説明

帯電部材

【課題】 本発明の課題は、繰り返し使用によっても、帯電不良による通電劣化起因のモヤ画像の発生を抑制し、さらに汚れ起因のポチ画像の発生を抑制した帯電部材を提供することにある。
【解決手段】 導電性基体と、オレフィン系ゴムと電子導電粒子とを含む導電性の弾性層とを有し、該弾性層は、塩化ビニル重合体をシェルとする中空粒子、および、下記式(1)で示すエステル化合物をさらに含有していることを特徴とする帯電部材:
【化1】


(式中、R1、R2は炭素数5〜7の脂環式炭化水素基を示す。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置において、電子写真感光体(以降、「感光体」ともいう)の接触帯電に用いられる帯電部材は、感光体の回転に安定に従動回転させるために、感光体との間で十分なニップ幅を確保させることが好ましい。そのため、帯電部材は、一般的に柔軟な導電性弾性層を有している。
しかしながら、導電性弾性層が、ゴム等の弾性材料にカーボンブラック等の電子導電粒子を添加して抵抗値が調節されているものの場合、帯電部材の長期の使用によって、帯電部材の電気抵抗値が部分的に変化し、帯電性能が帯電部材の中でばらついてしまうことがあった。その結果、感光体の帯電状態が不均一となり、得られる電子写真画像に濃度ムラ(以下、「モヤ画像」と呼ぶ)が生じることがあった。
長期の使用による帯電部材の電気抵抗値の変化の1つの原因として以下のことが考えられる。すなわち、帯電部材に長期に亘って高電圧が印加され、また、導電性弾性層には、感光体との周期的な当接によって、弾性変形と弾性回復とが繰り返し生じることとなる。その結果、導電性弾性層中の電子導電粒子が徐々に移動し、導電性弾性層の導電性を発現させている電子導電粒子による導電パスが分断されることによるものと考えられる。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−256908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本願発明は、柔軟で、かつ、長期の使用によっても電気抵抗値が変化しにくい帯電部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る帯電部材は、導電性基体と、オレフィン系ゴムと電子導電粒子とを含む導電性の弾性層とを有し、
該弾性層は、塩化ビニル重合体をシェルとする中空粒子、および、下記式(1)で示すエステル化合物をさらに含有していることを特徴とする:
【0006】
【化1】

(式中、R1、R2は炭素数5〜7の脂環式炭化水素基を示す。)。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、柔軟な導電性弾性層を備えると共に、長期の使用によっても電気抵抗値が変化しにくい帯電部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の帯電部材(ローラ形状)の断面図を示す。
【図2】本発明の帯電部材の電気抵抗値測定に用いる機器における、(a)測定前の概略図、(b)測定時の概略図、を示す。
【図3】本発明の帯電部材の作製に用いられる、円筒状のキャビティを有する円筒型又は割型を示す。
【図4】本発明の帯電部材の予備成形体の作製に用いられる、クロスヘッドを備えた押出機を示す。
【図5】本発明に係る電子写真装置の断面図である。
【図6】本発明に係るプロセスカートリッジの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ゴム、電子導電粒子および中空粒子を含有してなる導電性の弾性層を有する帯電部材を前提としているものである。中空粒子を含む弾性層は、感光体との当接部において弾性層を十分に変形させることができ、感光体とのニップ幅を確保できる。また、中空粒子の反発弾性により、長期に亘って感光体と静止状態で当接した後にも当接部分に容易に回復しないような変形(以降、「永久圧縮歪み」ともいう)が生じにくい。
【0010】
次に、本発明者らは、上記の帯電部材と感光体との当接部の変形について詳細に観察した。その結果、感光体との当接により帯電部材に生じた変形は、主に弾性層中の中空部及びその周辺の変形として観察された。そして、帯電部材が感光体に対して従動回転を繰り返す場合、中空部およびその周辺では、変形と回復とが繰り返し生じることにより、弾性層に振動が発生する。この振動が、電子導電粒子を移動させ、電子導電粒子の導電パスを分断させることにより、経時的な電気抵抗の変化を生じさせているものと本発明者らは推定した。
【0011】
そこで、本発明者らは、当該振動の導電性弾性層全体への伝搬を緩和することで、導電性弾性層中に存在する電子導電粒子の導電パスの分断を抑制することを考えた。
ここで、振動吸収性能に優れた材料の指標として、材料の粘弾性測定により得られる損失正接の値が使用温度において高い値を有することが好ましいことが知られている。ゴムは損失正接の最大値が大きいものの、ガラス転移温度が低い。そのため、振動エネルギーの吸収性能は低温領域では優れているものの、電子写真装置の実使用温度領域(例えば、5℃〜40℃程度)では振動吸収性能は高くない。
【0012】
一方、塩化ビニル重合体は、損失正接の最大値そのものが大きくないため、振動エネルギーを吸収する能力は高くない。しかし、下記一般式(1)で示される構造を有するフタル酸エステルを用いることで塩化ビニル重合体の損失正接の最大値および損失正接が最大となる温度を電子写真装置の実使用温度領域に調整することができる。このこと自体は、特許第2987847号明細書にも記載されているように公知である。
【0013】
【化2】

