樹脂シートの成形容器は非発泡樹脂の成形容器と比較して相対的に軽量であることから、風力選別機などを利用することもできる。
【0026】
次に、選別した樹脂容器を、従来知られている適宜の粗粉砕機1を用いて、平均大きさほぼ7〜300cmの範囲となるように粗粉砕し、粗粉砕物とする(S12)。必要な場合には、バッファとしてのサイロ2に保管してよい(S13)。次に、粗粉砕品に対して、水洗浄機3による水洗浄を行う(S14)。水洗浄機3には、好ましくは回転羽またはスクリュー方式のものを用い、そこに水と粗粉砕物とを流し込んで、たんぱく質や異物(固形物)を洗い落とす。好ましくは、水洗浄機3は水平〜30度程度傾けて設置し、傾け上流端から水と粗粉砕物とを投入し、他端から洗浄後の粗粉砕物を取り出すようにする。
【0027】
次に、洗浄後の粗粉砕物をコンベア4等で水を切りながら移送し(S15)、温水洗浄機5に投入して温水洗浄を行う(S16)。温水洗浄機5は、アルカリまたは石鹸を含むほぼ30〜70℃の温水で対象物を洗浄するものであり、好ましくは回転羽またはスクリュー方式で、撹拌しながら油脂分を洗い落とす。温水洗浄機5の場合も、好ましくは水平〜30度程度傾けて設置し、傾け上流端から洗浄水と粗粉砕物とを投入し、他端から洗浄後の粗粉砕物を取り出すようにする。
【0028】
次に、温水洗浄後の粗粉砕物を洗浄移動機6,6で移送する(S17,S18)。洗浄移動機6は、温水洗浄機5から出てくる粗粉砕物を水で叩きながら洗浄と移送を行うものであり、1機でもよく、図示のように直列に複数機並べてもよい。設置角度は、水切りを良好にするために、移送方向に向けて5〜45度傾けて設置するのが好ましい。
【0029】
前記S18までの工程で、粗粉砕物に対する必要な洗浄処理は終了する。S18の工程で水切りされた粗粉砕物の表面には水分が付着しているとともに、その破断面に現れている発泡気泡を通して、破断面から約1〜3mm程度内部まで水分が浸入している。
【0030】
次に、洗浄移動機6から出てくる粗粉砕物を脱水機7に投入して脱水処理を行う(S19)。用いる脱水機7は、スクリュープレス方式や遠心分離方式などの物理的な脱水機であってよく加熱温風処理などの熱的処理を伴う乾燥機を用いることを要しない。脱水機7によって、粗粉砕物の含水量がほぼ18wt%以下、好ましくは10wt%以下となるまで、脱水処理を行う。
【0031】
次に、含水量がほぼ18wt%以下となった粗粉砕物を細粉砕機8に投入して、平均大きさほぼ0.2〜6cmに細粉砕して細粉砕物とする(S20)。細粉砕物がこの大きさであれば、溶融押出機のベント口から水分を十分に除去でき、細粉砕物の減容と溶融を安定させて押し出しすることができる。細粉砕機8で細粉砕され細粉砕物を必要に応じてサイロ9にストックしておく(S21)。
【0032】
最後に、細粉砕物を溶融押出機10に投入する(S22)。投入された細粉砕物は溶融押出機10を通過する過程で、減容されまた加熱と加圧を受けて溶融する。その過程で、溶融押出機10に設けられているベント口から、細粉砕物に含まれていたほぼ18wt%以下好ましくは10wt%以下の水分はほぼ完全に除去される。そのために、溶融押出機10の押出口からは良質の再生樹脂が安定して押し出されてくる。溶融押出機の形態に制限はなく、押し込みホッパー付きツイン、シングルまたはタンデム式押出機などを適宜も用いることができる。なお、溶融押出機10については、後に詳しく説明する。
【0033】
溶融押出機10から押し出される再生樹脂は、例えば従来知られたペレタイザー11でペレット状とされ(S23)、その後、袋やサイロなどで適宜保管される。
【0034】
上記のように、本発明による市場回収発泡樹脂容器のリサイクル方法および装置では、洗浄後の粉砕品から洗浄時に付着した水分を除去するのに、多くのエネルギーを必要とする熱的乾燥装置を用いなくても、所要の含水量まで水分を除去することができ、水分除去後の粗粉砕物を細粉砕物とした後、溶融押出機に投入することで、良好の再生樹脂を得ることができる。それにより、従来のリサイクル方法および装置と比較して、少ないエネルギーで、低いコストで、安価な設備で、短時間に樹脂の再生を行うことが可能となる。
【0035】
