説明

帯状板ガラスの割断方法及び割断装置

【課題】帯状の板ガラスを確実かつ正確に割断する。
【解決手段】本発明に係る帯状板ガラスの割断方法は、下方に向けて搬送される帯状板ガラス1に対して搬送方向に直交する向きのスクライブ線2を刻設するスクライブ工程と、スクライブ線2を刻設した帯状板ガラス1に押し曲げ荷重を付与することで帯状板ガラス1をスクライブ線2に沿って割断する割断工程とを具備すると共に、帯状板ガラス1の搬送方向を下方から上方に変えることで、帯状板ガラス1に所定の曲率を有する曲率部3を設ける曲率部付与工程をさらに具備し、スクライブ工程において、帯状板ガラス1の表裏面のうち曲率部3の外側面となる側の面にスクライブ線2を刻設し、割断工程において、スクライブ線2が曲率部3に到達した際に曲率部3の内側面に押し曲げ荷重を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状をなす板ガラスの割断方法及び割断装置に関し、特に、従来に比べて薄肉の帯状板ガラスを確実に割断するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、近年における画像表示装置は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、有機ELディスプレイ(OLED)などに代表されるフラットパネルディスプレイ(以下、単にFPDという)が主流となっている。これらのFPDについては軽量化が推進されていることから、FPDに使用されるガラス基板についても薄板化に対する要求が高まっている。
【0003】
上述したガラス基板は、例えば各種ダウンドロー法に代表される板ガラスの成形方法により帯状に成形した板ガラスを所定の寸法に切断し、切断した板ガラスの幅方向(帯状板ガラスの表裏面に平行で、かつ長手方向に直交する向きをいう。以下、同じ。)両端部分をさらに切断した後、各切断面に研磨加工を施す等により得られる。
【0004】
ここで、連続する帯状の板ガラスから所定寸法の板ガラスを切り出すための方法として、割断と呼ばれる手法が提案され、実際に使用されている。これは、帯状板ガラスの表裏何れかの面に対して幅方向に延びるスクライブ線を刻設し、スクライブ線を刻設した帯状板ガラスに曲げ応力又は熱応力を発生させることで、スクライブ線に沿って帯状板ガラスを切断する手法である。例えば下記特許文献1には、曲げ応力による割断方法の一例として、帯状板ガラスの搬送速度と同じ速度で移動可能な保持手段によりスクライブ線を刻設した帯状板ガラスの先端部分を保持して、保持した部分をスクライブ線を支点として折り曲げることにより帯状板ガラスを割断する手法が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、連続的に成形された帯状板ガラスを流れ方向に弓形に湾曲させて誘導して、帯状板ガラスの湾曲部分の外側面側に引張り歪みを発生させ、当該歪みが発生した状態の帯状板ガラスの外側面に幅方向のスクライブ線を刻設し、然る後、水平方向に搬送される帯状板ガラスの先端部を、当該先端部を搬送するコンベアの傾斜動作により上方に折り曲げることで、スクライブ線に沿って帯状板ガラスを折り割る手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−137930号公報
【特許文献2】特開平9−52725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のように、帯状板ガラスの先端部分を保持し、保持した部分をスクライブ線を支点として折り曲げる手法は、搬送中に割断を行うことのできる効率的な手法であり、ある程度の厚み(例えば0.7mm以上)を有する場合には有効であるが、帯状板ガラスの薄肉化がさらに進んだ場合においては、折り曲げの支点となる領域に十分な大きさの曲げ応力を発生させることが難しくなる。そのため、上述の如き手法では、帯状板ガラスを確実に割断することは難しい。また、仮に折り曲げ角を大きく取る等することによって切断できたとしても、その場合には帯状板ガラスを半ば強制的に折り割ることになるため、スクライブ線に沿って正確に割断されない可能性が高い。そのため、上述の手法では、高精度の割断面を安定的に得ることは難しい。
【0008】
上述の問題は、上記特許文献1と同様に搬送中の帯状板ガラスの先端部をスクライブ線を支点として折り曲げることで割断を行う上記特許文献2に記載の割断手法を採用する場合にも起こり得る。
【0009】
以上の事情に鑑み、帯状の板ガラスを確実かつ正確に割断することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題の解決は、本発明に係る帯状板ガラスの割断方法により達成される。すなわち、この割断方法は、下方に向けて搬送される帯状の板ガラスに対して搬送方向に直交する向きのスクライブ線を刻設するスクライブ工程と、スクライブ線を刻設した帯状板ガラスに押し曲げ荷重を付与することで帯状板ガラスをスクライブ線に沿って割断する割断工程とを具備した帯状板ガラスの割断方法において、帯状板ガラスの搬送方向を下方から上方に変えることで、帯状板ガラスに所定の曲率を有する曲率部を設ける曲率部付与工程をさらに具備し、スクライブ工程において、帯状板ガラスの表裏面のうち曲率部の外側面となる側の面にスクライブ線を刻設し、割断工程において、スクライブ線が曲率部に到達した際に曲率部の内側面に押し曲げ荷重を付与する点をもって特徴付けられる。なお、ここでいう「搬送方向に直交する向き」とは、完全なる直角(90°)のみを意味するものではなく、若干の振れ幅をもたせたものを意味するものとする。