(式(1)中、R1及びR2は各々独立に炭素数5〜7の脂環式炭化水素基を示す。)。
【0014】
そこで、本発明者らは、弾性層に、塩化ビニル重合体を含むシェルを有する中空粒子と上記一般式(1)で示されるフタル酸エステルを含有させることにより、当該中空粒子のシェルに振動吸収能力を担持させることを検討した。ここで、塩化ビニル重合体と上記フタル酸エステルとが弾性層中で十分に相互作用できるように、中空粒子の近傍に上記フタル酸エステルを偏在させることを検討した。具体的には、弾性層のマトリクスを構成するゴムとして、上記フタル酸エステルとの親和性が、塩化ビニル重合体と比較して相対的に低いオレフィン系ゴムを用いた。
【0015】
その結果、かかる弾性層を有する帯電部材は、感光体との当接を繰り返しながらの長期間の帯電によっても電気抵抗が変化しにくいことを見出した。
これは以下のメカニズムによるものと考えられる。即ち、中空粒子のシェルの損失正接の最大値が、シェル中の塩化ビニル重合体と特定構造のフタル酸エステルとの相互作用により、電子写真装置の実使用温度領域にシフトする。その結果、弾性層の繰り返しの変形と回復に伴って弾性層の中空部に生じる振動は、中空粒子のシェル部分で効率的に吸収され、弾性層全体に伝達されにくくなっている。その結果、弾性層中で導電パスを構成している電子導電粒子の振動による移動が抑制され、導電パスの分断が生じにくくなっているために、経時的な電気抵抗の変化が抑制されているものと考えられる。
【0016】
以下に本発明に係る帯電部材について説明する。
本発明に係る帯電部材は、導電性の基体と、オレフィン系ゴムと電子導電粒子とを含む導電性の弾性層を有し、該弾性層は、塩化ビニル重合体をシェルとする中空粒子および下記式(1)で示される化合物をさらに含有している。
【0017】
【化3】

