説明

帯電防止性ハードコート樹脂組成物

【課題】持続的な帯電防止性を有し、さらに優れた透明性、ハードコート性、耐光性を兼ね備えた、安価で環境負荷の少ない導電性酸化亜鉛を用いたコーティング剤、コーティングフィルムを提供する。
【解決手段】A成分として、一次粒子の平均粒子径が0.05μm以下の導電性酸化亜鉛と、B成分として、含フッ素樹脂と、C成分として、分子内に少なくとも一個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型(メタ)アクリレートとを含有することを特徴とする帯電防止性ハードコーティング樹脂組成物であり、好ましくは、含フッ素樹脂が、フルオロオレフィン単量体と炭素−炭素二重結合を有する単量体との共重合体であることを特徴とする前記の帯電防止性ハードコーティング樹脂組成物であり、それを用いた帯電防止性ハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルフォン、ポリスチレン等のプラスチックフィルムまたはシート表面上を被覆するのに適した透明で擦傷性、耐光性および帯電防止性に優れたハードコート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチックは自動車業界、家電業界を始めとして種々の産業界で大量に使われている。このようにプラスチックが大量に使われている理由はその加工性、透明性等に加えて、軽量、安価、光学特性等の理由による。
【0003】
しかし、プラスチックはガラス等に比較して柔軟であり、表面に傷がつき易く、さらに、プラスチックは高い体積固有抵抗を持つために摩擦などにより接触面で容易に静電気を帯び、しかもそれが漏洩し難いという欠点を有している。
【0004】
特にディスプレイ分野においてはCRT、LCD、プロジェクター、PDP、ELパネル、さらにはFEDなどの次世代フラットディスプレイパネルへと移行するにつれ、パネル前面保護の為のハードコート性、塵埃吸着防止のための持続的帯電防止性、更には高画質を得るための高透明性を兼ね備えた透明プラスチック用のコーティング剤が望まれている。
【0005】
更にその他の分野、例えば半導体ウエハー保存容器、光ディスク、磁気テープ、その他電子・電気部材、印刷部材、半導体生産現場用クリーンルーム部材等においても、静電気の発生による塵埃の吸着が問題となり、それら欠点を改善するため、プラスチック表面には帯電防止処理およびハードコート処理が施される。
【0006】
上記のような透明性を兼ね備えた帯電防止性ハードコーティング剤として、導電性金属酸化物の微粉末を用いたコーティング剤が知られている。
【0007】
導電性金属酸化物の中で、安価で環境負荷の少ない物質として酸化亜鉛、酸化錫などが挙げられ、特に酸化亜鉛の微粉末を用いた樹脂組成物としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3に半透明および白色コーティング剤が開示されている。
【特許文献1】特公平7−84570号公報。
【特許文献2】特公平8−6055号公報。
【特許文献3】特開昭61−211374号公報。
【0008】
しかしながら、近年のディスプレイ用途等で要求される優れた透明性、ハードコート性、帯電防止性を兼ね備えたコーティング剤は開示されていない。
【0009】
一方、酸化亜鉛には光触媒作用があることが知られており、蛍光灯や窓からの光や紫外線に長期的に曝されるとハードコート性が低下する等の不具合を起こす懸念があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は、導電性酸化亜鉛超微粒子を用いたコーティング剤に関し、持続的な帯電防止性、優れた透明性、ハードコート性を兼ね備え、さらに耐光性に優れた、安価で環境負荷の少ない導電性酸化亜鉛を用いたコーティング剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、A成分として一次粒子の平均粒子径が0.05μm以下の導電性酸化亜鉛を含有し、B成分として含フッ素樹脂、C成分として分子内に少なくとも一個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型(メタ)アクリレートを含有する透明性、ハードコート性に優れ、且つ耐光性に優れた帯電防止性ハードコーティング樹脂組成物であり、好ましくは、A成分の含有割合がA成分、B成分、およびC成分の合計に対して、50質量%〜95質量%であり、さらに、B成分の含有割合が成分Bと成分Cとの合計に対して、0.01〜99.99質量%、好ましくは5〜95質量%であることを特徴とする前記の帯電防止性ハードコーティング樹脂組成物であり、含フッ素樹脂が、フルオロオレフィン単量体と炭素−炭素二重結合を有する単量体との共重合体であることを特徴とする前記の帯電防止性コーティング樹脂組成物であり、更に、溶媒としてアルコールを含有することを特徴とする前記の帯電防止性ハードコーティング樹脂組成物である。
【0012】