本発明において、前記した水洗浄機3、洗浄移動機6に供給する水は、処理後にそのまま系外に排水することもできるが、水を効率的に利用するために、水を循環させて再利用することが望ましい。そのために、水洗浄機3、洗浄移動機6および脱水機7から排水される水を、直接処理水戻しポンプ20によって水処理設備21に戻し、そこで必要な浄水処理を行った後、再び水洗浄機3や洗浄移動機6に供給することが推奨される。また、図1の工程図に示すよう、洗浄機3ではより多くの水を使用するので、水洗浄機3、洗浄移動機6および脱水機7から排水される水を洗浄機3およびコンベア4を循環させた後に、処理水戻しポンプ20によって水処理設備21に戻すようにしてもよい。
【0036】
本発明において、水洗浄後の粗粉砕物をアルカリもしくは石鹸を含むほぼ30〜70℃の温水で洗浄する工程で使用する洗浄水も、処理後にそのまま系外に排水することもできる。しかし、効率的に洗浄水を利用するために、循環系を構築して再利用することが望ましい。
【0037】
図1の工程図には、循環系の一例を示している。ここにおいて、循環系は、熱源としてのヒートポンプユニット31と、熱交換に必要な熱量を確保するためのクッションタンク32と、熱交換器33とからなる第1ユニット30と、洗浄移動機6からの処理水を一旦貯留するタンク41と、粗濾過器42と、粗濾過器42からの処理水を一旦貯留するタンク43と、精密濾過器44と、精密濾過器44からの処理水を一旦貯留するタンク45と、前記熱交換器33とからなる第2ユニット40とで構成される。
【0038】
第1ユニット30は、温水洗浄機5に供給される洗浄温水の温度をほぼ30〜70℃に昇温させるためのものであり、ヒートポンプユニット31で生成された40〜80℃の熱媒体(熱水)が熱交換器33を送られ、そこを通過するアルカリもしくは石鹸を含む洗浄温水と熱交換することで、洗浄温水をほぼ30〜70℃に昇温させる。なお、ヒートポンプユニット31は熱源の一例であり、他に、ボイラー、ヒータ、自家発電の排気や冷却水の排熱なども再利用することができる。
【0039】
第2ニット40は、前記洗浄温水の循環系である。アルカリ水タンク46内のアルカリもしくは石鹸を含む洗浄水は、前記熱交換器33を通ることでほぼ30〜70℃に昇温された後、前記温水洗浄機5の入口上部から注水またはシャワー状に投入される。そして、温水洗浄機5の出口上部から粗粉砕物と一緒に、洗浄移動機6に排出される。洗浄移動機6を通過するときに、洗浄温水と粗粉砕物は分離され、洗浄温水はタンク41に一旦溜められる。
【0040】
その後、洗浄温水は粗濾過器42において異物が除去された後、再びタンク43に溜められ、そこから精密濾過器44に移動する。粗濾過器42では、目に見えるレベルの異物が取り除かれ、精密濾過器44では熱交換器33を使用するのに支障のないレベルまで異物が取り除かれる。なお、このような機能を持つ粗濾過器42および精密濾過器44はよく知られたものであってよく、詳細な説明は省略する。精密濾過器44を通ったアルカリもしくは石鹸を含む洗浄温水はタンク45に溜められた後、前記した熱交換器33に再び移動する。上記のように洗浄温水が循環するときに、不足分の洗浄水は、前記したアルカリ水タンク46から補充される。
【0041】
なお、前記タンク45には温度計47が取り付けてあり、熱交換器33に送給される洗浄温水の温度を測定している。温度情報は図示しない制御手段に送られて、熱交換器33での温度制御に利用される。また、精密濾過器44およびタンク45には、そこに設けられたフィルターを逆洗するための処理水または上水送り手段48も設けられている。
【0042】
次に、溶融押出機10について説明する。前記したように、本発明による市場回収発泡樹脂容器のリサイクル方法および装置において、用いる溶融押出機10は、この技術分野で従来知られた形式の一連式または多連式の溶融押出機を適宜用いることができる。しかし、図4に示す新規な溶融押出機10を用いることにより、さらに良質の再生樹脂を得ることができる。
【0043】
図示される溶融押出機10は、第1の溶融押出機50と第2の溶融押出機60とを備える。2つの溶融押出機10、60それ自体は、従来公知の押出機であってよい。この例において、第1の溶融押出機50は、再生樹脂の原料である前記した細粉砕物が投入されるホッパー51と、該ポッパー51の出口側が接続するシリンダー52と、シリンダー52内に供給された原料を減容し溶融しながら移送するスクリュー53と、減容し溶融した再生樹脂が押し出される押出口54とを備える。スクリュー53は適宜の駆動源M1で回転駆動される。図示しないが、シリンダー52の外周には、原料を加熱溶融するためのバンドヒーター等の適宜の加熱手段が配設されている。
