説明

帯電装置及び画像形成装置

【課題】接触帯電方式の構造で、帯電音を軽減すると共に、装置の長寿命化を図れる構造を実現する。
【解決手段】感光ドラム2の表面2aを第1、第2の帯電ローラ7a、7bにより帯電させる。これら各帯電ローラ7a、7bは感光ドラム2の表面2aにそれぞれ接触して配置される。また、感光ドラム2の回転方向上流の第1の帯電ローラ7aには直流電圧が、同じく下流の第2の帯電ローラ7bには交流成分を含む電圧が、それぞれ印加される。更に、第1の帯電ローラ7aの表面の硬度は、第2の帯電ローラ7bの表面の硬度よりも高い。これにより、第1の帯電ローラ7aを微粉トナーにより汚染されにくくし、交流電圧が印加される第2の帯電ローラ7bで帯電音を生じにくくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、ファクシミリ、レーザビームプリンタ、プロセスカートリッジなどに使用される帯電装置、及び、このような帯電装置を組み込んだ画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置において、感光体・誘電体などの像担持体に、帯電工程を含む電子写真プロセスや静電記録プロセスなどの作製プロセスを適用して画像形成を実行する。この場合の帯電工程に使用される帯電手段としては、一般にスコロトロン帯電器のようなコロナ放電現象を利用した非接触式の帯電方式が多用されている。コロナ放電装置は像担持体などの被帯電体表面を所定の電位に均一に帯電処理する手段として有効であるが、高圧電源を必要とすることやコロナ放電によるオゾンの発生などの問題点を有している。
【0003】
このため、近年、導電性のローラ型帯電部材を感光体などの像担持体に直接接触あるいは近接させて、その帯電部材に帯電電圧を印加する接触帯電方式が利用されている。例えば、導電性ゴムのローラを像担持体である感光ドラムに接触させ、感光ドラムの回転と共に従動回転させる構成で、ゴムローラの軸となる芯金に電圧を供給することにより感光ドラムを一様に帯電する。帯電部材を像担持体に直接接触させて帯電を行なう接触帯電方式は、非接触帯電方式に比べて、次のような利点がある。即ち、被帯電体表面に所望の電位を得るのに必要とされる印加電圧の低電圧化が図られること、帯電過程で発生するオゾン量がごく微量であり、オゾン除去フィルターの必要性がなくなること、そのため装置の排気系の構成が簡略化されることなどの長所を有する。
【0004】
接触帯電方式は、帯電部材と被帯電体との間に印加する電圧は直流電圧のみとする(DC印加方式)以外に、振動電圧(時間と共に電圧値が周期的に変化する電圧)を印加するAC印加方式もある(特許文献1参照)。このようなAC印加方式は、均一な帯電(除電)処理を行なうことが可能であり、高画質化に対して有効である。なお、振動電圧は、振動電圧成分(交流成分、AC成分)、若しくは、AC成分と直流成分(目標帯電電位に相当する電圧、DC成分)との重畳電圧である。また、AC成分の波形としては、正弦波・矩形波・三角波などの他、直流電源を周期的にオン・オフすることによって形成された矩形波電圧であっても良い。
【0005】
上述のような接触方式を使用した構造として、1個の帯電ローラ(帯電部材)により感光ドラム(像担持体)を帯電させる構造がある。このような帯電ローラは、芯金の外周に同心状に順番に配置したそれぞれ円筒状の、SBR(スチレンブタジエンゴム)等に導電性カーボンを含む導電性弾性層と、帯電不良防止のための高抵抗被覆層と、感光ドラムへの固着を防止するための保護被覆層とからなる。また、帯電ローラは、ばね部材により感光ドラムに所定の加圧力で押圧接触させてあり、感光ドラムの回転に伴い従動回転する。そして、芯金を介して所定の帯電バイアス(DC印加方式もしくはAC印加方式)が印加され、帯電ローラと感光ドラムとの間に生じている微小ギャップ間での放電により、感光ドラムの外周面が接触帯電方式で帯電処理される。
【0006】
