説明

布接着装置

【課題】布の移送の制限を緩和し、布の配置が異なる様々な接着工程に対応することができる布接着装置を提供する。
【解決手段】布接着装置本体は、ノズルを支持する支持部を、装着部29によって着脱可能に装着する。装着部29に第一支持部31を装着すると、第一支持部31の姿勢は、上移送ローラによる布の移送方向に対して交差する方向である一側方からノズル35を突出させる第一姿勢となる。装着部29から第一支持部31を取り外し、第二支持部を装着すると、第二支持部の姿勢は、布の移送方向に対して交差するように、第一支持部31がノズル35を突出させる側とは反対側からノズルを突出させる第二姿勢となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布接着装置に関する。より詳細には、布に接着剤を付着して圧着することで布同士を接着する布接着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、針及び縫糸を用いた縫製を行わず、接着剤によって布同士を接着する布接着装置がある。この布接着装置は、液状の接着剤を、対向配置した布の間にノズルから吐出して付着する。接着剤を付着した布を移送手段(例えば、ローラ)によって加圧、移送することで、布同士を接着する。接着した布には縫糸を使用していないため、布に凹凸が生じることなく布同士を接着することができる。
【0003】
布接着装置においては、布の移送方向におけるローラの上流側で、布に接着剤を付着しなければならない。さらに、接着強度を確保するためには、適度な幅で接着剤を布に付着することが望ましい。そこで、接着剤の流路を有する支持部で棒状のノズルを支持して、ノズルを一側方から突出させる布接着装置がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の布接着装置では、棒状のノズルを移送方向に交差するように支持することができる。よって、移動する布に適度な幅で接着剤を付着することができる。この布接着装置では、対向する布の間にノズルを挟むように布を配置し、接着工程を開始させる。これにより、布の間に接着剤が付着し、その布がそのまま移送手段によって加圧されるため、スムーズに接着工程が進行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−70807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の布接着装置では、対向する布の間にノズルを挟む必要があるため、ノズルの上側にある布の移送が支持部によって制限を受ける。すなわち、布接着装置では、ノズルは支持部の下端部から側方へ突出している。よって、ノズルの下側にある布は自由に動かすことができるが、ノズルの上側にある布の移動範囲は、支持部による制限を受ける。さらに、布接着装置では、台座部から立設する脚柱部等がノズルの周囲に位置する。よって、ノズルの上側にある布がスムーズに移送するように布の配置を変更すると、逆に、ノズルの下側にある布の移動範囲が脚柱部等によって制限を受ける場合もある。このように、接着工程によっては、支持部が邪魔になって布を適切に移送することが困難となり、接着作業をスムーズに行うことができない場合があった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、布の移送の制限を緩和し、布の配置が異なる様々な接着工程に対応することができる布接着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の布接着装置は、対向配置した布の間に接着剤を吐き出して付着させる吐き出し口を備えた棒状のノズルと、前記接着剤が付着した前記布を押圧して移送する移送手段と、前記ノズルへ前記接着剤を導く流路を有し、且つ前記移送手段による前記布の移送方向と前記ノズルの長手方向とが交差するように前記ノズルを先端部に支持する支持部とを備えた布接着装置であって、前記支持部の姿勢を、前記移送手段による前記布の移送方向に対して交差する方向の一側方から前記ノズルを突出させる第一姿勢と、前記一側方とは反対側の側方から前記ノズルを突出させる第二姿勢とに切替可能な切替手段を備えている。
【0008】
