説明

希土類含有ゼオライトおよび水素化金属を含む触媒を使用したアルキル化プロセス

希土類含有ゼオライトおよび水素化金属を含む固体酸触媒を利用した改善されたアルキル化プロセスが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アルキル化という用語は、芳香族または飽和炭化水素等のアルキル化可能な化合物の、オレフィンなどのアルキル化剤との反応を指す。この反応は、2〜6個の炭素原子を含有するオレフィンによるイソブタンのアルキル化を通して、高いオクタン価を有し、ガソリンの範囲で沸騰するアルキレートを得ることを可能とするので興味深い。真空ガスオイルや大気圧残渣等のより重い石油留分の熱分解により得られるガソリンとは異なり、アルキル化により得られるガソリンは、硫黄や窒素等の不純物を実質的に含まず、したがって清浄燃焼特性を有する。高いオクタン価により表されるその高いアンチノック特性は、芳香族化合物または鉛等の環境に有害なアンチノック化合物を添加する必要性を削減する。また、ナフサの改質またはより重い石油留分の熱分解により得られるガソリンとは異なり、アルキレートは、あるとしても、含有する芳香族化合物またはオレフィンが僅かであり、これはさらなる環境上の利点を提供する。
【0002】
アルキル化反応は、酸により触媒される。従来のアルキル化プロセス機器は、硫酸やフッ化水素酸等の液体酸触媒を使用する。そのような液体酸触媒の使用は、広範な問題を伴う。例えば、硫酸およびフッ化水素酸は、両方とも極めて腐食性であるため、使用される機器は、厳しいサービス要件に適合しなければならない。得られる燃料における極めて腐食性の材料の存在は好ましくないため、残留した酸は、アルキレートから除去されなければならない。また、行われなければならない液相分離のために、プロセスは複雑となり、費用が高くなる。さらに、フッ化水素等の毒性物質が環境中に放出されるというリスクが常に存在する。
【0003】
本発明は、希土類含有ゼオライトおよび水素化金属を含む固体酸触媒を利用した、改善されたアルキル化プロセスを提供する。
【0004】
触媒の含水量は、約1.5重量%から約6重量%の範囲であり、一実施形態においては、約1.8重量%から約4重量%の範囲であり、別の実施形態においては、約2重量%から約3重量%の範囲である。触媒の含水量は、アルキル化プロセスでの使用中における含水量として定義され、600℃で2時間触媒を加熱した後の重量損失(強熱減量またはLOI600)を決定することにより測定される。
【0005】
触媒は、水素化金属をさらに含む。好適な水素化金属の例は、周期律表の第VIII族等の遷移金属、およびこれらの混合物である。それらのうち、周期律表の第VIII族の貴金属が好ましい。白金、パラジウム、およびこれらの混合物が特に好ましい。水素化金属の量は、その性質に依存する。水素化金属が周期律表の第VIII族の貴金属である場合、触媒は、一般に、約0.01重量%から約2重量%の範囲の金属を含有する。一実施形態においては、これは、金属として、触媒の総重量を基準として計算して、約0.1重量%から約1重量%の範囲である。
【0006】
触媒は、固体酸をさらに含む。固体酸の例は、ゼオライトベータ、MCM−22、MCM−36、モルデン沸石、フォージャサイト、例えばXゼオライトおよびHYゼオライトやUSYゼオライトを含むYゼオライト等のゼオライト、シリカ−アルミナ等の非ゼオライト系固体酸、ジルコニウム、チタン、またはスズの硫酸化酸化物等の硫酸化酸化物、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、リン等の混合酸化物、ならびに塩素化酸化アルミニウムまたは粘土である。好ましい固体酸は、モルデン沸石、ゼオライトベータ、フォージャサイト、例えばXゼオライトおよびHYゼオライトやUSYゼオライトを含むYゼオライト等を含む、ゼオライトである。固体酸の混合物もまた使用可能である。一実施形態においては、固体酸は、24.72オングストロームから約25.00オングストロームの単位格子サイズ(a)を有するフォージャサイトであり、別の実施形態においては、固体酸は、24.34〜24.72オングストロームの単位格子サイズを有するYゼオライトであり、一方、別の実施形態においては、固体酸は、24.42〜24.56オングストロームの単位格子サイズを有するYゼオライトである。さらに別の実施形態において、固体酸は、24.56〜24.72オングストロームの単位格子サイズを有するYゼオライトである。
【0007】
