説明

帯電防止性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子、その製造方法、予備発泡粒子及び発泡成形体

【課題】帯電防止性に優れた発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】スチレン系樹脂粒子に、界面活性剤の存在下で、発泡剤を乾式含浸させて発泡性樹脂粒子を得るに際して、前記界面活性剤が、前記スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、1〜4重量部使用され、かつ重量比1:0.03〜0.8の割合でカチオン性界面活性剤と非水溶性のノニオン性界面活性剤とを含むことを特徴とする帯電防止性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子、その製造方法、予備発泡粒子及び発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂粒子の発泡成形体は、その優れた耐衝撃性、耐摩耗性及び耐油性から、自動車部品等の機械部品の通い箱、電気製品等の緩衝包装材として広く利用されている。
しかしながら、スチレン系樹脂は、電気絶縁性が高いゆえに、摩擦によって容易に帯電し、ほこり付着によって発泡成形体の外観を損ねるばかりか、内容物に集塵による汚染や静電破壊を引き起こすため、液晶等の電子部品の包装材として使用するには問題があった。
そのため帯電を防止する方法が種々報告されており、例えば、樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後、界面活性剤を含浸させる方法(特許第4105195号公報:特許文献1)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4105195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方法では、ある程度の帯電の防止が可能である。しかし、発泡成形体の外観の美麗性をより向上し、内容物の集塵による汚染及び静電破壊をより防止する観点から、更なる帯電の防止が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者等は、これらの問題を解決するために研究を重ねた結果、スチレン系樹脂粒子への発泡剤の乾式含浸時に、カチオン性界面活性剤と非水溶性のノニオン性界面活性剤とを特定の割合で存在させることによって、帯電防止性に優れた発泡性スチレン系樹脂粒子が得られることを見いだし、本発明に至った。
【0006】
かくして本発明によれば、スチレン系樹脂粒子に、界面活性剤の存在下で、発泡剤を乾式含浸させて発泡性樹脂粒子を得るに際して、
前記界面活性剤が、前記スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、1〜4重量部使用され、かつ重量比1:0.03〜0.8の割合でカチオン性界面活性剤と非水溶性のノニオン性界面活性剤とを含むことを特徴とする帯電防止性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0007】
更に、本発明によれば、上記方法により得られた発泡性スチレン系樹脂粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られた予備発泡粒子が提供される。
更に、本発明によれば、上記予備発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体が提供される。
また、本発明によれば、スチレン系樹脂を含む予備発泡粒子の融着体からなる発泡成形体であり、
前記融着体が、カチオン性界面活性剤と非水溶性のノニオン性界面活性剤とを含み、かつ90%以上の帯電量の減衰率を示すことを特徴とする帯電防止性を有する発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、帯電防止性に優れた発泡性スチレン系樹脂粒子を提供できる。
また、ノニオン性界面活性剤が、スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.03〜1.6重量部使用される場合、より帯電防止性に優れた発泡性スチレン系樹脂粒子を提供できる。
更に、スチレン系樹脂粒子が、スチレン系樹脂とエチレン系樹脂との複合樹脂の粒子であり、エチレン系樹脂が、スチレン系樹脂100重量部に対して、20〜100重量部含まれる場合、より帯電防止性に優れ、かつ高い強度を有する発泡性スチレン系樹脂粒子を提供できる。
【0009】
また、カチオン性界面活性剤が、下記式1
【0010】
【化1】

【0011】
(上記式中、R1は、炭素数5〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基を意味する)
で表される剤から選択される場合、より帯電防止性に優れた発泡性スチレン系樹脂粒子を提供できる。
更に、ノニオン性界面活性剤が、ジアルカノールアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(即ち、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー)、脂肪酸モノグリセライド及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選択される場合、より帯電防止性に優れた発泡性スチレン系樹脂粒子を提供できる。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体は、帯電防止性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例8〜11及び比較例5〜6の減衰率と、ノニオン性界面活性剤/カチオン性界面活性剤で表される重量比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の発明者等は、発泡性スチレン系樹脂粒子(以下、発泡性樹脂粒子ともいう)の製造から発泡成形体の製造までの間の帯電防止剤としての界面活性剤の挙動について検討した。その結果、予備発泡粒子や発泡成形体の発泡工程時に、界面活性剤が水蒸気に曝されることで流されてしまい、界面活性剤が存在しない、又は不均一に存在する予備発泡粒子や発泡成形体が製造されているという現象を見出した。この現象は、予備発泡粒子の嵩発泡倍数や発泡成形体の発泡倍数が高いほど、顕著に生じることも見出している。これは、嵩発泡倍数や発泡倍数が高い場合、界面活性剤の水蒸気に曝される度合がより高いためであると推察される。
