説明

布帛印刷装置

【課題】白インクを用いた場合でも、チューブ内のインクの沈降を抑え、チューブ内における濃度勾配を小さくすることのできる布帛印刷装置の提供。
【解決手段】白インクの第一カートリッジ31と白インク用のインクジェットヘッド21との間に設けられる白インク用のインク供給チューブ34を、後アーム部と前アーム部の2段に分かれた平板状の第一アーム36の下面位置で保持する。カラーインク用のインク供給チューブ35も同様に第二アーム37の下面位置で保持する。第一アーム36は第二アーム37よりも下方に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛印刷装置に関するものであり、詳細には、白インク用の記録ヘッド、白インク用のインク供給手段、および、インク供給保持手段を備えた布帛印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カラーインクを用いるインクジェットプリンタとしては、例えば、特許文献1に記載のものがある。この従来技術は、カラーインクのカートリッジとインクジェットヘッドとの間に設けられるインク供給用のチューブを、インクジェットヘッドの搬送手段であるキャリッジに搭載した支持部材により支持し、さらにキャリッジ後方のガイド部材によりチューブをガイドする構成となっている。この従来例によれば、ガイド部材からインクジェットヘッドまでのチューブの状態がほぼ一定に保たれるため、チューブ内の圧力変動を少なくすることができる。また、インクのカートリッジを本体側に固定して使用することができるので、キャリッジを移動させるためのスペースを小さくすることができる。
【特許文献1】特開2005−199506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来例の場合には、支持部材がキャリッジ上方の高い位置にあるため、支持部材のチューブ支持部からインクジェットヘッドとのチューブの接続位置まで、および、支持部材のチューブ支持部からガイド部材によるチューブのガイド部までの高低差が大きくなる。
【0004】
CMYKのカラーインクは、このような従来例においても問題なく使用可能であるが、白インクについては、顔料に酸化チタンを使用するために、他のカラーインクの顔料に比べて密度が非常に大きく、また粒子径も大きいため、チューブ内におけるインクの沈降が避けられない。
【0005】
そのため、チューブ内において、白インクの顔料の濃度が著しく高くなる部分と、低くなる部分とが発生し、それが原因で白インクの不吐出、ヘッド内へのインク流入不足、あるいは、濃度ムラを発生させることがあった。
【0006】
本発明の目的は、白インクを用いた場合でも、チューブ内のインクの沈降を抑え、チューブ内における濃度勾配を小さくすることのできる布帛印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の布帛印刷装置では、筐体と、前記筐体に対して移動自在に配置され、印刷データに応じて主走査方向に白インクを吐出する第一記録ヘッドと、前記筐体に対して固定的に取り付けられ、前記白インクを格納する第一インクカートリッジと、前記第一記録ヘッドに白インクを供給する第一インク供給手段と、前記第一インク供給手段と前記第一記録ヘッドとの接続位置よりも前記筺体の高さ方向における上方に配置され、前記第一インク供給手段を保持する第一インク供給保持手段とを備え、前記第一インク供給保持手段は、前記高さ方向における前記第一インク供給保持手段の上端面位置と前記第一インクカートリッジ底面位置の範囲内で前記第一インク供給手段を保持することを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の布帛印刷装置によれば、第一インク供給手段を出来るだけ低く水平に保持することにより、沈降が避けられない白インクの第一インク供給手段内における濃度勾配を出来るだけ少なくすることができる。
【0009】
請求項2に記載の布帛印刷装置では、請求項1に記載の構成に加え、前記第一インク供給保持手段は、平板状の保持面を有し、前記第一インクカートリッジ側の保持部から、前記第一記録ヘッドとの接続位置の近傍に至るまで、前記平板状の保持面により前記第一インク供給手段を保持することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の布帛印刷装置によれば、前記第一インクカートリッジ側の保持部から、前記第一記録ヘッドとの接続位置の近傍に至るまで、前記平板状の保持面により前記第一インク供給手段が保持されるので、前記第一インク供給手段は略水平に保持されることになり、沈降が避けられない白インクの第一インク供給手段内における濃度勾配を出来るだけ少なくすることができる。