しかし、このように帯電ローラにより帯電を行なう場合、高抵抗被覆層が温度や湿度の影響を受けやすく、環境によって抵抗値が大きく変化する。また、高抵抗被覆層や導電性弾性層は、経時変化により抵抗値が上昇する傾向があり、この傾向は通電量が多くなるほど助長される。したがって、1個の帯電ローラにより帯電を行なう場合、安定した帯電性能を確保しにくい。更に、感光ドラムが高速回転する場合、感光ドラムと帯電ローラとの当接部が不安定となり易く、帯電ムラが生じる可能性がある。このため、1個の帯電ローラを使用する接触帯電方式の帯電装置は、例えば高信頼性が要求され、且つコピーボリュームの大きい高速複写機などの高級機種の画像形成装置に使用することは難しい。
【0007】
一方、2個の帯電ローラを用いて帯電を行なう構造がある(特許文献2参照)。このように2個の帯電ローラを使用する特許文献2に記載された構造の場合、上流の帯電ローラには直流電圧を、下流の帯電ローラには、直流電圧と交流電圧との重畳電圧を、それぞれ印加している。また、上流の帯電ローラは、芯金の周囲にアルミニウムなどの金属導体層を有するものを使用しており、感光ドラムに近接させ、非接触により帯電を行なっている。一方、下流の帯電ローラは、芯金の周囲に導電性の弾性を有するものを使用しており、感光ドラムに接触させて帯電行なっている。
【0008】
このような特許文献2に記載された構造の場合、感光ドラムの上流の帯電ローラにより感光ドラムを概略所望の帯電電位に帯電させ、下流の帯電ローラにより、感光ドラムの帯電の不均一性を補正する。このため、高速回転による帯電ムラが生じにくい。また、個々の帯電ローラに流す電流を少なくする事ができるため、帯電ローラの高抵抗被覆層や導電性弾性層の寿命を著しく延ばすことができる。このため、帯電性能の長期に亙って安定化させられ、高速複写機などの高級機種の画像形成装置にも使用可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−149669号公報
【特許文献2】特開平7−110616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、帯電ローラを感光ドラムに接触させて帯電を行なう構造で、交流成分を含む電圧を印加した場合、交流周波数に起因する所謂「帯電音」が生じる場合がある。この帯電音とは、帯電部材に印加する電圧が交流成分を含むと、帯電部材と被帯電部材との間に振動電界が形成され、これによって両者が振動を起こし発生する異音である。このような帯電音は、交流成分のピーク間電圧が大きいほど、また、交流周波数が高いほど増大することが知られている。感光ドラムに必要な帯電を行なうために印加する交流電圧としては、直流電圧を印加したときの感光ドラムの帯電開始電圧に対して2倍以上のピーク間電圧を印加することが望ましい。このため、帯電音を抑えるためにピーク間電圧を下げると、帯電電位の一様性を保ち高画質を得ることが難しくなる。また、画像形成装置のプロセススピードが速い場合、交流周波数を高くする必要がある。近年では、画像形成装置の高画質化、高速度化が強く求められているため、交流周波数を低くすることも難しい。
【0011】
そこで、帯電ローラの表面硬度を低下させて、帯電音を軽減することが考えられる。しかし、帯電ローラの表面硬度を低くすると、現像後に感光ドラム上に残留したトナーをクリーニングする清掃部材を通り抜けた微粉トナーや外添剤などにより、帯電ローラが汚染され、寿命が短くなる可能性がある。即ち、帯電ローラの表面硬度が低い場合、帯電ローラと感光体との接触幅(ニップ幅)が大きく、帯電ローラと感光体との接触部(ニップ部)で、微粉トナーや外添剤が帯電ローラに付着し易い。このため、帯電ローラが汚染され易く、寿命も短くなる。また、帯電ローラが汚染されれば帯電不良が生じ、この帯電不良に起因する画像濃度ムラや、画像中の白部へのトナーの付着(カブリ)などが発生する場合ある。
【0012】
