説明

帯電装置、プロセスユニットおよび画像形成装置

【課題】簡易な構成で、グリッドを効果的に清掃できる帯電装置を提供すること。
【解決手段】長尺状のグリッド52は、一方の端部522がグリッド52と感光体ドラム3との間隔dが規定の間隔d0になるようにホルダー54により保持される。グリッド52の他方の端部521は、端部522よりも感光体ドラム3から離れた位置でホルダー53により保持される。グリッド52の部分523の、放電部材51側の面には、清掃部材56が当接している。グリッド52は、清掃部材56との間に押圧力が作用する状態で感光体ドラム3との間隔dがd0になるように清掃部材56により位置決めされる。清掃部材56は、清掃時には、X方向に移動し、グリッド52を清掃する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体表面の帯電電位を制御するグリッドを有する帯電装置および当該帯電装置を備えるプロセスユニット、画像形成装置に関し、特にグリッドを清掃する技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、一様に帯電された感光体ドラム等の像担持体を露光して静電潜像を形成し、形成された静電潜像をトナー等の現像剤によって現像し、現像された像をシートに転写することで画像形成を行う構成になっている。
像担持体を帯電させる帯電装置には、放電を発生させるワイヤーや鋸歯状などからなる長尺状の放電電極と、放電電極と像担持体との間の空間に位置し、放電電極の放電による像担持体の帯電電位を一定に制御する長尺状のグリッドを備える、いわゆるスコロトロン方式と呼ばれる構成のものが多い。
【0003】
グリッドは、通常、両端が一対のホルダーにより保持され、像担持体との間隔が電位制御に最適な間隔として予め決められた規定の間隔、例えば1.0〜1.5〔mm〕程度になるように位置決めされている。
このようなスコロトロン方式の場合、例えば装置内の埃や現像器から漏れ出たトナー粒子などによりグリッド表面が部分的に汚れると、汚れた部分と汚れていない部分とで放電によるグリッド上における電位分布が不均一になって、像担持体表面を一様に帯電させることができなくなってしまう。
【0004】
そこで、従来からグリッドを清掃する清掃部材を帯電装置に設けることが行われている。例えば、清掃部材をグリッドの放電電極側の面に接触させて長手方向に摺動させることによりグリッドを清掃する構成がある。
【特許文献1】特開2002−311691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、グリッドの汚れを効果的に除去できないという問題がある。
なぜなら、清掃部材を摺動させてグリッドの汚れを除去しようとすると、清掃部材をある程度の力でグリッドに押圧する必要がある。
ところが、グリッドは、長尺状の金属薄板や金属ワイヤーなどからなり、バネなどの付勢力により長手方向に引っ張れるように張架されており、像担持体に近づく方向への力を受けると撓み易い。一方で、上記のように規定の間隔は、1.0〜1.5〔mm〕程度という極めて狭小である。
【0006】
そのため、清掃部材をある程度の押圧力を掛けてグリッドに押し付けようとすると、グリッドが撓んで像担持体表面に接触して像担持体に傷を付けるおそれが大きい。像担持体の傷は、直に画質劣化につながる。
従って、清掃部材がグリッド表面にわずかに触れる程度の状態でしか清掃できず、汚れが残ってしまうことが生じ易いからである。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で像担持体を傷付けることなくグリッドを効果的に清掃することが可能な帯電装置、および当該帯電装置を備えるプロセスユニット、画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る帯電装置は、像担持体を帯電させる帯電装置であって、放電部材と、長尺状であり、前記放電部材と前記像担持体との間の空間に長手方向に張力が掛かった状態で配設され、前記像担持体表面の帯電電位を制御するグリッドと、前記グリッドと前記像担持体との間隔dが規定の間隔d0になるように、前記グリッドの前記放電部材と対向する側の面に、前記グリッドとの間に押圧力が作用する状態で当接して、前記グリッドの前記像担持体に対する位置を決める少なくとも1つの位置決め部材と、を備え、前記位置決め部材が、前記グリッドに当接した状態で前記グリッドの長手方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記位置決め部材は、前記グリッドを清掃する清掃部材であることを特徴とする。