【0044】
ホッパー51は、任意の形態のものを用いうるが、図示の例では、押し込みホッパーであり、原料をシリンダー52内に一定量だけ圧入できるように、ホッパー51には供給スクリュー55が取り付けてある。
【0045】
前記スクリュー53は、原料移送方向上流側の第1のスクリュー53aと、それに接続する下流側の第2のスクリュー53bとで構成されている。第1のスクリュー53aと第2のスクリュー53bの接続部は小径部56とされており、そこに対向するシリンダー52の部分には、空気や水分などを抜くために機能するベント口57が設けられている。前記したように、このベント口57から、再生樹脂の原料である細粉砕物中に含まれる水分は、空気と共に抜け出ることができ、押出口54から押し出される溶融樹脂にはほとんど水分は含まれない。
【0046】
第2の溶融押出機60も、シリンダー61と、再生溶融樹脂を移送するためのシリンダー61内に配置されたスクリュー62と、再生溶融樹脂の押出口63を備える。スクリュー62は適宜の駆動源M2で回転駆動される。図示しないが、シリンダー61の外周には、再生溶融樹脂の温度をコントロールするためのバンドヒーター等の適宜の加熱手段が配設されている。シリンダー61は上流側に再生溶融樹脂取入口64を有しており、前記第1の溶融押出機50の押出口54から押し出された再生溶融樹脂が、後に説明する連結部100を通って、溶融樹脂取入口64に入り込む。入り込んだ再生溶融樹脂は、再生溶融樹脂移送用のスクリュー62の回転によって定量的に押出口63に送られて、定量排出される。
【0047】
前記した連結部100について説明する。連結部100は、第1の溶融押出機50における前記した押出口54に接続する管路部101と、該管路部101の下流側端102が開放する減圧室103とで構成される。そして減圧室103の下流側端が前記したシリンダー61の樹脂取り入れ口64に接続している。連結部100は、全体が密閉構造とされており、内部を通過する再生溶融樹脂が外気と接触することなく通過できるようにされている。
【0048】
管路部101の口径は押出口54の口径と同じまたはほぼ同じとされており、必須ではないが、この例では、途中に管路部101を通過する再生溶融樹脂に作用する圧力を調整することのできる圧力調整手段104が設けられている。圧力調整手段104は、管路部101の口径を可変に制御することのできるチョークバルブであることは、構成の容易さや作業のし易さの観点から好ましいが、これに限らず、管路部にメルトスルーザーのような邪魔板を配置してもよい。
【0049】
前記した減圧室103は、図示しない真空ポンプに接続しており、図示しない制御装置によって、室内は所要に減圧した状態に維持される。さらに、必須ではないが、図示の例では、減圧室103内に開放している管路部101の下流側端には、分流手段105が取り付けられている。分流手段105は、管路部101から1本の流れとして流出してくる再生溶融樹脂を複数本の流れに分流するものであって、分流することにより、減圧室103内の減圧した状態に晒される溶融樹脂の表面積を大きくしている。
【0050】
上記の溶融押田機10において、前記した細粉砕物である再生樹脂のための原料は、ホッパー51からシリンダー52内に供給される。供給された原料は、図示しない加熱装置により加熱されながら、スクリュー53によってシリンダー52内を押出口54に向けて送られる。原料には、スクリュー53の形状に応じた圧縮力が作用し、その圧縮と剪断力により、樹脂原料(細粉砕物)は次第に減容しかつ溶融する。また、原料からの脱気が次第に進行する。そして、第1のスクリュー53aと第2のスクリュー53bとの接続部で一時的に作用する圧力が低くなり、原料内の空気や水分や揮発成分などの大部分はベント口57から脱気される。
【0051】
脱気および脱水された再生溶融樹脂は、シリンダー52の押出口54から連結部100の管路部101内に流入し、その下流側端102から減圧室103内に押し出される。減圧室103内の前記押出口には分流手段105が設けてあり、管路部101から1本の流れとして押し出されてくる(流出してくる)再生溶融樹脂は複数本に分流される。それにより、再生溶融樹脂の表面積は分流本数に応じて大きくなる。
【0052】