【0011】
請求項3に記載の布帛印刷装置では、請求項1または2に記載の構成に加えて、前記布帛印刷装置は、前記第一記録ヘッドと並行して移動自在に配置され、印刷データに応じて主走査方向にカラーインクを吐出する第二記録ヘッドと、前記カラーインクを格納する第二インクカートリッジと、前記第二記録ヘッドにカラーインクを供給する第二インク供給手段と、前記第二インク供給手段を保持する第二インク供給保持手段とを備え、前記第一インク供給手段は、前記第二インク供給保持手段により保持される前記第二インク供給手段よりも前記筺体の高さ方向において低い位置にて保持されることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の布帛印刷装置によれば、第一インク供給手段を第二インク供給手段よりも低く水平に保持することにより、カラーインクに比べて沈降しやすい白インクの第一インク供給手段内における濃度勾配を出来るだけ少なくすることができる。
【0013】
請求項4に記載の布帛印刷装置では、請求項3に記載の構成に加えて、前記第一インク供給手段は、前記第二インク供給手段よりも供給距離が短いことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の布帛印刷装置によれば、カラーインクの供給手段よりも、白インクの供給手段の供給距離が短いので、沈降量を減少させることができる。
【0015】
請求項5に記載の布帛印刷装置では、請求項3または4に記載の構成に加えて、前記第一インク供給手段により前記第一記録ヘッドへ供給される白インクは、前記第二インク供給手段により前記第二記録ヘッドへ供給されるカラーインクよりも密度が大きいことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の布帛印刷装置によれば、白インクは他のカラーインクよりも密度が大きく、沈降しやすいが、請求項3または4の構成により、沈降を少なくすることができる。
【0017】
請求項6に記載の布帛印刷装置では、請求項3ないし5のいずれか一に記載の構成に加えて、前記第一インク供給手段により前記第一記録ヘッドへ供給される白インクは、前記第二インク供給手段により前記第二記録ヘッドへ供給されるカラーインクよりも顔料の粒子径が大きいことを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の布帛印刷装置によれば、白インクはカラーインクよりも顔料の粒子径が大きく、沈降しやすいが、請求項3ないし4の構成により、沈降を少なくして濃度勾配を抑えることができる。
【0019】
請求項7に記載の布帛印刷装置では、請求項3ないし6のいずれか一に記載の構成に加えて、前記第一インク供給手段および前記第二インク供給手段はチューブであることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の布帛印刷装置によれば、インク供給手段は可撓性のチューブなので、請求項3ないし6のいずれかの構成を容易に実現し、白インクの沈降を少なくすることができる。
【0021】
請求項8に記載の布帛印刷装置では、請求項1ないし7のいずれか一に記載の構成に加えて、前記第一記録ヘッドを主走査方向に走査させる第一ヘッド搬送手段を更に備え、前記第一インク供給保持手段は、前記第一ヘッド搬送手段が前記第一記録ヘッドを主走査方向に走査させる際に、第一インク供給手段を主走査方向に略平坦に保持することを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の布帛印刷装置によれば、第一インク供給手段を走査させている間においても第一インク供給手段を上下動させず、沈降しやすい白インクの第一インク供給手段内における濃度勾配を出来るだけ少なくすることができる。
【発明の効果】
【0023】
