干渉技術を使用して目標を光学的にトラッキングする方法及びシステム
光ビーム(280)から入射光ビーム(284)と基準光ビーム(282)を生成するための光学素子(260)を含む、光学位置トラッキングシステム(200)。更に、光学位置トラッキングシステム(200)は、或る角度範囲(290)にわたって入射光ビームを掃引し、目標(205)によって入射光ビーム(284)の反射を引き起こすための光ビームステアリングデバイス(230)を更に含む。入射光ビーム(284)の反射(286)は、基準光ビーム(282)と干渉し、干渉光ビーム(250)を形成するように導かれる。更に、光学位置トラッキングシステム(200)は、入射光ビーム(284)の角度値、及び、干渉光ビーム(250)を使用し、干渉技術を使用して目標(205)の位置を判定することができる。この角度値は、反射(286)に依存する。光ビーム(280)が複数の波長を有する場合、それらの波長が同時に存在することにより、すなわち、複数の波長を有する期間の存在により、目標(205)の絶対位置を判定することができる。光ビーム(280)が単一の波長しか持たない場合、目標(205)の相対位置を判定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2004年1月16日に出願された「Position Determination and Motion Tracking"と題するXie他による本願と同じ譲受人の米国特許出願第10/759,646号は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
背景技術
発明の分野
本発明は概して光システムに関する。具体的には、本発明は、干渉技術を使用した目標の光学的トラッキングに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術
コンピュータにデータを入力したり、コンピュータの動作をナビゲート/カーソル制御するための種々のシステム及びデバイスが開発されている。コンピュータシステムの使用の著しい成長は、こうしたシステムやデバイスの進歩に関係している可能性がある。
【0004】
それらのシステム及びデバイスは通常、複数の技術のうちの1つを使用している。技術の例には、機械式トラックボール、加速度検出、光学的画像相関、レーザースペックルパターン分析、強度検出などがある。他の技術も使用される。
【0005】
それらのシステム及びデバイスの改良はコンピュータシステムの有用性を向上させるが、それらのシステム及びデバイスにおいて実施される技術の幾つかの欠陥は、いまだにそれらのシステム及びデバイスの有用性を制限し続けている。例えば、分解能制限のある技術は、コンピュータシステムの使用の妨げになる。また、技術によっては、応答時間が遅いこともある。技術によっては、特定タイプの表面上でしか使用できないものもある。更に、技術によっては、電力消費問題が生じることもある。最後に、技術によっては、それを実施するために必要なシステムやデバイスのサイズが、不都合なサイズになることもある。
【0006】
それらの欠点の他に、こうした既存の技術には、他の問題も関係する。一般に、既存の技術は、二次元ナビゲーション/カーソル制御及び相対座標トラッキング(例えば、位置の変化)に限られる。つまり、対象の位置の変化は、対象の絶対位置(例えば、現在位置)ではなく、二次元空間でトラッキングされる。相対座標トラッキングは、絶対位置トラッキングを必要とする手書き入力のような用途におけるそれらのシステム及びデバイスの有用性を制限する。要するに、既存の技術は、克服することが困難な重大な制限を有している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
干渉技術を使用して目標を光学的にトラッキングする方法及びシステムを開示する。光学位置トラッキングシステムは、光ビームから入射光ビームと基準光ビームを生成するための光学素子を含む。また、光学位置トラッキングシステムは、ある角度範囲にわたって入射光ビームを掃引し、目標による入射光ビームの反射を引き起こし、入射光ビームの反射を基準光ビームに干渉させるように導き、干渉光ビームを生成するためのステアリングデバイスを更に含む。更に、光学位置トラッキングシステムは、入射光ビームの角度値と、干渉光ビームとを使用し、干渉技術を使用して目標の位置を判定することができ、この角度値は反射に依存する。光ビームは複数の波長を有し、それらの波長が同時に存在することにより、すなわち、複数の波長を有する期間の存在により、目標の絶対位置を判定することができる。光ビームが単一の波長を有する場合、目標の相対位置を判定することができる。
【0008】
本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付の図面は、本発明による種々の実施形態を例示するものであり、説明と合わせて、本発明による種々の実施形態の原理を説明する働きをする。
【発明を実施するための好ましい実施形態】
【0009】
発明の詳細な説明
次に、本発明による実施形態を詳細に参照する。実施形態の例は、添付の図面に例示されている。本発明はこれらの図面に関して説明されるが、それらの図面は、本発明をそれらの実施形態に制限するものではない。逆に、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の思想及び範囲に含まれるであろう代替形態、変更形態、及び、等価形態も、本発明の範囲に含めることを意図している。本発明による実施形態に関する下記の詳細な説明では、本発明を完全に理解してもらうために、多数の具体的な詳細を説明する。
【0010】
本発明による実施形態において、光学位置トラッキングシステムは、光ビームを生成する光ビーム発生器と、その光ビームから入射光ビームと基準光ビームを生成するための光学素子とを有する。また、光学位置トラッキングシステムは、ある角度範囲にわたって入射光ビームを掃引し、入射光ビームの反射を基準光ビームに干渉させるように導き、入射光ビームが目標によって反射されたときに干渉光ビームを形成するための光ビームステアリングデバイスを更に含む。入射ビームの反射は反射光ビームからなる。その他に、光学位置トラッキングシステムは、干渉光ビームを検出するための検出器と、干渉技術と、目標が入射光ビーム反射するときの入射光ビームの角度値を含むデータと、目標に対する距離を提供する干渉光ビームとを使用して目標の位置を判定するための処理ユニットとを更に含む。光ビームが複数の波長を有する場合、それらの波長が同時に存在すること、すなわち、複数の波長を有する期間の存在により、目標の絶対位置を判定することができる。光ビームが単一の波長しか持たない場合、目標の相対位置を判定することができる。
【0011】
図1は、光学位置トラッキングシステム20を示す、本発明による実施形態のシステム100を示している。システム100は、コンピュータシステム50、及び、光学位置トラッキングシステム20を含む。コンピュータシステム50は表示装置60を有する。
【0012】
本発明によるこの実施形態において、光学位置トラッキングシステム20は、目標10が二次元空間内を移動するときに、目標10の位置をトラッキングする。具体的には、位置トラッキングシステムは、二次元空間内の或る角度範囲20にわたって掃引される少なくとも1つの光ビーム90を使用する。光ビーム90が動かされる二次元空間内において目標10が左、右、前、後、又はそれらの任意の組み合わせに移動する際に、目標10は、光ビーム90を反射する場合がある。光ビーム90の反射は反射光ビーム80からなり、目標10の位置をトラッキングするために、反射光ビーム80は位置トラッキングシステム20によって受信され、処理される。
【0013】
目標10は、どのようなタイプの対象物であってもよい。例えば、目標10は、マウス型デバイス、ペン、タッチスクリーン入力型デバイス、指などであってもよい。目標10上の逆反射(再帰反射)表面は、光学位置トラッキングシステム20が目標10の移動をトラッキングする能力を向上させる。目標10が十分に大きな反射特性を有している場合、逆反射表面は不要な場合もある。
【0014】
目標10の位置に対応する位置データを生成することにより光学位置トラッキングシステム20によってトラッキングされる目標10の移動は、コンピュータシステム50への入力データ(例えば、手書き入力)、表示装置60上でのナビゲーション、又は、コンピュータシステム50のカーソルの制御などに使用することができる。
【0015】
本発明の他の実施形態では、目標10が表示装置60の表面で動き回る場合に、タッチスクリーン機能を提供するために、光学位置トラッキングシステム20は表示装置60に一体化される場合がある。この実施形態は、従来技術によるタッチスクリーンに比べて、コストが低く、複雑度も低い。
【0016】
構造(相対位置トラッキング実施形態)
図2を参照すると、この図は、本発明による実施形態の目標205の相対位置をトラッキングするための光学位置トラッキングシステム200を示している。下記の説明は、本発明による実施形態の物理的構造の説明から開始される。その説明の後、本発明による実施形態の動作の説明が続く。
【0017】
