説明

帯電部材、帯電部材の製造方法、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】色点等の画像欠陥の発生を抑制する帯電部材を提供する。
【解決手段】ヒドリン系樹脂を含む導電性弾性層を有し、ヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力が45mN/m以上である帯電部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材、帯電部材の製造方法、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を採用した複写機やプリンタ等の画像形成装置の帯電装置として、スコロトロン帯電器のようなコロナ放電現象を利用したものが多用されてきたが、コロナ放電現象を利用した帯電装置の場合には、オゾンや窒素酸化物等が発生することがある。これに対して、導電性の帯電ロール等の帯電部材を像保持体に直接接触させて像保持体の帯電を行う接触帯電方式はオゾンや窒素酸化物等の発生が大幅に少なく、電源効率も良いことから、最近では主流となっている。
【0003】
帯電ロールは、導電性芯体上に帯電層として導電性弾性層、表面層等が順次形成されたものである。抵抗安定化等の観点から、導電性弾性層としてヒドリンゴム、特にエチレンオキサイドを重合したヒドリンゴムを使用したものが用いられることが多い。また、この導電性弾性層の表面に表面層を被覆することで、導電性弾性層が感光体に直接接触しないようにすることもある。
【0004】
例えば、特許文献1には、帯電ロールを構成している物質が帯電ロールから染み出して像保持体の表面に付着移行すること等を防止するために、導電性支持体の上に電気抵抗調整層および保護層を順次有する帯電部材において、電気抵抗調整層が高分子型イオン導電剤を分散した熱可塑性樹脂組成物で形成され、保護層が水系塗料の塗工により形成されている帯電部材が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、像担持体へのストレスを抑え、帯電部材と被帯電面との間隙を安定して保持するために、回動可能な像担持体の被帯電面に近接配設されて帯電処理をする帯電部材を有する画像形成装置において、像担持体は、回動方向両端側の非画像形成領域に帯電部材と当接するように部材を備え、帯電部材を当接部材に当接して被帯電面との間隙を保ちつつ回転可能に支持してなる画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−25022号公報
【特許文献2】特開2001−331015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、色点等の画像欠陥の発生を抑制する帯電部材、帯電部材の製造方法、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。すなわち、請求項1に係る発明は、ヒドリン系樹脂を含む導電性弾性層を有し、前記ヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力が45mN/m以上である帯電部材である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記ヒドリン系樹脂が、エチレンオキサイドを共重合したヒドリン系樹脂である請求項1に記載の帯電部材である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記導電性弾性層の加硫促進剤として、少なくともチウラム系加硫促進剤とチアゾール系加硫促進剤とが併用されている請求項1または2に記載の帯電部材である。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記チウラム系加硫促進剤が2種以上使用されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電部材である。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記導電性弾性層に硫黄が配合されていない請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電部材である。
【0013】
請求項6に係る発明は、溶媒を用いてヒドリン系樹脂を洗浄し、前記ヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力が45mN/m以上になるようにする洗浄工程と、前記ヒドリン系樹脂を含む組成物を加硫成型して、導電性弾性層を形成する加硫成型工程と、を含む帯電部材の製造方法である。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材と、前記帯電部材の表面を清掃する帯電部材清掃部材とを備える帯電装置である。
【0015】
請求項8に係る発明は、像保持体と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材とを備えるプロセスカートリッジである。
【0016】
請求項9に係る発明は、像保持体と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材と、前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1によると、導電性弾性層に含まれるヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力が45mN/m未満である場合に比較して、色点等の画像欠陥の発生を抑制する帯電部材を提供する。
【0018】
本発明の請求項2によると、ヒドリン系樹脂がエチレンオキサイドを共重合したヒドリン系樹脂以外の場合に比較して、帯電部材が低抵抗化するため、帯電安定性が向上する。
【0019】
本発明の請求項3によると、導電性弾性層の加硫促進剤としてチウラム系加硫促進剤とチアゾール系加硫促進剤とが併用されていない場合に比較して、導電性弾性層の成型時間が短縮される。
