説明

帯電防止性ポリ乳酸系樹脂組成物

【課題】緩衝材として使用可能な30倍以上の発泡倍率、及び成形性が良好でかつ電子精密機器等の緩衝材として使用可能な1×1012Ω/sq以下の表面固有抵抗値を有するポリ乳酸系樹脂発泡粒子及びその発泡成形体、並びにそれを達成しうる樹脂組成物を得る。
【解決手段】乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が92/8〜8/92であるポリ乳酸系樹脂100重量部に対し、炭素数20以下の2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩を1〜3重量部含むポリ乳酸系樹脂組成物を使用し、発泡ガスを含浸、発泡させることによって得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高発泡倍率で帯電防止性に優れたポリ乳酸系樹脂発泡粒子及びその発泡成形体に関する。さらに詳しくは、発泡粒子の発泡倍率が30倍以上、発泡成形体の表面固有抵抗値が1×1012Ω/sq以下であるポリ乳酸系樹脂発泡粒子及びその発泡成形体、並びにそれを達成し得るポリ乳酸系樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
近年、石油事情、また環境問題といった観点から、従来の合成樹脂製品はリサイクル、リユースされるようになってきている。主に魚箱、家電緩衝材、食品用トレー等に使用される発泡スチロール(発泡ポリスチレン)も例外ではなく、破砕減容して主にマテリアルリサイクルされるようになってきている。
【0003】
しかし、こういったマテリアルリサイクルの試みは卸売市場で発生する使用済み魚箱、大型家電の緩衝材等、使用済みのものの回収が容易なものに限られており、一般小売業者、飲食店で発生するものや末端消費者が直接自宅に持ち帰る商品に使用されているものの回収率は極めて低い。
【0004】
回収が困難な発泡スチロール製品は一般ゴミと一緒に廃棄されることが多いが、相応の設備を有しない焼却処分場では、その高い燃焼熱ゆえに焼却炉を傷めてしまう。
【0005】
本発明者らは、これらの状況に鑑み、燃焼熱が低く炉を傷めず、しかも微生物による分解が可能な発泡成形体として、ポリ乳酸系樹脂発泡体及びその成形体を開発し、特許文献1等でその技術を開示している。
【0006】
しかし、ポリ乳酸系樹脂は静電気を帯び易く逃がし難い性質を持っており、特許文献1等の発泡成形体は、特定の用途、例えば、電子精密機器、電子部品等の梱包材や緩衝材等に使用した場合、帯電した静電気の放電により電気・電子部品に障害を与えたり、ほこりが付着しやすい等の問題がある。
【0007】
特許文献2には、一般的な合成樹脂の帯電防止剤として下記式:
CH(R)−SO
(式中、R及びRはそれぞれ直鎖アルキル基を示し、Mはスルホン酸塩を形成する金属塩を示す)で表され、かつ2級アルキル基RCH(R)の炭素数が10〜12である2級アルカンスルホン酸金属塩が高融点でかつ熱分解温度が高く、耐熱性に優れる為ポリエステル系樹脂をはじめとする各種樹脂の、特に非発泡の成形体において、帯電防止剤として有効に機能することが記載されている。
【0008】
しかし、特許文献2では特に発泡体には触れておらず、後段に示す特許文献3には特許文献2の帯電防止剤は1重量部以上添加すると、発泡体の気泡壁に悪影響を及ぼして破泡が発生しやすくなる為、成形性が著しく悪化し良好な外観を有する発泡成形体が得られず、添加量を減少させると十分な帯電防止性が得られないと記述されている。
【0009】
又、特許文献3には、下記式:
CH(R)−SO
(式中、R及びRはそれぞれ直鎖アルキル基を示し、Mはスルホン酸塩を形成する金属塩を示す)で表され、かつ2級アルキル基RCH(R)の炭素数が15〜20である2級アルカンスルホン酸金属塩が、1重量部以下の少量添加で熱可塑性ポリエステルに
帯電防止性が付与でき、かつ押出発泡の発泡性、表面の平滑性に影響を及ぼさないと記載されている。又、1重量部以上添加すると良好な外観を有する発泡成形体が得られないことも記載されている。
【0010】
しかし、特許文献3は押出発泡成形であり、しかも実施例からも明らかなように5倍以下の低発泡倍率である為、緩衝性に劣るものである。又、比較的高発泡倍率が得られる一般的な発泡スチロールの製造方法であるビーズ発泡法、及びその成形性、帯電防止性については言及していない。
【0011】
特許文献4では、ポリ乳酸系樹脂組成物に帯電防止剤としてポリアルキレングリコール誘導体、アルキルアリールスルホン酸金属塩を添加することで帯電防止性が付与できると記載されている。
【0012】
しかし、帯電防止性は得られるものの、発泡倍率が25倍以下となり、緩衝材として使用するには十分ではない。
【0013】
即ち、緩衝材として使用可能な30倍以上の発泡倍率と、成形性が良好でかつ十分な帯電防止性を有するポリ乳酸系樹脂発泡粒子及び発泡成形体は未だ得られていない。
【0014】
【特許文献1】国際公開99/21925号パンフレット
【特許文献2】特開平5−222241号公報
【特許文献3】特開2000−345019号公報
【特許文献4】特開2000−230029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、緩衝材として使用可能な30倍以上の発泡倍率、及び成形性が良好でかつ電子精密機器等の緩衝材として使用可能な1×1012Ω/sq以下の表面固有抵抗値を有するポリ乳酸系樹脂発泡粒子及びその発泡成形体、並びにそれを達成しうる樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が92/8〜8/92であるポリ乳酸系樹脂100重量部に対し、炭素数20以下の2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩を1〜3重量部含むポリ乳酸系樹脂組成物を使用し、発泡ガスを含浸、発泡させることによって30倍以上の発泡倍率の帯電防止性ポリ乳酸系樹脂発泡粒子が得られ、該発泡粒子を成形することにより、表面固有抵抗値が1×1012Ω/sq以下の帯電防止性ポリ乳酸系樹脂発泡成形体が得られることを見出した。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、高発泡倍率であり、成形性に優れ、さらに静電気に弱い電子精密機器等の緩衝材として使用できるレベルの帯電防止性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者らは、本発明を成すにあたり、まずポリ乳酸系樹脂に特許文献3に記載されて
