説明

帯電防止塗料、帯電防止膜及び帯電防止フィルム、光学フィルタ、光情報記録媒体

【課題】 導電性、可撓性、基材との密着性が高い帯電防止膜を塗布により形成できる帯電防止塗料を提供する。導電性、可撓性、基材との密着性が高く、塗布という簡易な製造方法で製造できる帯電防止膜を提供する。
【解決手段】 本発明の帯電防止塗料は、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物と、溶媒とを含む。本発明の帯電防止膜は、上述した帯電防止塗料が塗布されて形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに帯電防止性を付与するための帯電防止塗料に関する。また、帯電防止性を有する帯電防止膜に関する。さらには、食品や電子部品の包装材に使用される帯電防止フィルム、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイの前面に使用される光学フィルタやCD、DVDなどの光情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムはそのままでは絶縁体であるために帯電しやすく、摩擦等によって静電気を帯びやすい。しかもその静電気は外部へ逃げにくく、蓄積して、様々な問題を引き起こす原因になる。
特に衛生性を重視する食品包装材に樹脂フィルムを用いた場合には、陳列中に塵や埃を吸着して、外観を著しく損ねて商品価値を低下させることもある。また、粉体の包装に樹脂フィルムを用いた場合には、その梱包時や使用時に帯電した粉体を吸着又は反発するため、粉体の取り扱いが困難になるといった不具合を生じる。また、樹脂フィルムで精密電子部品を包装する場合には、静電気により精密電子部品が破壊するおそれがあるので、静電気の発生は必ず防いでおかなければならない。
【0003】
また、光学フィルタや光情報記録媒体は、表面が、高硬度、高透明性である上に、静電気による塵埃の付着を防止するために帯電防止性を有することが求められる。特に、帯電防止性については、表面抵抗が10〜1010Ω程度の領域で抵抗値が安定していること(すなわち、安定した帯電防止性)が求められる。このようなことから、光学フィルタや光情報記録媒体の表面には、帯電防止性を有しつつ硬度が高い帯電防止膜が設けられている。
【0004】
帯電防止性を付与するためには、例えば、樹脂フィルムや界面活性剤を表面に塗布する方法、樹脂フィルムや帯電防止膜を構成する樹脂に界面活性剤を練り込む方法が採られてきた(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、この界面活性剤による帯電防止はその導電機構がイオン伝導であるために、湿度の影響を非常に受けやすく、湿度が高ければ高導電になるが、湿度の低いときには導電性が低下するといった欠点があった。したがって、湿度が低く、特に静電気が発生しやすい環境下では帯電防止機能が低下して、必要なときに帯電防止性能を発揮しないものとなっていた。
【0005】
電子伝導を導電機構とする金属やカーボンを使用すればこのような湿度依存性はなくなるが、これらのものは透明性が全くなく、透明性が要求される用途には適用できない。
また、ITOのような金属酸化物は透明性があり、電子伝導を導電機構とするため、その点においては適しているものの、その製膜にはスパッタリング装置などを用いた工程を取らざるを得ず、工程が煩雑になるばかりか製造コストが高くなった。また、無機質の金属酸化物の塗膜は可撓性が小さく、薄いフィルム基材上に製膜した場合には、塗膜が激しく割れて、導電性を示さなくなることがあった。その上、有機質である基材との密着性が低いためにそれらの界面で剥離を生じて、透明性が低下するおそれがあった。
【0006】
また、電子伝導を導電機構とする有機材料としてπ共役系導電性高分子が知られているが、π共役系導電性高分子は一般的に不溶不融の性質を持ち、重合した後にフィルム基材上に塗布することは困難であった。そこで、スルホ基を持つ高分子酸(ポリアニオン)を共存させながらアニリンを重合し、水溶性のポリアニリンを形成して得た混合物を用いて、フィルム基材上に塗布、乾燥することが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平1−254764号公報
【非特許文献1】シーエムシー発行「ファインケミカル 帯電防止剤 最近の市場動向(上)」、第16巻、第15号、1987年、p.24−36
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法のように、基材上で直接重合すれば帯電防止膜を形成できるが、その場合には、π共役系導電性高分子単体ではないため帯電防止膜の導電性が低く、また、水溶性であるために樹脂製の基材との密着性が低く、さらに、製造工程が煩雑になった。
本発明は、導電性、可撓性、基材との密着性が高い帯電防止膜を塗布により形成できる帯電防止塗料を提供することを課題とする。また、導電性、可撓性、基材との密着性が高く、塗布という簡易な製造方法で製造できる帯電防止膜を提供することを課題とする。さらには、帯電防止性に優れた帯電防止フィルム、光学フィルタ、光情報記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の帯電防止塗料は、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物と、溶媒とを含むことを特徴とする。
本発明の帯電防止塗料においては、前記ヒドロキシ基含有芳香族性化合物が、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0009】
【化1】

【0010】
(式(1)中、Rは炭素数1〜15の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。)
本発明の帯電防止塗料は、前記ヒドロキシ基含有芳香族性化合物が、スルホ基及び/又はカルボキシ基を有することが好ましい。
また、本発明の帯電防止塗料は、さらにドーパントを含むことが好ましい。
さらに、本発明の帯電防止塗料は、さらにバインダ樹脂を含むことが好ましい。
本発明の帯電防止塗料がバインダ樹脂を含む場合、バインダ樹脂は、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーンからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
本発明の帯電防止膜は、上述した帯電防止塗料が塗布されて形成されたことを特徴とする。
本発明の帯電防止フィルムは、フィルム基材と、該フィルム基材の少なくとも片面に形成された上述した帯電防止膜とを有することを特徴とする。
本発明の光学フィルタは、上述した帯電防止膜を有することを特徴とする。
本発明の光情報記録媒体は、上述した帯電防止膜を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の帯電防止塗料は、導電性、可撓性、基材との密着性が高い帯電防止膜を塗布により形成できる。また、このような帯電防止塗料は、少量の使用で十分な帯電防止性を発揮させることができるから、低コストで帯電防止膜を製造できる。
本発明の帯電防止塗料において、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物がスルホ基及び/又はカルボキシ基を有すれば、帯電防止膜の導電性がより高くなる。
本発明の帯電防止塗料がさらにドーパントを含めば、帯電防止膜の導電性をより高くすることができ、耐熱性も向上する。
また、バインダ樹脂を含めば、基材との密着性をより高くできる。
