説明

帯電ローラ及びプロセスカートリッジ

【課題】安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られる帯電ローラ及び該帯電ローラを具備するプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】導電性基体Aの外周上に、弾性層Bと、該弾性層B上に、単一又は複数の層からなる被覆層Cと、を有する帯電ローラにおいて、該被覆層Cの少なくとも最表面層Eが、融点が110℃以上、170℃以下である炭化水素系ワックスを含有する帯電ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に使用される帯電ローラ及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真感光体の帯電装置として、接触帯電装置が実用化されている。接触帯電装置は、従来から用いられているコロナ帯電装置と比較して、電子写真感光体の帯電に伴うオゾンの発生を抑制でき、また帯電に必要な消費電力を低減させることができる。そして、特に帯電部材として帯電ローラを用いたローラ帯電方式は、帯電の安定性という点から好ましく用いられている。
【0003】
ローラ帯電方式は、導電性の弾性ローラを被帯電体に加圧当接させ、これに電圧を印加することによって被帯電体への帯電を行うものである。
【0004】
ところで、接触帯電装置による帯電は、帯電部材(帯電ローラ)から被帯電体への放電によって行われ、ある閾値電圧以上の電圧を帯電ローラに印加することによって被帯電体の帯電が開始される。例を示すと、厚さ25μmの感光層を有する有機感光体(OPC感光体)に対して帯電ローラを加圧当接させた場合には、絶対値で約640V以上の電圧を帯電ローラに印加すると感光体の表面電位が上昇し始める。それ以降は印加電圧に対して傾き1で線形に感光体表面電位が増加する。以後、この閾値電圧を帯電開始電圧Vthと定義する。
【0005】
つまり、電子写真に必要とされる感光体表面電位Vdを得るためには帯電ローラにはVd+Vthという画像形成自体に必要とされる以上のDC電圧の印加が必要となる。このようにしてDC電圧のみを帯電部材に印加して帯電を行う方法をDC帯電と称する。
【0006】
しかし、DC帯電においては環境変動等によって帯電部材の抵抗値が変動し易い。また、感光体の使用に伴い、感光層が徐々に削れることによって感光層の膜厚が変化するとVthが変動する。これらの理由により、感光体の電位を所望の値に制御することは容易ではなかった。
【0007】
このため、更なる帯電の均一化を図るために、所望のVdに相当するDC電圧に2×Vth以上のピーク間電圧を持つAC成分を重畳した電圧を帯電部材に印加するAC+DC帯電方式が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。これは、ACによる電位の均し効果を目的としたものであり、被帯電体の電位はAC電圧のピークの中央であるVdに収束し、環境等の外乱には影響され難い。
【0008】
帯電ローラとしては、導電性支持部材上に導電性シームレスチューブにより表面層を形成した例がある(例えば、特許文献2参照。)。更には、フッ素樹脂からなるシームレスチューブによる例が開示され(例えば、特許文献3参照。)、導電性の異なる層構成よりなる多層チューブによる例も開示されている(例えば、特許文献4参照。)。このような帯電ローラの製造方法としては、前記従来技術として、挿入により形成する方法が挙げられている。また、クロスヘッド押出機を用いた表面形成方法も提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0009】
このような、シームレスチューブにより帯電ローラを形成する方法は、基体上の弾性層として発泡体を用いても、それを更にシームレスチューブによって被覆することにより、平滑な面を形成することができ、被帯電体をより均一に帯電をすることができる。
【0010】
支持部材をシームレスチューブで被覆する具体的な方法として支持部材にシームレスチューブを外嵌させる方法がある。具体的には、シームレスチューブの内径を被覆すべき支持部材の外径よりも大とし、物理的あるいは化学的手段、例えば、熱によりチューブを収縮させ嵌合させる方法がある。また、シームレスチューブ内径を被覆すべき支持部材の外径よりも小とし、物理的あるいは化学的手段、例えば、空気圧によりチューブを押し広げ嵌合させる方法がある(例えば、特許文献6参照。)。
【0011】
しかしながら、カーボンブラック等の顔料を配合した熱可塑性樹脂を押出成型してシームレスチューブを作製する場合、顔料等の凝集物や、ゲル化物等の非溶融物が核となってフィッシュ・アイが発生することがあった。また、樹脂の粘度バランスの悪さなどに起因するウェルドラインと呼ばれる表面欠陥が発生することがあった。フィッシュ・アイや、ウエルドラインが発生すると、帯電ロールとして用いた際、黒ポチ、黒スジ等の画像不良の原因となる問題があった。
