説明

希土類元素含有微粒子およびそれを用いた蛍光プローブ

【課題】励起光が紫外光等の被分析物に悪影響を及ぼすものでなく、かつ安定して発光し発光効率が良好である微粒子、およびその微粒子で標識された蛍光プローブを提供することを主目的とするものである。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、500nm〜2000nmの範囲内の波長の光により励起されてアップコンバージョン発光することを特徴とする希土類元素含有微粒子、およびこの希土類元素含有微粒子と結合する特異的結合物質とを有することを特徴とする蛍光プローブを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色光や赤外光により励起されてアップコンバージョン発光する希土類元素含有微粒子およびその製造方法、ならびに、上記の希土類元素含有微粒子により標識された蛍光プローブに関するものである。本発明の希土類元素含有微粒子および蛍光プローブは、遺伝子診断分野、免疫診断分野、医薬開発分野、環境試験分野、バイオテクノロジー分野、蛍光検査などにおいて好適に用いることができるものである。
【背景技術】
【0002】
従来より医学・生物学分野では、ウイルスや酵素の反応の研究あるいは臨床検査に、有機物分子からなる蛍光物質を標識として用い、紫外線照射したときに発する蛍光を光学顕微鏡あるいは光検出器で測定する方法がとられている。このような方法としては、例えば、抗原−抗体蛍光法などがよく知られている。この方法では、蛍光を発する有機蛍光体が結合した抗体が用いられる。抗原−抗体反応は、鍵穴−鍵の関係に例えられるように非常に選択性が高い。このため、蛍光強度分布から抗原の位置を知ることができる。
【0003】
もう1つの例としていわゆるDNAチップを用いた蛍光検査法がある。未知のDNAの塩基配列を決めることを目的として本検査法を用いる場合、その概略は次のようなものである。すなわち、既知の塩基配列を有するDNA(DNA断片)を多数基板上にスポット状に配列した、いわゆるDNAチップと、有機蛍光体でラベルされた被検査物である未知の塩基配列を有するDNAを反応させることにより、被検査物の塩基配列を、DNAチップ上の蛍光スポットの位置や強度などを解析することにより決定する。
【0004】
ところで、このように蛍光標識として有用な有機蛍光体には従来から問題点があった。すなわち、保存時や蛍光測定時の安定性に欠け、劣化を生じる恐れがある等の問題があった。
【0005】
このような問題を解決したものとして、CdSeナノ粒子を用いる方法が提案されている(非特許文献1、非特許文献2)。しかしながら、この方法は、励起光が青色光もしくは紫外光であることから、分析または検出対象が生細胞や生組織である場合等においては、分析または検出対象に対して損傷を与えてしまうといった問題があった。また、分析または検出対象がDNAやたんぱく質などである場合においても、紫外光により分子に損傷が加えられる可能性があり、塩基配列の決定や活性サイトの決定などを精度良く行うに際しての妨げとなる場合があった。
【0006】
また、励起光が長波長側で発光するものとしては、二光子励起を起こすSiナノ粒子が提案されている(非特許文献3)。しかしながら、この方法は二光子吸収により発光するメカニズムであることから、発光効率が悪く、検出精度が低下するといった問題の他に、1nm以下の超微粒子とする必要があることから、加工が煩雑である等の問題があった。
【0007】
【非特許文献1】“Semiconductor Nanocrystals as Fluorescent Biological Labels” Marcel Bruchez Jr, et al., p2013−2016, SCIENCE vol. 281, 25 September 1998
【非特許文献2】“Quantum Dot Bioconjugates for Ultrasensitive Nonisotopic Detection” Warren C. W. Chan and Shuming Nie, p2016−2018, SCIENCE vol. 281, 25 September 1998
【非特許文献3】“Second harmonic generation in microcrystallite films of ultra small Si nanoparticles” APPLIED PHYSICS LETTERS VOLUME 77, NUMBER 25 18 DECEMBER 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、励起光が紫外光等の被分析物に悪影響を及ぼすものでなく、かつ安定して発光し発光効率が良好である微粒子およびその製造方法、ならびに、上記の微粒子で標識された蛍光プローブを提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載するように、塩基性炭酸イットリウム、塩基性炭酸ガドリニウム、塩基性炭酸ルテチウム、塩基性炭酸ランタン、および塩基性炭酸スカンジウムからなる群より選択される少なくとも1種の塩基性炭酸塩に希土類元素を付活する第1工程と、上記希土類元素が付活された塩基性炭酸塩を焼成する第2工程と、を含むことを特徴とする希土類元素含有微粒子の製造方法を提供する。
【0010】
上記請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載するように、上記第1工程で、上記希土類元素が付活された塩基性炭酸塩を液相反応により得ることが好ましい。液相反応によって上記の塩基性炭酸塩を得ることにより、粒径の小さな希土類元素含有微粒子を得やすくなる。
【0011】
上記請求項1または請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、上記第1工程で、硝酸イットリウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ルテチウム、硝酸ランタン、および硝酸スカンジウムからなる群より選択される少なくとも1種の硝酸塩と、付活しようとする希土類元素の硝酸塩と、炭酸ナトリウムとを反応させることが好ましい。これらを液相中で反応させることよって、上記の塩基性炭酸塩を得ることが容易になる。
【0012】
上記請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項4に記載するように、上記第2工程で、上記希土類元素が付活された塩基性炭酸塩を急速加熱して焼成した後に急速冷却することが好ましい。急速加熱して焼成し、その後に急速冷却することにより、粒径の小さい希土類元素含有微粒子を得ることが容易になる。
【0013】
上記請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項5に記載するように、上記希土類元素を、得ようとする蛍光の波長に応じて選択することが好ましい。希土類元素含有微粒子からのアップコンバージョン発光の波長は、酸化物に付活させる希土類元素の種類に応じて変化するので、当該希土類元素含有微粒子の用途に適した波長のアップコンバージョン発光を適宜得るようにした方が、実用上有利である。
【0014】
上記請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項6に記載するように、500nm〜2000nmの範囲内の波長の光により励起されてアップコンバージョン発光し、平均粒子径が1nm〜100nmである希土類元素含有微粒子を作製することが好ましい。