特に、バインダ樹脂が、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーン、メラミン樹脂からなる群から選ばれる1種以上である場合には、帯電防止塗料の必須成分に混合しやすい。
本発明の帯電防止膜は、導電性、可撓性、基材との密着性が高く、塗布という簡易な製造方法で製造できる。
本発明の帯電防止フィルム、光学フィルタ、光情報記録媒体は、帯電防止性に優れたものであり、静電気の発生が防止されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<帯電防止塗料>
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用できる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性、バインダ樹脂への相溶性を得ることができるが、導電性及びバインダ樹脂への分散性又は溶解性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0013】
このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0014】
中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種又は2種からなる(共)重合体が抵抗値、反応性の点から好適に用いられる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高い上に、耐熱性が向上する点から、より好ましい。
また、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)のようなアルキル置換化合物は溶媒溶解性や、バインダ樹脂との相溶性及び分散性を向上させるためより好ましい。アルキル基の中では導電性に悪影響を与えることがないため、メチル基が好ましい。さらに、ポリスチレンスルホン酸をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT-PSSと略す)は、比較的熱安定性が高く、重合度が低いことから塗膜成形後の透明性が有利となる点で好ましい。
【0015】
上記π共役系導電性高分子は、溶媒中、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリアニオン成分の存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
[前駆体モノマー]
前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0016】
[溶媒]
π共役系導電性高分子の製造で使用する溶媒としては特に制限されず、前記前駆体モノマーを溶解又は分散しうる溶媒であり、酸化剤及び酸化触媒の酸化力を維持させることができるものであればよい。例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
【0017】
[酸化剤及び酸化触媒]
酸化剤、酸化触媒としては、前記前駆体モノマーを酸化させてπ共役系導電性高分子を得ることができるものであればよく、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム、ぺルオキソ二硫酸カリウム等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
【0018】
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
このポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0019】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。ポリアルキレンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ3,3,3−トリフルオロプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0020】
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和結合(ビニル基)が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーである。ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる一種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。
これらの中でも、不飽和結合とπ共役系導電性高分子との相互作用があること、置換若しくは未置換のブタジエンを出発物質として合成しやすいことから、置換若しくは未置換のブテニレンが好ましい。
【0021】
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2,3,3−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物とオキシジアニン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0022】
ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基等が挙げられる。溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシ基、フェノール基、エステル基が好ましい。
アルキル基は、極性溶媒又は非極性溶媒への溶解性及び分散性、樹脂への相溶性及び分散性等を高くすることができ、ヒドロキシ基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくでき、有機溶媒への溶解性、樹脂への相溶性、分散性、接着性を高くすることができる。また、シアノ基及びヒドロキシフェニル基は、極性樹脂への相溶性、溶解性を高くすることができ、しかも、耐熱性も高くすることができる。
上記置換基の中では、アルキル基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基が好ましい。
【0023】
前記アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等の鎖状アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
前記ヒドロキシ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したヒドロキシ基又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。ヒドロキシ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。これらの中では樹脂への相溶及び有機溶剤への溶解性から、主鎖に結合した炭素数1〜6のアルキル基の末端に結合したヒドロキシ基がより好ましい。