【0011】
このように、本発明では、割断作業に際して、帯状板ガラスの搬送方向を下方から上方に変えることで、当該帯状板ガラスに所定の曲率を有する曲率部を設けるようにしたので、搬送状態の帯状板ガラス、特に曲率部に対して一定の引張り力を付与することができる。よって、スクライブ工程において、帯状板ガラスの表裏面のうち曲率部の外側面となる側の面にスクライブ線を刻設しておき、上述のように曲率部を設けた後、引き続き帯状板ガラスを搬送して予め刻設されたスクライブ線が曲率部に到達した際に、曲率部の内側面に押し曲げ荷重を付与することで、一定の引張り力が付与された状態のスクライブ線刻設領域を押し曲げることができる。また、当該領域がスクライブ線に沿って開口する向きに押し曲げることができる。従って、帯状板ガラスの厚みが小さい場合においても、割断予定箇所に十分な大きさの曲げ応力を発生させて、帯状板ガラスを確実に割断することができる。また、搬送方向を変えることで所定の曲率を有する部分(曲率部)を設けるようにしたので、搬送面に支持された状態で曲率部が形成される。これにより割断箇所となる曲率部の形状及び位置が安定し、引き続き帯状板ガラスが搬送されてスクライブ線が曲率部に到達した際も曲率部の形状は維持される。従って、帯状板ガラスをスクライブ線に沿って正確に割断することができ、また高精度の割断面を安定して得ることができる。
【0012】
また、本発明に係る割断方法は、曲率部付与工程において、帯状板ガラスを鉛直上方に向けて折り返すものであってもよい。
【0013】
本発明に係る割断方法によれば、帯状板ガラスを例えば斜め上方に向けて折り返すようにしても、確実かつ正確な割断が可能であるが、その場合には、割断により帯状板ガラスの本体から分離した板ガラスの下端(割断側の端部)が垂れ下がって周囲と干渉するおそれが生じる。この点、上述のように帯状板ガラスを鉛直上方に向けて折り返すようにすれば、割断された板ガラスの下端が周囲と干渉する事態を極力防止することができる。従って、割断後の取り扱い(搬送を含む)も円滑かつ容易となる。
【0014】
また、前記課題の解決は、本発明に係る帯状板ガラスの割断装置によっても達成される。すなわち、この割断装置は、下方に向けて搬送される帯状の板ガラスに対して搬送方向に直交する向きのスクライブ線を刻設するためのスクライブ手段と、スクライブ線を刻設した帯状板ガラスに押し曲げ荷重を付与することで帯状板ガラスをスクライブ線に沿って割断するための割断手段とを具備した帯状板ガラスの割断装置において、割断手段は、帯状板ガラスの搬送方向を下方から上方へと切替えることで帯状板ガラスに所定の曲率を有する曲率部を設ける搬送方向切替え機構と、曲率部の内側面に押し曲げ荷重を付与する押し曲げ荷重付与機構とを有し、かつスクライブ手段は、帯状板ガラスの表裏面のうち曲率部の外側面となる側の面にスクライブ線を刻設可能に配設される点をもって特徴付けられる。
【0015】
この割断装置によれば、既に述べた本発明に係る帯状板ガラスの割断方法と同様に、割断作業に際して、搬送方向切替え機構により帯状板ガラスの搬送方向を下方から上方に切替えることで、当該帯状板ガラスに所定の曲率を有する曲率部が設けられる。これにより、搬送状態の帯状板ガラスに設けられた曲率部に一定の引張り力を付与することができる。よって、スクライブ手段により、帯状板ガラスの表裏面のうち曲率部の外側面となる側の面にスクライブ線を刻設しておき、上述のように曲率部を設けた後、引き続き帯状板ガラスを搬送してスクライブ手段により刻設されたスクライブ線が曲率部に到達した際に、押し曲げ荷重付与機構で曲率部の内側面に押し曲げ荷重を付与することで、一定の引張り力が付与された状態のスクライブ線刻設領域を押し曲げることができる。また、当該領域がスクライブ線に沿って開口する向きに押し曲げることができる。従って、帯状板ガラスの厚みが小さい場合においても、割断予定箇所に十分な大きさの曲げ応力を発生させて、帯状板ガラスを確実に割断することができる。また、搬送方向を切替えることで所定の曲率を有する部分(曲率部)を設けるようにしたので、搬送方向切替え機構の搬送面に支持された状態で曲率部が形成される。これにより割断箇所となる曲率部の形状及び位置が安定し、引き続き帯状板ガラスが搬送されてスクライブ線が曲率部に到達した際も曲率部の形状は維持される。従って、帯状板ガラスをスクライブ線に沿って正確に割断することができ、また高精度の割断面を安定して得ることができる。
【0016】