また、本発明は、前記の帯電防止性ハードコーティング樹脂組成物の重合体を帯電防止層として備え、しかも透明であることを特徴とする帯電防止性ハードコートフィルムであり、好ましくは、前記の帯電防止性ハードコートフィルム上に、該帯電防止性ハードコートフィルムよりも屈折率が低い樹脂組成物層を具えたことを特徴とする反射防止性の帯電防止性ハードコートフィルムであり、または、前記の帯電防止性ハードコートフィルムの片面に接着剤または粘着剤を備えたことを特徴とする帯電防止性ハードコートフィルムである。加えて、本発明は、前記の帯電防止性ハードコートフィルムを備えたことを特徴とするディスプレイである。
【発明の効果】
【0013】
導電性酸化亜鉛微粒子を用いた帯電防止性樹脂組成物に関し、帯電防止性、透明性、ハードコート性を兼ね備え、且つ耐光性に優れたコーティング樹脂組成物を提供することにより、帯電防止性、透明性、ハードコート性を兼ね備え、且つ耐光性に優れたハードコートフィルムを提供し、最終的には、帯電防止性、透明性、ハードコート性を兼ね備え、且つ耐光性に優れるディスプレイを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明に於いて、A成分として、一次粒子の平均粒径が0.05μm以下の導電性酸化亜鉛を選択する。一次粒子の平均粒径の測定方法としては、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いる手法があり、これらの方法で観察された一次粒子の平均粒子径が0.05μm以下である。
【0016】
また、導電性酸化亜鉛の導電性については、酸化亜鉛にアルミニウム、錫、ガリウムなどの異原子がドーピングされ、抵抗値が1kΩ・cm以下であることが望ましい。
【0017】
上記の特性を有する導電性酸化亜鉛の例としては、「導電性酸化亜鉛 SC−18」(堺化学工業(株)製)等が挙げられるが、本発明に於いては、一次粒子の平均粒径が0.05μm以下で、抵抗値が1kΩ・cm以下という数値範囲が満たされていれば良く、特に限定されるものではない。
【0018】
帯電防止性ハードコート樹脂組成物中のA成分の導電性酸化亜鉛の含有割合は、A成分と、後述するB成分およびC成分との合計に対して、50質量%〜95質量%であることが好ましく、70質量%〜90質量%がより望ましい。50質量%未満であると、導電性付与成分の絶対量が不足気味となるために充分な帯電防止性が得られず、逆に95重量%を超えるときはハードコート性が悪化するほか、基材との密着性も悪くなって剥離し易くなり、更には透明性も低下してくるためである。
【0019】
一次粒子の平均粒径が0.05μm以下の微粒子の場合には、粒子間の凝集力が大きく二次凝集体を形成してしまいがちである。そのため透明な樹脂組成物を得るためには、この二次凝集体を微分散させる必要がある。
【0020】
分散方法としては、湿式粉砕法が好適である。湿式粉砕法としては、ボールミル、ビーズミル、アトライター等のメディア型、ホモジナイザー、ディスパー、ジェットミル、コロイドミル、ロールミル、超音波等の非メディア型が知られているが、本発明ではこれらのいずれを用いても構わないし、前記の分散方法の二種類以上を組み合わせても良い。
【0021】
B成分である含フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレンなどの含フッ素単重合体、フルオロオレフィンと分子内に炭素−炭素二重結合を持つモノマーとの共重合体、また重合可能な官能基を持つフルオロ単量体などが挙げられる。
【0022】
特に、フルオロオレフィン単量体と分子内に炭素−炭素二重結合を持つ単量体との共重合体が剛性を持ち、且つ溶剤に溶解しやすいために好ましい。
【0023】
フルオロオレフィン共単量体としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどが例示できる。
【0024】
また、前記の炭素−炭素二重結合を持つ共単量体としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレンなどのオレフィン類や、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロオレフィン類、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル類、酢酸ビニル、n−酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニル類、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類が例示できる。
【0025】
含フッ素樹脂の含有割合は、B成分と後述するC成分の合計に対して、0.01〜99.99質量%、より好ましくは5〜95質量%が望ましい。0.01質量%より少ないと良好な耐光性が得られず、99.99質量%より多いと基材との密着が不足するためである。
【0026】