前記アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアミノ基又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。アミノ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したフェノール基又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。フェノール基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記エステル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアルキル系エステル基、芳香族系エステル基、他の官能基を介在してなるアルキル系エステル基又は芳香族系エステル基が挙げられる。
シアノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したシアノ基等を挙げることができる。
【0024】
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0025】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、バインダ樹脂との相溶性が高く、また、得られる帯電防止塗料の導電性をより高くできる。
【0026】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
【0027】
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0028】
アニオン基含有重合性モノマーは、モノマーの一部が一置換硫酸エステル基、カルボキシ基、スルホ基等で置換されたものであり、例えば、置換若しくは未置換のエチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のスチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のメタクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリルアミドスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のシクロビニレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のブタジエンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のビニル芳香族スルホン酸化合物が挙げられる。
具体的には、ビニルスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタリルスルホン酸及びその塩類、スチレンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩類、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、シクロブテン−3−スルホン酸及びその塩類、イソプレンスルホン酸及びその塩類、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸及びその塩類、アクリル酸エチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アクリル酸プロピルスルホン酸(CHCH-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、アリル酸エチルスルホン酸(CHCHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸エチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸プロピルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸フェニレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C64-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸ナフタレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C108-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸エチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸プロピルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸フェニレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C64-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸ナフタレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C108-SO3H)及びその塩類、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、これらを2種以上含む共重合体であってもよい。
【0029】
アニオン基を有さない重合性モノマーとしては、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、1−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
これらアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合することで溶媒溶解性をコントロールすることができる。
【0030】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
【0031】
帯電防止塗料中のポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。その上、溶媒への分散性及び溶解性が低くなり、均一な分散液を得ることが困難になる。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、帯電防止塗料中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0032】
(ヒドロキシ基含有芳香族性化合物)
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物は、芳香族環に、ヒドロキシ基が2個以上結合しているものである。このヒドロキシ基含有芳香族性化合物は、ヒドロキシ基と芳香族環との相互作用が強く、該化合物中の水素を放出しやすいという性質を有する。
【0033】
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物としては、例えば、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン等が挙げられる。
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物の中でも、導電性の点からは、π共役系導電性高分子にドーピングしうる、アニオン基であるスルホ基及び/又はカルボキシ基を有する化合物がより好ましい。
【0034】
また、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物の中でも、導電性がより優れ、しかも安定性も優れることから、上記式(1)で表される化合物が好ましい。