本発明の希土類元素含有微粒子は、このようにアップコンバージョン発光する希土類元素を含有する微粒子であるので、これを例えば蛍光プローブとして用いた場合に、紫外光や青色光を励起光として用いる必要がないことから、被分析物である生体高分子に対して損傷を与えることがなく、また有機蛍光体のように保存時の安定性に欠けるといった問題もなく、さらには発光効率が高いといった利点を有するからである。
また、蛍光体は、ほとんどの場合、粉末の形で用いられ、その平均粒子径は3〜12μである。粒径を小さくしていくと、ある粒径(物質によって異なるが、1〜2μm程度)以下で発光効率が低下し始める。これは、結晶の表面層の発光効率が低いためと考えられている。
1994年、粒径数十〜数nmの蛍光体粒子で高い発光効率が得られることが報じられ、注目された(“Optical Properties of Manganese−Doped Nanocrystals of ZnS” APPLIED PHYSICS LETTERS, VOLUME 72, NUMBER 317, JANUARY, 1994 )。この現象は、励起子の閉じ込め効果によって説明された。
したがって、希土類元素含有微粒子の粒径を概ね100nm以下にすることにより、当該希土類元素含有微粒子によるアップコンバージョン発光の発光効率を更に高めることが期待できる。
粒径が概ね100nm以下の希土類元素含有微粒子は、当該希土類元素含有微粒子が発光していなければ目視によってその存在を確認することができないので、例えばホログラフィック素子の真贋を判定するためのマーカー等、蛍光検査のためのマーカーとして好適である。
【0015】
上記請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項7に記載するように、上記の希土類元素としてエルビウムとイッテルビウムとを用いることができる。これら2つの希土類元素それぞれの添加量を制御することによって、アップコンバージョンにより希土類元素含有微粒子から発せられる光の視認色を、緑色から赤色に亘る波長域内で制御することができる。
【0016】
また、上記請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項8に記載するように、上記の希土類元素としてエルビウムを用いることができる。エルビウムによって酸化イットリウムを付活することにより、アップコンバージョンによって緑色の蛍光を発する希土類元素含有微粒子を得ることができる。
【0017】
さらに、上記請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項9に記載するように、上記の希土類元素としてツリウムとイッテルビウムとを用いることができる。ツリウムとイッテルビウムとを添加することにより、近赤外域の光に対する増感作用が得られることから、近赤外域の励起光により青色光を誘起することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、蛍光を発する微粒子にアップコンバージョン発光可能な希土類元素を有する微粒子を用いているので、紫外光や青色光を励起光として用いる必要がないことから、生体高分子などの被分析物に対して損傷を与えることがなく、また有機蛍光体のように保存時の安定性に欠けるといった問題もなく、さらには比較的高い発光効率を有するものであるといった効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の希土類元素含有微粒子およびこれを用いた蛍光プローブについて詳細に説明する。
【0020】
A.希土類元素含有微粒子
本発明の希土類元素含有微粒子は、500nm〜2000nmの範囲内の波長の光により励起されてアップコンバージョン発光することを特徴とするものである。
【0021】
まず、本発明に用いられるアップコンバージョン発光について、図1を用いて説明する。図1においては、希土類元素として、イッテルビウム(Yb)とエルビウム(Er)の2種類を用いた系であり、励起光として1000nmの赤外光を照射した例が示されている。まず、図1(a)に示すように、1000nmの励起光によりイッテルビウム(Yb3+)が励起されて7/2準位からよりエネルギー準位の高い5/2準位に移動する。そして、このエネルギーが、エネルギー移動1により、エルビウム(Er3)のエネルギー準位を、15/2準位から11/2準位に押し上げる。そして、図1(b)に示すように、同様に1000nmの励起光によりイッテルビウム(Yb3+)が励起され、このエネルギーがエネルギー移動2により、さらにエルビウム(Er3)のエネルギー準位を11/2準位から11/2準位に押し上げる。そして、図1(c)に示すように、上記励起されたエルビウム(Er3)が基底状態に戻る際に、550nmの光を発光する。
【0022】
このように、1000nmの光で励起されたものが、よりエネルギーの高い550nmの光を発するような場合、すなわち、波長からみて励起光より高いエネルギーの光を発するような場合をアップコンバージョン発光というのである。
【0023】
なお、上記従来技術において説明した二光子励起を起こすSiナノ粒子は、図2に示すように、二つの光子が同時に吸収された際にはじめて励起するものであり、上記アップコンバージョン発光とは原理的に異なるものである。また、この二光子励起は二つの光子が同時に存在する必要があることから発光効率が悪いのに対し、上記アップコンバージョン発光はそのような必要性がなく、二光子励起を起こすSiナノ粒子と比較すると極めて高い発光効率を有するものである。
【0024】
本発明は、このようなアップコンバージョン発光を生じる希土類元素を用いるものであるので、エネルギーの高い光、例えば紫外光等で励起する必要がない。すなわち、発光の際の光の波長は、分析または検出の容易さから通常は可視光であることが好ましい。したがって、アップコンバージョン発光の場合はこれより波長の長い光が励起光として用いられる。このため、生体高分子に対して損傷を与える可能性の高い紫外光や青色光は励起光としては用いられないのである。さらに励起光波長と発光波長が重なることがほとんど無いため、分析または検出を著しく容易にさせるのである。
【0025】
このように、本発明の希土類元素含有微粒子は、アップコンバージョン発光が可能な希土類元素を用いたものであるので、励起光により被分析物が損傷されることがなく、正確な分析が可能となる。また、二光子励起と比較すると極めて発光効率が良好であり、かつ有機蛍光体を用いた場合と比較すると保存安定性等が良好なものであるため、安定でかつ精度の高い分析を可能とするものである。
【0026】
このようなアップコンバージョン発光が可能な希土類元素を含有する本発明の希土類元素含有微粒子は、例えば、上記アップコンバージョン可能な希土類元素を含有する核部と、特異的結合物質と結合し、また凝集を防止する機能等を有する機能性殻部とから構成することができる(以下、この希土類元素含有微粒子を「第1希土類元素含有微粒子」という。)。また、希土類元素が付活された平均粒子径1〜100nmの酸化物によって構成することもできる(以下、この希土類元素含有微粒子を「第2希土類元素含有微粒子」という。)。
【0027】
以下、第1希土類元素含有微粒子と第2希土類元素含有微粒子とに分けて、本発明の希土類元素含有微粒子について説明する。
【0028】
(I)第1希土類元素含有微粒子
上記の第1希土類元素含有微粒子全体の径としては、1nmから500nmの範囲内、特に1nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。また、このような第1希土類元素含有微粒子の表面、すなわち機能性殻部には、官能基を有するものであることが好ましい。これにより、特異的結合物質との結合が容易に行うことができるからである。