触媒の固体酸成分は、希土類、すなわちランタニド系列から選択される元素である。一実施形態においては、希土類は、約0.5重量%から約32重量%の範囲である。別の実施形態においては、希土類は、約2重量%から約9重量%の範囲である。さらに別の実施形態においては、希土類は、約4重量%から約6重量%の範囲である。本明細書において、希土類の重量%のすべての言及は、乾燥重量基準(600℃、1時間)で、希土類酸化物として計算される。
【0008】
希土類元素は、従来の手段により、固体酸成分に交換され得る。一実施形態においては、固体酸成分は、ランタン交換Yゼオライトである。
【0009】
固体酸成分の交換プロセス中、ナトリウム(Na+)が触媒から除去される。一実施形態においては、固体酸成分は、1.5重量%未満のNaOを含有する。別の実施形態においては、1.0重量%未満のNaOである。さらに別の実施形態においては、0.6重量%未満のNaOであり、すべて乾燥重量基準(600℃、1時間)である。
【0010】
触媒は、マトリクス材をさらに含み得る。好適なマトリクス材の例は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、粘土、およびこれらの混合物である。アルミナを含むマトリクス材が一般に好ましい。一実施形態においては、触媒は、触媒中に存在する固体酸およびマトリクス材の総重量を基準として、約2重量%から約98重量%の固体酸、および約98重量%から約2重量%のマトリクス材を含む。別の実施形態においては、触媒は、触媒中に含有される固体酸およびマトリクス材の総重量を基準として、約10重量%から約90重量%の固体酸、および約90重量%から約10重量%のマトリクス材を含む。別の実施形態においては、触媒は、約10重量%から約80重量%のマトリクス材および残りの固体酸を含む。さらに別の実施形態において、触媒は、触媒中に含有される固体酸およびマトリクス材の総重量を基準として、約10重量%から約40重量%のマトリクス材および残りの固体酸を含む。
【0011】
触媒は、好ましくはハロゲン成分を含有しない。
【0012】
一実施形態においては、触媒は、触媒粒子を含み、(i)約40nmから約8,000nmの直径を有する触媒細孔(本明細書において「マクロ孔」と定義される)内の容積と、(ii)触媒粒子の固有長さとの間の比が、約0.01ml/(gmm)から約0.90ml/(gmm)の範囲内であり、触媒は、少なくとも0.20ml/gの総細孔容積を有する。
【0013】
触媒粒子の固有長は、この触媒粒子の固体部分の幾何学的容積と幾何学的表面との間の比として定義される。幾何学的容積および幾何学的表面の決定は、当業者に既知であり、例えば独国特許第DE2354558号に記載のように行うことができる。
【0014】
マクロ孔容積および総細孔容積は、3.6〜8,000nmの直径を有する細孔に対応するWashburnの式に基づく水銀圧入により決定される。
【0015】
一実施形態においては、マクロ孔内の容積と固有長との間の比は、約0.20ml/(gmm)を超え、別の実施形態においては、約0.30ml/(gmm)を超える。さらに別の実施形態において、比は、約0.40ml/(gmm)を超えるが、約0.80ml/(gmm)より低い。
【0016】
一実施形態においては、触媒は、少なくとも約0.23ml/g、別の実施形態においては、少なくとも約0.25ml/gの総細孔容積を有する。
【0017】
一実施形態においては、触媒粒子は、少なくとも約0.10mm、別の実施形態においては、少なくとも約0.16mm、さらに別の実施形態においては、少なくとも約0.20mmの固有長を有する。一実施形態においては、固有長の上限は約2.0mm、別の実施形態においては、約1.0mm、さらに別の実施形態においては、約0.6mmに存在する。
【0018】
触媒のマクロ孔内の細孔容積は、一実施形態においては、少なくとも約0.05ml/g、別の実施形態においては、少なくとも約0.08ml/gである。一実施形態においては、マクロ孔内の細孔容積の上限は、約0.30ml/gよりも低く、別の実施形態においては、約0.25ml/gよりも低い。
【0019】
触媒の粒子は、球、円筒、環、および対称または非対称ポリローブ、例えば、トリローブおよびクアドルローブ等を含む、多くの異なる形状を有し得る。
【0020】
一実施形態においては、触媒粒子は、少なくとも約0.5mm、別の実施形態においては、少なくとも約0.8mm、さらに別の実施形態においては、少なくとも約1.0mmの平均粒子直径を有する。一実施形態においては、平均粒子直径の上限は約10.0mm、別の実施形態においては、約5.0mm、さらに別の実施形態においては、約3.0mmである。