本発明の請求項2に記載の布接着装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記切替手段は、前記支持部を装置本体に着脱可能に装着する装着手段であり、前記装着手段に装着させることで前記第一姿勢となる前記支持部である第一支持部と、前記装着手段に装着させることで前記第二姿勢となる前記支持部である第二支持部とを、択一的に前記装着手段に装着可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載の布接着装置は、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記装着手段は、前記支持部の基端に形成した嵌合部に嵌合する被嵌合部と、前記被嵌合部に形成し、前記支持部の前記流路に前記接着剤を供給する供給路を前記流路の基端に接続する接続部と、前記接続部に位置して、前記流路の基端と前記接続部との隙間を閉塞するシール部材と、前記被嵌合部に嵌合した前記嵌合部を押圧して前記被嵌合部に装着する蓋部材とを備えている。
【0010】
本発明の請求項4に記載の布接着装置は、請求項2又は3に記載の発明の構成に加え、前記第一支持部の前記流路の長さと、前記第二支持部の前記流路の長さとが同一であることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に記載の布接着装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記切替手段は、前記支持部の長手方向略中央から基端部分であり、装置本体から延びる基部と、前記支持部の長手方向略中央から先端部分であり、前記基部に回動可能に接続し、且つ先端部に前記ノズルを支持する可動部とを備え、前記基部に対して前記可動部を回動させることで、前記支持部の姿勢を前記第一姿勢と前記第二姿勢とに切り替えることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6に記載の布接着装置は、請求項5に記載の発明の構成に加え、前記基部に対する前記可動部の回動中心位置が、前記ノズルの吐き出し口の長手方向中央を通って移送方向に伸長する鉛直平面上に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の布接着装置は、ノズルを支持する支持部の姿勢を、一側方からノズルを突出させて布の移送方向に交差させる第一姿勢と、反対側の側方からノズルを突出させて移送方向に交差させる第二姿勢とに切り替えることができる。従って、接着工程に応じて支持部の姿勢を切り替えることで、支持部によって布の移送が困難になることを回避することができる。よって、作業者は、1つの装置で様々な接着工程を行うことができる。
【0014】
本発明の請求項2に記載の布接着装置によると、請求項1に記載の発明の効果に加え、第一姿勢となる第一支持部と、第二姿勢となる第二支持部とを、択一的に装置本体に装着することができる。よって、作業者は、接着工程に適した支持部を装置本体に装着するだけで、様々な接着工程を行うことができる。
【0015】
本発明の請求項3に記載の布接着装置では、支持部の基端に形成した嵌合部を被嵌合部に嵌合することで、支持部が有する接着剤の流路が、接着剤の供給路に接続する。この状態で蓋部材を装着することで、蓋部材は支持部の嵌合部を被嵌合部に押圧して装着し、被嵌合部を閉塞する。嵌合部を被嵌合部に押圧して装着するため、被嵌合部のシール部材に力が加わる。よって、請求項2に記載の発明の効果に加え、支持部を装置本体に装着できることに加え、接続部から接着剤が漏れるおそれを低下させることができる。さらに、蓋部が被嵌合部を閉塞するため、接着剤の乾燥を防止し、且つ接着剤の温度変化を抑制することができる。
【0016】
本発明の請求項4に記載の布接着装置では、第一支持部の接着剤の流路と、第二支持部の接着剤の流路とが同じ長さである。従って、請求項2又は3に記載の発明の効果に加え、第一支持部及び第二支持部のいずれを用いた場合でも、接着剤の温度、流路内の接着剤の圧力等を同等にすることができる。よって、使用する支持部に応じて布接着装置の制御を変化させる必要がなく、作業効率や接着後の品質を同等にすることができる。
【0017】
本発明の請求項5に記載の布接着装置によると、請求項1に記載の発明の効果に加え、可動部を回動させることで、ノズルを支持する支持部の姿勢を第一姿勢と第二姿勢とに切り替えることができる。これにより、作業者は、様々な接着工程を、布の移送の制限を受けることなく行うことができる。支持部の姿勢を切り替えた場合でも、接着剤の流路の長さは変わらないため、接着剤の温度、流路内の接着剤の圧力等は変化しない。よって、支持部の姿勢に応じて布接着装置の制御を変化させる必要がなく、作業効率や接着後の品質を同等にすることができる。
【0018】
本発明の請求項6に記載の布接着装置では、請求項5に記載の発明の効果に加え、可動部を回動させるだけで、移送手段に対するノズルの位置が略同じ位置になるように、ノズルを支持している支持部の姿勢(ノズルの突出方向)を切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一支持部31を装着した布接着装置1を前方左斜め上から見た斜視図である。