また、本発明に係る割断装置は、搬送方向切替え機構が、半円筒面形状の搬送面を有するコンベアで構成されているものであってもよい。なお、ここでいう「搬送面」とは、帯状板ガラスに対する搬送面として機能するものであればよい。そのため、必ずしも帯状板ガラスの搬送方向に沿って連続的に存在する必要はなく、例えば断続的かつ所定の間隔で帯状板ガラスを搬送方向に沿って支持できる構造を成すものも含まれる。例示すると、文字通り、帯状板ガラスの搬送方向に連続するベルトの外表面のほか、帯状板ガラスを支持可能な受け面を設けた複数の板状部材を所定間隔で搬送方向に配列したものや、径一定の受け面を外周に有する複数のローラを所定間隔で搬送方向に配列したものなどが「搬送面」に含まれる。
【0017】
上述のような形状の搬送面を有するコンベアで搬送方向切替え機構を構成することで、下方に向けて搬送される帯状板ガラスをスムーズに搬送面上に導入でき、かつ導入した帯状板ガラスを搬送面に沿って搬送しながら折り返した後、当該折り返した帯状板ガラスの先端部を搬送面から上方に向けてスムーズに排出することができる。これにより、帯状板ガラスを安定的に支持した状態で折り返し作業を実施できる。また、曲率部が搬送面に倣った形状に押し付けられた状態となるので、割断時(押し曲げ荷重付与時)にも曲率部の形状及び位置を安定させることができ、好適である。
【0018】
また、本発明に係る割断装置は、搬送方向切替え機構により上方に向けて搬送される帯状板ガラスの先端部を保持し、かつ保持した状態で切替え後の搬送方向と同方向に移動可能な保持手段をさらに具備するものであってもよい。
【0019】
上記構成の保持手段によれば、上向きに搬送される帯状板ガラスの先端部を保持して、上方に移動させることができる。よって、搬送方向と同方向に移動した状態で割断することで、割断された板ガラスは保持手段により引き続き保持され、帯状板ガラスの本体と離隔する向きに上昇する。そのため、割断により帯状板ガラス本体から切り離された板ガラスの下端が周囲と干渉する事態を極力避けることができると共に、割断された板ガラスを次工程に向けてスムーズに搬送することが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る割断装置が上述の保持手段を具備する場合、この保持手段は、帯状板ガラスを保持した状態で、帯状板ガラスの搬送速度以上の速度で移動可能に構成され、これにより帯状板ガラスに設けた曲率部を搬送方向切替え機構の搬送面から浮かせた状態で押し曲げ荷重を付与可能としているものであってもよい。
【0021】
上述のように保持手段の動作を制御して、曲率部を浮かせた状態で押し曲げ荷重を付与するのであれば、仮に押し曲げ荷重を付与すべき領域が全面にわたって搬送面と密着可能な状態にあったとしても、押し曲げ荷重を付与すべき箇所に対して、割断に十分な変形を生じるだけのすき間を搬送面との間に付与することができる。これにより、搬送面(搬送方向切替え機構)の形態によらず、帯状板ガラスをスクライブ線に沿って確実に割断することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明に係る帯状板ガラスの割断方法および割断装置によれば、たとえ板厚が小さい場合においても、帯状の板ガラスを確実かつ正確に割断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る帯状板ガラスの割断装置の側面図である。
【図2】図1に示す割断装置の要部斜視図である。
【図3】本発明に係る割断装置を用いた割断方法の一例を説明するための要部側面図であって、帯状板ガラスを搬送方向切替え機構に導入した状態を示す要部側面図である。
【図4】スクライブ線の刻設時、図3に係る割断装置のスクライブ手段を矢印Aの方向から見た背面図である。
【図5】本発明に係る割断装置を用いた割断方法の一例を説明するための要部側面図であって、第1の保持手段で帯状板ガラスの先端部を保持する際の状態を示す要部側面図である。
【図6】本発明に係る割断装置を用いた割断方法の一例を説明するための要部側面図であって、第1の保持手段と第2の保持手段との間で帯状板ガラスの受渡しを行う際の状態を示す要部側面図である。
【図7】本発明に係る割断装置を用いた割断方法の一例を説明するための要部側面図であって、押し曲げ荷重付与機構により曲率部に押し曲げ荷重を付与する際の状態を示す要部側面図である。
【図8】本発明に係る割断装置を用いた割断方法の一例を説明するための要部側面図であって、割断により帯状板ガラスの本体と分離した板ガラスを第2の保持手段から移載手段へ受け渡す際の状態を示す要部側面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る割断装置の要部斜視図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る割断装置の要部斜視図である。
