説明

干渉対物レンズ及びこれを有する顕微鏡装置

【課題】 参照鏡面についたゴミなどが像面に映り込むのを防ぎ、良好な測定が可能な干渉対物レンズ及びこれを有する顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】 対物レンズ系21と、対物レンズ系21と試料22との間の光路中に配置された光路分割プリズム23と、光路分割プリズム23によって分割された一方の分割光路中に配置される参照鏡24とを有し、光路分割プリズム23によって分割された他方の分割光路中に配置される試料22からの反射光と、参照鏡24からの反射光とを干渉させる干渉対物レンズ20において、参照鏡24は、透明の基板部材24aの裏面に反射膜24bが形成された裏面反射鏡であり、試料22と光路分割プリズム23との間に、裏面反射鏡の基板部材24aによって生じた光路差を補正する光路差補正部材25を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉対物レンズ及びこれを有する顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、試料表面の微細構造を高精度に測定する手段として、光の干渉を利用した干渉顕微鏡が知られている(例えば、特許文献1を参照)。干渉顕微鏡は、干渉対物レンズを透過した照明光を試料表面に照射し、試料表面で反射した反射光(以下、測定光)と、干渉対物レンズ内に設けられた参照面(参照鏡面)から反射した反射光(以下、参照光)とを干渉させた干渉縞から、試料表面を観察するとともにその凹凸を測定するものである。このような干渉顕微鏡として、マイケルソン型の対物レンズを用いたものが知られている。
【0003】
図4に示すように、マイケルソン型の干渉対物レンズ50は、対物レンズ系51と、対物レンズ系51と試料52との間に配設された光路分割プリズム53と、光路分割プリズム53の一方の分割光路中に配設された参照鏡54とを備え、対物レンズ系51を透過した照明光は光路分割プリズム53に入射して、試料52へ向かう光路と、参照鏡54へ向かう光路とに分割され、試料52で反射された光と、参照鏡54で反射された光とを光路分割プリズム53で互いに干渉させて、干渉縞を得るようになっている。なお、参照鏡54は、表面反射鏡で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−193891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来のマイケルソン型の干渉対物レンズでは、試料表面と参照鏡面とが共役であるため、参照鏡面についたゴミなどが像面に映り込んでしまい、測定に悪影響を与えることがあった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、参照鏡面についたゴミなどが像面に映り込むのを防ぎ、良好な測定が可能な干渉対物レンズ及びこれを有する顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明は、対物レンズ系と、前記対物レンズ系と試料との間の光路中に配置された光路分割部材と、前記光路分割部材によって分割された一方の分割光路中に配置される参照鏡とを有し、前記光路分割部材によって分割された他方の分割光路中に配置される前記試料からの反射光と、前記参照鏡からの反射光とを干渉させる干渉対物レンズにおいて、前記参照鏡は、透明の基板部材の裏面に反射膜が形成された裏面反射鏡であり、前記試料と前記光路分割部材との間に、前記裏面反射鏡の前記基板部材によって生じた光路差を補正する光路差補正部材を有する。
【0008】
なお、本発明において、前記光路差補正部材は、前記基板部材と同一のガラス材料で形成され且つ同一の光路長を有することが好ましい。
【0009】
また、本発明において、前記光路差補正部材は、前記光路分割部材に接合して配置されるか、もしくは前記光路分割部材から間隔をあけて配置されることが好ましい。
【0010】
また、本発明において、前記光路分割部材は、前記試料側部材と前記参照鏡側部材とからなり、前記試料側構成部材は、前記光路差補正部材であり、その光路長が前記裏面反射鏡の前記基板部材の光路長と前記参照鏡側部材の光路長との総和に相当するように形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明において、前記光路分割部材は、前記裏面反射鏡の前記基板部材と同一のガラス材料で形成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の顕微鏡装置は、上記いずれかの干渉対物レンズを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、参照鏡面についたゴミなどが像面に映り込むのを防ぎ、良好な測定が可能な干渉対物レンズ及びこれを有する顕微鏡装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る干渉対物レンズ及びこれを有する顕微鏡装置の構成を示す図である。
【図2】他の実施形態に係る干渉対物レンズ及びこれを有する顕微鏡装置の構成を示す図である。
【図3】他の実施形態に係る干渉対物レンズ及びこれを有する顕微鏡装置の構成を示す図である。
【図4】マイケルソン型の干渉対物レンズの基本構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1を用いて、本実施形態に係る干渉対物レンズ及びこの干渉対物レンズを有する顕微鏡装置の構成について説明する。図1に示す顕微鏡装置1は、試料22側から順に、干渉対物レンズ20と、照明用ハーフミラー12と、検出器13とが配置され、さらに照明用ハーフミラー12の側方に光源11が配置されて構成されている。
【0016】
干渉対物レンズ20は、対物レンズ系21と、対物レンズ系21と試料22との間に配設された光路分割プリズム23と、光路分割プリズム23の一方の分割光路中に配設された参照鏡24とを備えて構成される。
【0017】
参照鏡24は、ガラス材料からなる透明の基板部材24aの裏面に、反射膜24bが形成された裏面反射鏡であり、基板部材24aの表面から入射した光は反射膜24bで反射され、基板部材24aの表面から出射される。なお、基板部材24aは、焦点深度よりも厚く、また面精度が保てる程度の厚さを有している。
【0018】
本実施形態においては、試料22と光路分割プリズム23との間に、光路差補正部材25が配置されている。光路差補正部材25は、光路分割プリズム23の試料側面に接合されており、裏面反射鏡の基板部材24aと同一のガラス材料で形成され且つ同一の光路長を有する。
