説明

帯電防止型光学フィルム、偏光板、画像表示装置、および液晶表示装置

【課題】光学フィルムの少なくとも片面に帯電防止層が積層されている帯電防止型光学フィルムであって、帯電防止効果、光学特性、耐久性および外観性に優れ、安価且つ簡便に製造でき、生産性に優れる帯電防止型光学フィルムを提供すること。
【解決手段】支持体の少なくとも片面に帯電防止層を有する帯電防止型光学フィルムであって、該帯電防止層が化合物半導体および化合物半導体を溶解する溶媒を含有する溶液を、該溶液により膨潤される支持体上に、塗布および乾燥させることにより形成される層であることを特徴とする帯電防止型光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止効果、光学特性、耐久性および外観性に優れ、安価且つ簡便に製造でき、生産性に優れる帯電防止型光学フィルム、偏光板、画像表示装置、および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)等は、その画像形成方式から液晶セルの両側に偏光素子を配置することが必要で、一般的には偏光板が粘着されている。また液晶パネルには偏光板の他に、ディスプレイの表示品位を向上させるために、種々の光学フィルム、例えば着色防止のための位相差板、視野角改善のための視野角拡大フィルム、コントラストを高めるための輝度向上フィルム、外光の反射や映りこみを防止するための反射防止フィルム等が用いられている。これらのフィルムは総称して光学フィルムと呼ばれている。
【0003】
これらの光学フィルムは、通常、輸送、製造工程において光学フィルムの表面に傷や汚れがつかないように、その表面に表面保護フィルムが貼り合わされている。該表面保護フィルムは、光学フィルム単体の状態から貼り合わされており、LCD等に貼り付けられた後に剥離され、一度剥離した後に同じまたは別の表面保護フィルムを再度張り合わせる場合もある。これらの作業のうち、表面保護フィルムを剥離する工程では、剥離帯電を生じるので、この静電気によってLCDパネル等の破壊や、塵付きが生じる問題があった。またパネルが完成した後、視認側(上側)の光学フィルム(一般には反射防止フィルム)ではその表面の汚れを布等で拭く際に、塵付きや画像乱れの問題を生じることがあり、入射側(下側)の光学フィルムであれば、拡散フィルムとの接触で帯電を生じ、画像が乱れることがあった。
【0004】
特に、IPS方式で駆動するLCDの場合には、液晶セルの片側のセル基板に、通常ITO処理が施されるが、その反対面には帯電防止処理が施されていない。このため、ITO処理が施されていない面に貼り付けた光学フィルムについては、その表面保護フィルムを剥す際に剥離帯電を生じ画像の乱れを生じることがあった。VA方式で駆動するLCDの場合にも、ITO処理したセル基板を液晶セルの片側に用いる場合には、同様の乱れが生じることがある。
【0005】
これらの問題を解決するために、偏光板の表面に帯電防止膜が形成された帯電防止膜付偏光板(特許文献1)、偏光フィルムの片側または両面に透明導電層を設けた偏光板(特許文献2、3)、基板フィルムの片面または両面に少なくとも1層の透明導電性層を設けた多層構成の反射防止フィルム(特許文献4、5)が開示されている。
【0006】
従来、光学フィルムの表面に帯電防止能を形成する方法として、帯電防止層の形成樹脂液を光学フィルムの表面に塗布し、乾燥等することにより形成する方法が用いられている。特許文献1、特許文献3、特許文献4、特許文献5に記載の技術も、偏光板の表面や光学フィルムの一つの層として、帯電防止塗料や帯電防止剤を配合したコート剤をコーティングすることにより形成している。
【0007】
しかし、これらの技術では、1)コート剤の有機溶剤による偏光板の変質・劣化があったり、2)十分な導電性が得られないため帯電防止効果が不十分であったり、3)形成した帯電防止層と隣接する層との密着不良が発生したり、4)形成した帯電防止層の膜質が脆弱なため耐傷性の問題等が指摘され、これら1)〜4)の問題の改良が望まれていた。また、塗膜の透明性を高めるためには、導電性塗料作成時に、金属粒子(金、白金、銀等)、金属酸化物微粒子(ITO、ATO、AZO、GZO、PTO、FTO等)、有機導電性ポリマー粒子等を分散溶媒に微粒子状態で均一に分散させる必要があり、工程上の煩雑さと製造コストがかかる。
【0008】
また、特許文献2の技術は、酸化錫、酸化インジュウム、金、銀等の材料を用い、真空蒸着方式、スパッタリング方式、又はイオンプレーティング方式などにより透明導電層を形成しているが、これらの方法は、コーティング方式等の塗工方法に比べ、製造コストが高く、生産性が低いということがある。
【0009】
一方、製造の煩雑さが比較的少ない導電性皮膜の作成方法として、支持体上に下地層を設け、その上に化合物半導体の溶液を塗布して、この下地の表面近くに化合物半導体の微粒子を高濃度で形成させる方法(特許文献6)が提示され、比較的高い導電性が得られているが、導電性付与のため下地層設置が必要なこと、フィルムの光透過性が低い等、光学フィルム用途として改善が求められていた。
【特許文献1】特開平2−73307号公報
【特許文献2】特開平4−124601号公報
【特許文献3】特開2004−338379号公報