いる帯電防止剤及びその添加量、即ち、2級アルカンスルホン酸金属塩を0.01〜1重量部添加し、ビーズ発泡法による帯電防止性ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造することを検討した。
【0019】
しかし、良好な発泡性及び成形性は得られたものの、1重量部未満の添加量では帯電防止性は不十分であった。
【0020】
この為、他の帯電防止剤についても検討したが、発泡性、成形性、帯電防止性の全てを満足させるものは得られなかった。
【0021】
そこで、特許文献3において発泡性及び成形性を阻害するとしてその範囲から除外されていた、1重量部以上の2級アルカンスルホン酸金属塩を添加したところ、良好な発泡性、成形性及び帯電防止性の全てを満足するポリ乳酸系樹脂発泡成形体が得られることを見出した。
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用するポリ乳酸系樹脂としては、結晶性の高い樹脂は発泡ガスを含浸する際や、予備発泡をする際に結晶化し、発泡性、成形性を阻害する為、乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が、92/8〜8/92、好ましくは90/10〜10/90のものが用いられる。
【0023】
このポリ乳酸系樹脂組成物が良好な発泡性を示す為には70℃〜90℃の発泡温度域で適正な粘度を持つことが必要であり、種々の架橋剤を用いた架橋反応による増粘、他の化合物の配合による粘度調整などがその手段として挙げられる。
【0024】
添加する架橋剤としては、無水多塩基酸、多官能エポキシ、多官能イソシアネート、可酸化物等、一般的な架橋剤を単独又は複数選択して使用することができるが、混練時の架橋増粘によるトルクアップが少なく、混練後に水分の存在下で加熱処理することにより、アロファネート結合等による後増粘が可能である為、ポリイソシアネートが架橋剤として好適に使用される。
【0025】
使用されるポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族系のポリイソシアネートがある。例えば、芳香族ポリイソシアネートとしてはトリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物がある。また、脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロン、水酸化ジフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物がある。また、脂肪族ポリイソシアネートとしてはヘキサメチレン、リジンを骨格とするポリイソシアネート化合物がある。これらはいずれも使用可能であるが、汎用性、ハンドリング性、等からトリレン、ジフェニルメタン系のポリイソシアネート類が好ましく、特に好ましくはジフェニルメタン系ポリイソシアネートが使用される。
【0026】
また、イソシアネート化合物の添加量は樹脂に対して0.1〜5重量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜3重量部である。添加量が0.1重量部以下では粘度があまり上昇せず、5重量部以上では樹脂組成物の粘度は上昇するものの未反応のポリイソシアネートが残留したり、分岐密度が大きくなり、又架橋反応も進行しゲル化物が多量に発生し、発泡性は逆に低下する。
【0027】
本発明に使用される2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩の2級アルキル基の炭素数は20以下のものを使用し、好ましくは18以下である。2級アルキル基の炭素数が20を超える2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩は融点が高くなりすぎて、混練機内での溶融
、混練時等における、ポリ乳酸樹脂に対する混合性が低下する為に、ポリ乳酸樹脂中に良好に混合、分散されず、良好な帯電防止性を有する発泡成形体が得られない。
【0028】
2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩の2級アルキル基の炭素数が20以下のものの例として、アトレーAS100(2級アルキル基の炭素数=11、日本鉱業(株)製)、HOSUTAPUR SAS 93(2級アルキル基の炭素数=16、クラリアントジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0029】
2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩の添加量は1〜3重量部の範囲である。2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩の添加量が1重量部未満では帯電防止効果が不十分であり、添加量が3重量部を超えるとポリ乳酸樹脂組成物が過度に可塑化され発泡ガスを含浸する工程において該樹脂組成物の粒子同士が凝集し、密閉容器内に膠着してしまう等の問題を生じる。
【0030】