【0020】
本発明の請求項4によると、チウラム系加硫促進剤が2種以上使用されていない場合に比較して、良好な加硫特性が得られ、量産に適した安価な帯電部材が得られる。
【0021】
本発明の請求項5によると、導電性弾性層に硫黄が配合されている場合に比較して、色点等の画像欠陥の発生がより抑制される。
【0022】
本発明の請求項6によると、上記洗浄工程を含まない場合に比較して、色点等の画像欠陥の発生を抑制する帯電部材が得られる。
【0023】
本発明の請求項7によると、帯電部材の導電性弾性層に含まれるヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力が45mN/m未満である場合に比較して、色点等の画像欠陥の発生を抑制する帯電装置を提供する。
【0024】
本発明の請求項8によると、帯電部材の導電性弾性層に含まれるヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力が45mN/m未満である場合に比較して、色点等の画像欠陥の発生を抑制するプロセスカートリッジを提供する。
【0025】
本発明の請求項9によると、帯電部材の導電性弾性層に含まれるヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力が45mN/m未満である場合に比較して、色点等の画像欠陥の発生を抑制する画像形成装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る帯電部材を用いた帯電装置の一例の概略構成を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る帯電部材を用いた帯電装置の一例の概略構成を示す正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0028】
<帯電部材および帯電装置>
本実施形態に係る帯電部材の形状としては、特に限定されるものではないが、ロール状、ブラシ状、ベルト(チューブ)状、ブレード状などが挙げられる。これらの中でもロール状(いわゆる帯電ロール)であることが好ましい。以下、本実施形態に係る帯電部材が帯電ロールであることを前提に、導電性芯体、導電性弾性層を含む帯電層等について説明するが、もちろんこれら各層の構成材料は、他の形状の帯電部材についても同様に用いられる。
【0029】
図1は、本実施形態に係る帯電部材を備える帯電装置の一例の概略構成を示した側面図である。また、図2は、本実施形態に係る帯電部材を備える帯電装置の一例の概略構成を示した正面図である。図1の帯電装置1は、画像形成装置に備えられる像保持体の表面を帯電させる帯電部材であって、軸中心に回転する円筒状の帯電部材である帯電ロール10と、帯電ロール10に接触して帯電ロール10の表面を清掃するための帯電部材清掃部材であるクリーニングロール12とを備える。帯電ロール10は、導電性芯体14と、導電性芯体14の外周に形成された帯電層16とを備える。帯電層16は、導電性弾性層を有し、必要に応じて表面層等が形成されたものである。クリーニングロール12は、芯体18と、芯体18の外周に形成された円筒状の弾性層20とを備える。
【0030】
図2に示すように、帯電装置1において、帯電ロール10は、像保持体である感光体24に対して導電性芯体14の両端部に設置したコイルバネ26等の弾性部材により感光体24の表面に押し付けられ、感光体24に従動する。一方、クリーニングロール12は、帯電ロール10の導電性芯体14とクリーニングロール12の芯体18との軸受けの距離でベアリング28で保持され、クリーニングロール12は、予め定めた食いこみ量で帯電ロール10に従動する。なお、帯電ロール10およびクリーニングロール12はそれぞれ感光体24、帯電ロール10に従動させてもよいし、別個に駆動させてもよい。
【0031】
帯電ロールの導電性弾性層としてヒドリンゴム等のヒドリン系樹脂、特にエチレンオキサイドを重合したヒドリンゴムを使用したものが用いられることが多い。このような導電性弾性層が感光体と接触していると、例えば、長期の保管においてゴム成分中のエチレンオキサイド等の不純物の移行により感光体の表面にクラックが生じ、感光体のクラック部分は帯電不良となるため、色点や色スジ等の画像欠陥が発生する場合がある。
【0032】
本発明者らは、導電性弾性層がヒドリン系樹脂を含み、このヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力が45mN/m以上である帯電部材により、色点等の画像欠陥の発生が抑制されることを見出した。
【0033】
導電性弾性層に含まれるヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力は、45mN/m以上であり、50mN/m以上であることが好ましく、55mN/m以上であることがより好ましい。45mN/m未満であると、色点等の画像欠陥の発生が抑制されにくくなる。
【0034】
表面張力の測定は、JIS K3362に従って測定する。なお、20℃における純水の表面張力は約72mN/mである。
【0035】
ヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力を45mN/m以上にするためには、例えば、ヒドリン系樹脂に対して、純水等の水、メタノール、エタノール等のアルコール等の溶媒を用いて洗浄を施せばよい。洗浄用の溶媒としては、余分な不純物を洗い流さない等の点から、純水が最も好ましく、アルコールの場合は安全上の観点等から、エタノールが好ましい。洗浄は、例えば、浸漬洗浄、超音波洗浄等により行えばよい。
【0036】
ヒドリン系樹脂は、エピクロロヒドリンを重合成分として含む重合体であり、エピクロロヒドリンゴム等が挙げられる。また、アリルグリシジルエーテルとの2元系共重合体、エチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテルとの3元系共重合体であってもよい。ヒドリン系樹脂としてエチレンオキサイドが共重合されたヒドリンゴムを使用すると、帯電ロールが低抵抗化するため、帯電安定性が向上する。
