説明

帯電部材、帯電装置、導電性塗料、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】 均一帯電性、耐久性を向上させた帯電部材を提供することであり、また該帯電部材の生産安定性を向上させる導電性塗料を提供することである。
【解決手段】 母粒子の表面に糊剤を被覆し、該糊剤被覆粒子の表面にカーボンブラックを被覆した複合導電性粒子のカーボンブラック脱離率Sが下記数式(1)で示され、0.5<S<2.5である複合導電性粒子を含有することを特徴とする帯電部材;
カーボンブラック脱離率S(%)={(Wa−Wb)/Wa}×100 (1)
Wa:複合導電性粒子のカーボンブラック付着量
Wb:脱離後の複合導電性粒子のカーボンブラック付着量、
また、上記複合導電性粒子を分散させたことを特徴とする導電性塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電子写真装置や複写機等のOA機器に用いられる帯電部材、帯電装置、該帯電部材に用いられる導電性塗料、該帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置に用いられる帯電方式として、環境面やコスト面を考慮すると、接触帯電方式が主流になりつつある。これは、コロナ放電方式ではないため発生するオゾンの量が少なく、近接(非接触)帯電方式に比べて、被帯電体(感光ドラム)との厳正なバンドギャップを作るため機構や帯電ローラクリーナ設置等が必要なく、低コスト化が可能であるからである。
【0003】
また、接触帯電方式には、印加電圧として交流を重畳した直流電圧を用いる場合(AC+DC帯電方式)と直流電圧のみの場合(DC帯電方式)の二つの方式がある。AC+DC帯電方式は高圧の交流電源が必要になり、電子写真装置のコストアップを招くと共に、帯電部材や感光ドラムの耐久性が低下するという現象が起こる。このため、コスト面や耐久性を考慮すると、DC帯電方式が有利である。
【0004】
帯電部材としては、被帯電体に接触させる帯電部材の形状や形態から、帯電部材をローラ状部材とした帯電ローラが被帯電体に対する接触幅を小さくでき、摩擦を抑えて被帯電体の耐久性向上を図れる等の利点があり、主流になりつつある。
【0005】
また、帯電部材は、中抵抗のゴム材等を主成分とする導電性弾性層、弾性層からの移行物を遮るために設ける中間層、導電性材料等を分散させた分散液を被覆した抵抗調整層等の多層構成を取ることが知られている。この中でも、導電性弾性層、抵抗調整層の二層構成が生産性や性能面を共に満たす構成として知られており、主流になりつつある。
【0006】
抵抗調整層に導電性を寄与するために添加する導電材としては、カーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックは周知のとおり優れた導電材であるが、塗料に用いる場合には凝集性の強さとネットワークの形成し易さから、抵抗調整や塗料の安定化が難しい導電材として知られている。
【0007】
このカーボンブラックの欠点を補うために、ポリエチレン樹脂やアクリル樹脂といったカーボンブラックに比べて大きい粒子径の有機高分子の表面にカーボンブラックを乗せた導電粒子を用いる技術(例えば特許文献1)が開示されている。また、酸化鉄や大粒径シリカの表面にカーボンブラックを被覆した導電性粒子を用いる技術(例えば特許文献2)が開示されている。
【特許文献1】特開2003−162106号公報
【特許文献2】特開2004−126064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
帯電部材に要求される性能として、被帯電体である電子写真感光体の均一帯電性、長期間高電圧をかけ続けても抵抗変化の少ない通電耐久性が挙げられる。また、これらの性能を満たす帯電部材を安定に生産する必要がある。特に、帯電部材の製造工程に塗料ディッピング工程を有する場合、塗料の安定性が必要になる。
【0009】
本発明の目的は、均一帯電性、耐久性を向上させた帯電部材、帯電手段を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、上記帯電部材の生産安定性を向上させる導電性塗料を提供することである。
【0011】