【0021】
本発明によるプロセスに使用される触媒は、含水量を調節することにより調製される。例えば、固体酸構成成分がマトリクス材と混合されて担体粒子を形成し、次に粒子の焼成を行なうことができる。水素化官能基は、例えば、担体粒子を水素化金属成分の溶液で含浸することにより触媒組成物中に組み込むことができる。含浸後、触媒が焼成され得る。
【0022】
一実施形態においては、触媒は、約200℃から500℃の範囲内の温度で、水素等の還元ガス中で還元される。別の実施形態においては、触媒は、約250℃から約350℃の範囲内の温度で還元される。還元は、含水量の調節前、触媒への水の添加後、および/または含水量を調節する手法として還元を使用することにより行うことができる。一実施形態においては、還元は、含水量の調節前に行われる。別の実施形態において、還元は、乾燥した非還元ガス(窒素、ヘリウム、空気等)中で触媒を乾燥させた後に行われる。
【0023】
触媒の含水量は、参照することによりその全体が組み入れられるPCT国際公開/欧州特許第EP2005/000929号に記載のように、様々な方法で調節可能である。そのような方法は、方法1、2、および3として以下に例示される。
【0024】
方法1は、触媒を水に曝露することにより触媒のLOIを増加させるステップを含む。これは、水分を含む雰囲気、例えば周囲条件下の空気に触媒を曝露することにより達成され得る。この方法の実施形態は、所望のLOIに達するまで、還元された触媒を水に曝露するステップ、所望のレベルを超えるLOIに達するまで、還元されていない触媒を水に曝露した後、触媒を還元し、これによりLOIを所望のレベルに減少させるステップ、所
望のレベルを超えるLOIに達するまで、還元された触媒を水に曝露した後、触媒を不活性または還元雰囲気下で処理し、これによりLOIを所望のレベルまで減少させるステップ、および触媒を水素および水分を含む雰囲気中で還元するステップを含む。
【0025】
方法2は、所望のレベルを超えるLOIを有する還元されていない触媒を還元することにより、既存の触媒のLOIを所望のレベルまで減少させるステップを含む。
【0026】
方法3は、アルキル化プロセスを、所望のレベルより低いLOIを有する触媒で開始し、処理中にアルキル化装置に水を添加する、例えば炭化水素供給物に水を添加することによる、水を含む雰囲気中で触媒を再生することによる、および/または、水を含む雰囲気に再生された触媒を曝露することによる、原位置での水の添加を含む。
【0027】
上記方法のうちの2つ以上の組合せもまた使用可能である。
【0028】
アルキル化プロセスにおいてアルキル化される炭化水素は、4〜10個の炭素原子を有するイソアルカン等の分岐鎖飽和炭化水素である。例は、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサンまたはこれらの混合物である。アルキル化剤は、2〜10個の炭素原子を有するオレフィンまたはオレフィンの混合物である。一実施形態においては、アルキル化プロセスは、イソブタンのブテンによるアルキル化からなる。
【0029】
当業者には明らかなように、アルキル化プロセスは、流動床プロセス、スラリープロセス、および固定床プロセスを含む、いかなる好適な形態をも採り得る。プロセスは、複数の床および/または反応器において行われ、要望に応じてそれぞれ別個にアルキル化剤が添加されてもよい。そのような場合、本発明のプロセスは、それぞれの別個の床または反応器内で行うことができる。
【0030】
上述したように、触媒のLOIを所望のレベルまで増加させるために、プロセス中に水が添加されてもよい。この水は、例えば炭化水素供給物またはアルキル化剤の供給物を介して、アルキル化反応中に導入することができる。代替として、触媒は、後述される任意選択の(穏やかな)再生ステップ中に、水を含む雰囲気を使用することにより、または、別個の中間の水和ステップにおいて、触媒を水と接触させることにより、水和され得る。処理中(すなわちアルキル化反応および/または再生中に)LOIが減少した後、触媒を再水和するために同様の手順を適用することができる。
【0031】
好適なプロセス条件は、当業者には既知である。好ましくは、国際公開第WO98/23560号に開示されるようなアルキル化プロセスが適用される。本発明のプロセスにおいて適用されるプロセス条件を、以下の表にまとめる。
【表1】

【0032】
