説明

帯電装置及び画像形成装置

【課題】帯電ローラーの荷重を軸方向の全域で均一に加える。
【解決手段】本発明に係る帯電ローラー15は、被帯電体である感光ドラム14に接触し、感光ドラム14の回動に伴って回動可能とされるロール状の感光ドラム14であって、中空の弾性部材から構成される円筒状の中空ロール100を備え、中空ロール100は、感光ドラム14との接触部で変形するとともに、感光ドラム14との非接触部で元の状態に復元しながら、感光ドラム14とともに回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナーを用いたプリンター等の機器では、帯電用の電圧を印加したロール状、ブラシ状又はブレード状の帯電部材を感光体に一定の荷重をかけながら接触させた状態で配設し、その帯電部材と像担持体との接触部付近における微小空隙で放電を発生させることにより感光体の帯電を行う方式が利用されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、帯電部材を、内部の導電性ローラーと、それに一部外接して回転可能に設けられたチューブローラからなる構造とし、チューブを内部ローラーで感光体に押し付けて帯電を行う技術が記載されている。また、特許文献2には、チューブに相当する部材硬度を上げる構成が記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、導電性帯電フィルムの内部に、フィルムを支持すると共に感光体に対する押し付け位置(NIP位置)を規制する規制ローラーを複数本設ける構成が記載されている。
【0005】
また、特許文献4には、シャフトレスの中空のローラーを、外部のケーシングで位置規制しつつ感光体に接触させる構成が記載されている。
【0006】
また、特許文献5には、中空のチューブローラの端部と、チューブと直接接しないフランジを、フランジ周りに設置されたゴムリングにより固定する構成が記載されている。この構成では、フランジは貫通シャフトで連結されており、給電はシャフトからフランジを介して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−268584号公報
【特許文献2】特開2002−55510号公報
【特許文献3】特開平11−352748号公報
【特許文献4】特開2010−2581号公報
【特許文献5】特開平8−146709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、均一帯電を行うために荷重をかけ、部材を密着させて回転させる方式では、全体を均一に押し付けるために荷重は高くなり、その結果、帯電ローラー表面の磨耗が促進されやすくなる。特に中空ではない(中実の)ローラーを用いる場合、軸方向の中央部付近での押し付け圧力が低下するため、荷重を高くすることが不可欠となり、帯電ローラーの磨耗、表面の損傷が生じ易くなる。また、微小ギャップ領域での放電に依存するため、放電ストレスによる部材劣化が進行しやすい。また、押し付け荷重が高いと、押し付け部にキャリアなどの異物が挟まりこむことにより、感光体の表面に傷が生じる問題がある。また、放電生成物や外添剤による表面フィルミング等により画像が劣化する問題がある。更には、高い荷重に起因して、輸送時や保管時に帯電ローラーの押し付け部位が変形したり、歪みなどが発生し、ローラー表面の一部のみが局所的に変形することによって、感光体への均一な帯電が困難となり、画質が劣化する問題がある。
【0009】
また、均一帯電を行うためには、帯電ローラーが感光体に対して均一な速度で従動、もしくは駆動される必要がある。しなしながら、押し付けの荷重が高くなると、帯電ローラーが滑らかに従動することが困難となり、回転と停止を微小時間に繰り返すステップ的な動きが生じてしまう。このため、感光体に所望の帯電を行うことが困難となり、画質の劣化が生じてしまう。また、特許文献1に記載された技術では、内部の摩擦抵抗等により、内部ローラー(導電ワイヤ2a)を回しても外側のチューブ部材(チューブ状抵抗層部材2b)が均一駆動されず、やはり均一な速度で従動できない問題がある。また、特許文献2のように、チューブに相当する部材の硬度を上げる方式も提案されているが、押し付け部に相当する微小エリアでの硬度が上がってしまうため、感光体に対する傷の発生を抑えることができない。また、硬度を高くすることによって、感光体との接触幅が小さくなり、帯電幅が小さくなるため、安定した帯電が困難となる。
【0010】