【図11】本発明に係る割断装置を用いた割断方法の他の例を説明するための要部側面図であって、押し曲げ荷重付与機構により曲率部に押し曲げ荷重を付与する際の状態を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図8を参照して説明する。なお、本実施形態では、ディスプレイ用ガラス基板を製作する過程において、成形した帯状板ガラスからガラス基板となる板状の素材ガラスを切り出す場合を例にとって説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る帯状板ガラスの割断装置10の側面図を示している。また、図2は、図1に示す割断装置10の要部斜視図を示している。図1及び図2に示すように、この割断装置10は、所定の成形装置11で(例えば溶融ガラスからオーバーフローダウンドロー法により)成形された帯状板ガラス1に対して搬送方向と直交する向き、すなわち帯状板ガラス1の幅方向に延びるスクライブ線2を刻設するためのスクライブ手段としてのスクライブ装置12と、スクライブ線2を刻設した帯状板ガラス1に押し曲げ荷重を付与することで帯状板ガラス1をスクライブ線2に沿って割断するための割断手段13と、後述する搬送方向切替え機構(コンベア15)により上方に向けて搬送される帯状板ガラス1の先端部を保持し、かつ保持した状態で切替え後の搬送方向と同方向に移動可能な保持手段14とを具備する。また、割断手段13は、帯状板ガラス1の搬送方向を下方から上方へと切替えることで帯状板ガラス1に所定の曲率を有する曲率部3を設ける搬送方向切替え機構としてのコンベア15と、曲率部3に押し曲げ荷重を付与する押し曲げ荷重付与機構16とを有する。
【0026】
スクライブ装置12は、成形された帯状板ガラス1と搬送方向及び搬送速度を同じくして移動可能に構成される。この実施形態では、所定の成形装置11によって、いわゆるオーバーフローダウンドロー法により、溶融ガラスから帯状板ガラス1が成形され、冷却を伴って鉛直下方に引き出される。そのため、スクライブ装置12は鉛直方向に沿って昇降可能に構成され、これにより鉛直下方に引き出された帯状板ガラス1の搬送方向に同期して鉛直下方に移動可能となっている。
【0027】
ここで、スクライブ装置12は、帯状板ガラス1の表面に対してスクライブ線2を刻設するためのホイールカッタ17と、ホイールカッタ17を相対移動可能に保持するカッタ保持部18と、帯状板ガラス1を挟んでホイールカッタ17及びカッタ保持部18と反対の側に配置され、帯状板ガラス1の表面を支持する定盤などの支持部材19とで構成される。ホイールカッタ17は、スクライブ装置12(カッタ保持部18)の移動方向に対して直交する向き、すなわち帯状板ガラス1の幅方向に沿って移動できるように構成されている。これらホイールカッタ17と支持部材19とは共に帯状板ガラス1に対して近接、離反可能に構成されている。この実施形態では、ホイールカッタ17は、図2に示すように、カッタ保持部18に対して2個設けられており、各々のホイールカッタ17の帯状板ガラス1側の周縁部が描く軌跡が同一直線上となるように配置される。
【0028】
搬送方向切替え機構としてのコンベア15は、帯状板ガラス1の搬送方向を下方から上方へと切替える向きに沿って配置される搬送面20を有するもので、例えば図2に示すように、帯状板ガラス1の幅方向両端部1aをそれぞれ支持して転動する複数の受けローラ21を所定形状に配置してなる。そのため、この実施形態では、搬送面20は、複数の受けローラ21の外周面で構成される。また、所定の受けローラ21には例えば図示しないモータ等の駆動源が連結されており、この駆動源からの駆動力を受けて、受けローラ21が所定方向(図1でいえば反時計回り)に回転し、これにより受けローラ21の外周面に当接する帯状板ガラス1を所定方向に搬送できるようになっている。
【0029】
搬送面20は、例えば図1及び図2に示すように、半円筒面形状をなすよう各受けローラ21を所定位置に配置してなる。このように搬送面20を部分円筒面を含む形状とする場合、搬送面20の曲率(曲率半径)は、搬送中の帯状板ガラス1の割れ防止の万全を図るために、半円筒面形状に帯状板ガラス1を湾曲させながら搬送した際に割れを生じない程度の大きさに設定するのがよく、例えば幅方向寸法が1000〜3000mm、幅方向中央部の厚み寸法が50〜500μm(好ましくは50〜300μm)の帯状板ガラス1の場合、曲率半径を500〜2000mm、好ましくは800〜1600mmの範囲に設定するのがよい。また、搬送面20を構成する受けローラ21の外周面は、帯状板ガラス1の幅方向両端部1aにのみ当接しこれを支持するように構成されており、最終的に製品部分となる幅方向中央部1bには接触しないようにその幅方向寸法が設定されている。なお、搬送面20の曲率(曲率半径)が、帯状板ガラス1の厚み寸法等に応じて調整可能なようにコンベア15を構成するようにしてもよい。
【0030】
上記構成のコンベア15は、帯状板ガラス1の成形速度と同じ速度もしくは僅かに大きい速度で回転駆動できるようになっている。これにより、帯状板ガラス1をたわませることなくコンベア15の円周方向一端側(図1でいえば右側)から搬送面20上に導入でき、かつ円周方向他端側(図1でいえば左側)で搬送面20から排出することが可能となる。なお、帯状板ガラス1の搬送面20上への導入方向が鉛直方向に対して傾斜していても特にその後の作業に支障はないが、スクライブ装置12の下降動作及びホイールカッタ17の幅方向移動の制御を容易化することを考慮した場合、帯状板ガラス1の導入方向は鉛直下方が好ましい。
【0031】
押し曲げ荷重付与機構16は、コンベア15を構成する複数の受けローラ21の上方に配設され、帯状板ガラス1に設けた曲率部3に押し曲げ荷重を付与する押し曲げ荷重付与部材22と、押し曲げ荷重付与部材22を昇降させる昇降手段23とで構成される。押し曲げ荷重付与部材22は、図2に示すように、略楔状に先端を縮径させた形状をなすもので、帯状板ガラス1を幅方向全域にわたって押圧し、押し曲げ荷重を付与できるように構成される。