【0014】
そこで、本発明の発明者等は、上記現象を鑑み、スチレン系樹脂粒子への発泡剤の乾式含浸時に、カチオン性界面活性剤と非水溶性のノニオン性界面活性剤とを特定の割合で存在させれば、後の発泡工程で水蒸気に曝されても、界面活性剤の流出を防ぐことができるので、優れた帯電防止効果を発泡性樹脂粒子に付与できることを意外にも見出した。
【0015】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
(発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法)
発泡性スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂粒子に、界面活性剤の存在下で、発泡剤を乾式含浸させることにより製造できる。乾式含浸は、湿式含浸と異なり、発泡剤の含浸に水性媒体を使用しないため、カチオン性界面活性剤の水性媒体への流出を防ぐことができ、その結果、発泡性樹脂粒子のカチオン性界面活性剤の残存量を増加できるという利点がある。
【0016】
(1)界面活性剤
界面活性剤は、カチオン性界面活性剤と非水溶性のノニオン性界面活性剤とを含んでいる。また、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤と非水溶性のノニオン性界面活性剤のみを含んでいることが好ましい。
(a)カチオン性界面活性剤としては、特に限定されず、公知のカチオン性界面活性剤をいずれも使用できる。例えば、脂肪族アルキル第4級アンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。これら例示した界面活性剤のアルキル基は、界面活性剤の種類により異なるが、5〜20個の範囲の炭素数のアルキル基(例えば、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル、n−ノニル、i−ノニル、n−デシル、i−デシル、n−ウンデシル、i−ウンデシル、n−ドデシル、i−ドデシル、n−トリデシル、i−トリデシル、n−テトラデシル、i−テトラデシル、n−ペンタデシル、i−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、i−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、i−ヘプタデシル、n−オクタデシル、i−オクタデシル、n−ノナデシル、i−ノナデシル、n−イコシル、i−イコシル)を含むことが好ましい。
【0017】
上記カチオン性界面活性剤の内、脂肪族アルキル第4級アンモニウム塩が好ましい。脂肪族アルキル第4級アンモニウム塩は、下記式
[(R14N]+25OSO3-
で表すことができる。式中、R1は、同一又は異なって、分岐していてもよい炭素数1〜20のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル、n−ノニル、i−ノニル、n−デシル、i−デシル、n−ウンデシル、i−ウンデシル、n−ドデシル、i−ドデシル、n−トリデシル、i−トリデシル、n−テトラデシル、i−テトラデシル、n−ペンタデシル、i−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、i−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、i−ヘプタデシル、n−オクタデシル、i−オクタデシル、n−ノナデシル、i−ノナデシル、n−イコシル、i−イコシル)であることが好ましい。更に4個のR1の内、3つは炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル)であることが好ましい。特に好ましい脂肪族アルキル第4級アンモニウム塩は、下記式1で表される剤から選択されるカチオン性界面活性剤である。
【0018】
【化2】

【0019】
上記式中、R1は、炭素数5〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基(例えば、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル、n−ノニル、i−ノニル、n−デシル、i−デシル、n−ウンデシル、i−ウンデシル、n−ドデシル、i−ドデシル、n−トリデシル、i−トリデシル、n−テトラデシル、i−テトラデシル、n−ペンタデシル、i−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、i−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、i−ヘプタデシル、n−オクタデシル、i−オクタデシル、n−ノナデシル、i−ノナデシル、n−イコシル、i−イコシル)であることが好ましい。R1は、炭素数6〜14の直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。例えば、第一工業製薬社製のカチオーゲンES−Oは、R1が直鎖状のアルキル基の場合に含まれる。
なお、カチオン性界面活性剤は、通常水溶液の形態で市販されている。スチレン系樹脂粒子へ発泡剤は、乾式含浸されるが、以下で説明するように界面活性剤は少量であるため、水溶液を構成する程度の水の存在下での発泡剤の含浸も、本発明では乾式と称する。
【0020】
(b)ノニオン性界面活性剤は、非水溶性であれば、特に限定されず、公知のノニオン性界面活性剤をいずれも使用できる。ここで、非水溶性とは、HLBで表現すると、10以下であることを意味する。ここで、HLBはグリフィンの式にて算出された値である。
ノニオン性界面活性剤は、帯電の防止効果に加えて、発泡工程時の水蒸気による界面活性剤の流出を防ぐ役割を果たしているものと発明者等は考えている。