本発明に於いては、C成分として、分子内に少なくとも一個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型(メタ)アクリレートを選択する。
【0027】
前記の(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロベンジルアクリレート、ジシクロペンテニルエチレングリコール付加物(メタ)アクリレートフェニルグリシジルエーテルエポキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ(ポリ)エチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールエトキシ化アクリレート、アクリロイルオキシエチルフタル酸、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェノールエトキシ化(メタ)アクリレート、メチルメタクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、メタクリロイルオキシエチル酸、メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、メタクリロイルオキシエチルフタル酸、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、N−メチロールアクリルアマイド、N−メトキシメチルアクリルアマイド、N−エトキシメチルアクリルアマイド、N−n−ブトキシメチルアクリルアマイド、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸、N−メチルアクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、グリシジル(メタ)アクリレート、n−ブチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、メタクリル酸アリル、セチルメタクリレート、ペンタデシルメタアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチル琥珀酸、イミド(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチル、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、グリコールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリロイルフォスフェート、ビスフェノールAエチレングリコール付加物アクリレート、ビスフェノールFエチレングリコール付加物アクリレート、トリシクロデカンメタノールジアクリレート、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートジアクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレングリコール付加物トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレングリコール付加物トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリアクリレート、変性ε−カプロラクトントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロピレングリコール付加物トリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエチレングリコール付加物テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、フッ素化(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、イミド化(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
前記の(メタ)アクリレートは、単独もしくは任意に混合して使用することができるが、好ましくは分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上含有する多官能(メタ)アクリレートモノマーもしくはオリゴマーが重合後の皮膜が硬く、耐擦傷性が良好で好適である。
【0029】
本発明の帯電防止性ハードコート樹脂組成物中には、光重合開始剤を添加することができる。光重合開始剤は、紫外線や可視光線等の活性光線により増感させて、当該樹脂組成物の光硬化を促進するために配合するものであり、公知の各種の光重合開始剤が使用可能である。
【0030】
本発明の帯電防止性ハードコート樹脂組成物中には、ヒンダートアミン系の光安定剤や有機系および無機系の光吸収剤を添加することもできる。
【0031】
