説明

干渉計及び分光分析装置

【課題】安定的に干渉光を形成することができる干渉計と、干渉計を有する分光分析装置を提供する。
【解決手段】分光分析装置10では、光源11から出射された光が、光ファイバF1〜F28により伝送される。光源11から出射される光は、第1光ファイバF1で伝送され、第1ファイバカプラFC1で分岐される。分岐された各光は、固定鏡16及び可動鏡14で反射し、各鏡14,16で反射した反射光が、第6ファイバカプラFC6で合波されることで干渉光が生成される。光源11から第6ファイバカプラFC6までに存在する各ファイバカプラFC1〜FC6では、光源11からの光がクロスポートを2回ずつ通過し、ストレートポートを3回ずつ通過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉計及び分光分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、FT−IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)等、マイケルソン干渉計を用いた分光分析装置が知られている。特許文献1の分光分析装置では、マイケルソン干渉計において、光源から出射した光を分岐させて固定鏡と可動鏡とでそれぞれ反射させた後に、これらの反射光を互いに合波させて干渉光を生成する。
【0003】
この分光分析装置では、試料を透過した干渉光を検出器で受光し、受光した干渉光を光電変換した後にフーリエ変換することで、試料に吸収された光の波長及び吸収量を検出する。この分光分析装置では、こうして検出された光の波長及び吸収量に基づいて、試料の原子・分子構造や量等を特定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10―176952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の分光分析装置の干渉計では、光を空間内において伝送させているため、光を安定して伝送することができない場合があり、このような場合には干渉光を安定して形成することができない。したがって、こうした干渉計を用いて分光分析を行うと、測定対象物の分析精度が低下する。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、干渉光を安定して形成することができる干渉計と、干渉計を有する分光分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、広帯域光を出射する光源と、前記光源からの光を伝送する光ファイバと、前記光ファイバにより伝送された光を分岐させる分岐用ファイバカプラと、前記分岐された各光をそれぞれ反射させる固定鏡及び可動鏡と、前記各鏡で反射した各反射光を互いに合波して干渉光を生成する干渉光用ファイバカプラとを備え、前記光源から前記光が合波されるまでの光路に存在するファイバカプラは、前記光源からの光がクロスポートを同一回数ずつ通過し、且つストレートポートを同一回数ずつ通過するように接続されている。
【0008】
上記構成の干渉計では、光ファイバを用いて光を伝送させるため、干渉光を生成するための光を安定して伝送させることができる。
また、上記構成では、光ファイバを用いて干渉計を構成するため、光を固定鏡及び可動鏡へと分岐させる手段として、ファイバカプラが用いられるとともに、各鏡で反射した光を合波させる手段としてファイバカプラが用いられる。ファイバカプラでは、図4に示すように、光ファイバFを通じてファイバカプラFCに流入した光が、光が流入したコアCOと連続しているコアCOを有するストレートポート側の光ファイバFと、コアCOがクラッドCLを介して接続されているクロスポート側の光ファイバFとに分岐して流れる。
【0009】
ここで、ファイバカプラによっては、クロスポート側とストレートポート側における光の分岐比率が異なる場合がある。そのため、こうしたファイバカプラを用いると、固定鏡及び可動鏡のそれぞれで反射した各反射光が伝送される経路によっては、合波される2つの反射光の強度が異なることがある。このような場合、2つの光の干渉バランスが崩れて干渉光を適切に生成することができない。そのため、例えば、こうして生成された干渉光を試料に入射させて試料の分析を行う場合には、その分析精度が低下する。特に、試料の定量分析を行う場合には、試料の吸収量を精密に検出する必要があるため、試料に入射する干渉光を適切に生成することができないと、分析精度が低下するといった問題が深刻となる。
【0010】
そこで、上記構成では、光源からの光が合波されるまでに、ファイバカプラのクロスポートを同一回数ずつ通過し、且つストレートポートを同一回数ずつ通過するようにしている。これにより、干渉光用ファイバカプラで合波される2つの光の強度が互いに等しくなるため、合波される光の干渉バランスが保たれ、干渉光を適切に生成することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記各反射光が前記干渉光用ファイバカプラで互いに同位相で合波されるように、前記各反射光の位相を調整する干渉光用の位相調整手段を備える。
【0012】
上記構成によれば、干渉光用ファイバカプラで合波される2つの光は、互いに強度が等しいことに加えて、位相が等しい。したがって、より適切に干渉し合った干渉光を生成することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の干渉計と、前記生成された干渉光を測定光として、測定対象物透過後又は反射後の前記測定光の強度を検出する測定光検出手段とを備える。
【0014】
