説明

帯電防止積層体、光学フィルム、偏光板、及び画像表示装置

【課題】優れた帯電防止性を有し、かつ生産性に優れた積層体を提供すること。また、前記積層体を表面フィルムとして用いた際、優れた防塵性、耐擦傷性、密着性、光学的面状を有する積層体を提供すること。
【解決手段】基材上に、少なくとも(A)導電性ポリマー及び(B)バインダー成分を含む組成物から形成された帯電防止層を有する積層体であって、
該帯電防止層内には、(A)導電性ポリマーの局所濃度が該帯電防止層における(A)導電性ポリマーの濃度の平均値の1.5倍以上である領域があり、該領域が互いに接触し、帯電防止層内で3次元的なつながり構造を形成しており、
該帯電防止層の表面抵抗率SR(Ω/sq)の常用対数値(LogSR)が3.0以上13.0以下である積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い表面硬度と帯電防止性能を備えた積層体、光学フィルム、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、SED(Surface−Conduction Electron−emitter Display)などの様々な画像表示装置において、その表面に用いられる光学フィルムには、帯電防止性、及び高い物理強度(耐擦傷性など)が要求されている。
【0003】
帯電防止性は、画像表示装置の最終形態での使用の観点と、画像表示装置の製造の観点の両面から重要性が高まっている。帯電防止性を付与することで防塵性を付与することができる。
防塵性付与の方法として採用されている方法の一つに、導電性を有する微粒子を光学フィルムに導入して表面抵抗を下げる所謂帯電防止層を形成する方法がある(特許文献1)。しかし、一般に導電性を有する微粒子は屈折率が1.6〜2.2程度と高く、帯電防止層は屈折率の高い層となる。それにより帯電防止層と該帯電防止層に隣接する層(光学薄膜)との間、又は帯電防止層と該帯電防止層に隣接する基材との間に屈折率差が生じると光学干渉を起こし、帯電防止層の膜厚の変動や微小な欠陥が、光学フィルムのムラとして観察されてしまうという課題があり、改良が求められていた。
【0004】
上記課題に対して、帯電防止層とそれに隣接する層との界面を混合することで干渉ムラを減少させる試みがなされている。例えば特許文献2には、帯電防止層と帯電防止の機能を有さない層とを未硬化の状態で塗り重ねてなる光学フィルムが開示されている。しかし、かかる光学フィルムでも、帯電防止層の粒子を拡散させて界面を混合させるため、粒子密度が減少して粒子同士の接触確率が減り、導電性が低下してしまい、十分な防塵性が得られないことがある。特にバインダー量を増して塗膜の強度を上げた場合や帯電防止層が薄い場合に導電性の目減りが大きい問題がある。
【0005】
また、特許文献3には、粒子径0.1μm以下の2次粒子を網目状に配列させることによって、帯電防止性、透明性、表面硬度を両立させる旨が記載されている。しかしながら、微粒子の凝集性制御方法は必ずしも十分とは言えず、凝集性が高い場合は面状ブツ故障や白濁の原因となり、逆に凝集性が低いと導電性が不十分であるというジレンマがあった。また、導電性微粒子は一般に屈折率が高く、膜の屈折率上昇により高反射率化や着色の原因となっていた。
【0006】
特許文献4、5には、耐アルカリ性を有するバインダーを含む低屈折率層に有機帯電防止剤を使用する技術が開示されており、低屈折率層中における有機帯電防止剤の使用量は0.3〜5質量%であり、少量の帯電防止成分導入で帯電防止性を得られるとの記載がある。更には、帯電防止剤の濃度は、低屈折率層内で厚み方向に変化していてもよく、帯電防止成分が低屈折率層の表面で高濃度となるようにし、導電性のパス形成させることも出来ると記載されている。しかしながら、少量の有機帯電防止成分を表面付近に局在化させた硬化膜では、帯電防止能が必ずしも十分ではなく、またその持続性が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−326602号公報
【特許文献2】特開2005−148444号公報
【特許文献3】特開2001−131485号公報
【特許文献4】特開2005−316425号公報
【特許文献5】特開2007−293325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
種々の既存の性能を劣化させることなく、優れた帯電防止性を付与する技術は、光学フィルムの分野に留まらず、様々な技術分野において共通する課題である。また、コストの点からも、少量の帯電防止剤の添加で優れた帯電防止性を発現させる技術の開発が強く望まれていた。
【0009】
本発明の目的は、優れた帯電防止性を有し、かつ生産性に優れた積層体を提供することにある。また、前記積層体をディスプレイの表面の光学フィルムとして用いた際、優れた防塵性、耐擦傷性、密着性、光学的面状を有する積層体を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、上記のような積層体を光学フィルムとして用いた偏光板、及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述の課題を解消すべく鋭意検討した結果、下記手段により前記課題が解決されることを見出した。
【0011】
1.
基材上に、少なくとも(A)導電性ポリマー及び(B)バインダー成分を含む組成物から形成された帯電防止層を有する積層体であって、
該帯電防止層内には、(A)導電性ポリマーの局所濃度が該帯電防止層における(A)導電性ポリマーの濃度の平均値の1.5倍以上である領域があり、該領域が互いに接触し、帯電防止層内で3次元的なつながり構造を形成しており、
該帯電防止層の表面抵抗率SR(Ω/sq)の常用対数値(LogSR)が3.0以上13.0以下である積層体。
2.
基材上に、少なくとも(A)導電性ポリマー及び(B)バインダー成分を含む組成物から形成された帯電防止層を有する積層体であって、
該帯電防止層は、海部に(A)導電性ポリマーを含む海島構造を有し、
該帯電防止層の表面抵抗率SR(Ω/sq)の常用対数値(LogSR)が3.0以上13.0以下である積層体。
3.
前記(B)バインダー成分を構成する少なくとも1種の成分の数平均分子量が1500以上50万未満のポリマー(B1)である上記1又は2に記載の積層体。
4.
前記(B)バインダー成分が、架橋性部位を有する繰り返し単位を含み、該架橋性部位が、水酸基、加水分解可能な基を有するシリル基、反応性不飽和2重結合を有する基、開環重合反応性基、活性水素原子を有する基、求核剤によって置換され得る基、及び酸無水物の少なくともいずれかである、上記1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
5.
前記(B)バインダー成分を構成する少なくとも1種の成分が分子量200以上1500未満の重合性化合物(B2)である上記1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
6.
前記(B)バインダー成分は、数平均分子量が1500以上50万未満である化合物(B1)の少なくとも1種及び、分子量200以上1500未満の重合性化合物(B2)の少なくとも1種とからなる上記1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
7.
前記(A)導電性ポリマーが、π共役系導電性ポリマー又はその誘導体である上記1〜6のいずれか1項に記載の積層体。
8.
前記π共役系導電性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体、及びポリアニリン誘導体から選ばれる少なくとも1種である上記6に記載の積層体。
9.
前記(A)導電性ポリマーが、カチオン系の導電性ポリマーである上記1〜6のいずれか1項に記載の積層体。
10.
前記組成物が更に(A)導電性ポリマーの良溶剤の少なくとも1種と(B)バインダーの良溶剤の少なくとも1種とを含有する上記1〜9のいずれか1項に記載の積層体。
11.
上記1〜10のいずれか1項に記載の積層体を含む光学フィルム。
12.
偏光膜と偏光膜の少なくとも1枚の保護フィルムとからなる偏光板であって、該保護フィルムが、上記1〜10のいずれか1項に記載の積層体である偏光板。
13.
上記1〜10のいずれかに記載の積層体、上記11に記載の光学フィルム、又は上記12に記載の偏光板を有する画像表示装置。
14.