本発明による実施形態の物理的構造に関し、図2は、本発明による実施形態の目標205の相対位置をトラッキングするための光学位置トラッキングシステム200を示している。相対位置は極座標で判定される。「相対位置」とは、以前の位置に対する目標205の位置の変化を指す。図2に示すように、光学位置トラッキングシステム200は、光ビーム発生器210、光学素子260、ミラー270、光ビームステアリングデバイス230、検出器240、焦点レンズ250、及び、処理ユニット220を含む。要するに、光ビームステアリングデバイス230に対する目標205の角度関係は、検出器240と協働して判定される。更に、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの相対距離は干渉技術を使用して判定され、この干渉技術は、目標205からの反射光ビーム286を基準光ビーム282と干渉させることにより形成された干渉光ビーム250を利用する。干渉光ビーム250が形成される理由は、反射光ビーム286と基準光ビーム282が、異なる長さの経路に沿って伝搬するからである。従って、基準光ビーム282と反射光ビーム286を結合すると(例えば、干渉光ビーム250)、明るい干渉縞と暗い干渉縞からなる干渉パターンが形成され、それが検出器240によって受信される。経路長の差の変化に応じて、その明るい干渉縞と暗い干渉縞はシフトする。従って、目標205の相対位置は、目標205のこの角度関係、及び、目標205のこの相対距離によって表現される。
【0018】
光ビーム発生器210は光ビーム280を生成する。光ビーム発生器210は、光ビーム280を生成する光源212を有する。光ビーム280は、コヒーレントな光であり、単一の波長λを有する。また、光ビーム発生器210はコリメートレンズ214を更に有する。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、光源(例えば、光源212)には、低コストなLED(発光ダイオード)技術に基づくものを使用することができる。本発明の他の実施形態では、光源には、VCSEL(面発光レーザー)技術に基づくものを使用することができる。本発明による更に他の実施形態では、光源には、適当なコリメート機能を備えた低コストな白熱灯技術に基づくものを使用することができる。本発明による更に他の実施形態によれば、光源には、ハイパワー希土類レーザーに基づくものを使用することができる。希土類レーザーの例には、Nd−YAG(ニオデューム・イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーや、パルス型エルビウム・レーザーがある。ハイパワー希土類レーザーを使用することができるのは、目標205と検出器の間の距離又は吸収作用に、比較的高い光パワーが必要とされるような場合である。
【0020】
光学素子260は、光ビーム280を使用して、入射光ビーム280と基準光ビーム282を生成する。本発明による一実施形態において、光学素子260はビームスプリッタ260である。
【0021】
図2を引き続き参照すると、光ビームステアリングデバイス230は、角度範囲290にわたって入射光ビーム284を掃引する。光ビームステアリングデバイス230によって行われる入射光ビーム284の掃引動作を示すために、図2には、種々の角度位置(例えば、284A〜284E)における入射光ビームが描かれている。また、目標205や光ビームステアリングデバイス230に対する入射光ビーム284の角度もトラッキングされる。これは図3に示され、後で詳細に説明される。
【0022】
続いて、光ビームステアリングデバイス230は、どのようなタイプの光ビームステアリングデバイスであってもよい。本発明による一実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、MEMS(微小電気機械システム)モータ・ビームステアリングデバイスである。本発明による他の実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、ガルバノメータ・ビームステアリングデバイスである。本発明による更に他の実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、音響光学・ビームステアリングデバイスである。本発明による他の実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、電気光学的ビームステアリングデバイスである。本発明による更に他の実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、格子構造ビームステアリングデバイスである。本発明による他の実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、ホログラフィック構造ビームステアリングデバイスである。本発明による他の実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、走査ミラー・ビームステアリングデバイスである。MEMS処理により、実質的なコスト及びサイズの節約が実現される。
【0023】
図2に示すように、目標205は、入射光ビーム284を反射させるための逆反射表面207を有する。「逆反射(再帰反射)」という用語は、入射光ビームがその入射光ビームに対して平行に反射される特性を指す。逆反射表面207は、逆反射テープ、逆反射塗装、又は、目標205の表面に結合される任意の他の逆反射材料のように、どのような態様で実施してもよい。上記のように、目標205は、どのようなタイプの対象物であってもよい。例えば、目標205は、マウス型デバイス、ペン、タッチスクリーン入力型デバイス、指などであってよい。目標205が十分に大きな反射特性を有していれば、目標205が、入射光ビームをその入射光ビームに対して平行に反射する限り、逆反射面は不要な場合もある。例えば、書く方の一端に逆反射面を有するオフィスペンの動きをトラッキングし、コンピュータシステムのカーソル制御に使用することが可能である。
【0024】
また、処理ユニット220は、光ビームステアリングデバイス230、検出器240、及び、光ビーム発生器210に接続される。処理ユニット220は、種々のデータ及び干渉技術を使用して、目標205の相対位置を判定する。
【0025】
動作(相対位置トラッキング実施形態)
以下では、本発明による実施形態の動作を詳細に説明する。
【0026】
次に、図2を参照し、光学位置トラッキングシステム200の動作の説明を続ける。光源212は光ビーム280を生成する。光ビーム280はコリメートレンズ214を通過し、コリメートレンズ214は光ビーム280を平行化する。コリメートレンズ214を通過した後、光ビーム280はビームスプリッタ260へ向けて伝搬する。ビームスプリッタ260は、光ビーム280を使用して、入射光ビーム284と基準光ビーム282を生成する。基準光ビーム282はミラー270へ導かれる。ミラー270は、基準光ビーム282をビームスプリッタ260へ向けて反射させ、その後、基準光ビーム282は検出器240へ向かう。
【0027】
更に、入射光ビーム284は、光ビームステアリングデバイス230へ導かれる。光ビームステアリングデバイス230は、入射光ビーム284が種々の角度位置(例えば、284A〜284E)にあるかのように、角度範囲290にわたって入射光ビーム284を掃引する。図中、矢印235A及び235Bは、角度範囲290にわたって入射光ビーム284が掃引されるように、光ビームステアリングデバイス230が動いていることを示している。
【0028】
目標205の逆反射表面207が入射ビーム284(例えば284C)を反射するとき、入射光ビーム284Cの反射は、光ビームステアリングデバイス230へ向けて反射される。入射光ビーム284Cの反射は、反射光ビーム286からなる。光ビームステアリングデバイス230は反射光ビーム286をビームスプリッタ260へ導き、基準光ビーム282と干渉させ、干渉光ビーム285を形成する。干渉光ビーム285は集束レンズ250を通過し、集束レンズ250は干渉光ビーム285を集束させ、それが検出器240に達する。検出器240は、干渉光ビーム285を検出し、目標205が見付かったことを処理ユニット220に知らせ、処理ユニット220が、入射光ビーム284Cの現在の角度(例えば、図3の角度A)を記録できるようにする。本発明による一実施形態において、処理ユニット220は、光ビームステアリングデバイス230により掃引される入射光ビーム284の角度をトラッキングする。
【0029】
検出器240は、反射光ビーム286と基準光ビーム282とを含む干渉光ビーム285を検出する。処理ユニット220は、干渉技術を使用して、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの相対距離(例えば、図3の相対距離ΔR)を判定する。
【0030】
図3は、本発明による実施形態の光学位置トラッキングシステム200により判定された目標205の相対位置Tを示している。図3に示すように、光ビームステアリングデバイス230の位置Sは既知である。角度Aは、入射光ビーム284が目標205によって反射されたときの角度に対応し、その反射に応じて、反射ビームと基準光ビーム282の干渉によって形成される干渉光ビーム285の検出が、検出器240によって行われる。上で述べたように、入射光ビーム284の角度値がトラッキングされる。以下で説明する干渉技術によれば、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの相対距離ΔRを判定することができる。この干渉技術は、光源212の波長、及び、干渉光ビーム285(例えば、図4の信号410)の干渉縞のカウントを利用する場合がある。従って、目標205の相対位置は、入射光ビーム284の現在の角度(例えば、図3の角度A)、及び、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの相対距離(例えば、図3の相対距離ΔR)を含む。