【特許文献4】特開平10−206603号公報
【特許文献5】特開2001−264503号公報
【特許文献6】特公昭48−9984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、光学フィルムの少なくとも片面に帯電防止層が積層されている帯電防止型光学フィルムであって、帯電防止効果、光学特性、耐久性および外観性に優れ、安価且つ簡便に製造でき、生産性に優れる帯電防止型光学フィルムを提供することを目的とする。さらには、当該帯電防止型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究したところ、化合物半導体の溶液と該溶液により膨潤される支持体とによって高い利便性をもって帯電防止層を作成することができ、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明は、以下の各構成からなる。
【0012】
[1]
支持体の少なくとも片面に帯電防止層を有する帯電防止型光学フィルムであって、該帯電防止層が化合物半導体および化合物半導体を溶解する溶媒を含有する溶液を、該溶液により膨潤される支持体上に、塗布および乾燥させることにより形成される層であることを特徴とする帯電防止型光学フィルム。
[2]
前記化合物半導体がハロゲン化第一銅であることを特徴とする前記[1]に記載の帯電防止型光学フィルム。
[3]
前記溶液が、更にバインダーを含有することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の帯電防止型光学フィルム。
[4]
前記支持体が、前記溶液により膨潤される下塗り層を有する前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム。
[5]
前記支持体の前記溶液に対する膨潤度が1.2〜2.5の範囲にあることを特徴とする前記[1]乃至[4]のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム。
[6]
前記帯電防止層の表面抵抗が1010Ω/□以下であり、かつ全光線透過率が85%以上であることを特徴とする前記[1]乃至[5]のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム。
[7]
帯電防止層を有する面側または他面側に、粘着層をさらに有することを特徴とする前記[1]乃至[6]のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム。
[8]
反射防止層をさらに有することを特徴とする前記[1]乃至[7]のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム。
[9]
偏光膜と該偏光膜の両側に設けられた保護フィルムを有する偏光板であって、少なくとも一方の保護フィルムが前記[1]乃至[8]のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルムであることを特徴とする偏光板。
[10]
前記[1]乃至[8]のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム、または前記[9]に記載の偏光板を有することを特徴とする画像表示装置。
[11]
IPS方式またはVA方式の液晶セルを有する液晶表示装置であって、前記[1]乃至[8]のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム、または前記[9]に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、帯電防止性に優れ、光学特性、耐久性および外観性に優れ、塗布方式という簡便な工程で帯電防止層が形成でき、安価且つ簡便に製造でき、生産性に優れる帯電防止型光学フィルムが提供される。また、本発明の帯電防止型光学フィルムは、化合物半導体の溶液により膨潤される支持体を用いることおよびその膨潤度をコントロールすることにより、化合物半導体の微粒子を偏在した形で析出させることができるため、導電性が高くかつ透明性の優れた帯電防止層が得られる。
特に化合物半導体がハロゲン化第一銅である場合、安価で大量に帯電防止型光学フィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、帯電防止性に優れ、光学特性、耐久性および外観性に優れた帯電防止型光学フィルムを有する画像表示装置(特に液晶表示装置)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の帯電防止型光学フィルムは、支持体の少なくとも片面に帯電防止層を有する帯電防止型光学フィルムであって、該帯電防止層が化合物半導体、および化合物半導体を溶解する溶媒を含有する溶液を、該溶液により膨潤される支持体上に、塗布および乾燥させることにより形成される層であることを特徴とする。
【0015】
<帯電防止層>
本発明の帯電防止型光学フィルムの必須の構成層である帯電防止層は、化合物半導体と溶媒とを含む溶液を支持体上に塗布乾燥して形成される層である。
【0016】
〔化合物半導体〕
