説明

平らな支持体にセキュリティ特徴を製作する方法

本発明は、平らな支持体(1)、たとえば紙または厚紙上にセキュリティ特徴(3)を製作する方法であって、暗号方式のランダムパターン(4)を形成する小片(7)を支持体(1)上に取り付ける、好適には撒布する方法において、柔軟な線材または繊維材(7)、特に薄い銅線材(7)を、セキュリティ特徴(3)に対応する特徴範囲(8)で支持体(1)上に付着させる。セキュリティ特徴(3)は、保護層(13)、たとえばラミネートを備えることができる。本発明に従って製作されたセキュリティ特徴(3)は、簡単に間違いなく検出して、暗号方式で評価することができる。したがって公知の印刷技術による方法では模造できないか、または不経済にしか模造できない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1および2の上位概念に記載した、平らな物体上にセキュリティ特徴を製作する方法に関する。また本発明は、請求項10に記載した、セキュリティ特徴を備えた印刷製品に関する。さらに本発明は、請求項11に記載した、製品の真正性を検査する方法、ならびに請求項14に記載した、偽造から製品を保護する方法に関する。
【0002】
印刷された製品、たとえば証書または薬品包装の真正性検査では、いわゆるセキュリティ特徴を製作する様々な方法が用いられる。セキュリティ特徴は、大量生産に対応するために、経済的に製作して、しかも偽造を識別する際に高い信頼性を所与する必要がある。
【0003】
印刷製品、特に高価または繊細な製品、たとえば化粧品もしくは薬品のオリジナルの証書および包装は、多様に偽造から保護することができる。多くの場合偽造に対する安全性を高めるために、たとえば銀行券印刷(アイリスプリント、彩紋、偽造防止用紙、偽造防止用糸、偽造防止インキ、透かしなど)において、手間の掛かる印刷方法および印刷媒体の組み合わせが用いられる。使い捨て容器などの量産品には、そのような組み合わせによる、手間の掛かる、ひいては大抵は高価な方法は、あまり有用でない。
【0004】
印刷技術的なセキュリティ特徴を製作する他に、いわゆる公開鍵暗号方式をベースとする、電子データを暗号化するシステムが発達している。このシステムでは、対になる鍵が用いられ、その1つは公開鍵(Public Key)であり、別の1つは秘密鍵(Private Key)である。ここでは両方の鍵は、追加情報なしに割り出すことは不可能である。公開鍵で暗号化された情報は、公開鍵に対応する秘密鍵でしか復号化することができず、またその逆もそうである。最も広く利用されている方法は、いわゆるRivest-Shamir-Adelman方式(RSA)である。この方式は、たとえば広範囲に広がったソフトウェア「Pretty Good Privacy(PGP)」において用いられる。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19614174号明細書において、材料または対象の特徴を表すために、多層のマイクロ粒子をたとえばラッカ内に取り付けることが公知である。マイクロ粒子は、従来慣用の、あまり手間の掛からない手段では検出不能である。
【0006】
出願時には未だ非公開のドイツ連邦共和国特許出願第102008014322号明細書には、印刷製品の真贋性を検査する方法が記載されている。ここではランダムパターンは、たとえばコールド箔転写における空所によって形成することができる。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005013962号明細書では、印刷済み用紙またはその他の印刷物のランダムな微細構造が、顕微鏡により評価され、いわゆる指紋として該当する文書に利用される。この指紋は、セキュリティ特徴の製作者においてデータバンクに格納することができ、セキュリティ特徴の使用者のデータバンクアクセスによって管理することができる。データバンクに格納された指紋と、予め製品上に見出された指紋との比較によって、存在する文書の真正性を確認することができる。これに対して選択的に、指紋は、秘密鍵で暗号化して、セキュリティ特徴の製作者によって製品に取り付ける、たとえば印刷することができる。セキュリティ特徴の利用者は、公開鍵を用いた復号化によって、指紋を検証することができる。しかしながら記載の方法の欠点によれば、セキュリティ特徴の製作者のみならず利用者も、製品の繊維構造を記録するための高解像度の機器を所有する必要がある。このことは量産品の真贋性検査で使用するにはあまり有用でない。同等のことが米国特許第4423415号明細書にもみられる。微細構造の評価は、技術的に煩雑な手段でしか実現可能でない。
【0008】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10304805号明細書には、製品へのランダムパターンの取付、ランダムパターンの読取、データレコードとしてのランダムパターンからのいわゆる「指紋」の抽出および指紋の保存が記載されている。好適には、製品に、追加的に暗号化された状態で指紋が設けられている。製品を認証する際に、新たに指紋がランダムパターンから抽出され、保存された指紋と一致するか検査される。このためにランダムパターンは、高解像度範囲を有する技術的に煩雑な手段(たとえば顕微鏡)を用いて検出する必要があり、暗号化の際に用いられる秘密の、つまり非公開の鍵を用いる必要がある。これら両方のことは、量産品の真贋性検査に用いるのはあまり有用ではない。
