説明

帯状部材の送出装置

【課題】帯状部材の巻き出し状況に影響されることのない帯状部材の送出装置を提供すること。
【解決手段】リール12に巻かれた長尺な帯状部材65を駆動ローラ13及び複数のガイド部材17〜20を介して装置本体11の外側へ導くものであり、駆動ローラ13の回転によって一定長さの帯状部材65を巻き出して装置本体11内に保持しておき、装置本体11外側からの引張りによって帯状部材65が複数のガイド部材17〜20を介して送り出されるようにしたものであって、駆動ローラ13とガイド部材17との間に帯状部材65をU字状に垂らして保持するストック部30を有し、そのストック部30における帯状部材65の状態を検出する検出手段35,36からの情報に基づいて駆動ローラ13を回転制御するようにした帯状部材の送出装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な帯状部材を何重にも巻いた巻物から一定長さずつ帯状部材を、二次側の引き出しに対して送り出し可能に保持するための送出装置に関し、特に、常に一定長さの帯状部材を保持することができるようにした帯状部材の送出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば農業分野では、種籾に潜む病原菌の殺菌除菌に、ネット袋へ種籾を入れて温湯に付ける温湯消毒が行われる。その種籾入りのネット袋は、下記非特許文献1に開示されているような種子梱包装置によって作られる。種子梱包装置では、リールに巻かれた長尺な筒状のネット部材を送り出して所定長さで切断し、開口端部を熱溶着によって閉じる間に種籾が所定量だけ入れられる。開口端部は編み目同士の溶着だけでは開いてしまうため、シール部材などを使用した溶着が行われる。
【0003】
そのシール工程では、種籾を入れたネット袋の送りに合わせてシール部材が引っ掛けられるようにして引き出され、シール箇所であるネット袋の開口端部の位置で熱溶着される。そのシール工程では、図4に示すシール部材(帯状部材)の送出装置100が使用される。送出装置100は、シール部材101が巻かれたリール102から、シール工程で引き出される長さ分のシール部材101を巻き出して装置内に弛ませて保持しておくものである。
【0004】
リール102からは、駆動ローラ103が一定時間回転し、それに対応した長さのシール部材101が巻き出される。巻き出されたシール部材101は押し出されるようにして下方に進みガイドローラ104を経て、装置本体120下の空間121に弛んだ状態のシール部材(二点鎖線)101aを作り出す。そして、前述したシール工程の実行により、装置外側の二次側シール箇所でシール部材101が引っ張られると、弛んだ分のシール部材101aがローラ105を経て、姿勢を縦向きにして送出し口106から引き出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“種子センター 環境・営農・製造プラント 日本車両”、[online]、[平成21年10月23日検索]、インターネット<URL:http://www.n-sharyo.co.jp/business/plant/seedcenter-flow.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした従来の送出装置100では、シール部材101aの弛ませ量を駆動ローラ103の回転時間で一定長さになるように管理していた。そのため、巻き出されるシール部材101が駆動ローラ103で滑ってしまうと、弛ませる量が一定長さに達しないことになる。そうした場合、二次側シール工程でシール部材101が足らなくなるため、送出装置100では、揺動可能な補助アーム111が外れて図面右側に振れ、「く」の字の経路を直線にした分のシール部材101が引き出される。そして、この振れがセンサ112によって検出されその信号がコントローラに送信されて、滑り分を考慮した駆動ローラ103の回転時間が設定し直される。しかし、一方で滑りが生じるか否かは不規則なため、回転時間が長い状態では毎回余分な長さが巻き出され、弛ませたシール部材101aが絡まってしまう問題を引き起こすことになる。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、帯状部材の巻き出し状況に影響されることのない帯状部材の送出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の帯状部材の送出装置は、リールに巻かれた長尺な帯状部材を駆動ローラ及び複数のガイド部材を介して装置本体の外側へ導くものであり、前記駆動ローラの回転によって一定長さの帯状部材を巻き出して装置本体内に保持しておき、装置本体外側からの引張りによって当該帯状部材が複数のガイド部材を介して送り出されるようにしたものであって、前記駆動ローラと前記ガイド部材との間に前記帯状部材をU字状に垂らして保持するストック部を有し、そのストック部における帯状部材の状態を検出する検出手段からの情報に基づいて前記駆動ローラを回転制御するようにしたものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の帯状部材の送出装置は、前記ストック部に位置するU字状に垂れた帯状部材の当該U字状の底部に錘を配置し、そのU字状部分の帯状部材を真っ直ぐに垂れ下がった状態になるようにしたものであることが好ましい。