【図2】布接着装置1の内部構造を前方左斜め上から見た斜視図である。
【図3】ポンプケース26及び第一支持部31を布接着装置1の前方から見た断面図である。
【図4】第二支持部51を装着した布接着装置1を前方左斜め上から見た斜視図である。
【図5】ポンプケース26及び第二支持部51を布接着装置1の前方から見た断面図である。
【図6】布接着装置101を前方左斜め上から見た斜視図である。
【図7】第一姿勢となっている支持部131を布接着装置1の前方から見た断面図である。
【図8】第二姿勢となっている支持部131を布接着装置1の前方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第一の実施形態に係る布接着装置1について、図1〜図5を参照して説明する。尚、これらの図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載している装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0021】
はじめに、図1を参照して、第一の実施形態に係る布接着装置1の物理的構成について説明する。以下の説明では、図1における右斜め下方を操作者に対向する布接着装置1の前方、左斜め上方を布接着装置1の後方とする。図1における右斜め上方を布接着装置1の右方、左斜め下方を布接着装置1の左方とする。図1に示す布接着装置1が装着している第一支持部31は、布の移送方向に対してノズル35が交差するように、ノズル35を左方へ突出させる。
【0022】
図1に示すように、布接着装置1は、台座部2、脚柱部3、及びアーム部4を備えている。台座部2は、左右方向を長手方向とする略直方体状であり、テーブル(図示せず)に固定する。脚柱部3は、台座部2の右端から鉛直上方に立設する。アーム部4は、脚柱部3の上端に接続し、脚柱部3の左側面よりも左方に突出している。
【0023】
台座部2は、布を押圧して移送する下移送ローラ82(図2参照)、下移送ローラ82を駆動する第三モータ93(図2参照)等を内部に備える。また、台座部2は、脚柱部3を支持する土台として機能し、脚柱部3はアーム部4を支持する。これにより、ユーザは布接着装置1を安定した状態で使用できる。アーム部4は、後方から順に梁部6、貯蔵室21、及びポンプケース26を備えている。また、アーム部4は、布を押圧して移送するための第二モータ92(図2参照)、後述するギアポンプ81(図2参照)を駆動するための第一モータ91(図2参照)等を内部に備える。
【0024】
以下、梁部6、貯蔵室21、及びポンプケース26について説明する。まず、梁部6、及び梁部6に接続するローラ保持部13について説明する。図1に示すように、梁部6は、本体部7、ばね支持部8、及び柱部9を備えている。本体部7は、アーム部4の左側後端部から左方へ水平方向に延びる略棒状の部材である。本体部7の左右方向の長さは、台座部2の左右方向の長さの約3分の1である。ばね支持部8は板状であり、本体部7の左端部から前方へ水平方向に延びる。ばね支持部8の前後方向の長さは、台座部2の前後方向の長さの約2分の1である。柱部9は、延設方向の角度が水平面に対して約45度となるような状態で、本体部7から前方斜め下方へ延びている。柱部9の下端部と台座部2との間には隙間がある。
【0025】
ばね支持部8の前方側の先端部には孔を形成しており、ばね11に挿通している軸部12の上端部分を孔に挿入し、上下方向に移動可能に保持している。柱部9は、下端部分の左側で、左右方向を軸心方向として回動可能にローラ保持部13を軸支している。これにより、ローラ保持部13は、後端部14を揺動中心軸として、前端部15を上下方向に揺動させることができる。本体部7は、ばね支持部8よりも右側に、後述する第一支持部31の位置を移動させるためのエアシリンダ18を備えている。
【0026】
ローラ保持部13は、前端部15に円柱状の上移送ローラ17を回転可能に軸支している。上移送ローラ17の回転軸は左右方向に延びている。上移送ローラ17は、第一支持部31から突出したノズル35の後方近傍に位置する。また、ローラ保持部13の中央からやや前方側の上面に設けたばね軸支部16が、ばね11に挿通している軸部12の下端を軸支している。ばね11は、ばね支持部8と軸部12の下部との間に介在し、軸部12を下方へ付勢することで、軸部12が接続しているローラ保持部13を下方へ付勢する。尚、上移送ローラ17が本発明の「移送手段」に相当する。
【0027】