本発明の更に別の目的は、上記帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に従って、母粒子の表面に糊剤を被覆し、該糊剤被覆粒子の表面にカーボンブラックを被覆した複合導電性粒子のカーボンブラック脱離率Sが下記数式(1)で示され、0.5<S<2.5である複合導電性粒子を含有することを特徴とする帯電部材が提供される;
カーボンブラック脱離率S(%)={(Wa−Wb)/Wa}×100 (1)
Wa:複合導電性粒子のカーボンブラック付着量
Wb:脱離後の複合導電性粒子のカーボンブラック付着量。
【0013】
また、本発明に従って、前記複合導電性粒子を分散させたことを特徴とする導電性塗料が提供される。
【0014】
また、本発明に従って、軸体の外周に導電性弾性層を形成し、該導電性弾性層の外周に上記導電性塗料を塗工することによって得られた抵抗調整層を形成したことを特徴とする帯電部材が提供される。
【0015】
また、本発明に従って、上記帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置が提供される。
【0016】
更に、本発明に従って、上記プロセスカートリッジ及び電子写真装置に用いられる、上記帯電部材と、該帯電部材に対して直流電圧のみを印加する手段と、を具備している帯電装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に開示した複合導電性粒子を帯電部材に含有させることで、帯電部材の均一帯電性と通電耐久性を向上させるとともに、複合導電性粒子を分散させた導電性塗料をディピングする製造工程において、これらの性能を満たす帯電部材を安定に生産することが可能となった。また、前記帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の帯電部材は、図1(b)に示すように母粒子1の表面に糊剤2を被覆し、該糊剤被覆粒子の表面にカーボンブラック3を被覆した複合導電性粒子のカーボンブラック脱離率S(%)とすると、0.5<S<2.5である複合導電性粒子を含有することを特徴とする。脱離率Sは下記数式(1)で定義する。カーボンブラックの脱離率S(%)が0に近いほど、粒子表面からのカーボンブラックの脱離量が少ないことを示す。
【0019】
カーボン脱離率(%)={(Wa−Wb)/Wa}×100 (1)
Wa:複合導電性粒子のカーボンブラック付着量
Wb:脱離後の複合導電性粒子のカーボンブラック付着量
【0020】
母粒子の粒子表面に付着しているカーボンブラックの付着量は、「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定することにより求めることができる。
【0021】
カーボンブラック脱離率S(%)は、下記の方法により求める。複合導電性粒子6gとエタノール80mlを100mlの沈降管に入れ、20分間超音波分散を行った後、120分間静置し、比重差によって電気抵抗調整材と脱離したカーボンブラックを分離する。次いで、この電気抵抗調整材に再度エタノール80mlを加え、更に20分間超音波分散を行った後、120分間静置し、電気抵抗調整材と脱離したカーボンブラックを分離する。この電気抵抗調整材を100℃で1時間乾燥させ、前述の「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定し、上記数式(1)に従って求めた値をカーボンブラック脱離率(%)とする。
【0022】
複合導電性粒子は図1(a)、(b)に示されるように、母粒子1の表面に糊剤2が被覆され、その糊剤2の表面に被覆したカーボンブラック3が多少脱離することで、帯電均一性、通電耐久性を良化させるが、図1(a)の従来技術のように過度に脱離し過ぎると生産安定性が悪化する。このため、複合導電性粒子のカーボンブラック脱離率S(%)が0.5<S<2.5の範囲にあることで、帯電均一性、通電耐久性、生産安定性を満たすことができる。
【0023】
脱離率Sが0.5より小さいと、微量に脱離しているカーボンブラックが帯電部材中から減少すると、帯電部材の帯電均一性や通電耐久性が悪化する。また、脱離率Sが2.5より大きくなると、帯電部材の製造工程において塗料ディッピング工程を有する場合、塗料の安定性が脱離したカーボンブラックの凝集によって阻害されて、帯電部材の生産安定性が満たされなくなる。この理由としては、従来のカーボンブラックの凝集性の強さだけでなく、母粒子の表面に接着しているカーボンブラックと共に糊剤も剥がれてしまうために、更に凝集性が強くなってしまう。このために、脱離率が2.5より大きくなると塗料の安定性は極端に悪くなる。
