説明

帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置

【課題】像担持体と帯電部材との間の微少間隙に異物を挟み込んでも、帯電部材の表面への異物の埋没による、異常画像の発生を防止する。
【解決手段】導電性支持体904と、前記導電性支持体904の上に設けられたイオン導電性を有する電気抵抗調整層903と、前記電気抵抗調整層903の上に設けられたイオン導電性を有する中間層902と、前記中間層の上に設けられた絶縁性を有する表面層901と、を有する帯電部材10において、前記中間層902が、少なくとも、ポリエーテルポリオール樹脂を含有する樹脂組成物で構成され、そして、前記表面層901が、少なくとも、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、又は、ウレタン樹脂を含有する樹脂組成物で構成されているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において用いられる帯電部材、その帯電部材を有する帯電装置、及び、その帯電装置を有するプロセスカートリッジ、並びに、そのプロセスカートリッジを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体(感光体ドラム)に対して帯電処理を行う帯電装置が用いられている。図8は、従来の帯電ローラを有する電子写真方式の画像形成装置の説明図である。
【0003】
図8において、130は、従来の電子写真方式の画像形成装置である。従来の電子写真方式の画像形成装置130は、静電潜像が形成される感光体ドラム111、感光体ドラム111に接触して帯電処理を行う帯電部材(帯電ローラ)112、レーザ光等の露光手段113、感光体ドラム111の静電潜像にトナー115を付着させるトナー担持体(現像ローラ)114、感光体ドラム111上のトナー像を記録紙117に転写処理する転写部材(転写ローラ)116、及び、転写処理後の感光体ドラム111をクリーニングするためのクリーニング部材(クリーニングブレード)118を有している。図8おいて、119は、感光体ドラム111の表面に残留したトナー115ーがクリーニング部材118により除去された排トナーであり、120は、現像装置であり、そして、121は、クリーニング装置である。なお、図8では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、本件では必要としないので、省略してある。
【0004】
次に、従来の電子写真方式の画像形成装置130の基本的な作像動作について説明する。
【0005】
感光体ドラム111に接触された帯電ローラ112に対してDC電圧をパワーパック(図示せず)から給電すると、感光体ドラム111の表面は、一様に高電位に帯電する。その直後に、画像光が感光体ドラム111の表面に露光手段113により照射されると、感光体ドラム111の照射された部分は、その電位が低下する。このような帯電ローラ112による感光体ドラム111の表面への帯電メカニズムは、帯電ローラ112と感光体ドラム111との間の微少空間におけるパッシェンの法則に従った放電であることが知られている。
【0006】
画像光は、画像の白/黒に応じた光量の分布であるので、かかる画像光が照射されると、画像光の照射によって感光体ドラム111の面に記録画像に対応する電位分布、即ち、静電潜像が形成される。このように静電潜像が形成された感光体ドラム111の部分が現像ローラ114を通過すると、その電位の高低に応じてトナーが付着し、静電画像を可視像化したトナー像が形成される。かかるトナー像が形成された感光体ドラム111の部分に、記録紙117が所定のタイミングでレジストローラ(図示せず)により搬送され、前記トナー像に重なる。そして、このトナー像が転写ローラ116によって記録紙に転写された後、該記録紙117は、感光体ドラム111から分離される。分離された記録紙117は、搬送経路を通って搬送され、定着ユニット(図示せず)によって、加熱定着された後、機外へ排出される。このようにして転写が終了すると、感光体ドラム111は、その表面がクリーニング部材118によりクリーニング処理され、さらに、クエンチングランプ(図示せず)により、残留電荷が除去されて、次回の作像処理に備えられる。
【0007】
このような画像形成装置で用いられる帯電部材としては、像担持体の表面に帯電部材が接触して帯電させる接触帯電方式のものが広く用いられているが、使用中に、像担持体の表面に残留したトナー、帯電部材の放電により発生する酸化性ガスにより劣化したトナー、トナー構成物質等の付着物質が帯電部材の表面に付着し、帯電部材が汚染されるという問題があったので、これらの付着物質を除去するために、クリーニング部材が帯電部材の表面に設置されている。しかしながら、経時では、クリーニング部材が帯電部材から除去した付着物質で汚染されるので、クリーニング部材のクリーニング能力が低下してゆき、そのために、帯電部材の表面に付着した付着物質による放電ムラが発生し、そのために、異常画像が発生するという問題があった。
【0008】
そこで、このような画像形成装置においては、像担持体に近接配置して帯電部材と像像担持体との間の一定間隙(微少間隙)を保ちながら、像担持体表面を帯電させる非接触帯電方式による帯電部材が採用されつつある。非接触帯電方式による帯電部材が用いられる場合には、帯電部材が像担持体に直接接触しないので、帯電部材の表面が汚染されにくくなり、そのために、非接触帯電方式による帯電部材は、接触方式による帯電部材に比べて、長寿命化が可能となる。
【0009】
このような非接触帯電方式による帯電部材では、像担持体と帯電部材との間に微少間隙が形成されているが、その微少間隙は、100μm以下程度のものである。したがって、微少間隙以上の大きさのごみ等の異物が微少間隙間に挟まった場合には、帯電不良による異常画像が発生するという問題があった。具体的には、異物が付着した部分では、帯電電位が低くなるので、黒ポチが発生するという問題があった。帯電部材においては、直流電圧に高圧の交流電圧が重畳して印加されるので、その帯電部材は、導電性を有している必要がある。また、帯電部材には、高電圧が印加されるので、リークによる局所的な異常放電が発生しやすくなり、そのために、帯電部材に用いられる導電機構としては、カーボンブラックのような導電剤を用いた電子導電系のものよりも、四級アンモニウム塩のような電解質塩や、エピクロルヒドリンゴムを用いたイオン導電系のものが好ましい。
【0010】
図9は、従来の帯電部材の断面図である。図9に示されているように、従来の帯電部材112は、導電性支持体112cと、前記導電性支持体112cの上に設けられた電気抵抗調整層112bと、前記電気抵抗調整層112bの上に設けられた表面層112aと、を有すしている(特許文献1を参照。)。従来の帯電部材112においては、表面層112aは、イオン導電系の材料で構成されていたので、表面層112aの性質は、柔らかく、摩擦係数が高いものとなっていた。それ故、帯電部材112と像担持体との間の微少間隙に異物を挟み込むと、像担持体の表面は、硬く、かつ、摩擦係数が低いために、帯電部材112aの表面に異物が埋没(刺さり)し、そのために、帯電部材112に当接されている清掃部材でも除去することができない、という問題があった。そこで、帯電部材の表面に粉末の固体潤滑剤を塗布して帯電部材の表面の摩擦係数を低減させることによって、帯電部材の表面に異物が付着することを防止する技術(特願2007−208086(未公開))が出願されたが、帯電部材の表面に異物が付着することをある程度防止する効果はあるものの十分ではなかった。その理由は、帯電部材の表面層の硬度は、像担持体の表面層の硬度に比べて低いので、異物が帯電部材側に押付けられ、そのために、帯電部材の表面に異物が埋没して、清掃部材でも除去不能になるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0012】
本発明は、像担持体と帯電部材との間の微少間隙に異物を挟み込んでも、帯電部材の表面への異物の埋没による、異常画像の発生を防止する帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、導電性支持体と、前記導電性支持体の上に設けられたイオン導電性を有する電気抵抗調整層と、前記電気抵抗調整層の上に設けられたイオン導電性を有する中間層と、前記中間層の上に設けられた絶縁性を有する表面層と、を有する帯電部材であって、
(イ)前記中間層が、少なくとも、ポリエーテルポリオール樹脂を含有する樹脂組成物で構成され、そして、
(ロ)前記表面層が、少なくとも、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、又は、ウレタン樹脂を含有する樹脂組成物で構成されている
ことを特徴とする帯電部材である。