本発明に使用するポリ乳酸系樹脂組成物には、発泡セルの均一化、細孔化を目的として、無機粉体等の気泡調整剤(発泡核剤)を添加しても良い。具体的には、タルク、雲母、粘土鉱物、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸等が使用可能であるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0031】
尚、本発明の樹脂組成物中には難燃剤、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0032】
上述のポリ乳酸系樹脂組成物を調整する方法は公知の方法が可能であり単軸又は2軸混練機で溶融混合する方法等があるが、とくに2軸混練機が好適に使用される。
【0033】
ポリ乳酸系樹脂組成物と発泡ガス、分散媒としての水を密閉容器内に充填し、該樹脂組成物の軟化温度以上に加熱した後、十分に冷却後取り出すことにより発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子が得られる。
【0034】
ポリ乳酸系樹脂組成物に含浸させる発泡ガスとしては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン等の炭化水素類、窒素、二酸化炭素等の無機ガスが挙げられる。フロンガス類も発泡ガスとして好適であるが、環境への配慮が必要な場合は避ける方が好ましい。特に、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタンが好ましい。これらは、2種以上を併用しても良い。又、発泡剤の添加量は目的とする発泡倍率によって異なるが、通常5〜30重量部が適用される。
【0035】
含浸時に樹脂の分散性を改善し、膠着を防ぐ目的で分散助剤を添加しても良い。分散助剤としてはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類等の高分子物質を使用することも可能であるが、界面活性剤、特に非イオン系界面活性剤が好適に使用される。
【0036】
例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類やTween20、40、60、80等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、Span20、60、80等のソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。(Tween及びSpanはICI社の商標)
【0037】
また、含浸時に着色成分や機能性を付与する成分を含浸しても良い。例えば、芳香剤、消臭剤、防腐剤、抗菌剤、各種着色剤などがあげられる。
【0038】
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、発泡性ポリ乳酸系樹脂組成物を水蒸気や熱風、高周波等によって発泡させる方法が適用できるが、発泡スチロール用の予備発泡機を用いる方
法が最も簡便で一般的である。
【0039】
同様に予備発泡したポリ乳酸系樹脂組成物の成形は、発泡スチロールや発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等の成形に用いる成形機を用いて行うのが最も簡便で一般的であるが、予備発泡の工程を経ず、金型内で発泡と成形を同時に行うこともできる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。尚、評価は下記の方法で行った。
【0041】
(評価方法)
(1)発泡倍率の測定方法:内容積2000cmのポリエチレン製カップに発泡粒子を擦切り一杯量り取り、重量を測定し、風袋重量を差引いて発泡粒子の重量をもとめる。発泡倍率は、発泡粒子の重量と見かけ体積(2000cm)から以下の式により求められる。
発泡倍率=見かけ体積(2000cm)/発泡粒子の重量(g)
【0042】
(2)成形性の評価方法:型内成形を行い以下の基準で目視にて評価した。
○:良好
△:収縮気味
×:不良
【0043】
(3)発泡成形体の表面固有抵抗値の測定方法:表面固有抵抗測定器(Hiresta−UP MCP−HT450、三菱化学(株)製)を使用して測定、評価した。型内成形した発泡成形体より縦100mm×横100mm×厚み30mmの試験片を切り出し、23℃、湿度50%の雰囲気下にて24時間調温・調湿した後、表面固有抵抗値を測定した。
【0044】
(実施例1)
乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が90/10であるポリ乳酸樹脂100重量部に対して帯電防止剤として2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩「HOSTAPUR SAS 93」(クラリアントジャパン(株)製)1重量部をドライブレンドし、イソシアネート化合物「ミリオネートMR−200」(日本ポリウレタン工業(株)製)を2重量部添加しつつ2軸押出器「TEM−35B」(東芝機械(株)製)にてシリンダ温度185℃で溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφの粒子状ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
【0045】
(実施例2、3)
2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩をそれぞれ2重量部、3重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸樹系脂組成物を得た。
【0046】
(実施例4)
乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が88/12であるポリ乳酸樹脂を使用したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
【0047】
(比較例1)