【0012】
【特許文献1】特開昭63−149669号公報
【特許文献2】米国特許4,967,231号明細書
【特許文献3】特開平 5− 2313号公報
【特許文献4】特開平 5− 96648号公報
【特許文献5】特開平 6− 58325号公報
【特許文献6】特開平10−228156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、帯電ローラ表面のフィッシュ・アイの低減、及びウェルドラインを軽減させ、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られる帯電ローラを提供することを目的とする。さらには、該帯電ローラを具備するプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題は、導電性基体の外周上に、弾性層と、該弾性層上に単一又は複数の層からなる被覆層と、を有する帯電ローラにおいて、該被覆層の少なくとも最表面層が、融点が110℃以上、170℃以下である炭化水素系ワックスを含有する層であることを特徴とする帯電ローラによって達成される。
また、前記課題は、上記本発明の帯電ローラを具備していることを特徴とするプロセスカートリッジによって達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、帯電ローラ表面のフィッシュ・アイの低減及びウェルドラインを軽減させ、安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られる帯電ローラを提供することが可能となった。さらには、該帯電ローラを具備するプロセスカートリッジを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明者等は、帯電ローラの被覆層の形成に用いるシームレスチューブについて鋭意検討を行った。この検討により、シームレスチューブを押出成型により作製する際、熱可塑性エラストマーに融点が110℃以上、170℃以下である炭化水素系ワックスを配合すると、配合したカーボンブラック等の顔料等の分散が良くなることを見出し本発明を完成するに到った。
【0017】
本発明の帯電ローラは、導電性基体の外周上に、弾性層と、該弾性層上に、単一又は複数の層からなる被覆層とを有する。被覆層が単一の層からなるものである場合には、最表面層にも該当するところから、該被覆層は、融点が110℃以上、170℃以下である炭化水素系ワックスを含有する層とする。また、被覆層が複数の層からなる場合は、少なくとも最表面層は、融点が110℃以上、170℃以下である炭化水素系ワックスを含有する層とする。
【0018】
本発明の帯電ローラの実施形態の一例を図1に示す。図1に示した実施形態の本発明の帯電ローラは、導電性基体Aの外周上に、弾性層Bと、該弾性層B上に、内層Dと外層(最表面層)Eの2層からなる被覆層Cを有する。最表面層でもある外層Eは、融点が110℃以上、170℃以下である炭化水素系ワックスを含有する層とする。また、本発明の帯電ローラは、弾性層Bの外周上に更に導電層又は抵抗層を有し、その外周上に被覆層Cを有する構成としてもよい。
【0019】
導電性基体Aとしては、円柱状や円筒状の形態を有している、通常、鉄、銅及びステンレス等の金属、カーボン分散樹脂、金属あるいは金属酸化物分散樹脂等の材料から製造されたものを使用することが好ましい。
【0020】
弾性層Bは、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、EPDMゴム、ポリウレタンゴム、エポキシゴム及びブチルゴム等のゴム又はスポンジや、スチレンブタジエン共重合体、ポリウレタン、ポリエステル樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂で形成することができる。通常、これらのゴムや樹脂には、カーボンブラック、金属及び金属酸化物粒子等の導電剤を含有させたることが好ましい。
【0021】
被覆層Cは、通常、導電性を有することが好ましい。導電性を有する被覆層(導電性被覆層と表すことがある。)Cの形成は、形成方法等特に制限されるものではない。従来安定生産が難しいとされた中抵抗領域の導電性を有する帯電ローラを安定して生産できるという観点から、シームレスチューブを作製し、このシームレスチューブを支持部材の弾性層上に被覆して形成することが好ましい。
【0022】