次に、貯蔵室21について説明する。貯蔵室21は、上下方向を長手方向とする略直方体形状である。貯蔵室21は、アーム部4の左側、且つポンプケース26の後方部分から上方に立設する。貯蔵室21は、貯蔵室本体22、蓋部23、及び蓋軸支部24を備える。貯蔵室本体22の形状は、上部が開口した有底筒状である。蓋部23は、貯蔵室本体22の上部開口を覆う。蓋軸支部24は、蓋部23の一端部を貯蔵室本体22に軸支する。貯蔵室21は、接着剤を貯蔵室本体22の内部に貯蔵し、貯蔵した接着剤を必要に応じてギアポンプ81(図2参照)及びノズル35に供給する。
【0028】
次に、ポンプケース26について説明する。図1に示すように、ポンプケース26は、第一ポンプケース27及び第二ポンプケース28を備えている。第一ポンプケース27は略立方体形状であり、4つのねじによってアーム部4の左側面に接続する。第一ポンプケース27の左側は凹部となっており、第一ポンプケース27は、適量の接着剤を高精度でノズル35に供給するギアポンプ81(図2参照)をこの凹部に備えている。そして、ギアポンプ81を覆うように、第二ポンプケース28が第一ポンプケース27の左側に4つのねじによって接続する。第一ポンプケース27は、第二ポンプケース28と共にポンプ室を形成して、ギアポンプ81によるノズル35への接着剤の加圧供給を可能にしている。
【0029】
第二ポンプケース28は、第一支持部31又は第二支持部51(図4及び図5参照)を着脱可能に装着する装着部29を下部に備えている。以下、第一支持部31及び第二支持部51をまとめて支持部31,51という。装着部29は略直方体形状であり、左右方向に延びる軸を中心として揺動可能に支持部31,51を装着する。作業者は、支持部31,51のうち接着工程に適した方を、装着部29の所定位置に嵌合させる。次いで、蓋部材45を装着部29の左側面に位置させて、ねじ46で装着部29に固定することで、支持部31,51を装着部29に揺動可能に装着することができる。
【0030】
次に、第一支持部31について説明する。第一支持部31は、装着部29に接続する基部32と、ノズル35を固定する腕部33とを備える。基部32は、装着部29から左側へ延び、下方へ屈曲して、さらに前方へ屈曲している。腕部33は、基部32の先端下部から右方へ延びて下方へ屈曲している。ノズル35は棒状であり、腕部33の先端部から左側へ突出している。ノズル35は、接着剤を吐出する吐き出し口36(図3参照)を備えており、布の接着作業を行う場合に、吐き出し口36はノズル35の下面に位置する。
【0031】
第一支持部31の基部32は、エアシリンダ18の出力軸19の先端部に接続するシリンダ軸支部37を備えている。エアシリンダ18を伸縮させると、第一支持部31は前後方向に揺動する。これにより、ノズル35を、布の接着作業を行う場合の位置に移動させたり、保守を行う場合の位置に移動させたりすることができる。尚、第一支持部31の構造の詳細、及び装着部29が支持部31,51を装着する機構の詳細は、後述する。
【0032】
次に、布接着装置1の内部構造について、図2を参照して説明する。布接着装置1は、ギアポンプ81を駆動させるための第一モータ91、上移送ローラ17を駆動するための第二モータ92、下移送ローラ82を駆動するための第三モータ93等を内部に備える。以下、詳細を説明する。
【0033】
第一モータ91は、ポンプケース26の第一ポンプケース27(図1参照)内を挿通する主軸を介して、ギアポンプ81を回転させる。第一モータ91は、アーム部4のうち、ポンプケース26が接続している部分の右方に内装している。ギアポンプ81を回転させることによって、所定量の接着剤をノズル35(図1及び図3参照)又はノズル55(図4及び図5参照)に供給させる。
【0034】
第二モータ92は、梁部6内及びローラ保持部13内を挿通する主軸及びベルトを介して、上移送ローラ17を回転させる。第二モータ92は、アーム部4のうち、梁部6が接続している部分の右方に内装する。上移送ローラ17を回転させることによって、下移送ローラ82との間に挟んだ布を前方から後方に移送させる。
【0035】
第三モータ93は、台座部2内に設けたベルト95及び主軸96を介して、回転駆動力を下移送ローラ82に伝達し、下移送ローラ82を回転させる。第三モータ93は、台座部2の右端に内装している。主軸96は、下移送ローラ82の回転軸から右方に延設している。第三モータ93の回転軸と主軸96の右端部との間には、ベルト95を架設してある。第三モータ93が回転することで下移送ローラ82が回転し、布が後方へ移動する。
【0036】
次に、布接着装置1本体の装着部29が第一支持部31を装着する構造の詳細について、図3を参照して説明する。ポンプケース26の装着部29には、第一支持部31の基端に設けた嵌合部38に嵌合する被嵌合部40を形成してある。嵌合部38は円柱状であり、基端側(図3の右側)の径は先端側(図3の左側)の径よりも大きく、間に段部を有する。被嵌合部40は、左右方向を中心軸線とする有底円筒状であり、被嵌合部40の開口は装着部29の左側に面している。装着部29は、円筒状の被嵌合部40に左側から円柱状の嵌合部38を嵌合することで、第一支持部31を装着する。よって、嵌合部38の中心軸線を中心として、第一支持部31を前後方向に揺動させることができる。