【0037】
加硫促進剤は、導電性弾性層の加硫(架橋)反応を促進させるために用いられる配合剤である。加硫促進剤として、チウラム系加硫促進剤とチアゾール系加硫促進剤とを併用すると、成型時間が短縮される。さらにチウラム系加硫促進剤を2種類以上使用すると、良好な加硫特性が得られ、量産に適した安価な帯電部材が得られる。
【0038】
チウラム系加硫促進剤は、下記構造式で示される化合物である。チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジシクロペンタメチレンチウラムジスルフィド等が挙げられる。
【0039】
【化1】


(式中、RとR及び/またはRとRは同一であっても異なってもよく、例えば、アルキル基、アリールアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基を示し、nは1から6である。RとR及び/またはRとRは互いに結合して、ヘテロ原子を介してまたは介さずに、環を形成してもよい。アルキル基は、好ましくは炭素数1から4のアルキル基である。)
【0040】
チアゾール系加硫促進剤は、例えば下記構造式で示される化合物が挙げられる。チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびそのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩、シクロヘキシルアミン塩、2−メルカプトベンゾチアゾリン、ジベンゾチアゾリルジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モノホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0041】
【化2】


(式中、Rは、水素原子またはメルカプト基または−SRまたは-S-NRで表わされる。ここで、R,R,Rは、例えば、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アラルキル基を示す。R,Rは同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して、ヘテロ原子を介してまたは介さずに、環を形成してもよい。アルキル基は、好ましくは炭素数1から4のアルキル基である。具体的には、以下のものが挙げられる。)
【化3】


または
【化4】

【0042】
ゴムの成型加硫で通常使用される加硫促進剤である硫黄を使用せず、上記チウラム系加硫促進剤を主体とした加硫を行うと、架橋密度がより緻密になるため、不純物移行抑制能力が向上し、感光体表面のクラック発生がさらに防止され、色点等の画像欠陥の発生がより抑制される。
【0043】
このように、本実施形態に係る帯電部材により、表面層を有している場合に長期使用にわたる表面層の損傷、摩滅などが生じても、感光体との接触による感光体クラックなどの損傷が防止され、色点、色スジ等の画質欠陥がほとんど発生しない。そのため、長寿命化や高画質化に適した帯電部材が得られる。また、感光体と接触してもクラックなどがほとんど発生しないため、表面層は必ずしも必要ではなく、その他の目的に応じて表面層を形成すればよく、非常に安価で生産性の優れる帯電部材が得られる。
【0044】
帯電ロール10の径は好ましくはφ8mm以上φ15mm以下、より好ましくはφ9mm以上φ14mm以下で、帯電層16の肉厚が1.5mm以上4mm以下であることが好ましい。直径が15mmを超えると周面1箇所あたりの異物に接触する回数が減り、また放電回数が減るので、汚れや帯電性能に対する長期安定性には優れるものの小型化の観点から不利である。直径が8mm未満であると画像形成装置等が小型となるので優位であるが、周面1箇所あたりの異物に接触する回数が増え、また放電回数が増えるので、長期安定性に対して不利となる。
【0045】
導電性芯体14の材質としては、快削鋼、ステンレス鋼等が使用され、摺動性などの用途に応じ材質および表面処理方法は適時選択され、導電性を有さない材質についてはメッキ処理など一般的な処理により加工され導電化処理が行われていてもよい。
【0046】
帯電ロール10の帯電層16を構成する上記導電性弾性層は、例えば、ヒドリン系樹脂を含み、弾性を有するゴム等の弾性材により構成され、導電性弾性層の抵抗を調整するカーボンブラックやイオン導電材等の導電材、必要に応じて軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカおよび炭酸カルシウム等の充填剤等、通常ゴムに添加され得る材料を加えてもよい。通常ゴムに添加される材料を添加した混合物を、導電性芯体14の周面に被覆することにより形成される。抵抗値の調整を目的とした導電剤として、マトリックス材に配合されるカーボンブラックやイオン導電剤のような、電子およびイオンのうち少なくとも1つを電荷キャリアとして電気伝導する材料を分散したもの等を用いてもよい。また、上記弾性材は発泡体であってもかまわない。
【0047】
上記導電性弾性層を構成する弾性材としては、例えばゴム材中に導電剤を分散させることによって形成される。ゴム材としては、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム等のヒドリン系樹脂の他に、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム等、およびこれらのブレンドゴム等を含んでもよい。これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0048】
導電性弾性層の樹脂成分のうち、ヒドリン系樹脂を30質量%以上100質量%以下の範囲で含むことが好ましく、40質量%以上100質量%以下の範囲で含むことがより好ましく、50質量%以上100質量%以下の範囲で含むことがさらに好ましい。ヒドリン系樹脂の含有量が30質量%未満であると、充分な抵抗均一性をもつ低抵抗弾性層が得られない場合がある。
【0049】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末が挙げられる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;が挙げられる。