導電性被覆層Cを形成する材料としては、カーボンブラックを含有する熱可塑性エラストマーが好ましい。被覆層C(導電性被覆層C)を単一層とする場合には、さらに、融点が110℃以上、170℃以下の炭化水素系ワックスが配合された材料を用いる。被覆層(導電性被覆層)を複数の層からなるものとする場合には、少なくとも最表面層を形成する材料には、融点が110℃以上、170℃以下の炭化水素系ワックスを配合する。
【0023】
融点が110℃以上、170℃以下の炭化水素系ワックスが配合された材料を最表面層の形成に用いると、顔料等の凝集物や、ゲル化物等の非溶融物が核となって発生するフィッシュ・アイ等の表面欠陥の発生が低減する。また、粘度バランスが良くなり、ウェルドラインも軽減する。配合する炭化水素系ワックスの融点は、シームレスチューブの押出成型を行う際の温度よりも低い(110〜170℃)ほうが樹脂の流動性が良くなり、成型性が向上する。更にシームレスチューブを高速成型した場合においても良い形状のチューブが得られる。しかしながら、110℃を下まわる融点を有する炭化水素系ワックスを使用した場合、該ワックスが先に溶融して分散が悪くなり、フィッシュ・アイが発生する場合がある。
【0024】
上記炭化水素系ワックスは、例えば、オレフィンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒で重合した低分子量の炭化水素;石炭又は天然ガスから合成されるフィッシャートロプシュワックス;高分子量のオレフィンポリマーを熱分解して得られるオレフィンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素ワックスが好ましい。さらにプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものが、より好ましく用いられる。特にオレフィンの重合によらない方法により合成されたワックスはその分子量分布からも好ましいものである。
【0025】
上記炭化水素系ワックスは、通常、熱可塑性エラストマー100質量部に対し0.1質量部〜20質量部配合することが好ましく、1質量部〜10質量部配合することがより好ましい。炭化水素系ワックスの配合量を0.1質量部〜20部とすると、上述したフィッシュ・アイ等の表面欠陥の発生を容易に低減し、また、粘度バランスが良くなり、ウェルドラインを容易に軽減することができる。
【0026】
上記熱可塑性エラストマーは、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ(スチレン−水添ブタジエン−オレフィン)3元ブロック共重合体(SEBC)、ポリ(スチレン−水添ブタジエン−スチレン)3元ブロック共重合体(SEBS)、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)3元ブロック共重合体(SBS)、ポリ(スチレン−水添イソプレン−スチレン)3元ブロック共重合体(SEPS)、ポリ(スチレン−ビニルイソプレン−スチレン)3元ブロック共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ(エーテル−エステル)共重合体、ポリ(ウレタン−エーテル)共重合体、ポリ(アミド−エーテル)共重合体、ポリ(ウレタン−エステル)共重合体などがあげられる。
【0027】
また、被覆層(導電性被覆層)を形成する材料には、上記熱可塑性エラストマーのほかに、さらに熱可塑性樹脂や無機顔料等を添加してもよい。
【0028】
被覆層に導電性を持たせるために用いられる上記カーボンブラックは、特に限定されるものではないが、例えば、好ましいカーボンブラックとして、ケッチェンブラック、Printex、Special Black、Color Black、BLACK PEARLS、旭カーボン、三菱カーボン、デンカブラック、シースト、トーカブラック等が挙げられる。これらのカーボンブラックは、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、イオン導電剤等を用いて導電性を持たせる場合もあるが、ドラムアタックなど、環境変動が大きくなる場合にはイオン導電剤等の配合を控えることが好ましい。
【0029】
上記カーボンブラックの配合量は、特に限定されるものではないが、通常、熱可塑性エラストマー100質量部に対し10〜60質量部とすることが好ましく、20〜40質量部とすることがより好ましい。複数の層からなる導電性被覆層の場合には、各々の層を形成する材料のカーボンブラックの配合量を、上記範囲の配合量とすることが好ましい。カーボンブラックの配合量を10質量部以上とすると、通電使用時の抵抗上昇を抑え、帯電ロールとしての耐久性を向上することができる。一方、カーボンブラックの配合量を60質量部以下とすると、被覆層を形成するためのシームレスチューブの弾性特性が好ましいものとなり、容易に被覆層を形成することができる。
【0030】
なお、シームレスチューブの抵抗値は、通常、1×106〜1×1011Ω・cmとすることが好ましい。