任意選択で、触媒は、気相での水素による高温再生に供されてもよい。この高温再生は、少なくとも約150℃の温度で行うことができ、一実施形態においては、再生は、約150℃から約600℃で、別の実施形態においては、約200℃から約400℃で行われる。この再生手順の詳細については、参照することにより本明細書に全体が組み入れられる、国際公開第WO98/23560号、特に4ページの12〜19行目を参照されたい。高温再生は、アルキル化プロセスの間、定期的に適用することができる。高温再生の結果、触媒の含水量が所望のレベル未満に減少した場合、触媒は、上述に記載した手法で、プロセス中に再水和され得る。
【0033】
高温再生処理に加え、例えば、参照することにより本明細書に全体が組み入れられる、国際公開第WO98/23560号、特に9ページ13行目から13ページ2行目までに記載されるように、アルキル化プロセス中により穏やかな再生を施すことができる。アルキル化プロセス中、触媒は、炭化水素および水素を含有する供給物と接触させることにより断続的に再生ステップに供されることが可能であり、該再生は、一実施形態においては触媒の活性サイクルの約90%以下で、別の実施形態においては60%以下で、別の実施形態においては20%以下で、別の実施形態においては10%以下で行われる。触媒の活性サイクルは、本明細書において、アルキル化剤の供給の開始から、触媒含有反応器セクションに添加されるアルキル化剤と比較して、分子内の異性化を考慮せず、アルキル化剤の20%が、変換されることなく触媒含有反応器セクションを出る瞬間までの時間として定義される。
【0034】
本発明の触媒の調製は、a)固体酸含有粒子を、約400℃から約575℃の範囲内の温度で焼成するステップ、b)第VIII族貴金属を焼成した粒子に組み込んで貴金属含有粒子を形成するステップ、およびc)貴金属含有粒子を、約350℃から約600℃の範囲内の温度で焼成するステップを含む。
【0035】
アルキル化反応における本発明の触媒の性能は、水素化成分の組み込み前後に焼成ステップがともに特定の温度枠内で行われれば、さらに改善され得る。
【0036】
固体酸含有粒子は、ステップa)において、約400℃から約575℃の範囲内の温度で、別の実施形態においては約450℃から約550℃の範囲内で、さらに別の実施形態においては、約460℃から約500℃の範囲内で焼成される。加熱速度は、約0.1℃/分から約100℃/分、一実施形態においては約0.5℃から約50℃/分、別の実施形態においては約1℃/分から約30℃/分の範囲である。焼成は、約0.01時間から約10時間、一実施形態においては約0.1時間から約5時間、別の実施形態においては約0.5時間から約2時間行われる。焼成は、空気および/または不活性ガス(例えば窒素)流下で行うことができる。一実施形態においては、このガス流は乾燥している。
【0037】
別の実施形態においては、固体酸含有粒子は、焼成される前に乾燥される。この乾燥は、約110℃から約150℃の温度で行うことができる。
【0038】
焼成は、固定床反応器、流動床反応器、および回転管式か焼炉等、いかなる機器中でも行うことができる。
【0039】
第VIII族貴金属が、次いで、ステップb)において、焼成された固体酸含有粒子に組み込まれる。一実施形態においては、これは、第VIII族貴金属イオンおよび/またはそれらの錯体、ならびに(任意選択で)NH4+イオンを含む溶液を使用した、固体酸含有粒子の含浸または競合イオン交換により行われる。別の実施形態においては、第VIII族貴金属は、白金、パラジウム、およびこれらの組合せである。さらに別の実施形態においては、第VIII族貴金属の少なくとも1つが白金である。好適な第VIII族貴金属塩は、貴金属の硝酸塩、塩化物、および硝酸アンモニウム塩、またはこれらの錯体(例えばNH3錯体)を含む。
【0040】
得られた貴金属含有粒子は、次いで、ステップc)において350〜600℃の範囲内の温度で焼成される。一実施形態においては、粒子は、約400℃から約550℃で、別
の実施形態においては、約450℃から約500℃で焼成される。この温度は、約0.1℃/分から約100℃/分で、約350℃から約600℃の間の所望の最終値まで粒子を加熱することにより達し得る。一実施形態においては、粒子は、約0.5℃/分から約50℃/分で、別の実施形態においては、約1℃/分から約30℃/分で加熱される。焼成は、約0.01時間から約10時間、一実施形態においては約0.1時間から約5時間、別の実施形態においては約0.5時間から約2時間行うことができる。焼成は、空気および/または不活性ガス(例えば窒素)流下で行うことができる。一実施形態においては、このガス流は乾燥している。
【0041】