【0021】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライド(例えば、脂肪酸モノグリセライド)、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミド、ジアルカノールアミン(例えば、アルキルジエタノールアミン)、ポリアルキレングリコール誘導体(例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(即ち、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー))等が挙げられる。これら剤は、単独で使用してもよく、混合して使用してもよい。これら例示した界面活性剤のアルキル基及びアルキレン基は、界面活性剤の種類により異なるが、5〜20個の範囲の炭素数のアルキル基(例えば、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル、n−ノニル、i−ノニル、n−デシル、i−デシル、n−ウンデシル、i−ウンデシル、n−ドデシル、i−ドデシル、n−トリデシル、i−トリデシル、n−テトラデシル、i−テトラデシル、n−ペンタデシル、i−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、i−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、i−ヘプタデシル、n−オクタデシル、i−オクタデシル、n−ノナデシル、i−ノナデシル、n−イコシル、i−イコシル)及びアルキレン基(例えば、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デシレニル、ウンデシレニル、ドデシレニル、トリデシレニル、テトラデシレニル、ペンタデシレニル、ヘキサデシれにル、ヘプタデシレニル、オクタデシレニル、ノナデシレニル、イコシレニル)を含むことが好ましい。
【0022】
より好ましいノニオン性界面活性剤は、ジアルカノールアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、脂肪酸モノグリセライド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等が挙げられる。
アルキルジエタノールアミンは、下記式2で表される剤から選択されるものを使用できる。
【0023】
【化3】

【0024】
上記式2中、R2は、炭素数10〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基(例えば、n−デシル、i−デシル、n−ウンデシル、i−ウンデシル、n−ドデシル、i−ドデシル、n−トリデシル、i−トリデシル、n−テトラデシル、i−テトラデシル、n−ペンタデシル、i−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、i−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、i−ヘプタデシル、n−オクタデシル、i−オクタデシル)であることが好ましい。R2は、炭素数12〜18の直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。例えば、タナカ化学研究所社製アンチスタ80FSが上記式2に含まれる。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールにおいて、エチレンオキサイドの含有率が40%以下であり、プロピレンオキサイドの繰り返し数nは、4〜8であることが好ましい。繰り返し数nは、5、6及び7を取りえる。
脂肪酸モノグリセライドとしては、例えば、ステアリン酸モノグリセライドが挙げられる。
また、脂肪酸モノグリセライドは、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルと組み合わせて使用してもよい。
【0025】
ノニオン性界面活性剤は、カチオン性界面活性剤が上記式1から選択される場合、ジアルカノールアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、脂肪酸モノグリセライド及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選択されることが好ましい。好ましい理由は、ノニオン性界面活性剤の多くは親水部としてエチレンオキシドやアルキル水酸基を持ち合わせている。このため、非常に弱いアニオン極性を帯びており、カチオン性界面活性剤の親水部位とイオンによる相互作用が働くものと考えられる。そこで、ノニオン性界面活性剤の非水溶性である特性が効果を上げ、水蒸気等によるカチオン性界面活性剤を流出させにくくしているものと考えられる。
【0026】
(c)界面活性剤の使用割合
カチオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤とを含む界面活性剤は、スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、1〜4重量部使用される。使用量が1重量部未満の場合、発泡性樹脂粒子の帯電防止性が十分でないことがある。一方、4重量部より多い場合、発泡性樹脂粒子が極端にべたつき、取扱いが困難になることや、帯電防止性もこれ以上添加しても変化がないため、コスト高となってしまうことがある。上記使用量は、例えば、1.3重量部、1.6重量部、1.9重量部、2.2重量部、2.5重量部、2.8重量部、3.1重量部、3.3重量部、3.6重量部及び3.9重量部である。より好ましい使用量は、1〜3.5重量部である。
【0027】
また、カチオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との使用割合は、1:0.03〜0.8(重量比)の範囲である。ノニオン性界面活性剤の使用割合が、0.03未満の場合、ノニオン性界面活性剤の添加効果が不十分で、良好な帯電防止性が得られないことがある。一方、0.8より多い場合、カチオン性界面活性剤の添加効果が薄れてしまい、良好な帯電防止性が得られないことがある。上記使用割合は、例えば、1:0.05、1:0.1、1:0.15、1:0.2、1:0.25、1:0.3、1:0.35、1:0.4、1:0.45、1:0.5、1:0.55、1:0.6、1:0.65、1:0.7及び1:0.75である。より好ましい使用割合は、1:0.03〜0.75である。
ノニオン性界面活性剤の使用量は、スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.03〜1.6重量部であることが好ましい。0.03重量部未満の場合、ノニオン性界面活性剤の添加効果が不十分で、良好な帯電防止性が得られないことがある。一方、1.6重量部より多い場合、カチオン性界面活性剤の使用量が減ることで添加効果が薄れてしまい、良好な帯電防止性が得られないことがある。上記使用量は、例えば、0.23重量部、0.43重量部、0.63重量部、0.83重量部、1.03重量部、1.23重量部及び1.43重量部である。より好ましい使用量は、0.03〜1.0重量部である。
なお、発泡性樹脂粒子に残存するカチオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤の量は、上記両界面活性剤の使用量と実質的に同一である。