【0031】
図4は、本発明による実施形態の干渉光ビーム285に応答して、図2の検出器240によって生成される信号410を示している。図4に示すように、信号410のピークは、干渉光ビーム285の干渉縞に対応する。本発明による実施形態において使用可能な干渉技術によれば、基準点を通過する干渉縞の数がカウントされる。光源212の数及び波長は、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの相対距離(例えば、図3の相対距離ΔR)を算出する際に使用される、入射光ビーム284や反射光ビーム286が進行した長さと基準光ビーム282が進行した長さの差の判定に使用される。基準光ビーム282は、既知の距離を進行する一方、入射光ビーム284及び反射光ビーム286は、測定すべき距離を伝搬する。
【0032】
構造(絶対位置トラッキング実施形態)
図5を参照すると、この図は、本発明による実施形態の目標205の絶対位置をトラッキングするための光学位置トラッキングシステム500を示している。下記の説明は、本発明による実施形態の物理的構造の説明から開始される。その後、本発明の実施形態の動作に関する説明が続く。
【0033】
本発明による実施形態の物理的構造に関し、図5は、本発明の実施形態による目標205の絶対位置をトラッキングするための光学位置トラッキングシステム500を示している。図5に示すように、光学位置トラッキングシステム500は、光ビーム発生器210、光学素子260、ミラー270、光ビームステアリングデバイス230、検出器240、集束レンズ250、及び、処理ユニット220を含む。要するに、光ビームステアリングデバイス230に対する目標205の角度関係は、検出器240に関係して判定される。また、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの絶対距離は、複数の波長を有する光ビーム、及び、目標205からの反射光ビームと基準光ビームの干渉によって形成される干渉光ビームを利用する干渉技術を使用して判定される。干渉光ビームが形成される理由は、反射光ビームと基準光ビームが異なる長さの経路に沿って伝搬するからである。従って、目標205の絶対位置は、目標205のこの角度関係、及び、目標205のこの絶対距離によって表現される。
【0034】
図2の光学位置トラッキングシステム200は、目標205の相対位置をトラッキング出来るのに対し、光学位置トラッキングシステム500は、目標205の絶対位置をトラッキング出来る。特にことわりがない限り、図2に関する構造に関する説明は、図5にも適用される。
【0035】
図2とは違い、図5の光学位置トラッキングシステム500は、複数の波長(例えば、λ1とλ2)を有する光ビーム280を生成する光ビーム発生器210を有する。本発明による一実施形態において、光ビーム発生器210は、第1の波長λ1を有する光源1と、第2の波長λ2を有する光源とを含む。本発明による他の実施形態において、光ビーム発生器210は、第1の波長λ1及び第2の波長λ2を有する光源を含む。本発明による他の実施形態において、光源の光波長は、第1の波長λ1と第2の波長λ2の間で高速に変化する。つまり、ある期間の間、光源は複数の波長を有する。本発明による更に他の実施形態において、光ビーム発生器210は、第1の波長と第2の波長の間の複数の波長を有する広帯域光源を含む。この広帯域光源によれば、他の実施形態に比べてコストを節約することが出来る。図2に関して述べた光源タイプに関する説明は、図5にも同じように適用可能である。
【0036】
本発明による他の実施形態において、光学位置トラッキングシステム500は、異なる波長(例えば、λ1とλ2)の干渉光ビーム285の干渉パターンを個別に検出するために、複数の検出器を有する。
【0037】
動作(絶対位置トラッキング実施形態)
以下の説明は、本発明による実施形態の動作を詳細に説明するものである。
【0038】
図5を参照し、図2を参照して説明したものに類似した光学位置トラッキングシステム500の動作の説明に移る。以下では特にことわりがない限り、図2に関する動作説明は、図5にも適用される。目標205のトラッキングを開始する前に、光源1の波長λ1と光源2の波長λ2を測定し、位相関係を判定する。光ビーム280は複数の波長を有する。
【0039】
検出器240は、反射光ビーム286と基準光ビーム282を含む干渉光ビーム285を検出する。処理ユニット220は、干渉技術を使用して、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの絶対距離(例えば、図6の絶対距離ΔR)を判定する。
【0040】
図6は、本発明による実施形態の図5の光学位置トラッキングシステム500により判定された目標205の絶対位置Tを示している。図6に示すように、光ビームステアリングデバイス230の位置Sは既知である。角度Aは、入射光ビーム284が目標205によって反射されたときの角度に対応し、その反射に応じて、反射光ビーム286と基準光ビーム282の干渉によって形成される干渉光ビーム285の検出が、検出器240によって行われる。上記のように、入射光ビーム284の角度値がトラッキングされる。以下に記載する干渉技術によれば、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの絶対距離Rを判定することができる。この干渉技術は、複数の波長を使用して絶対距離を判定することを含む場合がある。従って、目標205の絶対位置は、入射光ビーム284の現在の角度(例えば、図6の角度A)、及び、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの絶対距離(例えば、図6の絶対距離R)を含む。
【0041】
光ビーム280が第1の波長λ1及び第2の波長λ2を有する場合、干渉光ビーム285は、第1の波長λ1における第1の干渉縞パターンと、第2の波長λ2における干渉縞パターンとを有する。干渉光ビーム285は、第1の干渉縞パターンと第2の干渉縞パターンに分離することができ、それによって検出器は各干渉縞パターンを検出することができる。図7は、本発明の実施形態に従って、第1の検出器によって生成された第1の干渉縞パターンに対応する信号710、及び、第2の検出器によって生成された第2の干渉縞パターンに対応する信号720を示している。また、図7には、本発明による実施形態の干渉光ビーム285に応じて、図5の検出器240によって生成された信号730も描かれている。つまり、信号730は、信号710と信号720の重ね合わせである。図7に示すように、信号710と信号720の間には、ビート信号740を発生させる位相関係がある。本発明による実施形態に使用可能な干渉技術によれば、ビート信号740を処理し、光源1と光源2の間の較正位相関係における位相ずれを判定することができる。それによって、入射光ビーム284及び反射光ビーム286が進行した長さに対する基準光ビーム282が進行した長さを判定することができ、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの絶対距離(例えば、図6の絶対距離R)を生成することができる。
【0042】
本発明による他の実施形態では、波長調節光源を使用する場合、干渉技術は、干渉パターンを周波数fbに変換する場合がある。目標205までの絶対距離は、R=(1/2)*v/rに類似した数学的関係に従って決まり、周波数fbの値によって決まる。ただし、「*」は乗算を表わし、vは光速であり、rは、波長調節光源の光周波数の変化率である。fbの変化の原因となる内部遅延誤差の影響は、較正オフセットによってRを調節することにより、簡単に補正される。
【0043】
本発明による他の実施形態において、広帯域光源を使用する場合、干渉技術は、検出器240によって収集された信号730のコヒーレント・エンベロープを処理することによって、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの絶対距離を導出する場合がある。
【0044】
図2及び図5には、光ビームステアリングデバイスを使用した二次元目標トラッキングを例示したが、3つ目の次元における光ビームステアリングデバイスを追加することにより、本発明による実施形態は、三次元目標トラッキングに拡張することも可能である。
【0045】
光学位置トラッキングシステム200及び500は多数の利点を有する。目標の移動は、二次元でトラッキングすることも三次元でトラッキングすることもでき、光学位置トラッキングシステム500の場合は、目標の絶対位置データを生成することができ、光学位置トラッキングシステム200の場合は、目標の相対位置データを生成することができる。従来技術の位置トラッキングシステムでは、目標の新たな位置の判定が、目標の以前の位置に依存する。目標が、トラッキングできない態様で移動した場合(例えば、表面からマウスを持ち上げる等)、従来技術の相対位置トラッキングシステムは、目標がトラッキング可能な態様で移動するまで、目標の新たな位置を判定することができない。これに対し、光学位置トラッキングシステム500は、光ビーム掃引空間において目標が手書き態様で移動する場合でも、以前の位置とは無関係に絶対位置データから目標の現在位置を得ることができ、コンピュータシステムへの手書き入力が容易になる。光学位置トラッキングシステム500の光ビーム掃引空間の範囲外に目標が移動した場合でも(例えば、光ビーム掃引空間の上に目標を持ち上げることにより)、目標が光学位置トラッキングシステム500の光ビーム掃引空間の範囲内に移動した後直ぐに、目標の絶対位置を判定することが可能である。
