説明

帯状体の蛇行矯正方法および装置

【課題】 帯状体を搬送する連続通板ラインにおいて、帯状体の蛇行矯正能力が大きく、蛇行を生じたら速やかにその修正ができる帯状体の蛇行矯正技術を提供するを提供する。
【解決手段】 搬送ロール2により帯状体1を連続的に搬送する帯状体の連続通板ラインにおいて、搬送ロール2の近傍の入側および出側のうちのすくなくともいずれか一方に、変位付与手段を設ける。変位付与手段は、帯状体1の両端近くの裏面に設けた電磁石3、4と、帯状体の両端近くの表面に設けた電磁石5、6とからなる。そして、電磁石3と6又は電磁石4と5を同時に励磁して、帯状体1を反対方向に吸引する。このようにすることで、帯状体1を点線1’に示すように傾斜させ、蛇行を矯正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状体の蛇行矯正方法と装置とに関し、特に、搬送ロールに張架されて走行する長尺の連続帯状体の処理ラインにおける蛇行矯正の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
帯状体を搬送するプロセスライン、例えば溶融メッキラインにおいて、帯状体の幅方向のずれ(蛇行)は通板の安定性を損なうだけでなく、帯状体が壁などに接触して損傷し、さらには帯状体の破断につながる場合がある。この蛇行を防ぐために、従来では、搬送ロールとして蛇行の自己矯正効果を持つように幅中央に膨らみをつけた凸クラウンロールを用いることが知られている。
【0003】
しかしながら、この凸クラウンロールを用いる場合には、蛇行矯正能力を大きくするために搬送ロールの凸クラウンを大きくすると、ヒートバックルと呼ばれる絞り込み疵が発生する。したがって、凸クラウンの大きさはそれほど大きくすることができない。このため、操業条件によっては必要な蛇行矯正能力を得ることができないという問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、たとえば特許文献1では、帯状体が張架される搬送ロールの走行方向の入り口側近傍に、帯状体と搬送ロールの間にガスを吹き込む蛇行矯正用ノズルを配置することによって、鋼板の蛇行矯正を行う技術が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1の技術では、搬送ロールと帯状体の間隙に吹き込まれたガス(空気)の膜による両者の摩擦係数の変化や、搬送ロールと帯状体の間隙で加圧されたガスが帯状体の幅方向に逃げ出す時の反作用の力等の不安定な制御要素によって幅方向の変位(移動)を制御するため、ガスの吹き込み位置や量と、帯状体の幅方向の変位との因果関係が不明確であり、ガス吹き込みによる帯状体の変位方向や変位量の再現性が低くなることが懸念される。このため、(1)帯状体のプロセスライン等の設備設計の際において、ノズル位置やガスの吹き込み量等の明確な設計指針が得られない、(2)蛇行の矯正に寄与しない無駄なガスの吹き込みを行う可能性がある、(3)蛇行矯正の即応性(高い応答性)が期待できない、等の問題点がある。
【0006】
この問題に対し、特許文献2では、帯状体が張架される搬送ロールの入側および出側の少なくとも一方において、走行する帯状体に対して当該帯状体の主面に対して交差する方向の変位を、押圧ロールによる接触、磁石の磁力、ガスの噴射等により付与し、糸巻き効果によって鋼板を幅方向に移動させて蛇行を修正する方法を提案している。
【0007】
図4は、特許文献2に記載された幅方向の修正方法を説明する図で、電磁石を使用した例である。図4(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は(a)のA−A線断面図である。
【0008】
同図において、帯状体1は強磁性体である鋼板で、図4(a)の下から上に向かって搬送され、搬送ロール2でほぼ直角に曲げられる。帯状体1の主面1aの裏面には、帯状体1から離隔した状態で、変位付与手段としての電磁石3、4が設けられている。電磁石3、4は、帯状体1の左右両端近傍に対向するように設けられる。
【0009】
電磁石3、4にはそれぞれアンプ13、14が接続され、アンプ13、14は、操作量を演算する制御装置15に接続されている。制御装置15により、アンプ13、14に流れる電流が制御され、電磁石3あるいは電磁石4が励磁される。