【0024】
本発明にかかる複合導電性粒子を特許文献1と比較すると、特許文献1では母粒子とカーボンブラックの接着は糊剤を用いずに物理的衝撃のみで行っている。このような方法では、複合導電性粒子のカーボンブラック脱離率Sが本発明が規定する範囲より大きくなってしまう。また、特許文献2と比較すると、特許文献2では酸化鉄、大粒径シリカを母粒子として用いているが、この場合には母粒子の比重、粒子径が大きくなると塗料の安定性が損なわれ、本発明の効果である生産安定性を満たすことができなくなる。
【0025】
また、糊剤を被覆する前に、母粒子表面をアルミニウム化合物で表面処理することで、糊剤と母粒子の接着性を向上させることができる。糊剤を被覆する前に、該母粒子表面をアルミン酸ナトリウム、又は硫酸アルミニウムで処理することにより、母粒子表面を水酸化アルミニウムで被覆することができる。このように、アルミニウム化合物で母粒子を表面処理することで、糊剤と母粒子の接着性が増大し、仮にカーボンブラックがある程度脱離したとしても、糊剤自体の遊離を避けることができるので、生産安定性が低下しない。
【0026】
母粒子としては、シリカ粒子、アルミナ粒子及び酸化チタン粒子の中から選択される。これらの母粒子の粒子径は10nm〜1μmであることが好ましく、より好ましくは10nm〜100nmである。更に、母粒子の粒子形状は、球形、粒状、多面体状、針状、紡錘状、板状等いずれの形状であっても問題ないが、特に好ましいのは球形であり、球形度の目安であるアスペクト比が1.0〜2.0の範囲であることが好ましい。
【0027】
複合導電性粒子に被覆すべきカーボンブラック被覆量は、母粒子100質量部に対して50〜200質量部であることが好ましい。カーボンブラック被覆量が50質量部より少ないと所望の導電性を得るのが困難になり、帯電均一性や通電耐久性が悪化する。また、カーボンブラック被覆量が200質量部より多くなると、複合導電性粒子のカーボンブラック脱離率Sが2.5を超え易くなり、帯電部材の生産安定性が満たされなくなる。また、被覆するカーボンブラックの特性として、一次粒子径が小さく、酸性で、DBP吸油量の値が小さいものが好ましい。このような性質を持つカーボンブラックが母粒子に対して被覆され易く、脱離し難い。
【0028】
更に、脱離し難くするためには、カーボンブラックをアルコール処理により、カーボンブラック表面の活性水素サイトのアルコキシ化行うことで、より糊剤とカーボンブラックの接着性が向上する。アルコール処理に用いられるアルコールとしては、炭素原子が4〜12の炭素鎖を持ち、不飽和炭素結合、エポキシ基、カルボニル基及びハロゲン基等の反応性の官能基を持つアルコールが好ましい。このような性質を持つアルコールの中で、5−ヘキセン−1−オール、4−ヘキセン−1−オール、1−ヘキセン−3−オール等が挙げられる。また、ジオールやトリオール等の1分子中に複数のヒドロキシル基を持つアルコールを用いてもよい。
【0029】
カーボンブラックと母粒子を接着するための糊剤としては、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基含有シラン、エポキシ基含有シラン、スチリル基含有シラン、メタクリロキシ基含有シラン及びアミノ基含有シラン等が挙げられる。
【0030】
本発明における帯電部材の構成は、図2に示されるように導電性軸体21の外周に導電性弾性層22と、更にその外周に抵抗調整層である表層23を具備した二層構成であることが好ましい。本発明の複合導電性粒子は、帯電部材中の表層23と導電性弾性層22のどちらに含有されていても問題ないが、少なくとも表層23中に含有されている必要がある。
【0031】
表層23を構成する成分として、少なくとも本発明の複合導電性粒子と樹脂成分を含まなくてはならない。樹脂成分として、例えば、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂及びポリオレフィン樹脂等が挙げられる。この中でも、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂及びフッ素樹脂を用いるのがより好ましい。この他にも表層には必要に応じて、つや消し剤やレベリング剤等を添加することも可能である。つや消し剤としては、アクリル樹脂やウレタン樹脂等で構成されたマイクロ微粒子が挙げられる。
【0032】