【0009】
さらにたとえば銀行券製造から、蛍光性の繊維を紙に織り込んで、紫外線を用いて銀行券の真贋性を検査することが公知である。しかしながら個別検査、つまり固有種の真正性検査は、不可能である。
【0010】
このような背景から、本発明の課題は、従来技術に対して改善された、セキュリティ特徴を製作する改善された方法を提供することであり、この方法は、容易に(従来慣用の手段、たとえばカメラ−移動無線機器を用いて)検出することができ、かつ暗号技術的に簡単に間違いなく評価することのできるセキュリティ特徴の簡単で経済的な製作を実現する。さらに本発明の追加的または選択的な課題は、従来技術に対して改善された、つまり簡単に検出することができ、暗号技術的に簡単で間違いなく評価することができるセキュリティ特徴を備えた印刷製品を提供することである。さらに本発明の追加的または選択的な課題は、従来技術に対して改善された方法および印刷製品を提供することであり、この方法および印刷製品は、視覚的および/または触覚的に本物のセキュリティ特徴と模造されたセキュリティ特徴との間の良好な区別を実現する。さらに本発明の追加的または選択的な課題は、従来技術に対して改善された、製品の真贋性を検査する方法ならびに製品を偽造から保護する方法を提供することであり、これらの方法は、簡単で経済的に製作可能で、容易に(従来慣用の手段、たとえばカメラ−移動無線機器を用いて)検出することができ、かつ暗号技術的に簡単で間違いなく評価することができるセキュリティ特徴を使用可能にする。
【0011】
これらの課題は、本発明によれば、請求項1および請求項2の特徴部に記載の方法によって、請求項10の特徴部に記載の印刷製品によって、ならびに請求項11および請求項14の特徴部に記載の方法によって解決される。本発明の好適な改良形は、従属請求項ならびに明細書および付属の図面から理解される。
【0012】
本発明による、平らな支持体上にセキュリティ特徴を製作する方法は、暗号方式のランダムパターンを形成する小片を支持体上に取り付ける方法において、柔軟な線材または繊維材を、セキュリティ特徴に対応する特徴範囲において支持体上に付着させることを特徴とする。
【0013】
本発明による、平らな支持体内にセキュリティ特徴を製作する方法は、暗号方式のランダムパターンを形成する小片を支持体内に取り付ける方法において、柔軟な線材または繊維材を、セキュリティ特徴に対応する特徴範囲で支持体内に付着させることを特徴とする。
【0014】
「柔軟」という概念は、本発明の範囲では、「変形可能」、特に「可撓性」と理解される。この理解において、弾性および可塑性のみならず可逆性および非可逆性の変形も含まれる。たとえば線材または繊維材は、その長手方向軸に沿って1つの曲率(または複数の曲率)を設けることができ、それが永続的に維持されるように変形可能である。
【0015】
線材または繊維材の使用によって、オリジナルと模造(偽造)との間の良好な区別が得られる。なぜならば材料は、その3D構造に基づいて独自の光反射性を有しており、したがって肉眼で様々な角度から材料として識別可能であり、さらに3D構造は触知することもできるからである。さらに材料は重畳することができ、したがって複雑でしかも明確に知覚可能な3D構造を形成することもできる。
【0016】
改善された検出特性に基づいて好適で、したがって本発明による別の好適な方法によれば、プラスチック線材または金属線材、特に銅線材を、支持体上または支持体内に付着させる。
【0017】
簡単な製作に関して好適で、したがって本発明による別の好適な方法によれば、線材または繊維材を、支持体の、接着剤の付いた特徴範囲上に付着させる。
【0018】
耐性に関して好適で、したがって本発明による別の好適な方法によれば、線材または繊維材を、保護層、特にラミネートで覆う。
【0019】
簡単な製作に基づいて好適で、したがって本発明による別の好適な方法によれば、液体、特にインキまたはラッカと共に繊維材を、支持体上に付着させる。
【0020】
改善された偽造防止に関して好適で、したがって本発明による別の好適な方法によれば、線材または繊維材は、少なくとも湾曲を有している。
【0021】
さらに改善された偽造防止に関して好適で、かつ改善された検出に関して好適で、したがって本発明による別の好適な方法によれば、着色された、または蛍光性の線材または繊維材を、支持体上に付着させるか、もしくは支持体内に付着させる。
【0022】
耐性および改善された偽造防止に関して好適で、したがって本発明による別の好適な方法によれば、線材または繊維材を、不織布または箔内に取り付けて、支持体上に取り付ける。
【0023】
本発明による、セキュリティ特徴を備えた印刷製品は、セキュリティ特徴が、支持体上に付着された、ランダムパターンを形成する柔軟な線材または繊維材を備えていることを特徴とする。
【0024】
本発明の範疇には、被印刷物を加工する機械、たとえば印刷機、特に平版オフセット印刷用のシートを加工する輪転印刷機またはポストプレス機械も含まれ、これらは記載した本発明による方法を、たとえば対応する塗布装置によって実施するために形成されている。