第一インク供給保持手段が、前記高さ方向における第一インク供給保持手段の上端面位置と第一インクカートリッジ底面位置の範囲内で第一インク供給手段を保持するので、第一インク供給手段を出来るだけ低く水平に、高低差を小さくして保持することになり、沈降が避けられない白インクの第一インク供給手段内における濃度勾配を出来るだけ少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。まず、図1ないし図5を参照して、本実施の形態の布帛印刷装置としてのインクジェットプリンタ1について説明する。図1は、インクジェットプリンタ1の平面図であり、図2は、インクジェットプリンタ1の正面図であり、図3は、インクジェットプリンタ1の側面図であり、図4は、電気的構成を示すブロック図、図5はインク供給保持手段の駆動機構を示す図である。
【0025】
本実施の形態では、インクジェットプリンタ1は、インクを噴射するノズル面を具備する第一記録ヘッドとしての第一インクジェットヘッド21および第二記録ヘッドとしての第二インクジェットヘッド22にインクを供給して、被記録媒体へ印刷を行う周知のインクジェットプリンタである。被記録媒体としてTシャツ等の布帛を扱い、入力された画像情報等に基づいてTシャツ等の布帛への印刷を行う。図1および図2に示すように、インクジェットプリンタ1は平面板状のベース2を下面に備え、筺体としての本体カバー10が設けられている。
【0026】
本実施形態におけるインクジェットプリンタ1の記録機構は、周知のインクジェット式記録機構であり、第一インクジェットヘッド21を搭載したキャリッジ13の移動を、インクジェットプリンタ1の左右方向に案内するためのガイドレール11が架設されている。このガイドレール11の右端付近に第一ヘッド搬送手段としての第一キャリッジモータ24(図4参照)が設けられ、左端付近にプーリが設けられ、その間にキャリッジベルトが架設されている。このキャリッジベルトはキャリッジ13の背面に固定されている。キャリッジ13は第一キャリッジモータ24の駆動によって、ガイドレール11に沿って往復移動される。ガイドレール11の右または左の端部の何れかに第一インクジェットヘッド21のメンテナンス行う図示しない第一メンテナンス機構であるキャッピング機構、ワイプ機構、および、パージ機構が設けられている。
【0027】
図1および図2に示すように、本体カバー10の側面の右端部には白色のインクの第一インクカートリッジ31が収納されている。第一インクカートリッジ31と前記第一インクジェットヘッド21との間には、第一インク供給手段としてのインク供給チューブ34が設けられている。、インク供給チューブ34は第一インクカートリッジ31内の白インクを第一インクジェットヘッド21に供給している。
【0028】
インク供給チューブ34は、可撓性のチューブであり、キャリッジ13がガイドレール11の右端と左端の間を移動する際に、このキャリッジ13に追従して第一インクジェットヘッド21への白インクの供給を行う。そのため、ガイドレール11よりも長く形成されている。このように長く形成されたインク供給チューブ34を、キャリッジ13の移動に円滑に追従させるため、本実施形態においては、第一インク供給保持手段としての第一アーム36を備えている。
【0029】
第一アーム36は、本体カバー10内に設けられた支点36aを中心に回動する後アーム部と、この後アーム部に設けられた支点36bを中心に回動し、キャリッジ13に支点36cにより連結された前アーム部とを備えている。第一アーム36は、キャリッジ13の移動に伴って、図5に示すように回動する。
【0030】
まず、図5(A)の位置では、第一アーム36の後アーム部と前アーム部が成す内角が鋭角な状態になっている。キャリッジ13の図5(B)の矢印方向への移動に伴って第一アーム36は後アーム部と前アーム部とのなす角が鈍角に変化するように回動する。インクジェットプリンタ1の左方向(図5の上方向)に回動する。そして、キャリッジ13がインクジェットプリンタ1の左端まで移動すると、図5(C)のように第一アーム36の後アーム部と前アーム部が成す内角が鈍角となる。その後、第一アーム36は、図5(D)から図5(E)のように、第一アーム36の後アーム部と前アーム部が成す内角が徐々に再び鋭角な状態に戻るように回動する。図2に示すように、第一アーム36の後アーム部と前アーム部は、略水平に保たれているので、図5(A)〜図5(E)に示すように第一アーム36が回動した場合でも、この略水平状態を保つ。
【0031】
図1および図2に示すように、第一アーム36の下部には、インク供給チューブ34が後アーム部と前アーム部に沿って保持されている。従って、図5(A)〜図5(E)に示すように第一アーム36が回動した場合でも、インク供給チューブ34を略水平状態に保つ。この第一アーム36とインク供給チューブ34との関係については、後ほど詳述する。