式(1)中のRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−へキシル基、イソへキシル基、t−へキシル基、sec−へキシル基などのアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基などのアルケニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などのシクロアルキル基、シクロヘキセニル基などのシクロアルケニル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基などが挙げられる。
【0035】
ヒドロキシ基置換芳香族性化合物の含有量は、ポリアニオン1モルに対して0.05〜10モルの範囲であることが好ましく、0.3〜5モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.05モルより少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、帯電防止塗料中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくく、帯電防止塗料の物性が変化することがある。
【0036】
[溶媒]
帯電防止塗料に含まれる溶媒としては特に限定されず、π共役系導電性高分子の製造で使用する溶媒と同じものを使用できる。
【0037】
(ドーパント)
本発明の帯電防止塗料においては、電気伝導度(導電性)を向上させるために、ポリアニオン以外に他のドーパントを添加してもよい。他のドーパントとしては、π共役系導電性高分子を酸化還元させることができればドナー性のものであってもよく、アクセプタ性のものであってもよい。
【0038】
[ドナー性ドーパント]
ドナー性ドーパントとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等の4級アミン化合物等が挙げられる。
【0039】
[アクセプタ性ドーパント]
アクセプタ性ドーパントとしては、例えば、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレン等を使用できる。
さらに、ハロゲン化合物としては、例えば、塩素(Cl)、臭素(Br2)、ヨウ素(I)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、フッ化ヨウ素(IF)等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO等が挙げられる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
【0040】
プロトン酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。さらに、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸としては、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸等が挙げられる。
【0041】
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシ基を一つ又は二つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
【0042】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を一つ又は二つ以上含むもの、又は、スルホ基を含む高分子を使用できる。
スルホ基を一つ含むものとして、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、1−テトラデカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキチルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、アントラキノンスルホン酸、ピレンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0043】
スルホ基を二つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アセトアミド−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオ−シアノトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0044】
[バインダ樹脂]
また、帯電防止塗料は、塗膜の耐傷性や表面硬度が高くなり、基材との密着性が向上することから、バインダ樹脂を含むことが好ましい。帯電防止塗料がバインダ樹脂を含むことにより、帯電防止塗料から形成された帯電防止膜の鉛筆硬度(JIS K 5400)をHB以上にしやすい。すなわち、バインダ樹脂はハードコート成分としての機能を発揮する。
バインダ樹脂としては、帯電防止塗料と相溶又は混合分散可能であれば熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド;ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂;エポキシ樹脂;オキセタン樹脂;キシレン樹脂;アラミド樹脂;ポリイミドシリコーン;ポリウレタン;ポリウレア;メラミン樹脂;フェノール樹脂;ポリエーテル;アクリル樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
これらバインダ樹脂は、有機溶剤に溶解されていてもよいし、スルホ基やカルボキシ基などの官能基が付与されて水溶液化されていてもよいし、乳化など水に分散されていてもよい。
また、バインダ樹脂には、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶媒、粘度調整剤等を加えて使用することができる。
【0045】
バインダ樹脂の中でも、容易に混合できることから、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーン、メラミン樹脂のいずれか1種以上が好ましい。また、アクリル樹脂は、硬度が硬いとともに透明性に優れるため、光学フィルタのような用途には適している。
【0046】
また、バインダ樹脂は、熱エネルギー及び/又は光エネルギーによって硬化する液状重合体を含むことが好ましい。
ここで、熱エネルギーにより硬化する液状重合体としては、反応型重合体及び自己架橋型重合体が挙げられる。
反応型重合体は、置換基を有する単量体が重合した重合体であり、置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物、オキセタン系、グリシジル基、アミノ基などが挙げられる。