【0046】
更に、光学位置トラッキングシステム200及び500は、目標の高分解能トラッキングが可能であり、また、特定表面タイプの目標に制限されることもない。例えば、従来技術による機械式トラック・ボールマウスは、滑らかな表面でなければ適切な動作をさせることができず、また、従来技術の光学マウスは、純白の表面で使用することが困難である。光学位置トラッキングシステム200及び500は、目標に関しては消極的であり、あまり制約がない。光学位置トラッキングシステム200及び500によれば、小型で、低コストで、低消費電力な実施形態が可能である。また、光学位置トラッキングシステム200及び500は、簡単に拡張可能でもある。図2及び図5に示した構成要素の数は、狭い範囲の用途においても広い範囲の用途においても、目標の移動をトラッキングするのに十分な数である。ただし、それらの用途においては、構成要素の性能要件が異なる場合がある。
【0047】
図8Aは、本発明による実施形態の光ビームの円形断面800Aを示している。この円形断面800Aを有する光ビームは、光学位置トラッキングシステム200(図2)及び500(図5)に使用することができる。円形断面800Aを小さくするほど、光学位置トラッキングシステム200(図2)及び500(図5)の分解能は向上する。
【0048】
図8Bは、本発明による実施形態の光ビームの楕円形断面800Bを示している。楕円形断面800Bを有する光ビームを光学位置トラッキングシステム200(図2)及び500(図5)に使用すると、光ビームステアリングデバイスの掃引方向に対して垂直に目標205が移動した場合でも、多少のトラッキング誤差が許容される。楕円形断面800Bは掃引方向に対して垂直方向に長いので、光学位置トラッキングシステム200(図2)及び500(図5)のトラッキング範囲を掃引方向に対して垂直な方向に拡大することができる。
【0049】
図9は、本発明による実施形態の限定掃引モードで動作する図2の光学位置トラッキングシステム200を示している。図2における光ビームステアリングデバイス230は、角度範囲290全体にわたって掃引してるが、図9における光ビームステアリングデバイス230は、限られた角度範囲295しか掃引しない。この限定掃引モードによれば、目標205を見付ける速度を向上させることができ、また、分解能を向上させることができる。
【0050】
実際には、光ビームステアリングデバイス230は最初は、全掃引モード(例えば、角度範囲290全体)で動作する。ただし、光ビームステアリングデバイスに対して第1の角度において目標205がいったん見付かると、光ビームステアリングデバイス230は、入射光ビーム284が種々の角度位置(例えば、284A〜284C)にあるかのように、第1の角度を中心として限られた角度範囲295だけを掃引する。光ビームステアリング230のこのうろたえたような動きによれば、短期間における目標の動きがあまり大きくないと予想される場合に、大きな利点が得られる。限定掃引モードにおいて目標205が入射光ビームを反射しなくなると、光ビームステアリングデバイス230は、全掃引モードの動作に戻る。
【0051】
図9に関する説明は、図5の光学位置トラッキングシステム500にも同様に適用することができる。
【0052】
図10は、本発明による実施形態の目標を光学的にトラッキングする方法を示すフロー図である。
【0053】
ステップ1010では、光ビームから、基準光ビームと入射光ビームを生成する。光ビームが単一の波長しか持たない場合、目標の相対位置がトラッキングされる。光ビームが複数の波長を持つ場合、それらの波長が同時に存在することにより、すなわち、複数の波長を有する期間の存在により、目標の絶対位置をトラッキングすることができる。続いてステップ1020では、光ビームステアリングデバイスにより、ある角度範囲にわたって入射光ビームを掃引する。更に、入射光ビームの角度値を判定する。
【0054】
更に、ステップ1030では、目標が入射光ビームを反射し、反射光ビームを生成する。反射光ビームは基準光ビームと干渉し、干渉光ビームを形成する。
【0055】
ステップ1040では、データを使用し、干渉技術を使用して目標の位置を判定する。目標が入射光ビームを反射するときの入射光ビームの角度値のようなデータ、及び、光ビームステアリングデバイスから目標までの距離を提供する干渉光ビームが使用される。
【0056】
本発明による特定実施形態に関する上記の説明は、図示説明の目的で提供したものである。それらの実施形態は、本発明を開示した形態に厳密に制限するためのものでもなければ、本発明の形態を網羅するためのものでもない。上記の説明に照らして、多くの変更及び改変が可能である。それらの実施形態は、本発明の原理及びその実際の用途を最も分かり易く説明するために選択され、記載されている。それによって、当業者が、特定の用途に合わせて、本発明及び種々の実施形態に種々の変更を加えて、良好に使用できるものと考えられる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】光学位置トラッキングシステムを示す、本発明による実施形態のシステムの図である。
【図2】本発明による実施形態の目標の相対位置をトラッキングするための光学位置トラッキングシステムを示す図である。
【図3】本発明による実施形態の図2の光学位置トラッキングシステムにより判定された目標の相対位置を示す図である。
【図4】本発明による実施形態の干渉光ビームに応答して図2の検出器によって生成された信号を示す図である。
【図5】本発明による実施形態の目標の絶対位置をトラッキングするための光学位置トラッキングシステムを示す図である。
【図6】本発明による実施形態の図5の光学位置トラッキングシステムによって判定された目標の絶対位置を示す図である。
【図7】本発明による実施形態の干渉光ビームに応答して図5の光検出器によって生成された複数の信号を示す図である。
【図8A】本発明による実施形態の光ビームの円形断面を示す図である。
【図8B】本発明による実施形態の光ビームの楕円形断面を示す図である。
【図9】本発明による実施形態の限定掃引モードで動作する図2の光学位置トラッキングシステムを示す図である。
【図10】本発明による実施形態の目標を光学的にトラッキングするための方法を示すフロー図である。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2004年1月16日に出願された「Position Determination and Motion Tracking"と題するXie他による本願と同じ譲受人の米国特許出願第10/759,646号は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
背景技術
発明の分野
本発明は概して光システムに関する。具体的には、本発明は、干渉技術を使用した目標の光学的トラッキングに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術
コンピュータにデータを入力したり、コンピュータの動作をナビゲート/カーソル制御するための種々のシステム及びデバイスが開発されている。コンピュータシステムの使用の著しい成長は、こうしたシステムやデバイスの進歩に関係している可能性がある。
【0004】
それらのシステム及びデバイスは通常、複数の技術のうちの1つを使用している。技術の例には、機械式トラックボール、加速度検出、光学的画像相関、レーザースペックルパターン分析、強度検出などがある。他の技術も使用される。
【0005】
それらのシステム及びデバイスの改良はコンピュータシステムの有用性を向上させるが、それらのシステム及びデバイスにおいて実施される技術の幾つかの欠陥は、いまだにそれらのシステム及びデバイスの有用性を制限し続けている。例えば、分解能制限のある技術は、コンピュータシステムの使用の妨げになる。また、技術によっては、応答時間が遅いこともある。技術によっては、特定タイプの表面上でしか使用できないものもある。更に、技術によっては、電力消費問題が生じることもある。最後に、技術によっては、それを実施するために必要なシステムやデバイスのサイズが、不都合なサイズになることもある。
【0006】
それらの欠点の他に、こうした既存の技術には、他の問題も関係する。一般に、既存の技術は、二次元ナビゲーション/カーソル制御及び相対座標トラッキング(例えば、位置の変化)に限られる。つまり、対象の位置の変化は、対象の絶対位置(例えば、現在位置)ではなく、二次元空間でトラッキングされる。相対座標トラッキングは、絶対位置トラッキングを必要とする手書き入力のような用途におけるそれらのシステム及びデバイスの有用性を制限する。要するに、既存の技術は、克服することが困難な重大な制限を有している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
干渉技術を使用して目標を光学的にトラッキングする方法及びシステムを開示する。光学位置トラッキングシステムは、光ビームから入射光ビームと基準光ビームを生成するための光学素子を含む。また、光学位置トラッキングシステムは、ある角度範囲にわたって入射光ビームを掃引し、目標による入射光ビームの反射を引き起こし、入射光ビームの反射を基準光ビームに干渉させるように導き、干渉光ビームを生成するためのステアリングデバイスを更に含む。更に、光学位置トラッキングシステムは、入射光ビームの角度値と、干渉光ビームとを使用し、干渉技術を使用して目標の位置を判定することができ、この角度値は反射に依存する。光ビームは複数の波長を有し、それらの波長が同時に存在することにより、すなわち、複数の波長を有する期間の存在により、目標の絶対位置を判定することができる。光ビームが単一の波長を有する場合、目標の相対位置を判定することができる。