一方、減圧室103内は真空ポンプの作用で所要の真空度に減圧されており、表面積の大きくなった再生溶融樹脂は、減圧した状態に晒される。それにより、再生溶融樹脂の表面および内部に存在する揮発成分および残存している場合のわずかな水分も、再生樹脂から効果的に除去される。そして、揮発成分および水分がほぼ完全に除去された後の再生溶融樹脂が、第2の溶融押出機60の樹脂取入口64からそのシリンダー61内に流入し、再生溶融樹脂移送用のスクリュー62によって定量的に押出口63に送られて、そこから定量排出される。押出口63から定量排出される再生溶融樹脂は、揮発成分および水分がほぼ完全に除去されたものであり、品質の高い再生樹脂を得ることができる。
【0053】
なお、減圧室103は、十分に揮発成分および残存しているわずかな水分を真空引きできる空間を持ち、かつ複数に分流した再生溶融樹脂の流れが互いに接触しないだけの大きさを持つようにすることが望ましい。分流した再生溶融樹脂が分流手段105から出て第2の溶融押出機60のスクリュー62に接触するまでの滞留時間は、一般的に1秒以上、好ましくは1.5秒以上が好ましい。この滞留時間は、減圧室103の形状や大きさ、さらには押出量の制御によって、調整することができる。減圧室103内の滞留時間が不足する場合は、金網等の邪魔装置をセットし、必要ならこれを多段にセットし、滞留時間を調整することができる。なお、図4に示した溶融押出機は、本出願人の出願に係る特願2011−124371号により詳しく説明されている。
【0054】
なお、図4に示した溶融押出機40から前記減圧室103を除去した形態の溶融押出機あるいは第1の溶融押出機50単独の押出機も、本発明による溶融押出機として用いることもできる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明者らが行った実際の例について説明する。実験に当たって、一時使用された発泡樹脂シート成形容器の多数個を無差別で市場から回収した。その回収品を粉砕機に投入し、粉砕機の下に取り付けた過網のサイズを変更することで、表1に1〜7で示した平均粗粉砕サイズ(cm)の粗粉砕品のサンプルを作った。なお、粗粉砕品の平均サイズ100cm以上のサンプルは、使用した粉砕機では得られなかったので、カッター刃の付いた押し切り装置で作成した。
【0056】
各サンプルについて、図1でのS14〜S22までの工程を行った。その過程で、平均洗浄時間、粉砕粉量、平均細粉砕サイズ、含水量(脱水/細粉砕後)を測定した。また、溶融押出機として、図4に示した溶融押出機40から前記減圧室103を除去した形態の溶融押出機を用い、脱水機7で脱水し細粉砕機8で平均サイズで0.9〜2.4cmに細粉砕したものをサイロ9に溜め、それを溶融押出機10で溶融して押出口63のノズルからの押し出したときの状態を評価した。それらの結果を表1に示した。
【0057】
平均粗粉砕品サイズと平均細粉砕品サイズは次のようにして測定した。すなわち、粉砕品を、粗粉砕品は一辺10cmの枡に、細粉砕品は一辺5cmの枡に、粉砕しながら5〜10分毎に5回すくいサンプルとした。ただし、粉砕サイズが50〜100cmのものについては180mm×270mmのポリ袋一杯に採取し、100cmを超えるものは300mm×450mmのポリ袋一杯に採取し、同様に粉砕しながら5〜10分毎に5回すくいサンプルとした。サンプルは矩形でない場合には、長い方向を長辺、その直角方向を短辺とし、それぞれの長さを測定し掛け合わせ面積とし、各桝毎に面積の平均を算出した。同様の操作を5回繰り返し行い、その加重平均を平均値とした。
【0058】
【表1】

【0059】
なお、表1において、
・平均洗浄時間は、水洗浄機3、コンベア4、温水洗浄機5、2つの洗浄移動機6,6、脱水機7を通過する時間。
・粉砕粉量は、粉砕、洗浄時に発生した粉の量であり、温水洗浄後の粗粉砕物と一緒に排出されたアルカリまたは石鹸を含む洗浄温水が、粗粉砕物と分けられた後に、60メッシュの金網を設置し、そこに濾過された粉量を測定した。
・含水量(脱水後)は、脱水機7を通過後のサンプルを100L取り出し、取り出し直後と乾燥機で十分乾燥した後との重量差から算出した。
【0060】
[評価]
サンプル1と2では、脱水後の細粉砕物の含水量が42wt%、27wt%と大きくなった。水分量が多いことで、溶融押出機からの押し出し状態は安定しなかった。これは、粗粉砕したときの粉砕物の平均粉砕サイズが4cmと小さすぎたことで、単位量(例えば100L)当たりの粉砕物における各粉砕物の粉砕面から内部に洗浄したときに水が浸入し、水分の総量が大きくなり、脱水機7による脱水処理のみでは十分な脱水が行えず、溶融押出機10のベント口57から除水(脱水)しても、なお再生溶融樹脂中に水分が残存していたことによると考えられる。