【0050】
これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、1質量部以上60質量部以下の範囲であることが好ましく、一方、上記イオン導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが好ましい。
【0051】
帯電層16が有していてもよい上記表面層は、異物による汚染の防止のためなどに形成されるものであり、表面層の材料としては、樹脂、ゴム等の何れを用いてもよく特に限定するものではない。ポリエステル、ポリイミド、共重合ナイロン、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0052】
このうち外添剤による汚れ防止の観点から、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、共重合ナイロンが好ましく用いられる。共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種または複数種を重合単位として含むものであって、この共重合体に含まれる他の重合単位としては、6ナイロン、66ナイロン等が挙げられる。ここで、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロンよりなる重合単位が共重合体中に含まれる割合は、質量比で合わせて10質量%以上であるのが好ましい。上記重合単位が10質量%以上の場合は、調液性および表面層塗布時における成膜性に優れるとともに、特に繰り返し使用時における樹脂層の磨耗や樹脂層への異物付着が少なく、ロールの耐久性が優れ、環境による特性の変化も少なくなる。
【0053】
上記高分子材料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、当該高分子材料の数平均分子量は、1,000以上100,000以下の範囲であることが好ましく、10,000以上50,000以下の範囲であることがより好ましい。
【0054】
また上記表面層には導電性材料を含有させ、抵抗値を調整してもよい。該導電性材料としては、粒径が3μm以下であるものが好ましい。
【0055】
また、抵抗値の調整を目的とした導電剤として、マトリックス材に配合されるカーボンブラックや導電性金属酸化物粒子、あるいはイオン導電剤のような、電子およびイオンのうち少なくとも1つを電荷キャリアとして電気伝導する材料を分散したもの等を用いてもよい。
【0056】
導電剤のカーボンブラックとして、具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
【0057】
上記カーボンブラックはpH4.0以下であることが好ましい。一般的なカーボンブラックに比べ、表面に存在する酸素含有官能基の効果により、樹脂組成物中への分散性がよく、前記pH4.0以下のカーボンブラックを配合することにより、帯電均一性が向上し、さらに抵抗値の変動が抑制される。
【0058】
上記抵抗値を調整するための導電性粒子である導電性金属酸化物粒子は、酸化錫、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化亜鉛、アナターゼ型酸化チタン、インジウムスズ酸化物(ITO)等の導電性を有した粒子で、電子を電荷キャリアとする導電剤であれば何れを用いてもよく、特に限定されるものではない。これらは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。また、本実施形態の効果を阻害しない限り、何れの粒径であってもよいが、抵抗値調整および強度の点より、好ましくは酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫、アナターゼ型酸化チタンであり、更に、酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫が好ましい。
【0059】
このような導電性材料によって抵抗制御を行うことにより、表面層の抵抗値は環境条件によって変化せず、安定な特性が得られる。
【0060】
さらに、上記表面層には、フッ素系あるいはシリコーン系の樹脂等が用いられてもよい。特に、フッ素変性アクリレートポリマを含んで構成されることが好ましい。また、表面層の中に粒子を添加してもよい。これにより、表面層が疎水性となって帯電ロール10への異物の付着が防止されるように作用する。また、アルミナやシリカのような絶縁性の粒子を添加して、帯電ロール10の表面に凹凸を付与し、感光体24との摺擦時の負担を小さくして帯電ロール10と感光体24相互の耐磨耗性を向上させてもよい。
【0061】
本実施形態に係る帯電部材は、例えば、溶媒を用いてヒドリン系樹脂を洗浄し、ヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力が45mN/m以上になるようにする洗浄工程と、ヒドリン系樹脂を含む組成物を加硫成型して、導電性弾性層を形成する加硫成型工程と、を含む方法により得られる。帯電ロールの場合は、加硫成型工程において、ヒドリン系樹脂を含む組成物を導電性芯体の表面に加硫成型して、導電性弾性層を形成すればよい。
【0062】
次に、クリーニングロール12について説明する。
【0063】
クリーニングロール12の芯体18の材質としては、快削鋼、ステンレス鋼等が使用され、摺動性などの用途に応じ材質および表面処理方法は適時選択され、導電性を有さない材質についてはメッキ処理など一般的な処理により加工され導電化処理が行われてもよく、もちろんそのまま使用してもよい。また、弾性層20を介して帯電ロール10と適度なニップ圧力で接触するため、ニップ時に撓みのない強度を持った材質またはシャフト長に対して十分剛性をもったシャフト径が選択されることが好ましい。
【0064】