また、本発明の帯状部材の送出装置は、前記錘が前記ストック部に形成された鉛直方向の長孔ガイドに沿って移動可能なスライドローラであることが好ましい。
また、本発明の帯状部材の送出装置は、前記検出手段がU字状に垂れた前記帯状部材の当該U字状下端部分の下限値を検出するものであることが好ましい。
また、本発明の帯状部材の送出装置は、前記検出手段が、U字状に垂れた前記帯状部材の当該U字状下端部分の下限値を検出する第1検出手段と、その第1検出手段の上方に位置してU字状に垂れた状態の前記帯状部材の当該U字状下端部分の通過を検出する第2検出手段であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ストック部における帯状部材の状態を確認して駆動ローラの回転を制御するようにしたため、帯状部材の巻き出し時に生じ得る滑りなどに影響を受けないものとすることができ、滑りが生じたとしても所定長さ垂れ下がったストック部における帯状部材の保持状態を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る種子梱包装置の概略構成図である。
【図2】実施形態の帯状部材の送出装置を示した構造図である。
【図3】実施形態の帯状部材の送出装置についてストック部を示した図2のB−B矢視断面図である。
【図4】従来の帯状部材の送出装置を示した構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る帯状部材の送出装置について、その一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態では、従来例で示したと同様に、種籾等の種子を中に入れたネット袋を製造する種子梱包装置に使用される送出装置について説明する。図1は、種子梱包装置の概略構成図であり、前記非特許文献1に開示されたものである。図中矢印は、ネット部材51と、それによって形成されたネット袋61の移動方向を示している。
【0013】
種子梱包装置50は、円筒状のネット部材51が巻かれたリールから巻き出され、第1接合部52ではカッター53によって所定長さ分が切断されると同時に、切断された後方側端部が熱溶着によってシールされる。このとき、第1接合部52では、上方のシール部材55と下方のネームシール56とが巻き出され、ネット部材51の上下から重ねられ、シール部材とネームシール56で挟んだ状態で前記後方側端部が熱溶着される。
【0014】
こうして進行方向後端を閉じた状態のネット袋61は、次にスライド機構57によって両端が摘まれ、種子投入部58の下に開口部を上にして開いた状態で保持される。種子投入部58では、自動計量部59で計量された所定量の種子(例えば4kgの種籾)がネット袋61に投入される。その後、第2接合部62に送られ、種子投入が行われた開口端部がシール部材65に挟まれて熱溶着され、これにより種子を入れて閉じた状態のネット袋61が完成する。
【0015】
第2接合部62では、左右両側からシール部材65が送り出されており、中央で互いの先端が溶着している。そこにネット袋61が矢印Aに示す方向で進入するため、その中央部分で引っ掛けられて左右両側のシール部材65が引っ張られる。このとき、図1ではシール部材のロールから直接巻き出されているように表現されているが、実際に引き出される長さ分が予め弛ませて保持されている。そして、その保持された分のシール部材65がネット袋61の矢印A方向への移動に伴って引っ張り出される。
【0016】
ネット袋61は、上方開口端部でヒータ67によって両側から挟み込まれ、熱がかけられて溶着する。このとき、左右からのシール部材65を、溶着に使用する先端部分を熱をかけて切断するため、前述したように互いの先端を溶着させた状態で次のネット袋61を待機することになる。このとき、前述した図4に示す従来の送出装置は、次に引き出される長さ分だけシール部材65を予め弛ませておく構成がとられていた。
【0017】
本実施形態の送出装置も、こうした第2接合部62に設けられたものであり、帯状部材であるシール部材65を、そのシール部材65を巻いたリールから直接巻き出すことなく、装置外の二次側で行われる引張りに応じて必要な長さのシール部材65が送り出せるようにしたものである。ここで、図2は、帯状部材の送出装置を示した構造図である。
【0018】