【0037】
第一支持部31は、基端の嵌合部38から先端のノズル35まで接着剤を導く流路39を内部に備えている。流路39は、円筒状である嵌合部38の右端の中心から左側へ延び、基部32及び腕部33の形状に沿って屈曲しながらノズル35へ至る。
【0038】
ポンプケース26の第二ポンプケース28及び装着部29は、第一支持部31へ接着剤を供給する供給路41を内部に備える。供給路41は、ギアポンプ81の下部から左方へ延び、下方へ屈曲して、装着部29の内部へ至る。供給路41の下端部よりもやや上方からは、供給路41と第一支持部31の流路39とを接続する管である接続部42が、被嵌合部40の底部まで左方へ延びている。これにより、ギアポンプ81が加圧した接着剤を、流路39を通じてノズル35へ導くことができる。
【0039】
そして、接続部42の先端(図3の左端)には、接続部42の先端と流路39の基端(図3の右端)との隙間を閉塞するシール部材43を設けてある。シール部材43は、弾性を有する円環状のゴム製パッキンであるが、他の部材をシール部材として用いることもできる。接続部42と流路39との間から接着剤が漏れるおそれを、シール部材43によって低下させることができる。
【0040】
装着部29の左側面には蓋部材45が設けてある。蓋部材45は矩形板状であり、嵌合部38を挿通するための孔とねじ用の孔とを形成してある。第一支持部31を布接着装置1の装置本体に装着する場合、作業者は、蓋部材45に嵌合部38を挿通した状態で、嵌合部38を装着部29の被嵌合部40に挿入する。次いで、蓋部材45のねじ用の孔にねじ46(図1参照)を挿通し、装着部29に形成したねじ孔(図示せず)に締め付ける。ねじ46が右方へ移動するようにねじ46を締め付けるため、蓋部材45には右方への力が加わる。すると、嵌合部38の段部に蓋部材45が当接し、接続部42に設けたシール部材43に力が加わり、隙間が閉塞する。よって、接続部42近傍から接着剤が漏れるおそれをさらに低下させることができる。蓋部材45は、嵌合部38と被嵌合部40との隙間を左側から閉塞するため、接着剤の乾燥を防止し、且つ接着剤の温度変化を抑制することができる。
【0041】
次に、第一支持部31の姿勢、及び第一支持部31を用いる場合に適した接着工程の一例について、図3を参照して説明する。第一支持部31の腕部33は、基部32の下端部から右方へ延び、下方へ屈曲している。ノズル35は、布の移送方向(図3の紙面手前側から奥側への方向)に対して交差するように、腕部33の下端部から左方へ突出している。接着剤を吐き出す複数の孔を備えた吐き出し口36は、上移送ローラ17(図1参照)の前方に位置する。装着部29に装着した第一支持部31の姿勢を第一姿勢という。腕部33の下端部と台座部2との間には隙間がある。
【0042】
例えば、図3に示すように、ノズル35の上側の布72の右端近傍を下側の布71に接着させる接着工程には、第一姿勢となる第一支持部31を用いるのが適している。ノズル35の上側の布72が大きい場合でも、上側の布72は、ノズル35の右方に位置する脚柱部3(図1参照)に触れることがない。よって、2枚の布71,72はスムーズに移動する。また、作業者は、広い空間がある布接着装置1の左側で2枚の布71,72を把持したり押えたりすることができるため、2枚の布71,72の移動を容易に調整することができる。
【0043】
次に、図4及び図5を参照して、第二支持部51について説明する。図4に示すように、布接着装置1本体が装着している第二支持部51は、布の移送方向に対してノズル55が交差するようにノズル55を支持する点は第一支持部31と同じである。しかし、ノズル55を右方へ突出させる点が、第一支持部31とは異なる。つまり、第二支持部51は、接着剤を布に付着させる位置の左右の側方のうち、第一支持部31とは反対側の側方から棒状のノズル55を突出させる。
【0044】
図5に示すように、第二支持部51も第一支持部31と同様に、装着部29に装着する基部52と、ノズル55を固定する腕部53とを備える。第二支持部51の基部52の構造は、先述した第一支持部31の基部32の構造と同一である。従って、第二支持部51も第一支持部31と同様に、基部52の基端側に設けた嵌合部58を被嵌合部40に挿入してねじ止めすることで、装着部29に着脱可能且つ揺動可能に装着することができる。第二支持部51の腕部53は、第一支持部31の腕部33に対して左右対称となっている。従って、第二支持部51の内部に形成してある流路59の長さは、第一支持部31の内部に形成してある流路39の長さと同じである。流路が屈曲する部位の数、屈曲の角度も同じである。