弾性層20は、多孔質の3次元構造を有する発泡体を含んで構成される。発泡体としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド又はポリプロピレン等の発泡性の樹脂又はニトリルゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム等を材質としたものより選択される。弾性層20は、帯電ロール10との従動摺擦により異物を効率的にクリーニングすると同時に、帯電ロール10の表面に弾性層20の擦れによるキズをつけないために、また、長期にわたり千切れや破損が生じないようにするために、引き裂き、引っ張りなどに強い、ポリウレタン、ニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム、スチレン−ブタジエンゴムおよびシリコーンゴムのうち少なくとも1つがより好ましく用いられ、ポリウレタンが特に好ましく用いられる。
【0065】
ポリウレタンとしては特に限定するものではなく、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステルやアクリルポリオールなどのポリオールと、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアネートの反応を伴っていればよく、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンなど鎖延長剤が混合されていることが好ましい。また、水やアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物などの発泡剤を用いて発泡させるのが一般的である。さらに必要に応じて発泡助剤、整泡剤、触媒などの助剤を加えてもよい。
【0066】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、像保持体と、像保持体の表面を帯電させる上記帯電部材とを備える。本実施形態のプロセスカートリッジは、必要に応じて、帯電部材を清掃するための帯電部材清掃部材と、帯電した像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、転写後の像保持体表面を清掃する像保持体清掃手段とからなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。
【0067】
本発明の実施形態に係るプロセスカートリッジの一例の概略構成を図3に示し、その構成について説明する。プロセスカートリッジ3は、静電潜像が形成される像保持体としての感光体(電子写真感光体)24と、感光体24の表面を接触帯電する帯電部材としての円筒状の帯電ロール10と、帯電ロール10に接触して帯電ロール10の表面を清掃する帯電部材清掃部材としてのクリーニングロール12と、感光体24の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像手段としての現像ロール52と、感光体24の表面に接触して、転写後に感光体24に残ったトナーなどを清掃する像保持体清掃手段としてのクリーニングブレード56とが一体に支持されており、画像形成装置に着脱自在である。画像形成装置に装着されたときには感光体24の周囲に、帯電ロール10、レーザ光あるいは原稿の反射光などにより感光体24の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置58、現像ロール52、感光体24表面のトナー像を被転写体である記録用紙62に転写処理する転写手段としての転写ロール54、クリーニングブレード56がこの順序で配置されるようになっている。前述のように、帯電ロール10の導電性弾性層がヒドリン系樹脂を含み、このヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力が45mN/m以上である。なお、図3では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、その記載を省略してある。
【0068】
本実施形態に係るプロセスカートリッジ3の動作について説明する。
【0069】
まず、感光体24表面に接触された帯電ロール10に対して電圧を高圧電源(図示せず)から給電することによって、感光体24の表面を一様に高電位に帯電する。このとき感光体24および帯電ロール10は図3の矢印方向にそれぞれ回転する。帯電後、感光体24表面に露光装置58により画像情報に応じた画像光(露光)60が照射されると、照射された部分は電位が低下する。画像光60は画像の黒/白などに応じた光量の分布であるため、画像光60の照射によって感光体24表面に記録画像に対応する電位分布、すなわち静電潜像が形成される。静電潜像が形成された部分が、現像ロール52を通過すると、その電位の高低に応じてトナーが付着し、静電潜像を可視化したトナー像が形成される。トナー像が形成された部分に、所定のタイミングでレジストロール(図示せず)により記録用紙62が搬送され、感光体24表面のトナー像と重なる。このトナー像が、転写ロール54によって記録用紙62に転写された後、記録用紙62は、感光体24から分離される。分離された記録用紙62は搬送経路を通って搬送され、定着手段としての定着ユニット(図示せず)によって、加熱加圧定着されたあと、機外へ排出される。
【0070】
プロセスカートリッジ3に設けられた帯電ロール10にはクリーニングロール12が設置され、高圧電源からベアリング30に電圧が印加され、クリーニングロール12が帯電ロール10と電気的に同極性を有することで、異物がクリーニングロール12および帯電ロール10表面にほとんど蓄積させることなく移行し、クリーニングブレード56で回収させるため、帯電部材に付着したトナーなどの異物が長期にわたり、安定的に除去される。このため、長期にわたり帯電ロール10に汚れがほとんど蓄積することなく、安定した帯電性能が維持される。
【0071】