【0010】
蛇行検出センサ11が、搬送ロール2に対向する位置であって、帯状体1が進行方向をほぼ90゜変更した位置に設けられ、帯状体1の蛇行を測定している。
【0011】
蛇行検出センサ11が、たとえば、帯状体1が図4(a)における図の右側に寄ったことを検知すると、その信号は制御装置15に送られる。制御装置15は、アンプ13に指示を出し、右側の電磁石3のみを励磁する。すると、帯状体1は強磁性体なので、帯状体1の右端部が図4(b)の点線に示すように主面1aと交差する方向に変位する。点線に示すように変位すると、帯状体1は、図4(a)の右側の方が、左側の方より搬送ロール2に接触する長さが長くなり、糸巻き効果によって、図4(a)の左側の方へと移動し、蛇行を矯正できることになる。
【特許文献1】特開昭62−158827号公報
【特許文献2】特開2005−240117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記の図4に示す特許文献2に記載の構成では、次のような問題がある。図5は、図4(c)の一部を拡大した図である。この図の実線に示す帯状体1は、電磁石3、4のいずれも励磁していない搬送状態を示す。この状態から、電磁石3のみを励磁した場合、帯状体1は仮想線1”に示すように、電磁石4側は実線の位置から変化せず、電磁石3側が点線の位置まで電磁石3に引き寄せられるように傾くはずである。しかし、実際には、点線1’で示すように、帯状体1は、電磁石4側の方も引き寄せられてしまう。そのため、帯状体1の左右における搬送ロール2との接触長さの差が小さくなり、蛇行の修正が十分にできなくなってしまう、という問題があった。
【0013】
本発明の目的は、上記の問題を解決するもので、蛇行矯正能力が大きく、蛇行を生じたら速やかにその修正ができる帯状体の蛇行矯正技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために本発明の帯状体の蛇行矯正方法は、搬送ロールにより帯状体を連続的に搬送する帯状体の連続通板ラインにおいて、帯状体の搬送方向の左右のいずれか一方と、該一方から左右方向に離間する位置とで、帯状体をその主面と交差する方向であって相互に逆方向となる方向に変位させることを特徴としている。
【0015】
前記帯状体をその主面と交差する方向に変位させる手段が、帯状体が張架される搬送ロール近傍の入側および出側のうちのすくなくともいずれか一方に設けられた変位付与手段であって、該変位付与手段が、前記帯状体の表裏両面に複数個ずつ帯状体の左右方向に離間して設けられ、前記変位付与手段の任意の1の変位付与手段と、該変位付与手段に対して帯状体の左右方向に離間した位置で、帯状体の反対面に位置する他の変位付与手段とを同時に作用させる構成とすることができる。
【0016】
前記変位付与手段が、前記帯状体の表裏両面に3個以上ずつ設けられ、前記帯状体の片面側に設けられた3個以上の変位付与手段が、それぞれ前記帯状体に主面と交差する方向の変位を付与し、該変位量が、前記帯状体の一方端側から他端側に向かって徐々に変化するようにし、前記片面と反対側の面にある複数の変位付与手段が、前記変位した変位付与手段との間で帯状体を圧接するように変位する構成としてもよい。
【0017】
前記変位付与手段の少なくとも一部が、前記帯状体の搬送方向の左右両端部近傍に配置される構成や、前記変位付与手段が、電磁石、押圧ロール、ガスノズルのいずれかである構成とすることもできる。
【0018】
また、前記帯状体の幅方向の位置を蛇行検出センサで検出し、目標幅方向位置に対する前記帯状体の幅方向位置偏差が零になるように、前記変位付与手段による前記帯状体の主面に交差する方向の変位量を制御装置により制御するようにしてもよい。
【0019】
上記の問題を解決する本発明の帯状体の蛇行矯正装置は、搬送ロールにより帯状体を連続的に搬送する帯状体の連続通板ラインにおいて、帯状体が張架される搬送ロール近傍の入側および出側のうちのすくなくともいずれか一方に、帯状体の搬送方向の左右のいずれか一方端と、該一方端から左右方向に離間する位置とで帯状体をその主面と交差する方向で相互に逆方向に変位させる変位付与手段を、帯状体の搬送方向の左右に離間する2個所以上の位置の表裏両面に設けたことを特徴としている。
【0020】