【0032】
保持手段14は、この実施形態では、帯状板ガラス1の先端部を保持してコンベア15による帯状板ガラス1の搬送速度と同じ速度で上昇可能な第1の保持手段24と、第1の保持手段24との間で帯状板ガラス1を受渡し可能な第2の保持手段25とで構成される。これら第1の保持手段24及び第2の保持手段25は共にコンベア15の上方に位置し、かつコンベア15の搬送面20と、帯状板ガラス1のうちコンベア15により折り返される前の下方に向けて搬送される部分と、折り返された後の上方に向けて搬送される部分とで囲まれた領域(空間)内に配設される。
【0033】
ここで、第1の保持手段24は鉛直方向に沿って昇降可能に構成されると共に、複数の吸着パッド26を有し、これら複数の吸着パッド26が帯状板ガラス1の表面に吸着することで、帯状板ガラス1を保持可能に構成される。また、第1の保持手段24は、帯状板ガラス1を保持した状態で、帯状板ガラス1と共に上昇可能に構成される。第2の保持手段25は、第1の保持手段24の上方に配設されるもので、第1の保持手段24と同様に鉛直方向に沿って昇降可能に構成されると共に複数の吸着パッド27を有している。そして、この第2の保持手段25は、複数の吸着パッド27で帯状板ガラス1を吸着保持した状態で、帯状板ガラス1と共に上昇可能に構成されている。
【0034】
また、第1の保持手段24は、コンベア15に設けた搬送面20の終端から鉛直上方に向けて排出される帯状板ガラス1の先端部を保持可能な鉛直方向位置まで下降できると共に、保持した状態の帯状板ガラス1を第2の保持手段25に受渡し可能な位置まで上昇できるようになっている。同様に、第2の保持手段25は、第1の保持手段24に保持された状態の帯状板ガラス1を第1の保持手段24との間で受渡し可能な位置まで下降できるようになっている。これにより、コンベア15に設けた搬送面20から排出された帯状板ガラス1を第1の保持手段24及び第2の保持手段25により鉛直上方に向けて引き上げられるようになっている。また、この実施形態では、割断前の帯状板ガラス1を第1の保持手段24と第2の保持手段25との間で受渡し可能なように、双方の保持手段24,25の昇降可能位置が設定されている。
【0035】
また、この実施形態では、図1に示すように、第1の保持手段24及び第2の保持手段25の上方に、割断により帯状板ガラス1の本体から分離された板ガラス4(図8を参照)を次の工程に移載するための移載手段28が配設される。この移載手段28は水平方向に移動可能に構成されるもので、割断後の板ガラス4を把持可能な把持機構29を有する。そのため、移載手段28は、第2の保持手段25と一体に上方に搬送された割断後の板ガラス4の上端を把持機構29で把持して、把持した板ガラス4と共に所定方向に向けて移動できるようになっている。
【0036】
以下、上記構成の割断装置10を用いた帯状板ガラス1の割断方法について説明する。
【0037】
まず、図1及び図2に示すように、割断装置10の上方に配置された成形装置11により成形された帯状板ガラス1が、図示しない牽引ローラにより下方に送り出されることで、冷却されつつ鉛直下方に向けて搬送される。この際、成形装置11の下方に配置されるスクライブ装置12を帯状板ガラス1と同期して下降させつつ、スクライブ装置12のカッタ保持部18及び支持部材19を搬送中の帯状板ガラス1に近接させ、カッタ保持部18に保持されたホイールカッタ17を帯状板ガラス1の幅方向に沿って移動させることで、帯状板ガラス1の表面(ここでは、後述する曲率部3の外側面となる側の面)にスクライブ線2を刻設する。この実施形態では、図3に示すように、帯状板ガラス1の先端部が成形装置11及びスクライブ装置12の下方に位置するコンベア15の搬送面20上に導入され、搬送面20の円周方向所定位置(例えば最下点となる位置)に到達した時点で、言い換えると所定の切断長さに到達した時点でスクライブ線2を刻設する。また、この実施形態では、スクライブ装置12は、2個のホイールカッタ17を具備しているので(図2を参照)、例えば図4に示すように、帯状板ガラス1の幅方向外側から内側に各ホイールカッタ17を移動させることで、帯状板ガラス1の幅方向両端部1a及び幅方向両端部1aと連続する幅方向中央部1bの一部にスクライブ線2が刻設される。もちろん、各ホイールカッタ17及びカッタ保持部18の動作を制御することで、幅方向全域にわたってスクライブ線2を刻設するようにしてもよい。
【0038】
一方、下方に向けて搬送された帯状板ガラス1を、上述の如くコンベア15に設けた搬送面20に円周方向一端側から導入することで、その搬送方向を下方から上方へと切替える。すなわち、このコンベア15に設けられた搬送面20は半円筒面形状を成している。よって、帯状板ガラス1を搬送面20の円周方向一端側から導入して搬送面20上を搬送させることで、図5に示すように、帯状板ガラス1が鉛直下方から鉛直上方へと折り返され、その搬送方向が鉛直上方へと切替えられる。また、搬送面20上を搬送される帯状板ガラス1には、搬送面20に倣った形状の、すなわち略半円筒面形状の曲率部3が形成される。