感光体24は、少なくとも静電潜像(静電荷像)が形成される機能を有する。電子写真感光体は、円筒状の導電性の基体外周面に必要に応じて下引き層と、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とがこの順序で形成されたものである。電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は逆であってもよい。これらは、電荷発生物質と電荷輸送物質とを別個の層(電荷発生層、電荷輸送層)に含有させて積層した積層型感光体であるが、電荷発生物質と電荷輸送物質との双方を同一の層に含む単層型感光体であってもよく、好ましくは積層型感光体である。また、下引き層と感光層との間に中間層を有していてもよい。また、感光層の上に保護層を有してもよい。また、有機感光体に限らずアモルファスシリコン感光膜など他の種類の感光層を使用してもよい。
【0072】
露光装置58としては、特に制限はなく、例えば、感光体24表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光などの光源を、所望の像様に露光するレーザ光学系、LEDアレイなどの光学系機器などが挙げられる。
【0073】
現像手段は、感光体24上に形成された静電潜像を静電荷像現像用トナーを含む一成分現像剤あるいは二成分現像剤により現像してトナー像を形成する機能を有する。そのような現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、トナー層が感光体24に接触する方式のものでも、接触しない方式のものでもよい。例えば、図3のように静電荷像現像用トナーを現像ロール52を用いて感光体24に付着させる機能を有する現像器、あるいはブラシなどを用いてトナーを感光体24に付着させる機能を有する現像器など、公知の現像器などが挙げられる。
【0074】
転写手段としては、紙などに直接転写する方式のものでも、中間転写体を介して転写する方式のものでもよい。例えば、図3に示すような記録用紙62を介して直接接触して転写する導電性または半導電性のロールなどを用いた転写ロール54および転写ロール押圧装置(図示せず)を用いればよい。また、記録用紙62の裏側(感光体と反対側)からトナーとは逆極性の電荷を記録用紙62に与え、静電気力によりトナー像を記録用紙62に転写するものを用いてもよい。転写ロール54は、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、プロセススピード(周速)などにより、任意に設定すればよい。また、低コスト化のため、転写ロール54として単層の発泡ロールなどが好適に用いられる。
【0075】
定着手段としての定着ユニットとしては、記録用紙62に転写されたトナー像を加熱、加圧あるいは加熱加圧により定着するものであれば特に制限はない。
【0076】
トナー像を転写する被転写体である記録用紙62としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタなどに使用される普通紙、OHPシートなどが挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、転写材の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂などでコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙などが好適に使用される。
【0077】
<画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電させる上記帯電部材と、像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段とを備える。本実施形態の画像形成装置は、必要に応じて、帯電部材を清掃するための帯電部材清掃部材と、像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、転写後の像保持体表面を清掃する像保持体清掃手段とからなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。また、本実施形態に係る画像形成装置は、上記プロセスカートリッジを使用するものであってもよい。
【0078】
本実施形態に係る画像形成装置の一例の概略構成を図4に示し、その構成について説明する。画像形成装置5は、静電潜像が形成される像保持体としての感光体24と、感光体24の表面を接触帯電する帯電部材としての円筒状の帯電ロール10と、帯電ロール10に接触して帯電ロール10の表面を清掃する帯電部材清掃部材としてのクリーニングロール12と、レーザ光あるいは原稿の反射光などにより感光体24の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置58と、感光体24の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像手段としての現像ロール52と、感光体24表面のトナー像を被転写体である記録用紙62に転写処理する転写手段としての転写ロール54と、感光体24の表面に接触して、転写後に感光体24に残ったトナーなどを清掃する像保持体清掃手段としてのクリーニングブレード56とを備える。画像形成装置5において、感光体24の周囲に、帯電ロール10、露光装置58、現像ロール52、転写ロール54、クリーニングブレード56がこの順序で配置されている。前述のように、帯電ロール10の導電性弾性層がヒドリン系樹脂を含み、このヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力が45mN/m以上である。なお、図4では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、その記載を省略してある。画像形成装置5の各構成、画像形成時の動作は図3のプロセスカートリッジ3と同様である。
【0079】
画像形成装置5に設けられた帯電ロール10にはクリーニングロール12が設置され、高圧電源64からベアリング28に電圧が印加され、クリーニングロール12が帯電ロール10と電気的に同極性を有することで、異物がクリーニングロール12および帯電ロール10表面に蓄積させることなく移行し、クリーニングブレード56で回収されるため、帯電部材に付着したトナー等の異物が長期にわたり、安定的に除去される。このため、長期にわたり帯電ロール10に汚れが蓄積することなく均一帯電性能において優れたものとなり安定した帯電性能が維持される。