【0061】
また、サンプル1と2では、粉砕物の平均粉砕サイズが小さいことから、次工程での微粉砕粉量も大きくなり、その分、洗浄温水の濾過負担も大きくなる傾向もある。
【0062】
サンプル7は、粗粉砕物の平均粒径サイズが400cmと大きく、各工程間での配管によるエアー輸送が困難となり、生産性の低下をまねいた。なお、細粉砕後に溶融押出機に投入して押し出し状態を観察した結果、押し出しは良好であった。
【0063】
サンプル3〜6は、配管によるエアー輸送も良好で生産性が高く、また溶融押出機での押し出しも安定性もよく押し出しできた。
【0064】
以上のことから、市場回収発泡樹脂容器を平均大きさほぼ7〜300cmに粗粉砕して粗粉砕物することと、ほぼ18wt%以下に脱水処理された粗粉砕物を平均大きさほぼ0.2〜6cmに細粉砕して細粉砕物とすることにより、従来知られた溶融押出機を用いて、かつ加熱乾燥装置を用いることなく、短時間に少ないエネルギーで良質の再生樹脂を安定して押し出し可能となることがわかる。
【符号の説明】
【0065】
1…粗粉砕機、
2…サイロ、
3…水洗浄機、
4…コンベア、
5…温水洗浄機、
6…洗浄移動機、
7…脱水機、
8…細粉砕機、
9…サイロ、
10…溶融押出機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
市場から回収した発泡樹脂シート成形容器を再生樹脂としてリサイクルするための方法であって、
前記市場回収発泡樹脂容器を平均大きさほぼ7〜300cmに粗粉砕して粗粉砕物とする工程と、
前記粗粉砕物を水洗浄する工程と、
前記水洗浄後の粗粉砕物をアルカリもしくは石鹸を含むほぼ30〜70℃の温水で洗浄する工程と、
前記温水洗浄後の粗粉砕物を加熱乾燥することなく物理的な脱水処理によって含水量をほぼ18wt%以下にする工程と、
前記ほぼ18wt%以下に脱水処理された粗粉砕物を平均大きさほぼ0.2〜6cmに細粉砕して細粉砕物とする工程と、
前記細粉砕物を溶融押出機を利用して減容と溶融を行い再生溶融樹脂とする工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする市場回収発泡樹脂容器のリサイクル方法。
【請求項2】
溶融押出機として、直列に配列した第1の溶融押出機と第2の溶融押出機とを備え、第1の溶融押出機の溶融樹脂押出口と第2の溶融押出機の溶融樹脂取入口との連結部には減圧室が形成されて溶融押出機を用いることを特徴とする請求項1に記載の市場回収発泡樹脂容器のリサイクル方法。
【請求項3】
市場から回収した発泡樹脂シート成形容器を再生樹脂としてリサイクルするための装置であって、
前記市場回収発泡樹脂容器を平均大きさほぼ7〜300cmに粗粉砕して粗粉砕物とするための粗粉砕機と、
生成された前記粗粉砕物を水洗浄するための水洗浄機と、
前記水洗浄後の粗粉砕物をアルカリもしくは石鹸を含むほぼ30〜70℃の温水で洗浄するための温水洗浄機と、
前記温水洗浄後の粗粉砕物を加熱乾燥することなく物理的な脱水処理にて含水量をほぼ18wt%以下にすることのできる脱水機と、
前記脱水処理された粗粉砕物を平均大きさほぼ0.2〜6cmに細粉砕して細粉砕物とするための細粉砕機と、
前記細粉砕物の減容と溶融を行い再生溶融樹脂とするための溶融押出機と、
を少なくとも含むことを特徴とする市場回収発泡樹脂容器のためのリサイクル装置。
【請求項4】
溶融押出機が、直列に配列した第1の溶融押出機と第2の溶融押出機とを備え、第1の溶融押出機の溶融樹脂押出口と第2の溶融押出機の溶融樹脂取入口との連結部には減圧室が形成されて溶融押出機であることを特徴とする請求項3に記載の市場回収発泡樹脂容器のリサイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−6939(P2013−6939A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139793(P2011−139793)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000239138)株式会社エフピコ (98)
【Fターム(参考)】