また、表層23の形成方法は、本発明の複合導電性粒子を分散させた導電性塗料を導電性軸体21の外周に導電性弾性層を設けた基層に対して、ディピングすることで形成される。導電性塗料の分散方法は、表層を構成する材料を、サンドミル、ペイントシェーカ、ダイノミル及びパールミル等のビーズを利用した分散装置で行う。
【0033】
導電性弾性層22を構成する成分としては、極性ゴム成分とイオン導電材を含まなくてはならない。極性ゴム成分として、例えば、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CM)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)及びアクリルゴム(ACM)等が挙げられる。また、イオン導電材として、例えば、LiClOやNaClO等の過塩素酸塩、過塩素酸4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらのゴム成分と導電材は任意に組み合わせて用いても構わないが、基層の電気抵抗率のムラを小さくすることや表層への移行成分を少なくするという目的に対して特に好ましい組み合わせとして、エピクロルヒドリンゴムと過塩素酸4級アンモニウム塩が挙げられる。この他にも導電性弾性層には必要に応じて、可塑剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤及び離型剤等の配合剤を加えることも好ましい。
【0034】
導電性弾性層22の成形方法としては、上記の導電性弾性体の原料を混合して、例えば、押し出し成形、射出成形及び圧縮成形等の公知の方法が挙げられる。また、基層は、導電性軸体の上に直接導電性弾性体を成形して作製してもよいし、チューブ形状に成形した導電性弾性層を導電性軸体に被覆させてもよい。なお、基層の作製後に表面を研磨して形状を整えてもよい。
【0035】
基層の形状は、出来上がった帯電部材と電子写真感光体との当接ニップ幅がローラの長手方向の分布でできるだけ均一になるよう、基層の中央部の直径が端部の直径よりも大きいクラウン形状となっていることが好ましい。また、出来上がったローラの当接ニップ幅が均一となるために、基層の振れが小さい方が好ましい。
【0036】
次に、本発明の電子写真装置について説明する。本発明の帯電装置は、電子写真感光体と、該電子写真感光体を所定の電位に帯電させる帯電手段と、前記電子写真感光体の帯電面に静電潜像を形成させる静電潜像形成手段と、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像にトナーを転移させて可視化しトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を転写材に転写させる転写手段とを有する画像形成装置の前記帯電装置として用いられる。
【0037】
本発明の帯電装置は、前記した帯電手段と、該帯電手段の帯電方式としてDC帯電方式(直流電圧のみ印加)で用いるのが好適である。その他の電子写真プロセスには特に限定はしない。
【0038】
本発明にかかるプロセスカートリッジは、被帯電体である電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電するための帯電体として上記帯電部材を有する帯電手段と、を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在な構成にすることが可能である。そして、被帯電体である電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電するための帯電部材と、を接触配置しても構わない。
【実施例】
【0039】
<帯電部材の製造方法>
(i)複合導電性粒子の作製
(a)母粒子の表面処理
シリカ粒子粉末20kgと水150リットルとを用いて、酸化チタン粒子粉末を含むスラリーを得た。得られたシリカ粒子粉末を含む分散スラリーのpH値を、水酸化ナトリウム水溶液を用いて10.5に調整し、次いで、該スラリーに水を加えスラリー濃度を120g/リットルに調整した。このスラリー100リットルを加熱して60℃とし、このスラリー中に1.0mol/リットルのNaAlO溶液5000mlを加え、30分間攪拌した後、酢酸を用いてpH値を7.5に調整した。この状態で30分間攪拌した後、濾過、水洗、乾燥、粉砕して粒子表面が水酸化アルミニウムにより被覆されているシリカ粒子粉末を得た。
【0040】