また、特許文献3に記載された技術では、チューブ状帯電フィルム2の内部にフィルム規制ロール4を内在させる構成のため、特許文献1と同様に、均一な従動が困難であると同時に、押し付け位置(NIP位置)でのフィルムの押し付け圧がフィルム自体の硬度に依存することになるため、押し付け圧が不安定になる問題がある。
【0011】
また、特許文献4に記載された技術では、帯電ローラー4をケーシング(規制部材5)によって保持しているが、帯電ローラー4がケーシングの内部で位置を変えてしまうため、複雑な位置制御を行う必要がある。また、帯電ローラー4をケーシングに常に接触させる必要があるため、ケーシングによる帯電ローラー4の磨耗、及びローラー表面の汚染の問題が生じてしまう。
【0012】
また、特許文献5に記載された技術では、導電性チューブ2の軸方向の両端部と中央部とで押し付けの圧力が変動してしまう問題がある。特に、中央部では圧力が不足するため、帯電ローラーの軸方向に沿って均一に帯電することは困難である。また、この構成では、感光体に対し荷重をかけた場合、内部のゴムリング5が変形し、元々弱いニップバランスが崩れやすくなる問題も生じる。
【0013】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、帯電ローラーの荷重を軸方向の全域で均一に加えることが可能な、新規かつ改良された帯電装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、被帯電体である像担持体に接触し、前記像担持体の回動に伴って回動可能とされるロール状の帯電装置であって、中空の弾性部材から構成される円筒状の中空ロールを備え、前記中空ロールは、前記像担持体との接触部で変形するとともに、前記像担持体との非接触部で元の状態に復元しながら、前記像担持体とともに回動する帯電装置が提供される。上記構成によれば、中空ロールは、像担持体との接触部で変形するとともに、像担持体との非接触部で元の状態に復元しながら、像担持体とともに回動するため、像担持体に対する押し付け力を最小限に抑えるとともに、軸方向に均一にすることが可能となる。
【0015】
また、前記中空ロールは、前記像担持体との接触部における変形により、前記像担持体との当接部において、軸方向の中心部に向かって高くなる圧力勾配を有する。この構成によれば、軸方向の中心部における押し付け圧力を確保することができ、像担持体に対する押し付け力を軸方向で均一にすることが可能となる。
【0016】
また、回転軸を有し、前記中空ロールの両端部に前記中空ロールの内径を拡げるようにして挿入され、弾性部材から構成されるフランジ部を更に備える。この構成によれば、像担持体に接触した際にフランジ部が変形して中空ロールの中央部に像担持体に向かって撓む力が生じるため、軸方向の中心部における押し付け圧力を確保することができる。
【0017】
また、前記中空ロールと、前記フランジ部の少なくとも一方は、導電性を有する。この構成によれば、フランジ部と中空ロールを介して像担持体に所定の電圧を印加することができる。
【0018】
また、前記フランジ部は、前記中空ロールを介して前記像担持体に接触し、前記像担持体の回転に伴って従動する。この構成によれば、像担持体に従動して回転しながら像担持体を帯電させることができる。
【0019】
また、前記フランジ部の前記回転軸が前記像担持体に押圧される。この構成によれば、フランジ部によって中空ロールの両端を像担持体に押し付けるとともに、フランジ部の変形によって中空ロールの中央に撓み力を生じさせることができ、この撓み力によって中空ロールの中央を像担持体に押し付けることができる。
【0020】
また、前記フランジ部と前記中空ロールが接着されている。この構成によれば、フランジ部と中空ロールを確実に固定することができる。
【0021】
また、前記中空ロールの内径には、所定形状のリブが形成されている。この構成によれば、中空ロールの強度をリブによって確保することができるため、中空ロールの厚さをより薄くして押し付け圧力を低下させることが可能となる。
【0022】
また、前記中空ロールの内径は、軸方向の中央部で最も小さく、両端部に向かって大きくなる。この構成によれば、中央部の撓み力を両端部よりも大きくすることができ、押し付け力を軸方向で均一にすることが可能となる。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、静電潜像に応じて供給されたトナーを転写して媒体上に画像形成を行う像担持体と、前記像担持体にトナーを供給する現像剤担持体と、像担持体に接触し、前記像担持体の回動に伴って回動し、前記像担持体を帯電する帯電ローラーと、を備え、前記帯電ローラーは、中空の弾性部材から構成される円筒状の中空ロールを備え、前記中空ロールは、前記像担持体との接触部で変形するとともに、前記像担持体との非接触部で元の状態に復元しながら、前記像担持体とともに回動する画像形成装置が提供される。上記構成によれば、中空ロールは、像担持体との接触部で変形するとともに、像担持体との非接触部で元の状態に復元しながら、像担持体とともに回動するため、像担持体に対する押し付け力を最小限に抑えるとともに、軸方向に均一にすることが可能となる。