前記変位付与手段の少なくとも一部が、前記帯状体の搬送方向の左右両端近傍に設けられた構成としてもよい。
【0021】
また、前記帯状体の幅方向の位置を検出する蛇行検出センサと、目標幅方向位置に対する前記帯状体の幅方向位置偏差が零になるように、前記変位付与手段による前記帯状体の主面に交差する方向の変位量を制御する制御装置とをさらに備えた構成とすることができる。
【0022】
上記した本発明によれば、搬送ロールに張架されて走行する帯状体に対して、例えばその主面に力を作用させることにより、その主面と交差する方向の変位(すなわち面外変位または面外変形)を与える。この変形を、帯状体の左右方向の離間した位置で、相互に逆方向に与える。これによって、帯状体の左右で、搬送ロールとの接触長さが変化し、糸巻き効果によって、帯状体を幅方向に移動させて帯状体の蛇行を矯正することができる。特に、帯状体の搬送方向の左右の離間する位置で、帯状体をその主面と交差する方向であって相互に逆方向となる方向に変位させることで、帯状体の傾きを確実なものとして、蛇行の矯正を効果的に行う。
【0023】
また、客観的に測定可能な面外変形の値と、その時の帯状体の幅方向の移動との関係を測定して、蛇行矯正のために帯状体に面外変形を与える機構の配置位置や配置数等の装置設計に明確な指針を与えることが可能となる。
【0024】
また、帯状体の面外変形は客観的に測定可能なため、目的の大きさの面外変形を帯状体に与えるために必要な最小限の押圧ロールの変位、磁力、ガスの吹き付け圧や量が正確に特定でき、押圧ロールや電磁石の駆動に必要な動力や電力、あるいはガス量等の制御資源を無駄にすることがない。
【0025】
さらに、押圧ロールの当接、磁力、ガスの吹き付けによる動圧等のいずれの手段によって帯状体に機械的な面外変形を与えた場合でも、実時間で糸巻効果による幅方向の移動が発生するため、帯状体の幅方向の移動制御による蛇行矯正の即応性(高い応答性)を実現できる。
【0026】
以上の通り、本発明によれば、帯状体を搬送するプロセスラインにおいて、帯状体に絞り込み疵などが発生せず、蛇行矯正能力を評価できる形で必要な蛇行矯正能力を得ることができ、蛇行矯正の即応性も得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、帯状体の搬送方向の左右の離間する位置で、帯状体をその主面と交差する方向であって相互に逆方向となる方向に変位させることで、帯状体は、搬送ロールの左右における接触長さの差が大きくなり、蛇行を速やかに修正することができる、という優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図を用いて本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0029】
図1は本発明の一実施の形態である帯状体の蛇行矯正方法を実施する蛇行矯正装置の構成の一例を示す図で、(a)は、正面図、(b)は右側面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
【0030】
本実施の形態の帯状体の蛇行矯正装置は、走行する帯状体1が張架される搬送ロール2と、この搬送ロール2における走行方向の入側であって帯状体1の主面1aの左右両エッジ部に、変位付与手段としての複数の電磁石3、4、5、6を備えている。電磁石3、4は、帯状体1の左右側端の下面(裏面)側にあり、電磁石5、6は帯状体1の左右側端の上面(表面)側にある。特許文献2では、帯状体1の裏面側の電磁石3、4のみであったのを、本発明では、帯状体1の表裏両面側に電磁石5、6を設けたことに特徴がある。
【0031】
電磁石3にはアンプ13があり、電磁石4にはアンプ14が、電磁石5にはアンプ16が、電磁石6にはアンプ17がある。また、アンプ13、14、16、17は、全て制御装置15に接続され、制御装置15により、アンプ13、14、16、17に流れる電流が制御され、電磁石3、4、5、6が独立して励磁される。
【0032】
図1では、帯状体1が搬送ロール2に張架され図1の矢印の方向に進行しており、蛇行検出センサ11が、搬送ロール2に対向する位置であって、帯状体1が進行方向をほぼ90゜変更した位置に設けられ、帯状体1の蛇行を測定している。
【0033】
この図1に示す構成の帯状体の蛇行矯正装置において、たとえば、帯状体1が図1(a)の右の方に寄っていったために、左の方向に帯状体1を寄せたい場合は、以下のように蛇行矯正操作を行う。