上記1〜10のいずれか1項に記載の積層体の帯電防止層の上層に更に別の層を有する積層体であって、該積層体の最表面の表面抵抗率SR(Ω/sq)の常用対数値(LogSR)が3.0以上13.0以下である積層体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生産性に優れ、かつ防塵性、耐擦傷性、密着性、及び光学的面状に優れる帯電防止積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」等も同様である。
【0014】
本発明は、基材上に、少なくとも(A)導電性ポリマー及び(B)バインダー成分を含む組成物から形成された帯電防止層を有する積層体であって、
該帯電防止層内には、(A)導電性ポリマーの局所濃度が該帯電防止層における(A)導電性ポリマーの濃度の平均値の1.5倍以上である領域があり、該領域が互いに接触し、帯電防止層内で3次元的なつながり構造を形成しており、
該帯電防止層の表面抵抗率SR(Ω/sq)の常用対数値(LogSR)が3.0以上13.0以下である積層体に関する。
また、本発明は、基材上に、少なくとも(A)導電性ポリマー及び(B)バインダー成分を含む組成物から形成された帯電防止層を有する積層体であって、
該帯電防止層は、海部に(A)導電性ポリマーを含む海島構造を有し、
該帯電防止層の表面抵抗率SR(Ω/sq)の常用対数値(LogSR)が3.0以上13.0以下である積層体にも関する。
【0015】
[帯電防止層]
本発明における積層体は、少なくとも(A)導電性ポリマー及び(B)バインダー成分を含む組成物から形成された帯電防止層を有する。
帯電防止層の表面の表面抵抗率SR(Ω/sq)の常用対数値(LogSR)は3.0以上13.0以下である。LogSRは、好ましくは3以上13以下であり、より好ましくは4以上12以下であり、更に好ましくは5以上10以下である。LogSRを上記範囲とすることで、防塵性に優れた積層体が得られる。ここで表面抵抗率は、25℃、相対湿度60%で測定した値を表す。
【0016】
本発明において、高い膜強度と優れた帯電防止性を両立するためには、導電性ポリマーが3次元的なつながり構造を有している必要が有る。3次元的なつながり構造は、硬化性樹脂組成物と導電性ポリマーとの相分離によって形成する事ができ、相分離は硬化性樹脂組成物と溶媒とを含む液相から、湿式相分離法と呼ばれる溶媒の蒸発過程で発生させることができる。
相分離のモードはスピノーダル分解と核生成の2つがあり、スピノーダル分解による相分離の特徴は、系全体に均一な密度揺らぎが発生することにより、相対的に位置が揃った相分離構造を形成する点である。一方、核生成による相分離では、密度揺らぎが不均一に発生し、ランダムな相分離構造を形成する。形成される相分離構造が制御されているという点で、スピノーダル分解による相分離が好ましい。スピノーダル分解による相分離では、発生した密度ゆらぎは、相分離の進行に伴って共連続相構造を形成し、更に相分離が進行すると、連続相が自らの表面張力により非連続化し、球状、真球状、円盤状、楕円体状、長方体状などの独立相を有する海島構造(液滴相構造)となる。この様な海島構造において、導電性ポリマーを海部に島部よりも高濃度に含有する事によって、三次元的なつながり構造が生まれ、高い導電性が発現する。
一方、相分離の程度によっては、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(上記共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)である三次元つながり構造を形成する事もできる。つまり、本発明における三次元つながり構造とは、海島構造(液滴相構造、又は一方の相が独立又は孤立した相構造)、共連続相構造(又は網目構造)であってもよく、これらが混在した中間的な構造であっても良い。
中でも、海島構造を有していることが導電性発現の観点で最も好ましい。
【0017】
また、本発明の帯電防止層は、帯電防止層内で導電性ポリマーの局所濃度が該帯電防止層の全平均値の1.5倍以上である領域を有しており、該領域が互いに接触し、該帯電防止層内で3次元的なつながり構造を有している。前記3次元的なつながり構造は、上述した海島構造や共連続相構造であってもよく、これらが混在した中間的な構造であっても良いが、局所濃度が1.5倍以上になる事によって、より優れた導電性が発現する。導電性ポリマーの局所濃度は、以下に説明するTOF−SIMS法などにより、帯電防止層の断面を直径10〜50nm程度のアパーチャーで解析し、このアパーチャーサイズで帯電防止層の断面全領域を微細な領域に分割して測定することができる。帯電防止層の断面の全領域に渡り導電性ポリマーに由来するシグナル強度をマッピングすることにより、導電性ポリマーの局所的濃度の相対値を算出することが可能である。帯電防止層の断面の全領域の平均値の1.5倍以上の局所濃度で導電性ポリマーが存在する領域を着色し、この領域が帯電防止層の断面内で互いに接触しているかを判断することができる。
この際、帯電防止層の表面上に互いに直交する2つの直線を引き、それぞれの直線から積層体の法線方向に切断することで2つの断面を形成する。この2つの断面を観察することにより、導電性ポリマーの切断面上の2次元的なつながりだけでなく3次元的なつながりの有無を判断できる。また、帯電防止層の膜厚がアパーチャーの数倍程度しかなく薄い場合には、積層体を切断する角度を法線方向(90°)から浅くする(1〜90°未満)ことで切断面積を大きくすることができ、帯電防止層内でのマッピングの分解能を高めることができる。
【0018】
導電性ポリマー分子による3次元的なつながり構造は、例えば下記方法により測定することができる。
まず、積層体をミクロトームで1〜90°の角度で斜め切削後、得られた層の切削断面をTOF−SIMS法にて解析する。TOF−SIMS法でのイオンイメージによって層内の導電性ポリマーの局所濃度を評価し、また、3次元つながり構造の有無を確認することができる。
なお、TOF−SIMS法とは、飛行時間型二次イオン質量分析法[Time−of−Flight Secondary Ion Mass Spectrometry]の略称であり、Ga、Inなどの一次イオンの照射により試料中の分子から放出される分子イオンやフラグメントイオンなどの二次イオンを測定することで、固体試料表面に存在する有機化合物の構造を反映したイオンのイメージを測定することができる方法である。
TOF−SIMS法による二次イオンの検出は、正イオン、負イオンのいずれにおいても可能であるが、本実施形態においては正イオンを選択し、画像記録層の切削断面の同一領域において、質量が0〜1000amu[amu;atommass unit]の全二次イオン像をRaw Data形式で測定することができる。なお、測定中の試料表面の帯電(チャージアップ)を中和するため、電子銃(フラッドガン)を使用することができる。
【0019】
導電性ポリマーの局所濃度が全層平均の1.5倍以上の領域は、3次元的なつながり構造を有することが必須であるが、導電性ポリマーの局所濃度が全層平均の1.5倍未満の領域は連続相を形成しても不連続相を形成していても構わない。不連続相を形成する場合には、海島状の相分離構造において、導電性ポリマーを海部に、島部よりも高濃度に含有する事によって、導電性ポリマーの添加量が少量であっても良好な導電パスが形成され、優れた導電性が発現する。このように効果的に導電パスを形成することによって導電性成分の含有量を少なくすることが可能となり、高い膜強度と優れた帯電防止性を両立することが可能となる。なお、上記3次元的なつながり構造に加えて、帯電防止層の下部又は上部に導電性ポリマーの偏析部分があり、下面又は上面に2次元的なつながりを形成しても良い。
【0020】
本発明においては、導電性ポリマーの局所濃度が帯電防止層内で不均一な構造を有しているが、局所濃度が全層平均の1.5倍未満の領域の短領域のサイズは膜強度と、外観の関係から5〜2000nmの範囲であることが好ましい。なお、前記短領域のサイズは、斜め切削TOF−SIMS、SEM、TEM又はレーザー顕微鏡などを用いて、帯電防止層の微細構造を画像として記録し、それに任意に補助線を引いたときの領域ごとの線長さを測定したもののなかで、より短い方の領域(たとえば、分離構造が海島構造の場合は島構造、粒子状分散の場合は粒子が短領域になる)の長さの平均値をいう。
短領域のサイズが、5nm以上であれば、導電性と密着性の両立がしやすく、好ましい。一方、短領域のサイズが2000nm以下であれば、それぞれの領域での界面による散乱が無視できるレベルとなる。その結果、積層体が白く濁らないため好ましい。かかる観点から当該短領域のサイズは5〜2000nmが好ましく、より好ましくは10〜1000nm、更には30〜200nmであるのが好ましい。
また、積極的に帯電防止層に層内相分離構造形成により光散乱性を付与したい場合には、島構造の短領域サイズは0.2〜10μmが好ましく、更に好ましくは0.5〜8μmとすることもできる。
【0021】
〔導電性ポリマーの3次元つながり構造〕
帯電防止層中における導電性ポリマーの3次元的なつながり構造(導電ネットワーク構造)の形成を進め、導電性を高めるには、導電性ポリマーとバインダー成分との相溶性を適度に制御することが重要である。導電性ポリマーとバインダー成分の相溶性が高いと、導電性ポリマーが平均的に分布してしまい、導電性ポリマー間の接触頻度が減少し導電性が目減りしてしまう。一方、相溶性が低すぎると、塗布膜の白濁、塗布液の溶解不良、塗布ハジキ故障等の問題が発生するためである。本発明では、導電性ポリマーとバインダー成分との相溶性を制御し、3次元的なつながり構造を形成させることにより、上記問題を解決することができる。
【0022】
導電性ポリマーの導電ネットワーク構造を形成するためには、導電性ポリマー、バインダー、溶剤を適切に選択することが重要である。
【0023】
本発明の積層体に用いる(A)導電性ポリマー及び(B)バインダー、更に溶剤、及びこれらの他に帯電防止層に使用することのできる構成成分について述べる。
【0024】
〔(A)導電性ポリマー〕
(A)導電性ポリマーは、高分子であるため膜表面へのブリードアウト等による膜の面状故障も少ない。
(A)導電性ポリマーとしてはイオン系導電性高分子やπ共役系導電性高分子が挙げられる。
【0025】
(イオン系導電性高分子)
イオン系導電性高分子としては主鎖中に解離基を持つアイオネン型ポリマー、カチオン性高分子化合物等が挙げられる。
イオン系導電性高分子としては、特公昭49−23828号公報、特公昭49−23827号公報、特公昭47−28937号公報;特公昭55−734号公報、特開昭50−54672号公報、特開昭59−14735号公報、特開昭57−18175号公報、特開昭57−18176号公報、特開昭57−56059号公報などにみられるような、主鎖中に解離基を持つアイオネン型ポリマー;特公昭53−13223号公報、特公昭57−15376号公報、特公昭53−45231号公報、特公昭55−145783号公報)、特公昭55−65950号公報、特公昭55−67746号公報、特公昭57−11342号公報、特公昭57−19735号公報、特公昭58−56858号公報、特開昭61−27853号公報、特開昭62−9346号公報、特開平10−279833号公報、特開2000−80169号公報にみられるようなカチオン性高分子化合物を挙げることができる。
中でも、特に好ましいイオン系導電性高分子は、4級アンモニウムカチオンを含有する高分子型4級アンモニウム塩である。有機導電性高分子化合物として、高分子型4級アンモニウム塩を用いることにより、塗膜面状、密着性に優れた積層体が得られる。
【0026】
帯電防止層を形成するための組成物中におけるイオン系導電性高分子化合物の含有量は、全固形分に対して6〜70質量%が好ましく、更に好ましくは6〜50%、最も好ましくは10〜40質量%である。イオン系導電性高分子化合物の含有率が6質量%以上であると、充分な導電性が得られ、70質量%以下であると、密着性や塗布面状の悪化が起こりにくい。
【0027】
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に制限されない。π共役系導電性高分子は、化合物安定性、高導電性という理由から、π共役系複素環式化合物又はπ共役系複素環式化合物の誘導体であることが好ましい。
π共役系導電性高分子としては、脂肪族共役系のポリアセチレン、ポリアセン、ポリアズレン、芳香族共役系のポリフェニレン、複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系、これらの導電性ポリマーの誘導体、及び、これらの共役高分子鎖を飽和高分子にグラフト又はブロック共重した高分子である導電性複合体からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
空気中での安定性の点からは、ポリピロール、ポリチオフェン及びポリアニリン又はこれらの誘導体が好ましく、ポリチオフェン、ポリアニリン、又はこれらの誘導体(すなわち、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体、及びポリアニリン誘導体)がより好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも充分な導電性やバインダ樹脂への相溶性を得ることができるが、導電性及び相溶性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0028】
π共役系導電性高分子の具体例としては、