上記構成では、適切に生成された干渉光を測定光とし、この測定光の測定対象物透過後又は反射後の測定光の強度を検出する。したがって、検出された測定光の強度に基づいて測定対象物の分析を行うことにより、測定対象物の分析精度を向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記各鏡で反射した各反射光を互いに合波して参照光を生成する参照光用ファイバカプラと、前記参照光の強度を検出する参照光検出手段と、前記測定光検出手段による検出結果と前記参照光検出手段による検出結果とを比較する比較手段とを備え、前記光源から前記光が参照光として合波されるまでの光路に存在するファイバカプラは、前記光源からの光がクロスポートを同一回数ずつ通過し、且つストレートポートを同一回数ずつ通過するように接続されている。
【0016】
上記構成によれば、参照光用ファイバカプラで合波される2つの光の強度が互いに等しくなるため、合波される2つの光の干渉バランスが保たれ、干渉光を適切に生成することができる。比較手段は、こうして生成された参照光と測定対象物透過後又は反射後の測定光との比較を行うため、測定対象物透過後又は反射後の測定光の量をより適切に検出することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記各反射光が前記参照光用ファイバカプラで互いに逆位相で合波されるように、前記各反射光の位相を調整する参照光用の位相調整手段を備える。
【0018】
上記構成によれば、逆位相の光が参照光用ファイバカプラで合波されるため、光が伝送される際に生じるノイズに相当する波形を有する参照光を得ることができる。したがって、測定対象物透過後又は反射後の測定光とノイズを示す光との比較が行われることで、測定光の検出結果からノイズを除去することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光ファイバにより光を安定して伝送させることができるとともに、強度が等しい2つの光を合波させて干渉光を生成することができるため、干渉光を適切に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態にかかる分光分析装置を示す模式図。
【図2】実施形態に係るファイバカプラにおける各波長での分岐比率を示すグラフ。
【図3】(a)及び(b)は、測定光の波形図であり、(c)は参照光の波形図。
【図4】ファイバカプラを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図3を参照して説明する。図1に、本実施形態に係る分光分析装置を示す。本実施形態に係る分光分析装置10は、マイケル干渉計を用いた分光分析装置であり、試料測定部22に含まれる試料の量を検出する定量分析を行うものである。
【0022】
分光分析装置10は、光源11と、光源11から出射された光を集束光とする光源レンズ12を備えている。光源11は、白色LEDであり、広帯域光を出射する。分光分析装置10では、光源11から出射される光が複数の光ファイバF1〜F28を通じて伝送される。
【0023】
分光分析装置10では、光源11から出射された光が光源レンズ12を通じて第1光ファイバF1に流入するように構成されている。第1光ファイバF1は、第2光ファイバF2と第1ファイバカプラFC1で結合されており、第3光ファイバF3及び第4光ファイバF4に分岐されている。第1ファイバカプラFC1では、第1光ファイバF1のストレートポート(以下、単にストレートという)側で且つ第2光ファイバF2のクロス(以下、単にクロスという)ポート側に第3光ファイバF3が接続され、第1光ファイバF1のクロス側で第2光ファイバF2のストレート側に第4光ファイバF4が接続されている。第1ファイアカプラFC1は、後記するように、光源11から出射される光を可動鏡14及び固定鏡16へ入射させるべく分岐させるものであり、分岐用ファイバカプラを構成している。
【0024】
第2光ファイバF2において、第1ファイバカプラFC1と接続される側と反対側の端部は、光の反射防止処理が施されている。なお、後記する第6、第10、第11、第16、第21、第25の各光ファイバF6,F10,F11,F16,F21,F25においても、一方の端部がファイバカプラ等と接続されておらず、この端部では光の反射防止処理が施されている。
【0025】
第1ファイバカプラFC1では、コアが連続している第1光ファイバF1及び第3光ファイバF3と、第2光ファイバF2及び第4光ファイバF4との間がエバネッセント結合されており、本実施形態では、以下に説明する全てのファイバカプラFC2〜FC7が、光ファイバをエバネッセント結合している。
【0026】
図2に示すように、光ファイバをエバネッセント結合するファイバカプラでは、光ファイバを通じてファイバカプラに流入した光が、ストレート側の光ファイバとクロス側の光ファイバとに分岐される際に、波長毎に異なる分岐比率で分岐される。具体的には、このようなファイバカプラでは、光ファイバを通じてファイバカプラに流入した光がクロス側の光ファイバよりもストレート側の光ファイバに多く流れる。また、ストレート側の光ファイバに分岐される光の分岐比率は、短波長側よりも長波長側のほうが高い。また、ファイバカプラでは、流入した光がストレート側の光ファイバに分岐される場合には位相が維持され、クロス側の光ファイバに分岐される場合には、位相がπ/2進む。
【0027】
第3光ファイバF3は、第5光ファイバF5と、第2ファイバカプラFC2で結合されており、第6光ファイバF6及び第7光ファイバF7に分岐されている。第2ファイバカプラFC2では、第3光ファイバF3のストレート側で且つ第5光ファイバF5のクロス側に第6光ファイバF6が接続され、第3光ファイバF3のクロス側で第5光ファイバF5のストレート側に第7光ファイバF7が接続されている。
【0028】
第7光ファイバF7から流出した光は、可動側レンズ13を通じて可動鏡14に入射することで、可動鏡14で反射されるように構成されている。可動鏡14は、図示しない駆動機構によって、図1の破線矢印に示す方向に往復動可能に構成されている。
【0029】