【0029】
このような本発明の第1希土類元素含有微粒子について、核部と機能性殻部とに分けて説明する。
【0030】
1.核部
本発明の第1希土類元素含有微粒子の核部には、希土類元素が含有されている。まず、このような希土類元素について説明し、次いで希土類元素を含有する核部について説明する。
【0031】
(1)希土類元素
本発明に用いられる希土類元素は、上述したように所定の範囲内の波長の光により励起されてアップコンバージョン発光することが可能な希土類元素であれば特に限定されるものではない。
【0032】
このような励起光の波長の範囲としては、励起光が生体高分子に損傷を与えないことが好ましいことから、少なくとも500nm〜2000nmの範囲内の波長である必要があり、中でも700nm〜2000nmの範囲内、特に800nm〜1600nmの範囲内の波長であることが好ましい。
【0033】
このような希土類元素としては、一般的には3価のイオンとなる希土類元素を挙げることができ、中でもエルビウム(Er)、ホロミウム(Ho)、プラセオジウム(Pr)、ツリウム(Tm)、ネオジウム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)およびセリウム(Ce)等の希土類元素が好適に用いられる。
【0034】
本発明においては、上述したようなアップコンバージョン発光が可能な希土類元素を、1種類で用いても、2種類以上同時に用いてもよい。なお、希土類元素を1種類で用いる場合のアップコンバージョン発光のメカニズムとして、Er3+ドープの材料を例として挙げて説明すると、励起光として970nmまたは1500nmの光を照射した場合、アップコンバージョン過程を経て、Er3+イオンのエネルギー準位に応じて、410nm(9/215/2)、550nm(3/215/2)、660nm(9/215/2)などの可視光発光を示すといった例を挙げることができる。
【0035】
(2)核部
上記希土類元素を含有する核部は、上記希土類元素をアップコンバージョン発光可能な状態で含有するものであれば、有機物、例えば錯体やデンドリマー等に希土類元素を含んだ状態で形成されたもの等であってもよく、特に限定されるものではない。しかしながら、通常、無機物の母材中に上記希土類元素が混入されて形成されたものであることが好ましい。上記希土類元素を発光可能な状態で含有させることが容易だからである。
【0036】
このような無機物の母材としては、励起光に対して透明性を有する材料が、発光効率の観点から好ましく、具体的には中でもフッ化物、塩化物等のハロゲン化物、酸化物、硫化物等が好適に用いられる。
【0037】
本発明においては、発光効率の観点からは、ハロゲン化物が好適に用いられる。このようなハロゲン化物としては、具体的には、塩化バリウム(BaCl)、塩化鉛(PbCl)、フッ化鉛(PbF)、フッ化カドミニウム(CdF)、フッ化ランタン(LaF)、フッ化イットリウム(YF)等を挙げることができ、中でも塩化バリウム(BaCl)、塩化鉛(PbCl)およびフッ化イットリウム(YF)が好ましい。
【0038】
一方、水分等に安定な耐環境性の高い母材としては、酸化物を挙げることができる。このような酸化物としては、具体的には、酸化イットリウム(Y)、酸化アルミニウム(Al)、酸化シリコン(SiO)、酸化タンタル(Ta)等を挙げることができ、中でも酸化イットリウム(Y)が好ましい。
【0039】
なお、ハロゲン化物を微粒子の母材として用いた場合は、周囲に保護層を形成することが好ましい。すなわち、ハロゲン化物は一般的には水等に対して不安定であり、そのまま微粒子として用いると正確に分析ができない場合があり、このような場合は、ハロゲン化物を母材とする微粒子の周囲に耐水性等を有する被覆材が形成された複合核部にするとよい。この場合の被覆材としては、上述したような酸化物を好適に用いることができる。
【0040】
母材への希土類元素の導入方法としては、ハロゲン化物の場合、例えば塩化バリウム(BaCl)については、特開平9−208947号公報もしくは文献(“Efficient 1.5mm to Visible Upconversion in Er3+ Doped Halide Phoshors” Junichi Ohwaki, et al., p.1334−1337, JAPANESE JOURNAL OF APPLIED PHYSICS, Vol.31 part 2 No.3A, 1March 1994)に記載の方法を挙げることができる。また、酸化物については、特開平7−3261号公報もしくは文献(“Green Upconversion Fluorescence in Er3+ Doped Ta Heated Gel Kazuo Kojima et al., Vol.67(23), 4 December 1995 ; “Relationship Between Optical Properties and Crystallinity of Nanometer Y:Eu Phoshor” APPLIED PHYSICS LETTERS, Vol.76, No.12, p.1549−1551, 20 March 2000)に記載の方法を挙げることができる。
【0041】
本発明においては、上記母材中における希土類元素の導入量としては、希土類元素の種類や母材の種類、および必要とされる発光の程度によって大幅に異なるものであり、種々の条件に応じて適宜決定されるものである。
【0042】
また、核部の平均粒子径は1nm〜100nmが好ましく、より好ましくは1nm〜50nmである。核部の平均粒子径が1nm未満の微粒子は合成が極めて困難であり好ましくない。また、核部の平均粒子径が100nmを超える微粒子は被標識物、すなわち特異的結合物質の反応を妨げたりしてデータの精度を低下させるので好ましくない。
【0043】
さらに、アップコンバージョン発光する希土類元素はその組成により発光色が異なるので、これを利用して、特異性の異なる複数の特異的結合物質をそれぞれ発光色の異なる希土類元素含有微粒子で標識して同様の測定を行うことにより、異なる被測定物質の検出を同時に行うことができる。
【0044】
2.機能性殻部
本発明の第1希土類元素含有微粒子は、上記核部の周囲に形成された機能性殻部を有するものである。この機能性殻部には、体液などの高い塩濃度の液中で凝集しないことや試料液中で非特異的反応をしないことなどが要求される。
【0045】
このような機能性殻部に要求される具体的な特性としては、まず、特異性物質との結合性を有する点を挙げることができる。すなわち、機能性殻部は、特異的結合物質と結合する部位である特異的結合物質結合部位を有するものであることが好ましく、そのような部位を有する材料で形成されていることが好ましい。
【0046】
このような特異的結合物質結合部位としては、殻部表面に物理的結合性または化学的結合性を付与させるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、イオン解離能を有する部位、イオン配位能を有する部位、金属と結合する機能を有する部位、縮合反応性を有する部位、付加反応性を有する部位、置換反応性を有する部位、水素結合能を有する部位、特異的相互作用能を有する部位などを挙げることができ、中でも、縮合反応性を有する部位、付加反応性を有する部位、置換反応性を有する部位および特異的相互作用を有する部位のうちの少なくとも一つの部位であることが好ましい。
【0047】