【0008】
本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付の図面は、本発明による種々の実施形態を例示するものであり、説明と合わせて、本発明による種々の実施形態の原理を説明する働きをする。
【発明を実施するための好ましい実施形態】
【0009】
発明の詳細な説明
次に、本発明による実施形態を詳細に参照する。実施形態の例は、添付の図面に例示されている。本発明はこれらの図面に関して説明されるが、それらの図面は、本発明をそれらの実施形態に制限するものではない。逆に、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の思想及び範囲に含まれるであろう代替形態、変更形態、及び、等価形態も、本発明の範囲に含めることを意図している。本発明による実施形態に関する下記の詳細な説明では、本発明を完全に理解してもらうために、多数の具体的な詳細を説明する。
【0010】
本発明による実施形態において、光学位置トラッキングシステムは、光ビームを生成する光ビーム発生器と、その光ビームから入射光ビームと基準光ビームを生成するための光学素子とを有する。また、光学位置トラッキングシステムは、ある角度範囲にわたって入射光ビームを掃引し、入射光ビームの反射を基準光ビームに干渉させるように導き、入射光ビームが目標によって反射されたときに干渉光ビームを形成するための光ビームステアリングデバイスを更に含む。入射ビームの反射は反射光ビームからなる。その他に、光学位置トラッキングシステムは、干渉光ビームを検出するための検出器と、干渉技術と、目標が入射光ビーム反射するときの入射光ビームの角度値を含むデータと、目標に対する距離を提供する干渉光ビームとを使用して目標の位置を判定するための処理ユニットとを更に含む。光ビームが複数の波長を有する場合、それらの波長が同時に存在すること、すなわち、複数の波長を有する期間の存在により、目標の絶対位置を判定することができる。光ビームが単一の波長しか持たない場合、目標の相対位置を判定することができる。
【0011】
図1は、光学位置トラッキングシステム20を示す、本発明による実施形態のシステム100を示している。システム100は、コンピュータシステム50、及び、光学位置トラッキングシステム20を含む。コンピュータシステム50は表示装置60を有する。
【0012】
本発明によるこの実施形態において、光学位置トラッキングシステム20は、目標10が二次元空間内を移動するときに、目標10の位置をトラッキングする。具体的には、位置トラッキングシステムは、二次元空間内の或る角度範囲20にわたって掃引される少なくとも1つの光ビーム90を使用する。光ビーム90が動かされる二次元空間内において目標10が左、右、前、後、又はそれらの任意の組み合わせに移動する際に、目標10は、光ビーム90を反射する場合がある。光ビーム90の反射は反射光ビーム80からなり、目標10の位置をトラッキングするために、反射光ビーム80は位置トラッキングシステム20によって受信され、処理される。
【0013】
目標10は、どのようなタイプの対象物であってもよい。例えば、目標10は、マウス型デバイス、ペン、タッチスクリーン入力型デバイス、指などであってもよい。目標10上の逆反射(再帰反射)表面は、光学位置トラッキングシステム20が目標10の移動をトラッキングする能力を向上させる。目標10が十分に大きな反射特性を有している場合、逆反射表面は不要な場合もある。
【0014】
目標10の位置に対応する位置データを生成することにより光学位置トラッキングシステム20によってトラッキングされる目標10の移動は、コンピュータシステム50への入力データ(例えば、手書き入力)、表示装置60上でのナビゲーション、又は、コンピュータシステム50のカーソルの制御などに使用することができる。
【0015】
本発明の他の実施形態では、目標10が表示装置60の表面で動き回る場合に、タッチスクリーン機能を提供するために、光学位置トラッキングシステム20は表示装置60に一体化される場合がある。この実施形態は、従来技術によるタッチスクリーンに比べて、コストが低く、複雑度も低い。
【0016】
構造(相対位置トラッキング実施形態)
図2を参照すると、この図は、本発明による実施形態の目標205の相対位置をトラッキングするための光学位置トラッキングシステム200を示している。下記の説明は、本発明による実施形態の物理的構造の説明から開始される。その説明の後、本発明による実施形態の動作の説明が続く。
【0017】
本発明による実施形態の物理的構造に関し、図2は、本発明による実施形態の目標205の相対位置をトラッキングするための光学位置トラッキングシステム200を示している。相対位置は極座標で判定される。「相対位置」とは、以前の位置に対する目標205の位置の変化を指す。図2に示すように、光学位置トラッキングシステム200は、光ビーム発生器210、光学素子260、ミラー270、光ビームステアリングデバイス230、検出器240、焦点レンズ250、及び、処理ユニット220を含む。要するに、光ビームステアリングデバイス230に対する目標205の角度関係は、検出器240と協働して判定される。更に、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの相対距離は干渉技術を使用して判定され、この干渉技術は、目標205からの反射光ビーム286を基準光ビーム282と干渉させることにより形成された干渉光ビーム250を利用する。干渉光ビーム250が形成される理由は、反射光ビーム286と基準光ビーム282が、異なる長さの経路に沿って伝搬するからである。従って、基準光ビーム282と反射光ビーム286を結合すると(例えば、干渉光ビーム250)、明るい干渉縞と暗い干渉縞からなる干渉パターンが形成され、それが検出器240によって受信される。経路長の差の変化に応じて、その明るい干渉縞と暗い干渉縞はシフトする。従って、目標205の相対位置は、目標205のこの角度関係、及び、目標205のこの相対距離によって表現される。
【0018】
光ビーム発生器210は光ビーム280を生成する。光ビーム発生器210は、光ビーム280を生成する光源212を有する。光ビーム280は、コヒーレントな光であり、単一の波長λを有する。また、光ビーム発生器210はコリメートレンズ214を更に有する。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、光源(例えば、光源212)には、低コストなLED(発光ダイオード)技術に基づくものを使用することができる。本発明の他の実施形態では、光源には、VCSEL(面発光レーザー)技術に基づくものを使用することができる。本発明による更に他の実施形態では、光源には、適当なコリメート機能を備えた低コストな白熱灯技術に基づくものを使用することができる。本発明による更に他の実施形態によれば、光源には、ハイパワー希土類レーザーに基づくものを使用することができる。希土類レーザーの例には、Nd−YAG(ニオデューム・イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーや、パルス型エルビウム・レーザーがある。ハイパワー希土類レーザーを使用することができるのは、目標205と検出器の間の距離又は吸収作用に、比較的高い光パワーが必要とされるような場合である。
【0020】
光学素子260は、光ビーム280を使用して、入射光ビーム280と基準光ビーム282を生成する。本発明による一実施形態において、光学素子260はビームスプリッタ260である。
【0021】
図2を引き続き参照すると、光ビームステアリングデバイス230は、角度範囲290にわたって入射光ビーム284を掃引する。光ビームステアリングデバイス230によって行われる入射光ビーム284の掃引動作を示すために、図2には、種々の角度位置(例えば、284A〜284E)における入射光ビームが描かれている。また、目標205や光ビームステアリングデバイス230に対する入射光ビーム284の角度もトラッキングされる。これは図3に示され、後で詳細に説明される。
【0022】
続いて、光ビームステアリングデバイス230は、どのようなタイプの光ビームステアリングデバイスであってもよい。本発明による一実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、MEMS(微小電気機械システム)モータ・ビームステアリングデバイスである。本発明による他の実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、ガルバノメータ・ビームステアリングデバイスである。本発明による更に他の実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、音響光学・ビームステアリングデバイスである。本発明による他の実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、電気光学的ビームステアリングデバイスである。本発明による更に他の実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、格子構造ビームステアリングデバイスである。本発明による他の実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、ホログラフィック構造ビームステアリングデバイスである。本発明による他の実施形態において、光ビームステアリングデバイスは、走査ミラー・ビームステアリングデバイスである。MEMS処理により、実質的なコスト及びサイズの節約が実現される。