ホリピロール類:ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、
【0029】
ポリチオフェン類:
ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、
【0030】
ポリアニリン類:
ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0031】
(アニオン基を有する高分子ドーパント)
π共役系導電性高分子は、アニオン基を有する高分子ドーパント(「ポリアニオンドーパント」ともいう)と共に用いることが好ましい。π共役系導電性高分子にアニオン基を有する高分子ドーパントを組み合わせて用いることにより、高い導電性、導電性の経時安定性改良、積層体状態での耐水性が向上する。
ポリアニオンドーパントとしては、としては、例えば、置換又は未置換のポリアルキレン、置換又は未置換のポリアルケニレン、置換又は未置換のポリイミド、置換又は未置換のポリアミド、及び置換又は未置換のポリエステルのうち少なくともいずれかの構造を有し、かつアニオン基を有する構造単位を含むポリマーが挙げられる。
【0032】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。ポリアルキレンの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等を例示できる。
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和二重結合(ビニル基)を含む構造単位からなるポリマーである。
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の酸無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドを例示できる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等を例示できる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を例示できる。
【0033】
上記ポリアニオンドーパントが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基等が挙げられる。有機溶媒への溶解性、耐熱性及びバインダー樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシ基、フェノール基、エステル基が好ましい。
【0034】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、へキシル、オクチル、デシル、ドデシル等の鎖状(直鎖又は分岐)アルキル基と、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のシクロアルキル基などが挙げられる。
ヒドロキシ基としては、ポリアニオンドーパントの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。ヒドロキシ基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
アミノ基としては、ポリアニオンドーパントの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。アミノ基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
フェノール基としては、ポリアニオンドーパントの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。フェノール基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
【0035】
ポリアニオンドーパントのアニオン基としては、−O−SO、−SO、−COO(各式においてXは水素イオン、アルカリ金属イオンを表す。)が挙げられる。
これらの中でも、π共役系導電性高分子へのドーピング能力の点から、−SO、−COOが好ましい。
【0036】
上記ポリアニオンドーパントの中でも、溶媒溶解性及び導電性の点から、ポリイソプレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸を含む共重合体、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレートを含む共重合体、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)を含む共重合体、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸を含む共重合体、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸を含む共重合体等が好ましい。
【0037】
ポリアニオンドーパントの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0038】
ポリアニオンドーパントの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ここでモル数は、ポリアニオンドーパントを形成するアニオン基を含むモノマー由来の構造単位数、及びπ共役系導電性高分子を形成するピロール、チオフェン、アニリン等のモノマー由来の構造単位数で定義される。ポリアニオンドーパントの含有量が、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1モル以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が大きくなり、導電性が充分に発現する。その上、溶媒への分散性及び溶解性が高くなり、均一な分散液を得ることが容易である。また、ポリアニオンドーパントの含有量が、π共役系導電性高分子1モルに対して10モル以下であると、π共役系導電性高分子を多く含有させることができ、充分な導電性が得られやすい。
【0039】
帯電防止層を形成するための組成物中におけるπ共役系導電性高分子とポリアニオンドーパントの合計の含有量は、全固形分に対して6〜70質量%が好ましく、更に好ましくは6〜50%、最も好ましくは10〜40質量%である。π共役系導電性高分子とポリアニオンドーパントの合計の含有率が6質量%以上であると、充分な導電性が得られ、70質量%以下であると、密着性や塗布面状の悪化が起こりにくい。
【0040】
(有機溶剤への可溶性)
導電性ポリマーは、塗布性を付与するため有機溶剤に可溶であることが好ましい。
より具体的には、導電性ポリマーは、含水率が5質量%以下で誘電率が2〜30の有機溶剤中に少なくとも1.0質量%で可溶であることが好ましい。
ここで、「可溶」とは溶剤中に単一分子状態又は複数の単一分子が会合した状態で溶解しているか、粒子径が300nm以下の粒子状に分散されている状態を指す。
【0041】
一般に、導電性ポリマーは親水性が高く従来では水を主成分とする溶媒に溶解するが、このような導電性ポリマーを有機溶剤に可溶化するには、導電性ポリマーを含む組成物中に、有機溶剤との親和性を上げる化合物や、有機溶剤中での分散剤等を添加する方法が挙げられる。また、導電性ポリマーとポリアニオンドーパントを用いる場合は、後述するようにポリアニオンドーパントの疎水化処理を行うことが好ましい。
更に、導電性ポリマーを脱ドープ状態にすることで有機溶剤への溶解性を向上させおき、塗布膜形成後にドーパントを加えて導電性を発現させる方法も用いることができる。
【0042】
上記以外にも、有機溶剤への溶解性を向上させる方法としては下記文献に示す方法を用いることも好ましい。
例えば、特開2002−179911号公報では、ポリアニリン組成物を脱ドープ状態で有機溶媒に溶解させておき、該素材を基材上に塗布し、乾燥させた後、プロトン酸と酸化剤とを溶解又は分散させた溶液にて酸化及びドーピング処理する事によって導電性を発現させる方法が記載されている。
また、国際公開第05/035626号公報には、水層及び有機層からなる混合層においてスルホン酸及びプロトン酸基を有する水不溶性有機高分子化合物の少なくとも一種の存在下にアニリン又はその誘導体を酸化重合するに際し、分子量調整剤及び、必要に応じ、相間移動触媒を共存させることにより有機溶媒に安定に分散する導電性ポリアニリンを製造する方法が記載されている。
【0043】
前記有機溶剤としては、例えば、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。以下、具体的化合物を例示する(括弧内に誘電率を記す。)。
アルコール類としては、例えば1価アルコール又は2価アルコールを挙げることができる。このうち1価アルコールとしては炭素数2〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。これらのアルコール類の具体例としては、エチルアルコール(25.7)、n−プロピルアルコール(21.8)、i−プロピルアルコール(18.6)、n−ブチルアルコール(17.1)、sec −ブチルアルコール(15.5)、tert−ブチルアルコール(11.4)などを挙げることができる。
【0044】
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン(2.3)、トルエン(2.2)、キシレン(2.2)などを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン(7.5)、エチレングリコールモノメチルエーテル(16)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(8)、エチレングリコールモノエチルエーテル(14)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(8)、エチレングリコールモノブチルエーテル(9)などを、ケトン類の具体例としては、アセトン(21.5)、ジエチルケトン(17.0)、メチルエチルケトン(15.5)、ジアセトンアルコール(18.2)、メチルイソブチルケトン(13.1)、シクロヘキサノン(18.3)などを、エステル類の具体例としては、酢酸メチル(7.0)、酢酸エチル(6.0)、酢酸プロピル(5.7)、酢酸ブチル(5.0)などを挙げることができる。
本発明において、誘電率は20℃で測定した値をいう。
【0045】
本発明においては、誘電率が2〜30の有機溶剤を2種以上混合して用いることが好ましい。これは、(A)導電性ポリマーの良溶媒と、(B)バインダー成分の良溶媒を混合しておく事によって、溶媒が蒸発する過程で両者の3次元つながり構造が形成されやすくなるためであると推定される。誘電率が30を超える有機溶剤、又は5質量%以下の水を併用することもできるが、上記に挙げた有機溶剤も含む混合有機溶剤系のなかで、複数の有機溶剤や水の質量平均の誘電率が30を超えないことが好ましい。
【0046】
本発明において、導電性ポリマーは、有機溶剤中に少なくとも1.0質量%で可溶なものである。
前記有機溶剤中、導電性ポリマーは粒子状に存在していてもよい。この場合、平均粒子サイズは300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが更に好ましい。上記粒子サイズとすることで、有機溶剤中での沈降を抑制することができる。粒子サイズの下限は特に限定されない。
粗大粒子の除去や溶解促進のため、高圧分散機を用いることもできる。高圧分散機としては、例えば、ゴーリン(APVゴーリン社製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、マイクロフルイタイザー(マイクロフライデックス社製)、アルチマイザー(スギノマシン社製)、DeBee(Bee社製)等が挙げられる。粒子サイズは、有機溶剤液を電子顕微鏡観察用のグリッドにすくい取り、溶剤揮発後に観察することができる。上記粒子サイズでは有機溶剤中での沈降が抑制されており、本発明の積層体を作成するための塗布組成物に導入可能である。
【0047】
上記のように導電性ポリマーと共にポリアニオンドーパントを用いる場合は、導電性ポリマーとポリアニオンドーパントとを含む組成物に対して疎水化処理を行うことが好ましい。前記組成物に対して疎水化処理を行うことで、導電性ポリマーの有機溶剤への溶解性を向上させ、(B)バインダー成分との相溶性を適度に向上させることができる。疎水化処理は、ポリアニオンドーパントのアニオン基を修飾することにより行うことができる。
具体的には、疎水化処理の第1の方法としては、アニオン基をエステル化、エーテル化、アセチル化、トシル化、トリチル化、アルキルシリル化、アルキルカルボニル化する等の方法が挙げられる。中でもエステル化、エーテル化が好ましい。エステル化により疎水化する方法は、例えば、ポリアニオンドーパントのアニオン基を塩素化剤により塩素化し、その後メタノールやエタノール等のアルコールによりエステル化する方法が挙げられる。また、ヒドロキシル基又はグリシジル基を有する化合物で更に不飽和2重結合性基を有する化合物を用いて、スルホ基やカルボキシ基とエステル化して疎水化することもできる。
本発明においては従来公知の種々の方法を用いることができるが、その一例として、特開2005−314671号公報、及び特開2006−28439号公報等に具体的に記載されている。
【0048】