本発明の帯電防止型光学フィルムにおける必須の構成層である帯電防止層に用いられる化合物半導体は、2つ以上の原子がイオン結合してなる半導体であり、室温における体積抵抗値が、10Ω・cm以下であるものを示す。
化合物半導体の形成材料としては、特に限定されないが、ビスマス、金、銀、銅、インジュウム、イリジウム、鉛、ニッケル、パラジウム、レニウム、錫、テルリウムおよびタングステンから選ばれる金属のハロゲン化合物 ; チオシアン酸第1銅、チオシアン酸第2銅、チオシアン酸銀、あるいはヨードマーキュレート等を挙げることができる。本発明では、ヨウ化第1銅、ヨウ化銀が好ましく、コストや溶液での扱いが簡便なヨウ化第一銅が最も好ましい。
【0017】
〔可溶化剤〕
化合物半導体は、水および多くの有機溶剤に易溶性でないので、その可溶化剤として、化合物半導体と可溶性錯塩を生成する錯化合物を使用することができる。
【0018】
上記錯化合物としては、一般にヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム等のアルキル金属ハライドおよびアンモニウムハライドが、ハロゲン化銀、ハロゲン化第一銅、ハロゲン化第一錫、ハロゲン化鉛等のハロゲン化物である化合物半導体の錯化合物として使用することができる。これらを用いて生成した錯塩は後述する揮発性ケトン溶剤に易溶性になる。通常は、後述する溶液を塗布、乾燥して、溶媒を除去することにより生成する帯電防止層中に存在する半導体微粒子中には、上記錯化合物が残るため、帯電防止層を水で洗浄することにより、該錯化合物を取り除くことが好ましい。ただし、場合によっては、錯塩自体が十分な導電性を示す場合がある。この場合、該錯塩自身を化合物半導体として用いることもできる。
【0019】
〔溶媒〕
上記化合物半導体を溶解する溶媒としては、揮発性ケトン溶剤が好ましく用いられる。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、メチルイソプロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−t−ブチルケトン、ジアセチル、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、メシチルオキサイド、クロロアセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等をあげることができる。これらの溶媒は単独で用いても、任意の混合比で混合して用いてもよい。
【0020】
またヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウムを錯化合物として使用した場合、前記のケトン溶剤以外の溶剤を、錯塩を溶かす溶剤として使用することができる。例えばメチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソアミルアセテート、イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、メチルセルソルブアセテート等を有効に使用することができる。
【0021】
化合物半導体としてヨウ化第1銅を用いる場合には、溶媒であるアセトニトリルと錯塩を作りアセトニトリルに溶解するので、溶媒としてアセトニトリルを用いるのが好ましい。そのため、塗布、乾燥により、錯化合物を残留させることなく、帯電防止層中にヨウ化第1銅の微粒子を形成することが可能である。この点からも、化合物半導体の形成材料としては、ヨウ化第1銅が好ましい。
【0022】
〔バインダー〕
前記溶液には、化合物半導体および化合物半導体を溶かす溶媒とともにバインダーを含有していてもよい。用いてもよいバインダーとしては、それ自身が皮膜形成能を有し、化合物半導体を溶解する溶剤に可溶な樹脂であれば、広い範囲の樹脂を用いることができる。例えば、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、セルロースアセテートブチレート等をあげることができるが、これらに限定されない。
【0023】
上記バインダーとして、半導体微粒子を固定化することが可能な樹脂硬化物を形成する硬化性樹脂が有効に用いられる。硬化性樹脂は、化合物半導体を溶解する溶媒に可溶であり、塗布中あるいは塗布後の処理(加熱、光照射、化学反応等)により、皮膜形成可能な硬化性樹脂であれば、公知の広い範囲のモノマー、プレポリマー、架橋剤等を使用することができる。
【0024】
硬化性樹脂としては、例えば架橋剤ハンドブック(大成社版、1981年発行)、最新UV硬化実用便覧(技術情報社版、2005年発行)、「UV・EB硬化技術の現状と展望」(シーエムシー出版、2002年発行)に記載の化合物を用いることができる。