第4光ファイバF4は、第8光ファイバF8と、第3ファイバカプラFC3で結合されており、第9光ファイバF9及び第10光ファイバF10に分岐されている。第3ファイバカプラFC3では、第4光ファイバF4のストレート側で且つ第8光ファイバF8のクロス側に第9光ファイバF9が接続され、第4光ファイバF4のクロス側で第8光ファイバF8のストレート側に第10光ファイバF10が接続されている。
【0030】
第9光ファイバF9から流出した光は、固定側レンズ15を通じて固定鏡16に入射することで、固定鏡16で反射されるように構成されている。固定鏡16は、移動不能である。
【0031】
第5光ファイバF5は、第2ファイバカプラFC2に接続される側と反対側の端部が、第11光ファイバF11と第4ファイバカプラFC4で結合されており、第12光ファイバF12及び第13光ファイバF13に分岐されている。第4ファイバカプラFC4では、第5光ファイバF5のストレート側で且つ第11光ファイバF11のクロス側に第12光ファイバF12が接続され、第5光ファイバF5のクロス側で第11光ファイバF11のストレート側に第13光ファイバF13が接続されている。
【0032】
第12光ファイバF12は、第1位相調整器P1を介して第14光ファイバF14に接続されている。第1位相調整器P1及び後記する第2〜第4の各位相調整器P2〜P4は、流入する光の位相を調整するものであり、第1位相調整器P1は、流入する光の位相を維持するように構成されている。また、第13光ファイバF13は、第2位相調整器P2を介して第15光ファイバF15に接続されている。第2位相調整器P2は、流入する光の位相をπ進ませるように構成されている。
【0033】
第8光ファイバF8は、第3ファイバカプラFC3に接続する側と反対側の端部が、第16光ファイバF16と第5ファイバカプラFC5で結合されており、第17光ファイバF17及び第18光ファイバF18に分岐されている。第5ファイバカプラFC5では、第8光ファイバF8のストレート側で且つ第16光ファイバF16のクロス側に第17光ファイバF17が接続され、第8光ファイバF8のクロス側で第16光ファイバF16のストレート側に第18光ファイバF18が接続されている。
【0034】
第17光ファイバF17は、第3位相調整器P3を介して第19光ファイバF19に接続されている。第3位相調整器P3は、流入する光の位相を維持するように構成されている。また、第18光ファイバF18は、第4位相調整器P4を介して第20光ファイバF20に接続されている。第4位相調整器P4は、流入する光の位相を維持するように構成されている。
【0035】
第14光ファイバF14と第19光ファイバF19とは、第6ファイバカプラFC6で結合されており、第21光ファイバF21と第22光ファイバF22とに分岐されている。第6ファイバカプラFC6では、第14光ファイバF14のストレート側で且つ第19光ファイバF19のクロス側に第21光ファイバF21が接続され、第14光ファイバF14のクロス側で第19光ファイバF19のストレート側に第22光ファイバF22が接続されている。第6ファイバカプラFC6では、後記するように、可動鏡14で反射した反射光と、固定鏡16で反射した反射光とが合波されて干渉し合い測定光としての干渉光が生成される。したがって、本実施形態では、第6ファイバカプラFC6が、干渉光用ファイバカプラを構成している。
【0036】
第22光ファイバF22において、第6ファイバカプラFC6と反対側には、第1測定光レンズ21、試料測定部22、及び第2測定光レンズ23が順に接続されている。第1測定光レンズ21は、入射する光を試料測定部22の試料上で集束させるためのものである。なお、第1測定光レンズ21として、リレーレンズを用いるようにしてもよい。試料測定部22内には測定対象物となる試料が収容されている。第2測定光レンズ23は、入射する光を集光するためのものである。
【0037】
第2測定光レンズ23は、第23光ファイバF23を介して測定光量調整部24に接続され、測定光量調整部24は、第24光ファイバF24を介して検出器30に接続されている。測定光量調整部24は、表面の曲率が部位毎に異なる1対のレンズを備えており、一対のレンズが対面し合う領域を変更することで、第23光ファイバF23から流出した光の量を調整して、検出器30に流入する光の量を調整するものである。なお、測定光量調整部24としては、コリメートレンズやグリーレンズなどを用いることができる。
【0038】
第15光ファイバF15と第20光ファイバF20とは、第7ファイバカプラFC7で結合されており、第25光ファイバF25と第26光ファイバF26とに分岐されている。第7ファイバカプラFC7では、第15光ファイバF15のストレート側で且つ第20光ファイバF20のクロス側に第25光ファイバF25が接続され、第15光ファイバF15のクロス側で第20光ファイバF20のストレート側に第26光ファイバF26が接続されている。第7ファイバカプラFC7では、後記するように、可動鏡14で反射した反射光と、固定鏡16で反射した反射光とが合波されて干渉し合い参照光が生成される。したがって、本実施形態では、第7ファイバカプラFC7が、参照光用ファイバカプラを構成している。
【0039】
第26光ファイバF26において、第7ファイバカプラFC7と反対側には、第1参照光レンズ25、光路長調整部26、及び第2参照光レンズ27が順に接続されている。第1参照光レンズ25は、入射する光を平行光とするためのものである。第2参照光レンズ27は、入射する光を集光するためのものである。
【0040】
光路長調整部26は、測定光と参照光との伝播時間を一致させるためのものである。すなわち、試料測定部22に収容される試料に応じて、測定光が試料測定部22を伝播する時間が異なるため、分光分析装置10が検出する試料に応じて、光路長調整部26により参照光の伝播時間を調整する。
【0041】