【0080】
本実施形態に係る帯電部材を用いた画像形成装置の帯電部材以外の構成については、これらに限らず従来から電子写真方式の画像形成装置の各構成として公知の構成を適用してもよい。すなわち、上記帯電部材以外の構成、例えば、帯電部材清掃手段、潜像形成手段、現像手段、転写手段、像保持体清掃手段、除電手段、給紙手段、搬送手段、画像制御手段等について、必要に応じて従来公知のものが適宜採用される。これらの構成については、本実施形態において特に限定されるものではない。
【実施例】
【0081】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
<実施例1>
[ポリマの作製]
ポリマとしてエピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム(Gechron3106、日本ゼオン社製)2kgをイオン交換水15リットルに22℃で6時間浸漬したのち、オーブン中110℃で乾燥させて、ポリマAを作製した。
【0083】
[表面張力の測定]
ポリマAを1辺が10mmのブロックに切り出し、50ccのイオン交換水(導電率1μS/cm)に22℃で12時間浸漬した。ポリマブロックを取り除いた後、JIS K3362にのっとり、浸漬後のイオン交換水の表面張力を測定した。その結果、表面張力は45mN/mであった。
【0084】
[導電性弾性ロールの作製]
下記配合物をオープンロールで混練りし、配合剤Aを得た。配合剤AについてJIS K6300−2(2001)にのっとり、180℃における加硫特性を測定し、キュラスト特性を示すtc(90)の値を導いた。tc(90)は3.4分であった。次に、SUS416を材料とする直径8mmの導電性芯体表面に、配合剤Aを厚さ3mmとなるように円筒状に被覆し、内径14.5mmの円筒型の金型に入れ、加硫成型を行った。成型温度は180℃とし、上述の測定で得られたtc(90)値の1.5倍の時間を加硫時間とした。成型物を金型から取り出した後、直径14.0mm、肉厚3mmになるよう研磨し、円筒状の導電性弾性ロール1を得た。
(配合剤A)
ゴム材(ポリマA) 100質量部
カーボンブラック(#3030B、三菱カーボンブラック社製) 25質量部
チウラム系加硫促進剤(ノクセラーTET、大内新興化学工業社製)1.5質量部
チウラム系加硫促進剤(ノクセラーTRA、大内新興化学工業社製)0.5質量部
チアゾール系加硫促進剤(ノクセラーDM、大内新興化学工業社製)2.0質量部
酸化亜鉛(亜鉛華1号、正同化学工業社製) 5質量部
ステアリン酸(つばき、日本油脂製) 1質量部
炭酸カルシウム(ホワイトンSSB、白石カルシウム) 30質量部
イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ライオンアクゾ社製) 1質量部
【0085】
[色点の評価]
導電性弾性ロール1を帯電ロールとしてDocuCentreColor a450のドラムカートリッジにセットし、45℃、95%RH環境下に1週間放置した後、同複写機を用いて、通常環境(22℃、55%RH)でハーフトーン画像を出力し、感光体と帯電ロールのニップ位置について下記の基準でハーフトーン画像中での色点の発生を評価した。結果を表1に示す。
◎:色点の発生なし
○:Φ0.3mm未満の色点が1個以上3個未満発生で充分許容できる
△:Φ0.3mm未満の色点が3個以上6個未満発生で実使用上問題がない
×:Φ0.3mm以上の色点が6個以上発生で実使用上問題となる
××:色点でなく、ニップ部が色スジとなって発生している
【0086】
<実施例2>
ポリマとしてエピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム(Gechron3106、日本ゼオン社製)2kgをイオン交換水15リットルに22℃で12時間浸漬したのち、オーブン中110℃で乾燥させたポリマBを作製した。ポリマBの表面張力は50mN/mであった。実施例1のポリマAをポリマBに変更した配合剤Bを用いた以外は実施例1と同様にして、導電性弾性ロール2を得た。tc(90)は同じく3.4分であった。結果を表1に示す。
【0087】
<実施例3>
実施例1からポリマとしてエピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム(Gechron3105、日本ゼオン社製)に変更し、2kgをイオン交換水15リットルに22℃で12時間浸漬したのち、オーブン中110℃で乾燥させたポリマCを作製した。ポリマCの表面張力は55mN/mであった。実施例1のポリマAをポリマCに変更した配合剤Cを用いた以外は実施例1と同様にして、導電性弾性ロール3を得た。tc(90)は同じく3.4分であった。結果を表1に示す。
【0088】
<実施例4>
実施例2の配合剤Bに硫黄を0.5質量部加えた配合剤Dを用いた以外は実施例1と同様にして、導電性弾性ロール4を得た。tc(90)は2.8分であった。結果を表1に示す。
【0089】
<実施例5>
実施例3の配合剤Cに硫黄を1.0質量部加えた配合剤Eを用いた以外は実施例1と同様にして、導電性弾性ロール5を得た。tc(90)は2.5分であった。結果を表1に示す。
【0090】
<実施例6>
実施例1からポリマとしてエピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム(Gechron1100、日本ゼオン社製)に変更し、2kgをイオン交換水15リットルに22℃で12時間浸漬したのち、オーブン中110℃で乾燥させたポリマFを作製した。ポリマFの表面張力は70mN/mであった。実施例1のポリマAをポリマFに変更した配合剤Fを用いた以外は実施例1と同様にして、導電性弾性ロール6を得た。tc(90)は3.1分であった。結果を表1に示す。
【0091】
<実施例7>
実施例3の配合剤CからノクセラーDMを除き、スルフェンアミド系の加硫促進剤(ノクセラーPZ、大内新興化学工業社製)2.0質量部を加えた配合剤Gを用いた以外は実施例3と同様にして、導電性弾性ロール7を得た。tc(90)は5.7分であった。結果を表1に示す。