具体例としては、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート、トリレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンの付加体、キシレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンの付加体等のイソシアナート基含有化合物、脂肪族ジオールとエピクロルヒドリンとの反応体、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物であるエポキシ基を有する化合物、メラミン構造を有する化合物、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能の重合性基(アクリロイル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基等)を有するモノマー、オリゴマーあるいはポリマーと熱重合開始剤の組み合わせ、多官能の重合性基を有するモノマー、オリゴマーあるいはポリマーと「イルガキュア907」(チバ・ガイギー製)等の光重合開始剤との組み合わせ、金属アルコキシドの加水分解・縮合反応により硬化する化合物等を挙げることができる。また、「コロネートL」(商品名、日本ポリウレタン製)、エポキシ樹脂「エピコート828」(商品名、シェル製)等の市販品を用いることも可能である。
【0025】
〔配合割合〕
化合物半導体は、溶液中の濃度が0.1〜50質量%の範囲となるように用いるのが好ましい。
また、バインダーは化合物半導体100質量部に対し、好ましくは3〜200質量部、更に好ましくは5〜100質量部、最も好ましくは10〜50質量部の範囲で使用される。バインダーの使用量が少ないと、化合物半導体の固定が不十分となり、経時での結晶化を生じ、塗膜に曇りが発生することがあり、バインダーの量が多いと伝導性が低下する傾向が見られるので、上記範囲内とするのが好ましい。
可溶化剤として錯化合物を用いる場合、その使用量は、化合物半導体100質量部に対して10〜1000質量部とするのが好ましく、50〜500質量部とするのが更に好ましい。
【0026】
上記溶液は、乾燥後の質量が5〜2000mg/mの割合で塗布することが好ましく、特に10〜1000mg/mの割合で塗布することが好ましい。バインダーに対する化合物半導体の量が多すぎたり、塗布量が多すぎる場合は、フィルムの全光線透過率が低下する場合があり、また塗布量が少なすぎると導電性の低下に繋がる場合があるので、上記範囲内とするのが好ましい。
【0027】
<製造方法>
本発明の帯電防止型光学フィルムは、例えば、上記溶媒に可溶化された化合物半導体と好ましくは溶媒に可溶なバインダーとを溶解して溶液を得、得られた溶液により膨潤する支持体上あるいは支持体上に形成することにより支持体が有する下塗り層上に塗布し、次いで乾燥を行い、溶媒を蒸発させることにより帯電防止層を形成し、粘着層や反射防止層等を公知の手法により形成する等して得ることができる。
【0028】
上記溶液を塗布する方法は、例えば、回転塗布、浸漬塗布、噴霧塗布、バー塗布、連続塗布機によるビード塗布、連続塗布機によるバー塗布、連続塗布機によるホッパー塗布、連続的に移動するウィック法などであるが、これに限定されるものではない。
【0029】
このようにして得られる帯電防止層においては、溶解していた化合物半導体が粒子状で析出する。層内で析出した化合物半導体粒子の形状は、好ましくは球状、板状、針状であり、平均粒子径は、10nm〜10μmであるのが好ましく、50nm〜5μmであるのが更に好ましい。
そして、本発明においては、上記溶液により膨潤する支持体を用いるため、化合物半導体が溶解された上記溶液が支持体上部に浸透し、支持体上部に偏在して浸透した状態で乾燥されるため、支持体の上部に化合物半導体の微粒子が偏在した形で析出する。このため、高い導電性が得られる。また支持体の上部に化合物半導体の微粒子が多く存在するため、支持体と支持体上に積層される上層との密着性を改良することが可能である。
ここで支持体における膨潤する部分である上部とは、支持体の厚さ方向で帯電防止層側の1〜40%の部分を意味する。また、化合物半導体は、その30〜95質量%が該上部に存在するのが好ましい。
【0030】
<支持体>
本発明に用いられる支持体は、化合物半導体を溶かした溶液により膨潤される支持体である。該支持体の形成材料は、上記溶液により膨潤するものであれば特に限定されず、種々の材料を使用することができる。具体的には例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやAS樹脂等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。またポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系もしくはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アクリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーなどが挙げられる。
【0031】
本発明においては、上記形成材料により形成される基材のみからなるものを支持体として用いてもよいが、支持体の膨潤度を最適の膨潤度にコントロールするために、該基材上に下塗り層を塗布形成したものを支持体として用いることもできる。
下塗り層は、湿気硬化型ポリウレタンや、エポキシ樹脂等の架橋度をコントロールした樹脂や化学的に膨潤度をコントロールできる樹脂を、溶剤に溶解してなる下塗り層用塗料を上記基材に塗工・乾燥することにより形成することができる。