なお、上述の特許文献2に記載された構造の場合、上流の帯電ローラは、感光ドラムに非接触としているため、前述したように、高圧電源を必要とすることやコロナ放電によるオゾンの発生などの問題点を有する。このような問題点をなくすべく、上流の帯電ローラを接触式とすることも考えられる。但し、特許文献2に記載された構造の場合、この上流の帯電ローラは、芯金の周囲に金属導体層を配置したハードローラである。このため、感光ドラムとのニップ幅を確保できず、帯電不良が生じる可能性があると共に、接触圧が大きくなって感光ドラムの表面が損傷する可能性がある。このため、特許文献2に記載された構造で、上流の帯電ローラを接触式とする構造は採用できない。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑み、接触帯電方式の構造で、帯電音を軽減すると共に、装置の長寿命化を図れる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、帯電面が移動する被帯電体と、該帯電面の移動方向に並べて配置され、該被帯電体との間に電圧を印加することにより該帯電面を帯電する複数の帯電部材と、を備えた帯電装置において、前記複数の帯電部材は、芯金の周囲に弾性層を有すると共に、前記帯電面に接触して配置され、前記各帯電部材のうち、前記帯電面の移動方向最上流に配置される帯電部材は、直流電圧を印加され、前記帯電面の移動方向最下流に配置される帯電部材は、交流成分を含む電圧を印加され、前記最上流の帯電部材の前記帯電面に接触する表面の硬度は、前記最下流の帯電部材の該帯電面に接触する表面の硬度よりも高いことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接触帯電方式の構造で、帯電音を軽減すると共に、装置の長寿命化を図れる。即ち、複数の帯電部材のうち、微粉トナーや外添剤による汚れの影響が最も大きい最上流の帯電部材として表面の硬度が高いものを使用しているため、この最上流の帯電部材が汚れにくく、装置全体として寿命を平均的に高く保ち、高寿命化を図れる。また、表面の硬度が高い最上流の帯電部材には、直流電圧のみを印加しているため、帯電音が発生することはない。一方、交流成分を含む電圧を印加する最下流の帯電部材の表面の硬度を低くして、交流電圧による帯電音の発生を低減することができる。また、何れの帯電部材も、芯金の周囲に弾性層を有する構造としているため、表面の硬度が高い最上流の帯電部材であっても、被帯電体とのニップ幅を確保でき、帯電不良や被帯電体の帯電面の損傷が生じることを防止できる。また、何れの帯電部材も被帯電体の表面に接触させて帯電させるため、非接触方式に比べて印加電圧を低くでき、コロナ放電によるオゾンの発生を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】この画像形成装置に組み込まれる帯電装置の一部を示す概略模式図。
【図3】(a)は上流の帯電ローラの帯電による感光体表面電位グラフ、(b)は更に下流の帯電ローラの帯電を受けたときの感光体表面電位グラフ。
【図4】帯電周波数と音圧との関係を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る帯電装置の一部を概略模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図4を用いて説明する。まず、図1により画像形成装置の全体構成について簡単に説明する。図1に示す画像形成装置は、中間転写ベルト1の直線区間に、4つの画像形成部Py、Pm、Pc、Pkを配列したタンデム型フルカラー複写機である。各画像形成部Py、Pm、Pc、Pkでは、被帯電体であり、像担持体でもある感光体(感光ドラム)2にそれぞれ形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー像が、中間転写ベルト1に順次重ねられて一次転写される。中間転写ベルト1に一次転写された4色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ一括二次転写される。二次転写部T2で4色のトナー像を二次転写された記録材Pは、定着装置3で加熱加圧を受けて表面にトナー像を定着された後に、画像装置の外部へ排出される。定着装置3は、ハロゲンヒータを配置した定着ローラ4に加圧ローラ5を圧接して構成されるローラ定着器であり、記録材Pに静電的に担持されたトナー像を、熱と圧力により記録材Pの表面に固定する。
【0018】