任意選択で、ステップ(b)と(c)の間で別個の乾燥ステップが施される。代替として、貴金属含有粒子は、焼成ステップの間に乾燥される。また、任意選択で、約200℃から約250℃の温度で約15〜120分間の滞留時間が導入されてもよい。
【0042】
焼成ステップ(c)の後、得られた触媒粒子は、約200℃から約500℃、一実施形態においては約250℃から約350℃の温度範囲で、水素等の還元ガス中で還元され得る。
【実施例】
【0043】
希土類(RE)イオンを含まない対照触媒と比較した、希土類イオンを含む触媒の性能
希土類イオンを含まない対照標準Yゼオライトを、従来の経路で、すなわち、ナトリウム−Yゼオライト(NaY)を調製後(SAR5.5)、NH−イオンによるイオン交換(残留NaOは典型的には約4重量%)、約575℃から約625℃での蒸気処理を行い、約24.53〜24.57Åのaを得、NH−イオンによる第2のイオン交換(残留NaOは典型的には約1重量%)、約500℃から約550℃でのさらなる蒸気処理を行い、約24.44〜24.52Åのaを得、約80℃の温度でのHSOまたはHClによる酸浸出を行ってバルクSAR(SARは、ゼオライト材料中のSiO2とAl2O3の比(mol/mol)として定義される)を約6から約12に増加させ(NaOは典型的には約0.2重量%に低下する)、乾燥させることにより、調製した。
【0044】
本発明のゼオライトは、同じ出発材料を使用して同様の手順に従い調製されるが、第1の交換ステップにおいてNH−および希土類イオンが使用され、蒸気処理温度は約400℃から約500℃である。この低い蒸気処理温度では、形成される非骨格アルミナがより少なく、酸浸出は必要ない。したがって、第1の蒸気処理の後、NH−イオンによる交換のみが必要であり、次いでゼオライトを乾燥させる。しかしながら、適切なaおよびNaO含量を達成するために、複数回の蒸気処理およびNH−イオンによるイオン交換のステップが必要に応じて使用され得る。一実施形態においては、NaOは、約0.2重量%から約1重量%の範囲であり、aは、約24.58〜24.68オングストロームの範囲であり、希土類は、約2重量%から約9重量%の範囲である。
【0045】
別の実施形態においては、NaO含量は、約0.7重量%より低く、aは、約24.60〜24.66オングストロームの範囲であり、希土類は、約4重量%から約6重量%の範囲である。
【0046】
また、約15重量%の希土類を含むゼオライトを調製した。この場合、本発明の手順に従ったが、第1の交換ステップでNH4+イオンを添加しなかった。
【0047】
試験されたアルキル化触媒は、以下の組成および特性を有した。約60%から約80%の上述のゼオライト、約20%から約40%のアルミナ、約0.15%から約0.5%の白金、約2mmから約6mmの範囲の平均粒子長さ、約1から約7.5の範囲の平均の長さ/直径の比、約0.5mmから約3mmの範囲の粒子直径、および約1.5ポンド/mmから約10ポンド/mmの範囲の側面破壊強度。

一般試験手順
【0048】
参照することにより本明細書に全体が組み入れられる国際公開第WO9823560号に記載の、2cmの直径を有する固定床リサイクル反応器に、38.6グラムの触媒押出物(乾燥重量基準、すなわち含水量に関して較正された実重量)およびカーボランダム粒子(60メッシュ)の1:1体積/体積混合物を充填した。反応器管の中央に、直径6mmの熱電対を配置した。反応器を、乾燥窒素で30分間(21Nl/時間)フラッシングした。次に、より高い圧力でシステムの漏出試験を行い、その後圧力を21バール、窒素流を21Nl/時間に設定した。次いで反応器温度を1℃/分の速度で275℃に上昇させ、275℃において窒素を水素で置換し、触媒を275℃で還元した。
【0049】
代替として、実行と実行の間で同じ触媒試料が高温再生される場合、水素による反応器内の排出とフラッシングを行ってアルキル化反応温度を維持しながら炭化水素を除去した後、水素流を21Nl/時間に設定し、次いで反応器温度を1℃/分で275℃に上昇させ、触媒を275℃で再生した。
【0050】
2時間後、反応器温度を約75℃の反応温度に低下させた。冷却中に水を水素流に加え、約2〜4重量%の触媒LOI(触媒LOIは、600℃で2時間加熱した後の触媒の重量損失として定義される)を得た。
【0051】