湿気硬化型ウレタン樹脂としては、トリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパン付加体、キシレンジイソシアナートのトリメチロールプロパン付加体、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート等を挙げることができる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物等を挙げることができる。
化学的に膨潤度をコントロールできる樹脂としては、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂等を挙げることができる。
溶剤としては、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。
【0032】
支持体の厚さは特に制限されないが、30〜300μmとするのが好ましく、50〜100μmとするのが更に好ましい。下塗り層を設ける場合の下塗り層の厚さは特に制限はないが、好ましくは0.01〜50μm、更に好ましくは0.5〜10μmである。
【0033】
本発明の化合物半導体を溶かした溶液により、膨潤する支持体あるいは支持体上に設けた下塗り層の膨潤度は下式で与えられ、Toが10μmの時、好ましくは1.2〜2.5の範囲であり、より好ましくは1.3〜1.7である。
【0034】
膨潤度=T1/To
(Toは膨潤前の膜厚、T1は上記溶液に10分間浸漬した後の膜厚)
【0035】
上記範囲内の膨潤度に調整された支持体上に、上記溶液を塗布し乾燥することにより、支持体上部に、化合物半導体の微粒子を偏在した形で析出させることができるため、導電性が高くかつ透明性の優れた帯電防止層が得られる。
【0036】
<物性等>
本発明の帯電防止型光学フィルムにおける該帯電防止層は、表面フィルムの静電防止を目的にしたものなので、表面抵抗が1010Ω/□以下であり、かつ全光線透過率が85%以上であることが好ましい。表面抵抗は、さらに好ましくは10Ω/□以下、全光線透過率の更に好ましい範囲は90%以上である。
【0037】
帯電防止層の表面抵抗が1010Ω/□を超えると、光学フィルムの最表面の抵抗値が上昇してしまい、1012Ω/□を超えると、帯電防止能が十分でなく、表面保護フィルムを剥離する際に静電気が発生・帯電し、この静電気により液晶パネルの回路が破壊される場合があり、また最表面の表面抵抗が1011Ω/□以上となると、画像乱れが生じることがあるので、光学フィルム用の帯電防止層は1010Ω/□以下であることが好ましい。
【0038】
また、本発明の帯電防止型光学フィルムを反射防止フィルムと兼ねる態様では、通常、反射防止フィルムは偏光板や液晶表示装置の最外層として設置されるため、表面保護フィルム剥離の帯電防止のほかに、静電気による表面に塵埃等の付着を防止する必要があり、最表面の表面抵抗が1013Ω/□以下になるように、帯電防止層の位置、導電性が調整されていることが好ましい。
【0039】
また、全光線透過率が85%未満であると、輝度不足となったり、画像のコントラスト低下に繋がるので上記範囲内であるのが好ましい。
【0040】
〔帯電防止型光学フィルムが有するその他の層〕
本発明の帯電防止型光学フィルムは、上述の帯電防止層の他に、他の層を具備することができる。帯電防止型光学フィルムが有するその他の層として、好ましくは、反射防止層、粘着層である。
【0041】
好ましい層構成の例を下記に示す。
・支持体/帯電防止層/反射防止層
・支持体/帯電防止層/粘着層
・粘着層/支持体/帯電防止層
・支持体/帯電防止層/反射防止層/粘着層
・粘着層/支持体/帯電防止層/反射防止層
【0042】
<粘着層>
本発明の帯電防止型光学フィルムは、帯電防止層を有する光学フィルム面側あるいは反対面に粘着層が積層されていることが好ましい態様である。光学フィルムを液晶セル、あるいは他の光学フィルム等に粘着する際に粘着剤が使用される。このような場合に、光学フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は光学フィルムの片面に予め粘着層として設けられた粘着型の光学フィルムとすることが好ましい。
【0043】
粘着層は、粘着剤を光学フィルムの最表面に位置するように支持体、帯電防止層又は反射防止層に塗布するか、又は予め粘着剤が塗布されて粘着層が形成された剥離シートを貼り付けることにより形成することができる。
この際用いることができる粘着剤としては、ブチルアクリレート等のアクリル系粘着剤等を用いることができる。
粘着層を設ける場合の厚さは、5〜50μmであるのが好ましく、10〜40μmであるのが更に好ましい。
【0044】
<反射防止層>
反射防止層としては、通常この種の光学フィルムに用いられる低屈折率層、高屈折率層、中屈折率層等を特に制限無く用いることができる。
これらの他、通常、光学フィルムに形成されているハードコート層等の他の層を、通常の層の配置で形成することもできる。
【0045】
本発明の帯電防止型光学フィルムが、反射防止層が形成されてなる反射防止フィルムである場合には、少なくとも、支持体、帯電防止層、反射防止層を含み、帯電防止層の設置位置は特に制限無く、例えば、特許3507719号公報、特開平10−306902号公報、特開平14−333525号公報、特開2001−110238号公報、特開2003−294904号公報、特開2005−196122号公報等に記載の層構成に適用することができる。また使用される支持体としては、偏光板の透明保護フィルムとして後述するものが使用される。