本発明の帯電防止性ハードコート樹脂組成物は、紫外線照射により硬化可能であるので、プラスチックフィルム表面に帯電防止性ハードコート樹脂組成物からなる重合体の層を形成するに際して、前記ハードコート層を形成させるための帯電防止性ハードコート樹脂組成物として使用することができる。
【0032】
本発明の帯電防止性ハードコート樹脂組成物は、溶媒中に分散させることにより、プラスチックフィルム表面に皮膜を形成する際のレベリング性が向上し、帯電防止性ハードコートの皮膜を平滑および平坦に形成することが可能となる。その結果として、皮膜表面の凹凸に起因するハードコート性および透明性の低下を抑制することができるという効果が得られる。
【0033】
さらに、溶媒中に分散させることにより、導電性酸化亜鉛の分散性が向上し、その結果として皮膜の透明性を一層向上させることができるという効果も得られる。
【0034】
本発明に用いることができる溶媒成分としては、前記B成分、C成分等を溶解し得るものであればどのようなものでも構わないが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類が好適である。更に、水またはトルエン、キシレン、酢酸エチル、ケトン類などの芳香族、脂肪族の有機溶媒を必要に応じて選択し、前記アルコール類と組み合わせることもできる。
【0035】
さらに、導電性酸化亜鉛を極めて好ましい状態でアルコール溶媒中に分散させるために、分散剤を効果的に添加することができる。分散剤としてはアミン化合物またはシランカップリング剤が好ましい例として挙げられる。
【0036】
また、本発明の帯電防止性ハードコート樹脂組成物中には、必要に応じて、スリップ剤、酸化防止剤、硬化促進剤、チキソトロピー付与剤、レベリング剤、消泡剤、pH調整剤などの添加剤を加えることができ、またテープやフィルムやシートなどの基材との密着性を向上する目的で、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂などのポリマーも添加することができる。
【0037】
本発明における帯電防止性ハードコート樹脂組成物の製造方法およびこれをフィルム表面にコーティングする方法として、例えば次の方法が挙げられる。
【0038】
予め導電性酸化亜鉛をアルコール溶媒中に分散して得られる分散液に、B成分の含フッ素樹脂およびC成分の紫外線硬化可能な(メタ)アクリレートモノマーを添加し、更に光重合開始剤を溶解させて所望のコーティング液組成物を得る。但し、これらの各成分の混合方法はこの順序に特に限定されない。
【0039】
前記のコーティング液組成物を、透明フィルム表面に一層コーティングし、乾燥して溶媒を揮発させた後、紫外線を照射して、瞬時に硬化させることによって、本発明の帯電防止性ハードコート樹脂組成物からなる重合体、即ち帯電防止性ハードコート層(以下、「皮膜」という)を備えた透明で擦傷性に優れた帯電防止性ハードコートフィルムを得ることができる。
【0040】
前記のコーティング液組成物をフィルム表面にコーティングする方法としては、例えば、浸漬法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、噴霧法、スピンコート法などの従来公知の方法を適用できる。
【0041】
フィルム上に形成される皮膜の厚さとしては、0.01μm〜50μmが選択され、0.1μm〜10μmの厚さが一層好ましい。0.01μm未満の場合は、帯電防止性、ハードコート性が不足し、50μmより厚い場合には、透明性の不足、さらには基材がカールしてしまうことがあるためである。
【0042】
本発明に於いて、基材として、例えば、プラスチックフィルムが挙げられるが、本発明において前記プラスチックフィルムの厚みは0.0001〜10mmが選択され、0.0005〜5mmが好ましく、いわゆるシートをも含有している。
【0043】
前記プラスチックフィルムの材質としては、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルフォン等のプラスチックが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの基材は透明度の高いものが好ましいが、所望に応じて着色したフィルムを用いることができる。
【0044】
本発明の帯電防止性ハードコートフィルムは、前記した本発明の帯電防止性ハードコーティング樹脂組成物の重合体からなるので、前記樹脂組成物重合体の特徴である、ハードコート性、帯電防止性、透明性に優れるという特徴を有しており、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルフォン等のプラスチックフィルム表面を被覆して、これらのフィルムに前記特性を付与することができるという顕著な効果を示す。
【0045】