【0014】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記ポリエーテルポリオール樹脂が、前記中間層を構成する全樹脂に対して、30〜60重量%の比率で含有されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記ポリエーテルポリオール樹脂におけるエチレンオキサイド換算でのポリエーテルの含有量が、10〜40重量%であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載された発明において、前記中間層を構成する樹脂が、ジアザビシクロウンデセン又はジアザビシクロノネンの有機酸塩類からなる触媒の存在下において硬化されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記表面層の最大押し込み深さ(Hmax )が、3μm以下にされていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項6に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記表面層の最大静止摩擦係数が、0.5以下にされていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項7に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記表面層の厚さが、5〜15μmにされていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項8に記載された発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載された発明において、前記帯電部材の両端部に、像担持体に当接して一定の微少間隙を形成するリング状の空隙保持部材が、設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項9に記載された発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の帯電部材を有していることを特徴とする帯電装置である。
【0022】
請求項10に記載された発明は、像担持体と帯電装置とが、一体に支持されて、画像形成装置の本体に着脱自在に固定されたプロセスカートリッジにおいて、
前記帯電装置が、請求項9に記載の帯電装置で構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0023】
請求項11に記載された発明は、プロセスカートリッジと、像担持体の表面に露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記像担持体の表面の静電潜像にトナーを供給して可視化する現像手段と、前記像担持体の表面の可視化像を転写媒体に転写する転写手段と、を少なくとも備えた画像形成装置において、
前記プロセスカートリッジが、請求項10に記載のプロセスカートリッジで構成されていることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載された発明によれば、導電性支持体と、前記導電性支持体の上に設けられたイオン導電性を有する電気抵抗調整層と、前記電気抵抗調整層の上に設けられたイオン導電性を有する中間層と、前記中間層の上に設けられた絶縁性を有する表面層と、を有する帯電部材であって、(イ)前記中間層が、少なくとも、ポリエーテルポリオール樹脂を含有する樹脂組成物で構成され、そして、(ロ)前記表面層が、少なくとも、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、又は、ウレタン樹脂を含有する樹脂組成物で構成されているので、前記表面層が前記中間層よりも硬くなり、そのために、像担持体と帯電部材との間の微少間隙に異物を挟み込んでも、帯電部材の表面への異物の埋没による、異常画像の発生を防止する帯電部材を提供することができる。
【0025】
請求項2に記載された発明によれば、前記ポリエーテルポリオール樹脂が、前記中間層を構成する全樹脂に対して、30〜60重量%の比率で含有されているので、帯電部材の低電気抵抗化をいっそう図ることができ、そのために、担持体と帯電部材との間の微少間隙を広く取ってもいっそう異常放電しにくい帯電部材を提供することができる。
【0026】
請求項3に記載された発明によれば、前記ポリエーテルポリオール樹脂におけるエチレンオキサイド換算でのポリエーテルの含有量が、10〜40重量%であるので、帯電部材の低電気抵抗化をいっそう図ることができ、そのために、像担持体と帯電部材との間の微少間隙を広く取ってもいっそう異常放電しにくい帯電部材を提供することができる。
【0027】
請求項4に記載された発明によれば、前記表面層が、それに含有されているジアザビシクロウンデセン又はジアザビシクロノネンの有機酸塩類からなる触媒の存在下において硬化されているので、ポリエーテル比率が高くなっても、硬化反応が高くなり、そのために低電気抵抗化を図った中間層を容易に得ることができ、よって、いっそう異常放電しにくい帯電部材を提供することができる。
【0028】
請求項5に記載された発明によれば、前記表面層の最大押し込み深さ(Hmax )が、3μm以下にされているので、帯電部材の表面への異物付着性を低減させて、像担持体と帯電部材との間への異物の挟み込みを防止することにより、異常画像の発生を防止することができる。
【0029】
請求項6に記載された発明によれば、前記表面層の最大静止摩擦係数が、0.5以下にされているので、帯電部材の表面への異物の付着を低減させて、像担持体と帯電部材との間への異物を挟み込み防止することにより、異常画像の発生を防止することができる。
【0030】
請求項7に記載された発明によれば、前記表面層の厚さが、5〜15μmとされているので、絶縁性による帯電不良を防止し、かつ、帯電部材表面への異物の付着を防止して、異常画像発生を防止することができる。
【0031】
請求項8に記載された発明によれば、前記帯電部材の両端部に、像担持体に当接して一定の微少間隙を形成するリング状の空隙保持部材が、設けられているので、像担持体の表面に残存したトナー等の残存物質が帯電部材の表面にいっそう付着し難くなる。
【0032】
請求項9に記載された発明によれば、請求項1〜8のいずれか1項に記載の帯電部材を有している帯電装置であるので、像担持体と帯電部材との間の微少間隙に異物を挟み込んでも、帯電部材の表面への異物の埋没による、異常画像の発生を防止する帯電装置を提供することができる。
【0033】
請求項10に記載された発明によれば、像担持体と帯電装置とが、一体に支持されて、画像形成装置の本体に着脱自在に固定されたプロセスカートリッジにおいて、前記帯電装置が、請求項9に記載の帯電装置で構成されているので、像担持体と帯電部材との間の微少間隙に異物を挟み込んでも、帯電部材の表面への異物の埋没による、異常画像の発生を防止し、しかも、像担持体と帯電部材との微少間隙を高精度に維持したまま交換作業を容易にしてユーザーメンテナンスを可能とするプロセスカートリッジを提供することができる。
【0034】
請求項11に記載された発明によれば、プロセスカートリッジと、像担持体の表面に露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記像担持体の表面の静電潜像にトナーを供給して可視化する現像手段と、前記像担持体の表面の可視化像を転写媒体に転写する転写手段と、を少なくとも備えた画像形成装置において、前記プロセスカートリッジが、請求項10に記載のプロセスカートリッジで構成されているので、像担持体と帯電部材との間の微少間隙に異物を挟み込んでも、帯電部材の表面への異物の埋没による、異常画像の発生を防止し、しかも、長期に渡って安定した画像を得る画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態を示す帯電部材(帯電ローラ)断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す帯電部材(帯電ローラ)を像担持体上に配置した状態を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す画像形成装置の概略説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示す画像形成装置における画像形成部の構成を示す概略説明図である。
【図5】オイラーベルト法を説明するための示説明図である。
【図6】対面角136゜のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子に連続的に5mNの加重を10秒かけた際のその加重下での押し込み深さを示したプロファイルである。
【図7】帯電ローラにおけるピッチ斑点の模式図である。
【図8】従来の画像形成装置の概略説明図である。
【図9】従来の帯電部材(帯電ローラ)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0037】