【0039】
このようにして帯状板ガラス1に曲率部3を形成した帯状板ガラス1は、引き続きコンベア15により搬送されることで、搬送面20の終端(図5でいえば円周方向左端)に到達し、搬送面20から鉛直上方に向けて排出される。この際、図5に示すように、鉛直上方に向けて排出される帯状板ガラス1の先端部表面を第1の保持手段24に設けた複数の吸着パッド26で吸着し、帯状板ガラス1の先端部を保持する。然る後、この帯状板ガラス1を保持した状態で第1の保持手段24を上昇させて、帯状板ガラス1を鉛直上方に移動させると共に、上方に移動した帯状板ガラス1の第1の保持手段24による保持部よりもさらに先端側の部分を第2の保持手段25に設けた複数の吸着パッド27で吸着する。そして、図6に示すように、第2の保持手段25により帯状板ガラス1が保持されたら第1の保持手段24による吸着保持状態を解除して、帯状板ガラス1を第2の保持手段25のみで保持する。これにより、第1の保持手段24と第2の保持手段25との間で帯状板ガラス1の受渡しが行われ、第2の保持手段25を上昇させることで帯状板ガラス1がさらに上方へと運ばれる。なお、この実施形態では、第1の保持手段24は、第2の保持手段25に帯状板ガラス1を受け渡した後、直ちに下方に移動し、次に割断される予定の帯状板ガラス1を保持するために所定の位置(図3に示す位置)で待機する。
【0040】
上述のようにして保持手段14(第1の保持手段24又は第2の保持手段25)により搬送面20から排出された帯状板ガラス1を鉛直上方に移動させ、帯状板ガラス1に刻設したスクライブ線2が搬送面20上に形成される曲率部3の所定位置に到達したら、図7に示すように、コンベア15(搬送面20)の上方に配設された押し曲げ荷重付与部材22を昇降手段23により下降させて、帯状板ガラス1の曲率部3に内側面の側から押し曲げ荷重を付与する。これにより押し曲げ荷重付与部材22をスクライブ線2が刻設された箇所の真裏から曲率部3に押し付けて、スクライブ線2又はこの近傍に所定の曲げ応力を発生させ、当該スクライブ線2に沿って帯状板ガラス1を割断する。また、この際、帯状板ガラス1の先端部は、第2の保持手段25で保持されているため、割断後の板ガラス4は第2の保持手段25により吊下げ保持された状態となる。よって、板ガラス4が割断直後に下方に滑り落ちることもない。
【0041】
上述のようにして帯状板ガラス1を所定長さに割断により切断した後、図8に示すように、割断により帯状板ガラス1の本体から分離された板ガラス4を第2の保持手段25でさらに上方に搬送する。そして、第2の保持手段25の上方に配置した移載手段28に設けた把持機構29で板ガラス4の先端を把持し、第2の保持手段25による吸着状態を解除することで、第2の保持手段25と移載手段28との間での板ガラス4の受渡しが行われる。移載手段28への受渡しが行われた板ガラス4は移載手段28により次工程へと搬送され、例えば幅方向両端部1aの切断、必要に応じて割断側端部の再切断を行った後、端面の研磨、洗浄を経ることで製品としてのガラス基板が完成する。
【0042】
このように、本発明では、割断作業に際して、搬送方向切替え機構としてのコンベア15により帯状板ガラス1の搬送方向を下方から上方に切替えることで、帯状板ガラス1に所定の曲率を有する曲率部3を設けるようにしたので、搬送面20上を搬送される帯状板ガラス1に設けられた曲率部3に一定の引張り力を付与することができる。よって、スクライブ工程において、帯状板ガラス1の表裏面のうち曲率部3の外側面となる側の面にスクライブ線2を刻設しておき、上述のように曲率部3を設けた後、引き続き帯状板ガラス1を搬送して、先にスクライブ装置12により刻設されたスクライブ線2が曲率部3に到達した際に、押し曲げ荷重付与機構16で曲率部3に押し曲げ荷重を付与することで、一定の引張り力が付与された状態のスクライブ線2刻設領域を、当該領域がスクライブ線2に沿って開口する向きに押し曲げることができる。従って、帯状板ガラス1の厚みが小さい場合においても、割断予定箇所となるスクライブ線2刻設領域に十分な大きさの曲げ応力を発生させて、帯状板ガラス1を確実に割断することができる。また、搬送方向を切替えることで所定の曲率を有する部分(曲率部3)を設けるようにしたので、コンベア15に設けた搬送面20に支持された状態で曲率部3が形成される。これにより割断予定箇所となる曲率部3の形状及び位置が安定し、引き続き帯状板ガラス1が搬送されてスクライブ線2が曲率部3に到達した際も曲率部3の形状は維持される。従って、帯状板ガラス1をスクライブ線2に沿って正確に割断することができ、また高精度の割断面を安定して得ることができる。
【0043】
特に、ダウンドロー法により帯状板ガラス1を成形する場合、薄肉になるほど成形速度が大きくなるために、下方に向けて搬送される帯状板ガラス1に対してスクライブ線2を刻設しようとした際、搬送速度(成形速度)に比べてホイールカッタ17の移動速度が小さくなり、所要の時間内に帯状板ガラス1の幅方向全域にわたってスクライブ線2を刻設することが難しくなる。また、過度に高速で移動した場合には、正確にスクライブ線2を刻設することが難しくなる。この点、本発明では、帯状板ガラス1に曲率部3を設け、この曲率部3に押し曲げ荷重を付与して割断するようにしたので、本実施形態のように、帯状板ガラス1の幅方向両端部1aに優先してスクライブ線2を刻設するだけで、従来に比べて板厚が小さく、かつ幅方向両端部1aが残った状態の帯状板ガラス1であっても、確実に割断することができる。特に、この図示例のように、2個のホイールカッタ17を使用してスクライブ線2を刻設することで、刻設作業に要する時間を実質半分にすることができる。