【0046】
〔偏光板、画像表示装置、液晶表示装置〕
本発明の帯電防止型光学フィルムは、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられ、目的に応じて、通常、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、精度向上フィルム、反射防止フィルム等が複数枚貼り合わせて使用されるが、その種類は特に制限がない。
【0047】
<偏光板>
次に、本発明の偏光板について説明する。
本発明の偏光板は、偏光膜と該偏光膜の両側に設けられた保護フィルムとを有する偏光板であって、少なくとも一方の保護フィルムが上述の本発明の帯電防止型光学フィルムであることを特徴とする。
偏光板は、液晶パネル等に必須の構成材である。
【0048】
偏光膜は、特に制限されず各種のものを使用できる。偏光膜としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも前者が一般的に使用され、その厚みは5〜80μm程度である。
【0049】
前記偏光膜の片面または両面に設けられる保護フィルムのうち少なくとも1方は、上述の本発明の帯電防止型光学フィルムである。帯電防止型光学フィルム以外のフィルムを用いる場合、保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやAS樹脂等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。またポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系もしくはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アクリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーなどが上げられ、単独あるいは併用して保護フィルムが作成される。また透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化物、紫外線硬化物の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0050】
保護フィルムの厚さは適宜決定されるが、一般には強度や取り扱い性等の作業性、薄層性などの点から1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましい。また保護フィルムは、できるだけ色付がないことが好ましい。保護フィルムの厚み芳香の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。
【0051】
保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性などからトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが好適である。なお、偏光膜の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料からなる保護フィルムを用いても良い。前記偏光膜と保護フィルムとは通常、水系粘着剤等を解して密着している。水系接着剤としては、イソシアナート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。
【0052】
前記保護フィルムの偏光膜を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施してもよい。
【0053】
<画像表示装置、液晶表示装置>
次に、本発明の画像表示装置及び液晶表示装置について説明する。
本発明の画像表示装置は、上述の本発明の帯電防止型光学フィルム、または上記の本発明の偏光板を有することを特徴とする。
本発明の液晶表示装置は、IPS方式またはVA方式の液晶セルを有する液晶表示装置であって、本発明の帯電防止型光学フィルム、または本発明の偏光板を有することを特徴とする。
すなわち、本発明の帯電防止型光学フィルム及び本発明の偏光板は、液晶パネル等の画像表示装置の画面の表面フィルムとして使用することができる。
使用される液晶パネルとしては、棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させるVAモード、さらにそれをマルチドメイン化したMVAモードや、ネマティック液晶に横電界をかけてスイッチングする方式のIPSモード、さらに棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に対称的に配向させるOCBモードが、視野角が広いモードであるため好ましく挙げられる。特に本発明の帯電防止型光学フィルム及び偏光板は、IPS方式またはVA方式の液晶セルを有する液晶表示装置に好ましく使用できる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって、限定されるものでない。