図1において、9は、帯電部材である。帯電部材9は、導電性支持体904と、前記導電性支持体904の上に設けられたイオン導電性を有する電気抵抗調整層903と、前記電気抵抗調整層903の上に設けられたイオン導電性を有する中間層902と、前記中間層902の上に設けられた絶縁性を有する表面層901と、を有している。そして、前記帯電部材9においては、(イ)前記中間層902は、少なくとも、ポリエーテルポリオール樹脂を含有する樹脂組成物で構成され、そして、(ロ)前記表面層901は、少なくとも、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、又は、ウレタン樹脂を含有する樹脂組成物で構成されている。
【0038】
このように、導電性支持体904と、前記導電性支持体904の上に設けられたイオン導電性を有する電気抵抗調整層903と、前記電気抵抗調整層903の上に設けられたイオン導電性を有する中間層902と、前記中間層902の上に設けられた絶縁性を有する表面層901と、を有する帯電部材9であって、(イ)前記中間層902が、少なくとも、ポリエーテルポリオール樹脂を含有する樹脂組成物で構成され、そして、(ロ)前記表面層901が、少なくとも、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、又は、ウレタン樹脂を含有する樹脂組成物で構成されていると、前記表面層901が前記中間層901よりも硬くなり、そのために、像担持体2Yと帯電部材9との間の微少間隙Gに異物を挟み込んでも、帯電部材9の表面への異物の埋没による、異常画像の発生を防止する帯電部材9を提供することができる。
【0039】
本発明においては、前記ポリエーテルポリオール樹脂は、前記中間層902を構成する全樹脂に対して、好ましくは、30〜60重量%の比率で含有されている。このように、前記ポリエーテルポリオール樹脂が、前記中間層902を構成する全樹脂に対して、30〜60重量%の比率で含有されていると、帯電部材9の低電気抵抗化をいっそう図ることができ、そのために、像担持体2Yと帯電部材9との間の微少間隙Gを広く取ってもいっそう異常放電しにくい帯電部材9を提供することができる。
【0040】
また、本発明においては、前記ポリエーテルポリオール樹脂におけるエチレンオキサイド換算でのポリエーテルの含有量は、好ましくは、10〜40重量%である。このように、前記ポリエーテルポリオール樹脂におけるエチレンオキサイド換算でのポリエーテルの含有量が10〜40重量%であると、帯電部材9の低電気抵抗化をいっそう図ることができ、そのために、像担持体2Yと帯電部材9との間の微少間隙Gを広く取ってもいっそう異常放電しにくい帯電部材を提供することができる。
【0041】
前記中間層902は、それに含有されているジアザビシクロウンデセン又はジアザビシクロノネンの有機酸塩類からなる触媒の存在下において硬化されている。このように、前記中間層902が、それに含有されているジアザビシクロウンデセン又はジアザビシクロノネンの有機酸塩類からなる触媒の存在下において硬化されていると、ポリエーテル比率が高くなっても、硬化反応が高くなり、そのために低電気抵抗化を図った中間層902を容易に得ることができ、よって、いっそう異常放電しにくい帯電部材9を提供することができる。
【0042】
本発明においては、前記表面層901の最大押し込み深さ(Hmax )は3μm以下にされている。前記表面層901の最大押し込み深さ(Hmax )が3μmを超えると、異物が埋設しやすくなるので、本発明においては、前記表面層901の最大押し込み深さ(Hmax )は3μm以下にされている。前記表面層901の硬度は、前記表面層901の最大押し込み深さ(Hmax )によって規定される。前記最大押し込み深さ(Hmax )は、微少硬さ測定装置(フィッシャースコープ H100、Fischer社製)で測定されたものである。図6は、対面角136゜のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子に連続的に5mNの加重を10秒かけた際のその加重下での押し込み深さを示したプロファイルであるが、ユニバーサル硬さは、負荷した試験力と負荷することによって発生するくぼみの表面積との商で定義される。くぼみの表面積は、負荷した試験力で押し込まれる押し込み深さから算出される。ビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いた場合には、
ユニバーサル硬さ[HM]=試験荷重[N]/試験荷重
においての
ビッカース四角錐ダイヤモンド圧子の表面積[mm2 ]=F/26.43h2
と定義される。但し、その測定条件は、押し込み量:5mmN/10sec.、押し込み時間:10sec.、クリープ:2sec.とし、そして、その測定個所は、軸方向5カ所(ローラ中央部より4mm間隔で5カ所)とする。
【0043】
このように、前記表面層901の最大押し込み深さ(Hmax )が3μm以下にされていると、帯電部材91の表面への異物付着性を低減させて、像担持体2Yと帯電部材9との間への異物の挟み込みを防止することにより、異常画像の発生を防止することができる。
【0044】
本発明においては、前記表面層901の最大静止摩擦係数は0.5以下にされている。前記表面層901の最大静止摩擦係数が0.5をこえると、異物の付着が多くなるので、本発明においては、前記表面層901の最大静止摩擦係数は0.5以下にされている。前記「最大静止摩擦係数」は、次のようにして測定される。前記「最大静止摩擦係数」は、図5に示されているオイラーベルト法を用いて測定したものである。オイラーベルト法は、被測定物に対して基準となる摩擦部材に一定荷重を掛けて、一定速度で引っ張った際に摩擦部材が動き出す時の最大荷重より「最大静止摩擦係数」を求める方法である。図5に示されるオイラーベルト法においては、引張り速度は1mm/sされる。このように、前記表面層901の最大静止摩擦係数が0.5以下にされていると、帯電部材9の表面への異物の付着を低減させて、像担持体2Yと帯電部材9との間への異物を挟み込み防止することにより、異常画像の発生を防止することができる。
【0045】
本発明においては、前記表面層901の厚さは5〜15μmとされている。このように、前記表面層901の厚さが5〜15μmとされていると、絶縁性による帯電不良を防止し、かつ、帯電部材表面への異物の付着を防止して、異常画像発生を防止することができる。
【0046】
本発明においては、前記帯電部材9の両端部に、像担持体2Yに当接して一定の微少間隙Gを形成するリング状の空隙保持部材905が設けられている。このように、前記帯電部材9の両端部に、像担持体2Yに当接して一定の微少間隙Gを形成するリング状の空隙保持部材905が設けられていると、像担持体2Yの表面に残存したトナー等の残存物質が帯電部材9の表面にいっそう付着し難くなる。
【0047】
本発明においては、像担持体2Yに当接して一定の微少間隙Gを形成するリング状の空隙保持部材905が前記帯電部材9の両端部に設けられている。このように、像担持体2Yに当接して一定の微少間隙Gを形成するリング状の空隙保持部材905が前記帯電部材9の両端部に設けられていると、像担持体2Yの表面に残存したトナー等の残存物質が帯電部材9にいっそう付着しにくくなる。
【0048】
次に、帯電部材(帯電ローラ)90を構成する電気抵抗調整層903、中間層902、表面層901、及び、空隙保持部材について詳細に説明する。
【0049】
<電気抵抗調整層903について>
電気抵抗調整層903は、高分子型イオン導電材料が分散された熱可塑性樹脂組成物により形成されている。電気抵抗調整層903の体積固有抵抗は、好ましくは、106 〜109 Ωcmである。109 Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、また、106 Ωcmよりも体積固有抵抗が低いと、感光体2Y全体への電流集中によるリークが生じてしまう。電気抵抗抵抗調整層903は、好ましくは、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、及び、それらの共重合体(AS,ABS)、ポリアミド、ポリカーボーネート(PC)等の熱可塑性樹脂で構成される。これらの熱可塑性樹脂に分散させる高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドはイオン導電性の高分子材料であり、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。したがって、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う抵抗値のばらつきが生じない。また、帯電部材(帯電ローラ)9として、高い印加電圧を掛ける際には、電子伝導系導電剤の場合、局所的に電気の流れやすい経路が形成さるので、像担持体2Yへのリーク電流が発生し、帯電部材9の場合、異常画像である白・黒ポチ画像が発生する。ポリエーテルエステルアミドは、高分子材料であるため、ブリードアウトが生じ難い。配合量については、抵抗値を所望の値にする必要があることから、熱可塑性樹脂が20〜70重量%、高分子型イオン導電剤が80〜20重量%とする必要がある。
【0050】