式(1)中、RおよびRは各々独立に、炭素数5〜7の脂環式炭化水素基を示す。
【0018】
(基体)
導電性の基体は、導電性を有し、その上に設けられる弾性層等を支持する機能を有するものである。材質としては、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属やその合金を挙げることができる。
【0019】
(弾性層)
弾性層はマトリクスを構成するゴムとしてオレフィン系ゴムを含有し、更に、電子導電粒子、塩化ビニル重合体をシェルとする中空粒子、及び上記式(1)で示す化合物を含有する。
【0020】
<オレフィン系ゴム>
オレフィン系ゴムは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-メチルプロピレン、3-メチル-1-ブテンなどのオレフィン1種又は2種以上から誘導される繰り返し単位を50重量%以上含有する重合体である。具体的にはエチレンプロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン-3-メチル-1-ブテン共重合、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン-3-メチル-1-ブテン共重合、プロピレン−1−1―ヘキセンエチレン共重合体等があげられる。さらに親和性の差により式(1)で示すエステル化合物を中空粒子及びその周辺に偏在させる含有量であれば、オレフィン以外の単量体から誘導される繰り返し単位を含有していてもよい。例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエン化合物や、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン化合物、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン及び2,4,6-トリメチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物が挙げられる。
【0021】
<電子導電粒子>
電子導電粒子の具体例を以下に挙げる。金属(アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等)の粒子、金属酸化物(酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等)の粒子、カーボンブラック等。
【0022】
弾性層中における電子導電粒子の添加量は、後述するバインダー100質量部に対して2質量部から200質量部、好ましくは5質量部から100質量部の範囲が妥当である。
本発明の帯電部材における中空粒子のシェルを形成する塩化ビニル重合体は、塩化ビニル樹脂や、塩化ビニル単量体及び塩化ビニル単量体と共重合し得る単量体より構成される樹脂からなる。具体的には、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−ポリウレタングラフト共重合体等が使用できる。
【0023】
<フタル酸エステル化合物>
上記式(1)で示されるフタル酸エステルは、前記したように中空粒子のシェルが含む塩化ビニル重合体の損失正接を制御し、当該シェルに振動吸収能力を発揮させるために用いられる。前記式(1)中、R及びRの炭素数が5〜7の脂環式炭化水素基を用いることで、電子写真装置の使用温度で塩化ビニル重合体からなる中空粒子の損失正接を高い値に制御できる。またオレフィン系ゴムとの親和性を低くできるため、式(1)で示すエステル化合物を中空粒子周辺へ偏在させることが容易になる。
【0024】
式(1)で示すエステル化合物としてはジシクロペンチルフタレート、シクロペンチルシクロヘキシルフタレート、シクロペンチルシクロヘプチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、シクロヘキシルシクロヘプチルフタレート、ジシクロヘプチルフタレート等が挙げられる。なかでも式(1)中、R及びRの少なくとも一つが炭素数6の脂環式炭化水素基である場合が、少量の添加で中空粒子周辺へ偏在させる効果が得られるため、ブリードを抑制できる点で好ましい。
【0025】
式(1)で示すエステル化合物の添加量はこれらの目的に合わせ適宜調節すればよく、好ましくは塩化ビニル重合体からなる中空粒子100質量部に対して、150質量部以下である。添加量が150質量部以下とすることで、式(1)で示すエステル化合物と塩化ビニル重合体との相溶性が低下せず、感光体との当接による変形を中空粒子及びその周辺に偏在することができる。また式(1)で示すエステル化合物はオレフィン系ゴム100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下が好ましい。0.1質量部以上添加することで中空粒子とオレフィン系ゴムとの相互作用を抑制できる。また10質量部以下とすることで、感光体との当接による変形を中空粒子及びその周辺にいっそう偏在させることができる。
【0026】
弾性層は、本発明の効果を損なわない範囲で、公知のフィラーを含有してもよい。
【0027】
<中空粒子>
弾性層中の中空粒子の体積平均粒子径の好ましい範囲としては、0.5μm以上、500μm以下、特には1μm以上、50μm以下である。弾性層に含有された中空粒子の粒子径の測定方法は、層の断面を顕微鏡等で観察することにより求めることができる。具体的には、弾性層の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し、中空粒子の断面画像データから、中空粒子の投影面積を求め、この面積から円相当径を算出する。
【0028】
(弾性層の形成)
塩化ビニル重合体を含むシェルを有する中空粒子を含む、本発明に係る弾性層の製造方法として、以下に2つ方法を挙げて説明する。
【0029】
弾性層を製造する第1の方法は、中空粒子として、内部に気体を含有(内包)しており、弾性層の製造過程では粒子径が概ね変化しない、いわゆる、既膨張の粒子を使用する方法である。
既膨張の粒子を使用する方法では、シェルが塩化ビニル重合体からなる既膨張の中空粒子を、上記式(1)で示す化合物、および電子導電粒子とともに、オレフィン系ゴムの原料に混合して弾性層形成用のゴム混合物を得る。ついで、ゴム混合物の層を導電性の基体上に形成して予備成型体を作成した後、乾燥させ、ゴムを架橋させることにより、本発明に係る弾性層を備えた帯電部材を得ることができる。
【0030】
上記した既膨張の粒子の製造方法の例を挙げる。塩化ビニル単量体及び必要により塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体を、重合開始剤およびオプションとしての相分離促進剤や界面活性剤とともに、上記の単量体が不溶の揮発性溶媒に分散させる。ついで塩化ビニル単量体、塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体、及び揮発性溶媒と不溶であり揮発性溶媒より高い沸点を有する溶媒中に懸濁する。得られた懸濁液を加圧下で反応させ、塩化ビニル重合体からなるシェルを有する粒子を合成する。ついで揮発性溶媒の沸点以上の温度で除圧して揮発性溶媒を除去し、既膨張の中空粒子を得る。
【0031】
相分離促進剤として、塩化ビニル単量体及び塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体と反応しないリン酸化合物を使用できる。このようなリン酸化合物としては、例えば、亜リン酸モノエステル、亜リン酸ジエステル、ラウリルリン酸などのリン酸モノエステル、リン酸ジエステルなどが挙げられ、単独で用いられても併用されてもよい。なお、リン酸化合物の添加量は、塩化ビニル単量体及び塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体の総量100質量部に対して0.001質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0032】
界面活性剤としては公知のイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が使用でき、なかでもアルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤が好ましい。重合開始剤としてはパーオキサイド系重合開始剤、アゾ系重合開始剤、レドックス系重合開始剤等公知の重合開始剤が使用できる。
【0033】