反応温度に達するとともに水素蒸気を停止した。約2.5〜3重量%アルキレート(不活性化速度を促進するために添加され、添加されるアルキレートの組成は、上記条件でのプロセスにより生成されるアルキレートと同様である)、および約1mol%の溶解水素を含有するイソブタンを、約4.0kg/時間の速度で反応器に供給した。約95〜98%のイソブタン/アルキレート混合物を、反応器に再び供給した。約2〜5%を、分析のために排出した。系内の液体の一定量を確保するほどの量のイソブタン/アルキレート混合物を反応器に供給した。系が安定したら、水素添加を停止し、0.16以上のcis−2−ブテン−WHSVを得るような量のcis−2−ブテンをそれに添加した。系内の液体の全体的な流速は、約4.0kg/時間に維持した。反応器入口でのcis−2−ブテンに対するイソブタンの重量比は、約500〜650であった。反応器内の圧力は、約21バールに達した。試験の間、炭化水素リサイクル流の(添加アルキレートおよび生成アルキレートからの)総アルキレート濃度は、分析のための排出流を制御することにより、約6.5〜7.5重量%に維持された。
【0052】
反応から1時間後の各時間で、触媒をイソブタン/アルキレート混合物で5分間洗浄した後、イソブタン/アルキレート混合物中1モル%のH2の溶液に接触させることによる50分間の再生を行い、次いでイソブタン/アルキレート混合物でさらに5分間洗浄することにより、触媒を再生した(全体の洗浄および再生時間は1時間)。この洗浄ステップの後、アルキル化を再び開始した。
【0053】
洗浄ステップ、再生ステップ、および反応ステップ中の温度は同一であった。
【0054】
上記のようにプロセスを行い、触媒性能を時間の関数として測定した。
【0055】
性能は、反応器通過毎のオレフィン変換およびリサーチオクタン価(RON)により特性決定した。RONは、国際公開第WO9823560号の13ページおよび14ページに記載されているように決定したが、唯一の例外は総C9+(2,2,5−トリメチルヘ
キサンは除く)のRON寄与は90ではなく84と推定されたことであった。
【0056】
反応器通過毎のオレフィン変換は、触媒床の入口と出口の間で変換されたオレフィンの重量割合(パーセンテージとして)であり、オレフィン分子内の異性化は考慮していない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1−3】図1、2、および3は、触媒の促進不活性化試験の結果を示す。
【0058】
図1は、同じ試験条件(whsv=0.16)において、新たな触媒(ゼオライト上に様々な量のREを有する)が、対照(REなし)触媒よりも高いオレフィン変換レベルを維持することを示している。図2は、新たな触媒が、対照触媒と比較して、同様の不活性化速度でより高いwhsv(0.20)を許容することを示している。このように、新たな触媒は、より高いwhsvで作用することができ、したがって、固定量のアルキレートを生成するために必要な触媒がより少なくなり、すなわち、アルキル化プラントの一定容量において必要な触媒がより少なくなる。図3は、新たな触媒が、少なくとも対照触媒で得られるのと同じRONを有するアルキレートを生成することを示している。ゼオライト上に約5重量%REを有する触媒は、最高の安定性と、生成されるアルキレートの比較的高いRONとの組み合わせをもたらす。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素をアルキル化するためのプロセスであって、水素化官能基および希土類含有固体酸構成成分を含む触媒の存在下で、アルキル化可能な有機化合物がアルキル化剤と反応してアルキレートを形成し、前記触媒は、飽和炭化水素および水素を含有する供給物と接触させることにより断続的に再生ステップに供され、前記再生は、前記触媒の活性サイクルの90%以下で行われ、前記触媒の活性サイクルは、アルキル化剤の供給の開始から、触媒含有反応器セクションの入口と比較して、分子内の異性化を考慮せず、アルキル化剤の20%が、変換されることなく前記触媒含有反応器セクションを出る瞬間までの時間として定義され、前記触媒は、前記触媒の活性のいかなる実質的な減少も発生する前に再生される、プロセス。
【請求項2】
前記アルキル化可能な有機化合物がイソブタンであり、前記アルキル化剤がC3〜C5アルケンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記アルキル化剤が、ブテンまたはブテンの混合物である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記再生が、前記触媒の活性サイクルの60%以下で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記再生が、前記触媒の活性サイクルの20%以下で行われる、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記触媒が、約0.75mmから