【0044】
また、この実施形態では、曲率部付与工程において、帯状板ガラス1を上向きに折り返すことで、言い換えると、搬送方向に直交する向き(例えば図4の向き)から帯状板ガラス1を見た場合、搬送方向を変化させる前の部分と変化させた後の部分とが重なって見える程度に、搬送方向を変えることで帯状板ガラス1に曲率部3を設けるようにした。これにより、形成される曲率部の大きさを、割れが生じることなく帯状板ガラス1を円滑に搬送できる程度にまで大きく取りつつも、曲率部3には割断のために必要な大きさの引張り力を幅方向の全域にわたって万遍なく付与することができる。これにより、曲率部3の幅方向全域にわたって割断に十分な大きさの曲げ応力を発生させることができ、より確実性を高めた状態で帯状板ガラス1をスクライブ線2に沿って割断することができる。
【0045】
また、この実施形態では、第2の保持手段25で鉛直上方に搬送される帯状板ガラス1を割断するようにしたので、割断により帯状板ガラス1の本体から分離された板ガラス4は割断直後も第2の保持手段25により引き続き保持され、鉛直上方に移動される。よって、割断直後に板ガラス4が、帯状板ガラス1の本体や周囲の設備と干渉する事態を避けて、板ガラス4の品質を維持することができる。また、そのまま上方に移動して、移載手段28に受渡しされることで、次工程への搬送もスムーズに行うことができる。
【0046】
また、この実施形態では、帯状板ガラス1を上向きに折り返すための機構に、帯状板ガラス1を下方から支持する半円筒形状の搬送面20を設けたコンベア15を用いるようにしたので、スクライブ装置12を帯状板ガラス1が下方に向けて搬送されている領域に配設すると共に、押し曲げ荷重付与機構16を、曲率部3が形成される領域の上方に配置することができる。これにより、割断装置10の設備スペースをコンパクトにまとめることができる。また既存の割断設備を利用することができるので、設備コストの高騰抑制にもつながる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係る割断方法又は割断装置は、当然に本発明の範囲内において任意の形態を採ることができる。
【0048】
例えば搬送方向切替え機構としてのコンベア15に関し、その搬送面20は、図9に示すように、連続する無端ベルト30の表面で構成することも可能である(ただし、途中でたるまないような工夫が必要となる)。この場合、割断された板ガラス4の割断端部が図2に示すように搬送面20を構成する複数の受けローラ21の間に落下する事態を確実に回避することができる。
【0049】
また、コンベア15は、受けローラ21以外の要素で構成することも可能である。図10はその一例を示すもので、同図に係るコンベア15は、複数のローラ31を板状の連結部材32で相互に連結してなる無端状のチェーンコンベアであって、連結部材32に設けたアタッチメント(図示は省略)に板状受け部材33を装着してなるものである。この場合、コンベア15の搬送面20は、複数の板状受け部材33の上端面で構成される。各板状受け部材33の短軸方向の一部は隣接する板状受け部材33と短軸方向(搬送面20の搬送方向)の一部で重複している。そのため、板状受け部材33の上端面で構成される搬送面20は、搬送方向で実質的に連続した形態をなす。また、各板状受け部材33の幅方向寸法は、帯状板ガラス1の幅方向両端部1aを支持できるよう、帯状板ガラス1の幅方向寸法よりも大きく設定されている。また、帯状板ガラス1の幅方向中央部1bと接触しないように、板状受け部材33の幅方向中央部を幅方向両端部に比べて凹ませ他形状としている。この構成に係るコンベア15であれば、図9に示すコンベア15と同様に、搬送面20に板ガラス4がはまり込むレベルの隙間が生じないので、割断直後の板ガラス4が板状受け部材33の間にはまり込み、あるいは引っ掛かる事態を回避して、当該板ガラス4を円滑に上方に向けて搬送することができる。
【0050】
また、搬送面20の形状として、上記実施形態では半円筒面形状を成す場合を例示したが、帯状板ガラス1の搬送方向を下方から上方に変え得る限りにおいて任意の形状が採用可能である。例えば搬送面20への帯状板ガラス1の導入角度あるいは搬送面20からの帯状板ガラス1の排出角度が水平方向に対して鋭角(例えば45°以上90°未満)となるよう、もしくは上記導入角度と搬送角度が共に鋭角となるよう、搬送面20を部分円筒面形状とすることも可能である。もちろん、上述の記載は、搬送面20への導入角度や排出角度が水平方向に対して鈍角となるよう、搬送面20を形成する場合を除外するものではない。
【0051】