【0031】
導電性被覆層を形成する材料には、その他、必要に応じて導電性充填剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、補強剤、充填剤などを配合してもよい。必要に応じて配合する導電性充填剤としては、グラファイト、金属酸化物を挙げることができる。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化鉛、などが挙げられる。
【0032】
導電性被覆層の形成に使用する上記シームレスチューブの作製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、次のようにして作製することができる。すなわち、まず熱可塑性エラストマーと、カーボンブラック、その他の添加剤とを混練し、続いてこれをペレット化する。次に、得られたペレットを押出成形機により押し出しシームレスチューブを作製する。複数の層を有するシームレスチューブは、例えば、各々の層を形成するための材料ペレットを共押出機を用いて同時に押し出して作製すればよい。
【0033】
上記のシームレスチューブの厚みは、特に限定されるものではないが、通常、100〜600μmとすることが好ましい。
【0034】
また、上記支持部材は、導電性基体の外周上に、弾性層を形成することにより作製することができる。支持部材の作製方法は、特に限定されず、例えば、公知の方法のなかから適したものを選択すればよい。具体的には、例えば、次のようにして作製することができる。まず、表面に導電性接着剤を塗布した導電性基体を用意する。一方、弾性層B形成用の熱可塑性樹脂やゴムにカーボンブラック、金属及び金属酸化物粒子等の導電剤、加硫剤及びその他の添加剤を加え混練してゴムコンパウンド調製する。次に、このゴムコンパウンドを押出機でチューブ状に押し出し、加硫して中心部に孔を有する弾性チューブを作製する。そして、表面に導電性接着剤を塗布した導電性基体上にこの弾性チューブを被覆し、続いて加硫した後、不要な弾性チューブ端部をカットして除き、その後、研磨することにより所定の直径の弾性層を有する支持部材を作製する。
【0035】
次に、このようにして作製した支持部材の弾性層上に上記シームレスチューブを被覆し、帯電ローラを製造することができる。
【0036】
上記シームレスチューブを上記支持部材の弾性層上に被覆する方法は、特に限定されない。例えば、中心部の孔が、上記支持部材の弾性層の外径より小さいシームレスチューブを準備する。この中心部の孔の内径を、エアー圧等を利用して拡大し、そこに上記支持部材を挿入した後に、エアー圧等を開放して、シームレスチューブの収縮力で弾性ローラの周面に密着させて被覆する方法を挙げることができる。また、シームレスチューブを熱収縮性のシームレスチューブとし、上記支持部材の弾性層上に被覆した後に加熱して収縮させて密着させる方法等を挙げることができる。
【0037】
次に、本発明のプロセスカートリッジについて説明する。
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の帯電ローラーを具備する。本発明のプロセスカートリッジの実施形態の一例を図2に示す。本発明のプロセスカートリッジは、上述したように、本発明の帯電ローラーを具備することを特徴とするものであり、電子写真感光体、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段等は、特に限定されるものではない。
【0038】
図2に示した実施形態のプロセスカートリッジにおいては、電子写真感光体13は、矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体13は回転過程において、一次帯電手段としての本発明の帯電ローラ11によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受ける。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段(不図示)からの画像露光14を受ける。こうして電子写真感光体13の周面に静電潜像が順次形成される。
【0039】
形成された静電潜像は、次いで現像手段15によりトナー現像され、現像されたトナー像は、電子写真感光体13と転写手段16との間に電子写真感光体13の回転と同期取りされて不図示の給紙部から給紙された転写材17に、転写手段16によって順次転写されていく。
【0040】
像転写を受けた転写材17は、電子写真感光体13面から分離されて像定着手段18へ導入されて像定着を受け、複写物(コピー)として装置外へ排出される。
【0041】