弾性層を製造する第2の方法は、熱膨張性の物質を内包し、当該物質を弾性層の形成過程において熱で膨張せしめることで中空粒子となる、いわゆる熱膨張性マイクロカプセルを使用する方法である。
即ち、塩化ビニル重合体をシェルに含む熱膨張マイクロカプセルを、上記式(1)で示す化合物、及び電子導電粒子とともにオレフィン系ゴムの原料に混合する。得られた弾性層形成用のゴム混合物の層を、導電性の基体上に形成して予備成型体を作成した後、乾燥させ、ゴムを架橋させることにより、熱膨張性マイクロカプセル中に内包された熱膨張性の物質が膨張、気化することにより、塩化ビニル重合体をシェルに含む中空粒子が含有された弾性層を形成することができる。この方法においては、熱膨張性物質を膨張させる際の温度条件等を制御することにより、中空粒子の粒径等を制御できる。
【0034】
塩化ビニル重合体からなる熱膨張性マイクロカプセルの製造方法を述べる。塩化ビニル単量体、塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体、揮発性溶媒、重合開始剤を混合し、界面活性剤、分散安定剤を含む水性溶媒中に分散させる。ついで懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体をシェルとする熱膨張性マイクロカプセルを得る。
【0035】
塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体としては先に述べた単量体を使用できる。マイクロカプセルに内包された液体又は気体としては、弾性層の加熱温度以下の温度でガスになって膨張するものが使用される。例えば低沸点液体、高沸点液体、熱分解によりガスを発生する化合物などが挙げられる。低沸点液体としては、プロパン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンが例示できる。高沸点液体としてはノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、ノルマルデカン、イソデカンが例示できる。熱分解してガスを発生する化合物としてはアゾ化合物が例示できる。
【0036】
(帯電部材)
本発明に係る帯電部材の形状としては、ローラ形状、ベルト形状などが挙げられる。また、必要に応じて、弾性層2の上に、表面層3を有しても構わない。
図1(a)に導電性基体1、弾性層2の単層構成からなる帯電ローラ5を示し、図1(b)に導電性基体1、弾性層2、表面層3の2層構成からなる帯電ローラ5を示す。以下において、図1に示したローラ形状のもの、すなわち帯電ローラ5にて詳細に説明する。
導電性の基体1と弾性層2、あるいは、順次積層する層、例えば図1(b)に示す弾性層2と表面層3は、接着剤を介して接着してもよい。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤は公知の導電剤を有することができる。
【0037】
接着剤成分(以下、「バインダー」と呼ぶ)としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられるが、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系等の公知のものを用いることができる。
接着剤に導電性を付与するための導電剤としては、後に詳述する導電剤から適宜選択し、単独で、又は2種類以上組み合わせて、用いることができる。
帯電ローラは、感光体の帯電を良好なものとするため、通常、電気抵抗が、温度23℃湿度50%RH環境中において、1×10Ω以上、1×1010Ω以下であることがより好ましい。
【0038】
帯電ローラの抵抗は、温度23℃湿度50%RH環境下で測定して、103Ω以上108Ω以下であることが好ましい。
帯電ローラの抵抗値測定について以下に説明する。帯電ローラの抵抗値は、図2に示すように、帯電ローラを円柱形金属32に当接させ、回転させた状態で、導電性基体1と円柱形金属32との間に直流電圧を印加し、円柱形金属32と直列に接続した抵抗体にかかる電圧を測定することにより求めることができる。
【0039】
帯電ローラの硬度はAsker−C硬度で35°以上95°以下が好ましい。35°以上とすることで感光体に当接した状態で長期に亘って停止しても、永久歪として残存することを抑制できる。また95°以下とすることで帯電ローラが汚れることを低減できる。同様の理由で、更に好ましくは50°以上85°以下である。Asker−C硬度は日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠したAsker−C型スプリング式ゴム硬度計を用いて1kg荷重時の測定値とする。
【0040】
(電子写真装置)
帯電部材を備える電子写真装置の1例の概略構成を図5に示す。電子写真装置は、感光体4、感光体4を帯電する帯電装置、露光光11を照射することにより潜像形成を行う露光装置、トナー像に現像する現像装置、転写材に転写する転写装置、感光体4に残った潜像に露光する前露光装置12、感光体4上の転写現像剤を回収するクリーニング装置、トナー像を定着する定着装置9等から構成されている。
【0041】
感光体4は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。感光体4は矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
帯電装置は、感光体4に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の帯電ローラ5を有する。帯電ローラ5は、感光体の回転に従い回転する従動回転を行い、帯電用電源19から所定の直流電圧、若しくは直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加することにより、感光体4を所定の電位に帯電する。
【0042】
露光装置は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。
現像装置は、感光体4に近接又は接触して配設される現像ローラ6、現像剤規制部材13、現像剤供給部材14を有する。現像ローラ6、現像剤規制部材13、現像剤供給部材14は現像用電源18から所定の電圧が印加される。現像装置は、感光体帯電極性と同極性に静電的処理された現像剤を反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。
【0043】
転写装置は、接触式の転写ローラ8、転写用電源20を有する。感光体4からトナー像を普通紙などの転写材7(転写材は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される)に転写する。
クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材10、回収容器を有し、転写した後、感光体4上に残留する転写残現像剤を機械的に掻き落とし回収する。ここで、現像装置にて転写残現像剤を回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を省くことも可能である。
定着装置9は、加熱されたローラ等で構成され、転写されたトナー像を転写材7に定着し、機外に排出する。
【0044】
(プロセスカートリッジ)
感光体4、帯電装置、現像装置、クリーニング装置等を一体化し、電子写真装置に着脱可能に設計されたプロセスカートリッジ(図6)を用いることもできる。すなわち、帯電部材が被帯電体と少なくとも一体化され、電子写真装置本体に着脱自在に構成されているプロセスカートリッジであり、該帯電部材が上記の帯電部材である。
また、電子写真装置は、少なくとも、プロセスカートリッジ、露光装置及び定着装置を有し、該プロセスカートリッジが上記のプロセスカートリッジである。
【実施例】
【0045】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0046】
(既膨張粒子1の作成)
既膨張粒子のシェル材料として、水800質量部にラウリル硫酸ナトリウム10質量部を分散した液に、表1に記載の配合組成物からなる油性混合液を加え、ホモミキサーを用いて回転数10000rpmで2分間攪拌して懸濁液を得た。懸濁液を4Lのオートクレープに入れ、窒素で0.3MPaに加圧し、70℃で8時間反応を行った。ついで70℃で除圧した後、ろ過と水洗を繰り返して既膨張粒子1を得た。既膨張粒子1の体積平均粒径は4.1μmであった。
【0047】
【表1】