さらに、抵抗値を調整するために、電解質(塩類)を添加することも可能である。塩類としては、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム等のアルカリ金属塩、リチウムビスイミド、リチウムトリスメチド等のリチウムイミド塩、エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩が挙げられる。導電剤は物性を損なわない範囲で、単独若しくは、複数をブレンドして用いても構わない。導電材料をマトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散させるためには、相溶化剤を添加することにより、帯電材料におけるミクロ分散が可能になるので、相溶化剤を適宜使用しても構わない。相溶化剤としては、反応基であるグリシジルメタクリレート基を有するものが挙げられる。その他、物性を損なわない範囲において、酸化防止剤等の添加剤を使用しても構わない。樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、各材料を混合し二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。また、電気抵抗調整層903としての導電性支持体(芯金)904上への形成は、押出成形や射出成形等の手段で導電性支持体904に前記樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。
【0051】
導電性支持体904上に電気抵抗調整層903のみを形成して帯電部材9を構成すると、電気抵抗調整層903にトナー及び、トナーの添加剤等が固着して性能低下する場合がある。このような不具合は、電気抵抗調整層903に表面層901を形成することで、防止すことができる。また、接触方式とする場合は、帯電部材9は、弾性体にする必要があるが、その場合、シリコーン、NBR、エピクロルヒドリン、EPDM等のゴム材料に種々の導電剤を添加することで弾性のある電気抵抗調整層903を形成することができる。ゴム材料の加工方法は、従来より用いられている工法を使用することができる。
【0052】
<中間層902について>
図9に示すように、従来の帯電部材112においては、電気抵抗調整層112bは、成形加工により形成されていたので、成形加工時の応力ムラにより電気抵抗ムラが生じることがあり、そのために、製品に、帯電ムラを生じるものが混じるという問題があった。そこで、本発明者らは、この電気抵抗ムラを低減させるために、(a)フッ素又はシリコンがグラフトされたポリオール樹脂、(b)ポリエーテルポリオール樹脂、(c)アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む含フッ素有機アニオン塩類、及び、(d)ポリイソシアネート、で少なくとも構成され中間層902を設けたところ、前記電気抵抗ムラを軽減できることを見出した。
【0053】
本発明における中間層902は、中間層902を構成する構成材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、この塗料をスプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の種々の手段で電気抵抗調整層903の表面にコーティングすることによって形成する。前記中間層の膜厚は、好ましくは、10〜50μmである。前記中間層902を形成する材料は、イオン導電性にするために、ポリエーテルポリオール樹脂が必要であるが、製膜性等の観点から、他のバインダー樹脂と混合しても良い。前記ポリエーテルポリオール樹脂は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体、及び、ポリエチレン−ポリエチレングリコールグラフト共重合体から選ばれるものである。これらポリエーテルポリオール樹脂の含有量は、中間層(塗膜)902を形成する全樹脂のうち、好ましくは、20〜70重量%であり、さらに好ましくは、30〜60重量%である。また、ポリエーテルポリオール中のポリエーテル量は、エチレンオキサイド換算で、好ましくは、5〜55wtであり、さらに好ましくは、10〜50wtである。
【0054】
前記中間層902を構成する材料は、1液性の塗料及び2液性の塗料のどちらも使用可能であるが、硬化剤を併用する2液性の塗料にすることより塗膜の耐久性(機械物性値)を高めることができる。2液性の塗料の場合、塗膜を加熱することにより、樹脂を架橋、硬化させる方法が一般的である。しかしながら、電気抵抗調整層903は熱可塑性樹脂で構成されているので、高い温度で加熱することができない。2液性の塗料としては、分子中に水酸基を有する主剤、及び、水酸基と架橋反応を起こす、イソシアネート系樹脂を用いることが有効である。イソシアネート系樹脂としては、ポリイソシアネート樹脂が挙げられ、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、これらの三量体、これらのアダクト体やビュウレット体、これらの重合体で2個以上のイソシアネート基を有するもの、さらにブロック化されたイソシアネート類などがあげられるが、これらに限定されるものではない。イソシアネート系樹脂を用いることにより、100℃以下の比較的低温で架橋、硬化反応が起こる。硬化剤の配合量は、官能基(−OH基)1当量に対して0.1〜5当量、好ましくは、0.5〜1.5当量である。その他、メラミン、グアナミン樹脂などのアミノ樹脂の硬化剤も基材の耐熱性に応じて適宜使用することができる。
【0055】
導電性付与剤(電解質塩)は、イオン導電性にするために、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム等の過塩素酸のアルカリ金属塩、又は、アルカリ土類金属塩、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムトリスメチド、エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等のフッ素有機アニオン塩類、変性脂肪酸ジメチルアンモニウムエトサルファート、ステアリン酸アンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート等の有機イオン性導電性物質が挙げられる。本発明者らは、それらの中でも、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、又は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムを用いることで、塗膜(中間層)を低抵抗化できることを見出した。前記電解質塩の添加量は、塗膜(中間層)を形成する全樹脂のうち、好ましくは、1〜15重量%であり、さらに好ましくは、1.5〜10wtである。導電剤は、物性を損なわない範囲で、単独、又は、複数をブレンドして用いても構わない。
【0056】
<エチレンオキサイド定量方法について>
NMR(核磁気共鳴分光法)により、ポリエーテルポリオールの1H-スペクトル測定し、プロピレンオキシドのCH3 (1.14ppm付近)、CH2 (3.41ppm付近)、メチン水素、CH2’−(3.54ppm付近)、また、エチレンオキシドのCH2 (3.66ppm付近)ピークの存在より、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのポリエーテルポリエーテルであることが判る。NMRスペクトルの1.14、3.54、3.66ppm付近のピーク面積比より、エチレンオキシドの含有率を求めた。ピーク面積はピークを垂直に分割して計算したものである。
【0057】
<表面層901について>
本発明における表面層901は、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂又はウレタン樹脂を含む材料で形成されている。これらの材料は、非粘着性であるので、表面層901を構成する材料として優れている。特に、フッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂を含む材料は、摩擦係数も低いので、トナー固着防止、及び、異物付着防止の面で好ましい。また、前記表面層901を中間層902の上へ形成するには、前記表面層901を構成する材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、この塗料をスプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の手段で被覆して形成する。表面層901は、導電性にしないことが好ましい。導電性にする場合、カーボンブラックのような電子導電タイプの導電剤は、局所リークによる異常放電が発生するため使用できない。また、イオン導電にする場合は、表面層901が低硬度化したり、また、表面層901の粘着性が増加したりするので、本発明の課題、即ち、像担持体と帯電部材との間の微少間隙に異物を挟み込んでも、帯電部材の表面への異物の埋没による、異常画像の発生を防止する、という課題を解決することが難しくなる。したがって、本発明においては、表面層901は絶縁性にされる。本発明における表面層901の膜厚は、好ましくは、15μm以下であり、さらに好ましくは、5〜15μmである。表面層901の膜厚が15μmより厚くなりすぎると帯電部材としての性能が低下して、帯電電位が低くなってしまう。また、表面層901の膜厚が5μmより薄くなると、表面層を高硬度にしたことによる効果が得られなくなる。