【0023】
図2に示すように、目標205は、入射光ビーム284を反射させるための逆反射表面207を有する。「逆反射(再帰反射)」という用語は、入射光ビームがその入射光ビームに対して平行に反射される特性を指す。逆反射表面207は、逆反射テープ、逆反射塗装、又は、目標205の表面に結合される任意の他の逆反射材料のように、どのような態様で実施してもよい。上記のように、目標205は、どのようなタイプの対象物であってもよい。例えば、目標205は、マウス型デバイス、ペン、タッチスクリーン入力型デバイス、指などであってよい。目標205が十分に大きな反射特性を有していれば、目標205が、入射光ビームをその入射光ビームに対して平行に反射する限り、逆反射面は不要な場合もある。例えば、書く方の一端に逆反射面を有するオフィスペンの動きをトラッキングし、コンピュータシステムのカーソル制御に使用することが可能である。
【0024】
また、処理ユニット220は、光ビームステアリングデバイス230、検出器240、及び、光ビーム発生器210に接続される。処理ユニット220は、種々のデータ及び干渉技術を使用して、目標205の相対位置を判定する。
【0025】
動作(相対位置トラッキング実施形態)
以下では、本発明による実施形態の動作を詳細に説明する。
【0026】
次に、図2を参照し、光学位置トラッキングシステム200の動作の説明を続ける。光源212は光ビーム280を生成する。光ビーム280はコリメートレンズ214を通過し、コリメートレンズ214は光ビーム280を平行化する。コリメートレンズ214を通過した後、光ビーム280はビームスプリッタ260へ向けて伝搬する。ビームスプリッタ260は、光ビーム280を使用して、入射光ビーム284と基準光ビーム282を生成する。基準光ビーム282はミラー270へ導かれる。ミラー270は、基準光ビーム282をビームスプリッタ260へ向けて反射させ、その後、基準光ビーム282は検出器240へ向かう。
【0027】
更に、入射光ビーム284は、光ビームステアリングデバイス230へ導かれる。光ビームステアリングデバイス230は、入射光ビーム284が種々の角度位置(例えば、284A〜284E)にあるかのように、角度範囲290にわたって入射光ビーム284を掃引する。図中、矢印235A及び235Bは、角度範囲290にわたって入射光ビーム284が掃引されるように、光ビームステアリングデバイス230が動いていることを示している。
【0028】
目標205の逆反射表面207が入射ビーム284(例えば284C)を反射するとき、入射光ビーム284Cの反射は、光ビームステアリングデバイス230へ向けて反射される。入射光ビーム284Cの反射は、反射光ビーム286からなる。光ビームステアリングデバイス230は反射光ビーム286をビームスプリッタ260へ導き、基準光ビーム282と干渉させ、干渉光ビーム285を形成する。干渉光ビーム285は集束レンズ250を通過し、集束レンズ250は干渉光ビーム285を集束させ、それが検出器240に達する。検出器240は、干渉光ビーム285を検出し、目標205が見付かったことを処理ユニット220に知らせ、処理ユニット220が、入射光ビーム284Cの現在の角度(例えば、図3の角度A)を記録できるようにする。本発明による一実施形態において、処理ユニット220は、光ビームステアリングデバイス230により掃引される入射光ビーム284の角度をトラッキングする。
【0029】
検出器240は、反射光ビーム286と基準光ビーム282とを含む干渉光ビーム285を検出する。処理ユニット220は、干渉技術を使用して、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの相対距離(例えば、図3の相対距離ΔR)を判定する。
【0030】
図3は、本発明による実施形態の光学位置トラッキングシステム200により判定された目標205の相対位置Tを示している。図3に示すように、光ビームステアリングデバイス230の位置Sは既知である。角度Aは、入射光ビーム284が目標205によって反射されたときの角度に対応し、その反射に応じて、反射ビームと基準光ビーム282の干渉によって形成される干渉光ビーム285の検出が、検出器240によって行われる。上で述べたように、入射光ビーム284の角度値がトラッキングされる。以下で説明する干渉技術によれば、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの相対距離ΔRを判定することができる。この干渉技術は、光源212の波長、及び、干渉光ビーム285(例えば、図4の信号410)の干渉縞のカウントを利用する場合がある。従って、目標205の相対位置は、入射光ビーム284の現在の角度(例えば、図3の角度A)、及び、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの相対距離(例えば、図3の相対距離ΔR)を含む。
【0031】
図4は、本発明による実施形態の干渉光ビーム285に応答して、図2の検出器240によって生成される信号410を示している。図4に示すように、信号410のピークは、干渉光ビーム285の干渉縞に対応する。本発明による実施形態において使用可能な干渉技術によれば、基準点を通過する干渉縞の数がカウントされる。光源212の数及び波長は、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの相対距離(例えば、図3の相対距離ΔR)を算出する際に使用される、入射光ビーム284や反射光ビーム286が進行した長さと基準光ビーム282が進行した長さの差の判定に使用される。基準光ビーム282は、既知の距離を進行する一方、入射光ビーム284及び反射光ビーム286は、測定すべき距離を伝搬する。
【0032】
構造(絶対位置トラッキング実施形態)
図5を参照すると、この図は、本発明による実施形態の目標205の絶対位置をトラッキングするための光学位置トラッキングシステム500を示している。下記の説明は、本発明による実施形態の物理的構造の説明から開始される。その後、本発明の実施形態の動作に関する説明が続く。
【0033】
本発明による実施形態の物理的構造に関し、図5は、本発明の実施形態による目標205の絶対位置をトラッキングするための光学位置トラッキングシステム500を示している。図5に示すように、光学位置トラッキングシステム500は、光ビーム発生器210、光学素子260、ミラー270、光ビームステアリングデバイス230、検出器240、集束レンズ250、及び、処理ユニット220を含む。要するに、光ビームステアリングデバイス230に対する目標205の角度関係は、検出器240に関係して判定される。また、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの絶対距離は、複数の波長を有する光ビーム、及び、目標205からの反射光ビームと基準光ビームの干渉によって形成される干渉光ビームを利用する干渉技術を使用して判定される。干渉光ビームが形成される理由は、反射光ビームと基準光ビームが異なる長さの経路に沿って伝搬するからである。従って、目標205の絶対位置は、目標205のこの角度関係、及び、目標205のこの絶対距離によって表現される。
【0034】
図2の光学位置トラッキングシステム200は、目標205の相対位置をトラッキング出来るのに対し、光学位置トラッキングシステム500は、目標205の絶対位置をトラッキング出来る。特にことわりがない限り、図2に関する構造に関する説明は、図5にも適用される。
【0035】
図2とは違い、図5の光学位置トラッキングシステム500は、複数の波長(例えば、λ1とλ2)を有する光ビーム280を生成する光ビーム発生器210を有する。本発明による一実施形態において、光ビーム発生器210は、第1の波長λ1を有する光源1と、第2の波長λ2を有する光源とを含む。本発明による他の実施形態において、光ビーム発生器210は、第1の波長λ1及び第2の波長λ2を有する光源を含む。本発明による他の実施形態において、光源の光波長は、第1の波長λ1と第2の波長λ2の間で高速に変化する。つまり、ある期間の間、光源は複数の波長を有する。本発明による更に他の実施形態において、光ビーム発生器210は、第1の波長と第2の波長の間の複数の波長を有する広帯域光源を含む。この広帯域光源によれば、他の実施形態に比べてコストを節約することが出来る。図2に関して述べた光源タイプに関する説明は、図5にも同じように適用可能である。
【0036】
本発明による他の実施形態において、光学位置トラッキングシステム500は、異なる波長(例えば、λ1とλ2)の干渉光ビーム285の干渉パターンを個別に検出するために、複数の検出器を有する。
【0037】
動作(絶対位置トラッキング実施形態)
以下の説明は、本発明による実施形態の動作を詳細に説明するものである。
【0038】
図5を参照し、図2を参照して説明したものに類似した光学位置トラッキングシステム500の動作の説明に移る。以下では特にことわりがない限り、図2に関する動作説明は、図5にも適用される。目標205のトラッキングを開始する前に、光源1の波長λ1と光源2の波長λ2を測定し、位相関係を判定する。光ビーム280は複数の波長を有する。
【0039】