さらに、前記グリッドの第1の部分を保持する第1のホルダーと、前記グリッドの、前記第1の部分から前記長手方向に所定の距離だけ離れた第2の部分を保持する第2のホルダーと、を備え、前記第1のホルダーは、前記グリッドの第1の部分を、前記間隔dが前記規定の間隔d0になるように保持し、前記第2のホルダーは、前記グリッドの第2の部分を、前記第1のホルダーによる前記第1の部分の保持位置よりも前記像担持体から離れた位置で保持し、前記位置決め部材は、非清掃時には、前記第1と第2のホルダー間におけるホーム位置に位置して、前記間隔dが前記規定の間隔d0になるようにグリッドの位置決めを行い、清掃時には、前記第1と第2のホルダー間を移動して前記グリッドを清掃することを特徴とする。
【0010】
また、前記第2のホルダーには、前記グリッドの前記第2の部分を保持する保持位置よりも前記第1のホルダーに近い側の位置に、前記間隔方向に前記像担持体に向けて突出する凸部が設けられており、前記凸部の先端の位置は、前記間隔方向において前記第2の端部の保持位置と前記位置決め部材による前記グリッドの当接位置との間に位置し、前記位置決め部材が、前記ホーム位置に位置している際には、前記凸部と前記グリッドとが当接せず、清掃時の移動によりホーム位置から離れると、前記凸部と前記グリッドとが当接する構成であることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記第2のホルダーには、前記位置決め部材が前記ホーム位置に位置したときに前記位置決め部材を保持して前記間隔方向における位置を規制する保持部が設けられており、前記位置決め部材は、前記ホーム位置に位置したときに前記第2のホルダーの保持部に保持されることを特徴とする。
また、前記グリッドの第1の部分を保持する第1のホルダーと、前記グリッドの、前記第1の部分から前記長手方向に所定の距離だけ離れた第2の部分を保持する第2のホルダーと、を備え、前記位置決め部材が2つ配置され、これらを第1と第2の位置決め部材とした場合に、前記第1と第2の位置決め部材は、それぞれが、非清掃時には、前記第1と第2のホルダー間におけるホーム位置に位置して、前記間隔dが前記規定の間隔d0になるようにグリッドの位置決めを行い、清掃時には、前記第1と第2のホルダー間を移動して前記グリッドを清掃し、前記第1と第2のホルダーは、前記グリッドの第1と第2の部分を、前記第1と第2の位置決め部材により前記グリッドが位置決めされている位置よりも前記像担持体から離れた位置で保持することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るプロセスユニットは、画像形成のための像担持体を帯電させる帯電装置として上記の帯電装置を備えることを特徴とする。
本発明に係る画像形成装置は、像担持体を帯電させる帯電装置として上記の帯電装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成によれば、グリッドの位置を決めるための必須の部材である位置決め部材がグリッドからの押圧力を受けた状態で移動できるので、その移動により位置決め部材がグリッドの汚れを掻き取る等、グリッドの清掃を行うことも可能になり、従来のように位置決め部材とは別に清掃部材を配置する必要がなくなり、簡易な構成でグリッドを効果的に清掃することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る帯電装置、プロセスユニットおよび画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例にして説明する。
図1は、実施の形態に係るプリンタ1の全体の構成を示す図である。
同図に示すように、プリンタ1は、画像プロセス部10、給送部20、定着部30および制御部50などを備えており、ネットワーク、ここではLANに接続されて、外部の端末装置(不図示)からのプリントジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてプリントジョブを実行するものである。
【0015】
画像プロセス部10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色のそれぞれに対応する作像ユニット(プロセスユニット)2Y,2M,2C,2Kと、無端状の中間転写ベルト11などを備える。