【0058】
前記表面層901を構成する材料も、前記中間層902と同様に、1液性のもの及び2液性のもののどちらも使用可能であるが、特に、硬化剤を併用する2液性塗料にしたものは、耐環境性、非粘着性、離型性等の特性を高めることができる。前記表面層901を構成する材料を2液性塗料にしたものは、塗布された塗膜を加熱することにより、含有される樹脂を架橋、硬化させる。しかしながら、その内側に設けられた電気抵抗調整層103は、熱可塑性の樹脂で構成されているので、これを高い温度で加熱することができない。
【0059】
2液性塗料としては、分子中に水酸基を有する主剤、及び、前記水酸基と架橋反応を起こすイソシアネート系樹脂、を用いることが有効である。イソシアネート系樹脂としては、ポリイソシアネート樹脂が挙げられるが、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、これらの三量体、これらのアダクト体やビュウレット体、これらの重合体で2個以上のイソシアネート基を有するもの、さらにブロック化されたイソシアネート類などがあげられるが、これらに限定されるものではない。このように、イソシアネート系樹脂を用いると、100℃以下の比較的低温でも架橋、硬化反応が起こる。前記硬化剤の配合量は、官能基(−OH基)1当量に対して、好ましくは、01.〜5当量、さらに好ましくは、0.5〜1.5当量である。その他、メラミン、グアナミン樹脂等のアミノ樹脂よりなる硬化剤も基材の耐熱性に応じて適宜使用することができる。表面層901をトナーに対して非粘着性にするためには、分子中にシリコーン又はフッ素をグラフトさせた樹脂を含有するものが加工し易い。
【0060】
<空隙保持部材905について>
空隙保持部材905の必要な特性としては、帯電部材9と感光体2Yとの間の微少間隙Gを環境及び長期(経時)に渡って安定して形成することであり、そのためには、吸湿性、耐摩耗性が小さい材料が望ましい。また、トナー及び、トナー添加剤が付着しにくいことや、感光体2Yと当接し、摺動するために、感光体2Yを摩耗させないということも重要であり、種々の条件に応じて、適宜選択されるものである。空隙保持部材905を構成する材料としては、具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、及び、それらの共重合体(AS,ABS)等の汎用樹脂、ポリカーボネート(PC)、ウレタン、フッ素(PTFE)等があげられる。特に、空隙保持部材905を確実に固定するためには、接着剤を塗布して接着することができる。また、空隙保持部材905は、絶縁性材料が好ましく、体積固有抵抗で10-13 Ωcm以上であることが好ましい。絶縁性が必要である理由は、感光体2Yとのリーク電流の発生を無くすためである。空隙保持部材905は、成型加工により成形されたものである。
【0061】
空隙保持部材905は、その一部が電気抵抗調整層903と高低差を有している。微少間隙Gを形成する方法としては、電気抵抗調整層903と空隙保持部材905を切削、研削等の除去加工により同時加工することにより形成することができる。空隙保持部材905と電気抵抗調整層903を同時加工することにより、微少間隙Gを高精度に形成することが可能となる。空隙保持部材905の電気抵抗調整層903と隣接する部分の高さを、電気抵抗調整層903の高さと同一、又は、低く形成することで、空隙保持部材905と感光体2Yとの接触幅が低減され、帯電部材9と感光体2Yとの微少間隙Gを高精度にすることができる。このようにすると、空隙保持部材905の電気抵抗調整層903側端部の外表面が像担持体2Yに当接することを防止することができるので、この端部を介して隣接する電気抵抗調整層903が像担持体2Yに接触してリーク電流が発生してしまうことを防止することが可能となる。また、空隙保持部材905の電気抵抗調整層903側の端部を低く加工することによって、この部分を、除去加工を行う際の切削刃等の逃げ代(逃げ加工)とすることができる。なお、逃げ代(逃げ加工)の形状は、空隙保持部材905の端部の外表面が像担持体2Yに当接しないような形状であるならばどのような形状であっても良い。更に、表面層901をコーティングする際のマスキングを電気抵抗調整層903と空隙保持部材905との境界で行うことは、ばらつきを考慮すると制御が難しいので、段差を形成する際に、電気抵抗調整層903と同一又は低く形成された空隙保持部材905まで表面層901を形成することにより、電気抵抗調整層903上に確実に表面層901を形成することができる。
【0062】
次に、本発明の帯電装置90について詳細に説明する。
【0063】
本発明の帯電装置90は、図4の点線で囲んだ部分である。この帯電装置90には、帯電部材9表面へのトナー、又は、固体潤滑剤が放電により分解した分解生成物を除去するためのクリーニング部材91が設けられている。この帯電装置90においては、連続気泡発泡体であるメラミン発泡体で構成されたクリーニング部材91が帯電部材9の表面に当接されて帯電部材9と連れ回りされる。クリーニング部材91は、ギア等を介して直接駆動させても構わないが、帯電部材9と等速にすることが、クリーニング性の点では好ましい。
【0064】
帯電装置90は、帯電部材9に電圧を印加する電源を備える(図示しない)。電圧としては、直流電圧だけでも良いが、直流電圧と交流電圧を重畳することが好ましい。特に、非接触方式の場合、像担持体(感光体)2Yと帯電部材(帯電ローラ)9との間の微少間隙(ギャップ)Gの変動により帯電ムラが生じやすく、直流電圧のみを印加すると像担持体2Yの表面電位が不均一になることがある。交流電圧を重畳した電圧では、帯電ローラ9表面が等電位となり、放電が安定して像担持体2Yを均一に帯電させることができる。重畳する電圧における交流電圧は、ピ−ク間電圧を像担持体2Yの帯電開始電圧の2倍以上にすることが好ましい。帯電開始電圧とは、帯電ローラ9に直流のみを印加した場合に像担持体2Yが帯電され始めるときの電圧の絶対値である。これにより、像担持体2Yから帯電ローラ9への逆放電が生じ、そのならし効果で像担持体2Yをより安定した状態で均一に帯電させることができる。また、交流電圧の周波数は像担持体2Yの周速度(プロセススピード)の7倍以上であることが望ましい。7倍以上の周波数にすることにより、モアレ画像が(目視)認識できなくなる。
【0065】
図2に示されているように、本発明の帯電装置90は、感光体ドラム2Yに対向配置される円筒形状の帯電部材9と、帯電部材が感光体ドラム2Yと対向する面と反対側の面に当接するように配置される円筒形状の帯電クリーニング部材91とからなる。また、帯電部材9は、その両端部を圧力付与手段である圧縮ばね907によって、それぞれ感光体ドラム2Yの側に付勢している。帯電部材9は、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。その電圧は、直流(DC)電圧のみでもよいが、DC電圧に交流(AC)電圧を重畳させた電圧であることが好ましい。AC電圧を印加することにより、感光体ドラム2Yの表面をより均一に帯電することができる。帯電部材9は、感光体ドラム2Yに接触させて設けてもよいが、本実施の形態においては、感光体ドラム2Yに対して微小間隙Gをもって配設される。この微小間隙Gは、帯電部材9の両端部の非画像形成領域に一定の厚みを有する空隙保持部材905を付与するなどして、空隙保持部材905の表面を感光体ドラム2Yの表面に当接させることで、設定することができる。
【0066】
帯電部材9と感光体ドラム2Yとの微小間隙Gは、空隙保持部材904より100μm以下、好ましくは、5〜70μm程度の範囲にする。これにより、帯電装置90の作動時における異常画像の形成を抑えることができる。微小間隙Gが、100μm以上では、感光体ドラム2Yに到達するまでの距離も長くなることで、パッシェンの法則の放電開始電圧が大きくなり、さらに、感光体ドラム2Yまでの放電空間が大きくなると、感光体ドラム2Yを所定の帯電をさせるためには、放電による放電生成物が多量に必要となり、これが画像形成後も放電空間に多量に残留し、感光体ドラム2Yに付着して、感光体ドラム2Yの経時劣化を促進する原因になる。また、この微小間隙Gが小さいと、感光体ドラム2Yまでの到達距離も短くなるので、放電エネルギーが小さくても感光体ドラム2Yを帯電させることができる。しかし、帯電部材9と感光体ドラム2Yにより形成される微少間隙Gが狭くなり、空気の流が悪くなってしまう。そのために、放電空間で形成された放電生成物は、この空間内に滞留するので、微小間隙Gが大きい場合と同様に、画像形成後も放電空間に多量に残留し、感光体ドラム2Yに付着して、感光体ドラム2Yの経時劣化を促進する原因になる。それ故、放電エネルギーを小さくして放電生成物の生成を少なくし、かつ、空気が滞留しない程度の空間を形成することが好ましい。したがって、微小間隙Gは、好ましくは、100μm以下、さらに好ましくは、5〜70μmである。これにより、ストリーマ放電の発生を防止し、放電生成物の生成を少なくして感光体ドラム2Yに堆積する量を少なくして、斑点状の画像斑や像流れを防止することができる。