【0034】
図1において帯状体1の裏面右側にある電磁石3を励磁し、かつ、帯状体1の表面左側にある電磁石6を励磁する。すると、帯状体1の主面には電磁石3、および電磁石6から帯状体1の主面1aに交差する方向の成分を含む力が作用する。電磁石3による吸引力は、帯状体1をその主面1aに交差する方向(引き下げる方向)に変位させるためのものである。一方、電磁石6による吸引力は、帯状体1を主面1aと交差する方向(引き上げる方向)に変位させてもよいが、電磁石3によって帯状体1の左側が下方に引かれて撓むのを阻止できればよい。実施例では、電磁石3と電磁石6が励磁された場合、電磁石6に対向する帯状体1は、図1の実線に示す位置から移動しない程度にしている。
【0035】
この結果、帯状体1の右側が電磁石3に吸引され、帯状体1の左側が電磁石6に吸引されたとき、帯状体1は、図1(a)の点線1’に示すように傾斜する。
【0036】
また、側面から見ると、電磁石3側の帯状体1が、図1(b)に示す点線1’のように撓む。このとき、帯状体1の右側のエッジにおいて図1(b)、(c)に示す最大変位δが生じ、帯状体1の右端側と搬送ロール2との接触長さが長くなる。
【0037】
電磁石6も励磁され、帯状体1の左端側を吸引するので、帯状体1の左端側は下方に引っ張られることがなくなり、電磁石3が励磁される前の位置を保つことができる。したがって、帯状体1の図1(a)の右端側では、搬送ロール2に接触する長さが左端側に比べて長くなる。これによって、糸巻き効果が発揮され、帯状体1は、図1(a)の左側に移動し、蛇行が矯正される。
【0038】
帯状体1が、上記と反対に、図1(a)の左の方に寄っていった場合は、電磁石3と6とに代えて電磁石4と5を励磁することで、帯状体1を図1(a)と逆向きに傾斜させ、帯状体1を右方向に移動して蛇行を矯正することができる。
【0039】
以上は、電磁石3、4、5、6を搬送ロール2の入側に設けた例であるが、搬送ロール2の出側に設けても、同じようにして蛇行を矯正することができる。ただし、出側に電磁石3、4、5、6を設けた場合、入側と反対に接触する長さが長い方に帯状体1は移動することになる。
【0040】
上述の実施例において、帯状体1の主面1aに加えられる磁力の大きさによって帯状体1に与えられる面外変形の最大変位δの量が変わり、帯状体1のエッジ部が搬送ロール2と接触する長さが決まる。そして、接触長さによって帯状体1の幅方向速度が決まるので、それにしたがって、帯状体1の幅方向の移動方向および移動量を制御することで的確な蛇行矯正を行うことが可能になる。また、帯状体1に面外変形を与えると同時に、帯状体1の幅方向における移動が始まるので、良好な応答性にて、搬送ロール2に張架されて走行する帯状体1の蛇行矯正を行うことが可能になる。
【0041】
帯状体1に対して押圧ロール等にて面外変形を与える操作は、作業者が、帯状体1の蛇行を監視しつつ押圧ロールを手動にて操作して行ってもよいし、次に述べるような自動制御による方法でもよい。
【0042】
帯状体1の幅方向位置を自動制御する方法を具体的に説明する。図1の蛇行矯正装置では、帯状体1の幅方向位置を計測するための蛇行検出センサ11と、この蛇行検出センサ11からの帯状体1の幅方向の位置情報の入力に基づいて電磁石3、4、5、6の各々の磁力、すなわち帯状体1に対する吸引量(面外変位量)を制御する制御装置15を備えている。
【0043】
帯状体1の蛇行量を蛇行検出センサ11で計測し、計測量を制御装置15に入力する。制御装置15は、目標位置に対する帯状体1の幅方向位置偏差が零になるように操作量を演算し、この操作量に対応して、適切な磁力となるように、電磁石3、4、5、6の各々に流す電流を調整する。このようにして、帯状体1に張架されて走行する帯状体1の蛇行を的確かつ高い応答速度にて自動的に矯正することができる。また、帯状体1の幅方向の移動は、後述のように帯状体1に対して電磁石3と6、あるいは、電磁石4と5から与えられる面外変位量と再現性よく明確に相関するので、電磁石3、4、5、6の操作量に無駄がなく、これらの電磁石3、4、5、6を駆動制御するための電力も必要最小限で済む。
【0044】