疎水化処理の第2の方法としては、塩基系の化合物をポリアニオンドーパントのアニオン基に結合させて疎水化する方法が挙げられる。塩基系の化合物としてはアミン系の化合物が好ましく、1級アミン、2級アミン、3級アミン、芳香族アミン等が挙げられる。具体的には、炭素数が1〜20のアルキル基で置換された1級〜3級のアミン、炭素数が1〜20のアルキル基で置換されたイミダゾール、ピリジンなどが挙げられる。有機溶剤への溶解性向上のためにアミンの分子量は50〜2000が好ましく、更に好ましくは70〜1000、最も好ましくは80〜500である。
【0049】
塩基系疎水化剤であるアミン化合物の量は、導電性ポリマーのドープに寄与していないポリアニオンドーパントのアニオン基に対して0.1〜10.0モル当量であることが好ましく、0.5〜2.0モル当量であることがより好ましく、0.85〜1.25モル当量であることが特に好ましい。上記範囲で、有機溶剤への溶解性、導電性、塗膜の強度を満足することができる。
その他疎水化処理の詳細については、特開2008−115215号公報、及び特開2008−115216号公報等に記載の事項を適用することができる。
【0050】
(可溶化補助剤)
導電性ポリマーは、分子内に親水性部位と疎水性部位と好ましくは電離放射線硬化性官能基を有する部位を含む化合物(以下、可溶化補助剤という。)と共に用いることができる。
可溶化補助剤を用いることで、導電性ポリマーの含水率の低い有機溶剤への可溶化を助け、更には本発明の帯電防止層の塗布面状改良、3次元つながり構造の形成、硬化皮膜の強度を上げることができる。
可溶化補助剤は、親水部位、疎水部位、電離放射線硬化性官能基含有部位を有する共重合体であることが好ましく、これら部位がセグメントに分かれているブロック型又はグラフト型の共重合体であることが特に好ましい。このような共重合体は、リビングアニオン重合、リビングラジカル重合、又は上記部位を有したマクロモノマーを用いて重合することができる。
可溶化補助剤については、例えば特開2006−176681号公報の[0022]〜[0038]等に記載されている。
【0051】
(低分子ドーパント)
本発明においては、ポリアニオンドーパントに加えて低分子のドーパントを併用することも好ましい。低分子のドーパントとしては、一分子内にアニオン基が2個以下の分子量1000以下の化合物が好ましい。なかでも、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、1,1−オキシビステトラプロピレン誘導体ベンゼンスルホン酸ナトリウム及びビニルアリルスルホン酸からなる群から選択される1種以上の化合物を含有することが好ましい。これら低分子ドーパントは、π共役系導電性高分子1モルに対して0.01〜5モル%が好ましく、0.1〜3モル%が更に好ましい。
【0052】
(導電性ポリマーを含む溶液の調製方法)
導電性ポリマーは、前記有機溶剤を用いて溶液の形態で調製することができる。
導電性ポリマーの溶液を調製する方法はいくつかの方法があるが、好ましくは以下の3つの方法が挙げられる。
第一の方法は、ポリアニオンドーパントの共存下で導電性ポリマーを水中で重合し、その後必要に応じて前記可溶化補助剤又は塩基系疎水化剤を加えて処理し、その後水を有機溶媒に置換する方法である。第二の方法は、ポリアニオンドーパントの共存下で導電性ポリマーを水中で重合し、その後必要に応じて前記可溶化補助剤又は塩基系疎水化剤で処理し、水を蒸発乾固させた後に、有機溶剤を加え可溶化する方法である。第三の方法は、導電性ポリマーとポリアニオンドーパントをそれぞれ別途調製した後に、両者を溶媒中で混合分散し、ドープ状態の導電性高分子組成物を調製し、溶剤に水を含む場合には水を有機溶媒に置換する方法である。
【0053】
上記の方法において、可溶化補助剤の使用量は導電性ポリマーとポリアニオンドーパントの合計量に対して、1〜100質量%が好ましく、更に好ましくは2〜70質量%、最も好ましくは5〜50質量%である。また、第一の方法において水を有機溶剤に置換する方法は、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトンのような水混和性の高い溶剤を加えて用いて均一溶液とした後、限外ろ過を行い水を除去する方法が好ましい。また、水混和性の高い溶剤を用いて含水率をある程度低下させた後、より疎水的な溶剤を混合し減圧下で揮発性の高い成分を除去し溶剤組成を調整する方法が挙げられる。また、塩基系疎水化剤を用いて十分な疎水化を行えば、水との混和性の低い有機溶剤を加えて、分離した2相系とし水相中の導電性ポリマーを有機溶剤相に抽出することも可能である。
【0054】
〔(B)バインダー成分〕
本発明の積層体における帯電防止層は、前記(A)導電性ポリマーと、少なくとも1種の(B)バインダー成分とを含む組成物から形成される。
(B)バインダー成分としては、第1の好ましい態様は少なくとも、数平均分子量が1500以上50万未満である化合物(ポリマー成分(B1))を有することである。これは、導電性ポリマーと親和性が低い高分子量のバインダー成分(B1)を用いることで、海島構造などの状態を形成しやすくし、導電性ポリマーの3次元つながり構造を形成させやすくするためである。(A)導電性ポリマーと(B1)バインダー成分は、塗布組成物中では相分離していないが、塗布液を支持体に適用後、溶媒が蒸発する過程で導電性ポリマーとバインダーが相分離することが好ましい。
(B1)バインダー成分の数平均分子量を1500以上にすることは、導電性ポリマーと相分離構造を形成するために好ましい。また、数平均分子量を50万未満にすることは、溶剤への溶解性を確保するために好ましい。(B1)バインダー成分の数平均分子量は3000以上30万未満であることが更に好ましい。
バインダー成分のうち数平均分子量が1500以上50万未満である化合物は帯電防止層の海島構造における島部を形成することが好ましい。これにより、海部に導電性ポリマーが高濃度に存在するため導電性が確保でき、島部のバインダーにより硬度を高く保つことができる。
ここで、数平均分子量(Mn)は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折率計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。
【0055】
(B1)バインダー成分の好ましい添加量は、帯電防止層を形成するための組成物における固形分中の1〜60質量%であり、より好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは20〜35質量%である。添加量を1〜60質量%にすることで導電性ポリマーと適度に相分離を起こし、3次元つながり構造が形成される。
【0056】
(B1)バインダー成分としては、例えば特開2002−322430号公報、特開2009−128488号公報、特開2007−046031号公報に記載されている熱可塑性樹脂を用いることができる。具体的には、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などから選択できる。
【0057】
(B1)バインダー成分として好ましくは、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、及びゴム又はエラストマーなどが含まれる。複数のポリマーとしては、通常、非結晶性であり、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーを溶解可能な共通溶媒)に可溶な樹脂が使用される。特に、成形性又は成膜性、透明性や耐候性の高い樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類など)などが好ましい。
【0058】
これらの複数のポリマーは適当に組み合わせて使用できる。例えば、複数のポリマーの組合せにおいて、少なくとも1つのポリマーを、セルロース誘導体、特にセルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−4アルキルカルボン酸エステル類)とし、他のポリマーと組み合わせてもよい。
【0059】
(B)バインダー成分は、架橋性部位を有する繰り返し単位を含むことが、膜の強度を保つためにも好ましい。該架橋性部位としては、水酸基、加水分解可能な基を有するシリル基、反応性不飽和2重結合を有する基、開環重合反応性基、活性水素原子を有する基、求核剤によって置換され得る基、及び酸無水物の少なくともいずれかであることが好ましい。また、架橋性部位は主鎖に有していても側鎖に有していてもよいが、通常、側鎖に導入される。熱可塑性樹脂に対する硬化反応に関与する架橋性基の導入量は、熱可塑性樹脂1kgに対して、0.01〜15モル、好ましくは0.1〜10モル、更に好ましくは0.5〜7モル程度であってもよい。
【0060】
重合性基を側鎖に有する熱可塑性樹脂は、特開2002−322430号公報、特開2009−128488に記載の様に、例えば、反応性基を有する熱可塑性樹脂(i)と、この熱可塑性樹脂の反応性基に対する反応性基と、架橋性基とを有する化合物(ii)とを反応させ、化合物(ii)が有する架橋性基を熱可塑性樹脂に導入することにより製造できる。
【0061】
また、導電性ポリマーとの親和性を低下させ相分離を誘発するためには、バインダー成分(B1)が含フッ素化合物であることも好ましい。化合物の詳細については、後述する。
【0062】
(B)バインダー成分としての、第2の好ましい態様は少なくとも、分子量200以上1500未満の重合性化合物(B2)を含有することである。
【0063】
低分子量の重合性化合物(B2)の重合性官能基としては、水酸基、加水分解可能な基を有するシリル基、反応性不飽和2重結合を有する基、開環重合反応性基、活性水素原子を有する基、酸無水物、及び求核剤によって置換され得る基などが挙げられる。なかでも、反応性不飽和2重結合を有する基又は開環重合反応性基の少なくともいずれかである事が好ましい。
反応性不飽和2重結合を有する基を有する化合物としては、ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;
等を挙げることができる。
【0064】
更にはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
【0065】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。更に好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類の具体化合物としては、特開2009−098658号公報[0119]〜[0121]に記載の化合物が挙げられる。
【0066】
本発明のバインダー成分(B2)の好ましい態様においては、導電性ポリマーとの親和性を低下させ、本発明の3次元の網目状の濃度分布を形成させるには、上記に例示した化合物のなかでも、分子内に水酸基、アミド基、エチレンオキシド基、プロピレンオキシ基を含有しないことが好ましい。このような化合物を用いることにより膜強度を高めることができる。(B2)成分の分子量を200以上にすることによって、塗布膜作成中の(B2)成分の揮発を抑制できる。また、分子量を1500未満にすることによって、導電性ポリマーとの相溶性が上がり、塗布液安定性や塗膜面状の良化に繋がる。
(B2)バインダー成分の好ましい添加量は、帯電防止層を形成するための組成物における固形分中の1〜90質量%であり、より好ましくは10〜85質量%、更に好ましくは20〜85質量%である。
【0067】
また、導電性ポリマーとの親和性を低下させるためには、バインダー成分(B2)が含フッ素化合物であることも好ましい。化合物の詳細については、後述する。
【0068】
本発明において、(B)バインダー成分として特に好ましい態様は、上記数平均分子量1500以上50万未満のバインダー(高分子量バインダー(B1))に加えて、更に、分子量200以上1000未満の重合性化合物(B2)を含有する態様である。(B1)バインダーと(B2)バインダーを併用する場合には、(B2)バインダーは導電性ポリマーとの親和性が高い方が好ましく、上述の(B2)で例示した化合物のなかでも、分子内に水酸基、アミド基、エチレンオキシド基、プロピレンオキシ基を含有することが好ましい。上記低分子量の重合性化合物(B2)を入れることにより膜強度を高めることができる。また、低分子量成分(B2)は導電性ポリマーと高分子量バインダー(B1)との親和性を適度に上げ、塗布液の安定性、塗膜面状の安定性、帯電防止層内での各成分間の密着性が改良される。
また、(A)導電性ポリマーと(B)バインダー成分の好ましい質量比は、6:94〜70:30が好ましく、更に好ましくは6:94〜50:50、最も好ましくは10:90〜40:60であり、(B)成分として、(B1)バインダーと(B2)バインダーを併用する際には、(B1)と(B2)の質量比としては、5:95〜95:5が好ましく、更に好ましくは15:85〜85:15、最も好ましくは20:80〜50:50である。
【0069】
導電性ポリマーとバインダー成分を相分離させる目的で、バインダー成分(B)を構成する少なくとも1種の成分が含フッ素硬化性化合物である事も好ましい。含フッ素化合物の好ましい含有量は、バインダー成分(B)の合計に対して5〜50質量%が好ましく、5〜30質量%が更に好ましい。
含フッ素硬化性化合物は、ポリマー、モノマーどちらであっても良いが、含フッ素ポリマーの場合には、含フッ素部位と架橋反応に関与しうる官能基を有する部位とを有する分子量1500以上のポリマーであることが好ましい。一方、含フッ素モノマーの場合には、分子量が200〜1500未満の多官能フッ素モノマーであることが好ましく、重合性基が、アクリロイル基、メタアクリロイル基及び、−C(O)OCH=CH2から選ばれるいずれかの基を有することが好ましい。