【0024】
また、前記中空ロールは、前記像担持体との接触部における変形により、前記像担持体との当接部において、軸方向の中心部に向かって高くなる圧力勾配を有する。この構成によれば、軸方向の中心部における押し付け圧力を確保することができ、像担持体に対する押し付け力を軸方向で均一にすることが可能となる。
【0025】
また、回転軸を有し、前記中空ロールの両端部に前記中空ロールの内径を拡げるようにして挿入され、弾性部材から構成されるフランジ部を更に備える。この構成によれば、像担持体に接触した際にフランジ部が変形して中空ロールの中央部に像担持体に向かって撓む力が生じるため、軸方向の中心部における押し付け圧力を確保することができる。
【0026】
また、前記中空ロールと、前記フランジ部の少なくとも一方は、導電性を有する。この構成によれば、フランジ部と中空ロールを介して像担持体に所定の電圧を印加することができる。
【0027】
また、前記フランジ部は、前記中空ロールを介して前記像担持体に接触し、前記像担持体の回転に伴って従動する。この構成によれば、像担持体に従動して回転しながら像担持体を帯電させることができる。
【0028】
また、前記フランジ部の前記回転軸が前記像担持体に押圧される。この構成によれば、フランジ部によって中空ロールの両端を像担持体に押し付けるとともに、フランジ部の変形によって中空ロールの中央に撓み力を生じさせることができ、この撓み力によって中空ロールの中央を像担持体に押し付けることができる。
【0029】
また、前記フランジ部と前記中空ロールが接着されている。この構成によれば、フランジ部と中空ロールを確実に固定することができる。
【0030】
また、前記中空ロールの内径には、所定形状のリブが形成されている。この構成によれば、中空ロールの強度をリブによって確保することができるため、中空ロールの厚さをより薄くして押し付け圧力を低下させることが可能となる。
【0031】
また、前記中空ロールの内径は、軸方向の中央部で最も小さく、両端部に向かって大きくなる。この構成によれば、中央部の撓み力を両端部よりも大きくすることができ、押し付け力を軸方向で均一にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、帯電ローラーの荷重を軸方向の全域で均一に加えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態の画像形成装置の構成を示す模式図である。
【図2】帯電ローラーの構成を示す断面図である。
【図3】帯電ローラーが感光体ドラムに押し付けられた状態を示す模式図である。
【図4】感光体ドラムに押し付けられた場合の中空ロールの挙動を説明するための模式図である。
【図5】比較例として、従来の帯電ローラーが感光体ドラムに押し付けられた状態を示す模式図である。
【図6】図5の比較例において、感光体ドラムの表面での圧力分布を示す特性図である。
【図7】本実施形態の帯電ローラーを用いた場合に、感光体ドラムの表面での圧力分布(実線)を示す特性図である。
【図8】回転に伴い、中空ロールの感光体ドラムとの接触部が感光体ドラムの表面に倣って変形する様子を示す模式図である。
【図9】中空ロールを軸方向から見た状態を示す模式図である。
【図10】中空ロールの内径に軸方向に延在するを設けた例を示す模式図である。
【図11】中空ロールの肉厚を軸方向に沿って変化させた例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態の画像形成装置10の構成を示す模式図である。本実施形態による画像形成装置10は、画像信号に応じて変調されたレーザービーム12を感光体ドラム14へ走査露光して、乾式電子写真方式により紙やプラスチックシートなどの印字媒体26へ印字等を行うものである。画像形成装置10は、レーザープリンター、レーザーファクス、デジタル複写機などとして、あるいはその一部として用いることができる。
【0036】