像転写後の電子写真感光体13の表面は、クリーニング手段19によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、繰り返し像形成に使用される。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて説明をするが、本発明は本実施例により限定されるものではない。なお、本実施例において、特記されていないときは、「部」は、「質量部」を表し、「%」は、「質量%」を表す。
【0043】
(弾性層を有するローラの作製)
[ローラ作製例1](ローラの作製)
導電性基体として、鉄材を押出成形により、直径6mmの棒材に押出し、長さ244mmに切断後、化学メッキを厚さ約3μm施したものを用意した。次に、弾性層の材料として、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)(EPT4070、商品名、三井化学(株)製)を100部、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、商品名、ライオン(株)、一次粒径30nm、比表面積1200(m2/g)、DBP吸油量500(cm3/100g)、pH9.0)を14部、加硫剤及びその他の添加剤を適量用意した。前記エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)に、前記カーボンブラック、加硫剤及びその他の添加剤を加え、2本ローラで混練分散し、ゴムコンパウンドを得た。得られたゴムコンパウンドを単軸押出機でチューブ状に押し出し、160℃、0.7MPaの水蒸気中で30分間加熱して加硫を行い、直径12.5mm、長さ244mm、中心部に直径4mmの孔を有する弾性チューブを作製した。表面に導電性接着剤を塗布した上記導電性基体上にこの弾性チューブを被覆し、続いて200℃、0.7MPaの水蒸気中で30分間加硫した後、端部のゴムを導電性基体の端面より10mm内側にて両端カットして、不要な弾性チューブ端部を除いた。その後、研磨によって直径11.5mmの弾性層を有するローラ(支持部材)を得た。
【0044】
(シームレスチューブの作製)
[チューブ作製例1](チューブ1の作製)
チューブ1の外層(最表面層)を形成するための樹脂材料ペレットを次のようにして準備した。まず、スチレン系の熱可塑性エラストマー(ダイナロン4600P、商品名、JSR(株)製)100部、炭化水素系ワックス(ビスコール550P、商品名、三洋化成工業(株)製、融点152℃)5部、カーボンブラック(スペシャルブラック550、商品名、デグサ(株)製)70部、酸化マグネシウム(スターマグ、商品名、神島化学(株)製)10部、ステアリン酸カルシウム(カルシウムステアレート、商品名、日本油脂(株)製)1部を添加し、加圧式ニーダーを用いて20℃〜220℃で溶融混練した後、冷却し、粉砕機で粉砕し、押出温度140℃〜200℃で押出機を用いて造粒しペレットAO1を作製した。
【0045】
次にチューブ1の内層を形成するための樹脂材料ペレットを次のようにして準備した。
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU クラミロンU、商品名、(株)クラレ製)100部、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC、商品名、ライオン(株)製)16部、酸化マグネシウム(スターマグ、商品名、神島化学(株)製)10部、ステアリン酸カルシウム(カルシウムステアレート、商品名、日本油脂(株)製)1部を添加し、加圧式ニーダーを用いて180℃で15分間混練した後、冷却し、粉砕機で粉砕し、押出温度180℃で押出機を用いて造粒しペレットAN1を作製した。
【0046】
次に、上記のペレットAO1及びAN1を用いてチューブ1を作製した。
内径φ16.5mmのダイスと外径φ18.5mmのポイントを備えた二層押出機で、押出温度160℃、チューブ引き取り速度2.5mm/sで押し出し、成型後、サイジング、冷却工程を経て、チューブ内径φ11.1mm、最表面層の厚さ100μm、内層の厚さ400μm、長さ25cmのシームレスチューブ(チューブ1)を得た。
【0047】
[チューブ作製例2](チューブ2の作製)
スチレン系の熱可塑性エラストマー(ダイナロン4600P、商品名、JSR(株)製)の配合量を80部、炭化水素系ワックス(ビスコール550P、商品名、三洋化成工業(株)製、 融点152℃)の配合量を10部とし、さらに、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(テクノABS110、商品名、テクノポリマー(株)製)20部を配合したこと以外はチューブ作製例1と同様にしてチューブ2を作製した。
【0048】
[チューブ作製例3](チューブ3の作製)
炭化水素系ワックスをサンワックス171−P(商品名、三洋化成工業(株)製、融点107℃)としたこと以外はチューブ作製例1と同様にしてチューブ3を作製した。