ここで、画像形成部Py、Pm、Pc、Pkは、付設された現像装置6で用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外はほぼ同一に構成される。したがって、以下、代表して画像形成部Pyについて説明する。画像形成部Pyは、感光ドラム2の周囲に、帯電部材である第1の帯電ローラ7a及び第2の帯電ローラ7b、露光装置8、現像装置6、一次転写ローラ9、クリーニング装置10を配置する。画像形成を行う場合には、感光ドラム2の表面2a(帯電面)を、第1及び第2の帯電ローラ7a、7bにより所定の電位に帯電させ、露光装置8により帯電した感光ドラム2の表面2aに静電潜像を書き込む。そして、現像装置6により感光ドラム2の静電潜像へトナーを移動させて、静電潜像を反転現像し、感光ドラム2上にトナー像を形成する。このトナー像は、感光ドラム2と一次転写ローラ9との間で中間転写ベルト1を挟み込む一次転写部T1で、中間転写ベルト1上に転写される。一次転写部T1を通過して感光ドラム2の表面2aに残留した転写残トナーは、クリーニング装置10により除去される。
【0019】
次に、上述のような画像形成装置に組み込まれる帯電装置について、図2を用いて説明する。図2では、感光ドラム2と、第1及び第2の帯電ローラ7a、7bを抜き出して示している。感光ドラム2は、帯電特性が負帯電性の有機光導電体(OPC)であり、矢印R1の方向に回転駆動する。第1及び第2の帯電ローラ7a、7bは、感光ドラム2の表面2a(帯電面)の移動方向、即ち、矢印R1方向に並べて配置されている。また、第1及び第2の帯電ローラ7a、7bは、それぞれ感光ドラム2の表面2aに接触して配置されている。したがって、第1及び第2の帯電ローラ7a、7bは、感光ドラム2の回転に伴い矢印R2の方向にそれぞれ従動回転する。
【0020】
また、本実施形態では、感光ドラム2の回転方向上流に配置される第1の帯電ローラ7aの表面硬度を、感光ドラム2の回転方向下流に配置される第2の帯電ローラ7bの表面硬度よりも高くしている。ここで、第1の帯電ローラ7aが移動方向最上流の帯電部材に、第2の帯電ローラ7bが移動方向最下流の帯電部材に、それぞれ相当する。また、表面硬度とは、各帯電ローラ7a、7bの感光ドラム2の表面2aに接触する表面の硬度を言う。したがって、本実施形態では、第1の帯電ローラ7aをハードローラ、第2の帯電ローラ7bをソフトローラとしている。このために、第1及び第2の帯電ローラ7a、7bを、次のように構成している。
【0021】
まず、第1の帯電ローラ7aは、芯金11aの外周に、導電性弾性層12aと、高抵抗被覆層13aと、保護被覆層14aとを内径側から順次積層した3層構成を有し、表面の層が10〜10Ω程度の電気抵抗値を持つ導電性のローラである。このうちの高抵抗被覆層13aは、感光ドラム2の表面2aに存在する場合があるピンホールや傷などに対する電流リークを防止し、感光ドラム2への帯電不良を防止のために設けられている。また、保護被覆層14aは、感光ドラム2に対する帯電ローラ7aの固着を防止するために設けられている。
【0022】
また、第1の帯電ローラ7aの導電性弾性層12aは、予め硬化させた導電性ゴムチューブからなる。このような材料として、例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴムなどのゴム材料をベースとし、これに導電性を付与するためにカーボンブラックや金属粉などの導電性物質を配合している。そして、このような導電物質の配合量を調整することにより抵抗調整している。また、例えば、カーボンブラックを配合量を調整するなどして、第1の帯電ローラ7aの表面硬度を、アスカーC硬度65°としている。なお、この表面硬度は、アスカーC硬度60°〜90°とすることが好ましい。アスカーC硬度90°以下とするのは、表面硬度が高すぎると、帯電を行なうためのニップ部を確保しにくくなり、帯電不良が生じやすくなるためである。即ち、このニップ部を確保するために、アスカーC硬度90°以下とすることが好ましい。アスカーC硬度60°以上とすることが好ましい理由については後述する。
【0023】
また、第1の帯電ローラ7aの芯金11aには、電源S1が接続されている。そして、電源S1により、直流電圧である帯電バイアス電圧を芯金11aに印加するようにしている。また、芯金11aの両端部は、それぞれ軸受部材15aにより回転自在に保持されると共に、押圧ばね16aによって感光ドラム2に向かって付勢されている。そして、第1の帯電ローラ7aを感光ドラム2の表面2aに対して所定の押圧力をもって圧接させている。