(b)カーボンブラックのアルコール処理
カーボンブラック(粒子径13nm、pH値2.5、DBP吸油量57ml/100g)10.0kgを120℃、10−5mmHgで、24時間脱気処理を行った。その後、窒素雰囲気下において5−ヘキセン−1−オールに浸漬し、150℃で24時間処理した。処理後の未反応のアルコール除去はろ過した後に、アセトンによる抽出及び120℃、10−3mmHgでの溶媒除去を繰り返した。このような工程を経て、カーボンブラックのオクチルアルコール処理品を9.8kg得た。
【0041】
(c)カーボンブラックの被覆
3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(商品名:KBE−402、信越化学製)140g(樹脂層構成成分)を、サンドミルを稼動させながら中間層を被覆したシリカ粒子粉末10.0kgに添加し、500N/cmの線荷重で30分間混合攪拌を行った。次に、カーボンブラックのアルコール処理品7.5kgを、サンドミルを稼動させながら添加し、更に500N/cmの線荷重で60分間混合攪拌を行い、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランを被覆後にカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて80℃で60分間乾燥を行い、複合導電性粒子Aを得た。
【0042】
(カーボンブラック脱離率Sの測定)
得られた複合導電性粒子6gとエタノール80mlを100mlの沈降管に入れ、20分間超音波分散を行った後、120分間静置し、比重差によって電気抵抗調整材と脱離したカーボンブラックを分離した。次いで、この電気抵抗調整材に再度エタノール80mlを加え、更に20分間超音波分散を行った後、120分間静置し、電気抵抗調整材と脱離したカーボンブラックを分離した。この電気抵抗調整材を100℃で1時間乾燥させ、前述の「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定し、下記数式(1)に従って求めた値をカーボンブラック脱離率(%)とした。
【0043】
カーボン脱離率(%)={(Wa−Wb)/Wa}×100 (1)
Wa:複合導電性粒子のカーボンブラック付着量
Wb:脱離後の複合導電性粒子のカーボンブラック付着量
【0044】
(ii)導電性塗料の作製
アクリルポリオール溶液100質量部(希釈溶剤:MEK、固形分20質量%、OH価50)に対して、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をOH/NCO=1.0になるように添加し、複合導電性粒子Aを20質量部、シリコーンオイルを0.07質量部添加した後、アクリルポリオールの濃度が24質量%になるようにメチルエチルケトン(MEK)を添加して濃度調整を行った。この混合液をジルコニアビーズ(平均粒径0.5mm)を分散メディアとして、横型サンドミルを3回通して分散した。ビーズを瀘過分離した分散液にて、抵抗層塗料を調製した。
【0045】
(iii)基層の作製
エピクロルヒドリンゴム100質量部、充填剤としての炭酸カルシウム30質量部、研磨性改善のための補強材としての着色グレードカーボン(一次粒子径43nm、DBP吸油量115ml/100g、pH6.6)2質量部、酸化亜鉛5質量部、可塑剤としてのDOP10質量部、老化防止剤としての2−メルカプトベンズイミダゾール0.5質量部、下記式で示される過塩素酸4級アンモニウム塩4質量部を、加圧ニーダーで30分混練した。
【0046】
【化1】

【0047】
更に、加硫促進剤としてのノクセラーDM1質量部、加硫促進剤としてノクセラーTS1.0質量部、加硫剤としての硫黄1.2質量部を加えて更に15分間オープンロールで混練した。前記ゴム混合物をゴム押し出し機で、円筒形に押し出し、裁断して加硫缶中を使用して、160℃の水蒸気中で50分間一次加硫し、導電性弾性層の一次加硫チューブを得た。円柱形の導電性軸体(鋼製、表面はニッケルメッキ)にゴムとの熱硬化性接着剤を塗布し、この軸体に、前記導電性弾性層の一次加硫チューブに挿入し、その後、電気オーブンにより160℃で2時間の二次加硫と接着剤の硬化を行い、未研磨層を得た。この未研磨層のゴム部分の両端部を所望の長さに切断した後、ゴム部分を回転砥石で研磨し、基層を得た。
【0048】
(iv)表層の製法