具体的な単量体としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多官能アルコール、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、ピメリン酸、アスコルビン酸、フタル酸、アセチルサルチル酸、アジピン酸、イソフタル酸、安息香酸、m−トルイル酸等のカルボン酸化合物、無水マレイン酸、無水フタル酸、ドデシル無水コハク酸、ジクロル無水マレイン酸、テトラクロル無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ピメリット酸等の酸無水物、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、アジドメチルメチルオキセタン等のオキセタン化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−p−アミノフェノールグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル(すなわち、2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン)等のグリシジルエーテル化合物、N,N−ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N,N−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N−ジグリシジル−5,5−ジアルキルヒダントイン等のグリシジルアミン化合物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、DHP30−トリ(2−エチルヘクソエート)、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素、モノエチルアミン、メタンジアミン、キシレンジアミン、エチルメチルイミダゾール等のアミン化合物、1分子中に2個以上のオキシラン環を含む化合物のうち、ビスフェノールAのエピクロロヒドリンによるグリシジル化合物、あるいはその類似物が挙げられる。
【0047】
反応型重合体においては、少なくとも2官能以上の架橋剤を使用する。その架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、金属酸化物などが挙げられる。金属酸化物としては、塩基性金属化合物のAl(OH)、Al(OOC・CH(OOCH)、Al(OOC・CH、ZrO(OCH)、Mg(OOC・CH)、Ca(OH)、Ba(OH)等を適宜使用できる。
【0048】
自己架橋型重合体は、加熱により官能基同士で自己架橋するものであり、例えば、グリシジル基とカルボキシ基を含むもの、あるいは、N−メチロールとカルボキシ基の両方を含むものなどが挙げられる。
【0049】
光エネルギーによって硬化する液状重合体としては、例えば、ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドシリコーン等のオリゴマー又はプレポリマーが挙げられる。
光エネルギーによって硬化する液状重合体を構成する単量体単位としては、例えば、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のアクリレート類、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アルキルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート類、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、高級アルコールグリシジルエーデル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ビニルホルムアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアクリル(メタクリル)アミド類、2−クロロエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル等のビニルエーテル類、酪酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類の単官能モノマー並びに多官能モノマーが挙げられる。
【0050】
光エネルギーによって硬化する液状重合体は、光重合開始剤によって硬化する。その光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類などが挙げられる。さらに、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合できる。
また、カチオン重合開始剤としては、アリールジアゾニウム塩類、ジアリールハロニウム塩類、トリフェニルスルホニウム塩類、シラノール/アルミニウムキレート、α−スルホニルオキシケトン類等が挙げられる。
【0051】
[製造方法]
帯電防止塗料を製造するには、まず、ポリアニオンを、これを溶解する溶媒に溶解し、π共役系導電性高分子の前躯体モノマーと必要に応じてドーパントとを加えて十分攪拌混合する。次いで、これにより得られた混合物に酸化剤を滴下して重合を進行させてポリアニオンとπ共役系導電性高分子との複合体を得る。次いで、その複合体から、酸化剤、残留モノマー、副生成物を除去、精製した後、適切な溶媒に溶解し、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物、必要に応じてドーパントやバインダ樹脂を添加して帯電防止塗料を得る。
【0052】
精製法としては特に制限されず、例えば、再沈殿法、限外ろ過法などを採用できるが、中でも、限外ろ過法が簡便で好ましい。限外ろ過法とは、多孔質の限外ろ過膜上で溶液を循環させながら、溶液中の液体を限外ろ過膜に透過させてろ過する方法である。この方法では、限外ろ過膜を挟み、循環溶液側と透過溶液側とで差圧が生じるため、循環溶液側の溶液の一部が透過溶液側に浸透して循環溶液側の圧力を緩和する。この循環溶液の浸透に伴って循環溶液中の限外ろ過膜口径より小さい粒子、溶解イオン等の一部が透過溶液側に移動するので、粒子や溶解イオンを除去できる。使用する限外ろ過膜は、取り除く粒子径、イオン種によって分画分子量1,000〜1,000,000の範囲から適宜選択できる。
【0053】
以上説明した帯電防止塗料は、水素を放出しやすいヒドロキシ基含有芳香族性化合物を含有するため、その放出した水素により、π共役系導電性高分子の酸化劣化の際に生じるラジカルを失活させることができる。これにより、ラジカルの連鎖反応を遮断することができ、劣化の進行を抑制できるため、耐熱性及び安定性が高くなると考えられる。
また、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物はポリアニオン中のアニオン基と相互作用が起きやすく、この相互作用によって、ポリアニオン同士を接近させることができると考えられる。そのため、ドーピングによってポリアニオン上に吸着されているπ共役系導電性高分子同士も接近させることができる。その結果、π共役系導電性高分子同士間の電気伝導現象であるホッピングに必要なエネルギーが小さくなり、全体の電気抵抗が小さくなる(導電性が高くなる)と考えられる。
【0054】
(帯電防止膜)
帯電防止膜は帯電防止塗料が基材上に塗布されて形成されたものである。帯電防止塗料の塗布方法としては、例えば、浸漬、コンマコート、スプレーコート、ロールコート、グラビア印刷などが挙げられる。基材としては特に制限されないが、静電気が生じやすい樹脂成形体、特にポリエステルフィルムやトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどの樹脂フィルムが適している。
塗布後、加熱により溶媒を除去し、又は熱や光によって硬化すればよい。
加熱する場合の加熱方法としては、例えば、熱風加熱や赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。また、光硬化により塗膜を形成する場合の光照射方法としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源から紫外線を照射する方法を採用できる。
【0055】