2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
【0048】
(比較例2)
2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩を0.5重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
【0049】
(比較例3)
2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩を5重量部としたこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
【0050】
(比較例4)
乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が95/5であるポリ乳酸樹脂を使用したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
【0051】
(比較例5)
2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩の代わりに帯電防止剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩とポリエチレングリコールの混合物「デリオンPAS−032」(竹本油脂(株)製)を2重量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
【0052】
(比較例6)
2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩の代わりに帯電防止剤としてポリエーテル/ポリオレフィンブロックポリマー「ペレスタットOP300」(三洋化成工業(株)製)を10重量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
【0053】
(発泡ガスの含浸)
実施例1〜4、比較例1〜6で得られたポリ乳酸樹脂組成物を各々100重量部、水100重量部、発泡剤として混合ブタン(ノルマルブタン/イソブタン=70/30)25重量部とを密閉容器に充填し、94℃で90分間保持し、発泡剤を含浸させた。十分に冷却後取り出し、乾燥して発泡性ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
【0054】
(予備発泡)
得られた発泡性ポリ乳酸樹脂粒子を発泡スチロール用予備発泡機「DYHL−300」(ダイセン工業(株))にて発泡温度88℃で発泡させ、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。得られた該発泡粒子の発泡倍率を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
(型内成形)
さらに、得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を24時間以上常温で保管・熟成後、発泡スチロール用成形機「VS−300L−MC」(ダイセン工業(株))にて、300mm×300mm×30mmの発泡成形体を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の表面固有抵抗値を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例の発泡成形体はいずれも表面固有抵抗値が1×1012Ω/sq以下であり、電子精密機器、電子部品等の緩衝材等の用途にも十分適用可能な帯電防止性を有するものであった。
【0058】
又、実施例1〜3、比較例1〜3からも明らかなように、2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩の添加量が1〜3重量部において、発泡性、成形性、帯電防止性に優れる。
【0059】
さらに、実施例1,4、比較例4を比較すると明らかなように、乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が95/5では発泡しないという結果となり、発泡、成形が可能な乳酸成分の異性体比率は92/8〜8/92の範囲であること好ましい。
【0060】
比較例5及び6は他の帯電防止剤を評価したものであるが、比較例5は発泡倍率24.8倍と低く、成形性が不良という結果となり、比較例6では発泡倍率、成形性は問題無いものの帯電防止性に劣るという結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の樹脂組成物は、従来の発泡性を損なうことなく、成形性も良好でかつ帯電防止性を有するので、電子精密機器、電子部品等の緩衝材等に好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸成分の異性体比率(L体/D体)が、92/8〜8/92であるポリ乳酸系樹脂100重量部に対し、炭素数20以下の2級アルカンスルホン酸ナトリウム塩を1〜3重量部含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物からなるポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
請求項2記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を成形してなるポリ乳酸系樹脂発泡成形体。

【公開番号】特開2006−117859(P2006−117859A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309158(P2004−309158)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【出願人】(596154239)カネボウ合繊株式会社 (29)
【Fターム(参考)】