作像ユニット2Yは、感光体ドラム3、帯電部4、露光部5、現像部6、一次転写ローラ7、クリーニング部8などからなる。帯電部4は、スコロトロン方式による帯電装置であり、制御電極としてのグリッド52(図3)を有し、感光体ドラム3の表面を均一に帯電させる。また、後述のように、帯電部4にはグリッド52の、感光体ドラム3に対する位置を決める位置決め機能と、グリッド52を清掃する清掃機能とを兼用する部材(以下、「清掃部材」という。)56(図3)が備えられている。
【0016】
作像ユニット2Yは、装置本体に対し挿抜可能に構成され、プリンタ1の使用者によって交換することができる構成になっている。他の作像ユニット2M〜2Kについても作像ユニット2Yと同様の構成である。
中間転写ベルト11は、駆動ローラ12、従動ローラ13、テンションローラ14に張架されており、矢印B方向に回転駆動される。クリーニング部16は、中間転写ベルト11の表面の残留トナーなどを清掃する。
【0017】
給送部20は、シートSを収容する給紙カセット21と、給紙カセット21内のシートSを1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ22と、繰り出されたシートSを搬送する搬送ローラ対23と、二次転写位置15にシートSを送り出すタイミングをとるためのタイミングローラ対24と、二次転写ローラ25などを備えている。
制御部50は、外部の端末装置から送信されて来る画像信号を受信して、これをY〜K色用のデジタル画像信号に変換し、画像プロセス部10、給送部20等を制御して、プリント動作を実行させる。
【0018】
具体的には、作像ユニット2Y〜2Kごとに、矢印A方向に回転する感光体ドラム3が帯電部4により一様に帯電され、帯電された感光体ドラム3の表面が露光部5より露光されて静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、現像部6によって現像されてトナー像として顕像化される。
現像された各色トナー像は、各一次転写ローラ7による静電力の作用により感光体ドラム3から中間転写ベルト11上に一次転写される。この際、各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト11上の同じ位置に重ね合わせて一次転写されるようにタイミングをずらして実行される。中間転写ベルト11上の各色トナー像は、中間転写ベルト11の回転により二次転写位置15に移動する。
【0019】
一方、中間転写ベルト11上の各色トナー像の移動タイミングに合わせて、給送部20からは、タイミングローラ対24を介してシートSが給送されて来ており、そのシートSは、回転する中間転写ベルト11と二次転写ローラ25の間に挟まれて搬送され、二次転写位置15において静電力により中間転写ベルト11上のトナー像がシートS上に二次転写される。
【0020】
二次転写位置15を通過したシートSは、定着部30に搬送され、ここでトナー像が加熱、加圧されてシートSに定着された後、排出ローラ対40を介して排出トレイ41上に排出される。
以下、図2を用いて帯電部4のグリッド52の清掃方法を概説し、図3〜図7を用いて帯電部4の具体的な構成を説明する。
【0021】
図2は、グリッド52の清掃の様子を模式的に示す図であり、図2(a)は、非清掃時の状態を、図2(b)、図2(c)は、清掃中の状態を示している。
図2(a)に示すように、グリッド52は、感光体ドラム3と放電電極51との間の空間に位置し、X方向(感光体ドラム3の軸方向に相当)に張力が掛かった状態で配設されている。
【0022】
グリッド52の、X方向における一方の端部522は、ホルダー54により保持され、他方の端部521は、ホルダー53により保持されている。
具体的には、グリッド52の端部522は、ホルダー54の部分540で、グリッド52における感光体ドラム3と対向する部分524と、感光体ドラム3とのY方向(X方向に直交する方向。感光体ドラム3とグリッド52との間隔方向に相当)の間隔dが規定の間隔d0、例えば2〔mm〕になるように保持されている。ここで、規定の間隔d0とは、電位制御に最適な間隔として実験等により予め決められた間隔である。
【0023】
一方、グリッド52の端部521は、ホルダー53の部分530において、Y方向に部分540よりも感光体ドラム3から離れた位置で保持されている。換言すれば、ホルダー53は、グリッド52の端部521を、上記間隔dが規定の間隔d0よりも広くなるような位置で保持するものである。