画像形成装置10は、レーザービーム12を射出するレーザー露光ユニット(図示省略)を備えている。レーザー露光ユニットは、微小スポットに結像されたレーザービーム12を、感光体ドラム(静電潜像担持体)14上の露光位置Aにおいて、感光体ドラム14の回転軸に平行な直線上を一定方向に走査するものである。感光体ドラム14の表面にレーザービーム12が走査されると、感光体ドラム14の露光部分が非露光部分に対して相対的に正電位となる。なお、以下の説明において、感光体ドラム14、現像ローラー20などの回転体上の相対位置を表現する際には、回転方向側を下流側、反回転方向側を上流側と称する。
【0037】
感光体ドラム14は、図1中に示す矢印方向に回転する。感光体ドラム14上の露光位置Aの上流側には、感光体ドラムクリーニングユニット13、および帯電ローラー15が配置されている。感光体ドラムクリーニングユニット13は、感光体ドラム14に残留するトナーを除去し、感光体ドラム14をクリーニングする機能を有している。また、帯電ローラー15は、感光体ドラム14を所定の電位に帯電させる機能を有している。
【0038】
感光体ドラム14上の露光位置Aの下流側には、現像ユニット18が配置されている。現像ユニット18内には、所定の色を有する粉体の現像剤T(トナー)が貯留されている。トナーは、直径7〜8μm程度のポリエステル粒子に、顔料、CCA、PMMAなどが含まれたものである。現像ユニット18は、現像剤Tを摩擦帯電させて負電荷を帯びさせ、非露光部分に対して相対的に正電位とされた感光体ドラム14の露光部分に現像剤Tを供給する。これにより、現像剤Tが感光体ドラム14表面の露光部分に付着する。
【0039】
現像ユニット18内には、帯電した現像剤Tを感光体ドラム14上に供給する現像ローラー(現像剤担持体)20が設けられている。現像ローラー20は、感光体ドラム14表面に対して接触又は非接触となるように配置され、図1中の矢印方向(感光体ドラム14の回転方向に対して反対方向)に回転する。
【0040】
また、現像ユニット18内には、現像剤Tを攪拌して負電荷に帯電させる攪拌器22と、現像剤Tを現像ローラー20に供給する供給ローラー24が設けられている。供給ローラー24は、シリコンゴム、ウレタンゴムなどの発泡体からなり、図1中の矢印方向に回転し、攪拌器22で攪拌されて帯電したトナーを現像ローラー18の表面に供給する。現像ローラー20に供給された現像剤Tは、その帯電電化によるクーロン力で現像ローラー20の表面に付着する。
【0041】
感光体ドラム14と対向して、搬送ローラー26が設けられている。現像剤Tにより印字が行われた印字媒体16は、感光体ドラム14と搬送ローラー26との間に挟まれて搬送され、現像剤Tは定着ユニット(不図示)により定着される。
【0042】
現像ローラー20の表面には、現像ローラー20の回転軸に沿って板状の層規制部材28が当接している。層規制部材28は、現像ローラー11上に付着した現像剤Tの層厚を一定厚さに規制するとともに、現像ローラー20と層規制部材28の間に現像剤Tを通過させることで、現像剤Tに負電荷を帯びさせる機能を備えている。
【0043】
現像ローラー20に付着したトナーが、現像ローラー20の表面と層規制部材28との間を通過すると、−25〜−15[μC/g]程度の負電荷を帯びる。また、トナーが現像ローラー20の表面と層規制部材28との間を通過すると、直径7〜8μm程度の粒子からなるトナーが、現像ローラー20の表面で3〜4層程度の厚さに均一化される。
【0044】
上述したように、レーザービーム12による感光体ドラム14の露光部分は、非露光部分に対して相対的に正電位とされる。現像ローラー20の回転により、負電荷に帯電した現像剤Tが感光体ドラム14の表面近傍に搬送されると、現像剤Tは感光体ドラム14の露光部分に付着する。露光部分に付着した現像剤Tは、感光体ドラム14の回転によって印字媒体16上に供給される。これにより、レーザービーム12による露光部分に応じて、現像剤Tにより印字媒体16上に印字が行われる。
【0045】
図2は、帯電ローラー15の構成を示す断面図である。図2に示すように、帯電ローラー15は、中空の中空ロール100と、フランジ102と、回転軸104から構成されている。中空ロール100は、導電性を有するゴムなどの弾性部材によって構成され、中空のパイプ状に形成されている。中空ロール100の両端には、円錐状の側面を有するフランジ102が挿入されており、これによって、中空ロール100の両端部が拡げられている。
【0046】
フランジ102は、ゴムなどの弾性部材によって構成されている。2つのフランジ102のそれぞれには、回転軸104が挿入されている。2つのフランジ102の少なくとも一方は、導電性を有する材料から構成されている。このため、導電性を有するフランジ102に電圧を印加することにより、導電性を有する中空ロール100を介して感光体ドラム14を帯電することができる。
【0047】