【0032】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1においては、ガイドレール11と平行に第二記録ヘッドとしての第二インクジェットヘッド22を搭載したキャリッジ14の移動を案内するためのガイドレール12が架設されている。図2に示すように、ガイドレール12は、本体カバー10の高さ方向において、ガイドレール11よりも高い位置に設けられている。
【0033】
このガイドレール12の左端付近に第二キャリッジモータ25(図4参照)が設けられ、右端付近にプーリが設けられ、その間にキャリッジベルトが架設されている。このキャリッジベルトはキャリッジ14の背面に固定されている。キャリッジ14は第二キャリッジモータ25の駆動によって、ガイドレール12に沿って往復移動される。なお、ガイドレール12の右または左の端部の何れかに第二インクジェットヘッド21のメンテナンス行う図示しない第二メンテナンス機構であるキャッピング機構、ワイプ機構及びパージ機構が設けられている。
【0034】
さらに、図1および図2に示すように、本体カバー10の側面の左端部には、CMYKの各色のインクの第二インクカートリッジ32が設けられている。この第二インクカートリッジ32と第二インクジェットヘッド22との間には、第二インク供給手段としてのインク供給チューブ35が設けられており、第二インクカートリッジ32内のCMYKの各色のインクを第二インクジェットヘッド22に供給している。
【0035】
本実施の形態では、第一インクジェットヘッド21は白インク専用のインクジェットヘッドであり、第二インクジェットヘッド22は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)のインクを吐出するインクジェットヘッドである。
【0036】
インク供給チューブ35は、可撓性のチューブであり、キャリッジ14がガイドレール12の左端と右端の間を移動する際に、このキャリッジ14に追従して第二インクジェットヘッド22へのCMYKの各色インクの供給を行う。そのため、ガイドレール12よりも長く形成されている。このように長く形成されたインク供給チューブ34を、キャリッジ14の移動に円滑に追従させるため、本実施形態においては、第二インク供給保持手段としての第二アーム37を備えている。
【0037】
第二アーム37は、本体カバー10内に設けられた支点37aを中心に回動する後アーム部と、この後アーム部に設けられた支点37bを中心に回動し、キャリッジ14に支点37cにより連結された前アーム部とを備えている。第二アーム37は、キャリッジ14の移動に伴って、図5に示すように回動する。
【0038】
まず、図5(A)の位置では、第二アーム37の後アーム部と前アーム部が成す内角が鋭角な状態になっている。キャリッジ14の図5(B)の矢印方向への移動に伴って第二アーム37の後アーム部と前アーム部とのなす角が鈍角に変化するように回動する。インクジェットプリンタ1の右方向(図5の下方向)に回動する。そして、キャリッジ14がインクジェットプリンタ1の右端まで移動すると、図5(C)のように第二アーム37の後アーム部と前アーム部が成す内角が鈍角な状態となる。その後、第二アーム37は図5(D)から図5(E)のように、第二アーム37の後アーム部と前アーム部が成す内角が徐々に再び鋭角な状態に戻るように回動する。図2に示すように、第二アーム37の後アーム部と前アーム部は、略水平に保たれているので、図5(A)〜図5(E)に示すように第二アーム37が回動した場合でも、この略水平状態を保つ。
【0039】
図1および図2に示すように、第二アーム37の下部には、インク供給チューブ35が後アーム部と前アーム部に沿って保持されている。従って、図5(A)〜図5(E)に示すように第二アーム37が回動した場合でも、インク供給チューブ35を略水平状態に保つ。
【0040】
また、上述したように、ガイドレール12がガイドレール11よりも高い位置に設けられているため、図5(A)〜図5(E)に示すように、第一アーム36と第二アーム37が互いに交差する方向に動いた場合でも、第一アーム36と第二アーム37が干渉することなく回動することができる。
【0041】
なお、本実施の形態では、インクジェットプリンタ1の左右方向(図1における左右方向)が第一インクジェットヘッド21及び第二インクジェットヘッド22の主走査方向となる。