図2は、本発明の第2実施例で、押圧ロールを用いて帯状体1に面外変形を与える帯状体の蛇行矯正装置を示す図である。(a)は正面図であり、(b)は側面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【0045】
この図2は、帯状体1に面外変形を与えるために、帯状体1の上下両面に、複数の押圧ロールを設けた例である。すなわち、搬送ロール2に張架された帯状体1の入側下面(裏側)には、軸方向の寸法が帯状体1の幅寸法に比較して短い複数の押圧ロール21〜25が、帯状体1の幅方向に所定のピッチで配置され、同様に、入側上面(表側)には、軸方向の寸法が帯状体1の幅寸法に比較して短い複数の押圧ロール26〜30が幅方向に配置されている。
【0046】
そして、押圧ロール21〜30は、各々の軸を搬送ロール2と平行にした姿勢で配置され、図示しない支持体によって各自独自に支持されている。押圧ロール21〜30は、支持体によって、帯状体1の主面1aに対して直交する方向に当該帯状体1に接近または離間する方向に平行移動することで、帯状体1に接触し、所望の量の面外変形を与えることができる構成となっている。
【0047】
これらの押圧ロール21〜30の各々は、制御装置15に接続され、帯状体1に面外変形を与えるための押し込み量が、各押圧ロールごとに独立して制御される構成となっている。制御装置15には、帯状体1の幅方向の位置を計測する蛇行検出センサ11が接続されている。
【0048】
この場合、入側の押圧ロール21〜30を、搬送ロール2の出側に設けてもよいし、入側と出側の両方に設けてもよい。
【0049】
この例では帯状体1の幅方向位置を計測するため、蛇行検出センサ11からの幅方向計測位置を制御装置15に入力し、制御装置15は目標幅方向位置に対する帯状体1の幅方向位置偏差が零になるように操作量を計算し、操作量に対応した操作量を下側の押圧ロール21〜25、および上側の押圧ロール26〜30に与え、操作量に対応して押圧ロールを帯状体1に接近する方向に押し込むことで所望の大きさの面外変形を与え、これにより、帯状体1の蛇行矯正制御を行う。
【0050】
図2の実施例では、各押圧ロール21〜25に、帯状体1の目標の変位量が加えられ、各押圧ロールの押し込み量を徐々に変化させることで、点線1’に重なって直線上に並ぶようにしている。また、押圧ロール26〜30の方も、制御装置15が各押圧ロールの変位量を算出して直線上に並ぶようにし、押圧ロール21〜25との間で帯状体1を圧接している。
【0051】
しかし、押圧ロールは、直線的に並ぶ配列に限定されるものではない。直線的な配列を曲線的な配列にしてもよい。また、帯状体1の表裏両面にある押圧ロール21〜25と押圧ロール26〜30を全て動かすのではなく、図1の電磁石3〜6と同様に、幅方向に離間した2つを、相互に反対方向に移動して帯状体1に点線1’に示すような傾斜を与えることにしてもよい。
【0052】
この図2に示す帯状体1の蛇行矯正装置では、上述の図1の装置と同様の効果が得られるとともに、さらに、帯状体1の幅方向の複数箇所に配列された複数の押圧ロール21〜25や押圧ロール26〜30の各々の帯状体1に対する押し込み量の制御により、帯状体1に対してよりきめ細かな面外変形を与えることが可能になり、より高精度の蛇行矯正が期待できる。
【0053】
図3は、本発明の第3実施例で、ガスを噴射するノズルを用いて帯状体1に面外変形を与える帯状体の蛇行矯正装置を示す図である。(a)は正面図であり、(b)は側面図、(c)は(a)のD−D線断面図である。
【0054】
押圧ロールを帯状体に接触させることができない場合は、この図3の実施例のようにガスを搬送ロール2の近傍における帯状体1の主面1aに吹き付けて、押圧ロールなどを接触させることなく帯状体1を面外方向に変形させることができる。
【0055】
図3に示すように、帯状体1が張架された搬送ロール2の入側には、帯状体1の両端縁に対応する位置に表面側にガスノズル31、32を設け、裏面側にガスノズル33、34を設けている。また、帯状体1の幅方向位置を検出する蛇行検出センサ11が設けられている。このガスノズル31、32およびガスノズル33、34の各々は、帯状体1の主面1aに対向するように図示しない開口部を有し、この開口部からガスを主面に吹き付けて、動圧により帯状体1に面外変形を与える動作を行う。
【0056】