図3は、帯電ローラー15が感光体ドラム14に押し付けられた状態を示す模式図である。図3に示すように、圧縮スプリングなどの弾性部材によって、帯電ローラーの回転軸104が感光体ドラム14に押し付けられる。このとき、スプリングの押し付け力により、弾性部材から構成されるフランジ102が変形する。これにより、図3に示すように、フランジ102の感光体ドラム14と接触する部位が、感光体ドラム14の表面に倣って変形する。そして、中空ロール100が感光体ドラム14の表面に押し付けられた状態となる。
【0048】
図3に示す状態では、中空ロール100の中央部が下向きに変形しており、中空ロール100の中央部に下向きの力が生じている。一方、中空ロール100の両端では、フランジ102に加わる圧縮スプリングによる荷重によって、中空ロール100が感光体ドラム14に押し付けられている。従って、軸方向の全域に渡って均一な力で帯電ローラー15を感光体ドラム100に押し付けることが可能である。
【0049】
図4は、感光体ドラム14に押し付けられた場合の中空ロール100の挙動を説明するための模式図である。ここで、図4(A)は、帯電ローラー15の単体の状態を示している。図4(B)は、帯電ローラー15の端部のフランジ102のみが感光体ドラム14に押し付けられ状態を仮定して示す模式図である。図4(B)に示すように、フランジ102が押し付けられると、帯電ローラー15の両端部において、フランジ102及び中空ロール100が矢印A1方向に変形する。このため、中空ロール15の中央部が矢印A2方向に変形し、中空ロール100が矢印A2方向に撓んだ状態が発生する。
【0050】
図4(C)は、実際に帯電ローラー15が感光体ドラム14に押し付けられた状態を示す模式図である。図4(B)に示したように、中空ロール15の中央には矢印A2方向の撓みが生じているため、中空ロール100を感光体ドラム14に押し付けた状態では、中空ロール100の中央が矢印A3方向に弾性変形する。この弾性変形によって、帯電ローラー15の軸方向の中央部では、中空ロール100が感光体ドラム14に押し付けられる。一方、帯電ローラー15の両端部では、スプリングの付勢力により、中空ロール100が感光体ドラム14に押し付けられる。従って、帯電ローラー15の両端部ではスプリングの付勢力により中空ロール100が感光体ドラム14に押し付けられ、帯電ローラー15の中央部では中空ロール100の弾性変形によって中空ロール100が感光体ドラム14に押し付けられる。これにより、中空ロール100の中央においても押し付け力を確保することができ、帯電ローラー15の軸方向に沿って、全域で均一な押し付け力を生じさせることができる。
【0051】
図5は、比較例として、従来の帯電ローラー200が感光体ドラム14に押し付けられた状態を示している。この場合、帯電ローラー200に荷重をかけると、帯電ローラー200の中央部に浮き上がりが生じてしまい、中央部における押し付けの圧力が低下してしまう。
【0052】
図6は、図5の比較例において、帯電ローラー200の押し付けによる感光体ドラム14表面での圧力分布を示す特性図である。図6において、横軸は帯電ローラー200の軸方向に沿った位置を示しており、縦軸は圧力を示している。図6に示すように、帯電ローラー200の中央部では浮き上がりが生じてしまうため、圧力が低下してしまう。このため、軸方向に沿って均一な圧力を生じさせることができないため、感光体ドラム14への帯電が不均一となり、感光体ドラム14の表面に所望の帯電状態を生じさせることができなくなる。この結果、感光体ドラム14にトナーを所望の状態に付着させることができず、画質の劣化が生じてしまう。
【0053】
図7は、本実施形態の帯電ローラー15を用いた場合に、感光体ドラム14の表面での圧力分布(実線)を示す特性図である。図7においても、図6と同様に、横軸は帯電ローラー15の軸方向に沿った位置を示しており、縦軸は圧力を示している。また、図7に示す破線の特性は、図6に示した比較例における圧力分布を示している。
【0054】
図7に示すように、帯電ローラー15の両端部での圧力は、図6の比較例と同様である。一方、帯電ローラー15の中央部においては、図4(B)で説明した撓んだ状態の中空ロール100が感光体ドラム14に押し付けられて、感光体ドラム14の表面に倣って弾性変形するため、中央部での圧力が比較例の圧力(図7中に破線で示す)よりも高くなる。従って、帯電ローラー15の中央部の圧力が高められることによって、軸方向の全域に渡って均一な圧力を得ることができる。
【0055】
また、以上のような構成によれば、帯電ローラー15は、中空のローラーから構成されるため、感光体ドラム14に対する押し付け圧力(NIP圧力)を十分に小さくすることができ、従来の中空ではないゴムローラと比較すると、感光体ドラム14との接触部でのトラブルを確実に抑止することができる。