光路長調整部26は、詳細には、第1〜第4の4個の反射鏡26a〜26dを備えており、第1反射鏡26aに入射した光が、第1反射鏡26aで反射し、第2反射鏡26b、第3反射鏡26c及び第4反射鏡26dを順に反射するように構成されている。また、第2反射鏡26bと第3反射鏡26cとは図1の破線矢印に示す方向に変位可能に構成されている。これにより、第1反射鏡26aから第2反射鏡26bまでの距離及び第3反射鏡26cから第4反射鏡26dまでの距離が変化することで、光路長調整部26における参照光の光路長が調整可能である。これにより、第26光ファイバF26から流出した参照光が、第1参照光レンズ25で平行光となり、光路長調整部26で光路長調整されて、第2参照光レンズ27に入射し、第2参照光レンズ27で集光される。
【0042】
第2参照光レンズ27は、第27光ファイバF27を介して参照光量調整部28に接続され、参照光量調整部28は、第28光ファイバF28を介して検出器30に接続されている。参照光量調整部28は、測定光量調整部24と同様の原理により、検出器30に流入する光の参照光の量を調整するものである。
【0043】
検出器30は、測定光と参照光の強度を検出して比較するものである。検出器30は、測定光検出手段としての測定光電変換部31と、参照光検出手段としての参照光電変換部32と、比較手段としての比較部33とを備えている。測定光電変換部31は、測定光を受光して電気信号(電圧値)に変換するものであり、参照光電変換部32は、参照光を受光して電気信号(電圧値)に変換するものである。比較部33は、各光電変換部31,32が出力する電気信号が入力され、この電気信号を演算処理することで、測定光と参照光とを比較し、その比較結果を出力する。
【0044】
検出器30は、アナログーデジタル変換器34を介してパーソナルコンピュータ35に接続されている。アナログーデジタル変換器34は、比較部33が出力したアナログ信号をデジタル信号に変換し、パーソナルコンピュータ35に出力する。パーソナルコンピュータ35には、予め元素データ及びその吸収スペクトルのデータが格納されている。パーソナルコンピュータ35は、表示画面を備えており、入力されるデジタル信号をフーリエ変換して、予め格納されているデータと比較することで、試料測定部22の試料に吸収された測定光の波長及び量から試料を特定するとともに試料の量を導出し、その結果を表示画面に表示する。
【0045】
次に、分光分析装置10の動作について説明する。分光分析装置10では、光源11から出射される光が以下のように伝送されることで、試料の定量分析が行われる。光源11から出射された光は、第1光ファイバF1を流れて、第1ファイバカプラFC1で、第3光ファイバF3と第4光ファイバF4とに分岐して流れる。
【0046】
第1ファイバカプラFC1において、第3光ファイバF3に分岐した光は、第2ファイバカプラFC2で第6光ファイバF6と第7光ファイバF7とに分岐して流れる。第7光ファイバF7を流れた光は、可動側レンズ13で平行光となり、可動鏡14に入射して反射する。なお、以下では、光源11から出射して可動鏡14で反射した光を可動反射光という。また、可動鏡14は、試料の定量分析中に図1の矢印に示す方向に変位する。可動反射光は、可動鏡14で反射した後、可動側レンズ13で集光されて再び第7光ファイバF7へと流入し、第2ファイバカプラFC2を介して第5光ファイバF5へ流れる。
【0047】
第5光ファイバF5を流れた可動反射光は、第4ファイバカプラFC4において第12光ファイバF12と第13光ファイバF13とに分岐して流れる。第12光ファイバF12に分岐した可動反射光は、第1位相調整器P1を介して第14光ファイバF14へ流れる。一方、第13光ファイバF13に分岐した可動反射光は、第2位相調整器P2を介して第15光ファイバF15へ流れる。
【0048】
第1ファイバカプラFC1において、第4光ファイバF4に分岐した光は、第3ファイバカプラFC3で第9光ファイバF9と第10光ファイバF10とに分岐して流れる。第9光ファイバF9を流れた光は、固定側レンズ15で平行光となり、固定鏡16に入射して反射する。なお、以下では、光源11から出射して固定鏡16で反射した光を固定反射光という。固定反射光は、固定側レンズ15で集光されて第9光ファイバF9に流入する。そして、固定反射光は、第3ファイバカプラFC3において第8光ファイバF8へと流れる。
【0049】
第8光ファイバF8を流れた固定反射光は、第5ファイバカプラFC5において第17光ファイバF17と第18光ファイバF18とに分岐して流れる。第17光ファイバF17に分岐した固定反射光は、第3位相調整器P3を介して第19光ファイバF19へ流れる。一方、第18光ファイバF18に分岐した固定反射光は、第4位相調整器P4を介して第20光ファイバF20へ流れる。
【0050】
第14光ファイバF14を流れる可動反射光と、第19光ファイバF19を流れる固定反射光とは、第6ファイバカプラFC6を介して第22光ファイバF22に流入する。これにより、第22光ファイバF22に流入する可動反射光と固定反射光とが合波されて干渉光が生成され、この干渉光が測定光となる。
【0051】
ここで、第22光ファイバF22に流入する可動反射光は、光源11から第6光ファイバF6までの各ファイバカプラFC1,FC2,FC4,FC6において、表1に示す態様で分岐される。また、この分岐態様によって、光源11から出射される光に対して、位相が表1に示すように変化している。
【0052】
【表1】

表1に示すように、可動反射光では、第1光ファイバF1から第1ファイバカプラFC1においてストレート側の第3光ファイバF3へ流れ、第2ファイバカプラFC2でクロス側の第7光ファイバF7へと流れる。そして、可動鏡14で反射した後には、第2ファイバカプラFC2でストレート側の第5光ファイバF5へ流れ、第4ファイバカプラFC4でストレート側の第12光ファイバF12へと流れる。そして、第6ファイバカプラFC6において、クロス側の第22光ファイバF22へと流れる。したがって、第22光ファイバF22に流入する可動反射光は、通過する各ファイバカプラFC1,FC2,FC4,FC6において、ストレート側へ3回、クロス側へ2回分岐している。
【0053】