【0048】
ここで既膨張粒子の体積平均粒径は、以下の方法で測定した。電解質溶液100mlに界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホンサン塩を0.5ml添加し、これに中空粒子を5mg添加した。ついで超音波分散器で3分間分散処理して、粒度分布測定装置(商品名:コールターカウンターマルチサイザー、ベックマンコールター社製)により17μmのアパチャーを用いて体積を基準として測定した。この条件で測定した体積平均粒子径をコンピュータ処理により求めた。
【0049】
(既膨張粒子2〜8の作成)
既膨張粒子のシェル材料、添加量を表10に示すように変更した以外は中空粒子1の作成と同様に行い中空粒子2〜8を作成した。
【0050】
(熱膨張性マイクロカプセル1の作成)
容器に、水を8Lと、塩化ナトリウム1000g、表2に記載の配合組成物を添加し、プロペラ付き攪拌機を用い分速6500回転で攪拌して水性分散媒体を調製した。
【0051】
【表2】

【0052】
次いで、熱膨張性マイクロカプセルのシェル材料として表3に記載の配合組成物を、前記水性分散媒体に添加し分散液を得た。この分散液を窒素置換した加圧重合器(20L)内へ仕込み、加圧(0.2MPa)し、60℃で20時間反応させることにより、反応生成物を調製した。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥して熱膨張性マイクロカプセル1を得た。熱膨張性マイクロカプセル1の体積平均粒径は2.4μmであった。
【0053】
【表3】

【0054】
(熱膨張性マイクロカプセル2〜8の作成)
熱膨張性マイクロカプセルのシェル材料、添加量を表11に示すように変更した以外は熱膨張性マイクロカプセル1の作成と同様に行い熱膨張性マイクロカプセル2〜8を作成した。
【0055】
(中実粒子1の作成)
既膨張粒子1の作成においてヘキサンを添加しない点以外は既膨張粒子1の作成と同様に行い、体積平均粒子径2μmの中実粒子1を作成した。
【0056】
〔弾性層素材〕
(弾性材料1の作成)
20Lのガラス容器に、ケン化度91%のポリビリニルアルコール 20g、水 5000g、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム 2gを混合し、窒素バブリングを行った。これに、10℃で表4に記載の配合組成物をを懸濁させた。これを0.5m/Sで攪拌しながら、t−ブチルヒドロパーオキサイド2gを添加し7時間反応を行った。得られた懸濁液を乾燥させ、弾性材料1を得た。
【0057】
【表4】

【0058】
(弾性材料2の作成)
スチレンの添加量を80質量部添加した点以外は弾性材料1の作成と同様に行い、弾性材料2を作成した。
【0059】
(中間素材1の作成)
80℃に調節した密閉型ミキサーに、弾性材料として表5に記載の配合組成物を15分間混練した。
【0060】
【表5】

【0061】
次に、20℃に調整した二本ロール機で、上述の混合物と、加硫剤として硫黄2質量部、加硫促進剤として2−メルカプトベンゾチアゾール2質量部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛2質量部を5分間混合して中間素材1を作成した。
【0062】
(中間素材2の作成)
弾性材料をブチルゴム(商品名:268、エクソン化学製)100質量部、カーボンブラックを酸化亜鉛(商品名:23−K、ハクスイテック製)90質量部に変更した以外は中間層素材1の作成と同様に行い中間層素材2を作成した。
【0063】
(中間素材3〜7の作成)
弾性材料、電子導電粒子の成分及び添加量を表3に示すように変更した以外は、中間層素材1の作成と同様に行い中間層素材3〜10を作成した。尚、表12に記載の、表面処理した電子導電性粒子については、次に記載した方法で作成した。
【0064】
(表面処理した電子導電粒子Aの作成)
酸化スズ粉体(商品名:SN−100P、石原産業(株)製)50質量部とヘキシルトリメトキシシランの1%イソプロピルアルコール溶液500質量部を1時間混合した。この溶液をナウターミキサーで攪拌しながら100℃の湯浴で暖めてアルコールを蒸発、乾燥させ、130℃で1時間の加熱を行い表面処理した電子導電粒子Aを得た。
【0065】
(表面処理した電子導電粒子Bの作成)
酸化スズ粉体(商品名:SN−100P、石原産業(株)製)50質量部とヘキサデシルトリメトキシシランの1%イソプロピルアルコール溶液500質量部を1時間混合した。この溶液をナウターミキサーで攪拌しながら100℃の湯浴で暖めてアルコールを蒸発、乾燥させ、130℃で1時間の加熱を行い表面処理した電子導電粒子Bを得た。
【0066】
(表面処理した電子導電粒子Cの作成)
カーボンブラック(商品名:MA600、三菱化学製、比表面積153m2/g)10質量部とヘキシルトリメトキシシランの1%イソプロピルアルコール溶液500質量部を1時間混合した。この溶液をナウターミキサーで攪拌しながら100℃の湯浴で暖めてアルコールを蒸発、乾燥させ、130℃で1時間の加熱を行い表面処理した電子導電粒子Cを得た。
【0067】
(表面処理した電子導電粒子Dの作成)
カーボンブラック(商品名:MA600、三菱化学製、比表面積153m2/g)10質量部とヘキサデシルトリメトキシシランの1%イソプロピルアルコール溶液500質量部を1時間混合した。この溶液をナウターミキサーで攪拌しながら100℃の湯浴で暖めてアルコールを蒸発、乾燥させ、130℃で1時間の加熱を行い表面処理した電子導電粒子Dを得た
【0068】
(表面処理した電子導電粒子Eの作成)
金属酸化物粒子としてシリカ(商品名:Nipsil AQ、東ソー・シリカ製)7.0kgに、メチルハイドロジェンポリシロキサン140gを、エッジランナーを稼動させながら添加した。運転条件は、線荷重を588N/cm(60Kg/cm)、攪拌速度を22rpmで30分間混合攪拌を行った。
次に、カーボンブラック(商品名:MA600、三菱化学製、比表面積153m2/g)7.0kgを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加した。更に588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で60分間混合攪拌を行い、メチルハイドロジェンポリシロキサンを被覆したシリカにカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて80℃で60分間乾燥を行い、電子導電粒子を得た。このときの攪拌速度は22rpmで行った。
【0069】
得られた電子導電粒子10質量部にアミノ変性シリコーン(商品名:TSF4703、アミノ当量1600g/mol、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)の1%トルエン溶液500質量部を1時間混合した。この溶液をナウターミキサーで攪拌しながら100℃の湯浴で暖めてトルエンを蒸発、乾燥させ、160℃で1時間の加熱を行い表面処理した電子導電粒子Eを得た。
【0070】
(中間素材8の作成)
80℃に調節した密閉型ミキサーに、弾性材料として表6に記載の配合組成物を15分間混練した。
【0071】
【表6】