この送出装置10は、装置本体11内に構成され、中央に帯状部材であるシール部材65がリール12に巻かれ、このリール12からシール部材65を巻き出すための駆動ローラ13がモータ14(図3参照)によって回転可能に設けられている。リール12には、空回り防止のための押え部材15が当てられている。押え部材15は、軸支された揺動可能なアーム15aの一端にスプリング15bが連結され、他端に取り付けられた滑りブロック15cがリール12に押し当てられている。
【0019】
また、駆動ローラ13には、シール部材65が滑らないように駆動ローラ13に押え部材16が当てられている。押え部材16は、軸支された揺動可能なアーム16aの一端にスプリング16bが連結され、他端に取り付けられたピンチローラ16cがシール部材65を挟んで押し当てられている。駆動ローラ13は、図示するようにシール部材65を斜め上方に巻き出すように位置し、そこからシール部材65が装置本体11の下側を通って送出し口25から出るまでの間に、第1〜第3ガイドローラ17,18,19と、ガイドプレート20が所定箇所に設けられ、シール部材65の送り出しルートが構成されている。なお、第1〜第3ガイドローラ17,18,19には、いずれにもシール部材65が外れないように押えローラ21,22,23が設けられている。
【0020】
本実施形態では、駆動ローラ13の直後にあって、その駆動ローラ13の直ぐ下に位置する第1ガイドローラ17との間にシール部材65を垂らして保持するストック部30が構成されている。このストック部30は、送出し口25から出た二次側でシール部材65が引っ張られた場合に、必要な長さ分が駆動ローラ13を回転させずに送り出せるようにしたものである。ここで、図3は、そのストック部30を示した図2のB−B矢視断面図である。
【0021】
ストック部30には、装置本体11に板材で形成されたガイドスタンド31が固定されている。ガイドスタンド31は、断面コの字形部分が形成され、その対面部分に一対の長孔ガイド32が形成されている。長孔ガイド32は、鉛直方向に沿って形成されたものであり、そこにスライドローラ33が嵌め込まれている。スライドローラ33は、一対の長孔ガイド32を貫通したピン部33aと、そのピン部33aに対して回転可能なロール部33bとから構成されている。
【0022】
このスライドローラ33は、図2に示すようにU字状に垂れた状態のシール部材65の底部に位置し、その重みによってシール部材65が常に張りのある状態で垂れ下がるように、錘として機能している。そして、ストック部30には、ガイドスタンド31にスライドローラ33の検出を行う第1センサ35と第2センサ36とが上下に取り付けられている。この第1及び第2センサ35,36は、スライドローラ33を検出することによってストック部30におけるシール部材65の保持状態を検出するものであり、本実施形態ではいずれも近接スイッチが使用されている。
【0023】
すなわち、下方に位置する第1センサ35は、ストック部30においてU字状に垂れた状態のシール部材65下端の下限値を検出しており、装置外の二次側へ引き出される長さ分のシール部材65がストック部30に用意されているか否かを検出するものである。また、上方に位置する第2センサ36は、U字状に垂れた状態のシール部材65下端の移動を検出しており、二次側での引張りによってシール部材65が引き出されているか否かを検出するものである。送出装置10では、こうした第1及び第2センサ35,36からの検出信号によって駆動ローラ13の回転制御が行われるよう構成されている。なお、第1及び第2センサ35,36は、ガイドスタンド31に形成された長孔の取付孔37を通して取り付けられ、その検出位置が調節できるようになっている。
【0024】
こうした構成の送出装置10は、前述した図1に示す第2接合部62でネット袋61が矢印Aに示す方向に進入してシール部材65を引っ掛けて移動する時点で、シール部材65は図2に示すような状態になっている。すなわち、ストック部30においてスライドローラ33が長孔ガイド32の下端にまで下がり、シール部材65が最も長く垂れ下がった状態になっている。そこで、ネット袋61に引っ掛けられてシール部材65が引き出されると、その引き出し量に応じた長さがストック部30から持って行かれる。
【0025】
引っ張られたシール部材65は、第1〜第3ガイドローラ17,18,19に沿って送られ、第3ガイドローラ19の後、斜めのガイドプレート20により姿勢が傾けられ、送出し口25からは立った状態で放出される。このとき、ストック部30では、U字状のシール部材65が短くなるのに従い、スライドローラ33が二点鎖線で示すように、長孔ガイド32に沿って上昇する。そして、スライドローラ33が第2センサ36によって検出されることで、シール部材65が引き出されていることが確認され、引き出しが完了する所定時間後に駆動ローラ13に回転が与えられる。
【0026】