また、光がファイバカプラのクロス側に分岐される際には、位相がπ/2進み、可動鏡で反射する際には、位相がπ進む。したがって、表1に示すように、可動反射光は、第3光ファイバF3を流れる光が第2ファイバカプラFC2からクロス側の第7光ファイバF7へ流れる際に、位相がπ/2進み、可動鏡14で反射する際に、位相がさらにπ進んで、光源11から出射される光に対して位相が3π/2進んだ状態となる。そして、第4ファイバカプラFC4及び第1位相調整器P1では、位相が維持され、第6ファイバカプラFC6で第22光ファイバF22へ流入する際に、位相がπ/2進んで2πとなり、光源11から出射される光と同位相(位相差「0」)となる。
【0054】
一方、第22光ファイバF22に流入する固定反射光は、光源11から第6光ファイバF6までの各ファイバカプラFC1,FC3,FC5,FC6において、表2に示す態様で分岐される。また、この分岐態様によって、光源11から出射される光に対して、位相が表2に示すように変化している。
【0055】
【表2】

表2に示すように、固定反射光では、光源から出射された光が第1光ファイバF1から第1ファイバカプラFC1でクロス側の第4光ファイバF4へ流れ、第3ファイバカプラFC3でストレート側の第9光ファイバF9へ流れる。そして、固定鏡16で反射した後には、第3ファイバカプラFC3でクロス側の第8光ファイバF8へと流れ、第5ファイバカプラFC5でストレート側の第17光ファイバF17へと流れ、第6ファイバカプラFC6において、ストレート側の第22光ファイバF22へと流れる。したがって、固定鏡16で反射する光は、通過する各ファイバカプラFC1,FC3,FC5,FC6において、ストレート側へ3回、クロス側へ2回分岐している。
【0056】
また、表2に示すように、固定反射光は、第1光ファイバF1を流れる光が、第1ファイバカプラFC1からクロス側の第4光ファイバF4へ流れる際に、位相がπ/2進む。そして、第3ファイバカプラFC3を通過する際には位相が維持され、固定鏡16で反射する際に、位相がπ進んで、光源11から出射される光に対して位相が3π/2進んだ状態となる。そして、第3ファイバカプラFC3においてクロス側の第8光ファイバF8に流入するため、位相がπ/2進み2πとなり、光源11から出射される光と同位相(位相差「0」)となる。この光は、第5ファイバカプラFC5及び第3位相調整器P3で位相が維持され、さらに第6ファイバカプラFC6でストレート側の第22光ファイバF22に流入するため、位相が維持される。
【0057】
以上のように、第22光ファイバF22に流入する可動反射光と固定反射光とは、ファイバカプラのストレート側に3回、クロス側に2回分岐されている。したがって、第6ファイバカプラFC6において第22光ファイバF22に流入して合波される2つの光は、ファイバカプラFC1〜FC6においてストレート側に分岐される回数が同じであり、ファイバカプラFC1〜FC6のクロス側に分岐される回数が同じである。これにより、各ファイバカプラFC1〜FC6では、ストレート側とクロス側とに分岐される光の分岐比率が波長毎に異なっているものの、第22光ファイバF22に流入する可動反射光と固定反射光の波長毎の光の強度を等しくすることができる。したがって、第6ファイバカプラFC6では、波長毎の強度が等しい2つの光を合波することができるため、測定光としての干渉光を適切に生成することができる。
【0058】
また、第22光ファイバF22に流入する可動反射光と固定反射光とは、ともに光源11から出射される光と同位相であるため、互いに位相が等しい。したがって、同位相の光が合波して測定光が生成されるため、測定光としての干渉光を適切に生成することができる。なお、本実施形態では、ファイバカプラFC1〜FC6及び第1及び第3の各位相調整器P1,P3により第22光ファイバF22に流入する可動反射光と固定反射光とが同位相に調整される。したがって、ファイバカプラFC1〜FC6及び第1及び第3の各位相調整器P1,P3が、測定光(干渉光)用の位相調整手段を構成する。
【0059】
第15光ファイバF15を流れる可動反射光と、第20光ファイバF20を流れる固定反射光とは、第7ファイバカプラFC7を介して第26光ファイバF26に流入する。これにより、第26光ファイバF26に流入する可動反射光と固定反射光とが合波されて干渉光が生成され、この干渉光が参照光となる。
【0060】
ここで、第26光ファイバF26に流入する可動反射光は、光源11から第7光ファイバF7までの各ファイバカプラFC1,FC2,FC4,FC7において、表3に示す態様で分岐される。また、この分岐態様によって、光源11から出射される光に対して、位相が表3に示すように変化している。
【0061】
【表3】

表3に示すように、第26光ファイバF26に流入する可動反射光は、可動鏡14で反射して第2ファイバカプラFC2を通過するまでは、表1と同様の経路を通過する。そして、第5光ファイバF5から第4ファイバカプラFC4でクロス側の第13光ファイバF13へと流れ、第7ファイバカプラFC7において、クロス側の第26光ファイバF26へと流れる。したがって、第26光ファイバF26に流入する可動反射光は、通過する各ファイバカプラFC1,FC2,FC4,FC7において、ストレート側へ2回、クロス側へ3回分岐している。
【0062】
また、表3に示すように、第26光ファイバF26に流入する可動反射光は、可動鏡14で反射して第2ファイバカプラFC2を通過するまでは、表1に示す態様と同様に位相が変化する。そして、第4ファイバカプラFC4でクロス側の第13光ファイバF13に流入するため、位相がπ/2進んで、光源11から出射される光と同位相(位相差「0」)となる。そして、第2位相調整器P2では、位相がπ進み、第7ファイバカプラFC7でクロス側の第26光ファイバF26へ流入する際に、位相がπ/2進むため、光源11から出射される光に対して位相が3π/2進んだ状態となる。
【0063】
一方、第26光ファイバF26に流入する固定反射光は、光源11から第7光ファイバF7までの各ファイバカプラFC1,FC3,FC5,FC7において、表4に示す態様で分岐される。また、この分岐態様によって、光源11から出射される光に対して、位相が表4に示すように変化している。