検出器240は、反射光ビーム286と基準光ビーム282を含む干渉光ビーム285を検出する。処理ユニット220は、干渉技術を使用して、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの絶対距離(例えば、図6の絶対距離ΔR)を判定する。
【0040】
図6は、本発明による実施形態の図5の光学位置トラッキングシステム500により判定された目標205の絶対位置Tを示している。図6に示すように、光ビームステアリングデバイス230の位置Sは既知である。角度Aは、入射光ビーム284が目標205によって反射されたときの角度に対応し、その反射に応じて、反射光ビーム286と基準光ビーム282の干渉によって形成される干渉光ビーム285の検出が、検出器240によって行われる。上記のように、入射光ビーム284の角度値がトラッキングされる。以下に記載する干渉技術によれば、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの絶対距離Rを判定することができる。この干渉技術は、複数の波長を使用して絶対距離を判定することを含む場合がある。従って、目標205の絶対位置は、入射光ビーム284の現在の角度(例えば、図6の角度A)、及び、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの絶対距離(例えば、図6の絶対距離R)を含む。
【0041】
光ビーム280が第1の波長λ1及び第2の波長λ2を有する場合、干渉光ビーム285は、第1の波長λ1における第1の干渉縞パターンと、第2の波長λ2における干渉縞パターンとを有する。干渉光ビーム285は、第1の干渉縞パターンと第2の干渉縞パターンに分離することができ、それによって検出器は各干渉縞パターンを検出することができる。図7は、本発明の実施形態に従って、第1の検出器によって生成された第1の干渉縞パターンに対応する信号710、及び、第2の検出器によって生成された第2の干渉縞パターンに対応する信号720を示している。また、図7には、本発明による実施形態の干渉光ビーム285に応じて、図5の検出器240によって生成された信号730も描かれている。つまり、信号730は、信号710と信号720の重ね合わせである。図7に示すように、信号710と信号720の間には、ビート信号740を発生させる位相関係がある。本発明による実施形態に使用可能な干渉技術によれば、ビート信号740を処理し、光源1と光源2の間の較正位相関係における位相ずれを判定することができる。それによって、入射光ビーム284及び反射光ビーム286が進行した長さに対する基準光ビーム282が進行した長さを判定することができ、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの絶対距離(例えば、図6の絶対距離R)を生成することができる。
【0042】
本発明による他の実施形態では、波長調節光源を使用する場合、干渉技術は、干渉パターンを周波数fbに変換する場合がある。目標205までの絶対距離は、R=(1/2)*v/rに類似した数学的関係に従って決まり、周波数fbの値によって決まる。ただし、「*」は乗算を表わし、vは光速であり、rは、波長調節光源の光周波数の変化率である。fbの変化の原因となる内部遅延誤差の影響は、較正オフセットによってRを調節することにより、簡単に補正される。
【0043】
本発明による他の実施形態において、広帯域光源を使用する場合、干渉技術は、検出器240によって収集された信号730のコヒーレント・エンベロープを処理することによって、光ビームステアリングデバイス230から目標205までの絶対距離を導出する場合がある。
【0044】
図2及び図5には、光ビームステアリングデバイスを使用した二次元目標トラッキングを例示したが、3つ目の次元における光ビームステアリングデバイスを追加することにより、本発明による実施形態は、三次元目標トラッキングに拡張することも可能である。
【0045】
光学位置トラッキングシステム200及び500は多数の利点を有する。目標の移動は、二次元でトラッキングすることも三次元でトラッキングすることもでき、光学位置トラッキングシステム500の場合は、目標の絶対位置データを生成することができ、光学位置トラッキングシステム200の場合は、目標の相対位置データを生成することができる。従来技術の位置トラッキングシステムでは、目標の新たな位置の判定が、目標の以前の位置に依存する。目標が、トラッキングできない態様で移動した場合(例えば、表面からマウスを持ち上げる等)、従来技術の相対位置トラッキングシステムは、目標がトラッキング可能な態様で移動するまで、目標の新たな位置を判定することができない。これに対し、光学位置トラッキングシステム500は、光ビーム掃引空間において目標が手書き態様で移動する場合でも、以前の位置とは無関係に絶対位置データから目標の現在位置を得ることができ、コンピュータシステムへの手書き入力が容易になる。光学位置トラッキングシステム500の光ビーム掃引空間の範囲外に目標が移動した場合でも(例えば、光ビーム掃引空間の上に目標を持ち上げることにより)、目標が光学位置トラッキングシステム500の光ビーム掃引空間の範囲内に移動した後直ぐに、目標の絶対位置を判定することが可能である。
【0046】
更に、光学位置トラッキングシステム200及び500は、目標の高分解能トラッキングが可能であり、また、特定表面タイプの目標に制限されることもない。例えば、従来技術による機械式トラック・ボールマウスは、滑らかな表面でなければ適切な動作をさせることができず、また、従来技術の光学マウスは、純白の表面で使用することが困難である。光学位置トラッキングシステム200及び500は、目標に関しては消極的であり、あまり制約がない。光学位置トラッキングシステム200及び500によれば、小型で、低コストで、低消費電力な実施形態が可能である。また、光学位置トラッキングシステム200及び500は、簡単に拡張可能でもある。図2及び図5に示した構成要素の数は、狭い範囲の用途においても広い範囲の用途においても、目標の移動をトラッキングするのに十分な数である。ただし、それらの用途においては、構成要素の性能要件が異なる場合がある。
【0047】
図8Aは、本発明による実施形態の光ビームの円形断面800Aを示している。この円形断面800Aを有する光ビームは、光学位置トラッキングシステム200(図2)及び500(図5)に使用することができる。円形断面800Aを小さくするほど、光学位置トラッキングシステム200(図2)及び500(図5)の分解能は向上する。
【0048】
図8Bは、本発明による実施形態の光ビームの楕円形断面800Bを示している。楕円形断面800Bを有する光ビームを光学位置トラッキングシステム200(図2)及び500(図5)に使用すると、光ビームステアリングデバイスの掃引方向に対して垂直に目標205が移動した場合でも、多少のトラッキング誤差が許容される。楕円形断面800Bは掃引方向に対して垂直方向に長いので、光学位置トラッキングシステム200(図2)及び500(図5)のトラッキング範囲を掃引方向に対して垂直な方向に拡大することができる。
【0049】
図9は、本発明による実施形態の限定掃引モードで動作する図2の光学位置トラッキングシステム200を示している。図2における光ビームステアリングデバイス230は、角度範囲290全体にわたって掃引してるが、図9における光ビームステアリングデバイス230は、限られた角度範囲295しか掃引しない。この限定掃引モードによれば、目標205を見付ける速度を向上させることができ、また、分解能を向上させることができる。
【0050】
実際には、光ビームステアリングデバイス230は最初は、全掃引モード(例えば、角度範囲290全体)で動作する。ただし、光ビームステアリングデバイスに対して第1の角度において目標205がいったん見付かると、光ビームステアリングデバイス230は、入射光ビーム284が種々の角度位置(例えば、284A〜284C)にあるかのように、第1の角度を中心として限られた角度範囲295だけを掃引する。光ビームステアリング230のこのうろたえたような動きによれば、短期間における目標の動きがあまり大きくないと予想される場合に、大きな利点が得られる。限定掃引モードにおいて目標205が入射光ビームを反射しなくなると、光ビームステアリングデバイス230は、全掃引モードの動作に戻る。
【0051】
図9に関する説明は、図5の光学位置トラッキングシステム500にも同様に適用することができる。
【0052】
図10は、本発明による実施形態の目標を光学的にトラッキングする方法を示すフロー図である。
【0053】
ステップ1010では、光ビームから、基準光ビームと入射光ビームを生成する。光ビームが単一の波長しか持たない場合、目標の相対位置がトラッキングされる。光ビームが複数の波長を持つ場合、それらの波長が同時に存在することにより、すなわち、複数の波長を有する期間の存在により、目標の絶対位置をトラッキングすることができる。続いてステップ1020では、光ビームステアリングデバイスにより、ある角度範囲にわたって入射光ビームを掃引する。更に、入射光ビームの角度値を判定する。
【0054】
更に、ステップ1030では、目標が入射光ビームを反射し、反射光ビームを生成する。反射光ビームは基準光ビームと干渉し、干渉光ビームを形成する。
【0055】
ステップ1040では、データを使用し、干渉技術を使用して目標の位置を判定する。目標が入射光ビームを反射するときの入射光ビームの角度値のようなデータ、及び、光ビームステアリングデバイスから目標までの距離を提供する干渉光ビームが使用される。
【0056】