この帯電防止膜では、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を含有するため、π共役系導電性高分子の劣化が抑えられ、導電性が顕著に高くなっている。具体的には、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を含まない場合、電気伝導度が0.001〜100S/cm程度であるが、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を含む場合、10〜2000S/cm程度となる。
【0056】
帯電防止膜を光学用途、特に、後述する光学フィルタ、光情報記録媒体に用いる場合には、透明性が高いことが好ましい。具体的には、全光線透過率(JIS Z 8701)が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、96%以上であることが特に好ましい。
また、ヘイズ(JIS K 6714)が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
さらに、帯電防止膜がハードコート層を兼ねる場合には、帯電防止膜の表面硬度(鉛筆硬度)がHB以上であることが好ましい。
帯電防止膜の表面抵抗値は、光学特性との兼ね合いによって適宜調節されることが好ましい。通常、1×10Ω〜1×1012Ω程度であれば、帯電防止用途に適用できる。
塗膜の光透過率、ヘイズ、表面抵抗値は、塗膜厚さにより調節できる。
また、鉛筆硬度(JIS S 6006)がH以上であることが好ましい。鉛筆硬度は塗膜の厚さにより調整できる。
【0057】
塗膜の全光線透過率、ヘイズ、表面抵抗値は、帯電防止膜の厚さにより調節できる。また、低い表面抵抗値が求められる場合には、バインダ樹脂を含まない方が好ましい。しかし、コストを安くしたり、基材に対する密着性を向上させたりするためにはバインダ樹脂が含まれることが好ましい。
【0058】
(帯電防止フィルム)
帯電防止フィルムは、フィルム基材と、該フィルム基材の少なくとも片面に形成された上記帯電防止膜とを有するものである。
[フィルム基材]
フィルム基材としては特に制限されず、例えば、低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−メチルメタクリレート共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリイミドフィルム、6−ナイロンフィルム、6,6−ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体フィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、トリ酢酸セルロース(TAC)フィルム、セルロースプロピオネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ4フッ化エチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンオキシドフィルムなどが挙げられる。
【0059】
これらフィルム基材の表面は通常、親油性であり、水系溶媒に溶解した帯電防止塗料を塗布する場合には、塗布が困難である。そのため、水系溶媒に溶解した帯電防止塗料を塗布する場合には、フィルム基材表面にスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理などの親水処理を施すことが好ましい。さらに、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化されていてもよい。
【0060】
(光学フィルタ)
次に、本発明の光学フィルタの一実施形態例について説明する。
図1に、本実施形態例の光学フィルタを示す。この光学フィルタ1は、フィルム基材10と、フィルム基材10上に形成された帯電防止膜20と、帯電防止膜20上に形成された反射防止層30とを有して構成されている。この光学フィルタ1における帯電防止膜20はハードコート層としての役割も果たす。
この光学フィルタ1をディスプレイ装置の表示面に貼り付ける際には、光学フィルタ1のフィルム基材10側の表面に透明な接着剤層を設け、その接着剤層を介して貼り付ける。
【0061】
フィルム基材10としては、透明性を有する各種のプラスチックフィルムを使用できる。透明性プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、アクリルアミド、セルロースプロピオネートなどからなるフィルムが挙げられる。
また、フィルム基材10はその表面にスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理が施されていることが好ましい。このような処理が表面に施されていれば、帯電防止膜20に対する密着性をより高めることができる。
さらに、フィルム基材10の表面は、帯電防止膜20を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化されていてもよい。
【0062】
帯電防止膜20は、上述した通りに帯電防止塗料から形成された膜であり、ハードコート層としての役割も果たす膜である。よって、上述したように、この帯電防止膜20は、帯電防止膜の表面硬度(鉛筆硬度)がHB以上であることが好ましい。また、光学用途であるから、帯電防止膜20の全光線透過率(JIS Z 8701)が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、96%以上であることが特に好ましい。また、帯電防止膜20のヘイズ(JIS K 6714)が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
【0063】
反射防止層30は光の反射を防止する層である。この層は単層であってもよいし、多層であってもよい。単層である場合、その屈折率は1.38〜1.45の範囲にあるのが好ましく、また、その光学膜厚は80〜100nmの範囲にあるのが好ましい。
反射防止層30は、乾式法、湿式法のいずれかによって形成できる。乾式法としては、例えば、電子ビーム蒸着法、誘電加熱式蒸着法、抵抗加熱蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法のような物理気相堆積法やプラズマCVD法が挙げられる。乾式法で反射防止層30を形成する場合には、反射防止層30の成分として、例えば、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化スズなどの無機化合物を用いることができる。
また、湿式法としては、例えば、コンマコート、スプレーコート、ロールコート、グラビア印刷等の公知の手法により硬化性化合物を含む塗料を塗布し、これを硬化する方法が挙げられる。湿式法で反射防止層30を形成する場合には、硬化性化合物として、例えば、含フッ素有機化合物、含フッ素有機ケイ素化合物、含フッ素無機化合物などの含フッ素化合物を用いることができる。
【0064】
光学フィルタ1においては、さらに、反射防止層30の上に防汚層が設けられてもよい。防汚層が設けられていれば、ごみや汚れの付着を防止し、あるいは付着しても除去しやすくなる。
防汚層としては、反射防止層30の反射防止機能を阻害せず、高い撥水性と撥油性を発揮し、汚染の付着を防止できるものであれば特に制限されず、有機化合物からなる層であってもよいし、無機化合物からなる層であってもよい。例えば、パーフルオロシラン基又はフルオロシクロアルキル基を有する有機ケイ素化合物や、フッ素有機化合物を含む層が挙げられる。