【0067】
ここで、感光体ドラム2Y上に現像後に残留するトナーは、図4に示されているように、感光体ドラム2Yに対向して設けられるクリーニング装置64によりクリーニングされるが、完全に除去するのは困難であり、極わずかのトナーがクリーニング装置64を通過し、帯電装置90へと搬送されてくる。このときに、トナーの粒径が微小間隙Gより大きいと、トナーは感光体ドラム2Yや帯電部材9により摺擦されて熱を帯び、帯電部材9に融着することがある。このトナーが融着した部分は、感光体ドラム2Yに近くなるために優先的に放電が生ずる異常放電を起こす。従って、微小間隙Gは、画像形成装置1に用いられるトナーの最大粒径よりも大きいことが好ましい。
【0068】
また、帯電部材9は、図示しないハウジングの側板に設けられる軸受に嵌合され、軸受には従動しない摩擦係数の低い樹脂による軸受906に設ける圧縮ばね907により感光体ドラム表面方向に押圧されている。これにより、機械的振動、芯金903の偏位があっても一定の微小間隙Gを形成することができる。押圧する荷重は、好ましくは、4〜25N、さらに好ましくは、6〜15Nである。帯電部材9は、軸受906で固定されていても、稼動時の振動、帯電部材の表面の凹凸により微小間隙Gの大きさが変動し、微小間隙Gが適正な範囲からはずれる場合があり、このために、経時的には感光体ドラム2Yの劣化を促進することになる。ここで、荷重とは、空隙保持部材905を通して感光体ドラム2Yに加わるすべての荷重を意味する。これは、帯電部材9の両端に設けられる圧縮ばね907の力、帯電部材9とクリーニング部材91の自重等により調整できる。荷重が小さいと、帯電部材9の回転時による変動、駆動するギア等の衝撃力による跳ね上がりを抑えることができない。荷重が大きいと、帯電部材9と嵌合する軸受906との摩擦が大きくなり、経時的な摩耗量を大きくして変動を促進することになる。従って、荷重を、好ましくは、4〜25N、さらに好ましくは、6〜15Nの範囲にすることにより、微小間隙Gを適正な範囲にして、放電生成物の生成を少なくして感光体ドラム2Yに堆積する量を少なくして感光体ドラム2Yの寿命を延ばし、かつ、斑点状の異常画像や画像流を防止することができる。
【0069】
前記帯電部材9の形状は、円筒形状とし、両端をギア又は軸受906で回転可能に支持されている。このように、帯電部材9が、像担持体2Yへの最近接部から、感光体ドラム(像担持体)2Yの移動方向の上下流に漸次離間する曲面で形成されていると、像担持体2Yをより均一に帯電させることができる。像担持体2Yに対向する帯電部材9が、先鋭な部分があると、その部分の電位が高くなるために優先的に放電が開始され、像担持体2Yの均一な帯電が困難になる。従って、円筒状の形状で、曲面を有することで均一な像担持体2Yの帯電が可能になる。また、帯電部材9の放電している表面は強いストレスを受ける。放電が常に同じ面で発生するので、その劣化が促進され、さらに、削り落ちることがある。そのために、帯電部材9の全面を放電する面として使用できるのであれば、回転させることで、早期の劣化を防止することで、長期にわたって使用することができる。
【0070】
図3,4に示されているように、本発明のプロセスカートリッジ7Yは、像担持体2Yと帯電装置90とが、一体に支持されて、画像形成装置100の本体に着脱自在に固定されている。そして、かかるプロセスカートリッジにおいて、前記帯電装置90が請求項9に記載の帯電装置で構成されている。このように、像担持体2Yと帯電装置90とが、一体に支持されて、画像形成装置100の本体に着脱自在に固定されているプロセスカートリッジ7Yにおいて、前記帯電装置90が請求項9に記載の帯電装置で構成されていると、像担持体2Yと帯電部材9との間の微少間隙Gに異物を挟み込んでも、帯電部材9の表面への異物の埋没による、異常画像の発生を防止し、しかも、像担持体2Yと帯電部材9との微少間隙Gを高精度に維持したまま交換作業を容易にしてユーザーメンテナンスを可能とするプロセスカートリッジを提供することができる。
【0071】
また、図3,4に示されているように、本発明の画像形成装置1(100)は、プロセスカートリッジ7Yと、像担持体2Yの表面に露光して静電潜像を形成する露光手段Lと、像担持体2Yの表面の静電潜像にトナーを供給して可視化する現像手段11と、像担持体2Yの表面の可視化像を転写媒体(中間転写ベルト3)に転写する転写手段(転写ローラ25)と、を少なくとも備えている。そして、本発明の画像形成装置1(100)においては、前記プロセスカートリッジ7Yは、請求項7に記載のプロセスカートリッジで構成されている。このように、前記プロセスカートリッジ7Yが請求項10に記載のプロセスカートリッジで構成されていると、像担持体2Yと帯電部材9との間の微少間隙Gに異物を挟み込んでも、帯電部材9の表面への異物の埋没による、異常画像の発生を防止し、しかも、長期に渡って安定した画像を得る画像形成装置1(100)を提供することができる。
【0072】
次に、画像形成装置1(100)について詳細に説明する。図3,4に示されているように、本発明の画像形成装置1(100)は、複数の支持ローラ4,5,6に巻き掛けられて矢印A方向に回転駆動される無端状の中間転写ベルト3と、その中間転写ベルト3に対向配置された第1〜4のプロセスカートリッジ7Y,7C,7M,7BKを有している。各プロセスカートリッジ7Y〜7BKは、それぞれ異なった色のトナー像が形成されるドラム状の感光体として構成された像担持体2Y,2C,2M,2BKを有し、その各像担持体上に異なった色のトナー像がそれぞれ形成され、その各トナー像が中間転写ベルト3上に重ねて転写される。中間転写ベルト3は、像担持体2Y,2C,2M,2BKに形成されたトナー像が転写される転写材の一例を構成するものである。第1〜4のプロセスカートリッジ7Y〜7BKの各像担持体2Y〜2BK上にトナー像を形成し、そのトナー像を中間転写ベルト3に転写する構成は、トナー像の色が異なるだけで、実質的に全て同一であるため、第1のプロセスカートリッジ7Yの像担持体2Yにトナー像を形成し、これを中間転写ベルト3に転写する構成だけを説明する。
【0073】
図4は、第1のプロセスカートリッジ7Yの拡大断面図である。ここに示したプロセスカートリッジ7Yの像担持体2Yは、ユニットケース8に回転自在に支持されていて、図示していない駆動装置によって時計方向に回転駆動される。このとき、ユニットケース8に回転自在に支持された帯電ローラ9に帯電電圧が印加され、これによって像担持体2Yの表面が所定の極性に帯電される。帯電後の像担持体2Yには、プロセスカートリッジ7Yとは別体の図3に示した光書き込み装置10から出射する光変調されたレーザ光Lが照射され、これによって像担持体2Yに静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置11によってイエロートナー像として可視像化される。
【0074】
現像装置11は、ユニットケース8の一部によって構成された現像ケース12を有し、この現像ケース12には、トナーとキャリアを有する二成分系の乾式現像剤Dが収容されている。また、この現像ケース12には、現像剤Dを撹拌する2本のスクリュー13,13と、図4における反時計方向に回転駆動される現像ローラ23とが配置され、その現像ローラ23の周面に汲み上げられた現像剤は、該現像ローラ23の周面に担持されて、当該現像ローラ23の回転方向に搬送され、ドクターブレード24を通過した現像剤が現像ローラ23と像担持体2Yの間の現像領域に運ばれる。このとき、その現像剤中のトナーが像担持体2Yに形成された静電潜像に静電的に移行して、その潜像がトナー像として可視像化される。現像領域を通過した現像剤は、現像ローラ23から分離され、スクリュー13,13によって撹拌される。このようにして、像担持体2Yにトナー像が形成されるのである。キャリアを有さない一成分系現像剤を用いる現像装置を採用することもできる。
【0075】
一方、中間転写ベルト3を挟んでプロセスカートリッジ7Yと反対側には一次転写ローラ25が配置され、この一次転写ローラ25に転写電圧が印加されることによって、像担持体2Y上のトナー像が、矢印A方向に回転駆動される中間転写ベルト3上に一次転写される。トナー像転写後の像担持体2Y上に付着する転写残トナーは、クリーニング装置26によって除去される。本例のクリーニング装置26は、ユニットケース8の一部によって構成されたクリーニングケース27と、先端エッジ部が像担持体2Yの表面に圧接したクリーニングブレード28と、そのクリーニングブレード28を保持するブレードホルダ29と、クリーニングケース27内に配置されたトナー搬送スクリュー30とを有している。クリーニングブレード28は、像担持体2Yの表面移動方向に対してカウンタ向きに配置されている。前記クリーニングブレード28は、ゴムなどの弾性体により構成され、そのクリーニングブレード28の基端側は、例えば接着剤によってブレードホルダ29に固定されている。かかるクリーニングブレード28の先端エッジ部が像担持体2Yの表面に圧接することによって、像担持体2Y上の転写残トナーが掻き取り除去される。除去されたトナーは、回転駆動されるトナー搬送スクリュー30によってクリーニングケース外に搬送される。このようにして、クリーニングブレード28は、トナー像が転写材(図2の例では中間転写ベルト3)に転写された後の像担持体2Yを清掃する用をなす。