また、押し曲げ荷重付与機構16による曲率部3への押し曲げ荷重の付与に関し、上記実施形態では、コンベア15による搬送速度と同速度で上昇する第2の保持手段25で帯状板ガラス1を保持した後、割断を行うようにしているが、この際、第2の保持手段25の上昇速度をコンベア15による搬送速度よりも少し大きくすることで、割断時、帯状板ガラス1の一部をコンベア15に設けた搬送面20から少し浮かせた状態としてもよい。帯状板ガラス1を少し浮かせた状態で、曲率部3のスクライブ線2刻設箇所に押し曲げ荷重付与部材22を押し付けることにより(図11を参照)、搬送面20に拘束されること無く曲率部3のうち押し曲げ荷重を付与した箇所を変形させることができる。これにより、必要最小限の押し曲げ荷重で帯状板ガラス1をスクライブ線2に沿って正確に割断することができる。この手法は、特に図10に示すように、板状受け部材33など比較的剛性の高い部材で搬送面20を連続的に構成する場合に有効である。
【0052】
また、上記実施形態ではホイールカッタ17の移動速度と帯状板ガラス1の搬送速度との大小差を考慮してホイールカッタ17を2個用いた場合を例示したが、上記速度差が特に問題にならない限りにおいて、ホイールカッタ17を1個設けたスクライブ装置(図示は省略)を用いてスクライブ線2を刻設するようにしてもよい。また、スクライブ線2の刻設領域について、必ずしも帯状板ガラス1の幅方向両端部1aが含まれている必要はなく、帯状板ガラス1の幅方向中央部1bと幅方向端部1aとの間の厚みの比率に応じて、あるいは帯状板ガラス1の成形速度、割断サイクル等の大きさを考慮して、その刻設領域を設定すればよい。従って、帯状板ガラス1の幅方向何れかの一端部1aのみにスクライブ線2を刻設してもよく、あるいは幅方向中央部1bのみにスクライブ線2を刻設するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 帯状板ガラス
1a 幅方向端部(幅方向両端部)
1b 幅方向中央部
2 スクライブ線
3 曲率部
4 板ガラス
10 割断装置
11 成形装置
12 スクライブ装置
13 割断手段
14 保持手段
15 コンベア
16 押し曲げ荷重付与機構
17 ホイールカッタ
18 カッタ保持部
19 支持部材
20 搬送面
21 ローラ
22 押し曲げ荷重付与部材
23 昇降手段
24 第1の保持手段
25 第2の保持手段
26 吸着パッド(第1の保持手段)
27 吸着パッド(第2の保持手段)
28 移載手段
29 把持機構
30 無端ベルト
31 ローラ
32 連結部材
33 板状受け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に向けて搬送される帯状の板ガラスに対して搬送方向に直交する向きのスクライブ線を刻設するスクライブ工程と、前記スクライブ線を刻設した帯状板ガラスに押し曲げ荷重を付与することで前記帯状板ガラスを前記スクライブ線に沿って割断する割断工程とを具備した帯状板ガラスの割断方法において、
前記帯状板ガラスの搬送方向を下方から上方に変えることで、前記帯状板ガラスに所定の曲率を有する曲率部を設ける曲率部付与工程をさらに具備し、
前記スクライブ工程において、前記帯状板ガラスの表裏面のうち前記曲率部の外側面となる側の面に前記スクライブ線を刻設し、
前記割断工程において、前記スクライブ線が前記曲率部に到達した際に前記曲率部の内側面に押し曲げ荷重を付与することを特徴とする帯状板ガラスの割断方法。
【請求項2】
前記曲率部付与工程において、前記帯状板ガラスを鉛直上方に向けて折り返す請求項1に記載の帯状板ガラスの割断方法。
【請求項3】
下方に向けて搬送される帯状の板ガラスに対して搬送方向に直交する向きのスクライブ線を刻設するためのスクライブ手段と、前記スクライブ線を刻設した帯状板ガラスに押し曲げ荷重を付与することで前記帯状板ガラスを前記スクライブ線に沿って割断するための割断手段とを具備した帯状板ガラスの割断装置において、
前記割断手段は、前記帯状板ガラスの搬送方向を下方から上方へと切替えることで前記帯状板ガラスに所定の曲率を有する曲率部を設ける搬送方向切替え機構と、前記曲率部の内側面に押し曲げ荷重を付与する押し曲げ荷重付与機構とを有し、かつスクライブ手段は、前記帯状板ガラスの表裏面のうち前記曲率部の外側面となる側の面に前記スクライブ線を刻設可能に配設されることを特徴とする帯状板ガラスの割断装置。
【請求項4】
前記搬送方向切替え機構は、半円筒面形状の搬送面を有するコンベアで構成されている請求項3に記載の帯状板ガラスの割断装置。
【請求項5】
前記搬送方向切替え機構により上方に向けて搬送される前記帯状板ガラスの先端部を保持し、かつ保持した状態で前記切替え後の搬送方向と同方向に移動可能な保持手段をさらに具備する請求項3又は4に記載の帯状板ガラスの割断装置。
【請求項6】
前記保持手段は、前記帯状板ガラスを保持した状態で、前記帯状板ガラスの搬送速度以上の速度で移動可能に構成され、これにより前記帯状板ガラスに設けた曲率部を前記搬送方向切替え機構の搬送面から浮かせた状態で前記押し曲げ荷重を付与可能としている請求項5に記載の帯状板ガラスの割断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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