駆動ローラ13が回転することで、リール12からシール部材65が巻き出され、引き上げられたストック部30の状態が元に戻される。つまり、U字形に垂れ下がったシール部材65は、その下端が下がり、スライドローラ33が第1センサ35によって検出するまで駆動ローラ13の回転が続けられる。そして、第1センサ35がスライドローラ33を検出した信号によって駆動ローラ33の回転が停止し、図2に示す状態で次の引き出しに備えられることになる。
【0027】
このように、本実施形態の送出装置10では、ストック部30においてシール部材65が所定長さ垂れ下がった状態を確認して駆動ローラ13の回転を制御するようにしたため、シール部材65の巻き出し時に生じ得る滑りなどの影響を受けないものとすることができた。また、そうした効果を、第1センサ35による検出により駆動ローラ13を制御する簡易な構成によって実現することができた。
【0028】
また、本実施形態では、スライドローラ33を錘として使用することで、シール部材65のように軽いものであっても真っ直ぐに垂れ下がった状態を維持し、安定してシール部材65の状態を検出することができる。そして、シール部材65が装置本体11内で常に張った状態であるため絡まってしまうこともない。
更に、ストック部30では、第2センサ36によってシール部材65の引き出し状況を検出しているので、所定時間経ってもスライドローラ33が検出できない場合には、第2接合部62側でシール部材65が切れていることなどの不具合が確認できる。そしてこのような場合には、警報装置を動作させるなどして報せるようにすることが考えられる。
【0029】
以上、本発明に係る帯状部材の送出装置について実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、種子梱包装置50の送出装置10について説明したため、シール部材65には錘としてスライドローラ33が必要であったが、帯状部材にある程度の重さがあり、ストック部30において真っ直ぐ垂れ下がった状態を安定して得られるものであれば錘は必須の構成ではない。
前記実施形態では、シール部材65の状態検出を行うため第1及び第2センサ35,36に非接触センサの近接スイッチを使用したが、検出手段には、この他リミットスイッチのような接触センサなどであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 送出装置
11 装置本体
12 リール
13 駆動ローラ
17,18,19 ガイドローラ
30 ストック部
31 ガイドスタンド
32 長孔ガイド
33 スライドローラ
35,36 センサ
50 種子梱包装置
61 ネット袋
62 第2接合部
65 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールに巻かれた長尺な帯状部材を駆動ローラ及び複数のガイド部材を介して装置本体の外側へ導くものであり、前記駆動ローラの回転によって一定長さの帯状部材を巻き出して装置本体内に保持しておき、装置本体外側からの引張りによって当該帯状部材が複数のガイド部材を介して送り出されるようにした帯状部材の送出装置において、
前記駆動ローラと前記ガイド部材との間に前記帯状部材をU字状に垂らして保持するストック部を有し、そのストック部における帯状部材の状態を検出する検出手段からの情報に基づいて前記駆動ローラを回転制御するようにしたものであることを特徴とする帯状部材の送出装置。
【請求項2】
請求項1に記載する帯状部材の送出装置において、
前記ストック部に位置するU字状に垂れた帯状部材の当該U字状の底部に錘を配置し、そのU字状部分の帯状部材を真っ直ぐに垂れ下がった状態になるようにしたものであることを特徴とする帯状部材の送出装置。
【請求項3】
請求項2に記載する帯状部材の送出装置において、
前記錘は、前記ストック部に形成された鉛直方向の長孔ガイドに沿って移動可能なスライドローラであることを特徴とする帯状部材の送出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する帯状部材の送出装置において、
前記検出手段は、U字状に垂れた前記帯状部材の当該U字状下端部分の下限値を検出するものであることを特徴とする帯状部材の送出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する帯状部材の送出装置において、
前記検出手段は、U字状に垂れた前記帯状部材の当該U字状下端部分の下限値を検出する第1検出手段と、その第1検出手段の上方に位置してU字状に垂れた状態の前記帯状部材の当該U字状下端部分の通過を検出する第2検出手段であることを特徴とする帯状部材の送出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−105424(P2011−105424A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260711(P2009−260711)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】