清掃部材56は、グリッド52の、放電電極51と対向する側の面520に当接した状態で、ホルダー53、54間をX方向に移動してグリッド52を清掃する。
【0024】
また、清掃部材56は、非清掃時には、同図に示すホーム位置に位置しており、ホーム位置においてホルダー53に保持されると共に、グリッド52における清掃部材56と当接している部分523を、上記間隔dが規定の間隔d0になるように保持する。これにより、グリッド52の部分524と感光体ドラム3との間隔dが規定の間隔d0に維持される。この意味で、清掃部材56は、グリッド52の清掃機能に加えて、グリッド52の、感光体ドラム3に対するY方向の位置を決める位置決め部材として機能するものである。
【0025】
清掃部材56は、ホーム位置から移動を開始し、図2(c)に示す位置に達すると、反転してホーム位置まで戻るという往復動作によりグリッド52を清掃する。
上記のようにグリッド52には、X方向の張力が掛かっているので、グリッド52の端部521を、端部522と部分523よりもY方向に感光体ドラム3から離れた位置で保持することにより、清掃部材56にはグリッド52からの押圧力が作用することになる。
【0026】
この押圧力は、図2(b)、図2(c)に示すように清掃時に清掃部材56がホーム位置からX方向に移動しても作用し続ける。従って、清掃部材56は、グリッド52に対し、ある程度の押圧力が掛かった状態でグリッド52を清掃できることになる。
上記の押圧力は、グリッド52を、感光体ドラム3との間隔dが規定の間隔d0になるように保持した状態で発生しており、清掃部材56によるグリッド52の清掃は、その押圧力が作用し続ける範囲で実行される。従って、従来のように感光体ドラム3の傷付きを防ぐために清掃部材56をグリッド52に押圧できず、グリッド52の汚れが残ってしまうといったことを抑制でき、清掃能力を向上することができる。
【0027】
次に、帯電部4の具体的な構成例を説明する。
図3は、帯電部4の構成を示す側面図であり、図4は、図3のG−G線で帯電部4を切断したときの矢視断面図である。図5(a)は、グリッド52がホルダー53により保持されている状態を示す斜視図であり、図5(b)は、グリッド52が取り外された状態のホルダー53の構成例を示す斜視図である。図6は、清掃時に清掃部材56が移動している様子を示す図であり、図7は、清掃部材56の移動の様子を示す別の図である。
【0028】
なお、図3は、清掃部材56がホーム位置に位置している非清掃時の状態を示すと共に、内部の構成が判り易いようにシールド電極55の一部を切り欠いて示している。
図3等に示すように、帯電部4は、放電電極51、グリッド52、ホルダー53、54、シールド電極55、清掃部材56、モータ57、送りネジ58、引っ張りバネ59などを備えている。
【0029】
放電電極(放電部材)51は、コロナ放電を行う長尺状の電極であり、ここでは先鋭化された電極が多数、X方向に並んでなる鋸歯状電極が用いられる。なお、放電電極としては、これに限られず、例えばワイヤー電極や針状電極などを用いるとしても良い。
グリッド52は、金属製の薄板が長尺状に形成されてなり、スリット状のグリッド孔(不図示)が多数設けられている。グリッド52と感光体ドラム3の間隔dは、規定の間隔d0になっている。
【0030】
グリッド52は、制御部50により所定の電位に保持され、放電電極51からのコロナイオン流を制御して、感光体ドラム3の表面を一様に帯電させる。
シールド電極55は、長尺状であって、図4等に示すように断面コの字状の金属製部材であり、放電電極51からのコロナイオンの外部への流出を遮蔽する。
ホルダー53、54は、それぞれが樹脂からなるブロック状の部材(図5)であり、ホルダー53は、シールド電極55の、X方向における一方端に取着され、ホルダー54は、他方端に取着されている。
【0031】
ホルダー53、54には、フック531、541が設けられている。グリッド52の一方端は、フック531に引っ掛けられ、他方端は、引っ張りバネ59を介してフック532に引っ掛けられる。これにより、グリッド52は、X方向に引っ張られるように張力が掛かった状態で保持されることになる。
グリッド52の端部522は、感光体ドラム3との間隔dが上記d0になるようにホルダー54の保持部542に保持されている。この意味で、保持部542は、図2の部分540に相当するものといえる。また、グリッド52の端部521は、保持部542よりも感光体ドラム3からY方向に離れた位置でホルダー53のフック531に保持されている。この意味で、フック531は、図2の部分530に相当するものである。