防汚層の形成方法は、その種類に応じて適宜選択でき、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法のような物理気相堆積法又は化学気相堆積法、プラズマ重合法のような真空プロセス、マイクログラビア法、スクリーンコート法、ディップコート法などを採用できる。
【0065】
以上説明した光学フィルタ1は、フィルム基材10を保護する帯電防止膜20が形成されており、その帯電防止膜20は上記帯電防止塗料から形成されているので、透明性に優れ、フィルム基材10との密着性にも優れている。また、この光学フィルタ1は、帯電防止性の安定性に優れたフィルタであり、表面に埃が付着しにくい。
そして、このような光学フィルタ1は、液晶画面やプラズマディスプレイ両面の反射防止フィルム、赤外吸収フィルム、電磁波吸収フィルム等に好適に用いられる。
【0066】
なお、本発明の光学フィルタは上述した実施形態例に限定されず、上記帯電防止塗料から形成された帯電防止膜を有していればよい。例えば、フィルム基材の代わりに偏光板を用いることができる。偏光板としては、二色性色素を吸着配向したポリビニルアルコール系樹脂フィルムの片側又は両面に保護フィルムが積層されたものなどが挙げられ、二色性色素としては、ヨウ素、二色染料を用いることができる。このような光学フィルタは、液晶表示装置の最表面に設けることができる。
【0067】
(光情報記録媒体)
本発明の光情報記録媒体の一実施形態例について説明する。
図2に、本実施形態例の光情報記録媒体を示す。この光情報記録媒体2は書換型ディスクであり、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレートなどからなる円盤状の透明性樹脂基板40、第1誘電体層50、光情報記録層60、第2誘電体層70、金属反射層80、帯電防止膜90が順次形成された構造を有したものである。
【0068】
第1誘電体層50及び第2誘電体層70を構成する材料としては、例えば、SiN、SiO、SiO、Taなどの無機系材料を用いることができる。
これらの誘電体層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の手段によって厚さ10〜500nmで形成される。
【0069】
光情報記録層60を構成する材料としては、例えば、Tb−Fe、Tb−Fe−Co、Dy−Fe−Co、Tb−Dy−Fe−Coなどの無機系の光磁気型記録材料や、TeOx、Te−Ge、Sn−Te−Ge、Bi−Te−Ge、Sb−Te−Ge、Pb−Sn−Te、Tl−In−Seなどの無機系の相変換型記録材料、シアニン系色素、ポリメチン系色素、フタロシアニン系色素、メロシアニン系色素、アズレン系色素、スクアリウム系色素等の有機色素が用いられる。
光情報記録層60が無機系の光磁気型記録材料からなる場合、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の手段によって厚さ10〜999nmで形成することができる。また、有機色素からなる場合、有機色素をアセトン、ジアセトンアルコール、エタノール、メタノール等の溶媒に溶解した溶液を公知の印刷方法又は塗布方法により厚さ10〜999nmで形成することができる。
【0070】
また、金属反射層80は光反射性を示すものであり、Al、Cr、Ni、Ag、Au等の金属及びその酸化物、窒化物などを単独もしくは二種類以上の組み合わせで構成される。この金属反射層80は、スパッタリング又は真空蒸着法により厚さ2〜200nmで形成される。
【0071】
帯電防止膜90は、上記帯電防止塗料から形成されたものである。この帯電防止膜90は、表面硬度をHB以上とすることにより、光情報記録媒体2表面の傷つきを防止でき、また、金属反射層80の酸化を防止できる上に、静電気による塵埃の付着を抑制できる。
帯電防止膜90の厚さは3〜15μmであることが好ましい。3μmより薄いと、均一な膜を形成するのが困難になる傾向にあり、十分な帯電防止性、表面傷つき防止性、金属反射層80の酸化防止性を発揮できないことがある。一方、15μmより厚いと、内部応力が大きくなり、光情報記録媒体2の機械特性が低下するおそれがある。
【0072】
帯電防止膜90を形成するには、金属反射層80の上に、コンマコート、スプレーコート、ロールコート、グラビア印刷などの公知の手法を用いて、帯電防止塗料を塗布した後、溶媒を乾燥、又は熱やUVによって硬化する。
【0073】
以上説明した光情報記録媒体2にあっては、光情報記録層60や金属反射層80を保護する帯電防止膜90が形成されており、その帯電防止膜90は上記帯電防止塗料から形成されている。したがって、帯電防止膜90はヘイズが小さく、光線透過率が高いので、読み取り用レーザの波長である780nmと635nmでの透明性に優れる。また、帯電防止膜90は帯電防止性を有しているため、静電気による塵埃付着が抑制されており、記録読み取りエラーや書き込みエラーが防止されている。
【0074】
なお、本発明の光情報記録媒体は上述した実施形態例に限定されず、例えば、光情報記録媒体は追記型ディスクであってもよい。追記型ディスクは、例えば、透明性樹脂基板(有機基材)、光情報記録層、反射金属層、帯電防止膜が順次形成された構造を有する。
【実施例】
【0075】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
(製造例1)ポリメタクリル酸エチルスルホン酸(PMAS)の合成
1000mlのイオン交換水に216gのメタクリル酸エチルスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリメタクリル酸エチルスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリメタクリル酸エチルスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ過液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
限外ろ過条件は下記の通りとした(他の例でも同様)。
限外ろ過膜の分画分子量:30,000
クロスフロー式
供給液流量:3000ml/分
膜分圧:0.12Pa
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形物を得た。
【0076】
(製造例2)ポリスチレンスルホン酸の合成
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られた濾液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形物を得た。
【0077】
(実施例1)
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)を得た。これをπ共役系導電性高分子溶液Aとした。
得られたπ共役系導電性高分子溶液A100gに1.0gのヒドロキノンスルホン酸カリウムを添加し、均一に分散させて帯電防止塗料を得た。
得られた帯電防止塗料を、厚さ25μmのPETフィルム上にコンマコーターにより塗布し、乾燥して厚さ約0.1μmの帯電防止膜を形成した。そして、この帯電防止膜の表面抵抗値を、ローレスタ(三菱化学社製)を用いて測定した。また、可視光透過率(JIS Z 8701)、ヘイズ(JIS K 6714)を測定した。その結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
(実施例2)
実施例1において得られた100gのπ共役系導電性高分子溶液Aに、ヒドロキノンスルホン酸カリウムの代わりに1.5gの1,2,3−トリヒドロキシベンゼンを添加したこと以外は実施例1と同様にして帯電防止膜を得て評価した。その結果を表1に示す。
【0080】
(実施例3)