【0056】
また、回転軸104を有するフランジ102を感光体ドラム14に圧接させて従動する方式であるため、感光体ドラム14に対する従動性を確実に確保することができる。また、中空ロール100の内側で、中空ロール100を拡げているフランジ部102は、押圧により感光体ドラム14側のみが変形し、中空ロール100に中央部に向かう撓み力が生じる。また、中心に向けた圧力を加えることで、この撓み力を安定させることができる。この撓み力により、帯電ローラー15の軸方向中央部の押し付け圧力が高くなり、押し付け圧力の均一性を確保することができる。
【0057】
更に、図8に示すように、中空ロール100は、回転に伴い、感光体ドラム14との接触部が感光体ドラム14の表面に倣って矢印A4方向に変形するため、感光体ドラム4の周方向に所定の幅dで感光体ドラム14表面と接触する。これにより、従来の帯電ローラー200に比べてより広い接触幅dを確保することができ、押し付け力を低下させたこととの相乗効果により、感光体ドラム14に対する押し付け圧力を大幅に低減させることができる。従って、感光体ドラム14に対するストレスを抑えることができ、感光体ドラム14に損傷を与えることを確実に抑止可能である。
【0058】
更に、図8に示すように、回転に伴い、中空ロール100の感光体ドラム14との接触部が感光体ドラム14の表面に倣って変形することにより、接触部の両側の微小ギャップでの放電による感光体ドラム14への帯電と、接触部での電荷注入による帯電の双方により、感光体ドラム14への帯電を行うことができる。従って、帯電ローラの電位が極めて低い状態であっても、電位に応じた帯電を感光体ドラム14の表面に生じさせることが可能である。図5の比較例に示した帯電ローラー200のような中実のローラーの場合、またはローラーの硬度が高い場合は、感光体ドラムとの接触部の幅が微小であるため、電荷注入による帯電を行うことができず、帯電ローラーの電位を十分に高くして微小ギャップにおける放電を生じさせる必要がある。この場合、感光体ドラム14の表面に損傷が生じ易くなる。
【0059】
従って、本実施形態によれば、帯電ローラー15を低い押し付け圧力(低NIP圧)で感光体ドラム14に押し付けることができるとともに、広い接触幅(広NIP幅)を得ることができる。この特性により、低ストレス、且つ省電力な帯電装置及びこれを用いた画像形成装置を実現することが可能となる。また、帯電ローラー15を使用した際に、感光体ドラム14に対する従動性と、軸方向の帯電均一性を、簡素な構成で実現することができる。
【0060】
次に、中空ロール100の形状について詳細に説明する。図9は、中空ロール100を軸方向から見た状態を示す模式図である。上述したように、中空ロール100は、円筒状、パイプ状に構成される。図10は、中空ロール100を軸方向から見た状態を示す模式図であって、中空ロール100の内径に軸方向に延在するリブ100aを設けた例を示す模式図である。図10に示す構成によれば、中空ロール100の強度をリブ100aによって確保することができるため、中空ロール100の厚さをより薄くすることができる。従って、感光体ドラム14に対する押し付け圧力を更に低下させることも可能である。なお、中空ロール100の内径には、螺旋状にリブを設けても良い。また、中空ロール100の内径の円周方向に延在するようにリブを設けても良い。
【0061】
また、図11は、中空ロール100の肉厚を軸方向に沿って変化させた例を示す模式図である。図11中に破線で示すように、中空ロール100の内面100bは、中空ロール100の軸方向の中央部で最も内径が小さく、中空ロール100の両端で最も内径が大きくなるように内径の大きさが例えば線形に変化するように構成される。このような構成によれば、図4(B)で説明した矢印A2方向の撓みを生じさせた場合に、中央部の撓み力をより大きくすることができる。また、中央部から両端部における内径の変化を適宜設定することで、軸方向の全域で最適な押し付け圧力が生じるようすることができる。従って、軸方向の全域において、感光体ドラム14に対する押し付け圧力を確実に均一化することが可能である。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0063】
10 画像形成装置
14 感光ドラム
15 帯電ローラー
20 現像ローラー
100 中空ロール
100a リブ
100b 中空ロールの内面
102 フランジ部
104 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被帯電体である像担持体に接触し、前記像担持体の回動に伴って回動可能とされるロール状の帯電装置であって、