【0028】
(2)スチレン系樹脂粒子
スチレン系樹脂粒子を構成するスチレン系樹脂は、例えば、スチレン、置換スチレン(置換基は、低級アルキル、ハロゲン原子(特に塩素原子)等)のスチレン系モノマーに由来する樹脂が挙げられる。置換スチレンとしては、例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。更に、スチレン系樹脂は、スチレン系モノマーと、スチレン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル部分の炭素数1〜8程度、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル)、ジビニルベンゼン、エチレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0029】
他のモノマーを使用する場合、スチレン系モノマー100重量部に対して、30重量部以下の範囲で使用することが好ましい。
ポリスチレン系樹脂は、スチレンのみに由来する樹脂であることがより好ましい。
また、スチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂とエチレン系樹脂との複合樹脂の粒子である場合、本発明の効果がより顕著に得られる。その理由は、エチレン系樹脂は、発泡力がスチレン系樹脂に比べて劣るため、発泡に必要な水蒸気量が多くなったり、水蒸気付与時間が長くなったりする。その結果、界面活性剤が流出する可能性が高くなる。本発明では、特定の界面活性剤を特定量使用するため、流出する可能性を抑制できる。
【0030】
エチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体等のエチレン系樹脂等が挙げられる。上記例示中、低密度は、0.91〜0.94g/cm3であることが好ましく、0.91〜0.93g/cm3であることがより好ましい。高密度は、0.95〜0.97g/cm3であることが好ましく、0.95〜0.96g/cm3であることがより好ましい。中密度はこれら低密度と高密度の中間の密度である。
【0031】
エチレン系樹脂が、スチレン系樹脂100重量部に対して、20〜100重量部含まれることが好ましい。20重量部未満では、エチレン系樹脂の弾性が高く、耐油性、耐衝撃性が良好であるという特性が発現し難くなることがある。更に、エチレン系樹脂の内部にスチレンが十分に吸収されず、スチレンが単独で重合することにより、多量の重合体粉末を発生することがある。また、100重量部を超える場合、スチレン系樹脂の剛性が良好であるという特性が発現し難くなることがある。また、発泡剤の保持性が悪くなるため、低密度化が難しいことがあり、かつ発泡成形性が乏しくなることがある。エチレン系樹脂の含有量は、例えば、30重量部、40重量部、50重量部、60重量部、70重量部、80重量部及び90重量部である。
【0032】
ここで、複合樹脂とは、スチレン系樹脂とエチレン系樹脂とが樹脂中に存在していれば足り、その存在形態は問わない。例えば、両樹脂を押出機中で混練し、混練物をカットする方法、エチレン系樹脂からなる種粒子に、水性媒体中で、スチレン系モノマーを含浸させ、次いでそのモノマーを重合させる方法等が挙げられる。この内、後者の方法により得られた複合樹脂の粒子が好ましい。この粒子は、スチレン系樹脂をエチレン系樹脂で改質した粒子であるとの観点から、改質樹脂粒子と称する。なお、改質とは、エチレン系樹脂粒子に、単にスチレン系モノマーを含浸させて重合させること、エチレン系樹脂粒子に、スチレン系モノマーを含浸させてグラフト重合させること、及びその両方の場合を意味する。
【0033】
以下では、改質樹脂粒子の製造方法について説明する。改質樹脂粒子は、例えば、下記(i)種粒子100重量部を水性溶媒中に分散させてなる分散液中で、スチレン系モノマー120〜500重量部(例えば、200重量部、300重量部、400重量部)を種粒子に含浸させるモノマー含浸工程と、
(ii)含浸と同時に又は含浸後、スチレン系モノマーを重合させる重合工程と
を含む工程を経ることにより製造できる。
スチレン系モノマーの含浸量は、例えば、200重量部、250重量部、300重量部、350重量部、400重量部及び450重量部である。
【0034】
(a)モノマー含浸工程
(a−1)種粒子は、公知の方法で得ることができる。例えば、まず、押出機を使用してエチレン系樹脂を溶融押出した後、水中カット、ストランドカット、ホットカット等により造粒することで、種粒子を作製できる。通常、使用する種粒子の形状は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状又はグラニュラー状とできる。
【0035】
個々の種粒子の平均粒子径には、格別の制限はない。但し、改質樹脂粒子の平均粒子径がこの平均粒子径によって規定されることを考えると、0.2〜1.5mmの平均粒子径とできる。平均粒子径が0.2mm未満の場合、発泡性樹脂粒子の発泡剤の保持性が低くなり、低密度化が困難となることがある。1.5mmを超えると、発泡樹脂粒子の金型への充填性が低下することや、発泡成形体の薄肉化が困難となることがある。平均粒子径は、例えば、0.5mm、0.8mm及び1.1mmである。
【0036】
(a−2)水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。水性媒体には、スチレン系モノマーの液滴及び種粒子の分散性を安定させるために分散剤が含まれていてもよい。
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。ここで、難溶性無機化合物を用いる場合には、界面活性剤も使用することが好ましい。分散剤の使用量は、分散剤を含む水性媒体中、0.1〜4重量%であることが好ましい。使用量は、例えば、1重量%、2重量%及び3重量%である。
【0037】
(a−3)スチレン系モノマーの種粒子への含浸は、通常、スチレン系モノマーの重合が実質的に生じない温度下で行なわれる。また、スチレン系モノマーを種粒子に含浸させつつ、スチレン系モノマーの重合を行ってもよい。含浸温度は、通常、50〜100℃の範囲である。含浸温度は、例えば、60℃、70℃、80℃及び90℃である。
【0038】
(b)重合工程
重合工程は、含浸と同時に又は含浸後、行われる。
(b−1)スチレン系モノマーの重合は、重合開始剤の存在下で行うことができる。