【0064】
【表4】

表4に示すように、第26光ファイバF26に流入する固定反射光は、固定鏡16で反射して第3ファイバカプラFC3を通過するまでは、表2と同様の経路を通過する。そして、第8光ファイバF8から第5ファイバカプラFC5でクロス側の第18光ファイバF18へと流れ、第7ファイバカプラFC7において、ストレート側の第26光ファイバF26へと流れる。したがって、固定鏡16で反射する光は、通過する各ファイバカプラFC1,FC3,FC5,FC7において、ストレート側へ2回、クロス側へ3回分岐している。
【0065】
また、表4に示すように、第26光ファイバF26に流入する固定反射光は、固定鏡16で反射して第3ファイバカプラFC3を通過するまでは、表2に示す態様と同様に位相が変化する。この光は、第5ファイバカプラFC5でクロス側の第18光ファイバF18に流れるため、位相がπ/2進み、光源11から出射される光に対して位相がπ/2進んだ状態となる。そして、第4位相調整器P4で位相が維持され、さらに第7ファイバカプラFC7でストレート側の第26光ファイバF26に流入するため、位相が維持される。
【0066】
以上のように、第26光ファイバF26に流入する可動反射光と固定反射光とは、ファイバカプラのストレート側に2回、クロス側に3回分岐されている。したがって、第7ファイバカプラFC7において第26光ファイバF26に流入して互いに干渉し合う2つの光は、ファイバカプラFC1〜FC5,FC7においてストレート側に分岐される回数が同じであり、ファイバカプラFC1〜FC5,FC7のクロス側に分岐される回数が同じである。これにより、各ファイバカプラFC1〜FC5,FC7では、ストレート側とクロス側とに分岐される光の分岐比率が波長毎に異なっているものの、第26光ファイバF26に流入する可動反射光と固定反射光の波長毎の光の強度を等しくすることができる。したがって、参照光としての干渉光を適切に生成することができる。
【0067】
また、第26光ファイバF26に流入する可動反射光は、光源11から出射される光に対して位相が3π/2進んでおり、固定反射光は、光源11から出射される光に対して位相がπ/2進んでいるため、逆位相である。したがって、第26光ファイバF26に流入する2つの光は、互いに波長毎の強度が等しく逆位相であるため、これらの光が合波されると、その大部分が打ち消され、打ち消されずに残存した光の波形は、光が伝送される際に生じるノイズが反映されたものとなる。したがって、第26光ファイバF26に流入する光は、ノイズに相当する参照光となる。なお、本実施形態では、ファイバカプラFC1〜FC5,FC7及び第2及び第4の各位相調整器P2,P4により第26光ファイバF26に流入する可動反射光と固定反射光とが逆位相に調整される。したがって、ファイバカプラFC1〜FC5,FC7及び第2及び第4の各位相調整器P2,P4が参照光用の位相調整手段を構成する。
【0068】
以上のようにして生成された測定光は、第22光ファイバF22を流れ、第1測定光レンズ21で平行光となり、試料測定部22を透過する。測定光の一部は、試料測定部22を流れる際に、試料測定部22内の試料に吸収される。測定光のうち、試料に吸収される光の波長は、その試料の特性に応じて変化し、吸収量は試料の量に応じて変化する。測定光は試料測定部22を透過した後に、第2測定光レンズ23で集光されて第23光ファイバF23に流入する。第23光ファイバF23から流出した光は、測定光量調整部24によって適宜光量調整され、第24光ファイバF24を介して検出器30の測定光電変換部31に受光される。
【0069】
また、参照光は、第26光ファイバF26を流れ、第1参照光レンズ25で平行光となり、光路長調整部26で光路調整される。なお、光路長調整部26では、参照光が4つの反射鏡26a〜26dにより4回反射するため位相は維持される。
【0070】
参照光は、光路長調整部26の第4反射鏡26dで反射した後、第2参照光レンズ27で集光されて第27光ファイバF27に流入する。第27光ファイバF27から流出した参照光は、参照光量調整部28で適宜光量調整され、第28光ファイバF28を介して検出器30の参照光電変換部32に受光される。
【0071】
検出器30では、測定光電変換部31で測定光が電気信号(電圧値)に変換され、参照光電変換部32で参照光が電気信号(電圧値)に変換される。図3の(a)は、試料測定部22に試料がない場合(試料の量が「0」である場合)に、測定光を光電変換した場合の電気信号を示す波形図である。なお、可動鏡14が変位して所定位置となったときに干渉光が生成され、図3の(a)及び図3(b)の波形図において、出力電圧が相対的に大きくなる時間は、可動鏡14が干渉波を生成する所定位置に達した時間を示している。
【0072】
図3(b)は、試料測定部22内に試料が収容されている場合(試料の量が「0」でない場合)の測定光の波形図である。このように、試料測定部22内に試料が収容されている場合には、その試料の吸収特性に応じて、試料測定部22透過後の測定光の強度が小さくなる。
【0073】
また、図3(c)は、参照光を示す電気信号(電圧値)であり、光が伝送される際に生じるノイズが反映された波形となっている。
検出器30の比較部33は、これらの電気信号を比較することで、比較結果として、測定光からノイズを除去した光の強度を示す電気信号を出力する。比較部33は、詳細には、測定光の強度を示す出力電圧値から参照光の強度を示す出力電圧値を補正した値を減算することで、測定光からノイズを除去した光の強度を示す電気信号を出力する。なお、参照光を補正する値としては、測定光と参照光とを生成するための各固定反射光と各可動反射光との波長毎の強度の差異を補正するための値が用いられる。すなわち、本実施形態では、測定光を生成する固定反射光と可動反射光とは、ファイバカプラFC1〜FC6のクロス側に2回、ストレート側に3回分岐しているのに対し、参照光を生成する固定反射光と各可動反射光とは、ファイバカプラFC1〜FC5,FC7のクロス側に3回、ストレート側に2回分岐している。したがって、測定光と参照光とを生成するための各固定反射光と各可動反射光との波長毎の強度が異なっているため、こうした差異を補正するための補正値が用いられる。