【0032】
清掃部材56は、グリッド52に加えて放電電極51も清掃する部材であり、図4に示すように保持部材561、クリーナ562、563などを備えている。以下、同図の説明においては放電電極51の位置を基準に上下左右(縦横)を規定することとする。
保持部材561は、第1保持片565と第2保持片566が正面視T字状になるように一体形成された樹脂製の部材である。第1保持片565の下部5651は、シールド電極55の背面部552に設けられた、X方向に伸びる切り欠き溝551(図5)と係合しており、X方向に移動自在に保持される。
【0033】
第1保持片565の中央部5652は、放電電極51を挟んで左右に二股状に分岐しており、その分岐部分の内側に、放電電極51を左右から挟むようにして放電電極51に当接するクリーナ562、562が配設されている。
クリーナ562は、清掃性、耐久性、耐オゾン性等の観点から、ここではビロード材(植毛布)が用いられてなり、放電電極51に付着したトナー粒子や埃等を清掃する。
【0034】
第2保持片566は、シールド電極55の開口550側に位置し、その上面にクリーナ563が配設されている。
クリーナ563は、グリッド52の面520に当接して、グリッド52に付着したトナー粒子や埃等を清掃する。クリーナ563は、ここではクリーナ562と同様の植毛布からなり、植毛高さが約0.5〜1.0〔mm〕のものが用いられる。
【0035】
第1保持片565の最下端部5653(シールド電極55の切り欠き溝551を介して外部に露出している部分)は、送りネジ58と螺合している。
送りネジ58は、図3に示すようにモータ57の回転軸と接続されている。モータ57の回転により送りネジ58が回転すると、その回転量に応じた分だけ、保持部材561(すなわち、清掃部材56)がX方向に移送されることになる。なお、帯電部4には、清掃部材56のX方向における位置を検出するためのセンサ(不図示)が配置されており、制御部50は、当該センサの検出結果から清掃部材56の位置を把握し、モータ57の回転制御を行う。
【0036】
ホルダー53の、ホルダー54と対向する側の部分には、図5(b)の拡大図(丸印)に示すように段部532が設けられている。この段部532は、清掃部材56をホーム位置で保持するために設けられたものである。具体的には、清掃部材56がホーム位置に戻ると、清掃部材56の第2保持片566が段部532の下段の面533に乗り上げた状態で停止するようになっている。清掃部材56には、上記のようにグリッド52からの押圧力が掛かるので、ホーム位置では、清掃部材56の第2保持片566とクリーナ563とは、ホルダー53の面533上においてグリッド52と面533に挟まれつつグリッド52からの押圧力により面533に圧接された状態で保持される。
【0037】
この保持状態(ホーム位置に位置している状態)で、グリッド52と感光体ドラム3との間隔dが上記d0と一致するように、第2保持片566の大きさ、クリーナ563の厚み、面533の高さ等が予め実験等から決められる。
清掃部材56は、送りネジ58により可動され、ネジのバックラッシュ等、可動によりY方向における位置ばらつきが発生することがある。そこで、本実施の形態ではホーム位置に位置しているときに、清掃部材56をホルダー53の段部532でも保持して清掃部材56のY方向(間隔方向)における位置を規制することとし、上記のばらつきの発生を抑えて、グリッド52のY方向における位置をより固定的に保持できるようにしている。この意味で、段部532は、清掃部材56をホーム位置で保持して間隔方向における位置を規制する保持部として機能するものといえる。
【0038】
清掃のため清掃部材56がホーム位置から移動し始めると、図6に示すように、清掃部材56の第2保持片566が、上記バックラッシュ等によるばらつきに相当する量だけ、ホルダー53の面533に設けられた斜面534を降りるように移動してホルダー53から離間し、グリッド52の清掃動作に入る。さらにX方向に移動すると、図7に示すようにグリッド52の部分525は、ホルダー53の頂部(凸部)536に接触するようになる。頂部536は、清掃部材56がホーム位置から離れたときでも、グリッド52の、清掃部材56への押圧力をある程度の大きさに維持しておくために設けられたものである。
【0039】