このような部位としては、具体的には、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、アルデヒド基(−CHO)、ビニル基(CH=CH−)、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、アセタール基((CHCHO)CH−)、イミド部位、ビオチン部位などを挙げることができる。
【0048】
次に、機能性殻部に要求される特性としては、第1希土類元素含有微粒子の凝集を防止する点を挙げることができる。したがって、機能性殻部には、上記第1希土類元素含有微粒子の凝集を防止する凝集防止部位を有することが好ましく、そのような部位を有する材料で形成されていることが好ましい。
【0049】
上記凝集防止部位としては、水素結合を有する部位及び水和能を有する部位の内の少なくとも一つの部位であることが好ましい。このような部位として、具体的には、エチレンオキサイド部位(−(CHCHO)−)(添字nは2以上10,000以下の整数)、水酸基(−OH)、アミド部位(−CONH−)、リン酸エステル部位(−PO(OR)(OH)3−n、(添字nは1、2、または3、Rは炭素数2以上の炭化水素含有基))、ベタイン部位などを挙げることができる。特に、ポリエチレングリコールに代表されるエチレンオキサイド部位(−(CHCHO)−)(添字nは2以上10,000以下の整数)やベタイン部位であることが好ましい。微粒子表面に安定な水和層を形成する機能に優れ、凝集や非特異吸着を防ぐ機能に優れているからである。
【0050】
また、他の凝集を防ぐ機能を有する部位としては、静電的反発力を担うイオン解離部位、具体的には、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、イミノ基、ベタイン部位などが好ましく、特にこれらの基を有する重合物が好ましい。微粒子表面に安定な静電的反発層を形成する機能に優れているからである。
【0051】
さらに、本発明においては、機能性殻部が、核部と結合する核部結合部位を有することが好ましく、よってそのような部位を有する材料で形成されていることが好ましい。このような部位としては、金属と結合する機能を有する部位、縮合反応性を有する部位、付加反応性を有する部位、および置換反応性を有する部位のうちの少なくとも一つの部位を挙げることができる。
【0052】
具体的には、メトキシシリル基(−Si(OCHn−1(添字nは1、2、または3、Yはメチルまたはエチルを示す。))、エトキシシリル基(−Si(OCHCHn−1(添字nは1、2、または3、Yはメチルまたはエチルを示す。))、プロポキシシリル基(−Si(OCn−1(添字nは1、2、または3、Yはメチルまたはエチルを示す。))、クロロシリル基(−SiCln−1(添字nは1、2、または3、Yはメチルまたはエチルを示す。))、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などを挙げることができる。
【0053】
また、上記機能性殻部は、第1希土類元素含有微粒子の非輻射や化学反応などによる発光効率の低下を防ぐ機能を有する材料で形成されていることが好ましく、第1希土類元素含有微粒子の核部表面に強く配位ないし結合する材料が好ましい。中でも重合性を有することが好ましい。すなわち、イオン配位能を有する部位、金属と結合する機能を有する部位、縮合反応性を有する部位、付加重合性を有する部位、および置換反応性を有する部位などを持つ材料、具体的には、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、チオール基、シッフ塩基部位(−CH=N−)、メトキシシリル基(−Si(OCHn−1(添字nは1、2、または3、Yはメチルまたはエチルを示す。))、エトキシシリル基(−Si(OCHCHn−1(添字nは1、2、または3、Yはメチルまたはエチルを示す。))、プロポキシシリル基(−Si(OCn−1(添字nは1、2、または3、Yはメチルまたはエチルを示す))、クロロシリル基(−SiCln−1(添字nは1、2、または3、Yはメチルまたはエチルを示す。))、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などを有する材料が好ましい。
【0054】
上述したように、機能性殻部には種々の機能が求められることから、このような機能性殻部を形成する材料としては、上述したような求められる機能を複合化して有する材料が好ましいといえる。具体的には、下記の化学式で示される材料を挙げることができる。
【0055】
【化1】

【0056】
【化2】

【0057】
【化3】

【0058】
3.第1希土類元素含有微粒子の製造方法
上記第1希土類元素含有微粒子の核部の製造方法としては、高周波プラズマ法を含むガス中蒸発法、スパッタリング法、ガラス結晶化法、化学析出法、逆ミセル法、ゾル−ゲル法およびそれに類する方法、水熱合成法や共沈法を含む沈殿法またはスプレー法等を挙げることができる。
【0059】
第1希土類元素含有微粒子の核部表面に機能性殻部を形成する方法としては、機能性殻部を形成する材料の官能基と核部表面の官能基を縮合反応や付加反応などにより共有結合させる方法、核部の存在下で機能性殻部をゾル−ゲル法およびそれに類する方法により合成する方法、機能性殻部前駆体を核部に吸着させた後に重合させる方法などを好適に用いることができる。また、化学析出法、逆ミセル法、ゾル−ゲル法およびそれに類する方法などで核部を合成する場合は、その際に用いる界面活性剤や保護剤を、そのまま殻部前駆体もしくは殻部として利用することが可能である。
【0060】
(II)第2希土類元素含有微粒子
1.第2希土類元素含有微粒子
第2希土類元素含有微粒子は、酸化物を母材とし、当該酸化物に希土類元素を付活した平均粒子径1〜100nmの微粒子である。この第2希土類元素含有微粒子は、上述した第1希土類元素含有微粒子の核部の好ましい態様の1つに相当するが、当該第2希土類元素含有微粒子は、機能性殻部を必須の構成要件としていない点で、第1希土類元素含有微粒子と異なる。
【0061】

【0062】
この母材に付活する希土類元素は、得ようとするアップコンバージョン発光の波長に応じて、1種のみとすることもできるし、2種以上の複数種とすることもできる。
【0063】
例えば、エルビウムによって酸化イットリウムを付活すれば、波長980nmの光で励起したときに、アップコンバージョンによって緑色光を発する第2希土類元素含有微粒子を得ることができる。
【0064】
また、エルビウムとイッテルビウムとによって酸化イットリウムを付活すれば、波長980nmの光で励起したときに、アップコンバージョンによって緑色〜赤色の波長域内の所定色の光が視認される第2希土類元素含有微粒子を得ることができる。例えば、エルビウムの添加量を1mol%とし、イッテルビウムの添加量を20mol%とすれば、波長980nmの光で励起したときに赤色光が視認される第2希土類元素含有微粒子を得ることができる。
【0065】
図7は、酸化イットリウムへのエルビウムの添加量を1原子百分率(atom%)で固定し、イッテルビウムの添加量を0atom%、1atom%、3atom%、5atom%、20atom%と変化させて得た第2希土類元素含有微粒子からのアップコンバージョンによる蛍光のスペクトルを示す。同図では、イッテルビウムの添加量が0atom%、1atom%、3atom%、5atom%、または20atom%ときの各スペクトルが、この順番で上から順にスペクトル(i)〜(iv)として示されている。
【0066】