【0024】
次に、第2の帯電ローラ7bも、第1の帯電ローラ7aと同様に構成している。即ち、芯金11bの外周に、導電性弾性層12bと、帯電不良防止のための高抵抗被覆層13bと、感光ドラム2との固着を防止するための保護被覆層14bとを内径側から順次積層した3層構成としている。このような第2の帯電ローラ7bは、表面の層が10〜10Ω程度の電気抵抗値を持つ導電性ローラである。
【0025】
また、第2の帯電ローラ7bの導電性弾性層12bは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム、イソプレンゴム(IR)などに、カーボンブラックや金属酸化物などの導電性物質を分散してなる。また、このようなゴム材を発泡させたものを使用しても良い。そして、このような導電物質の配合量を調整することにより抵抗調整している。なお、導電性物質を分散せずに、イオン導電性の材料を用いて抵抗調整しても良い。何れにしても、第2の帯電ローラ7bの表面硬度を、アスカーC硬度35°としている。なお、この表面硬度は、アスカーC硬度25°〜55°とすることが好ましい。アスカーC硬度25°以上とするのは、表面硬度が低すぎるとローラの形状が安定しないため、感光ドラム2との接触部であるニップ幅が大きくなりすぎて、感光ドラム2の回転の影響を大きく受け、帯電不良が生じやすくなる。即ち、このニップ幅を適切にするために、アスカーC硬度25°以上とすることが好ましい。アスカーC硬度55°以下とすることが好ましい理由については後述する。
【0026】
また、第2の帯電ローラ7bの芯金11bには、電源S2が接続されている。そして、電源S2により、交流成分を含む電圧である帯電バイアス電圧を芯金11bに印加するようにしている。また、芯金11bの両端部は、それぞれ軸受部材15bにより回転自在に保持されると共に、押圧ばね16bによって感光ドラム2に向かって付勢されている。そして、第2の帯電ローラ7bを感光ドラム2の表面2aに対して所定の押圧力をもって圧接させている。
【0027】
上述のように構成される本実施形態の帯電装置は、次のように感光ドラム2の表面2aを帯電させる。まず、感光ドラム2の表面2aを、例えば前露光装置(図示省略)により露光して、残留電荷を除去する。そして、第1の帯電ローラ7aの位置で、この第1の帯電ローラ7aにより所定の電位に帯電される。具体的には、第1の帯電ローラ7aの芯金11aに電源S1より10〜10Vの直流電圧を印加する(DC印加方式)。これにより、概略10−5〜10−3Aの電流が流れ、図3(a)に示すように、目標電位V0に略近い電位V1に感光ドラム2の表面2aが帯電される。
【0028】
第1の帯電ローラ7aを通過した後の感光ドラム2の表面電位は、図3(a)に示すように、部分的な電位の低下Pが生じる。このような不均一な電位分布を持った感光ドラム2の表面2aは、次いで第2の帯電ローラ7bによって電位分布がならされ、図3(b)に示すように、目標電位V0の表面電位に帯電される。即ち、第2の帯電ローラ7bの芯金11bに、電源S2により直流電圧に交流電圧が重畳された振動電圧を印加する。この際、図3(a)に示した、感光ドラム2の表面2aの電位の低い部分Pでは、第2の帯電ローラ7bとの電位差が大きいため、集中的に電荷の注入が行なわれる。したがって、第2の帯電ローラ7bに対する印加電圧を適切に設定することにより、図3(a)に示したような、感光ドラム2の表面2aの帯電電位V1の不均一性がならされる。そして、この感光ドラム2の表面2aを、図3(b)に示したような、均一な所望の表面電位V0に帯電させることができる。なお、図3(a)(b)は、感光ドラム2の走査方向(回転軸方向)位置に対する感光体表面電位を表している。
【0029】
また、本実施形態の場合、第1の帯電ローラ7aにより感光ドラム2の表面2aの帯電を殆ど行わせてしまうため、第2の帯電ローラ7bに流す電流は、1個の帯電ローラにより帯電を行なう場合と比べて少なくて済む。従って、第2の帯電ローラ7bの導電性弾性層12bや高抵抗被覆層13bの寿命を著しく延ばすことができ、帯電装置の長期安定化を図れる。