すなわち、清掃部材56が、ホーム位置およびその近くに位置するときには、グリッド52が頂部536に接触せず、グリッド52の部分525が直線状になっているが、ホーム位置からある距離だけ離れると、それ以降は接触して、部分525のところで曲げられたような姿勢になり、頂部536が設けられていない場合に直線状のままになっているよりも引っ張りバネ59の伸び量が長くなる(引っ張り力が大きくなる)ようにして、グリッド52のX方向における張力の低下を抑制する。グリッド52の、清掃部材56への押圧力は、グリッド52の張力の大きさによるので、張力の低下が抑制される分、押圧力の低下も抑制され、清掃に必要な大きさが維持される。
【0040】
なお、例えば清掃部材56のホーム位置からの移動量が大きくなるにつれ、グリッド52の張力が強くなるような構成をとるようにすれば、頂部536を設けない構成とすることもできる。もっとも、清掃中に必要な押圧力が得られれば良く、ばね定数がある程度大きな引っ張りバネを採用するとしても良い。
清掃部材56が反転位置(図2(c))まで移動すると、モータ57が逆転し、清掃部材56が反対方向に移動してホーム位置まで戻って停止する。ホーム位置に戻るまでの間もグリッド52の清掃が行われる。
【0041】
清掃部材56がホーム位置に到達する直前に、清掃部材56の第2保持片566は、段部532の面533に設けられた斜面534を昇るように移動して面533上に乗り上げる。この意味で、斜面534は、ホーム位置に戻って来た清掃部材56をスムーズにホルダー53の段部532に案内する機能を有するものといえる。
以上説明したように、本実施の形態では、清掃部材56が、グリッド52の位置を決めるための必須の部材である位置決め部材とグリッド52を清掃する清掃部材とを兼ねる構成としたので、従来のように位置決め部材とは別に清掃部材を配置する必要が無い。また、清掃部材56にはグリッド52からの押圧力が作用し、その押圧力が作用している状態で清掃部材35が移動してグリッド52の清掃を行うことができるので、従来のように清掃部材の方をグリッドに押し付ける構成をとる必要がなく、グリッド52を効果的に清掃することが可能になる。
【0042】
なお、上記ではいわゆるネジ送り機構を利用して清掃部材56を移動させるとしたが、清掃部材をX方向に移動可能な機構であれば、これに限られないことはいうまでもない。例えば、モータによるワイヤー巻き掛け機構等を利用することもできる。
また、清掃部材56を移動できれば電動に限られない。例えば、送りネジ57とモータ58の代わりに、X方向に移動自在な棒状部材を配設すると共に当該棒状部材と清掃部材56とを連結し、プリンタ1の使用者が当該棒状部材を手動でX方向に往復動作させることにより清掃部材56を移動させる構成をとるとしても良い。
【0043】
(変形例)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態では、帯電部4に清掃部材56を1つ配設する構成としたが、1つに限られず、複数、例えば2つ配設する構成をとることもできる。
【0044】
図8は、2つの清掃部材56、66を配設した場合の各清掃部材によるグリッド52の清掃の様子を模式的に示す図である。図8(a)は、非清掃時の状態を示しており、図8(b)、図8(c)は、清掃中の状態を示している。
図8(a)に示すように、清掃部材56、66それぞれは、非清掃時には同図に示すホーム位置に退避しており、そのホーム位置においてホルダー53、54に保持されると共に、間隔dが規定の間隔d0になるようにグリッド52の部分523、526に当接して、グリッド52を保持する。
【0045】
一方、グリッド52の両端部521、522は、ホルダー53、54の部分530、541において、清掃部材56、66によるグリッド52の保持位置よりもY方向に感光体ドラム3から離れた位置で保持されている。これにより、グリッド52の部分524と感光体ドラム3との間隔dが規定の間隔d0に維持される。
清掃部材56、66は、独立して清掃動作を行う構成になっている。ここでは、シールド電極55の背面部552に切り欠き溝551と同様の切り欠き溝が並行してもう1つ設けられ、一方の切り欠き溝に清掃部材56が、他方の切り欠き溝に清掃部材66がそれぞれ係合することでX方向に移動自在に保持される。また、清掃部材66の駆動機構として、別の送りネジおよびモータ(不図示)が配設される。
【0046】
清掃部材56は、上記実施の形態と同様に送りネジ58を介してモータ57と接続され、非清掃時にはホルダー53により保持される。
一方、清掃部材66は、上記別の送りネジを介して別のモータに接続され、清掃部材56とは独立して駆動できるように構成される。また、ホルダー54に、ホルダー53の段部532と同様の段部が設けられ、非清掃時には当該段部において保持されるように構成される。