同図から明らかなように、第2希土類元素含有微粒子を励起したときに視認される光の色は、エルビウムの添加量とイッテルビウムの添加量との比に応じて、緑色から赤色の波長域内で変化する。
【0067】
ツリウムとイッテルビウムとによって酸化イットリウムを付活すれば、波長980nmの光で励起したときに、イッテルビウムによる近赤外域の光に対する増感作用により、ツリウムの青色の発光がより高い輝度で得られることができる。
【0068】
このときの酸化イットリビウムに対する希土類元素の添加量は、濃度消光が起こらない範囲内で適宜選択可能である。例えば、酸化イットリウムにエルビウム、イッテルビウム、またはツリウムを添加する場合、当該エルビウム、イッテルビウム、およびツリウムそれぞれの添加量は、0〜50mol%の範囲内で選択可能である。
【0069】
2.第2希土類元素含有微粒子の製造方法
上述した第2希土類元素含有微粒子は、例えば、所望の希土類元素が付活された塩基性炭酸塩を得、この塩基性炭酸塩を焼成し、その後、必要に応じて所定の粒径に調整することによって得ることができる。
【0070】
上記の塩基性炭酸塩は、例えば、塩基性炭酸イットリウム、塩基性炭酸ガドリニウム、塩基性炭酸ルテチウム、塩基性炭酸ランタン、および塩基性炭酸スカンジウムからなる群より選択することができ、その数は1種であっても2種以上の複数種であってもよい。
【0071】
この塩基性炭酸塩に付活させる希土類元素の種類は、上述のように、目的とする第2希土類元素含有微粒子からアップコンバージョンによって発せさせようとする蛍光の波長に応じて適宜選択可能である。
【0072】
平均粒子径が1〜100nmである第2希土類元素含有微粒子を得るうえからは、上記所望の希土類元素が付活された塩基性炭酸塩を、液相反応によって得ることが好ましい。当該塩基性炭酸塩は、例えば、希土類元素で付活しようとする塩基性炭酸塩の構成元素である金属の硝酸塩と、付活しようとする希土類元素の硝酸塩と、炭酸ナトリウムとを反応させることによって得ることができる。
【0073】
所望の希土類元素が付活された塩基性炭酸塩を焼成するにあたっては急速加熱することが好ましく、その後、急速冷却することが好ましい。この急速加熱および急速冷却によって粒子の成長を防ぎ、平均粒子径を容易に100nm以下にすることができる。
【0074】
上述した各工程を経ることにより、前述した第2希土類元素含有微粒子を得ることができる。
【0075】
なお、上述した第2希土類元素含有微粒子は、上記第1希土類元素含有微粒子の核部として用いることも可能である。
【0076】
B.蛍光プローブ
本発明の蛍光プローブは、上述したような第1または第2希土類元素含有微粒子と、上記第1または第2希土類元素含有微粒子と結合する特異的結合物質とを有することを特徴とするものである。
【0077】
1.特異的結合物質
本発明においては、上述したような第1または第2希土類元素含有微粒子で既知または未知の特異的結合物質を標識することにより様々な機能を有する蛍光プローブを作ることができる。例えば既知の抗体を標識して、被検査物中の抗原の位置を調べるための蛍光プローブを作ったり、未知のDNA(被検査物)を標識して、DNAチップを用いて該被検査物の塩基配列を決定するための蛍光プローブを作ることができる。
【0078】
このような特異的結合物質としては、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)などの合成核酸、ホルモン、たんぱく質、ペプチド、細胞、組織、抗原、抗体、レセプター、ハプテン、酵素、核酸、薬剤、化学物質、ポリマー、病原体、毒素、アデニン誘導体、グアニン誘導体、シトシン誘導体、チミン誘導体、ウラシル誘導体等を挙げることができる。
【0079】
本発明においては、中でもデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)などの合成核酸、ホルモン、たんぱく質、抗原、抗体、ペプチド、細胞を特異的結合物質として用いることが好ましい。本発明においては、上述したように励起光が生体高分子に対して損傷を与えないところに特徴を有するものであり、上記DNA、RNA、合成核酸、ホルモン、たんぱく質、抗原、抗体、ペプチド、細胞は、励起光によるわずかな損傷が生じた場合でも、分析結果に大きな影響を及ぼす可能性があることから、本発明の利点を有効に活かすことができるからである。
【0080】
2.希土類元素含有微粒子による特異的結合物質の標識
本発明においては、上記特異的結合物質が上記第1または第2希土類元素含有微粒子と結合して標識されることにより、蛍光プローブとされる。
【0081】
この希土類元素含有微粒子と特異的結合物質との結合は、特に限定されるものではなく、イオン結合、配位結合、水素結合などの物理的結合、化学的結合すなわち共有結合および特異的相互作用による結合が挙げられるが、分析精度を向上させる観点から上記希土類元素含有微粒子と特異的結合物質とが強く結合していることが好ましく、したがって共有結合または特異的相互作用により結合されていることが好ましい。
【0082】
3.分析または検出方法
本発明の蛍光プローブを用いた分析または検出方法としては、例えば下記に示すような抗原抗体反応を利用した方法を挙げることができる。
【0083】
すなわち、細胞や細胞内にある物質(抗原)に作用させた抗体は抗原抗体反応によって抗原と固く結合するので、その結合部位を頼りに抗原の所在を探すことができる。しかしながら、一般に抗体分子そのものを顕微鏡下に観察することはできないので、抗原の検出に用いる抗体はあらかじめ観察可能なマーカーで標識しておく必要がある。例えば、図3に示すように、抗原抗体反応は可逆的な結合反応である。その反応は極めて特異的であって、抗体は対応する抗原物質以外とは反応しない。図の上段は組織標本に抗体を作用させた時、抗原Aのみと反応し、結合することを示す。しかし、この状態では抗体自体を染め出すことはできないので、抗原の所在は判らない。そこで下段のように抗体にあらかじめ可視的マーカーを結合させておき、これを組織内の抗原と反応させると上段と同様の結合が起こるので、今度はマーカーによって抗原抗体反応の起こった場所が判り、したがって抗原の存在部位を知ることができる。標識抗体の性質で大切なことは、標識によって抗原との結合性が失われないこと、他の物質との非特異的な親和性を生じないこと、マーカーの活性が十分保存されていることなどである。
【0084】
このような蛍光抗体法(fluorescent antibody method(蛍光色素標識抗体法fluorescent−labeled antibody method))は免疫組織化学的方法の一つであって、抗体のマーカーに蛍光色素を用い、蛍光顕微鏡下に励起された蛍光を観察することによって抗原の所在を探る方法である。この方法は免疫組織化学的方法の中でもっとも早く確立されたもので、1940年代の初めCoonsらが開発に着手し、1950年代にほぼ確立した方法である。その後、Riggsらによる標識法の改良やMcDvittらによる標識抗体の精製法が導入されて応用領域は拡がり、今日では免疫組織化学の代表的方法の一つとなっている。
【0085】
本発明においては、上記マーカーとして希土類元素を含有する第1または第2希土類元素含有微粒子を用い、抗体を特異的結合物質とすることにより、このような方法に応用することが可能となるのである。
【0086】
このように、他の生体高分子と特異的に結合する特異的結合物質と上記希土類元素含有微粒子とを結合させて標識することにより、種々の分析・検出が可能となるのである。
【0087】