【0030】
次に、第1の帯電ローラ7aの表面硬度を、アスカーC硬度60°以上とすることが好ましい点について説明する。まず、前述したように、接触式帯電方式では、クリーニング装置10(図1)をすり抜けてきた微粉トナーや外添剤によって、接触式帯電部材(帯電ローラ)が汚染される。そして、帯電不良に起因する画像濃度ムラや、画像中の白部へのトナーの付着(カブリ)などが発生し易くなる。特に、この課題は、表面硬度が低く感光ドラム2とのニップ幅が広いソフトローラを用いた場合において顕著である。
【0031】
このため、本実施形態では、微粉トナーや外添剤による汚染の影響が大きい上流に、表面硬度が高く汚れにくいハードローラである第1の帯電ローラ7aを配置している。このため、第1の帯電ローラ7aの高寿命化を図れる。ここで、上流の第1の帯電ローラ7aのアスカーC硬度と、帯電ローラ汚染の関係を表1に示す。なお、この表1では、アスカーC硬度を35°〜65°まで変化させ、それぞれの耐久寿命を、第1又は第2の帯電ローラ7a、7bが汚染によって画像不良を発生するまでの作像枚数(A4換算)で表現している。
【0032】
【表1】

【0033】
本実施形態の画像形成装置では、OPC感光ドラム2の寿命が50000枚作像(A4換算)相当であるため、帯電ローラに求められる寿命は、それと同等の50000枚である。表1から明らかなように、第1の帯電ローラ7aをアスカーC硬度60°以上にすれば、寿命を50000枚以上とすることができ、感光ドラム2の寿命と同等以上となる。このため、帯電ローラの寿命が装置全体としての寿命には影響を及ぼさないことがわかる。したがって、微粉トナーや外添剤による汚染の影響が大きい上流の第1の帯電ローラ7aとしては、表面硬度がアスカーC硬度60°以上である帯電ローラを用いることが好ましい。
【0034】
なお、上流の第1の帯電ローラ7aとして、例えば、上述した第2の帯電ローラ7bと同等の表面硬度(アスカーC硬度35°)を有するソフトローラを用いた場合、寿命は30000枚となり感光ドラム2の寿命を下回り、装置全体としての寿命が短くなる。一方、第1の帯電ローラ7aの表面硬度を、アスカーC硬度65°以上とした場合、寿命は54000枚以上となり、感光ドラムの寿命を上回るため、長寿命化に好ましいことがわかる。但し、アスカーC硬度90°以下とすることが好ましいことは、前述した通りである。
【0035】
次に、第2の帯電ローラ7bの表面硬度を、アスカーC硬度55°以下とすることが好ましい点について説明する。まず、前述したように、AC印加方式で、且つ、接触帯電方式の帯電ローラを感光ドラム2の帯電手段として利用した場合、AC周波数に起因して所謂「帯電音」発生する可能性がある。本発明者の実験によれば、帯電音の音圧と帯電ローラのアスカーC硬度との間には相関関係が認められ、アスカーC硬度を低くすれば帯電音の音圧を低くすることができることがわかった。これは、アスカーC硬度が低くなるにつれて、帯電ローラの振動のエネルギーが低くなるためである。そこで、帯電ローラに印加する振動電圧の周波数が1500Hzの場合の、アスカーC硬度と帯電音圧の関係を表2に示す。また、帯電ローラのアスカーC硬度が65°と55°の場合の帯電周波数と音圧との関係を図4に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
本発明者の検討によれば、帯電音圧が50dB以下であれば、通常のプリント動作において帯電音が耳障りとならないことがわかった。表1及び図4から明らかなように、アスカーC硬度を55°以下にすれば、帯電周波数が1500Hzまで帯電音圧を50dB以下にすることができる。したがって、ACを印加する下流の第2の帯電ローラ7bとしては、表面硬度がアスカーC硬度55°以下である帯電ローラを用いることが好ましい。
【0038】