ガスノズル31、32およびガスノズル33、34には、それぞれバルブ31a、32a、33a、34aが設けられ、ガスノズル31、32およびガスノズル33、34の各々から吹き出すガスの流量や流速が調整可能になっている。これらのバルブ31a、32a、33a、34aは、制御装置15によって開度が制御される。蛇行検出センサ11にて検出された帯状体1の幅方向の位置情報は制御装置15に入力されている。これにより、制御装置15は、ガスノズル31、32およびガスノズル33、34から帯状体1に対するガスの吹き付け位置、流量、流速等を制御することで動圧を調整し、帯状体1に発生する面外変形を的確に制御することが可能である。
【0057】
すなわち、帯状体1の幅方向位置を計測するための蛇行検出センサ11からの幅方向計測位置が制御装置15に入力されると、制御装置15は目標位置に対する帯状体1の幅方向位置偏差が零になるように操作量を計算し、操作量に対応して、バルブ31a、32a、33a、34aのうちから適切な方のバルブを選び、適切なほうに演算した操作量(開度情報)を出力する。この操作量に対応して、バルブ31a、32a、33a、34aを開くことで、所望の流量および流速にてガスをガスノズル31、32、33、34からそれぞれ噴出して帯状体1に吹き付け、帯状体1に所望の面外変形を与えて幅方向位置を制御し、走行する帯状体1の蛇行矯正を行う。
【0058】
たとえば、帯状体1が図3(a)において、左に寄った場合、ガスノズル32と、ガスノズル33からガスを噴射し、帯状体1を図3(c)の点線1’に示すように傾斜させる。これによって、図3(a)の帯状体1の左側が搬送ロール2に接触する長さが長くなり、帯状体1は図3(a)の右に移動し、蛇行が矯正される。
【0059】
ガスノズル32から噴射するガスは、帯状体1の左端部を下方に撓ませるが、ガスノズル33から噴射するガスは、帯状体1の右端部が下に撓むのを抑え、ガスノズル33がガスを噴射しない状態の右端部の位置(実線に示す位置)に保持すればよい。
【0060】
帯状体1が図3(a)において、右に寄った場合は、ガスノズル31と、ガスノズル34とからガスを噴射し、帯状体1を図3(c)の点線1’と反対向きに傾斜させる。これによって、図3(a)の帯状体1の右側が搬送ロール2に接触する長さが長くなり、糸巻き効果によって、帯状体1は図3(a)の左に移動し、蛇行が矯正される。
【0061】
このように、ガスノズル31、32が帯状体1の端部を下方に撓ませたとき、ガスノズル33、34が反対側の端部が下方に撓むのを防止することで、帯状体1の左端と右端における搬送ロール2と帯状体1との接触長さを確実に相違させることができ、蛇行を矯正し易くなる。
【0062】
この実施例では、上述したように、ガスノズル31、34、又はガスノズル32、33から帯状体1に逆方向のガスを吹き付け、吹き付けられるガスの動圧によって帯状体1に面外変形を発生させて糸巻効果にて帯状体1の幅方向の変位(位置)を制御するので、ガスノズル31、32、33、34から帯状体1に吹き付けられるガスの流量や流速に応じて、良好な再現性および即応性にて帯状体1の幅方向の変位制御、すなわち蛇行矯正が可能となる。
【0063】
この結果、上述の各実施の形態と同様の効果が得られる。また、帯状体1に吹き付けられるガスの流量や流速に応じて発生する帯状体1の面外変形と幅方向の変位の関係の再現性が良好であるため、幅方向の制御に寄与しない無駄なガスの吹き付け量が減り、ガスの使用量の削減が可能となる。特に、ガスとして不活性ガスを用いる場合に、節約効果が大きい。
【0064】
また、帯状体1に対して非接触に面外変形を与えることができるので、帯状体1の表面の損傷等を防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施の形態である帯状体の蛇行矯正方法を実施する蛇行矯正装置の構成の一例を示す図で、(a)は、正面図、(b)は右側面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
【図2】本発明の第2実施例で、押圧ロールを用いて帯状体に面外変形を与える帯状体の蛇行矯正装置を示す図で、(a)は正面図であり、(b)は側面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図3】本発明の第3実施例で、ガスを噴射するノズルを用いて帯状体に面外変形を与える帯状体の蛇行矯正装置を示す図で、(a)は正面図であり、(b)は側面図、(c)は(a)のD−D線断面図である。