【0076】
また、プロセスカートリッジ7Yには、像担持体2Yに潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置31と、像担持体2Yに塗布された潤滑剤を均す作用を有するブレード32が設けられているが、これらについては後に詳しく説明する。
【0077】
前記したものと全く同様にして、図3に示した第2〜4の像担持体2C,2M,2BK上にシアントナー像、マゼンタトナー像及びブラックトナー像がそれぞれ形成され、これらのトナー像がイエロートナー像の転写された中間転写ベルト3上に順次重ねて一次転写され、中間転写ベルト3上に合成トナー像が形成される。トナー像転写後の各像担持体2C,2M,2BK上の転写残トナーがクリーニング装置により除去されることも第1の像担持体2Yの場合と変わりはない。
【0078】
一方、図3に示すように、画像形成装置本体1内の下部には、例えば転写紙より成る記録媒体Pを収容した給紙カセット14と、給紙ローラ15を有する給紙装置16が配置され、給紙ローラ15の回転によって最上位の記録媒体Pが矢印B方向に送り出される。送り出された記録媒体は、レジストローラ対17によって、所定のタイミングで支持ローラ4に巻き掛けられた中間転写ベルト3の部分と、これに対置された二次転写ローラ18との間に給送される。このとき、二次転写ローラ18には所定の転写電圧が印加され、これによって中間転写ベルト3上の合成トナー像が記録媒体Pに二次転写される。合成トナー像を二次転写された記録媒体Pは、さらに上方に搬送されて定着装置19を通り、このとき記録媒体P上のトナー像が熱と圧力の作用により定着される。定着装置19を通過した記録媒体Pは、画像形成装置1の上部の排紙部22に排出される。また、トナー像転写後の中間転写ベルト3上に付着する転写残トナーはクリーニング装置20によって除去される。
【0079】
図4に示したクリーニングブレード28及び像担持体2Yの摩耗を抑え、しかも、小粒径の球形トナーを用いたときも、クリーニングブレード28による高いクリーニング性能が維持されるように、本例の画像形成装置には、前述の潤滑剤塗布装置31が設けられている。かかる潤滑剤塗布装置31は、第2〜4のプロセスカートリッジ7C,7M,7BKにも設けられているが、その構成と作用は全て同一であるので、ここでも図4に示したプロセスカートリッジ7Yの潤滑剤塗布装置31だけを説明する。
【0080】
図4に示した潤滑剤塗布装置31は、像担持体2Yの表面に当接するブラシローラ33と、このブラシローラ33に対置された固形潤滑剤34と、その固形潤滑剤34を固定支持する潤滑剤ホルダ35と、その潤滑剤ホルダ35を介して固形潤滑剤34を案内するガイド36と、加圧手段の一例である圧縮コイルばね37とを有している。ブラシローラ33は、芯軸38と、その芯軸38に基端部が固定された多数のブラシ繊維39とを有している。かかるブラシローラ33は、像担持体2Yに対してほぼ平行に、しかもその像担持体2Yに沿って長く延びていて、ブラシローラ33の芯軸38の長手方向各端部が図示していない軸受を介して、ユニットケース8に対して回転自在に支持されている。画像形成動作時には、ブラシローラ33は図3における反時計方向に回転駆動される。また、固形潤滑剤34は、ブラシローラ33に対して平行に長く延びた直方体状に形成され、そのブラシローラ33を向いた側の先端面がブラシローラ33のブラシ繊維39に当接し、これとは反対の基端側の面が潤滑剤ホルダ35に固定されている。本例のガイド36は、互いに平行に間隔をあけて対向配置された一対のガイド板40,41を有し、これらのガイド板40,41は連結板42によって一体化されている。一対のガイド板40,41と連結板42は、ユニットケース8の一部によって構成されている。潤滑剤ホルダ35は、一対のガイド板40,41の間に配置され、その各ガイド板40,41の互いに対向した面に潤滑剤ホルダ35が摺動可能に当接する。潤滑剤をブラシローラへ押圧する方法は、バネ等の手段によって達成でき、潤滑剤ホルダ35を介して、固形潤滑剤34をブラシローラ33に対して加圧する。図3には、この加圧方向を矢印Cで示してある。圧縮コイルばねに代えて、ねじりコイルばねや板ばねなどから成る加圧手段を用いることもできる。
【0081】
前述したようにして、固形潤滑剤34がブラシローラ33のブラシ繊維39に圧接すると共に、そのブラシ繊維39が像担持体2Yの表面に圧接し、その際、ブラシローラ33が回転するので、固形潤滑剤34の潤滑剤がブラシ繊維39によって削り取られ、その削り取られた粉体状の潤滑剤が像担持体2Yの表面に塗布される。このように、ブラシローラ33は、固形潤滑剤34から削り取られた粉体状の潤滑剤を像担持体表面に供給する潤滑剤供給部材の一例を構成している。固形潤滑剤34はブラシローラ33によって削り取られて消費され、経時的にその厚みが減少するが、固形潤滑剤34は圧縮コイルばね37によって加圧されているので、その固形潤滑剤34は常時ブラシローラ33のブラシ繊維39に当接することができる。
【0082】
前記像担持体2Yの表面には、潤滑剤が塗布されるので、像担持体表面の摩擦係数を低く抑えることができ、これによって像担持体2Yとクリーニングブレード28の摩耗を抑え、その寿命を伸ばすことができる。しかも、小粒径で球形のトナーを用いたときも、クリーニングブレード28による像担持体2Yのクリーニング性能が大きく低下することを阻止できる。また、前記潤滑剤塗布装置31には、ガイド36が設けられ、そのガイド36によって、潤滑剤ホルダ35と固形潤滑剤34が、実質的に、ブラシローラ33に対して接近又は離間する方向、すなわち圧縮コイルばね37による加圧方向Cと、その逆の方向にだけ移動できるように、その潤滑剤ホルダ35と固形潤滑剤34が案内される。このため、固形潤滑剤34が、この方向と直交する方向Eに大きく振れ動くことはない。これによって、固形潤滑剤34は常にほぼ同じ面積でブラシローラ33に当接することができ、常にほぼ一定量の潤滑剤が、ブラシローラ33を介して、像担持体表面に供給され、像担持体表面への潤滑剤の塗布むらを防止できる。
【0083】
前記画像形成装置1(100)においては、図4に示されているように、潤滑剤ホルダ35が一対のガイド板40、41に当接し、その潤滑剤ホルダ35を介して、固形潤滑剤34がガイド36によって案内されるように構成されているが、固形潤滑剤34をガイド36によって直に案内するように構成することもできる。また、固形潤滑剤34が、実質的に、ブラシローラ33に対して接近又は離間する方向Cにだけ移動できるように、固形潤滑剤34がガイド36により案内されるとは、固形潤滑剤34が、この方向Cに対して直交する方向Eに、多少の遊び分だけ遊動してもよいことを示している。
【0084】
以上のように、前記潤滑剤塗布装置31は、回転しながら像担持体2Yに当接するブラシローラ33より成る潤滑剤供給部材と、その潤滑剤供給部材に対置された固形潤滑剤34と、該固形潤滑剤34が、実質的に、潤滑剤供給部材に対して接近又は離間する方向にだけ移動できるように、該固形潤滑剤34を案内するガイド36と、該固形潤滑剤34を潤滑剤供給部材に対して加圧する加圧手段とを有している。また、図4に示した画像形成装置100は、均しブレード32として構成された潤滑剤均し手段を有しており、この均しブレード32は、ゴムなどの弾性体より成り、その先端エッジ部が像担持体2Yの表面に当接し、その基端側がホルダ45に固定されている。均しブレード32は像担持体2Yの表面の移動方向に対してトレーリング向きに配置されている。一方、前述のブラシローラ33より成る潤滑剤供給部材は、図4から明らかなように、クリーニングブレード28よりも像担持体2Yの表面移動方向の下流側に配置されている。
【0085】
前記した画像形成装置100によれば、トナー像転写後の像担持体表面に付着する転写残トナーはクリーニングブレード28により除去され、これによってクリーンな状態となった像担持体2Yの表面に、ブラシローラ33によって潤滑剤が塗布される。次いで、その塗布された潤滑剤は、像担持体2Yの表面に当接した均しブレード32を通過するとき、像担持体2Yの表面に一様に押し広げられて均一に均される。これにより、像担持体2Yの上に厚みの均一な潤滑剤層が形成される。このように、像担持体2Yを清掃した直後に、潤滑剤を塗布し、その潤滑剤を均すことによって、像担持体2Yの表面への潤滑剤塗布量の偏りやその表面の摩擦係数の偏りが生じることを防止でき、記録媒体上に形成された画像の画質を高めることができる。しかも、均しブレード32は、像担持体表面の移動方向に対してトレーリング向きに配置されているので、像担持体2Yの駆動トルクが過度に大きくなることを阻止できる。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