また、含フッ素ポリマー、含フッ素モノマーを混合して用いることもできる。以下、それぞれについて詳述する。
【0070】
〔含フッ素ポリマー〕
含フッ素ポリマーは、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
一般式(1):
(MF1)−(MF2)−(MF3)−(MA)−(MB)
一般式1中、a〜eは、それぞれ各構成成分のモル分率を表し、30≦a+b≦70、0≦c≦50、5≦d≦50、0≦e≦20の関係を満たす値を表す。
【0071】
(MF1):CF=CF−Rfで表される単量体から重合される構成成分を示す。Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。
(MF2):CF=CF−ORf12で表される単量体から重合される構成成分を示す。Rf12は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MF3):CH=CH−ORf13で表される単量体から重合される構成成分を示す。Rf13は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MA):架橋性基を少なくとも1つ以上有する構成成分を表す。
(MB):任意の構成成分を表す。
【0072】
(MF1)〜(MF3)における各単量体(下記一般式(1−1)〜(1−3)で表される化合物)について説明する。
・CF=CF−Rf:一般式(1−1)
式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。
一般式(1−1)の化合物としては重合反応性の観点からは、パーフルオロプロピレン又はパーフルオロブチレンが好ましく、入手性の観点からパーフルオロプロピレンであることが特に好ましい。
【0073】
・CF=CF−ORf12:一般式(1−2)
式中、Rf12は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。前記フッ化アルキル基は置換基を有していてもよい。Rf12は、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の含フッ化アルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基である。Rf12の具体例としては、下記のもの等が挙げられるが、これらに限定されない。
−CF、−CFCF、−CFCFCF、−CFCF(OCFCFCF)CF
【0074】
・CH=CH−ORf13:一般式(1−3)
式中、Rf13は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。前記フッ化アルキル基は置換基を有していてもよい。Rf13は、直鎖状であっても、分岐構造を有するものであってもよい。また、Rf13は脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環)を有していてもよい。更に、Rf13は炭素−炭素間にエーテル結合を有するものであってもよい。Rf13は、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜15の含フッ素アルキル基である。
Rf13としては、具体的には下記のもの等が挙げられるが、これらに限定されない。
(直鎖状)
−CFCF、−CH(CF)aH、−CHCH(CF)aF(a:2〜12の整数)
(分岐構造)
−CH(CF、−CHCF(CF、−CH(CH)CFCF、−CH(CH)(CFCF
(脂環式構造)
ペルフルオロシクロへキシル基、ペルフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等
(その他)
−CHOCHCFCF、−CHCHOCH(CFH、−CHCHOCH(CFF(b:2〜12の整数)、−CHCHOCFCFOCFCF
その他、一般式(1−3)で表わされる上記単量体は、例えば特開2007−298974号公報の段落[0025]〜[0033]に記載のものも使用することができる。
【0075】
一般式(1)の(MA)は、架橋性基(架橋反応に関与しうる反応性基)を少なくとも1つ以上含有する構成成分を表す。
架橋性基としては、例えば、水酸基又は加水分解可能な基を有するシリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、反応性不飽和2重結合を有する基((メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルオキシ基等)、開環重合反応性基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基等)、活性水素原子を有する基(たとえば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β―ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、酸無水物、求核剤によって置換され得る基(活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)等が挙げられる。
【0076】
一般式(1)における(MB)は任意の構成成分を表す。(MB)は、(MF1),(MF2)で表わされる単量体及び(MA)で表わされる構成成分を形成する単量体と共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性等種々の観点から適宜選択することができる。
【0077】
(MB)を形成するための単量体としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
【0078】
〔含フッ素モノマー〕
含フッ素モノマーは、主に複数のフッ素原子と炭素原子からなる(但し、一部に酸素原子/又は水素原子を含んでも良い)、実質的に重合に関与しない原子団(以下、「含フッ素コア部」とも言う)と、エステル結合やエーテル結合などの連結基を介してラジカル重合、イオン重合、又は縮合重合性などの重合性を有する化合物であって、2つ以上の重合性基を有していることが好ましい。
【0079】
含フッ素モノマーは、下記一般式(I)で表される化合物(重合性含フッ素化合物)が好ましい。
一般式(I) : Rf{−(L)−Y}
(式中Rfは少なくとも炭素原子及びフッ素原子を含み、酸素原子及び水素原子を含んでも良い、鎖状又は環状のn価の基を表し、nは2以上の整数を表す。Lは単結合又は二価の連結基を表し、mは0又は1を表す。Yは重合性基を表す。)
【0080】
上記一般式(I)において、Yは重合性基を表す。Yは、ラジカル重合性、イオン重合性、又は縮合重合性の基であることが好ましく、重合性不飽和基又は開環重合性基であることがより好ましく、重合性不飽和基が更に好ましい。具体的には、(メタ)アクリロイル基、アリル基、アルコキシシリル基、α−フルオロアクリロイル基、エポキシ基、及び−C(O)OCH=CHから選ばれるものが更に好ましい。これらの中でも、重合性の観点から、ラジカル重合性又はカチオン重合性を有する(メタ)アクリロイル基、アリル基、α−フルオロアクリロイル基、エポキシ基、又は−C(O)OCH=CHが好ましく、特に好ましいのはラジカル重合性を有する(メタ)アクリロイル基、アリル基、α−フルオロアクリロイル基、又は−C(O)OCH=CHであり、最も好ましいのは(メタ)アクリロイル基、又は−C(O)OCH=CHである。
【0081】
なお、重合性含フッ素化合物は重合性基を架橋性基とする架橋剤であってもよい。
架橋性基としては例えば、水酸基又は加水分解可能な基を有するシリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、反応性不飽和二重結合を有する基((メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルオキシ基等)、開環重合反応性基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基等)、活性水素原子を有する基(たとえば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β―ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、酸無水物、求核剤によって置換され得る基(活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)等が挙げられる。
【0082】
Lは単結合又は二価の連結基を表し、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、−O−、−S−、−N(R)−、及びこれらを2種以上組み合わせて得られる二価の連結基が好ましい。ただし、前記Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。
Lがアルキレン基又はアリーレン基を表す場合、Lで表されるアルキレン基及びアリーレン基はハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
【0083】
〔溶剤〕
帯電防止層を形成するための組成物は溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、各成分を溶解又は分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶剤が使用できる。帯電防止層を形成するための塗布組成物中の固形分濃度は0.5〜80質量%が好ましく、更に好ましくは1〜50質量%、最も好ましくは1〜40質量%である。
【0084】
また、本発明においては、(A)導電性ポリマーと(B)バインダー成分、更に必要に応じてその他の成分とを均一に溶解又は分散し、塗布組成物とし、塗膜の乾燥過程で溶剤が蒸発することで各成分が均一に溶解又は分散できなくなり好ましくは海島構造が形成され、導電性ポリマーによる3次元網目構造(導電ネットワーク構造)が形成される。
【0085】
塗膜の面状の安定性、面状悪化やヘイズの上昇を避ける点から、溶媒は2種類以上のものを混合して用いることができる。
2種以上の溶剤を混合する場合、少なくとも1種の溶剤は、(A)導電性ポリマーの良溶剤であり、少なくとも1種の溶剤は(B)バインダー成分の良溶剤であることが好ましい。
両者の混合比(質量比)は1:9〜9:1が好ましく、2:8〜8:2が更に好ましい。
溶剤の沸点に制限はないが、室温でのハンドリング性及び乾燥負荷低減の観点からは、沸点が50℃以上200℃以下である溶剤が好ましい。
塗膜の面状の安定性の点からは、(A)導電性ポリマーの良溶剤の沸点が(B)バインダー成分の良溶剤の沸点よりも高いことが好ましい。
【0086】
以下好ましい溶剤の例を挙げるがこれらに限定されるのもではない。()内は沸点を表す。
(A)導電性ポリマーの良溶剤としては、テトラヒドロフラン(66℃)、アセトン(56℃)、エタノール(78℃)、イソプロピルアルコール(82℃)、アセト二トリル(82℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(120℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(132℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(171℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(146℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGM−Ac)(145℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(135℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(156℃)、エチレングリコールジエチルエーテル(121℃)などが挙げられる。
(B)バインダー成分の良溶剤としては、メチルエチルケトン(80℃)、シクロヘキサノン(156℃)、メチルイソブチルケトン(116℃)、トルエン(111℃)、キシレン(138℃)酢酸エチル(77℃)、酢酸イソプロピル(89℃)、などが挙げられる。
【0087】
その他にも、本発明において用いることのできる溶剤は、特開2008−151866号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0088】
2種類以上の有機溶剤を使用するもう1つの好ましい例としては、沸点の差が特定の値より大きい2種類の溶剤を使うことが挙げられる。2種の溶媒の沸点の差が25℃以上であることが好ましく、35℃以上が特に好ましく、50℃以上が更に好ましい。ここで、(A)導電性ポリマーの良溶剤の沸点が(B)バインダー成分の良溶剤の沸点よりも高い事が好ましい。沸点の差が大きいことで、導電性ポリマーのネットワーク構造が形成しやすくなる。
【0089】
〔その他の成分〕
本発明の帯電防止層には、必要に応じて電離放射線重合開始剤、熱ラジカル開始剤、レベリング剤、無機微粒子、顔料、増粘剤、光散乱剤、紫外線吸収剤、防汚剤などを添加することができ、例えば特開2007−298974号公報に記載の技術を使用することができる。