重合開始剤としては、いずれも通常のスチレンの重合において用いられる重合開始剤を用いることができる。例えば3級アルコキシラジカルを発生する開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の開始剤、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。分子量を調製し、残存モノマーを減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃の範囲にある複数種の重合開始剤を併用することが好ましい。分解温度は、例えば、90℃、100℃及び110℃である。
【0039】
(b−2)スチレン系モノマーには、可塑剤、連鎖移動剤、核剤、難燃剤、難燃助剤、油溶性重合禁止剤、水溶性重合禁止剤、気泡調整剤等が含まれていてもよい。
可塑剤としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチル、フタル酸ジオクチル等が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
核剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アマイド等が挙げられる。
着色剤としては、カーボンブラック、酸化鉄、グラファイト等が挙げられる。
難燃剤としては、公知の臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、塩素臭素含有難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。
【0040】
(b−3)重合温度は、70〜140℃の範囲が好ましく、90〜130℃の範囲がより好ましい。重合温度は、例えば、80℃、90℃、100℃、110℃及び120℃である。重合温度へは、一定又は段階的に暫時昇温してもよい。昇温速度は、0.1〜2℃/分であることが好ましい。昇温速度は、例えば、0.5℃/分、1℃/分及び1.5℃/分である。
(b−4)必要に応じてエチレン系樹脂を架橋してもよい。架橋剤としては、例えば、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン等の有機過酸化物が挙げられる。これら架橋剤は、単独又は2種類以上を混合して使用できる。架橋剤の使用量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.05〜1重量部であることが好ましい。架橋剤の使用量は、例えば、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部及び0.9重量部である。
【0041】
架橋のタイミングは、スチレン系モノマーの重合前や、重合後が挙げられる。架橋剤は、それ単独で重合系に添加してもよい。架橋剤の添加は、作業上の安全性の観点から、溶剤、可塑剤又はスチレン系モノマーに溶解した溶液や、水に分散させた分散液の形態で添加することが好ましい。
【0042】
(3)発泡剤
発泡剤としては、例えばプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン等の炭化水素等を、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。発泡剤の使用量は、目的とする成形体の発泡倍数によって決定されるが、スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、10〜20重量部であることが好ましい。発泡剤の使用量は、例えば、11重量部、12重量部、13重量部、14重量部、15重量部、16重量部、17重量部、18重量部及び19重量部である。
【0043】
(4)乾式含浸
発泡剤の乾式含浸は、特に限定されず、公知の条件下で行うことができる。例えば、含浸温度は、40〜140℃とできる。含浸温度は、例えば、60℃、80℃、100℃及び120℃である。この乾式含浸時に2種の界面活性剤による処理も行われる。
発泡剤の含浸を、発泡助剤の存在下で行ってもよい。発泡助剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン等の溶剤や、ジイソブチルアジペート、ジアセチル化モノラウレート、やし油等の可塑剤(高沸点溶剤)等が挙げられる。発泡助剤の添加量は、スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.2〜2.5重量部であることが好ましい。発泡助剤の添加量は、例えば、0.7重量部、1.2重量部、1.7重量部及び2.2重量部である。
必要に応じて、表面処理剤(例えば、結合防止剤、融着促進剤、展着剤等)を発泡剤含浸時の系内に添加してもよい。
これら表面処理剤の添加量(合計値)は、スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.01〜2重量部であることが好ましい。表面処理剤の添加量は、例えば、0.5重量部、1重量部、1.5重量部及び1.8重量部である。
【0044】
(予備発泡粒子)
上記のようにして得られた発泡性樹脂粒子は、公知の方法(例えば、ゲージ圧力0.01〜0.10MPaの水蒸気で加熱)で所定の密度に予備発泡させることによって、例えば10〜50倍の嵩発泡倍数の予備発泡粒子とできる。特に、本発明では、30倍以上の高倍の予備発泡粒子でも十分な帯電防止性を付与できる。ゲージ圧力は、例えば、0.03MPa、0.05MPa、0.07MPa及び0.09MPaである。
【0045】
(発泡成形体)
発泡成形体は、スチレン系樹脂を含む予備発泡粒子の融着体からなる。更に、この融着体からなる発泡成形体は、カチオン性界面活性剤と非水溶性のノニオン性界面活性剤とを含んでいる。発泡成形体は、90%以上の帯電量の減衰率を示すものであることが好ましい。この帯電量の減衰率は、発泡成形体が十分な帯電防止性を有しているかいないかの指標とできる。
本発明の発泡成形体は、種々の用途に使用できるが、特に自動車部品等の機械部品の通い箱、電気製品の緩衝包装材等に好適に使用できる。
本発明の発泡成形体は、予備発泡粒子を金型内に充填し、再度加熱して予備発泡粒子同士を熱融着させることで、例えば10〜50倍の発泡倍数として得ることができる。加熱用の媒体は、ゲージ圧力0.05〜0.15MPaの水蒸気が好適に使用される。特に、本発明では、30倍以上の高倍の発泡成形体でも十分な帯電防止性を付与できる。ゲージ圧力は、例えば、0.08MPa、0.1MPa及び0.12MPaである。
【実施例】
【0046】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における各種測定法を下記する。
<嵩発泡倍数>