中空の弾性部材から構成される円筒状の中空ロールを備え、
前記中空ロールは、前記像担持体との接触部で変形するとともに、前記像担持体との非接触部で元の状態に復元しながら、前記像担持体とともに回動することを特徴とする、帯電装置。
【請求項2】
前記中空ロールは、前記像担持体との接触部における変形により、前記像担持体との当接部において、軸方向の中心部に向かって高くなる圧力勾配を有することを特徴とする、請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
回転軸を有し、前記中空ロールの両端部に前記中空ロールの内径を拡げるようにして挿入され、弾性部材から構成されるフランジ部を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の帯電装置。
【請求項4】
前記中空ロールと、前記フランジ部の少なくとも一方は、導電性を有することを特徴とする、請求項3に記載の帯電装置。
【請求項5】
前記フランジ部は、前記中空ロールを介して前記像担持体に接触し、前記像担持体の回転に伴って従動することを特徴とする、請求項3に記載の帯電装置。
【請求項6】
前記フランジ部の前記回転軸が前記像担持体に押圧されることを特徴とする、請求項3に記載の帯電装置。
【請求項7】
前記フランジ部と前記中空ロールが接着されていることを特徴とする、請求項3に記載の帯電装置。
【請求項8】
前記中空ロールの内径には、所定形状のリブが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項9】
前記中空ロールの内径は、軸方向の中央部で最も小さく、両端部に向かって大きくなることを特徴とする、請求項1に記載の帯電装置。
【請求項10】
静電潜像に応じて供給されたトナーを転写して媒体上に画像形成を行う像担持体と、
前記像担持体にトナーを供給する現像剤担持体と、
像担持体に接触し、前記像担持体の回動に伴って回動し、前記像担持体を帯電する帯電ローラーと、を備え、
前記帯電ローラーは、
中空の弾性部材から構成される円筒状の中空ロールを備え、
前記中空ロールは、前記像担持体との接触部で変形するとともに、前記像担持体との非接触部で元の状態に復元しながら、前記像担持体とともに回動することを特徴とする、画像形成装置。
【請求項11】
前記中空ロールは、前記像担持体との接触部における変形により、前記像担持体との当接部において、軸方向の中心部に向かって高くなる圧力勾配を有することを特徴とする、請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
回転軸を有し、前記中空ロールの両端部に前記中空ロールの内径を拡げるようにして挿入され、弾性部材から構成されるフランジ部を更に備えることを特徴とする、請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記中空ロールと、前記フランジ部の少なくとも一方は、導電性を有することを特徴とする、請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記フランジ部は、前記中空ロールを介して前記像担持体に接触し、前記像担持体の回転に伴って従動することを特徴とする、請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記フランジ部の前記回転軸が前記像担持体に押圧されることを特徴とする、請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記フランジ部と前記中空ロールが接着されていることを特徴とする、請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記中空ロールの内径には、所定形状のリブが形成されたことを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記中空ロールの内径は、軸方向の中央部で最も小さく、両端部に向かって大きくなることを特徴とする、請求項10に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−128274(P2012−128274A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280935(P2010−280935)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】