このような特異的に結合する場合としては、例えば、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド)とそれに相補的な核酸との組み合わせ、上述したような抗原と抗体(又は抗体フラグメント)との組み合わせ、受容体とそのリガンド(例えば、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、又はレクチン)との組み合わせ、酵素とそのリガンド(例えば、酵素の基質アナログ、補酵素、調節因子、又は阻害剤)との組み合わせ、酵素アナログとその酵素アナログの元となる酵素の基質との組み合わせ、又はレクチンと糖との組み合わせ等を挙げることができる。なお、「酵素アナログ」とは、元の酵素に対する基質との特異的な親和性は高いものの、触媒活性は示さないものを意味する。また、上記の各組み合わせにおける各化合物は、それぞれ、いずれか一方が「特異的結合物質」となり、他方が、分析または検出される物質となることができる。例えば、「抗原と抗体との組み合わせ」では、抗原が「分析または検出される物質」となる場合には、抗体が「特異的結合物質」となることができ、逆に、抗体が「分析または検出される物質」となる場合には、抗原が「特異的結合物質」となることができる。
【0088】
例えば、本発明の蛍光プローブを、核酸ハイブリダイゼーションアッセイに適用する場合には、上記特異的結合物質として、分析または検出される物質である核酸(例えば、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド)と相補的に結合することのできるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを用いることができる。ここで、「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」には、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、及びペプチド核酸(PNA)が含まれる。なお、PNAとは、DNAのホスホジエステル結合をペプチド結合に変換した人工核酸である。上記不溶性粒子に結合されるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの鎖長は、分析目的に応じて適宜選択することができ、例えば、捕捉しようとするDNA、RNA、又はPNAの相補的配列の鎖長に基づいて決定することができる。
【0089】
上記特異的結合物質として用いるオリゴヌクレオチドの合成は、自動合成装置を用いて一般的に行なうことができる。また、通常の遺伝子工学的手法、例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いて行なうことができる。
【0090】
本発明の蛍光プローブを免疫学的アッセイに適用する場合には、上記特異的結合物質として、分析または検出される物質と特異的に結合する抗原(ハプテンを含む)又は抗体を用いることができる。この場合に、上記分析または検出される物質としては、被検試料中に一般的に含まれている成分で、しかも、免疫学的に検出することのできる物質あれば、特に制限されない。一例を挙げれば、各種タンパク質、多糖類、脂質、菌体、又は各種環境物質等を挙げることができる。より詳細には、免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、又はIgA)、感染症関連マーカー(例えば、HBs抗原、HBs抗体、HIV−1抗体、HIV−2抗体、HTLV−1抗体、又はトレポネーマ抗体)、腫瘍関連抗原(例えば、AFP、CRP、又はCEA)、凝固線溶マーカー(例えば、プラスミノーゲン、アンチトロンビン−III、D−ダイマー、TAT、又はPPI)、抗てんかん薬(例えば、ホルモン)、各種薬剤(例えば、ジゴキシン)、菌体(例えば、O−157又はサルモネラ)若しくはそれらの菌体内毒素若しくは菌体外毒素、微生物類、酵素類、残留農薬、又は環境ホルモン等を挙げることができる。上記特異的結合物質として用いる抗体としては、周知の方法で得られるポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれをも使用することができる。さらに、上記抗体は、タンパク質[例えば、酵素(例えば、ペプシン又はパパイン)]処理したもの[例えば、抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、又はFv)]を用いることもできる。
【0091】
このように、本発明の蛍光プローブは、種々の生体高分子の検出もしくは分析に用いることが可能であり、かつ励起光を照射した際に、上記検出もしくは分析される生体高分子に対して損傷を与えないといった利点を有するものである。
【0092】
C.その他
以上のように、本発明においては、以下の発明を提供することができる。
1.500nm〜2000nmの範囲内の波長の光により励起されてアップコンバージョン発光することを特徴とする希土類元素含有微粒子。
2.上記希土類元素含有微粒子が、希土類元素を含有する核部と、その核部表面を修飾する機能性殻部からなり、上記機能性殻部は、特異的結合物質と結合することができる特異的結合物質結合部位を少なくとも有することを特徴とする上記1に記載の希土類元素含有微粒子。
3.上記特異的結合物質結合部位が、縮合反応性を有する部位、付加反応性を有する部位、置換反応性を有する部位、および特異的相互作用を有する部位のうちの少なくとも一つの部位であることを特徴とする上記2に記載の希土類元素含有微粒子。
4.上記希土類元素含有微粒子が、上記希土類元素含有微粒子の凝集を防止する凝集防止部位を有することを特徴とする上記2または上記3に記載の希土類元素含有微粒子。
5.上記凝集防止部位が、水素結合を有する部位及び水和能を有する部位の内の少なくとも一つの部位であることを特徴とする上記4に記載の希土類元素含有微粒子。
6.上記機能性殻部が、核部と結合する核部結合部位を有することを特徴とする上記2から上記5までのいずれかに記載の希土類元素含有微粒子。
7.上記核部結合部位が、金属と結合する機能を有する部位、縮合反応性を有する部位、付加反応性を有する部位、および置換反応性を有する部位のうちの少なくとも一つの部位であることを特徴とする上記6に記載の希土類元素含有微粒子。
8.核部の平均粒子径が、1nm〜100nmの範囲内であることを特徴とする上記2から上記7までのいずれかに記載の希土類元素含有微粒子。
9.上記核部が、ハロゲン化物または酸化物を母材とし、上記アップコンバージョン発光可能な希土類元素が含有されてなるものであることを特徴とする上記2から上記8までのいずれかに記載の希土類元素含有微粒子。
10.上記希土類元素が、エルビウム(Er)、ホロミウム(Ho)、プラセオジウム(Pr)、ツリウム(Tm)、ネオジウム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)およびセリウム(Ce)からなる群から選択される少なくとも1つ以上の希土類元素であることを特徴とする上記1から上記9までのいずれかに記載の希土類元素含有微粒子。
11.酸化物に希土類元素が付活された平均粒子径1〜100nmの微粒子であって、上記酸化物が酸化イットリウム、酸化ガドリニウム、酸化ルテチウム、酸化ランタン、および酸化スカンジウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記1に記載の希土類元素含有微粒子。
12.上記希土類元素がエルビウムとイッテルビウムである上記11に記載の希土類元素含有微粒子。
13.上記希土類元素がエルビウムである上記11に記載の希土類元素含有微粒子。