【0047】
清掃動作として、例えば図8(b)に示すように、まず清掃部材56が移動して清掃が行われる。清掃部材56の移動範囲としては、例えばホルダー54の近辺までとすることができる。
清掃部材56は、移動範囲一杯まで移動すると停止して反転する。清掃部材56がホーム位置に戻るまでの途中で、図8(c)に示すように清掃部材66の移動が開始される。清掃部材66が清掃部材56の後を追うように移動して、清掃部材56、66によりグリッド52が清掃される。
【0048】
清掃部材66の移動範囲としては、例えばホルダー53の近辺までとすることができる。清掃部材66は、移動範囲一杯まで移動すると停止し、反転して自身のホーム位置に戻る。これにより、双方の清掃部材56、66がそれぞれ1往復することになり、清掃部材が1個の場合よりも清掃能力を向上させることができる。
なお、清掃部材56、66の動作が上記のものに限られないことはいうまでもない。例えば、両方の清掃部材を同時にホーム位置から移動させてグリッド52の長手方向略中央の位置で反転させる動作を行うとすれば、グリッド52の両端を1往復する場合よりも清掃時間を短縮することができる。
【0049】
また、各清掃部材の駆動機構は、上記の構成に限られないことはいうまでもない。各清掃部材を駆動させることができれば良く、例えば清掃部材毎にモータによるワイヤー巻き掛け機構を設ける構成としても良い。また、電動に限られず上記のように使用者の手動による構成としても良い。
(2)上記実施の形態では、グリッド52として薄板状のものを用いた場合の例を説明したが、制御電極として機能するものであれば薄板状に限られず、例えば線状のものとすることもできる。また、像担持体としてドラム状の感光体を用いたが、例えばベルト状や板状のものを用いるとしても良い。
【0050】
さらに、位置決め部材として清掃部材56を用いた例を説明したが、グリッド52との間に押圧力が作用する状態で当接して、非清掃時にはグリッド52の像担持体に対する位置を決め、清掃時にはグリッド52の長手方向に移動してグリッド52を清掃できる部材であれば、その形状、大きさ、駆動機構、保持機構、クリーナ563の材料、厚み等が上記のものに限定されないことはいうまでもない。また、クリーナ563を設けないとすることもできる。クリーナ563がなくても位置決め部材がグリッド52からの押圧力を受けた状態で移動すれば、その位置決め部材の移動によりグリッド52に付着しているトナー等の汚れが掻き取られたり除去されたりするなど実質グリッド52の清掃を行えるからである。その意味で、位置決め部材として、グリッドとの間に押圧力が作用する状態で当接してグリッドの位置を決めると共にグリッドの長手方向に移動可能に構成される部材を配置することでも上記同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、画像形成装置としてプリンタ1に適用した場合の例を説明したが、複写機、ファクシミリ装置、MFP(Multiple Function Peripheral)等の画像形成装置一般に適用することができる。
また、上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、グリッドを介して像担持体を帯電させる帯電装置であり、グリッドを効果的に清掃する技術として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】プリンタ1の全体の構成を示す図である。
【図2】プリンタ1の帯電部4に設けられるグリッド52の清掃の様子を模式的に示す図である。
【図3】帯電部4の構成を示す側面図である。
【図4】図3のG−G線で帯電部4を切断したときの矢視断面図である。
【図5】(a)は、グリッド52がホルダー53により保持されている状態を示す斜視図、(b)は、グリッド52が取り外された状態のホルダー53の構成例を示す斜視図である。
【図6】清掃時に清掃部材56が移動している様子を示す図である。
【図7】清掃時に清掃部材56が移動している様子を示す別の図である。
【図8】変形例において、2つの清掃部材56、66を配設した場合の各清掃部材によるグリッド52の清掃の様子を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0054】
3 感光体ドラム
4 帯電部
51 放電電極
52 グリッド
53、54 ホルダー
56、66 清掃部材
520 グリッドの放電電極側の面
521、522 グリッドの端部