予備発泡粒子の嵩発泡倍数は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的には、まず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm3を下記式に代入することで、予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=測定試料の重量(W)/測定試料の体積(V)
嵩発泡倍数は嵩密度の逆数である。
【0047】
<発泡成形体の発泡倍数>
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×35mm)の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求める。
発泡倍数は密度の逆数である。
【0048】
<表面抵抗率>
表面抵抗率の測定はJIS K 6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」記載の方法により測定する。即ち、試験装置(アドバンテスト社製デジタル長高抵抗/微小電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試料サンプルに、約30Nの荷重で電極を圧着させ、500V1分間充電後の抵抗値を測定する。測定値から次式より表面固有抵抗値を算出する。
ρs=π(D+d)/(D−d)×Rs
ρs:表面固有抵抗値(MΩ)
D:表面の環状電極の内径(cm)
d:表面電極の内円の外径(cm)
Rs:表面抵抗(MΩ)
試料サンプルは、100mm×100mm×厚さ10mm以下の大きさを有し、同一の発泡成形体から10個切り出す。切り出された10個の試料サンプルを、20℃、湿度65%の環境下に24時間程度保存した後、10個の試料サンプルの抵抗値を測定する。
【0049】
<減衰率>
減衰率は、JIS L1094 織物及び編物の帯電性試験方法に準拠して得る。具体的には、40×40×3(mm)(表皮付き)にカットした試験片を20±2℃ RH60%の環境下に24時間以上放置する。この後、試験片をターンテーブルにセットし回転させながら、10kVの印加を30秒行ったときの帯電量(初期帯電量)を測定する。次に、ターンテーブルを回転させたまま印加を止め、止めてから30秒後の帯電量(30秒後帯電量)を測定する。初期帯電量及び30秒後帯電量を下記減衰率の算出式に代入することで、30秒後減衰率を算出する。
測定条件を下記する。
測定装置:スタティックオネストメーター(シシド静電気製)
試験片:40×40×3(mm)
印加電圧:10kV
試験数:5
試験片状態調節・試験環境:20±2℃ RH60%(なお、上記JISではRH40±2%としている)
減衰率(%)=(初期帯電量−30秒後の帯電量)×100/初期帯電量
【0050】
<総合評価>
減衰率が90%以上かつ表面抵抗率が1010Ω・cm以下の場合○とし、減衰率が90%未満、80%以上かつ表面抵抗率が1010Ω・cmより大きい場合△とし、減衰率が80%未満かつ表面抵抗率が1010Ω・cmより大きい場合×とする。
【0051】
実施例1
[改質樹脂粒子の製造]
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子(日本ポリエチレン社製NF−444A)を押出機にて加熱して水中カット方式により造粒ペレット化した(樹脂粒子は100粒あたり40mgに調整した)。得られた直鎖状低密度ポリエチレンからなるポリエチレン系樹脂粒子8kgを攪拌機付100Lオートクレーブに入れた。更に、水性媒体としての純水40kg、ピロリン酸マグネシウム360g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.85gを加えた。得られた混合物を、攪拌することで水性媒体の懸濁液とし、10分間常温に保持し、その後60℃に昇温した。
【0052】
次いで、この懸濁液中にジクミルパーオキサイド10gを溶解させたスチレン4kgを30分間かけて滴下した。滴下後30分間、60℃に保持し、ポリエチレン系樹脂粒子にスチレンを吸収させた。吸収後135℃に昇温し、この温度で2時間攪拌を続けた。
その後、115℃の温度に下げ、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ15gを加えた。その後、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシベンゾエート112g、エチレンビスステアリン酸アミド400gを溶解したスチレン28kgを6時間かけて滴下した。
【0053】
滴下終了後、115℃で1時間保持し、次いで、140℃に昇温し、その温度で3時間保持して重合を完結した。その後、常温まで冷却し、粒子を取り出した。
以上の工程により直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子100重量部に対してスチレン系モノマーを400重量部使用した複合樹脂粒子を得た。
【0054】
[発泡剤の含浸]
内容積50リットルの耐圧で密閉可能なV型ブレンダーに、得られた複合樹脂粒子を100重量部、カチオン性界面活性剤として、第一工業製薬社製カチオーゲンES−O(純分50%)(式1のR1が炭素数6〜14の直鎖状のアルキル基である脂肪族アルキル第4級アンモニウム塩)を1.5重量部、非水溶性のノニオン性界面活性剤として、タナカ化学研究所社製アンチスタ80FS(HLB9.2)(ジアルカノールアミン:式2のR2が炭素数12〜18の直鎖状のアルキル基であり、nが4〜8のアルキルジエタノールアミン)を0.2重量部、ジイソブチルアジペート0.5重量部を投入、密閉し撹拌させた。撹拌させながらブタンを16重量部圧入した。ブタンを圧入後、器内を60℃に2時間程度保持し発泡性樹脂粒子を取出した。
【0055】
[予備発泡]
取出した発泡性樹脂粒子はすぐにバッチ式予備発泡機に投入され、嵩発泡倍数35倍に予備発泡させて、予備発泡粒子を得た。
[発泡成形]
得られた予備発泡粒子の型枠内発泡を実施した。300mm(幅)×400mm(長さ)×30mm(厚さ)の金型内に予備発泡粒子を導入し、0.08MPaの水蒸気を30秒導入して予備発泡粒子を加熱することで発泡成形体を得た。加熱後、発泡成形体の発泡圧が0.005MPa以下に低下するまで冷却を行い、所望の発泡倍数の発泡成形体を取り出した。取り出した発泡成形体は、35℃の雰囲気下で6時間以上放置した。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
【0056】
実施例2