【図4】従来の幅方向の修正方法を説明する図で、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は(a)のA−A線断面図である。
【図5】図4(c)の一部を拡大した図である。
【符号の説明】
【0066】
1 帯状体
1a 主面
2 搬送ロール
3、4、5、6 電磁石
11 蛇行検出センサ
15 制御装置
21、22、23、24、25 押圧ロール
26、27、28、29、30 押圧ロール
31、32、33、34 ガスノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ロールにより帯状体を連続的に搬送する帯状体の連続通板ラインにおいて、帯状体の搬送方向の左右のいずれか一方と、該一方から左右方向に離間する位置とで、帯状体をその主面と交差する方向であって相互に逆方向となる方向に変位させることを特徴とする帯状体の蛇行矯正方法。
【請求項2】
前記帯状体をその主面と交差する方向に変位させる手段が、帯状体が張架される搬送ロール近傍の入側および出側のうちのすくなくともいずれか一方に設けられた変位付与手段であって、該変位付与手段が、前記帯状体の表裏両面に複数個ずつ帯状体の左右方向に離間して設けられ、前記変位付与手段の任意の1の変位付与手段と、該変位付与手段に対して帯状体の左右方向に離間した位置で、帯状体の反対面に位置する他の変位付与手段とを同時に作用させることを特徴とする請求項1に記載の帯状体の蛇行矯正方法。
【請求項3】
前記変位付与手段が、前記帯状体の表裏両面に3個以上ずつ設けられ、前記帯状体の片面側に設けられた3個以上の変位付与手段が、それぞれ前記帯状体に主面と交差する方向の変位を付与し、該変位量が、前記帯状体の一方端側から他端側に向かって徐々に変化するようにし、前記片面と反対側の面にある複数の変位付与手段が、前記変位した変位付与手段との間で帯状体を圧接するように変位することを特徴とする請求項2記載の帯状体の蛇行矯正方法。
【請求項4】
前記変位付与手段の少なくとも一部が、前記帯状体の搬送方向の左右両端部近傍に配置されることを特徴とする請求項2又は3に記載の帯状体の蛇行矯正方法。
【請求項5】
前記変位付与手段が、電磁石、押圧ロール、ガスノズルのいずれかであることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の帯状体の蛇行矯正方法。
【請求項6】
前記帯状体の幅方向の位置を蛇行検出センサで検出し、目標幅方向位置に対する前記帯状体の幅方向位置偏差が零になるように、前記変位付与手段による前記帯状体の主面に交差する方向の変位量を制御装置により制御することを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の帯状体の蛇行矯正方法。
【請求項7】
搬送ロールにより帯状体を連続的に搬送する帯状体の連続通板ラインにおいて、帯状体が張架される搬送ロール近傍の入側および出側のうちのすくなくともいずれか一方に、帯状体の搬送方向の左右のいずれか一方端と、該一方端から左右方向に離間する位置とで帯状体をその主面と交差する方向で相互に逆方向に変位させる変位付与手段を、帯状体の搬送方向の左右に離間する2個所以上の位置の表裏両面に設けたことを特徴とする帯状体の蛇行矯正装置。
【請求項8】
前記変位付与手段の少なくとも一部が、前記帯状体の搬送方向の左右両端近傍に設けられたことを特徴とする請求項7記載の帯状体の蛇行矯正装置。
【請求項9】
前記帯状体の幅方向の位置を検出する蛇行検出センサと、目標幅方向位置に対する前記帯状体の幅方向位置偏差が零になるように、前記変位付与手段による前記帯状体の主面に交差する方向の変位量を制御する制御装置とをさらに備えたことを特徴とする請求項7又は8に記載の帯状体の蛇行矯正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−202217(P2009−202217A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49239(P2008−49239)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】