さらに、10gの25質量%の水溶性ポリエステル溶液(プラスコートZ−561、互応化学工業社製)を添加して帯電防止塗料を調製したこと以外は実施例2と同様にして導電性塗布膜を得て評価した。その結果を表1に示す。
【0081】
(実施例4)
実施例3における水溶性ポリエステルの代わりに、3gのアリルメタクリレートと5gのウレタン系アクリレート(根上工業社製)を添加して帯電防止塗料を調製したこと以外は実施例3と同様にして導電性塗布膜を得て評価した。その結果を表1に示す。
【0082】
(実施例5)
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、38.8gポリメタクリル酸エチルスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌した。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリメタクリル酸エチルスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PMAS−PEDOT)を得た。これをπ共役系導電性高分子溶液Bとした。
得られたπ共役系導電性高分子溶液B100mlに予め5mlの水に溶解させた2.0gのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液を添加し、均一に分散させて帯電防止塗料を得た。
得られた帯電防止塗料を実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0083】
(実施例6)
実施例5において得られた100gのπ共役系導電性高分子溶液Bに、ヒドロキノンスルホン酸カリウムの代わりに1.5gの1,2,3−トリヒドロキシベンゼンを添加したこと以外は実施例5と同様にして帯電防止膜を得て、評価した。その結果を表1に示す。
【0084】
(実施例7)
さらに、10gの25質量%の水溶性ポリエステル溶液(プラスコートZ−561、互応化学工業社製)を添加して帯電防止塗料を調製したこと以外は実施例6と同様にして導電性塗布膜を得て評価した。その結果を表1に示す。
【0085】
(実施例8)
6.8gのピロールと、38.8gポリメタクリル酸エチルスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを混合し、0℃に冷やした。
これにより得られた混合溶液を0℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌した。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリメタクリル酸エチルスルホン酸ドープポリピロール(PMAS−PPY)を得た。これをπ共役系導電性高分子溶液Cとした。
得られたπ共役系導電性高分子溶液C100gに1.5gの1,2,3−トリヒドロキシベンゼンを添加し、均一に分散させて帯電防止塗料を得た。
得られた帯電防止塗料を実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0086】
(実施例9)
実施例1において得られた100gのπ共役系導電性高分子溶液Aに、ヒドロキノンスルホン酸カリウムの代わりに、0.4gの3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸メチルを添加し、さらに10gの25質量%の水溶性ポリエステル溶液(商品名プラスコートZ−561、互応化学工業社製)を添加して帯電防止塗料Dを得た。この帯電防止塗料Dを厚さ200μmのPETフィルム上に塗布したこと以外は実施例1と同様にして帯電防止膜を得て、評価した。その結果を表1に示す。
【0087】
(比較例1〜3)
実施例1で得られたπ共役系導電性高分子溶液A(比較例1)、実施例5で得られたπ共役系導電性高分子溶液B(比較例2)、実施例8で得られたπ共役系導電性高分子溶液C(比較例3)をそれぞれそのままガラス上に塗布し、塗布膜を150℃のオーブン中で乾燥させて帯電防止膜を得た。その塗布膜の電気特性を実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0088】
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を含む実施例1〜9の帯電防止膜は、導電性が高く、しかも、熱安定性及び湿度安定性に優れていた。特に、ヒドロキシ基含有芳香族化合物として式(1)で表される化合物を用いた実施例9の帯電防止膜は、導電性及び安定性がより高かった。
一方、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を含まない比較例1〜3の帯電防止膜は、導電性が低く、熱安定性及び湿度安定性にも劣っていた。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の光フィルタの―実施形態例を示す断面図である。
【図2】本発明の光情報記録媒体の一実施形態例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 光フィルタ
2 光情報記録媒体
10 フィルム基材
20,90 帯電防止膜(ハードコート層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物と、溶媒とを含むことを特徴とする帯電防止塗料。
【請求項2】
前記ヒドロキシ基含有芳香族性化合物が、下記式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止塗料。
【化1】

(式(1)中、Rは炭素数1〜15の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。)
【請求項3】
前記ヒドロキシ基含有芳香族性化合物が、スルホ基及び/又はカルボキシ基を有することを特徴とする請求項1に記載の帯電防止塗料。
【請求項4】
さらにドーパントを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止塗料。
【請求項5】
さらにバインダ樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止塗料。
【請求項6】
バインダ樹脂が、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーン、メラミン樹脂からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5記載の帯電防止塗料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止塗料が塗布されて形成されたことを特徴とする帯電防止膜。
【請求項8】
フィルム基材と、該フィルム基材の少なくとも片面に形成された請求項7に記載の帯電防止膜とを有することを特徴とする帯電防止フィルム。
【請求項9】
請求項7に記載の帯電防止膜を有することを特徴とする光学フィルタ。
【請求項10】
請求項6に記載の帯電防止膜を有することを特徴とする光情報記録媒体。





【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−169494(P2006−169494A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72758(P2005−72758)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】