532 段部(保持部)
536 頂部(凸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を帯電させる帯電装置であって、
放電部材と、
長尺状であり、前記放電部材と前記像担持体との間の空間に長手方向に張力が掛かった状態で配設され、前記像担持体表面の帯電電位を制御するグリッドと、
前記グリッドと前記像担持体との間隔dが規定の間隔d0になるように、前記グリッドの前記放電部材と対向する側の面に、前記グリッドとの間に押圧力が作用する状態で当接して、前記グリッドの前記像担持体に対する位置を決める少なくとも1つの位置決め部材と、を備え、
前記位置決め部材が、前記グリッドに当接した状態で前記グリッドの長手方向に移動可能に構成されていることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記位置決め部材は、
前記グリッドを清掃する清掃部材であることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記グリッドの第1の部分を保持する第1のホルダーと、
前記グリッドの、前記第1の部分から前記長手方向に所定の距離だけ離れた第2の部分を保持する第2のホルダーと、を備え、
前記第1のホルダーは、
前記グリッドの第1の部分を、前記間隔dが前記規定の間隔d0になるように保持し、
前記第2のホルダーは、
前記グリッドの第2の部分を、前記第1のホルダーによる前記第1の部分の保持位置よりも前記像担持体から離れた位置で保持し、
前記位置決め部材は、
非清掃時には、前記第1と第2のホルダー間におけるホーム位置に位置して、前記間隔dが前記規定の間隔d0になるようにグリッドの位置決めを行い、
清掃時には、前記第1と第2のホルダー間を移動して前記グリッドを清掃することを特徴とする請求項2に記載の帯電装置。
【請求項4】
前記第2のホルダーには、
前記グリッドの前記第2の部分を保持する保持位置よりも前記第1のホルダーに近い側の位置に、前記間隔方向に前記像担持体に向けて突出する凸部が設けられており、
前記凸部の先端の位置は、前記間隔方向において前記第2の端部の保持位置と前記位置決め部材による前記グリッドの当接位置との間に位置し、
前記位置決め部材が、前記ホーム位置に位置している際には、前記凸部と前記グリッドとが当接せず、清掃時の移動によりホーム位置から離れると、前記凸部と前記グリッドとが当接する構成であることを特徴とする請求項3に記載の帯電装置。
【請求項5】
前記第2のホルダーには、
前記位置決め部材が前記ホーム位置に位置したときに前記位置決め部材を保持して前記間隔方向における位置を規制する保持部が設けられており、
前記位置決め部材は、
前記ホーム位置に位置したときに前記第2のホルダーの保持部に保持されることを特徴とする請求項3または4に記載の帯電装置。
【請求項6】
前記グリッドの第1の部分を保持する第1のホルダーと、
前記グリッドの、前記第1の部分から前記長手方向に所定の距離だけ離れた第2の部分を保持する第2のホルダーと、を備え、
前記位置決め部材が2つ配置され、これらを第1と第2の位置決め部材とした場合に、
前記第1と第2の位置決め部材は、それぞれが、
非清掃時には、前記第1と第2のホルダー間におけるホーム位置に位置して、前記間隔dが前記規定の間隔d0になるようにグリッドの位置決めを行い、清掃時には、前記第1と第2のホルダー間を移動して前記グリッドを清掃し、
前記第1と第2のホルダーは、
前記グリッドの第1と第2の部分を、前記第1と第2の位置決め部材により前記グリッドが位置決めされている位置よりも前記像担持体から離れた位置で保持することを特徴とする請求項2に記載の帯電装置。
【請求項7】
画像形成のための像担持体を帯電させる帯電装置を備えるプロセスユニットであって、
前記帯電装置として請求項1乃至6のいずれか1項に記載の帯電装置を備えることを特徴とするプロセスユニット。
【請求項8】
像担持体を帯電させる帯電装置を備える画像形成装置であって、
前記帯電装置として請求項1乃至6のいずれか1項に記載の帯電装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−52055(P2008−52055A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228299(P2006−228299)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】