前記導電性塗料をディッピンク法により前記基層を有する帯電ローラの表面に塗工した。導電性塗料は、ダイアグラムポンプを使用した循環機に循環させながら塗工した。導電性塗料の流速は、300ml/minである。基層のディピング時の引き上げ速度15mm/secで塗工した。30分間風乾した後、ローラの塗工時の軸方向を反転してもう一度引き上げ速度100mm/minで塗工し、もう一度30分間風乾した後、硬化温度160℃で60分間加熱した。こうして完成した帯電部材を実施例1の帯電部材とした。帯電部材の構成は図2に示す。
【0049】
実施例2〜12並びに比較例1〜7については、上記に記載した方法に対して、表1に示した母粒子、母粒子径、カーボンブラック被覆量、樹脂層、中間層の条件に従った帯電部材を作製した。
【0050】
<帯電部材の評価>
上記のようにして得られた帯電部材を用いて、以下に示すようにして評価を行った。
【0051】
(帯電均一性)
図2に示す電子写真方式の画像形成装置に上記で得られた帯電部材を取り付けて、低温低湿(L/L:15℃/10%RH)の環境下において、印字率4%のA4画像出しを行い、初期のハーフトーン画像をプリントし、帯電ローラの帯電不良に起因した画像不良の発生について、目視にて画像評価を行った。画像不良の項目としては、帯電横スジについて評価した。
【0052】
帯電横スジとは、ハーフトーン画像上に、印字方向に対して垂直な黒色のスジ状の画像が発生する不良画像。帯電横スジに関しては、◎は得られた画像が非常に良い、○は良い、△はハーフトーン画像にやや濃度ムラあり、×はハーフトーン画像に濃度ムラ、濃度のガサツキがあることを示す。
【0053】
帯電部材の印加電圧は、直流電圧のみで感光ドラム電位が−400Vになるように調整した。
【0054】
電子写真感光体は、アルミニウムシリンダーに膜厚が18μmのOPC層をコートした反転現像方式の感光ドラムであり、最外層は変性ポリカーボネートをバインダ樹脂とする電荷輸送層である。
【0055】
現像方式は、接触現像方式を採用した。現像部材はシリコーンゴム基層にウレタン系の導電性塗料を塗工した現像ローラを用いた。
【0056】
トナーは、ワックスを中心に荷電制御剤と色素等を含むスチレンとブチルアクリレートのランダムコポリマーを重合させ、更に表面にポリエステル薄層を重合させシリカ微粒子等を外添した、ガラス転移温度63℃、質量平均粒径6μmの重合トナーである。結果を表2示す。
【0057】
(通電耐久性)
画像出し耐久試験を始める前(初期)と図3に示す電子写真方式の画像形成装置に上記で得られた帯電部材を取り付けて、低温低湿(L/L:15℃/10%RH)の環境下において、印字率4%のA4画像連続40000枚の画像出しを行った直後の、それぞれについて、帯電部材の抵抗を測定した。帯電部材の抵抗の測定方法は、図4に示すようにアルミニウムドラム43と帯電部材42を接触させ、帯電部材42の軸41の両端部に接触面積が均一になるように各500gの加重をかけ、従動回転させながら−200Vの電圧をかけて流れる電流を測定し、帯電部材の抵抗(Ω)を求めた。通電耐久性の指標としては、下記数式(2)の値で評価した:
通電耐久性=|耐久前の抵抗値−連続40000枚耐久後の抵抗値|/耐久前の抵抗値 (2)
結果を表2に示す。
【0058】
(生産安定性)
前記導電性塗料をダイアグラムポンプ循環機で一週間循環させて、初日塗工品と1週間後塗工品の帯電部材の抵抗値を測定し、その変化率Cを下記数式(3)から求めた:
抵抗変化率C=|初日塗工品の抵抗値−1週間後塗工品の抵抗値|/初日の抵抗値 (3)
この抵抗変化率Cの値を生産安定性の指標にした。尚、塗料は自動比重調整機を用いて、0.91g/mlに調整しながら循環させた。結果を表2に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の帯電部材にかかる複合導電性粒子のカーボンブランクの付着状態、(a)従来技術、(b)本発明を示す概略図である。
【図2】本発明の帯電部材にかかる帯電ローラの概略断面図である。
【図3】本発明の帯電部材の抵抗を測定する方法の概略を説明する図である。
【図4】本発明の帯電部材を有する電子写真装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 母粒子
2 糊剤
3 導電性複合粒子(カーボンブラック)
11 導電性軸体
12 導電性弾性層
13 表層
21 感光ドラム
22 帯電部材
23 レーザー
24 現像装置
24a 現像ローラ
24b 現像剤担持ローラ