本発明による特定実施形態に関する上記の説明は、図示説明の目的で提供したものである。それらの実施形態は、本発明を開示した形態に厳密に制限するためのものでもなければ、本発明の形態を網羅するためのものでもない。上記の説明に照らして、多くの変更及び改変が可能である。それらの実施形態は、本発明の原理及びその実際の用途を最も分かり易く説明するために選択され、記載されている。それによって、当業者が、特定の用途に合わせて、本発明及び種々の実施形態に種々の変更を加えて、良好に使用できるものと考えられる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】光学位置トラッキングシステムを示す、本発明による実施形態のシステムの図である。
【図2】本発明による実施形態の目標の相対位置をトラッキングするための光学位置トラッキングシステムを示す図である。
【図3】本発明による実施形態の図2の光学位置トラッキングシステムにより判定された目標の相対位置を示す図である。
【図4】本発明による実施形態の干渉光ビームに応答して図2の検出器によって生成された信号を示す図である。
【図5】本発明による実施形態の目標の絶対位置をトラッキングするための光学位置トラッキングシステムを示す図である。
【図6】本発明による実施形態の図5の光学位置トラッキングシステムによって判定された目標の絶対位置を示す図である。
【図7】本発明による実施形態の干渉光ビームに応答して図5の光検出器によって生成された複数の信号を示す図である。
【図8A】本発明による実施形態の光ビームの円形断面を示す図である。
【図8B】本発明による実施形態の光ビームの楕円形断面を示す図である。
【図9】本発明による実施形態の限定掃引モードで動作する図2の光学位置トラッキングシステムを示す図である。
【図10】本発明による実施形態の目標を光学的にトラッキングするための方法を示すフロー図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビーム(280)から入射光ビーム(284)と基準光ビーム(282)を生成するための光学素子(260)と、
前記入射光ビームを或る角度範囲(290)にわたって掃引し、目標(205)による前記入射光ビーム(284)の反射を引き起こす光ビームステアリングデバイス(230)と
を含み、前記入射光ビーム(284)の前記反射(286)が前記基準光ビーム(282)と干渉し、干渉光ビーム(250)を形成するように導かれ、前記入射光ビーム(284)の角度値と、前記干渉光ビーム(250)とを使用し、干渉技術を使用して前記目標(205)の位置が判定され、前記角度値が前記反射(286)に依存する、光学位置トラッキングシステム(200,500)。
【請求項2】
前記目標(205)の位置を判定するための処理ユニット(220)を更に含む、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(200,500)。
【請求項3】
前記光ビーム(280)は単一の波長を有し、前記目標(205)の位置は相対位置である、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(200)。
【請求項4】
前記光ビーム(280)は複数の波長を有し、前記目標(205)の位置は絶対位置である、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(500)。
【請求項5】
前記目標(205)は逆反射表面(207)を有する、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(200,500)。
【請求項6】
前記目標(205)は、前記入射光ビーム(284)が特定の角度値にあるときに、前記入射光ビームを反射し、前記光ビームステアリングデバイスは、前記目標(205)が前記入射光ビーム(284)を反射しなくなるまで、前記特定の角度を含む限られた角度範囲にわたって前記入射光ビーム(284)を掃引する、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(200)。
【請求項7】
前記光ビームステアリングデバイス(230)は、MEMS(微小電気機械システム)モータビームステアリングデバイス、ガルバノメータ・ビームステアリングシステム、音響光学ビームステアリングデバイス、電気光学ビームステアリングデバイス、格子構造ビームステアリングデバイス、ホログラフィック構造ビームステアリングデバイス、及び、走査ミラー・ビームステアリングデバイスのうちのいずれか1つである、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(200,500)。
【請求項8】
前記光ビーム(280)は、白熱灯技術に基づく光源、LED(発光ダイオード)技術に基づく光源、半導体レーザー技術に基づく光源、及び、希土類レーザー技術に基づく光源からなるグループの中から選択された1つの光源によって生成される、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(200,500)。
【請求項1】
光ビーム(280)から入射光ビーム(284)と基準光ビーム(282)を生成するための光学素子(260)と、
前記入射光ビームを或る角度範囲(290)にわたって掃引し、目標(205)による前記入射光ビーム(284)の反射を引き起こす光ビームステアリングデバイス(230)と
を含み、前記入射光ビーム(284)の前記反射(286)が前記基準光ビーム(282)と干渉し、干渉光ビーム(250)を形成するように導かれ、前記入射光ビーム(284)の角度値と、前記干渉光ビーム(250)とを使用し、干渉技術を使用して前記目標(205)の位置が判定され、前記角度値が前記反射(286)に依存する、光学位置トラッキングシステム(200,500)。
【請求項2】
前記目標(205)の位置を判定するための処理ユニット(220)を更に含む、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(200,500)。
【請求項3】
前記光ビーム(280)は単一の波長を有し、前記目標(205)の位置は相対位置である、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(200)。
【請求項4】
前記光ビーム(280)は複数の波長を有し、前記目標(205)の位置は絶対位置である、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(500)。
【請求項5】
前記目標(205)は逆反射表面(207)を有する、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(200,500)。
【請求項6】
前記目標(205)は、前記入射光ビーム(284)が特定の角度値にあるときに、前記入射光ビームを反射し、前記光ビームステアリングデバイスは、前記目標(205)が前記入射光ビーム(284)を反射しなくなるまで、前記特定の角度を含む限られた角度範囲にわたって前記入射光ビーム(284)を掃引する、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(200)。
【請求項7】
前記光ビームステアリングデバイス(230)は、MEMS(微小電気機械システム)モータビームステアリングデバイス、ガルバノメータ・ビームステアリングシステム、音響光学ビームステアリングデバイス、電気光学ビームステアリングデバイス、格子構造ビームステアリングデバイス、ホログラフィック構造ビームステアリングデバイス、及び、走査ミラー・ビームステアリングデバイスのうちのいずれか1つである、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(200,500)。
【請求項8】
前記光ビーム(280)は、白熱灯技術に基づく光源、LED(発光ダイオード)技術に基づく光源、半導体レーザー技術に基づく光源、及び、希土類レーザー技術に基づく光源からなるグループの中から選択された1つの光源によって生成される、請求項1に記載の光学位置トラッキングシステム(200,500)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2007−522652(P2007−522652A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549547(P2006−549547)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/000900
【国際公開番号】WO2005/070166
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(506076606)アバゴ・テクノロジーズ・ジェネラル・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド (129)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/000900
【国際公開番号】WO2005/070166
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(506076606)アバゴ・テクノロジーズ・ジェネラル・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド (129)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]