【0019】
光源11から射出された照明光は、照明用ハーフミラー12に照射され、一部の光がこの照明用ハーフミラー12を透過し、残りの光が試料22側に反射される。この照明用ハーフミラー12で反射された光は、干渉対物レンズ20に入射する。そして、対物レンズ系21を透過した照明光は、光路分割プリズム23に入射し、試料22へ向かう光路と、参照鏡24へ向かう光路とに分割される。試料22側に分割された光は、光路差補正部材25を透過し、試料22に照射される。試料22で反射された光は、再び光路差補正部材25を透過し、光路分割プリズム23に入射する。光路分割プリズム23で、試料22で反射された光と、参照鏡24で反射された光とを互いに干渉させ、干渉縞が形成される。この干渉縞は、対物レンズ系20及び照明用ハーフミラー12を透過し、検出器13に導かれる。そして、検出器13にて検出された干渉縞の形状や変化を測定解析することにより、試料22の表面の凹凸情報が得られるようになっている。
【0020】
以上のように、参照鏡24を裏面反射鏡とし、その基板部材24aの厚さを焦点深度よりも厚く形成することにより、参照鏡24の表面に付着したゴミが像面上に結像することを防ぐことができる。しかしながら、参照鏡24を(従来の表面反射鏡(図4参照)から)裏面反射鏡に変更しただけでは、光路分割プリズム23から試料22までの光路長(以下、「試料側光路長」と称する)と、光路分割プリズム23から参照鏡24の反射面までの光路長「参照鏡側光路長」と称する)との間で、基板部材24aによる光路長差が生じてしまう。そこで、本実施形態では、裏面反射鏡の基板部材24aと同一の光路長を有する光路差補正部材25を、光路分割プリズム23と試料22との間に(光路分割プリズム23の試料側面に接合して)配置することで、試料側光路長と参照鏡側光路長とを一致させ、良好な試料22の測定を可能にしている。
【0021】
ここまで、本実施形態に係る干渉対物レンズ及びこれを有する顕微鏡装置について、実施形態の構成要件を付して説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。以下、他の実施形態について説明するが、上記実施形態と同様の機能を有するものについては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0022】
例えば、図2に示す干渉対物レンズ30のように、裏面反射鏡の基板部材24aと同一の光路長を有する光路差補正部材35を、光路分割プリズム23と試料22との間に、光路分割プリズム23から間隔をあけて配置し、試料側光路長と参照鏡側光路長とを一致させる構成としてもよい。このとき、光路差補正部材35は、裏面反射鏡の基板部材24aと同一のガラス材料で形成されていることが好ましい。
【0023】
また、図3に示す干渉対物レンズ40のように、光路分割プリズム43は試料側部材43aと参照鏡側部材43bとからなり、試料側部材43aの光路長が裏面反射鏡の基板部材24aの光路長と参照鏡側部材43bの光路長との総和に相当するように、言い換えれば試料側部材43aの光路長が参照鏡側部材43bの光路長よりも裏面反射鏡の基板部材24aと同一の光路長の分だけ大きくなるように、試料側部材43aを形成し、試料側光路長と参照鏡側光路長とを一致させる構成としてもよい。この構成によれば、図1に示す実施形態のように、光路分割プリズム23と試料22との間に、裏面反射鏡の基板部材24aと同一の光路長を有する光路差補正部材25を配置することなく、試料側光路長と参照鏡側光路長とを一致させることが可能である。なお、光路分割プリズム43は、試料側部材43aと参照鏡側部材43bとの2つの部材とも、裏面反射鏡の基板部材24aと同一のガラス材料で形成されていることが好ましい。これにより、光源11として、単色光源だけでなく、白色光源も利用することが可能となる。
【符号の説明】
【0024】
1 顕微鏡装置
11 光源
12 照明用ハーフミラー
13 検出器
20,30,40,50 干渉対物レンズ
21,51 対物レンズ系
22,52 試料
23,43,53 光路分割プリズム(光路分割部材)
24 参照鏡(裏面反射鏡)
24a 基板部材
24b 反射膜
25,35 光路差補正部材
43a 試料側部材(光路差補正部材)
43b 参照鏡側部材
54 参照鏡(表面反射鏡)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズ系と、前記対物レンズ系と試料との間の光路中に配置された光路分割部材と、前記光路分割部材によって分割された一方の分割光路中に配置される参照鏡とを有し、
前記光路分割部材によって分割された他方の分割光路中に配置される前記試料からの反射光と、前記参照鏡からの反射光とを干渉させる干渉対物レンズにおいて、
前記参照鏡は、透明の基板部材の裏面に反射膜が形成された裏面反射鏡であり、
前記試料と前記光路分割部材との間に、前記裏面反射鏡の前記基板部材によって生じた光路差を補正する光路差補正部材を有することを特徴とする干渉対物レンズ。
【請求項2】
前記光路差補正部材は、前記基板部材と同一のガラス材料で形成され且つ同一の光路長を有することを特徴とする請求項1に記載の干渉対物レンズ。
【請求項3】
前記光路差補正部材は、前記光路分割部材に接合して配置されるか、もしくは前記光路分割部材から間隔をあけて配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の干渉対物レンズ。
【請求項4】
前記光路分割部材は、前記試料側部材と前記参照鏡側部材とからなり、
前記試料側構成部材は、前記光路差補正部材であり、その光路長が前記裏面反射鏡の前記基板部材の光路長と前記参照鏡側部材の光路長との総和に相当するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の干渉対物レンズ。
【請求項5】
前記光路分割部材は、前記裏面反射鏡の前記基板部材と同一のガラス材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の干渉対物レンズ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の干渉対物レンズを有する顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−197534(P2011−197534A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66168(P2010−66168)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】