【0072】
次に、20℃に調整した二本ロール機で、上述の混合物と、加硫剤として硫黄2質量部、加硫促進剤としてジフェニルグアニジン4質量部、ベンゾチアゾールジスルフィド2質量部を5分間混合して中間素材8を作成した。
【0073】
(弾性層素材1の作成)
既膨張粒子1 29.8質量部とエステル化合物1であるジシクロペンチルフタレート1.2質量部を、1Lのガラスビーカ内で攪拌して混合した。ついでこの混合物を20℃に調整した二本ロール機で、中間素材1 100質量部に5分間混合し、弾性層素材1を作成した。
【0074】
(弾性層素材2〜19の作成)
使用する中間素材、エステル化合物の種類及び添加量を表13に示すように変更した。既膨張粒子の種類及び添加量を表14に示すように変更した。それ以外は弾性層素材1の作成と同様に行い弾性層素材2〜19を作成した。
表13において、化合物2はシクロペンチルシクロヘキシルフタレート、化合物3はシクロペンチルシクロヘプチルフタレート、化合物4はジシクロヘキシルフタレート、化合物5はシクロヘキシルシクロヘプチルフタレート、化合物6はジシクロヘプチルフタレート、化合物7はジブチルフタレート、化合物8はジオクチルフタレート、化合物9はジエチルヘキシルフタレートを示す。
【0075】
(弾性層素材20の作成)
表7に記載の配合組成物を、20℃に調整した二本ロール機で5分間混合し、弾性層素材20を作成した。
【0076】
【表7】

【0077】
(弾性層素材21〜51、54の作成)
使用する中間素材、エステル化合物の種類及び添加量を表13に示すように変更した。熱膨張性マイクロカプセルの種類及び添加量を表14に示すように変更した。それ以外は弾性層素材20の作成と同様に行い弾性層素材21〜51、及び54を作成した。
【0078】
(弾性層素材52の作成)
既膨張粒子1に代えて中実粒子1を11.9質量部添加した以外は弾性層素材1の作成と同様に行い弾性層素材52を作成した。
【0079】
(弾性層素材53の作成)
表8に記載の配合組成物を、1Lのガラスビーカ内で攪拌して混合した。ついでこの混合物を20℃に調整した二本ロール機で、中間素材1の100質量部に5分間混合し、弾性層素材53を作成した。
【0080】
【表8】