24c 現像ブレード
25 転写ローラ
26 クリーニング装置
41 軸
42 帯電ローラ
43 アルミニウムローラ
S1,S2 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母粒子の表面に糊剤を被覆し、該糊剤被覆粒子の表面にカーボンブラックを被覆した複合導電性粒子のカーボンブラック脱離率Sが下記数式(1)で示され、0.5<S<2.5である複合導電性粒子を含有することを特徴とする帯電部材;
カーボンブラック脱離率S(%)={(Wa−Wb)/Wa}×100 (1)
Wa:複合導電性粒子のカーボンブラック付着量
Wb:脱離後の複合導電性粒子のカーボンブラック付着量。
【請求項2】
前記複合導電性粒子のカーボンブラックの被覆量が前記母粒子100質量部に対して50〜200質量部である請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記複合導電性粒子に被覆したカーボンブラックがアルコール処理されている請求項1又は2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記母粒子が、シリカ粒子、アルミナ粒子及び酸化チタン粒子の中から選択される請求項1〜3のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項5】
前記糊剤がシランカップリング剤である請求項1〜4のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項6】
前記糊剤を被覆する前に、前記母粒子表面をアルミニウム化合物で表面処理した請求項1〜5のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項7】
母粒子の表面に糊剤を被覆し、該糊剤被覆粒子の表面にカーボンブラックを被覆した複合導電性粒子のカーボンブラック脱離率Sが上記数式(1)で示され、0.5<S<2.5である複合導電性粒子を分散させたことを特徴とする導電性塗料。
【請求項8】
軸体の外周に導電性弾性層を形成し、該導電性弾性層の外周に請求項7に記載の導電性塗料を塗工することによって得られた抵抗調整層を形成したことを特徴とする帯電部材。
【請求項9】
前記抵抗調整層がディッピングによって形成された請求項8に記載の帯電部材。
【請求項10】
前記導電性弾性層がイオン導電材を含有した極性ゴムで構成された請求項8又は9に記載の帯電部材。
【請求項11】
被帯電体である電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電するための帯電体として請求項1〜6及び8〜10のいずれかに記載の帯電部材を有する帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及び定着手段を有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項12】
前記帯電部材に印加する電圧が直流電圧のみである請求項11に記載の電子写真装置。
【請求項13】
被帯電体である電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電するための帯電体として請求項1〜6及び8〜10のいずれかに記載の帯電部材を有する帯電手段と、を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項14】
被帯電体である電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電するための帯電部材と、を接触配置した請求項13に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項15】
請求項1〜6及び8〜10のいずれかに記載の帯電部材と、該帯電部材に対して直流電圧のみを印加する手段と、を具備していることを特徴とする帯電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−133589(P2006−133589A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323678(P2004−323678)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】