【0049】
[チューブ作製例4](チューブ4の作製)
炭化水素系ワックスを用いなかったこと以外はチューブ作製例1と同様にして、チューブ4を作製した。
【0050】
(実施例1、2)
上記チューブ製造例1及び2にて得られたチューブ1、2の各々に、前記ローラ作製例1にて作製したローラ(支持部材)をチューブ被覆装置(不図示)により嵌め込み、圧密着させて被覆し、帯電ローラ1及び2の各々を作製した。
【0051】
(比較例1、2)
上記チューブ製造例3及び4にて得られたチューブ3及び4の各々を用いたこと以外は実施例1と同様にして、帯電ローラ3及び4の各々を作製した。
【0052】
上記実施例および比較例で作製したチューブおよび帯電ローラについて次の評価を行った。
【0053】
<フィッシュ・アイの評価>
上記実施例及び比較例にて作製した帯電ローラを目視で検査し、核の大きさが0.5mm以上のフィッシュ・アイの個数をカウントし、帯電ローラ1本当りのフィッシュ・アイの個数を求めた。
【0054】
<ウェルドラインの評価>
上記実施例及び比較例にて作製したチューブのウェルドラインを目視で検査し、下記基準に基づき評価した。
○:ウエルドラインが、極軽微にみられる
×:ウエルドラインが、顕著にみられる
【0055】
<チューブ形状の評価>
チューブを、チューブ引き取り速度2.5mm/s及び10mm/sで作製し、得られたチューブの形状を目視で検査し、下記基準に基づき評価した。
○:真直ぐな円筒状のチューブであった
△:曲がった円筒状のチューブであった
×:曲がった円筒状ではないチューブであった
【0056】
<画像評価>
実施例及び比較例で得られた帯電ローラをプロセスカートリッジ(キヤノン(株)製、LBP3210用CRG、商品名)に帯電ローラとして組み込み、そのプロセスカートリッジをレーザービームプリンター(キヤノン(株)製、LBP3210、商品名)に装着し、23±2℃、55±5%RHの条件の下で画像出しを行い、得られた画像を目視で検査し、下記基準に基づき評価した。
○:フィッシュ・アイによる黒ポチ無し
△:フィッシュ・アイによる黒ポチが軽微にみられた
×:フィッシュ・アイによる黒ポチ及びウェルドラインによる黒スジが顕著にみられた
【0057】
以上の結果を纏め、表1に示した。
表1の結果は、帯電ローラの最表面層が、融点が110℃以上、170℃以下の炭化水素系ワックスを含有すると、帯電ローラ表面のフィッシュ・アイが低減することを示している。また、これにより安定かつ良好な均一帯電特性と出力画像品質が得られる帯電ローラ及び該帯電ローラを有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することが可能となった。
【0058】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の帯電ローラの一例の、導電性基体に垂直な面における断面の該略を示す図である。
【図2】本発明のプロセスカートリッジを装着した電子写真装置の該略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
A 導電性基体
B 弾性層
C 被覆層
D 内層
E 外層(最表面層)
11 帯電ローラ
12 電源
13 電子写真感光体
14 画像露光
15 現像手段
16 転写手段
17 転写材
18 像定着手段
19 クリーニング手段
20 レール
21 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体の外周上に、弾性層と、該弾性層上に、単一又は複数の層からなる被覆層と、を有する帯電ローラにおいて、該被覆層の少なくとも最表面層が、融点が110℃以上、170℃以下である炭化水素系ワックスを含有することを特徴とする帯電ローラ。
【請求項2】
前記最表面層が、炭化水素系ワックスを0.1質量%以上、20質量%以下含有する材料から形成されていることを特徴とする請求項1記載の帯電ローラ。
【請求項3】
前記被覆層が、単一又は複数の層からなるシームレスチューブを用いて形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の帯電ローラ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の帯電ローラを具備していることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−89870(P2008−89870A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269624(P2006−269624)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】