【0081】
(実施例1)
(帯電ローラA1の作成)
図4に示すように、基体供給部43、スクリュー部45、クロスヘッド部44よりなる押出成形装置を用いて、導電性基体を中心軸として、同軸上に円筒状に弾性層素材1を被覆して、弾性層素材の外径がφ13mmである予備成形体42を得た。導電性基体は、直径6mm、長さ258mmのステンレス製棒を使用した。
【0082】
次いで前記予備成形体42を、熱風式オーブンに入れ160℃で60分間加熱した。室温に冷却後、外周面をプランジカット式の円筒研磨機を用いて研磨して、外径がφ12mmの、導電性基体に弾性層を被覆した弾性ローラA1を得、これを帯電ローラA1とした。
【0083】
(帯電ローラの抵抗測定)
帯電ローラの抵抗は、常温常湿(温度23℃湿度55%RH)の環境中に24時間以上放置した後に、図2に示す電気抵抗値測定用の機器を用いて測定した。
まず、帯電ローラを軸受け33により、円柱形金属32(直径30mm)に対して帯電ローラが平行になるように当接させる(図2(a))。ここで当接圧はバネによる押し圧力により一端が4.9N、両端で合計9.8Nに調整した。
【0084】
次に、図示しないモータにより周速45mm/secで駆動回転される円柱形金属32に従い帯電ローラが従動回転する。従動回転中、図2(b)の様に、抵抗測定用電源34から直流電圧−200Vを印加し、帯電ローラに流れる電流値を電流計35で測定する。印加電圧、電流値から、帯電ローラの抵抗を算出した。帯電ローラA1の電気抵抗値は5.8x105Ωであった。
【0085】
(硬度測定)
日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠したAsker−C型スプリング式ゴム硬度計(高分子計器(株)社製)を用い、Asker−C硬度を測定した。帯電ローラは、常温常湿(温度23℃湿度55%RH)の環境中に5時間以上放置した。帯電ローラに対して、帯電ローラの中心に上記硬度計を1kgの力で当接させてから30秒後の測定値とした。帯電ローラA1のAsker−C硬度は62°であった。
【0086】
(弾性層の粘弾性測定)
帯電ローラ1の弾性層から、カッターを使用して幅2mm、厚み1mm、長さ20mmの短冊状の小片を切り出した。小片をJIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、動的粘弾性測定装置(商品名:DVA−200、アイティー計測制御製)を用い、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度1℃/分で−50℃から150℃まで測定した。得られたデータから、低温時の特性を判定するため、15℃の損失正接(tanδ)を求めた。帯電ローラA1のtanδは1.6であった。
【0087】
(抵抗保持率の評価)
帯電ローラの抵抗保持率を上述の電気抵抗値の測定装置を用いて、以下に示す方法で評価した。帯電ローラを回転させながら、試験初期の段階で帯電ローラの電流値が300μAになるように印可電圧を調節した。次に、回転させながら8時間通電し、ついで回転のみを16時間行う繰り返し試験を10回行った。10回の繰り返し試験終了後に電流値を測定した。繰り返し試験後の電流値を初期の電流値で除した値を抵抗保持率(%)として表6に示す。試験環境としては、温度15℃湿度10%RHで行った。帯電ローラA1の抵抗保持率は92%であった。
【0088】
(弾性層中の中空粒子の平均粒径)
弾性層に含有される既膨張粒子に由来する中空粒子、熱膨張性マイクロカプセルに由来する中空粒子について、以下の方法で平均粒子径を求めた。弾性層の長手方向に無作為に選択した10箇所について、1辺が2mmの略立方体をカッターで切り出した。ついで500μmに亘って、20nmずつ集束イオンビーム(商品名:FB−2000C、日立製作所製)にて切り出し、その断面画像を撮影した。そして同じ中空粒子を撮影した画像を組み合わせ中空粒子の立体像を求めた。この立体像から、最大になる投影面積を求め、その面積に等しい円の半径をその中空粒子の粒径とした。この作業を同一箇所から切り出した10個の中空粒子について行った。同様の測定を帯電部材の長手方向10箇所について行い、得られた計100個の平均値を中空粒子の平均粒径とした。帯電ローラA1の中空粒子の平均粒径は4.1μmであった。
【0089】
(モヤ画像、ポチ画像の評価)
プロセスカートリッジとしてカラーレーザープリンタ(商品名:LBP5400、キヤノン株式会社)のブラック用プロセスカートリッジを用いた。プロセスカートリッジから付属の帯電ローラを取り外し、作製した帯電ローラA1をセットした。また、帯電ローラA1は、感光体に対し、一端で4.9N、両端で合計9.8Nのバネによる押し圧力で当接させた。次いで上述のプリンタを改造することにより、帯電ローラA1に直流電圧−1000Vを印加した状態で、感光体を回転駆動させながら、36時間連続で電圧を印可した。
【0090】
つぎに、LBP5400を改造することにより、プロセススピードを180mm/sに設定したプリンタと、220mm/sに設定したプリンタを作成した。プロセススピードを180mm/sに設定したプリンタを用いて、先の連続通電した帯電ローラA1を装着し、画像出力耐久試験を行った。画像出力耐久試験は、1枚画像を出力しプリンタの回転を停止させた後、また画像形成動作を再開するという動作を繰り返し、6000枚の画像出力を行った。画像出力時の印字率は1%で行った。この画像出力耐久試験を、温度15℃湿度10%RHで行った。耐久試験中、条件1として初期、条件2として3000枚通紙の直後、及び条件3として6000枚目の時点でハーフトーン画像を出力し、その画像からモヤ画像の発生状態を評価した。
次いで、条件4としてプロセススピードを220mm/sに設定したプリンタを用いて、LL環境でハーフトーン画像を出力し、その画像からモヤ画像の発生状態、及びポチ画像の発生状態を評価した。上記の発生状態の評価は、以下に示す評価基準にて行った。
【0091】
(通電劣化起因のモヤ画像の評価基準)
ランクA:未発生
ランクB:ごく軽微な発生のみで、ほとんど確認できないレベルである
ランクC:画像の一部に発生が認められるが、実用上問題ない
ランクD:画像全体に発生し、著しく画像の品質が低下
【0092】
(帯電部材付着物質起因のポチ画像の評価基準)
ランクA:帯電部材付着物質に起因するポチ画像の発生なし。
ランクB:一部に軽微なポチ画像が認められるのみであり、帯電ローラピッチは確認できない。
ランクC:ポチ状画像が目立ち、画質の低下が認められる。
帯電ローラA1の評価結果は、モヤ画像評価が条件1でA,条件2でA、条件3でA、条件4でB、ポチ画像評価が条件4でAであった。
【0093】
(実施例2)
弾性層素材1を弾性層素材2に変更した以外は実施例1と同様の方法で弾性ローラA2を作成した。
【0094】
(表面層用塗布液の調製)
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液(商品名:プラクセルDC2016、ダイセル化学工業社製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が19質量%となるように調整した。
【0095】
この溶液100質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、表9に記載の配合組成物を混合し混合液を得た。
このとき、ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート/ポリオールの「NCO/OH=1.0」となる量であった。
【0096】
【表9】