約2mmの範囲内の粒子直径を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒が、2〜98重量%のマトリクス材および残りの固体酸構成成分を含む担体上の水素化官能基を備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記触媒担体が、20〜80重量%のマトリクス材および残りの固体酸構成成分を含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記触媒担体が、20〜50重量%のマトリクス材および残りの固体酸構成成分を含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記マトリクス材がアルミナを含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項11】
前記固体酸構成成分が、フォージャサイトまたはゼオライトベータである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記固体酸構成成分がYゼオライトである、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記固体酸構成成分が、ナトリウムゼオライトを調製するステップと、前記ナトリウムゼオライトをNH−および/または希土類イオンでイオン交換し、NaOを約3〜6重量%まで還元するステップと、aが約24.56Åから約24.72Åの範囲となるように、約400℃から約500℃でゼオライトを蒸気処理するステップと、NHイオンでイオン交換し、NaOを約1.5重量%未満まで還元するステップと、乾燥するステップと、を含むプロセスにより調製される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記固体酸構成成分が、ナトリウムゼオライトを調製するステップと、前記ナトリウムゼオライトをNH−および/または希土類イオンでイオン交換し、NaOを約3.5〜4.5重量%まで還元するステップと、aが約24.58Åから約24.68Åの範囲となるように、約400℃から約500℃でゼオライトを蒸気処理するステップと、NHイオンでイオン交換し、NaOを約1.0重量%未満まで還元するステップと、乾燥するステップと、を含むプロセスにより調製される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記固体酸構成成分が、ナトリウムゼオライトを調製するステップと、前記ナトリウムゼオライトをNH−および/または希土類イオンでイオン交換し、NaOを約3.5〜4.5重量%まで還元するステップと、aが約24.60Åから約24.66Åの範囲となるように、約400℃から約500℃でゼオライトを蒸気処理するステップと、NHイオンでイオン交換し、NaOを約0.7重量%未満まで還元するステップと、乾燥するステップと、を含むプロセスにより調製される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項16】
前記水素化官能基は、金属として計算して0.01〜2重量%の量で存在する、周期律表の第VIII族の貴金属である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記水素化官能基が、白金、パラジウム、またはこれらの混合物である、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記希土類がランタンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記再生において使用される前記飽和炭化水素が、前記アルキル化可能な有機化合物である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
再生温度および/または再生圧力が、それぞれ、摂氏温度で表現される反応温度および反応圧力から50%を超えて異ならない、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
再生温度および/または再生圧力が、それぞれ、摂氏温度で表現される反応温度および反応圧力から20%を超えて異ならない、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記再生が、前記反応と実質的に同じ温度および/または圧力で行われる、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記再生ステップの長さが、前記反応ステップの長さの0.1倍から10倍の長さである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項24】