アンチスタ80FSに代えて、第一工業製薬社製エパン710(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、オキシエチレンの含有率が約10%、オキシプロピレンの繰り返し数約7)を使用すること以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
【0057】
実施例3
アンチスタ80FSに代えて、玉霸企業有限公司社製PRE−7070(ステアリン酸モノグリセライド)を使用すること以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
【0058】
実施例4
アンチスタ80FSに代えて、第一工業製薬社製レジスタットPE132(脂肪酸モノグリセライドとペンタエリスリトール脂肪酸エステルとの混合物)を使用すること以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
【0059】
実施例5
アンチスタ80FSの使用量を0.3重量部とし、発泡成形体の発泡倍数を40倍とすること以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
【0060】
実施例6
アンチスタ80FSの使用量を0.4重量部とし、発泡成形体の発泡倍数を45倍とすること以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
【0061】
実施例7
アンチスタ80FSの使用量を0.5重量部とし、発泡成形体の発泡倍数を50倍とすること以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
【0062】
実施例8
カチオーゲンES−Oの添加量を1.8重量部とし、発泡成形体の発泡倍数を40倍とすること以外は、実施例2と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
【0063】
実施例9
カチオーゲンES−Oの添加量を1.6重量部、エパン710の使用量を0.4重量部とし、発泡成形体の発泡倍数を40倍とすること以外は、実施例2と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
【0064】
実施例10
カチオーゲンES−Oの添加量を1.4重量部、エパン710の使用量を0.6重量部とし、発泡成形体の発泡倍数を40倍とすること以外は、実施例2と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
【0065】
実施例11
カチオーゲンES−Oの添加量を1.2重量部、エパン710の使用量を0.8重量部とし、発泡成形体の発泡倍数を40倍とすること以外は、実施例2と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
【0066】
実施例12
カチオーゲンES−Oの添加量を2.2重量部、PRE−7070の使用量を0.1重量部とし、発泡成形体の発泡倍数を40倍とすること以外は、実施例3と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
【0067】
実施例13
改質樹脂粒子として下記製法で得られた粒子を使用し、カチオーゲンES−Oの添加量を3.0重量部とし、発泡成形体の発泡倍数を40倍とすること以外は、実施例3と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
[改質樹脂粒子の製造]
ポリエチレン系樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(日本ユニカーLV−115)を押出機にて加熱して水中カット方式により造粒ペレット化した(樹脂粒子は100粒当たり80mgに調整した)。得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるポリエチレン系樹脂粒子12.25kgを撹拌機付100Lオートクレーブに入れた。更に、水性媒体としての純水40kg、ピロリン酸マグネシウム360g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.85gを加えた。得られた混合物を、攪拌することで水性媒体の懸濁液とし、10分間常温に保持し、その後60℃に昇温した。
【0068】
次いで、この懸濁液中にジクミルパーオキサイド7gを溶解させたスチレン5kgを30分間かけて滴下した。滴下後30分間、60℃に保持し、ポリエチレン系樹脂粒子にスチレンを吸収させた。吸収後130℃に昇温し、この温度で2時間攪拌を続けた。
その後、90℃の温度に下げ、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ15gを加えた。その後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド85g、ベンゾイルパーオキサイド40g、t−ブチルパーオキサイド4gを、スチレン23kgに溶解したものを徐々に添加し、90℃で4時間重合を行なった。
滴下終了後、90℃で1時間保持し、次いで、140℃に昇温し、その温度で3時間保持して重合を完結した。その後、常温まで冷却し、粒子を取り出した。
以上の工程により直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂粒子100重量部に対してスチレン系モノマーを400重量部使用した複合樹脂粒子を得た。
【0069】
実施例14
PRE−7070の使用量を0.1重量部とすること以外は、実施例13と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表1に示す。
【0070】
比較例1
アンチスタ80FSを使用しないこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表2に示す。
【0071】
比較例2
カチオーゲンES−Oの使用量を2.1重量部とし、アンチスタ80FSを使用しないこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表2に示す。
【0072】
比較例3
アンチスタ80FSを使用せず、発泡成形体の発泡倍数を40倍とすること以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表2に示す。
【0073】
比較例4
アンチスタ80FSを使用せず、発泡成形体の発泡倍数を50倍とすること以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表2に示す。
【0074】
比較例5