なお、下流の第2の帯電ローラ7bとして、例えば、上述した第1の帯電ローラ7aと同等の表面硬度(アスカーC硬度65°)を有するハードローラを用いた場合、耳障りな帯電音が発生する。一方、第2の帯電ローラ7bの表面硬度を、アスカーC硬度35°以下とした場合、殆ど気にならないレベルまで帯電音を低減することが可能である。即ち、画像形成装置の帯電音を除く騒音レベルが、35dB程度(図4の鎖線)であるため、アスカーC硬度35°以下とすれば、装置の騒音レベルに近くなり、気にならない程度まで帯電音を低減できることがわかる。但し、アスカーC硬度25°以上とすることが好ましいことは、前述した通りである。
【0039】
本実施形態によれば、接触帯電方式の構造で、帯電音を軽減すると共に、装置の長寿命化を図れる。即ち、微粉トナーや外添剤による汚れの影響が最も大きい上流の第1の帯電ローラ7aとして表面硬度が高いものを使用しているため、この第1の帯電ローラ7aが汚れにくく、装置全体として寿命を平均的に高く保ち、高寿命化を図れる。また、表面硬度が高い第1の帯電ローラには、直流電圧のみを印加しているため、帯電音が発生することはない。一方、交流成分を含む電圧を印加する下流の第2の帯電ローラ7bの表面硬度を低くして、交流電圧による帯電音の発生を低減することができる。また、何れの帯電ローラ7a、7bも、芯金11a、11bの周囲に弾性層12a、12bを有する構造としている。このため、表面硬度が高い上流の第1の帯電ローラ7aであっても、感光ドラム2とのニップ幅を確保でき、帯電不良や感光ドラム2の表面2aの損傷が生じることを防止できる。また、何れの帯電ローラ7a、7bも感光ドラム2の表面2aに接触させて帯電させるため、非接触方式に比べて印加電圧を低くでき、コロナ放電によるオゾンの発生を抑えられる。
【0040】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図5を用いて説明する。なお、本実施形態の画像形成装置の基本構成は、上述の第1の実施形態のものと同様である。従って、第1の実施形態と同一の機能、構成を有する要素には同一の符号を付し、詳しい説明及び図示は省略する。本実施形態の場合、図5に示すように、感光ドラム2の回転方向に関し、第1の帯電ローラ7aと第2の帯電ローラ7bとの間に、接触式の第3の帯電ローラ7cを配置している。なお、図5には一部不図示の部材もあるが、第3の帯電ローラ7cに関する部分以外の構成は、図2と同様である。
【0041】
このような第3の帯電ローラ7cは、芯金11cの外周に、導電性弾性層12cと、高抵抗被覆層13cと、保護被覆層14cとを内径側から順次積層した3層構成を有する導電性のローラである。また、表面の層が10〜10Ω程度の電気抵抗値を持つ。また、導電性弾性層12cは、第1の帯電ローラ7aと同様の材料製とし、第3の帯電ローラ7cの感光ドラム2の表面2aに接触する表面の硬度(表面硬度)も、第1の帯電ローラ7aの表面硬度と同じとしている。したがって、第3の帯電ローラ7cは、第1の帯電ローラ7aと同様にハードローラとしている。なお、第3の帯電ローラ7cの表面硬度は、第1の帯電ローラ7aよりも微粉トナーなどによる汚染の影響が少ないため、第1の帯電ローラ7aの表面硬度よりも低くしても良いが、第2の帯電ローラ7bの表面硬度より高くすることが好ましい。
【0042】
また、第3の帯電ローラ7cの芯金11cには、電源S3が接続されている。そして、電源S3により、直流電圧である帯電バイアス電圧を芯金11cに印加するようにしている。また、芯金11cの両端部は、それぞれ軸受部材15cにより回転自在に保持されると共に、押圧ばね16cによって感光ドラム2に向かって付勢されている。そして、第3の帯電ローラ7cを感光ドラム2の表面2aに対して所定の押圧力をもって圧接させている。
【0043】
本実施形態の場合、第3の帯電ローラ7cの位置で、第1の帯電ローラ7aにより所定の電位に帯電された感光ドラム2の表面2aを更に帯電する。具体的には、第3の帯電ローラ7cの芯金11cに電源S3より10〜2×10Vの直流電圧を印加する(DC印加方式)。これにより、概略10−5〜2×10−4Aの電流が流れ、前述の図3(a)の場合と比べ、目標電位に更に近い電位に感光ドラム2の表面2aが帯電される。また、本実施形態では、第1の帯電ローラ7aには10〜2×10Vの直流電圧を印加する。これにより、第1の帯電ローラ7aには概略10−5〜2×10−4Aの電流が流れる。なお、第3の帯電ローラ7cに印加する電圧は、第1の帯電ローラ7aに印加する電圧と同じとしても良い。何れにしても、第1の帯電ローラ7a及び第3の帯電ローラ7cにより、感光ドラム2の表面2aを目標電位に近い電位V1に帯電する。なお、電源S3と電源S1(図2参照)とを共通にしても良い。