【0045】
第二支持部51の姿勢、及び第二支持部51を用いる場合に適した接着工程の一例について、図5を参照して説明する。第二支持部51の腕部53は、基部52の下端部から左方へ延び、下方へ屈曲している。ノズル55は、布の移送方向(図5の紙面手前側から奥側への方向)に対して交差するように、腕部53の下端部から右方へ突出している。ノズル55の吐き出し口56は、上移送ローラ17(図1参照)の前方に位置する。装着部29に装着した第二支持部51の姿勢を第二姿勢という。
【0046】
例えば、図5に示すように、布74の端部を折り曲げて接着させる接着工程には、第二支持部51が適している。布74は、ノズル55の右側先端部を覆うように折り曲げられて、ノズル55の下方を通り、台座部2の上面を左側へ延びるように位置する。よって、ノズル55の右方に位置する脚柱部3(図4参照)は、布74の移動を制限することがない。また、作業者は、広い空間がある布接着装置1の左側で布74の位置調整及び移動調整を行うことができる。
【0047】
以上説明したように、第一の実施形態に係る布接着装置1によると、上移送ローラ17による布の移送方向に交差する方向である右側方からノズル35を突出させる第一姿勢と、左側方からノズル55を突出させる第二姿勢とを切り替えることができる。詳細には、作業者は、第一姿勢となる第一支持部31と、第二姿勢となる第二支持部51とを、択一的に装着部29に装着することができる。ここで、例えば縫針を用いる縫製ミシンを用いて2枚の布を縫製する場合、縫針及び針棒が布の移動を制限することはない。これに対し、ノズル35,55を布の移送方向に交差するように支持する布接着装置1では、接着工程によっては、ノズル35,55の上側の布の移動を支持部31,51が制限する場合がある。しかしながら、第一の実施形態の布接着装置1によると、支持部31,51が布の移送を制限することを、接着工程に適した支持部31,51を装着することで回避することができる。よって、1つの布接着装置1で様々な接着工程を行うことができる。
【0048】
第一の実施形態の布接着装置1では、支持部31,51の基端に形成した嵌合部38,58を装着部29の被嵌合部40に嵌合することで、支持部31,51が有する接着剤の流路39,59が、ポンプケース26の接着剤の供給路41に接続する。この状態で蓋部材45を装着部29に装着することで、蓋部材45は支持部31,51の嵌合部38,58を被嵌合部40に押圧して装着し、被嵌合部40を閉塞する。嵌合部38,58を被嵌合部40に押圧して装着するため、被嵌合部40のシール部材43に力が加わる。よって、支持部31,51を装置本体に装着できることに加え、接続部42から接着剤が漏れるおそれを低下させることができる。蓋部材45が被嵌合部40を閉塞するため、接着剤の乾燥を防止することができる。さらに、接着剤の温度変化を抑制することができるため、接着剤の温度を容易に調整して適切な粘度を保つことができる。
【0049】
第一の実施形態の布接着装置1では、第一支持部31が有する接着剤の流路39と、第二支持部51が有する接着剤の流路59とが同じ長さである。従って、第一支持部31及び第二支持部51のいずれを用いた場合でも、接着剤の温度、流路内の接着剤の圧力等を同等にすることができる。詳細には、第一支持部31の腕部33と第二支持部51の腕部53とが左右対称であるため、流路が屈曲する部位の数、屈曲の角度も同じであり、いずれの支持部31,51を用いても接着剤の温度、圧力は変化しない。よって、いずれの支持部31,51を用いる場合でも、接着剤の温度制御、ギアポンプ81の出力の制御等を変化させる必要がなく、作業効率や接着後の品質を同等にすることができる。
【0050】
次に、本発明の第二の実施形態に係る布接着装置101について、図6〜図8を参照して説明する。第二の実施形態に係る布接着装置101は、支持部131の構成以外は第一の実施形態に係る布接着装置1と同じである。よって、同一の構成については同一の番号を付し、この説明を省略する。
【0051】
図6に示すように、布接着装置101本体の装着部29は、ノズル135を支持する支持部131を装着している。支持部131は、接着作業時に長手方向が上下方向となる部材であり、長手方向略中央から基端側の部分である基部132と、長手方向略中央から先端側の部分である可動部133とを備える。基部132は、布接着装置1本体の装着部29に揺動可能に接続している。可動部133は、支持部131の長手方向に延びる回転軸(後述する軸部134)を中心として半円を描くように180度回転することができる。従って、可動部133を回動させることで、ノズル135を左側に突出させる第一姿勢と、ノズル135を右側に突出させる第二姿勢とに支持部131の姿勢を切り替えることができる。つまり、基部132に回動可能に接続する可動部133が、支持部131の姿勢を切り替える切替手段として機能する。