【0074】
検出器30の比較部33が出力した信号は、アナログーデジタル変換器34を通じてデジタル信号に変換され、パーソナルコンピュータ35に出力される。これにより、パーソナルコンピュータ35は、入力された電気信号をフーリエ変換して、試料測定部22の試料に吸収された光の波長及び量、並びに試料測定部22の試料とその量を導出し、その導出結果を、表示画面に表示する。
【0075】
なお、分光分析装置10では、試料の定量分析に先だって、図3(a)に示した試料測定部22に試料がない状態における測定光の強度を検出する処理が行われ、この結果が予めパーソナルコンピュータ35に記憶されている。したがって、パーソナルコンピュータ35は、試料測定部22に試料がない場合における測定光の強度と、試料測定部22に試料が収容されている場合の測定光の強度と比較する演算処理を行うことで、より正確に試料に吸収された測定光の量を導出する。そして、この導出結果に基づいて、試料測定部22の試料に吸収された光の波長及び量、並びに試料測定部22の試料とその量を表示する。
【0076】
以上詳述したように、本実施形態によれば以下の作用効果を奏することができる。
(1)分光分析装置10では、光源11から出射される光を光ファイバF1〜F28によって伝送し、光を第1ファイバカプラFC1で分岐させた後に固定鏡16及び可動鏡14でそれぞれ反射させ、第6ファイバカプラFC6で合波して測定光としての干渉光を生成する。このように、光ファイバF1〜F28によって光を伝送するため、干渉光を生成するための光を安定して伝送させることができる。
【0077】
また、分光分析装置10では、第1ファイバカプラFC1以降で第6ファイバカプラFC6までに存在する各ファイバカプラFC1〜FC6において、固定反射光及び可動反射光は、ともにクロス側に2回ずつ分岐し、ストレート側に3回ずつ分岐している。これにより、第6ファイバカプラFC6で第22光ファイバF22に流入して合波される2つの光において、波長毎の光の強度を互いに等しくすることができるため、合波される2つの光の干渉バランスが保たれ、測定光としての干渉光を適切に生成させることができる。したがって、干渉光を試料測定部22に透過させた後の光の強度を検出し、この強度に基づいて試料測定部22の試料を分析することにより、試料の分析精度を向上させることができる。
【0078】
(2)分光分析装置10では、固定反射光及び可動反射光が第6ファイバカプラFC6で第22光ファイバF22に流入する際に同位相で合波されるように、ファイバカプラFC1〜FC6及び第1及び第3の各位相調整器P1,P3で位相調整される。したがって、測定光として、より適切に干渉し合った干渉光を生成することができる。
【0079】
(3)分光分析装置10は、固定鏡16及び可動鏡14で反射した光を第7ファイバカプラFC7で合波して参照光を生成する。そして、参照光を生成する固定反射光及び可動反射光は、第1ファイバカプラFC1以降で第7ファイバカプラFC7までに存在する各ファイバカプラFC1〜FC5,FC7において、ともにクロス側に3回ずつ分岐し、ストレート側に2回ずつ分岐している。これにより、参照光を生成する固定反射光と可動反射光との波長毎の光の強度を互いに等しくすることができるため、合波される光の干渉バランスが保たれ、参照光としての干渉光を適切に生成することができる。そして、比較部33が、こうして生成された参照光と試料測定部22透過後の測定光との強度を比較するため、試料測定部22透過後の測定光の量をより適切に検出することができる。
【0080】
(4)分光分析装置10では、固定反射光及び可動反射光が第7ファイバカプラFC7で第26光ファイバF26に流入する際に逆位相で合波されるように、ファイバカプラFC1〜FC5,FC7及び第2及び第4の各位相調整器P2,P4で位相調整される。したがって、参照光として、光が伝送される際に生じるノイズに相当する波形を有する光を得ることができ、測定光の検出結果からノイズ成分を除去することができる。
【0081】
(その他の実施形態)
・上記実施形態では、第1〜第6の各ファイバカプラFC1〜FC6と、第1及び第3の各位相調整器P1,P2で測定光用の位相調整手段を構成し、第1〜第7の各ファイバカプラFC1〜FC5,FC7と、第2及び第4の各位相調整器P2,P4で参照光用の位相調整手段を構成している。しかしながら、位相調整手段は、ファイバカプラのみで構成するようにしてもよい。
【0082】
・上記実施形態では、測定光と参照光とを別々のファイバカプラで生成するようにしているが、測定光と参照光とは同じファイバカプラで生成するようにしてもよい。
・上記実施形態では、光路長調整部26で、測定光と参照光との伝播時間を一致させるように調整している。しかしながら、分光分析装置が特定の試料の定量分析を行うものであれば、試料測定部22における光の伝播時間はほぼ一定であるため、このような場合には、光路長が可変に調整できる光路長調整部を設けることなく、参照光が流れる光路長を光ファイバの長さなどによって調整することで、参照光と測定光との伝播時間を一致させるようにしてもよい。
【0083】
・上記実施形態では、測定光を生成するための固定反射光と可動反射光とは、ファイバカプラのクロス側に2回、ストレート側に3回分岐された後に合波されており、クロス側とストレート側とに分岐される回数が異なっている。しかしながら、固定反射光と可動反射光とが、ファイバカプラのクロス側とストレート側に分岐される回数が同じであってもよいし、クロス側に分岐される回数のほうが多くてもよい。参照光についても、同様に、ファイバカプラのクロス側とストレート側に分岐される回数が同じであってもよいし、ストレート側に分岐される回数のほうが多くてもよい。