【0055】
各評価は以下のようにして行った。
【0056】
(表面抵抗値)
表面抵抗測定器(三菱化学(株)製、Hiresta MCP−HT450)を用いて、帯電防止層表面の表面抵抗を25℃、湿度60%RHの条件下で測定した。
【0057】
(塵埃除去性の評価)
光学フィルムをモニターに貼り付け、モニター表面に塵埃(布団、衣服の繊維屑)を振りかけた。クリーニングクロスで塵埃を拭き取り、塵埃の除去性を調べ、下記3段階で評価した。
○:塵埃が完全に取り除けたもの。
△:塵埃が若干残ったもの。
×:塵埃がかなり残ったもの。
【0058】
(剥離帯電量)
偏光板:
作成した帯電防止型楕円偏光板を、70mm×100mmの短冊状に切り出し、離型シートAを剥離して粘着層をガラスに貼り付けた。次いで、23℃/50%RH下で、表面保護フィルムを180°方向に、5m/分の一定速度で剥離した。剥離直後の偏光板表面の帯電量(kV)を、デジタル静電電位測定器(春日電機(株)製、KSD−0103)で測定した。なお表面保護フィルムの剥離力は1N/25mm以下である。
反射防止フィルム:
作成した反射防止層付帯電防止型光学フィルムを、70mm×100mmの短冊状に切り出し、裏面とガラスを両面テープにて固定した。光学フィルムの表面に、表面保護フィルム(離型シートB:PET、厚さ38μm、粘着層:アクリル系粘着剤、厚さ20μm)を貼り合わせた後、23℃、50%の条件下で、このフィルムを180°方向に、5m/分の一定速度で剥離した。剥離直後の光学フィルム表面の帯電量をデジタル静電電位測定器で測定した。
【0059】
(画面の乱れ)
表面のガラス基板がITO処理され、裏側のガラス基板はITO処理されていないIPS方式の液晶セルを用いた。当該液晶セルの裏面に、光学フィルムから離型シートAを剥離して粘着層を貼り合わせて液晶パネルを得た。この液晶パネルの貼り合わせ面を上にしてバックライト上に置いた。次いで、光学フィルム表面の表面保護フィルムを180°方向に、5m/分の一定速度で剥離して、液晶層の乱れを確認した。評価は、液晶層の乱れが元の状態に戻るまでの時間を測定した。時間が短いほど高性能である。
【0060】
(フィルム全光線透過率)
ヘイズメーター(日本電植製)を用いて測定した。
【0061】
〔実施例1〜4、比較例1、2〕
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材の上に、トリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパン付加体からなる湿気硬化型ウレタン樹脂5.0gをジクロロメタン95.0gに溶解した溶液をホッパーで塗布し、100℃で乾燥して、膜厚0.5μmの下塗り層を作成し、膜厚0.5μmの下塗り層を有する支持体を得た。また、別に膜厚10μmの下塗り層を作成し、膜厚10μmの下塗り層を有する支持体を得た。膜厚0.5μmの下塗り層を有する支持体上に、表1の組成からなる溶液を乾燥質量が100mg/mになるように、バー塗布、100℃で5分間乾燥し、帯電防止膜層を作成した。組成中光重合性材料を用いたものは、その後窒素パージ下(窒素濃度0.5%以下)で500mJ/cmのメタルハライドランプ光を照射して、帯電防止層の硬化を行った。そして離型シートA(片面にシリコン離型処理を施したPETシートに粘着剤を塗布して形成された粘着層を有するシート)の粘着層を前記帯電防止層に貼り付けて、帯電防止型位相差板としての帯電防止型光学フィルムを得た。
一方、厚さ100μmのポリビニルアルコールフィルムを40℃のヨウ素水溶液中で5倍に延伸したのち50℃で4分間乾燥させて偏光膜を得た。この偏光子の両側にトリアセチルセルロースフィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて接着し、偏光板を得た。
そして、該偏光板の片面にアクリル系粘着剤からなる粘着剤層(厚さ25μm)を形成して粘着型偏光版を作成した。前記帯電防止型位相差板の他面側に該粘着型偏光板の粘着剤層を張り合わせ、さらに偏光板の他面側に表面保護フィルム(離型シートB:PET、厚さ38μm、粘着剤層:アクリル系粘着剤、厚さ20μm)を貼り合せて帯電防止型楕円偏光板を作成した。
得られた帯電防止型楕円偏光板について、表面抵抗値、剥離帯電量、画面の乱れ、全光線透過率を評価した。結果を表1に示す。
また10μmの下塗り層を有する支持体を使って、それぞれの導電性塗料における膨潤度を測定した。その結果を表1に記す。
【0062】
【表1】

【0063】
〔実施例5〜8、比較例3、4、5、6〕
膜厚80μm、幅1340mmのトリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”(富士フイルム(株)製)からなる基材上に、下記組成の下塗り層用塗料(HC−1)をマイクログラビア塗工方式で、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃150秒乾燥の後、窒素パージ下(窒素濃度0.5%以下)でメタルハライドランプで50mJ/cm、500mJ/cm、2000mJ/cmエネルギー量で光照射して硬化させ、膜厚6μmおよび10μmの下塗り層が形成された支持体を作成した。