【0044】
本実施形態の場合、3個の帯電ローラ7a、7b、7cのうち直流電圧を印加する帯電ローラ7a、7cにより、感光ドラム2の表面2aを目標電位に近い電位V1に帯電させているため、各帯電ローラ7a、7cが分担する印加電圧を更に小さくすることができる。この結果、装置を更に高寿命化させることができる。また、微粉トナーや外添剤による汚染の影響が大きい上流に、表面硬度が高く汚れにくいハードローラである第1、第3の帯電ローラ7a、7cを配置しているため、装置全体として寿命を平均的に高く保ち、高寿命化を図れる。また、第1、第3の帯電ローラ7a、7cには直流電圧を印加しているため、これら両帯電ローラ7a、7cからは帯電音が発生しない。その他の作用効果は、第1の実施形態と同様である。
【0045】
なお、上述の各実施形態では、中間転写ベルトを使用した構造について説明したが、本発明は、記録材搬送ベルトにより記録材を搬送し、この記録材に直接、各感光ドラムから画像を転写する構造にも適用可能である。また、上述のタンデム型の構造以外に、1ドラム型の構造にも適用可能である。即ち、1個の感光ドラムの周囲に複数色の現像装置を配置し、1色毎に1回転させ、4色の場合には合計4回の画像形成を1個の感光ドラムにより行なう構造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
2・・・感光ドラム(被帯電体、像担持体)、2a・・・表面(帯電面)、7a・・・第1の帯電ローラ、7b・・・第2の帯電ローラ、7c・・・第3の帯電ローラ、11a、11b、11c・・・芯金、12a、12b、12c・・・導電性弾性層(弾性層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電面が移動する被帯電体と、該帯電面の移動方向に並べて配置され、該被帯電体との間に電圧を印加することにより該帯電面を帯電する複数の帯電部材と、を備えた帯電装置において、
前記複数の帯電部材は、芯金の周囲に弾性層を有すると共に、前記帯電面に接触して配置され、
前記各帯電部材のうち、前記帯電面の移動方向最上流に配置される帯電部材は、直流電圧を印加され、前記帯電面の移動方向最下流に配置される帯電部材は、交流成分を含む電圧を印加され、
前記最上流の帯電部材の前記帯電面に接触する表面の硬度は、前記最下流の帯電部材の該帯電面に接触する表面の硬度よりも高いことを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記最上流の帯電部材の前記帯電面に接触する表面の硬度をアスカーC硬度60°以上、前記最下流の帯電部材の該帯電面に接触する表面の硬度をアスカーC硬度55°以下とすることを特徴とする、請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記最上流の帯電部材の前記帯電面に接触する表面の硬度をアスカーC硬度90°以下、前記最下流の帯電部材の該帯電面に接触する表面の硬度をアスカーC硬度25°以上とすることを特徴とする、請求項2に記載の帯電装置。
【請求項4】
像担持体と、該像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、を備えた画像形成装置において、
前記像担持体が前記被帯電体で、複数の前記帯電部材が配置され、該像担持体と該各帯電部材とを備えた帯電装置が、前記請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載の帯電装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−107532(P2011−107532A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264309(P2009−264309)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】