【0042】
また、ベース2には、インクジェットプリンタ1の前後方向(図1においては下方向がインクジェットプリンタ1の前方向に相当し、上方向がインクジェットプリンタ1の後方向に相当する)に被記録媒体を保持するプラテン5の移動を案内するための送り機構7が設けられている。この送り機構7は、図示しないガイドレールと、当該ガイドレールの後端部(図1における上側の端部)に設けられたステッピングモータ等のプラテン搬送モータ40(図4参照)から構成されており、プラテン搬送モータ40の駆動により、プラテン5が、図1における上下方向に送り機構7のガイドレールに沿って往復移動する。
【0043】
また、プラテン5は、平面視五角形に形成され、詳細には、長方形状の板体の操作者に対向する側の短辺の中央が突出した形状の五角形であり、その上面に、例えばTシャツなどの布帛からなる被記録媒体を水平に載置するのに適した形状となっている。尚、このプラテン5には、複数の種類があり被記録媒体であるTシャツ等のサイズや形状により使用するプラテン5の種類が決定される。
【0044】
また、図1及び図2に示すように、インクジェットプリンタ1の前面の右端部には、インクジェットプリンタ1の操作を行うための操作パネル28が設けられている。この操作パネル28には、印刷を指示する印刷ボタン29、および、各種の表示を行うLCDから構成された表示部30が設けられている。
【0045】
次に、図4を参照して、インクジェットプリンタ1の電気的な構成について説明する。図4に示すように、インクジェットプリンタ1の制御部100には、インクジェットプリンタ1全体の制御を司るCPU110が設けられ、CPU110には、バス115を介して、CPU110が実行する各種の制御プログラム等を記憶したROM120と、データを一時的に記憶するRAM130とが接続されている。
【0046】
また、CPU110には、バス115を介して、通信処理部150が接続されており、USB、あるいは、パラレル等のケーブル160を介して、パーソナルコンピュータ170と接続されている。さらに、CPU110には、インクジェットプリンタ1の印刷制御を行う印刷制御部140がバス115を介して接続されている。
【0047】
印刷制御部140には、第一インクジェットヘッド21の各チャンネルに設けられた圧電アクチュエータ、および、第二インクジェットヘッド22の各チャンネルに設けられた圧電アクチュエータを駆動させるための記録ヘッド駆動制御141が設けられている。また、印刷制御部140には、第一キャリッジモータ24を駆動させるための第一ヘッド搬送制御部141と、第二キャリッジモータ25を駆動させるための第二ヘッド搬送制御部142と、プラテン搬送モータ40を駆動させるためのプラテン搬送モータ駆動部143とが設けられている。
【0048】
さらに、印刷制御部140には、操作パネル28上に設けられた印刷開始キー29a、キャンセルキー29b、および、メンテナンスキー29cからの信号を入力するセンサ入力部144と、同じく操作パネル28上に設けられたデータランプ30a、エラーランプ30b、および、ディスプレイ30を制御する表示制御部145とが設けられている。
【0049】
また、本実施形態においては、ガイドレール11およびガイドレール12の右または左の端部の何れかに、第一インクジェットヘッド21および第二インクジェットヘッド22のメンテナンス行う第一および第二のメンテナンス機構が設けられているが、この第一および第二のメンテナンス機構には、第一メンテナンスモータ41と第二メンテナンスモータ42が設けられている。そして、印刷制御部140には、この第一メンテナンスモータ41と第二メンテナンスモータ42をそれぞれ制御する第一メンテナンス制御部146と第二メンテナンス制御部147とが設けられている。
【0050】
次に、本実施形態における白インクのインク供給チューブ34の配置について説明する。本実施形態のインクジェットプリンタ1においては、上述したように、白インク専用の第一インクジェットヘッド21と、CMYKの各カラーインク用の第二インクジェットヘッド22を用いる。この白インクの顔料には、酸化チタンが用いられており、CMYKの各カラーインクの顔料に比べて密度が非常に大きく、粒子径もCMYKの各カラーインクの顔料に比べて大きいという性質を有している。そこで、本実施形態においては、白インクの第一カートリッジ31から第一インクジェットヘッド21の間において、白インク専用のインク供給チューブ34の高低差を出来る限り小さくするように構成した。