【0052】
支持部131の構造の詳細について説明する。図6に示すように、支持部131の基部132は、布接着装置101本体の装着部29から左方へ延び、前方へ屈曲している。可動部133は、基部132の左前端部の下部を中心として外側(図6では右側)へ延び、下方へ屈曲している。可動部133は、ノズル135を内側(図6では左側)に突出するように下端部で支持している。可動部133は、軸部134を介して回動可能に基部132に接続している。
【0053】
図7は、第一姿勢となっている支持部131を前方から見た断面図であり、図8は、第二姿勢となっている支持部131を前方から見た断面図である。図7に示す状態から可動部133を180度回転させることで、支持部131は図8に示す第二姿勢となる。図8に示す状態から180度回転させることで、支持部131は図7に示す第一姿勢となる。
【0054】
図7及び図8に示すように、布接着装置101の装着部29が支持部131を装着する構造は、先述した第一の実施形態の布接着装置1の構造と同じである。すなわち、装着部29の被嵌合部40に、支持部131の基部132に形成してある円柱状の嵌合部138を挿入し、蓋部材45を固定することで、装着部29が揺動可能に支持部131の基部132を装着する。
【0055】
基部132の左前端部には、軸部134に嵌合する回動用被嵌合部142を形成してある。回動用被嵌合部142は、支持部131の長手方向(図7及び図8の上下方向)を中心軸線とする有底円筒状であり、回動用被嵌合部142の開口は先端側(図7及び図8の下側)に面する。軸部134は可動部133に固定してある。軸部134の形状は円柱状であり、基端側(図7及び図8の上側)の径は先端側の径よりも大きく、間に段部を有する。円柱状の軸部134を回動用被嵌合部142に下側から嵌合させて、矩形板状の蓋部材145をねじ(図示せず)で回動用被嵌合部142の下側に固定する。これにより、軸部134は回動可能な状態で基部132に接続する。
【0056】
支持部131は、基端の嵌合部138から先端のノズル135まで接着剤を導く流路139を内部に備えている。流路139は、嵌合部138の右端の中心から左側へ延び、基部132及び可動部133の形状に沿って屈曲しながらノズル135へ至る。流路139のうち、軸部134の基端に位置する部分には、接着剤の漏れを防ぐためのシール部材143を設けてある。
【0057】
可動部133の回動中心位置となる軸部134は、ノズル135の吐き出し口136の長手方向(図7及び図8の左右方向)の中央を通って布の移送方向(図7及び図8の紙面手前側から紙面奥側への方向)に伸長する鉛直平面上に位置する。第二の実施形態に係る布接着装置101では、可動部133の回転軸線Lの延長線上に、ノズル135の吐き出し口136の長手方向中央が位置する。従って、可動部133を回動させても、ノズルの吐き出し口136の位置は変化しない。
【0058】
以上説明したように、第二の実施形態に係る布接着装置101によると、ノズル135を支持する支持部131の姿勢を、可動部133を回動させるだけで第一姿勢と第二姿勢とに切り替えることができる。従って、作業者は、支持部131が布の移動を制限することを、可動部133を回動させることで回避できる。よって、作業者は、様々な接着工程を、布の移動の制限を受けることなく行うことができる。可動部133を回動させても、支持部131の内部の接着剤の流路139の長さは変わらないため、接着剤の温度、流路139内の接着剤の圧力等は変化しない。よって、支持部131の姿勢に応じて布接着装置101の制御を変化させる必要がなく、作業効率や接着後の品質を同等にすることができる。
【0059】
第二の実施形態の布接着装置101では、可動部133の回動中心位置となる軸部134が、ノズル135の吐き出し口136の長手方向の中央を通って布の移送方向に伸長する鉛直平面に位置する。従って、第一姿勢とした場合、及び第二姿勢とした場合のいずれの場合にも、布の移送方向に平行な略同一の直線上に吐き出し口136が位置している。よって、可動部133を回動させるだけで、上移送ローラ17に対する吐き出し口136の位置が変わることなく略同じ位置になるように、支持部131の姿勢(ノズルの突出方向)を切り替えることができる。
【0060】
詳細には、布接着装置101では、軸部134の回転軸線Lの延長線上にノズル135の吐き出し口136の長手方向中央が位置するため、可動部133を回動させても吐き出し口136の位置は変化しない。よって、支持部131の姿勢を切り替えても、切り替え前と同じ位置で布に接着剤を付着させることができる。