また、本発明の帯電防止層には架橋微粒子を添加することができる。架橋微粒子を添加することで帯電防止層の硬化収縮量を低減できるため基材との密着性が向上したり、基材がプラスチックフィルムである場合などカールを低減でき好ましい。また、防眩性を発現させる目的で添加する事もできる。架橋微粒子としては、無機架橋微粒子、有機架橋微粒子、有機−無機複合架橋微粒子のいずれも特に制限なく使用できる。特開2003−147017号公報[0074]〜[0079]に記載の粒子を用いることができる。
【0090】
[層の形成方法]
層の形成方法については、層に使用する各成分の硬化性官能基に適した硬化条件を選択することができる。
【0091】
(A)加熱により反応する化合物を使用する系
硬化温度は、好ましくは60〜200℃、更に好ましくは80〜130℃、最も好ましくは80〜110℃である。支持体が高温で劣化しやすい場合には低温が好ましい。熱硬化に要する時間は、30秒〜60分が好ましく、更に好ましくは1分〜20分である。
【0092】
(B)電離放射線照射をトリガーとして硬化する化合物を使用する系
電離放射線照射をトリガーとして硬化する化合物を用いる場合には、電離放射線による照射と、照射の前、照射と同時又は照射後の熱処理とを組み合わせることにより、硬化することが有効である。
下記表1にいくつかの製造工程のパターンを示すが、これらに限定されるものではない。
下記の他、電離放射線硬化時に同時に熱処理を行う工程も好ましい。
【0093】
【表1】

【0094】
(熱処理)
本発明においては、上記のとおり、電離放射線による照射と組み合わせて熱処理を行うことが好ましい。熱処理は、積層体の支持体や構成層を損なうものでなければ特に制限はないが、好ましくは60〜200℃、更に好ましくは80〜130℃、最も好ましくは80〜110℃である。
【0095】
(電離放射線照射条件)
電離線放射線照射時の膜面温度については、特に制限はないが、ハンドリング性及び面内の性能の均一性から、一般に20〜200℃、好ましくは30〜150℃、最も好ましくは40〜120℃である。膜面温度が該上限値以下であれば、バインダー中の低分子成分の流動性が上昇しすぎて面状が悪化したり、支持体が熱によりダメージを受けたりする問題が生じないので好ましい。また該下限値以上であれば、硬化反応の進行が十分で、膜の耐擦傷性が良好なものとなるので好ましい。 電離放射線の種類については、特に制限はなく、x線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が広く用いられる。例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm〜1000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して硬化するのが好ましい。照射の際には、前記エネルギーを一度に当ててもよいし、分割して照射することもできる。光照射時間は0.1秒〜100秒程度の範囲で任意に設定できる。
【0096】
(酸素濃度)
電離放射線照射時の酸素濃度は3体積%以下であることが好ましく、より好ましくは1%体積以下であり、更に好ましくは0.1%以下である。酸素濃度3体積%以下で電離放射線を照射する工程に対して、その直前又は直後に酸素濃度3体積%以下の雰囲気下で維持する工程を設けることにより、膜の硬化を十分に促進し、物理強度、耐薬品性に優れた皮膜を形成することができる。
【0097】
[積層体の層構成]
本発明の積層体の用途としては、画像表示装置用の光学フィルム(ハードコートフィルム、反射防止フィルム)、太陽電池セル用反射防止フィルム、一般家電品の非表示面の部材(防汚層兼帯電防止層)、化粧板、壁紙、時計の文字盤保護用基材等に適用することができる。 本発明の積層体が画像表示装置用の光学フィルムの場合、本発明の導電性層をハードコート層として用いる事が好ましい。
また、映り込みを低減し、黒締まり性を向上させるために、該ハードコート層上に、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層を有する事も好ましい。
また、反射率を更に低下させる目的で、支持体よりも屈折率の高い高屈折率層を有していてもよい。更には、紫外線・赤外線吸収層、選択波長吸収性層、電磁波シールド層や防汚性層等の各種機能を有する機能性層を設けることができる。これらの機能性層は、従来公知の技術で作製することができる。場合によっては、本発明における帯電防止効果を備えた層の他に、更に第2の帯電防止層(導電剤を含有する層)が形成されていてもよい。
【0098】
本発明の積層体の帯電防止層の好ましい厚みは、0.05〜100μmであり、更に好ましくは0.08〜50μmであり、最も好ましくは0.1〜30μmである。
【0099】
[基材]
本発明の積層体の基材(支持体)としては、ガラス基板、無機酸化物系材料基板、金属材料基板、プラスチック基板、プラスチックフィルム、紙、布などを用いることができる。中でも後加工の容易性、連続製造の容易性、光学用途市場が大きいことから透明なプラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル(例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士フイルム(株)製“TAC−TD80U”、“TAC−TD80UF”等)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(「アートン」(商品名)、JSR(株)製)、非晶質ポリオレフィン(「ゼオネックス」(商品名)、日本ゼオン(株)製)などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。また、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアシレートフィルム及びその製造法については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されており、ここに記載されたセルロースアシレートを用いることも好ましい。
【0100】
[積層体の製造方法]
本発明の帯電防止積層体は以下の方法で形成することができるが、この方法に限定されるものではない。
【0101】
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。得られた塗布液を用いて、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書参照)等により支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。これらの塗布方式のうち、グラビアコート法で塗布すると、反射防止層の各層を形成する場合のように、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができるので好ましい。グラビアコート法の中でも、マイクログラビア法は膜厚均一性が高く、より好ましい。
【0102】
またダイコート法を用いても、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができ、更にダイコート法は前計量方式のため、膜厚制御が比較的容易であり、更に塗布部における溶媒の蒸散が少ないため、好ましい。
【0103】
2層以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2761791号、同第2941898号、同第3508947号、同第3526528号の各明細書及び原崎勇次著、「コーティング工学」、253頁、{朝倉書店(1973年)}に記載がある。
【0104】
[鹸化処理]
本発明の帯電防止積層体を液晶表示装置に用いる場合、通常、片面に粘着層を設けるなどしてディスプレイの最表面に配置する。支持体が例えばトリアセチルセルロースの場合は、偏光板の偏光膜を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースを用いることができるため、本発明の反射防止フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの点から好ましい。
上記のように、本発明の帯電防止積層体をディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用する場合には、接着性を向上させるため、支持体上に低屈折率層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。
鹸化処理については、特開2006−293329号公報の段落[0289]〜[0293]に記載されており、本発明においても同様である。
【0105】
[偏光板]
偏光板は、偏光膜とそれを保護する保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止フィルムは、偏光膜の保護フィルムに用いることが好ましい。本発明の帯電防止積層体が保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。偏光膜としては、公知の偏光膜を用いることができる。偏光膜については特開2006−293329号公報の段落[0299]〜[0301]に記載されており、本発明においても同様である。
【0106】
[画像表示装置]
本発明の帯電防止積層体は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)、電界放出ディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)のような様々な画像表示装置において、帯電防止性やハードコート性を付与するために使用できる。本発明の積層体、光学フィルム、又は積層体を含む偏光板は好ましくは液晶表示装置のディスプレイの表面(表示画面の視認側)に配置される。
本発明の帯電防止積層体は、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)、ECB(ElectricallyControlledBirefringence)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。液晶表示装置については特開2006−293329号公報の段落[0303]〜[0307]に記載されている。
【実施例】
【0107】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0108】
[帯電防止層形成用塗布液の調製]
下記表2に示す割合で、各成分を混合し、固形分濃度20質量%の塗布液A−1〜A−19を調製した。表2における添加量は各素材の固形分の質量部を示している。導電性ポリマーにバインダー成分、重合開始剤、フィラー、及び表面改質剤を添加した後に、塗布液全体の固形分比が20質量%になるように、必要に応じてエバポレーターにて溶媒を蒸発させたり、溶剤を追添加したりすることにより調整した。なお、表中で希釈溶媒を2種用いた場合には、その質量比率を記した。
【0109】
【表2】

【0110】
表2中、各成分の詳細は以下の通りである。
(導電性ポリマー)
導電性ポリマーを含む分散液(A)〜(D)を以下のように調製した。
(調製例1)導電性ポリマーの分散液(A)の作製
トルエン200g、アニリン2g、ドデシルベンゼンスルホン酸4.2g、ポリアクリル酸誘導体1.0g、4−メチルアニリン0.03gを溶解させ、6N塩酸3.58mLを溶解した蒸留水60gを加えた。
上記混合溶液にテトラブチルアンモニウムブロマイド180mg添加し、5℃以下に冷却した後、過硫酸アンモニウム5.4gを溶解させた蒸留水30gを加えた。5℃以下の状態で4時間酸化重合を行った後、トルエンを真空留去した。
その後、ポリアニリン沈殿物を濾過後、水洗浄することにより目的とするポリアニリンを得た。得られたポリアニリンをトルエン200gに分散させ、水層を除去したのち、濃度2質量%に調節してトルエン分散液(A)を得た。(得られた導電性ポリマーは、ポリアニリンにドデシルベンゼンスルホン酸がドープされた化合物である。溶媒のトルエンの比誘電率は2.2である。)
【0111】
(調製例2)導電性ポリマーの分散液(B)の作製
アニリン400gを蒸留水6000g、36%塩酸400mlで溶解させた。その後、5mol/Lの硫酸水溶液500gを加え、−5℃で冷却した。
次に、ビーカー中にて蒸留水2293gにペルオキソ二硫酸アンモニウム980g(4.295モル)を加え、溶解させて、酸化剤水溶液を調製した。その後、−5℃で冷却しながら、攪拌下にアニリン塩の酸性水溶液に、上記ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液を徐々に滴下し、黒緑色の沈殿を得た。 その後、得られた重合体沈殿を濾別、水洗、アセトン洗浄し、室温で真空乾燥して、キノンジイミン・フェニレンジアミン型導電性ポリアニリン粉末を得た。N−メチル−2−ピロリドン90gにフェニルヒドラジン1.49gを溶解させ、次いで、上記溶剤可溶性キノンジイミン・フェニレンジアミン型ポリアニリン10gを攪拌下に溶解させた。 別に、1,5−ナフタレンジスルホン酸四水和物5gとジエタノールアミン2.92gとをN−メチル−2−ピロリドン58.92gに溶解させた。得られた1,5−ナフタレンジスルホン酸の溶液3.33gを上記ポリアニリン溶液5gと混合した後、この混合物を脱泡処理した。溶媒組成がN−メチル−2−ピロリドン:メチルエチルケトン=1:1質量%になるように希釈し、固形分濃度4質量%のポリアニリン分散液(B)を得た。(得られた導電性ポリマーは、ポリアニリンに1,5−ナフタレンジスルホン酸がドープされた化合物である。溶媒の平均の比誘電率は23.8である。)