前記再生ステップの長さが、前記反応ステップの長さの0.5倍から2倍の長さである、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記再生ステップの前に、水素およびアルキル化剤が実質的に存在しない状態での、飽和炭化水素による洗浄ステップが先行するか、前記再生ステップの後に、水素およびアルキル化剤が実質的に存在しない状態での、飽和炭化水素による洗浄ステップが続くか、またはその両方である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項26】
前記触媒が、気相での水素による高温再生に定期的に供される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項27】
前記触媒が、飽和炭化水素および水素による再生の50回ごとに、気相での水素による高温再生に供される、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記触媒は、a)固体酸含有粒子を、400〜575℃の範囲内の温度で焼成するステップ、b)第VIII族貴金属を焼成した粒子に組み込んで貴金属含有粒子を形成するステップ、およびc)貴金属含有粒子を350〜600℃の範囲内の温度で焼成するステップにより調製される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項29】
ステップa)で適用される温度が、450〜550℃の範囲である、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記温度が、460〜500℃の範囲である、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
ステップc)で適用される温度が、400〜550℃の範囲である、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記温度が、450〜500℃の範囲である、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記固体酸が、ゼオライトベータおよびフォージャサイトからなる群から選択されるゼオライトである、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記触媒は、600℃での強熱減量として測定される、約1.5重量%から約6重量%の水をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項35】
前記触媒が、約1.8重量%から約4重量%の水を含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記触媒が、約2重量%から約3重量%の水を含む、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記固体酸が、フォージャサイトまたはゼオライトベータである、請求項34に記載のプロセス。
【請求項38】
前記固体酸がYゼオライトである、請求項37に記載のプロセス。
【請求項39】
前記水素化金属が、第VIII族貴金属である、請求項38に記載のプロセス。
【請求項40】
前記炭化水素が、飽和炭化水素である、請求項39に記載のプロセス。
【請求項41】
前記触媒が、アルキル化プロセスにおける使用の前に、固体酸および水素化金属を含む乾燥触媒に水を添加することにより調製される、請求項34に記載のプロセス。
【請求項42】
アルキル化プロセスは、約1.5重量%未満の水を含む触媒を使用して開始され、前記アルキル化プロセスの間に前記触媒に水が添加される、請求項34に記載のプロセス。

【公表番号】特表2010−516746(P2010−516746A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546778(P2009−546778)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050977
【国際公開番号】WO2008/090234
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(509129255)
【Fターム(参考)】