また、前記の帯電防止性ハードコートフィルム上に、該帯電防止性ハードコートフィルムよりも屈折率の低い樹脂組成物層を具える時には、前記特性に加えて反射防止性にも優れるフィルムが得られ、このような構造を有する帯電防止性ハードコートフィルムは、CRT、LCD、プロジェクター、PDP、ELパネル、さらにはFEDなどを初めとする各種のディスプレイに好適である。また、本発明になる帯電防止性ハードコートフィルムを備えたことを特徴とするディスプレイは、前記帯電防止性ハードコートフィルの特徴である、ハードコート性、帯電防止性、透明性に優れる、更には反射防止性にも優れるという特性を生かして、長期間に渡り明るくて見やすい画像を提供出来るという特徴を有する。
【実施例1】
【0046】
次に本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(分散液製造方法:実施例比較例共通)分散溶媒として、イソプロピルアルコール(以下、「IPA」という)を1400質量部、n−ブタノールを1400質量部、分散剤として、トリエタノールアミンを36質量部、一次粒子平均径が0.02μmで抵抗値(粉体固有抵抗)が500Ω・cmである導電性酸化亜鉛(堺化学工業製「SC−18」)を1200質量部配合し、直径0.1mmのジルコニアビーズを使用した循環式ビーズミルにより30分間の分散処理を行った。得られた分散液からジルコニアビーズを除去し、濃度調整のためにIPAとn−ブタノールを前記割合で更に添加することで導電性酸化亜鉛濃度が20質量%の導電性酸化亜鉛アルコール分散液を得た。
【0048】
(コーティング剤製造方法:実施例1)前記の導電性酸化亜鉛アルコール分散液381質量部を用意し、樹脂成分として、3フッ化エチレン−ビニルエーテル共重合体の40質量%キシレン溶液(旭硝子製「ルミフロン」)を25質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物(日本化薬製「KAYARAD PET−30」)を10質量部、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタールを1質量部添加し、光重合開始剤が溶解するまで撹拌することで、所望のコーティング液組成物を得た。このとき固形成分中に占める導電性酸化亜鉛の含有量は80重量%であった。
【0049】
(フィルム製造方法:実施例比較例共通)得られたコーティング液組成物を、乾燥後の膜厚が5μmとなる様に、バーコーターにてポリエステルフィルム(東洋紡績社製「A4300」)に塗布し、60〜100℃の熱風乾燥機で1〜2分間乾燥の後、高圧水銀ランプを用い、積算照射光量750mJ/cmの紫外線(360nm)を照射することにより皮膜を形成した。
【0050】
コーティング剤の処方および得られた各フィルムの表面抵抗率、全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度の結果を表1に、耐光性試験の結果の値を表2に一括して示す。
【表1】


【表2】

【0051】
性能試験方法は下記の通りである。
【0052】
(表面抵抗率)抵抗測定器(アドバンテスト社製)を使用し、JIS K6911に準拠して、印加電圧1000Vで測定した。
【0053】
(全光線透過率およびヘーズ)ヘーズメーター(スガ試験機社製)を使用し、JIS K7361およびJIS K7136に準拠して測定した。
【0054】
(鉛筆硬度)スクラッチ試験機(KASAI社製)を使用し、荷重1Kgで測定した。
【0055】
(耐光性試験)サンシャインウエザーメーター(スガ試験機社製)を用い、フィルムサンプルのコーティング面側に紫外線を照射し、50〜200時間暴露した(水噴霧なし)。暴露後のフィルムサンプルについて、触指により、コーティング面が白化(チョーキング)現象を起こしているかどうか確認した。また、コーティング面をウエスによるスクラッチ試験(10往復)を行い、スクラッチの前後でのヘーズ値の差を比較した。ヘーズ測定についてはヘーズメーター(スガ試験機社製)を使用し、JIS K7136に準拠して測定した。
【0056】
(比較例1)前記導電性酸化亜鉛アルコール分散液381質量部を用意し、樹脂成分として、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物(日本化薬製「KAYARAD PET−30」)を19質量部、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタールを2質量部添加し、光重合開始剤が溶解するまで撹拌することで、所望のコーティング液組成物を得た。固形成分中に占める導電性酸化亜鉛の含有量は80重量%であった。
【0057】
(比較例2)前記導電性酸化亜鉛アルコール分散液381質量部を用意し、樹脂成分として、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物(日本化薬製「KAYARAD PET−30」)を19質量部、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタールを2質量部添加し、さらにヒンダートアミン系の光安定剤(クラリアントジャパン社「SANDUVIR 3053」)を0.1質量部添加し、光重合開始剤が溶解するまで撹拌することで、所望のコーティング液組成物を得た。固形成分中に占める導電性酸化亜鉛の含有量は80重量%であった。