カチオーゲンES−Oの添加量を1.0重量部、エパン710の使用量を1.0重量部とし、発泡成形体の発泡倍数を40倍とすること以外は、実施例2と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表2に示す。
【0075】
比較例6
カチオーゲンES−Oの添加量を1.95重量部、エパン710の使用量を0.05重量部とし、発泡成形体の発泡倍数を40倍とすること以外は、実施例2と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表2に示す。
【0076】
比較例7
カチオーゲンES−Oを添加せず、エパン710を2.0重量部添加し、発泡成形体の発泡倍数を40倍とすること以外は、実施例2と同様にして発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表2に示す。
【0077】
比較例8
発泡剤の含浸工程において、内容積50リットルの耐圧で密閉可能なV型ブレンダーに、実施例1で得られた改質樹脂粒子を100重量部、ジイソブチルアジペート0.5重量部を投入、密閉し撹拌させた。撹拌させながらブタンを16重量部圧入した。ブタンを圧入後、器内を60℃に2時間程度保持し25℃まで冷却した。その後、カチオン性界面活性剤として、第一工業製薬社製カチオーゲンES−O(純分50%)を1.5重量部、非水溶性のノニオン性界面活性剤として、タナカ化学研究所社製アンチスタ80FS(HLB9.2)を0.2重量部と投入した。V型ブレンダー内の温度を25℃、内圧を0.20MPaに保持し、30分撹拌した。その後、20℃まで冷却した後、発泡性樹脂粒子を取出した。
予備発泡、発泡成形は実施例1と同様にして、発泡成形体の発泡倍数を40倍とし発泡成形体を得た。
発泡成形体の表面抵抗率及び減衰率の測定結果、総合評価を表2に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
実施例と比較例とから、カチオン性界面活性剤と非水溶性のノニオン性界面活性剤とを併用することで、表面抵抗率が低く、帯電量の減衰率が高い発泡成形体が得られることがわかる。
実施例1〜14から、種々のノニオン性界面活性剤においても、表面抵抗率が低く、帯電量の減衰率が高い発泡成形体が得られることがわかる。
【0081】
実施例1及び5〜7から、ノニオン性界面活性剤の使用量を変化させても、表面抵抗率が低く、帯電量の減衰率が高い発泡成形体が得られることがわかる。特に、使用量を増やすことで、高倍の発泡成形体においても、低い表面抵抗率と高い帯電量の減衰率を維持できることがわかる。
実施例3及び12から、カチオン性界面活性剤の使用量を変化させても、表面抵抗率が低く、帯電量の減衰率が高い発泡成形体が得られることがわかる。
実施例13及び14から、複合樹脂粒子を構成する樹脂種を変更しても、表面抵抗率が低く、帯電量の減衰率が高い発泡成形体が得られることがわかる。
【0082】
実施例8〜11及び比較例5〜6の減衰率と、カチオン性界面活性剤量を1とした場合のノニオン性界面活性剤量比との関係を図1に示す。これら実施例及び比較例は、いずれも、全界面活性剤量が2.0重量部共通であり、同じカチオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤を使用している。図1から、ノニオン性界面活性剤量比が0.03〜0.8の範囲であれば、高い減衰率が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂粒子に、界面活性剤の存在下で、発泡剤を乾式含浸させて発泡性樹脂粒子を得るに際して、
前記界面活性剤が、前記スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、1〜4重量部使用され、かつ重量比1:0.03〜0.8の割合でカチオン性界面活性剤と非水溶性のノニオン性界面活性剤とを含むことを特徴とする帯電防止性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ノニオン性界面活性剤が、前記スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、0.03〜1.6重量部使用される請求項1に記載の帯電防止性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂粒子が、スチレン系樹脂とエチレン系樹脂との複合樹脂の粒子であり、前記エチレン系樹脂が、前記スチレン系樹脂100重量部に対して、20〜100重量部含まれる請求項1又は2に記載の帯電防止性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記カチオン性界面活性剤が、下記式1
【化1】

(上記式中、R1は、炭素数5〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基を意味する)
で表される剤から選択される請求項1〜3のいずれか1つに記載の帯電防止性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ノニオン性界面活性剤が、ジアルカノールアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、脂肪酸モノグリセライド及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルから選択される請求項1〜4のいずれか1つに記載の帯電防止性を有する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法により得られた発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られた予備発泡粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の予備発泡粒子を発泡成形させて得られた発泡成形体。
【請求項9】
スチレン系樹脂を含む予備発泡粒子の融着体からなる発泡成形体であり、
前記融着体が、カチオン性界面活性剤と非水溶性のノニオン性界面活性剤とを含み、かつ90%以上の帯電量の減衰率を示すことを特徴とする帯電防止性を有する発泡成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−214725(P2012−214725A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−65831(P2012−65831)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】