14.上記希土類元素がツリウムとイッテルビウムである上記11に記載の希土類元素含有微粒子。
15.上記1から上記14までのいずれかに記載の希土類元素含有微粒子と、上記希土類元素含有微粒子と結合する特異的結合物質とを有することを特徴とする蛍光プローブ。
16.上記特異的結合物質が、ポリヌクレオチド、ホルモン、たんぱく質、抗原、抗体、ペプチド、細胞、および組織のいずれかであることを特徴とする上記15に記載の蛍光プローブ。
【0093】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
【0095】
1.核部ないし第2希土類元素含有微粒子の作製
アップコンバージョン発光することを特徴とする希土類元素を含有する核部の作製方法を示す。
【0096】
1−1.Y:Yb,Er微粒子
液相反応にてYbとErをドープした前駆体を得、当該前駆体を焼成することによりY:Yb,Er微粒子を作製した。以下に製造工程を示す。
【0097】
まず硝酸イットリウム0.0158molと、硝酸イッテルビウム0.004molと、硝酸エルビウム0.0002molとを蒸留水に溶解させて100mlとし、Y、Yb、Erイオン混合溶液を作製した。また、炭酸ナトリウム水溶液(0.3mol/l)100mlを上記のY、Yb、Erイオン混合溶液に添加し2時間攪拌した。
【0098】
次に遠心分離機を用い、3000rpmで30分間の遠心分離を三回繰り返し行った。その後、沈殿物を真空中45℃で5時間乾燥し、前駆体であるYbとErを付活した塩基性炭酸イットリウムを得た。
【0099】
この前駆体を電気炉に入れて急熱し、空気雰囲気中900℃で30分保持した後、取り出して急冷した。このようにして、Y:Yb,Er微粒子を合成した。SEMおよびXRDの測定結果より、平均粒子径は約30nmであることが確認された。
【0100】
このようにして得られたY:Yb,Er微粒子の半導体レーザー(980nm)の光励起による発光スペクトルを図4に示す。Er3+の緑色発光が550nm付近に観測され、Yb3+の赤色発光が650〜680nmの波長域に観測される。
【0101】
なお、図4は、エルビウムの添加量が1mol%、イッテルビウムの添加量が20mol%であるY:Yb,Er微粒子の発光スペクトルを示している。
【0102】
1−2.Y:Er微粒子
液相反応にてErをドープした前駆体を得、当該前駆体を焼成することによりY:Er微粒子を作製した。以下に製造工程を示す。
【0103】
まず硝酸イットリウム0.0198molと、硝酸エルビウム0.0002molとを蒸留水に溶解させて100mlとし、Y、Erイオン混合溶液を作製した。また、炭酸ナトリウム水溶液(0.3mol/l)100mlを上記のY、Erイオン混合溶液に添加し2時間攪拌した。
【0104】
次に遠心分離機を用い、3000rpmで30分間の遠心分離を三回繰り返し行った。その後、沈殿物を真空中45℃で5時間乾燥し、前駆体であるErを付活した塩基性炭酸イットリウムを得た。
【0105】
この前駆体を電気炉に入れて急熱し、空気雰囲気中900℃で30分保持した後、取り出して急冷した。このようにして、Y:Er微粒子を合成した。SEMおよびXRDの測定結果より、平均粒子径は約30nmであることが確認された。
【0106】
このようにして得られたY:Er微粒子の半導体レーザー(980nm)の光励起による発光スペクトルを図5に示す。Er3+の緑色発光が550nm付近に観測される。
【0107】
なお、図5は、エルビウムの添加量が1mol%のY:Er微粒子の発光スペクトルを示している。
【0108】
1−3.Y:Yb,Tm微粒子
液相反応にてYbとTmをドープした前駆体を得、当該前駆体を焼成することによりY:Yb,Tm微粒子を作製した。以下に製造工程を示す。
【0109】
まず硝酸イットリウム0.0158molと、硝酸イッテルビウム0.004molと、硝酸ツリウム0.0002molとを蒸留水に溶解させて100mlとし、Y、Yb、Tmイオン混合溶液を作製した。また、炭酸ナトリウム水溶液(0.3mol/l)100mlを上記のY、Yb、Tmイオン混合溶液に添加し2時間攪拌した。
【0110】
次に遠心分離機を用い、3000rpmで30分間の遠心分離を三回繰り返し行った。その後、沈殿物を真空中45℃で5時間乾燥し、前駆体であるYbとTmを付活した塩基性炭酸イットリウムを得た。
【0111】
この前駆体を電気炉に入れて急熱し、空気雰囲気中900℃で30分保持した後、取り出して急冷した。このようにして、Y:Yb,Tm微粒子を合成した。SEMおよびXRDの測定結果より、平均粒子径は約30nmであることが確認された。
【0112】
このようにして得られたY:Yb,Tm微粒子の半導体レーザー(980nm)の光励起による発光スペクトルを図6に示す。TM3+の青色発光が480nm付近に観測される。
【0113】
なお、図6は、ツリウムの添加量が1mol%、イッテルビウムの添加量が20mol%であるY:Yb,Tm微粒子の発光スペクトルを示している。
【0114】
2.第1希土類元素含有微粒子の作製
2−1.Y:Yb,Er/APTS微粒子
上記1−1で合成したY:Yb,Er微粒子300mgを高分子分散安定剤30mgを含む少量の乾燥トルエンで分散後、乾燥トルエンで希釈し全量を10gとした。この微粒子分散液に(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTS)0.5gを、窒素雰囲気下で激しく攪拌しながら加え、室温で15時間攪拌し続けた。
【0115】
遠心分離によりAPTS処理微粒子を回収した後、トルエンに再分散、遠心分離、回収、トルエン:メタノール(1:1)に再分散、遠心分離、回収、メタノールに再分散、遠心分離、回収、メタノール:水(1:1)に再分散、遠心分離、回収し、最後に水で再分散、遠心分離しY:Yb,Er/APTS複合微粒子を得た。
【0116】
収量は210mgであった。乾燥した複合微粒子は、水に再分散させることができた。また、この複合微粒子は、乾燥した状態や水に分散させた状態においても図4と同様のスペクトル形状のアップコンバージョン発光を示した。
【0117】
2−2.Y:Er/PEG−Biotin微粒子
上記1−2で合成したY:Er微粒子300mgを用い、2−1と同様にしてY:Er/APTS複合微粒子を作製した。収量は233mgであった。Y:Er/APTS複合微粒子200mgをpH8の水5gに再分散させた。
【0118】
この分散液に、pH8の水5gにBiotin−PEG−NHS(上記化合物16、Shearwater社製、カタログナンバーOH2ZOF02)を30mg加えた溶液を混合し、1時間攪拌した。その後、遠心分離によりBiotin−PEG−NHS処理後の複合微粒子と上澄み液を分け、複合微粒子は水に再分散、遠心分離、回収作業を3回繰り返した後に透析することによって精製し、目的のY:Er/PEG−Biotin複合微粒子を得た。
【0119】
このY:Er/PEG−Biotin複合微粒子分散液の全量は33.4gであった。この一部を採取し乾燥前後の重量を測定することによって求めたY:Er/PEG−Biotin複合微粒子の収量は74mgであった。また、この複合微粒子は、乾燥した状態や水に分散させた状態においても図5と同様のスペクトル形状のアップコンバージョン発光を示した。
【0120】
2−3.Y:Er/(APTS含有層)微粒子
脱水酢酸イットリウム20ミリモルと脱水酢酸エルビウム0.4ミリモルの脱水エタノール分散液を3時間還流した後、室温に冷却した。さらに0℃に冷却し超音波を照射し激しく攪拌しながら、ここに水酸化テトラメチルアンモニウムの脱水メタノール溶液を加えY:Er微粒子を作製した。加えたテトラメチルアンモニウムの量は、およそ22ミリモルである。