【0064】
<下塗り層用塗料(HC−1)>
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物“PETA”(日本化薬(株)製)50.0質量部
重合開始剤「イルガキュア127」(日本チバガイギー(株)製)2.0質量部、
フッ素界面活性剤(ヘキサフルオロメチレンアクリレートの重合体)0.75質量部
トルエン38.5質量部
【0065】
このうち膜厚6μmの支持体上に表2に記した組成の溶液を、マイクログラビア塗工方式で、搬送速度15m/分の条件で塗布し、100℃で150秒乾燥して、乾燥質量150mg/mの帯電防止層を作成した。組成中光重合性材料を用いたものは、その後窒素パージ下(窒素濃度0.5%以下)で500mJ/cmのメタルハライドランプ光を照射して、帯電防止層の硬化を行った。その帯電防止層の上に、反射防止層形成用の低屈折率用塗料(Ln1)をマイクログラビア塗工方式で、搬送速度15m/分の条件で塗布し、120℃150秒乾燥の後、さらに140℃で8分乾燥させてから窒素パージ5%以下)しながら900mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、膜厚9.5nmの低屈折層(最外層)を作成し、反射防止層付帯電防止型光学フィルムを得た。
【0066】
<低屈折用塗料(Ln1)>
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー“JN−7228”(固形分濃度6質量%、JSR(株)製13.0質量部
シリカ微粒子のMEK分散液“MEK−ST−L”(平均粒経45nm、固形分濃度30質量%、日産化学工業(株)製)1.3質量部、
オルガノシラン化合物KBM−5103(信越化学工業(株)製)0.6質量部、
メチルエチルケトン5.0質量部
シクロヘキサノン0.6質量部
【0067】
作成した反射防止層付帯電防止型光学フィルムについて、上記、表面抵抗値、塵埃除去性、剥離帯電量、全光線透過率を評価した。結果を表2に示す。
【0068】
一方、10μmの下塗り層が形成された支持体を使って、それぞれの溶液における膨潤度を測定した。その結果を表2に記す。
【0069】
【表2】

【0070】
表1、表2に示す結果から明らかなように、本発明の帯電防止型光学フィルムは、表面抵抗が低く、剥離帯電量が少なく、透明性も良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の少なくとも片面に帯電防止層を有する帯電防止型光学フィルムであって、該帯電防止層が化合物半導体および化合物半導体を溶解する溶媒を含有する溶液を、該溶液により膨潤される支持体上に、塗布および乾燥させることにより形成される層であることを特徴とする帯電防止型光学フィルム。
【請求項2】
前記化合物半導体がハロゲン化第一銅であることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止型光学フィルム。
【請求項3】
前記溶液が、更にバインダーを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の帯電防止型光学フィルム。
【請求項4】
前記支持体が、前記溶液により膨潤される下塗り層を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム。
【請求項5】
前記支持体の前記溶液に対する膨潤度が1.2〜2.5の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム。
【請求項6】
前記帯電防止層の表面抵抗が1010Ω/□以下であり、かつ全光線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム。
【請求項7】
帯電防止層を有する面側または他面側に、粘着層をさらに有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム。
【請求項8】
反射防止層をさらに有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム。
【請求項9】
偏光膜と該偏光膜の両側に設けられた保護フィルムを有する偏光板であって、少なくとも一方の保護フィルムが請求項1乃至8のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム、または請求項9に記載の偏光板を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
IPS方式またはVA方式の液晶セルを有する液晶表示装置であって、請求項1乃至8のいずれかに記載の帯電防止型光学フィルム、または請求項9に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−80315(P2009−80315A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249710(P2007−249710)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】