【0051】
具体的には、図3に示すように、インク供給チューブ34を、白インクの第一カートリッジ31側の保持部Aから、第一インクジェットヘッド21との接続位置Bの近傍に至るまで、第一アーム36の平板状の保持面により保持するように構成した。その結果、第一インクジェットヘッド21の静止状態と移動状態の何れにおいても、インク供給チューブ34を主走査方向において出来るだけ平坦な状態を保つことができる。
【0052】
なお、図1においては、インク供給チューブ34が第一アーム36に沿って保持される様子を分かり易く示すため、インク供給チューブ34を全て実線で示してあるが、実際には、インク供給チューブ34は第一アーム36の下面部に沿って保持されている。
【0053】
また、図3に示すように、インク供給チューブ34は、上述のように平板状の保持面を有する第一アーム36の上端面位置と、白インクの第一カートリッジ31の底面位置の範囲内で保持されるように構成した。その結果、インク供給チューブ34の高低差を出来る限り小さくすることができる。
【0054】
さらに、図2に示すように、白インクを供給するインク供給チューブ34を保持する第一アーム36は、CMYKの各カラーインクを供給するインク供給チューブ35を保持する第二アーム37よりも、本体カバー10の高さ方向において低い位置に設けられている。その結果、白インク用のインク供給チューブ34の高低差は、CMYKインク用のインク供給チューブ35の高低差よりも小さくすることができる。
【0055】
また、第一アーム36を第二アーム37よりも低い位置に設け、第一インクカートリッジ31から第一インクジェットヘッド21までのインク供給チューブ34の供給距離を、第二インクカートリッジ32から第二インクジェットヘッド22までのインク供給チューブ35の供給距離よりも短く構成している。
【0056】
以上のような構成により、CMYKの各インクの顔料に比べて密度が非常に大きく、粒子径もCMYKの各インクの顔料に比べて大きい顔料を使用する白インクにおいても、インク供給チューブ34における沈降を出来るだけ少なく抑えることができる。その結果、インク供給チューブ34内において、顔料の濃度が著しく高い部分と、著しく低い部分が発生することを抑えることができ、濃度勾配を小さくすることができる。従って、白インクの不吐出、インクヘッド内のインク流入不足、あるいは、濃度ムラの発生を確実に防止することができる。
【0057】
また、本実施形態においては、アーム式のインク供給保持手段を用い、白インク用のインクジェットヘッドと、CMYKインク用のインクジェットヘッドを、それぞれ本体カバー10における右端側と左端側に分けて配置するようにしたので、各ガイドレールの間隔を広げなくても、それぞれのキャリッジの移動時にインク供給チューブが交差することを確実に防止することができる。
【0058】
図5(A)〜図5(E)に示す例では、インクジェットプリンタ1の後方向(図5の右方向)から前方向(図5の左方向)に被印刷媒体が搬送され、それに伴ってキャリッジ13が、インクジェットプリンタ1の右方向(図5の下方向)から左方向(図5の上方向)に移動し、同様に、キャリッジ14が、インクジェットプリンタ1の左方向(図5の上方向)から右方向(図5の下方向)に移動して、印刷が行われる。つまり、まず白インクによる印刷が行われ、その上にCMKYのカラーによる印刷が行われることになる。従って、図5(B)から図5(C)に移行すると、平面図視では第一アーム36と第二アーム37が交差することになるが、本体カバー10の高さ方向においては高低差が設けられているので、それぞれのキャリッジの移動時にインク供給チューブが交差することを確実に防止することができる。
【0059】
なお、本実施形態においては、後アーム部と前アーム部を有する二段アームを用いた例について説明したが、本発明はこのような場合に限定されるものではなく、さらに細かくアーム部が分れた多段アームを用いる場合にも適用可能である。また、キャタピラ式や蛇腹式などに拡張することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の布帛印刷装置は、白インク用の記録ヘッドを備え、筺体側に固定的に取り付けらた白インク用のカートリッジから前記記録ヘッドに白インクを供給する布帛印刷装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態のインクジェットプリンタ1の平面図である。