【0112】
(調製例3)導電性ポリマーの分散液(C)の作製
ポリスチレンスルホン酸(数分子量約10万)の2質量%の水溶液1000mlに、8.0gの3,4−エチレンジオキシチオフェンを加え20℃で混合した。この混合液に、酸化触媒液100ml(15質量%の過硫酸アンモニウムと4.0質量%の硫酸第二鉄を含む)を添加した後に、20℃で3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に1000mlのイオン交換水を添加した後に、限外ろ過法を用いて約1000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に100mlの硫酸水溶液(10質量%)と1000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約1000mlの溶液を除去した。得られた液に1000mlのイオン交換水を加えた後、限外ろ過法を用いて約1000mlの液を除去した。この操作を5回繰り返した。これにより約1.1質量%のPEDOT・PSSの水溶液を得た。固形分濃度をイオン交換水で調整して、1.0質量%の水溶液とし有機導電性ポリマー溶液(C’)を調製した。この溶液(C’)は水溶液であり、水の誘電率は80である。上記で調製したPEDOT・PSSの水溶液(C’)の200mlにアセトンを200ml加えた後、限外ろ過により水及びアセトンを210ml除去した。この操作を1度繰り返し、固形分濃度をアセトンで調整し、1.0質量%の水/アセトン溶液を調製した。この溶液の200mlに、トリオクチルアミン2.0gを溶解したアセトンを500ml加えた後、スターラーにより3時間攪拌した。限外ろ過により水及びアセトンを510ml除去した。固形分濃度をアセトンで調製し、1.0質量%のアセトン溶液とし、導電性ポリマー溶液(C)を調製した。
【0113】
(調製例4)導電性ポリマーのメチルエチルケトン溶液(D)の調製
調製例3で調製したPEDOT・PSSの溶液(C)の200mlにメチルエチルケトンを300ml加え混合し、室温で減圧下で濃縮し、総量が200mlになるまで濃縮した。固形分をメチルエチルケトンで調整し、1.0質量%のメチルエチルケトン溶液とし、導電性ポリマー溶液(D)を調製した。
【0114】
・PQ−10:高分子型カチオン系帯電防止剤(4級アンモニウム塩含有アクリル樹脂、商品名PQ−10、総研化学(株)製)
【0115】
(高分子量バインダー)
・高分子バインダーB−1:
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、GPC法によるポリスチレン換算数平均分子量75,000;イーストマン社製、CAP−482−20)
・高分子バインダーB−2:
2−ヒドロキシエチル基及び2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する(メタ)アクリルポリマー(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:PC1070)
・高分子バインダーB−3:
下記方法によって合成した。
【0116】
【化1】

【0117】
1b(3.0mol)をテトラヒドロフラン(THF)1400ml中に溶かし、反応器を5℃に冷却した。そこに1a(3.15mol)を1時間かけて滴下し、その後6時間反応させた。得られた反応溶液を30℃で減圧濃縮後、減圧蒸留を行った。133Pa減圧下で118〜121℃の留分を採取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:アセトン/ヘキサン=5/95(体積比))にて精製し、1cを362g得た。次にメチルエチルケトン(MEK)275mlを窒素気流下、60℃で1時間攪拌後、V−65(和光純薬製重合開始剤)0.5gをMEK8.3mlに溶解したものを全量添加した。その後、1c(50g)を2時間かけて滴下し、滴下終了後、V−65(0.5g)のMEK(8.3ml)溶液を添加し、2時間反応させた。その後、反応温度を80℃として2時間反応させ、反応終了後、室温まで冷却させた。得られた反応溶液をヘキサン10Lに1時間かけて滴下し、沈殿物を35℃、8時間減圧乾燥し、1dを43g得た。次に1d(43g)をアセトン(390ml)に溶解し、5℃に冷却した。そこにトリエチルアミン(390mmol)を1時間かけて滴下させ、滴下終了後、室温で24時間反応させた。その後、反応容器を5℃に冷却し、6規定の塩酸水溶液29.3mlを1時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間攪拌させた。得られた反応溶液に酢酸エチル(1L)と10質量%の塩化ナトリウム水溶液(1L)を加えて攪拌後、水層を分離した。更に有機層を10質量%の塩化ナトリウム水溶液(1L)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムを100g添加し、1時間乾燥した後、硫酸ナトリウムを濾別した。得られた溶液を500mlまで濃縮後、ヘキサン10Lに1時間かけて滴下し、沈殿物を20℃、8時間減圧乾燥し、例示化合物B−3を33g得た。作成した高分子化合物のGPC法によるポリスチレン換算数平均分子量は12,000であった。
・高分子バインダーB−4:
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(ダイセルサイテック(株)製、サイクロマーP ACA320、1−メトキシ−2−プロパノール溶液
分子量20000〜26000(GPC ポリスチレン換算重量平均分子量)
【0118】
・高分子量バインダーB−5:
以下の方法によりエポキシ基を側鎖に含有する開環重合性のポリマーバインダーを合成した
メチルエチルケトン(MEK)275mlを窒素気流下、60℃で1時間攪拌後、V−65(和光純薬工業(株)製重合開始剤)0.5gをMEK8.3mlに溶解したものを全量添加した。その後、グリシジルメタクリレート(50g)を2時間かけて滴下し、滴下終了後、V−65(0.5g)のMEK(8.3ml)溶液を添加し、2時間反応させた。その後、反応温度を80℃として2時間反応させ、反応終了後、室温まで冷却させた。得られた反応溶液をヘキサン10Lに1時間かけて滴下し、沈殿物を35℃、8時間減圧乾燥し、高分子化合物B−5を45g得た。作成した高分子化合物のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量は20,000であった。
【0119】
(多官能フッ素含有モノマー(F−1)の合成)
多官能フッ素含有モノマーの具体例として記載した化合物F−1を以下のルートにより合成した。
【0120】
【化2】

【0121】
(化合物3の合成)
濃塩酸(110ml)に文献[例えばジャーナルオブアメリカンケミカルソシエティー70,214(1948)]既知の化合物1(36.6g,145.6mmol)/メタノール(4ml)溶液を50℃にて1時間かけて滴下した。反応液を65℃にて6時間攪拌後、35℃まで冷却してメタノール(80ml)を添加し、その温度で更に5時間攪拌した。反応液をトルエン(150ml)/10質量%食塩水(100ml)で抽出し、有機層を減圧にて濃縮した。濃縮残留物にメタノール(40ml)及び濃塩酸(1ml)を添加し、室温にて4時間攪拌した。反応液をトルエン(150ml)/7.5質量%重曹水(150ml)で抽出後、有機層を25質量%食塩水(150ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を減圧にて留去した後、残留物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3)で精製することにより化合物3(40.8g,116.5mmol,80%)を得た。
【0122】
(化合物4の合成)
原料供給口、フッ素供給口、へリウムガス供給口及びドライアイスで冷却した還流装置を経由してフッ素トラップに接続されている排気口を備えた1Lテフロン(登録商標)製容器に、クロロフルオロカーボン溶媒(750ml)を入れて、内温30℃にてヘリウムガスを流速100ml/minで30分間吹き込んだ。引き続き20%F/Nガスを100ml/minで30分間吹き込んだ後、フッ素流量を200ml/minとし、化合物3(15g,42.8mmol)とヘキサフルオロベンゼン(4.0ml)の混合溶液を1.1ml/hで添加した。フッ素流量を100ml/minに下げ、ヘキサフルオロベンゼン(1.2ml)を0.6ml/hで添加し、更に20%F/Nガスを100ml/minで15分間流した。反応器をヘリウムガスで置換した後、メタノール(100ml)を加え、1時間攪拌後、減圧にて溶媒を留去した。濃縮残渣をエーテル/炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、エーテル層を硫酸マグネシウム上で乾燥した。エーテルを留去した後、残渣を2mmHgで蒸留精製することにより、化合物4(17.4g,26.5mmol,62%)を得た。
【0123】
(化合物5の合成)
リチウムアルミニウムヒドリド(3.5g)をジエチルエーテル(300ml)に分散し、10℃以下の温度で化合物4(10g,15.2mmol)のジエチルエーテル(100ml)溶液を滴下した。反応液を室温にて6時間攪拌し、酢酸エチル(100ml)をゆっくり滴下した。この溶液を、希塩酸水/氷/酢酸エチルにゆっくり注ぎ、不溶物を濾別した。有機層を水及び食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥後減圧にて濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)で精製することにより化合物5(8.0g,14.0mmol,92%)を粘稠な油状物として得た。
【0124】
(化合物F−1の合成)
化合物5(5.7g,10mmol)及び炭酸カリウム(9.0g)のアセトニトリル(120ml)溶液に、10℃以下の温度でアクリル酸クロリド(2.7ml)を滴下した。反応液を室温にて5時間攪拌後、炭酸カリウム(8g)及びアクリル酸クロリド(2.5ml)を追加し、更に20時間攪拌した。反応液を酢酸エチル(500ml)/希塩酸水(500ml)に注ぎ、分液した。有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄後、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3)で精製することにより化合物F−1(5.4g,74%)を得た。
【0125】
(多官能フッ素含有ポリマー(P−1)の合成)
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で12時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(P−1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422、質量平均分子量は4万、Mw/Mnは1.7であった。
【0126】
(低分子量バインダー)
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
・PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
・TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成(株)製)
【0127】
(その他の化合物)
・イルガキュア127:光重合開始剤 [チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
・3μm架橋アクリル粒子(SSX−103):積水化学社製
・FP−13:フッ素系表面改質剤
【0128】
【化3】

【0129】
(溶剤)
・MEK:メチルエチルケトン
・PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・PGM−Ac:プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート
【0130】
[低屈折率層用塗布液の作製]
低屈折率層用塗布液(Ln−1)の組成
エチレン性不飽和基含有含フッ素ポリマー(A−1) 3.9g
シリカ分散液A(固形分濃度22質量%) 25.0g
イルガキュア127 0.2g
DPHA 0.4g
MEK 100.0g
MIBK 45.5g
【0131】
上記で使用した化合物を以下に示す。
【0132】
エチレン性不飽和基含有含フッ素ポリマー(A−1):特開2005−89536号公報製造例3に記載のフッ素ポリマー(A−1)
【0133】
上記低屈折率層用塗布液(L−1)は孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して塗布液を調製した。上記塗布液を塗布硬化してなる低屈折率層の硬化後の屈折率は1.360であった。
【0134】
(シリカ分散液A)