【0084】
・上記実施形態では、測定光を生成するための固定反射光と可動反射光とは、ファイバカプラのクロス側に2回、ストレート側に3回分岐された後に合波されており、参照光を生成するための固定反射光と可動反射光とは、ファイバカプラのクロス側に3回、ストレート側に2回分岐された後に合波されている。しかしながら、測定光及び参照光を生成するための固定反射光及び可動反射光とは、ファイバカプラのクロス側に分岐される回数及びストレート側に分岐される回数を一致させるようにしてもよい。これにより、測定光と参照光との比較処理において、分岐態様の差異を補正値で補正する処理が不要となる。
【0085】
・上記実施形態では、固定反射光と可動反射光とを逆位相で合波することにより参照光を生成するようにしたが、固定反射光と可動反射光とを同位相で合波するようにしてもよい。これにより、参照光として、光源11から出射される光の強度を反映した干渉光を生成することができる。したがって、測定対象物透過後又は反射後の測定光と参照光とを比較することで、測定対象物に吸収された光の波長及び強度を検出することができ、測定対象物に吸収された光の波長及び強度の検出にあたって、パーソナルコンピュータ35により試料測定部22に試料がない状態における測定光の強度を記憶させる必要がない。
【0086】
・上記実施形態では、検出器が試料透過後の測定光を受光するようにしている。しかしながら、検出器は試料反射後の測定光を受光するようにしてもよい。
・上記実施形態では、干渉計を分光分析装置に適用したが、干渉計の可動鏡を変位させることで物体の距離を計測する装置に適用するようにしてもよい。
【0087】
・上記実施形態に係るファイバカプラでは、分岐される光のクロス側とストレート側との分岐比率が異なり、且つその分岐比率は波長毎に異なっている。しかしながら、クロス側とストレート側との分岐比率が異なり、且つその分岐比率が各波長において同じであるファイバカプラを用いるようにしてもよい。
【0088】
・上記実施形態では、光ファイバを流れる光を分岐させる手段として、ファイバカプラを用いるようにしている。しかしながら、光の伝送路が3ポートのみの場合には、ファイバカプラの代わりにサーキュレータを用いるようにしてもよい。
【0089】
・上記各実施形態では、光がファイバカプラにおいてクロス側の光ファイバに伝送される際に、位相がπ/2進む構成であったが、位相を保持するファイバカプラを用いるようにしてもよい。また、光ファイバ及びサーキュレータにおいても、位相保持用のファイバ及びサーキュレータを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
F1〜F28…光ファイバ、FC1〜FC7…ファイバカプラ、P1〜P4…位相調整器、10…分光分析装置、11…光源、12…光源レンズ、13…可動側レンズ、14…可動鏡、15…固定側レンズ、16…固定鏡、21…第1測定光レンズ、22…試料測定部、23…第2測定光レンズ、24…測定光量調整部、25…第1参照光レンズ、26…光路長調整部、27…第2参照光レンズ、28…参照光量調整部、30…検出器、31…測定光電変換部、32…参照光電変換部、33…比較部、34…アナログーデジタル変換器、35…パーソナルコンピュータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域光を出射する光源と、
前記光源からの光を伝送する光ファイバと、
前記光ファイバにより伝送された光を分岐させる分岐用ファイバカプラと、
前記分岐された各光をそれぞれ反射させる固定鏡及び可動鏡と、
前記各鏡で反射した各反射光を互いに合波して干渉光を生成する干渉光用ファイバカプラとを備え、
前記光源から前記光が合波されるまでの光路に存在するファイバカプラは、前記光源からの光がクロスポートを同一回数ずつ通過し、且つストレートポートを同一回数ずつ通過するように接続されている
ことを特徴とする干渉計。
【請求項2】
前記各反射光が前記干渉光用ファイバカプラで互いに同位相で合波されるように、前記各反射光の位相を調整する干渉光用の位相調整手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の干渉計。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の干渉計と、
前記生成された干渉光を測定光として、測定対象物透過後又は反射後の前記測定光の強度を検出する測定光検出手段とを備える
ことを特徴とする分光分析装置。
【請求項4】
前記各鏡で反射した各反射光を互いに合波して参照光を生成する参照光用ファイバカプラと、
前記参照光の強度を検出する参照光検出手段と、
前記測定光検出手段による検出結果と前記参照光検出手段による検出結果とを比較する比較手段とを備え、
前記光源から前記光が参照光として合波されるまでの光路に存在するファイバカプラは、前記光源からの光がクロスポートを同一回数ずつ通過し、且つストレートポートを同一回数ずつ通過するように接続されている
ことを特徴とする請求項3に記載の分光分析装置。
【請求項5】
前記各反射光が前記参照光用ファイバカプラで互いに逆位相で合波されるように、前記各反射光の位相を調整する参照光用の位相調整手段を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の分光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−78099(P2012−78099A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220741(P2010−220741)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000106221)パナソニック電工SUNX株式会社 (578)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】