ABS樹脂(GR−3000、電気化学工業社製)40重量%、及び、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)60重量%を配合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物100部にポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(モディパーCL440−G、日本油脂製)4部を添加して、溶融混練することにより、樹脂溶融組成物とした。そして、この樹脂溶融組成物を、SUM22(Niメッキ処理)からなる支持体(外径10mm)上に射出成形して電気抵抗調整層を形成し、この電気抵抗調整層のゲートカット、及び、長さ調整を行った後、その両端部に高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックPP HY540、日本ポリプロ社製)で構成されるリング状の空隙保持部材を圧入し、前記空隙保持部材の外径を12.54mm、前記電気抵抗調整部の外径を12.40mmに同時切削加工してローラを得た。そして、前記ローラにおける電気抵抗調整層の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、固形分 38%、川上塗料社製)100g、ポリエーテルポリオール樹脂(エクセノールE540、エチレンオキサイド量40重量%、固形分100%、旭硝子社製)96g重量部、イソシアネート樹脂(T4硬化剤、固形分70%、川上塗料社製)58g、有機塩触媒(U−CAT SA1、固形分100%、0.9g、及び、ビス(トリフルオロメタン)スルホニルイミド酸リチウム酢酸ブチル溶解液(固形分20%、三光化学工業社製)50g重量部、カーボンン分散液(REC−SM−23、固形分25%レジノカラー工業社製)3.7gで構成される塗料を、酢酸ブチル320g、及び、MEK36gで希釈した後、スプレー塗装により、膜厚約10μmの中間層を形成した。次ぎに、この中間層上に、アクリル変性シリコン樹脂(ムキコート3000VH、川上塗料社製)及びイソシアネート樹脂(T4硬化剤、川上塗料社製)を5:1の比率で混合した塗料300gを酢酸ブチル150gよりなる希釈溶剤で希釈後、スプレー塗装により膜厚約5μmの表面層を形成した。続いて、このようにして形成された中間層及び表面層を105℃に保持された熱風炉中で90分間を加熱硬化させるこにより、ギャップ形成部と表面層との間に約55μmの段差が形成された帯電部材(帯電ローラ)を得た。
【0087】
(実施例2)
前記表面層をフッ素系樹脂(サーフキュアDSC−201、大同塗料社製)及びイソシアネート系硬化剤(サーフキュア、大同塗料社製)を3:1の比率で混合した塗料で10μm厚に形成した以外は、実施例1と同様にして、帯電部材を得た。
【0088】
(実施例3)
前記表面層をフッ素系樹脂(FクリアKD270、関東電化工業社製)及びイソシアネート系硬化剤(LTI、共和発行ケミカル社製)を100:5.8の比率で混合した塗料で15μm厚に形成した以外は、実施例1と同様にして、帯電部材を得た。
【0089】
(実施例4)
前記表面層をアクリルウレタン(オーフレックスNo.800(N)(CG)、大橋化学社製)4重量部及び硬化剤(LTI、共和発行ケミカル社製)を4:1の比率で混合した塗料で15μm厚に形成した以外は、実施例1と同様にして、帯電部材を得た。
【0090】
(比較例1)
前記表面層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、帯電部材を得た。
【0091】
(比較例2)
前記表面層をウレタン(レザミンNE−302HV、大日精化工業社製)からなる塗料で17μm厚に形成した以外は、実施例1と同様にして、帯電部材を得た。
【0092】
(比較例3)
前記表面層をウレタン(エクセノール230、旭硝子社製)、アクリル変性シリコン樹脂(ムキコート3000VH、川上塗料社製)、及び、イソシアネート系硬化剤(T4、川上塗料社製)を55:15:30の比率で混合した塗料で18μm厚に形成した以外は、実施例1と同様にして、帯電部材を得た。
【0093】
以上、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた帯電部材(帯電ローラ)の最大押し込み深さ:Hmax (μm)及び最大静止摩擦係数を測定した。そして、前記実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた帯電部材(帯電ローラ)の表面にφ1mm以下の樹脂粉末を付着させた後、この樹脂粉末を付着させた帯電ローラを図4に示されるプロセスカートリッジに搭載し、このプロセスカートリッジを図3に示される画像形成装置(1magioMP C3000、リコー社製)に取り付けた。そして、この画像形成装置で600dpiの1×1ハーフトーン画像(A3)を連続して10枚画像出力させ、そのハーフトーン上の濃いローラピッチ斑点の発生状況(斑点の発生は図8に示される。)を目視で確認し、異物付着よる異常画像の評価をした。
【0094】
前記異物付着よる異常画像の評価基準は、
○・・・10枚以内でローラピッチの斑点が消失する、
△・・・10枚目にローラピッチの斑点が5個未満となる、
×・・・10枚目にローラピッチの斑点が5個以上となる
とした。△までが実用上許容される。
【0095】
前記異物付着よる異常画像の測定結果は、次の表1に示される。
【0096】
【表1】

【符号の説明】
【0097】
2Y 像担持体(感光体、感光体ドラム)
9 帯電部材(帯電ローラ)
90 帯電装置
901 表面層
902 中間層
903 電気抵抗調整層
904 導電性支持体(芯金)
905 空隙保持部材
906 軸受
907 圧力付与手段(圧縮ばね)
G 微少間隙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0098】
【特許文献1】特開2008−111872号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、前記導電性支持体の上に設けられたイオン導電性を有する電気抵抗調整層と、前記電気抵抗調整層の上に設けられたイオン導電性を有する中間層と、前記中間層の上に設けられた絶縁性を有する表面層と、を有する帯電部材であって、
(イ)前記中間層が、少なくとも、ポリエーテルポリオール樹脂を含有する樹脂組成物で構成され、そして、
(ロ)前記表面層が、少なくとも、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、又は、ウレタン樹脂を含有する樹脂組成物で構成されている
ことを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオール樹脂が、前記中間層を構成する全樹脂に対して、30〜60重量%の比率で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記ポリエーテルポリオール樹脂におけるエチレンオキサイド換算でのポリエーテルの含有量が、10〜40重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記中間層を構成する樹脂が、ジアザビシクロウンデセン又はジアザビシクロノネンの有機酸塩類からなる触媒の存在下において硬化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項5】
前記表面層の最大押し込み深さ(Hmax )が、3μm以下にされていることを特徴とする請求項1に記載の帯電部材。
【請求項6】
前記表面層の最大静止摩擦係数が、0.5以下にされていることを特徴とする請求項1に記載の帯電部材。
【請求項7】
前記表面層の厚さが、5〜15μm以下にされていることを特徴とする請求項1に記載の帯電部材。
【請求項8】
前記帯電部材の両端部に、像担持体に当接して一定の微少間隙を形成するリング状の空隙保持部材が、設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の帯電部材を有していることを特徴とする帯電装置。
【請求項10】
像担持体と帯電装置とが、一体に支持されて、画像形成装置の本体に着脱自在に固定されたプロセスカートリッジにおいて、
前記帯電装置が、請求項9に記載の帯電装置で構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項11】
プロセスカートリッジと、像担持体の表面に露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記像担持体の表面の静電潜像にトナーを供給して可視化する現像手段と、前記像担持体の表面の可視化像を転写媒体に転写する転写手段と、を少なくとも備えた画像形成装置において、
前記プロセスカートリッジが、請求項10に記載のプロセスカートリッジで構成されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−197590(P2010−197590A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40863(P2009−40863)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】