【0121】
このY:Er微粒子分散液にテトラエトキシシラン0.01ミリモルとAPTS0.01ミリモルを含む脱水トルエン溶液を加え、窒素雰囲気下でさらに2時間反応させY:Er/(APTS含有層)複合微粒子を作製した。凝集物を除去したY:Er/(APTS含有層)微粒子分散液に、遠心分離で微粒子を回収しエタノールで再分散する工程を2回施した。その結果得た微粒子分散液を攪拌子を入れた透析チューブに流しこみ、マグネチックスターラーを用いてpH3.8の水中にて攪拌することを、水を変えながら3日間実施した。このY:Er/(APTS含有層)複合微粒子の水分散液に暗所にて半導体レーザー(980nm)を照射したところ、照射部分が緑色に発光することを確認した。透過型電子顕微鏡により測定した平均粒子径は、およそ11nmであった。
【0122】
2−4.LaF:Yb,Er/(APTS含有層)微粒子
ジ−n−オクタデシルジチオフォスフェート(DOSP)120ミリモルと弗化ナトリウム120ミリモルを4リットルのエタノール/水混合溶媒(10:1)に加え75℃に加熱した。ここに硝酸ランタン40ミリモル、硝酸イッテルビウム0.12ミリモル、硝酸エルビウム0.01ミリモルを含む水溶液100ミリリットルを滴下しながら加え、75℃で2時間加熱しつづけた。室温に冷却後、遠心分離により粗LaF:Yb,Er/(DOSP含有層)微粒子を分け取り、水およびエタノールで各5回洗浄した。その後、ジクロロメタンに再分散し、ここにエタノールを加え再沈したものを遠心分離により分け取る工程を3度繰り返してLaF:Yb,Er/(DOSP含有層)微粒子を精製した。24時間室温で真空乾燥した固形分は6.9グラムであった。LaF:Yb,Er/(DOSP含有層)微粒子はジクロロメタンやトルエンには再分散可能であったがエタノールや水には再分散できなかった。LaF:Yb,Er/(DOSP含有層)微粒子を5グラム使い、窒素雰囲気下で脱水トルエン500ミリリットルに再分散した。ここにテトラエトキシシラン0.02ミリモルとAPTS0.02ミリモルを溶かした脱水トルエン10ミリリットルを加え15時間反応させた。遠心分離後、エタノールで再分散を試み、5時間静置後の上澄みをデカンテーションにより分け取った。この上澄み液を遠心分離し、エタノール/水(1:1)で再分散、遠心分離しpH3.5の水で再分散を試みた。ここでほとんど凝集物が見られなかったことからLaF:Yb,Er/(APTS含有層)微粒子ができていることが確認できた。これを遠心分離し、24時間室温で真空乾燥した。乾燥後の重量は4.1グラムであった。これに980nmの半導体レーザー光を照射すると赤色に発光した。またSEM観察により平均粒子径はおよそ32nmであることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】アップコンバージョン発光を説明するための説明図である。
【図2】2光子発光を説明するための説明図である。
【図3】抗原抗体反応における本発明の利用形態を説明するための概略図である。
【図4】Y:Yb,Er微粒子の半導体レーザー(980nm)の光励起による発光スペクトルを示すグラフである。
【図5】Y:Er微粒子の半導体レーザー(980nm)の光励起による発光スペクトルを示すグラフである。
【図6】Y:Yb,Tm微粒子の半導体レーザー(980nm)の光励起による発光スペクトルを示すグラフである。
【図7】酸化イットリウムへのエルビウムの添加量を1原子百分率(atom%)で固定し、イッテルビウムの添加量を0atom%、1atom%、3atom%、5atom%、20atom%と変化させて得た希土類元素含有微粒子の半導体レーザー(980nm)の光励起による発光のスペクトルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性炭酸イットリウム、塩基性炭酸ガドリニウム、塩基性炭酸ルテチウム、塩基性炭酸ランタン、および塩基性炭酸スカンジウムからなる群より選択される少なくとも1種の塩基性炭酸塩に希土類元素を付活する第1工程と、
前記希土類元素が付活された塩基性炭酸塩を焼成する第2工程と、
を含むことを特徴とする希土類元素含有微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程で、前記希土類元素が付活された塩基性炭酸塩を液相反応により得ることを特徴とする請求項1に記載の希土類元素含有微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程で、硝酸イットリウム、硝酸ガドリニウム、硝酸ルテチウム、硝酸ランタン、および硝酸スカンジウムからなる群より選択される少なくとも1種の硝酸塩と、付活しようとする希土類元素の硝酸塩と、炭酸ナトリウムとを反応させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の希土類元素含有微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程で、前記希土類元素が付活された塩基性炭酸塩を急速加熱して焼成した後に急速冷却することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の希土類元素含有微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記希土類元素を、得ようとする蛍光の波長に応じて選択することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の希土類元素含有微粒子の製造方法。
【請求項6】
500nm〜2000nmの範囲内の波長の光により励起されてアップコンバージョン発光し、平均粒子径が1nm〜100nmである希土類元素含有微粒子を作製することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の希土類元素含有微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記希土類元素がエルビウムとイッテルビウムである請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の希土類元素含有微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記希土類元素がエルビウムである請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の希土類元素含有微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記希土類元素がツリウムとイッテルビウムである請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の希土類元素含有微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−84576(P2009−84576A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274806(P2008−274806)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【分割の表示】特願2002−332852(P2002−332852)の分割
【原出願日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】