内容積450mLのガラス瓶に上記混合液210gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて50時間分散した。ついで、ガラスビーズを濾過により除去して表面層用塗布溶液を得た。
【0097】
(表面層の形成)
弾性ローラA2に表面層用塗布液を、1回ディッピング塗布し、常温で30分間風乾した。その後、熱風循環乾燥機にて80℃で1時間、更に160℃で1時間乾燥して、帯電ローラA2を作成した。なお、ディッピング塗布は、浸漬時間9秒、ディッピング塗布引き上げ速度、初期速度20mm/s、最終速度2mm/s、その間は、時間に対して直線的に速度を変化させて行った。作成した帯電ローラA2の電気抵抗値を実施例1と同様に測定した結果、2.8x106Ωであった。
【0098】
実施例1と同様にして、帯電ローラA2の測定及び評価を行った。結果を表15、表17に示す。
【0099】
(実施例3〜19)
弾性層素材2を表14に示すように変更した以外は実施例2と同様の方法で帯電ローラA3〜A19を作成した。
【0100】
実施例2と同様にして、帯電ローラA3〜A19の測定及び評価を行った。結果を表15、表17に示す。
【0101】
(実施例20)
(帯電ローラA20の作成)
図4に示す押出成形装置を用いて、導電性基体1を中心軸として、同軸上に円筒状に弾性層素材20を被覆して、弾性層素材の外径が直径(φ)10mmである予備成形体42を得た。導電性基体は、直径6mm、長さ258mmのステンレス製棒を使用した。予備成形体の弾性層素材20の端部を除去して、導電性基体の端部を露出させた。
【0102】
次いで前記予備成形体を図3に模式的に示すように、内径が直径(φ)12mmの円筒形キャビティを有する金型41に設置して、前記予備成形体を加熱・発泡させた。前記金型の加熱は図示しないヒータ及び温度調整装置を用いて160℃で20分間行い、さらに熱風炉160℃で30分加熱して二次加硫を施し、外径が直径(φ)12mm、長さが224.2mmの弾性ローラA20を作成した。次いで、弾性ローラA20に、実施例2と同様にして表面層を形成し、帯電ローラA20を得た。
【0103】
実施例1と同様にして、帯電ローラA20の測定及び評価を行った。尚、帯電ローラA20の中空粒子の粒子径は、マイクロカプセル1の膨張により形成された中空粒子の粒子径を測定した。
帯電ローラ20は、評価画像の一部にごく軽微なモヤ画像の発生が見られたが、実用上問題ないレベルであった。またポチ画像は未発生であった。
【0104】
(実施例21〜43)
弾性層素材20を表13に示すように変更した以外は実施例20と同様の方法で帯電ローラA21〜A43を作成した。
実施例1と同様にして、帯電ローラA21〜A43の測定及び評価を行った。帯電ローラA21〜A43の結果を表16、表18に示す。
【0105】
(比較例1〜8、10、11)
弾性層素材20を表13に示すように変更した以外は実施例20と同様の方法で帯電ローラA44〜A51、A53、A54を作成した。
実施例1と同様にして、帯電ローラA44〜A51、A53、A54の測定及び評価を行った。帯電ローラA44〜A51、A53、A54の結果を表16、表18に示す。
【0106】
(比較例9)
弾性層素材2を弾性層素材52に変更した以外は実施例2と同様の方法で帯電ローラA52を作成した。
実施例1と同様にして、帯電ローラの評価を行った。帯電ローラA52の結果を表16、表18に示す。
【0107】
上記に示すように、本発明の帯電部材である帯電ローラは、抵抗保持率が高く、モヤ画像、ポチ画像の発生が抑制され、電子写真装置、プロセスカートリッジに組み込んで好ましいものである。
【0108】
【表10】

【0109】
【表11】

【0110】
【表12】

【0111】
【表13】

【0112】
【表14】

【0113】
【表15】

【0114】
【表16】

【0115】
【表17】

【0116】
【表18】

【符号の説明】
【0117】
1 導電性基体 2 弾性層 3 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の基体と、
オレフィン系ゴムと電子導電粒子とを含む導電性の弾性層とを有し、
該弾性層は、塩化ビニル重合体をシェルとする中空粒子および下記式(1)で示すエステル化合物をさらに含有していることを特徴とする帯電部材:
【化1】

(式(1)中、R1、R2は炭素数5〜7の脂環式炭化水素基を示す。)。
【請求項2】
前記電子導電粒子が、カーボンブラックおよび金属酸化物粒子からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の帯電部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−173580(P2012−173580A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36480(P2011−36480)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】