【0061】
尚、上記実施の形態に示した構成は例示であり、各種の変更が可能であることは言うまでもない。まず、上記実施の形態の第一支持部31、第二支持部51、及び支持部131の形状は適宜変更できる。例えば、屈曲する部位の数を変更してもよいし、弧を描くように湾曲させた形状としてもよい。第一の実施形態では、装着部29に装着できる支持部として2つの支持部31,51を示したが、3つ以上の支持部を択一的に装着部29に装着できることは勿論である。
【0062】
第一支持部31、第二支持部51、及び支持部131を装着部29へ装着するための構造は、適宜変更できる。例えば、第一の実施形態では、支持部31,51を揺動可能に装着するために、嵌合部38,58を円柱状に形成した。しかし、支持部31,51を揺動可能させる必要がなければ、嵌合部38,58は角柱状等の他の形状に形成してもよい。第二の実施形態では、支持部131の基部132は、装置本体のポンプケース26と一体に形成してもよい。
【0063】
上記実施の形態では、接着剤が漏れることを防止するために、弾性を有する円環状のゴム製パッキンをシール部材43,143として用いている。しかし、シール部材43,143は、接着剤の漏れを防止できるものであればよく、環状でなくてもよいし、異なる材質のものを用いることもできる。
【符号の説明】
【0064】
1,101 布接着装置
17 上移送ローラ
29 装着部
31 第一支持部
35,55,135 ノズル
36,56,136 吐き出し口
38,58 嵌合部
39,59,139 流路
40 被嵌合部
41 供給路
42 接続部
43 シール部材
45 蓋部材
46 ねじ
51 第二支持部
131 支持部
132 基部
133 可動部
134 軸部
142 回動用被嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置した布の間に接着剤を吐き出して付着させる吐き出し口を備えた棒状のノズルと、
前記接着剤が付着した前記布を押圧して移送する移送手段と、
前記ノズルへ前記接着剤を導く流路を有し、且つ前記移送手段による前記布の移送方向と前記ノズルの長手方向とが交差するように前記ノズルを先端部に支持する支持部と
を備えた布接着装置であって、
前記支持部の姿勢を、前記移送手段による前記布の移送方向に対して交差する方向の一側方から前記ノズルを突出させる第一姿勢と、前記一側方とは反対側の側方から前記ノズルを突出させる第二姿勢とに切替可能な切替手段を備えたことを特徴とする布接着装置。
【請求項2】
前記切替手段は、前記支持部を装置本体に着脱可能に装着する装着手段であり、
前記装着手段に装着させることで前記第一姿勢となる前記支持部である第一支持部と、前記装着手段に装着させることで前記第二姿勢となる前記支持部である第二支持部とを、択一的に前記装着手段に装着可能であることを特徴とする請求項1に記載の布接着装置。
【請求項3】
前記装着手段は、
前記支持部の基端に形成した嵌合部に嵌合する被嵌合部と、
前記被嵌合部に形成し、前記支持部の前記流路に前記接着剤を供給する供給路を前記流路の基端に接続する接続部と、
前記接続部に位置して、前記流路の基端と前記接続部との隙間を閉塞するシール部材と、
前記被嵌合部に嵌合した前記嵌合部を押圧して前記被嵌合部に装着する蓋部材と
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の布接着装置。
【請求項4】
前記第一支持部の前記流路の長さと、前記第二支持部の前記流路の長さとが同一であることを特徴とする請求項2又は3に記載の布接着装置。
【請求項5】
前記切替手段は、
前記支持部の長手方向略中央から基端部分であり、装置本体から延びる基部と、
前記支持部の長手方向略中央から先端部分であり、前記基部に回動可能に接続し、且つ先端部に前記ノズルを支持する可動部とを備え、
前記基部に対して前記可動部を回動させることで、前記支持部の姿勢を前記第一姿勢と前記第二姿勢とに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の布接着装置。
【請求項6】
前記基部に対する前記可動部の回動中心位置が、前記ノズルの吐き出し口の長手方向中央を通って移送方向に伸長する鉛直平面上に位置することを特徴とする請求項5に記載の布接着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−270416(P2010−270416A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123947(P2009−123947)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】