【0092】
<実施例8>
実施例3の配合剤CからノクセラーDMを除き、ジチオカルバメート系の加硫促進剤(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製)2.0質量部を加えた配合剤Hを用いた以外は実施例3と同様にして、導電性弾性ロール8を得た。tc(90)は6.3分であった。結果を表1に示す。
【0093】
<実施例9>
実施例3の配合剤CからノクセラーTRAを除いた配合剤Iを用いた以外は実施例3と同様にして、導電性弾性ロール9を得た。tc(90)は3.8分であった。結果を表1に示す。
【0094】
<実施例10>
ポリマとしてエピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム(Gechron3105、日本ゼオン社製)2kgをエタノール15リットルに22℃で12時間浸漬したのち、オーブン中110℃で乾燥させたポリマJを作製した。ポリマJの表面張力は60mN/mであった。実施例1のポリマAをポリマJに変更した配合剤Jを用いた以外は実施例1と同様にして、導電性弾性ロール10を得た。tc(90)は3.4分であった。結果を表1に示す。
【0095】
<比較例1>
実施例1においてポリマのイオン交換水中の浸漬と乾燥を行わず、Gechron3106をそのまま使用して作製した配合剤Kを用いた以外は実施例1と同様にして、導電性弾性ロール11を得た。Gechron3106の表面張力は40mN/mであった。tc(90)は同じく3.4分であった。結果を表2に示す。
【0096】
<比較例2>
比較例1の配合剤Kに硫黄を1.0質量部加えた配合剤Lを用いた以外は比較例1と同様にして、導電性弾性ロール12を得た。tc(90)は2.5分であった。結果を表2に示す。
【0097】
<比較例3>
比較例1の配合剤KからノクセラーDMを除き、スルフェンアミド系の加硫促進剤(ノクセラーPZ、大内新興化学工業社製)2.0質量部を加えた配合剤Mを用いた以外は比較例1と同様にして、導電性弾性ロール13を得た。tc(90)は5.7分であった。結果を表2に示す。
【0098】
<比較例4>
比較例1の配合剤KからノクセラーDMを除き、ジチオカルバメート系の加硫促進剤(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製)2.0質量部を加えた配合剤Nを用いた以外は比較例1と同様にして、導電性弾性ロール14を得た。tc(90)は6.3分であった。結果を表2に示す。
【0099】
<比較例5>
比較例1の配合剤KからノクセラーTRAを除いた配合剤Oを用いた以外は比較例1と同様にして、導電性弾性ロール15を得た。tc(90)は3.8分であった。結果を表2に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
このように、実施例1から実施例10の帯電ロールを用いることにより、色点等の画像欠陥の発生が抑制された。
【符号の説明】
【0103】
1 帯電装置、3 プロセスカートリッジ、5 画像形成装置、10 帯電ロール、12 クリーニングロール、14 導電性芯体、16 帯電層、18 芯体、20 弾性層、24 感光体、26 コイルバネ、28 ベアリング、52 現像ロール、54 転写ロール、56 クリーニングブレード、58 露光装置、60 画像光、62 記録用紙、64 高圧電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドリン系樹脂を含む導電性弾性層を有し、
前記ヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力が45mN/m以上であることを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記ヒドリン系樹脂が、エチレンオキサイドを共重合したヒドリン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記導電性弾性層の加硫促進剤として、少なくともチウラム系加硫促進剤とチアゾール系加硫促進剤とが併用されていることを特徴とする請求項1または2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記チウラム系加硫促進剤が2種以上使用されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項5】
前記導電性弾性層に硫黄が配合されていないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項6】
溶媒を用いてヒドリン系樹脂を洗浄し、前記ヒドリン系樹脂を純水に12時間浸漬させたときの浸漬した純水の表面張力が45mN/m以上になるようにする洗浄工程と、
前記ヒドリン系樹脂を含む組成物を加硫成型して、導電性弾性層を形成する加硫成型工程と、
を含むことを特徴とする帯電部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材と、前記帯電部材の表面を清掃する帯電部材清掃部材とを備えることを特徴とする帯電装置。
【請求項8】
像保持体と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材とを備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
像保持体と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電部材と、前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−39108(P2011−39108A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183650(P2009−183650)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】