中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31、特開2002−79616号公報の調製例4に準じサイズを変更して作成)500gに、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)10g、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.0g加え混合した後に、イオン交換水を3gを加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.0gを添加した。この分散液500gにほぼシリカの含量一定となるようにシクロヘキサノンを添加しながら、減圧蒸留による溶媒置換を行った。分散液に異物の発生はなく、固形分濃度をシクロヘキサノンで調整し22質量%にしたときの粘度は25℃で5mPa・sであった。得られた分散液Aのイソプロピルアルコールの残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1.0%であった。
【0135】
<実施例1>
[積層体の作製]
(帯電防止層の形成)
膜厚80μm、幅1340mmのトリアセチルセルロースフィルム TAC−TD80U(富士フイルム(株)製)上に、上記塗布液(A−1)を、ダイコーターで、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.01%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量250mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、硬化後の膜厚が6μmになるように帯電防止層を形成した。
【0136】
[鹸化処理]
上記のようにして得られた積層体試料の帯電防止層表面をラミネートして保護し、裏面に、以下の鹸化処理を行った。
1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.005モル/Lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製した積層体を、上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬して水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬して希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で3分間乾燥させた。
【0137】
[積層体の評価]
得られた積層体について、以下の項目の評価及び測定を行った。
【0138】
(評価1)導電性ポリマーの3次元つながり構造の観察
積層体をミクロトームで45°の角度で斜めに切削後、帯電防止層の切削断面をTOF−SIMS法にて解析した。ここで、帯電防止層の切削断面の全領域に渡り有機導電性化合物に由来するシグナル強度をマッピングすることにより、有機導電性化合物の局所的濃度の相対値を算出することが可能である。切削断面全領域の平均値の1.5倍以上の局所濃度で存在する領域を着色し、この領域が帯電防止層の断面内で互いに接触しているかを判断した。TOF−SIMS法による測定は以下の装置にて行った。
・装置:PhysicalE1ectronics(PHI)社製TRIFTII
また、同様にTOF−SIMS法によって、有機導電性化合物に由来するシグナル強度をマッピングし、海島構造の有無を確認した。
【0139】
(評価2)耐擦傷性の評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行った。
・評価環境条件:25℃、60%RH
・こすり材:積層体試料の帯電防止層側表面と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にスチールウール{(株)日本スチールウール製、No.0000}を巻いて、動かないようバンド固定した。その上で下記条件の往復こすり運動を与えた。
・移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、
・荷重:500g/cm、先端部接触面積:1cm×1cm、
・こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
◎:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
△:弱い傷が見える。
×:一目見ただけで分かる傷がある。
耐擦傷性は○レベル以上が実用上の価値が高い。
【0140】
(評価3)密着性の評価
積層体試料を温度25℃、60RH%の条件で2時間調湿した。各試料の帯電防止層側の表面に、カッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを入れて、合計100個の正方形の升目を刻み、その面に日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(No.31B)を貼りつけた。30分経時したあとに、垂直方向にテープを素早く引き剥がし、剥がれた升目の数を数えて、下記4段階の基準で評価した。同じ密着評価を3回行って平均をとった。
◎:100升において剥がれが全く認められなかった。
○:100升において1〜2升の剥がれが認められた。
△:100升において3〜10升の剥がれが認められた(許容範囲内)。
×:100升において11升以上の剥がれが認められた。
【0141】
(評価4)表面抵抗値の測定
帯電防止層側の表面の表面抵抗を、超絶縁抵抗/微小電流計TR8601((株)アドバンテスト製)を用いて、25℃、60RH%の条件下で測定した。結果は表面抵抗の常用対数log(SR)で示した。
なお、帯電防止層の上層に更に別の層を有する積層体の場合は、別の層側(基材とは逆側)から測定した。
【0142】
(評価5)防塵性の評価
各積層体試料の透明支持体側をCRT表面に張り付け、0.5μm以上のホコリ及びティッシュペーパー屑を、1ft(立方フィート)当たり100〜200万個有する部屋で24時間使用した。積層体100cm当たり、付着したホコリとティッシュペーパー屑の数を測定し、それぞれの結果の平均値について、以下の評価基準で評価した。
A:20個未満
B:20〜49個
C:50〜199個
D:200個以上
B以上のレベルだと実用上の価値が高い。
【0143】
(評価6)光学的面状の目視評価
積層体試料を、(1)三波長蛍光灯下での透過面状検査、及び(2)帯電防止層塗布面と反対側に油性黒インキを塗り、三波長蛍光灯下での反射面状検査を行って、面状の均一性(風ムラ、乾燥ムラ、塗布スジムラなどがないこと)を詳細に評価した。
×:面状劣悪
△:目標未達
○:かなり良好
◎:極めて良好
【0144】
以上の結果を下記表3に示す。
【0145】
【表3】

【0146】
上記表3に示すように、導電性ポリマーの使用量が同じ場合でも、試料101〜103のように導電性ポリマーの3次元つながり構造が存在しないものに比べ、3次元つながり構造を有している実施例の積層体(試料104〜119)は、表面抵抗が低下し(帯電防止性が向上)、優れた防塵性を有し、また、スジやムラの無い優れた面状、耐傷擦性、密着性を示している。
【0147】
<実施例2>
[液晶表示装置での評価]
(偏光板の作製)
1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製)と、前記積層体試料101〜119(鹸化処理済み)に、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光子の両面を接着、保護して偏光板を作製した。
【0148】
(液晶表示装置の作製)
VA型液晶表示装置(LC−37GS10、シャープ(株)製)に設けられている偏光板及び及び位相差膜を剥がし、代わりに上記で作製した偏光板を透過軸が製品に貼られていた偏光板と一致するように貼り付けて前記積層体試料101〜119を有する液晶表示装置を作製した。なお、前記積層体試料101〜119が視認側になるように貼り付けた。
【0149】
<実施例3>
試料101〜119の帯電防止層上に低屈折率層を積層し、実施例2と同様にして液晶表示装置を作製した。
【0150】
(低屈折率層の形成)
試料101〜119の帯電防止層上に、前記低屈折率層用塗布液(Ln−1)を、低屈折率層膜厚が95nmの膜厚になるように調節して、マイクログラビア塗工方式で塗布し、下記硬化条件により硬化させ、低屈折率層を形成した。
【0151】
低屈折率層の形成における硬化条件を以下に示す。
(1)乾燥:80℃−120秒
(2)照射前熱処理:95℃−5分
(3)UV硬化:90℃−1分、酸素濃度が0.01体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度120mW/cm、照射量240mJ/cmの照射量とした。
(4)照射後熱処理:30℃−5分
【0152】
上記ようにして作製された積層体付き偏光板及び画像表示装置は、それぞれ貼り付けた積層体と同様、実施例は比較例に比べ、スジやムラの無い優れた面状、耐傷擦性、防塵性及び密着性を示した。また、低屈折率層を積層した実施例では、表面抵抗値は低屈折率層が無い場合と略同等(LogSRで0.5以内の変化)であり、面状、防塵性、密着性が良好で、背景の写りこみが極めて少なく表示品位の高い液晶表示装置が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくとも(A)導電性ポリマー及び(B)バインダー成分を含む組成物から形成された帯電防止層を有する積層体であって、
該帯電防止層内には、(A)導電性ポリマーの局所濃度が該帯電防止層における(A)導電性ポリマーの濃度の平均値の1.5倍以上である領域があり、該領域が互いに接触し、帯電防止層内で3次元的なつながり構造を形成しており、
該帯電防止層の表面抵抗率SR(Ω/sq)の常用対数値(LogSR)が3.0以上13.0以下である積層体。
【請求項2】
基材上に、少なくとも(A)導電性ポリマー及び(B)バインダー成分を含む組成物から形成された帯電防止層を有する積層体であって、
該帯電防止層は、海部に(A)導電性ポリマーを含む海島構造を有し、
該帯電防止層の表面抵抗率SR(Ω/sq)の常用対数値(LogSR)が3.0以上13.0以下である積層体。
【請求項3】
前記(B)バインダー成分を構成する少なくとも1種の成分の数平均分子量が1500以上50万未満のポリマー(B1)である請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記(B)バインダー成分が、架橋性部位を有する繰り返し単位を含み、該架橋性部位が、水酸基、加水分解可能な基を有するシリル基、反応性不飽和2重結合を有する基、開環重合反応性基、活性水素原子を有する基、求核剤によって置換され得る基、及び酸無水物の少なくともいずれかである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記(B)バインダー成分を構成する少なくとも1種の成分が分子量200以上1500未満の重合性化合物(B2)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記(B)バインダー成分は、数平均分子量が1500以上50万未満である化合物(B1)の少なくとも1種及び、分子量200以上1500未満の重合性化合物(B2)の少なくとも1種とからなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記(A)導電性ポリマーが、π共役系導電性ポリマー又はその誘導体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記π共役系導電性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体、及びポリアニリン誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の積層体。
【請求項9】
前記(A)導電性ポリマーが、カチオン系の導電性ポリマーである請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
前記組成物が更に(A)導電性ポリマーの良溶剤の少なくとも1種と(B)バインダーの良溶剤の少なくとも1種とを含有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層体を含む光学フィルム。
【請求項12】
偏光膜と偏光膜の少なくとも1枚の保護フィルムとからなる偏光板であって、該保護フィルムが、請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層体である偏光板。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載の積層体、請求項11に記載の光学フィルム、又は請求項12に記載の偏光板を有する画像表示装置。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層体の帯電防止層の上層に更に別の層を有する積層体であって、該積層体の最表面の表面抵抗率SR(Ω/sq)の常用対数値(LogSR)が3.0以上13.0以下である積層体。

【公開番号】特開2011−235444(P2011−235444A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105923(P2010−105923)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】