【0058】
(比較例3)前記の導電性酸化亜鉛アルコール分散液381質量部を用意し、樹脂成分として、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物(日本化薬製「KAYARAD PET−30」)を19質量部、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタールを2質量部添加し、さらに有機系光吸収剤(クラリアントジャパン社「HOSTAVIN PR25」)を0.1質量部添加し、光重合開始剤が溶解するまで撹拌することで所望のコーティング液組成物を得た。固形成分中に占める導電性酸化亜鉛の含有量は80重量%であった。
【実施例2】
【0059】
前記の導電性酸化亜鉛アルコール分散液381質量部を用意し、樹脂成分として、3フッ化エチレン−ビニルエーテル共重合体の40質量%キシレン溶液(旭硝子製「ルミフロン」)を5質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物(日本化薬製「KAYARAD PET−30」)を18質量部、光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタールを1.8質量部添加し、光重合開始剤が溶解するまで撹拌することで所望のコーティング液組成物を得た。固形成分中に占める導電性酸化亜鉛の含有量は80重量%であった。
【0060】
(比較例4)前記の導電性酸化亜鉛アルコール分散液381質量部を用意し、樹脂成分として、3フッ化エチレン−ビニルエーテル共重合体の40質量%キシレン溶液(旭硝子製「ルミフロン」)を50質量部添加し、撹拌することで所望のコーティング液組成物を得た。固形成分中に占める導電性酸化亜鉛の含有量は80重量%であった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
ディスプレイ分野のパネル前面保護の為のハードコート性、塵埃吸着防止のための永久帯電防止性、更には高画質を得るための高透明性を兼ね備えた透明プラスチックフィルムおよびシート、更にその他の分野、例えば半導体ウエハー保存容器、光ディスク、磁気テープ、その他電子・電気部材、印刷部材、半導体生産現場用クリーンルーム部材等においても適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A成分として、一次粒子の平均粒子径が0.05μm以下の導電性酸化亜鉛と、B成分として、含フッ素樹脂と、C成分として、分子内に少なくとも一個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化型(メタ)アクリレートとを含有することを特徴とする帯電防止性ハードコーティング樹脂組成物。
【請求項2】
A成分の含有割合がA成分、B成分、およびC成分の合計に対して、50質量%〜95質量%であり、さらに、B成分の含有割合が成分Bと成分Cとの合計に対して、0.01〜99.99質量%であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性ハードコーティング樹脂組成物。
【請求項3】
含フッ素樹脂が、フルオロオレフィン単量体と炭素−炭素二重結合を有する単量体との共重合体であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の帯電防止性ハードコーティング樹脂組成物。
【請求項4】
溶媒としてアルコールを含有することを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の帯電防止性ハードコーティング樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の帯電防止性ハードコーティング樹脂組成物の重合体を帯電防止層として備え、しかも透明であることを特徴とする帯電防止性ハードコートフィルム。
【請求項6】
請求項5記載の帯電防止性ハードコートフィルム上に、該帯電防止性ハードコートフィルムよりも屈折率が低い樹脂組成物層を具えたことを特徴とする反射防止性の帯電防止性ハードコートフィルム。
【請求項7】
請求項5または請求項6記載の帯電防止性ハードコートフィルムの片面に接着剤または粘着剤を備えたことを特徴とする帯電防止性ハードコートフィルム。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項記載の帯電防止性ハードコートフィルムを備えたことを特徴とするディスプレイ。

【公開番号】特開2007−186532(P2007−186532A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−22863(P2004−22863)
【出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】