【図2】本実施形態のインクジェットプリンタ1の正面図である。
【図3】本実施形態のインクジェットプリンタ1の側面図である。
【図4】本実施形態のインクジェットプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】(A)〜(E)は本実施形態のインクジェットプリンタ1におけるインク供給保持手段の機構を説明する図である。
【符号の説明】
【0062】
1 インクジェットプリンタ
2 ベース
5 プラテン
7 送り機構
10 本体カバー
13 キャリッジ
14 キャリッジ
21 第一インクジェットヘッド
22 第二インクジェットヘッド
28 操作パネル
29 印刷ボタン
30 表示部
31 第一インクカートリッジ
32 第二インクカートリッジ
34 インク供給チューブ
35 インク供給チューブ
36 第一アーム
37 第二アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に対して移動自在に配置され、印刷データに応じて主走査方向に白インクを吐出する第一記録ヘッドと、
前記筐体に対して固定的に取り付けられ、前記白インクを格納する第一インクカートリッジと、
前記第一記録ヘッドに白インクを供給する第一インク供給手段と、
前記第一インク供給手段と前記第一記録ヘッドとの接続位置よりも前記筺体の高さ方向における上方に配置され、前記第一インク供給手段を保持する第一インク供給保持手段と、
を備え、
前記第一インク供給保持手段は、前記高さ方向における前記第一インク供給保持手段の上端面位置と前記第一インクカートリッジ底面位置の範囲内で前記第一インク供給手段を保持することを特徴とする布帛印刷装置。
【請求項2】
前記第一インク供給保持手段は、平板状の保持面を有し、前記第一インクカートリッジ側の保持部から、前記第一記録ヘッドとの接続位置の近傍に至るまで、前記平板状の保持面により前記第一インク供給手段を保持することを特徴とする請求項1記載の布帛印刷装置。
【請求項3】
前記布帛印刷装置は、
前記第一記録ヘッドと並行して移動自在に配置され、印刷データに応じて主走査方向にカラーインクを吐出する第二記録ヘッドと、
前記カラーインクを格納する第二インクカートリッジと、
前記第二記録ヘッドにカラーインクを供給する第二インク供給手段と、
前記第二インク供給手段を保持する第二インク供給保持手段と、
を備え、
前記第一インク供給手段は、前記第二インク供給保持手段により保持される前記第二インク供給手段よりも前記筺体の高さ方向において低い位置にて保持されることを特徴とする請求項1または2に記載の布帛印刷装置。
【請求項4】
前記第一インク供給手段は、前記第二インク供給手段よりも供給距離が短いことを特徴とする請求項3に記載の布帛印刷装置。
【請求項5】
前記第一インク供給手段により前記第一記録ヘッドへ供給される白インクは、前記第二インク供給手段により前記第二記録ヘッドへ供給されるカラーインクよりも密度が大きいことを特徴とする請求項3または4に記載の布帛印刷装置。
【請求項6】
前記第一インク供給手段により前記第一記録ヘッドへ供給される白インクは、前記第二インク供給手段により前記第二記録ヘッドへ供給されるカラーインクよりも顔料の粒子径が大きいことを特徴とする請求項3ないし5のいずれか一に記載の布帛印刷装置。
【請求項7】
前記第一インク供給手段および前記第二インク供給手段はチューブであることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか一に記載の布帛印刷装置。
【請求項8】
前記第一記録ヘッドを主走査方向に走査させる第一ヘッド搬送手段を更に備え、
前記第一インク供給保持手段は、前記第一ヘッド搬送手段が前記第一記録ヘッドを主走査方向に走査させる際に、第一インク供給手段を主走査方向に略平坦に保持することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一に記載の布帛印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−243007(P2009−243007A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93059(P2008−93059)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】