【0025】
本発明による、製品の真正性を検査する方法は、以下の方法ステップ、製品に割り当てられた署名を検出し、署名を、復号化によって識別子に変化させ、識別子から、比較特徴を形成し、比較特徴を、計算機でサポートしながら、製品に割り当てられたランダムパターンの画像と比較する、ステップを有することを特徴とする。
【0026】
本発明による方法によって、好適に製品の真贋性を検査することができ、ここでは簡単で経済的に製作可能な、容易に(従来慣用の手段、たとえばカメラ−移動無線機器を用いて)検出することができ、かつ暗号技術的に簡単で間違いなく評価することができるセキュリティ特徴が使用できるようになる。
【0027】
問題のない使用に基づいて好適で、したがって本発明による別の好適な方法によれば、署名を、移動無線機器のカメラで検出し、比較特徴を、移動無線機器の表示部に示す。
【0028】
利用者にとって確実な偽造の識別に基づいて好適で、したがって本発明による別の好適な方法によれば、比較特徴を、移動無線機器の表示部で、ランダムパターンの画像に重畳して示す。
【0029】
本発明による、偽造から製品を保護する方法は、以下の方法ステップ、柔軟な線材または繊維材から成る、暗号方式のランダムパターンを形成し、ランダムパターンをカメラで検出し、ランダムパターンの画像から識別子を形成し、識別子を、秘密鍵を用いて、署名に変化させ、ランダムパターンおよび署名を、保護しようとする製品上に取り付け、署名を、カメラで検出し、署名を、公開鍵を用いて復号化することにより識別子に変化させ、識別子から、比較特徴を形成し、比較特徴を、計算機でサポートしながら、ラダムパターンの画像に重畳して、比較する、ステップを有することを特徴とする。
【0030】
本発明による方法によって、好適には、偽造から製品を保護することができ、ここでは簡単で経済的に製作可能な、容易に(従来慣用の手段、たとえばカメラ−移動無線機器を用いて)検出することができ、かつ暗号技術的に簡単で間違いなく評価することができるセキュリティ特徴が使用できるようになる。
【0031】
言及した本発明および言及した本発明の好適な形態は、相互に組み合わせると、本発明の別の好適な形態を成す。連続して行われる接着剤の塗布、たとえば銅から成る線材の撒布およびラッカまたは箔の取付が特に好適である。さらに柔軟な線材または繊維材から成る暗号方式のランダムパターンと、これに隣接する、2Dバーコード(データマトリックス)である、ランダムパターンを表す暗号化された署名とを備えた接着ラベルの製作が特に好適である。
【0032】
以下に、本発明ならびに本発明の構造的および/または機能的に好適な構成を、付属の図面を用いて、好適な少なくとも1つの形態に関して説明する。図面には、対応する構成要素には、同じ符合を設けた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に従って形成されるセキュリティ特徴の第1形態を概略的に示す図である。
【図2】本発明に従って形成されるセキュリティ特徴の第2形態を概略的に示す図である。
【図3】a〜eは、本発明による、偽造から製品を保護する方法の好適な形態のプロセスを示す図である。
【0034】
支持体上に設けられた本発明によるセキュリティ特徴は、主に特別なランダムパターンに基づくものであり、ランダムパターンは、本発明に従ったランダムパターンの製作に従って検出され、評価され、つまり、ランダムパターンを表す特性ベクトルに、場合によっては別のデータで補正された(非対称に)暗号化された署名に、変化させられる。そうして形成された署名も同様に支持体上に取り付けられ、好適には印刷され、署名は、真正性検査に際してランダムパターンと比較するために用いられる。したがってたとえば復号化された署名から、比較−ランダムパターンを求めるか、またはランダムパターンから比較−署名を求めることができる。両方の場合、利用者は、鍵、好適には公開鍵を使用する必要がある。
【0035】
そのような暗号方式は、たとえば未だ公開されていないドイツ連邦共和国特許出願第102008014322号明細書において、コールド箔または固着された粒子によって形成されたランダムパターンに関して記載されている。本発明には、ドイツ連邦共和国特許出願第102008014322号明細書において開示された暗号方式および評価方式が援用されるものとする。
【0036】
本明細書に記載したランダムパターンは、暗号方式のランダムパターン、つまり模造できないか、または不経済にしか模造できないランダムパターンを形成する。ランダムパターンは、特別な状態によって、その検出、暗号化、復号化および比較が簡単で間違いなく実現される。したがってランダムパターンは、一般的な偽造防止および/または加工防止だけでなく、個別の製品保護に用いられる、つまり、個々の製品は、所望のように、偽造として識別することができる。手短に述べると、考えられる偽造者は、製品を偽造するために、同種のランダムパターンだけでなく、同一のランダムパターンを模造するか、または形成することができる。暗号方式のランダムパターンは、好適には局所的なランダムパターンであり、つまり、支持体の、位置的に制限された規定の箇所に所望に位置決めされたランダムパターンおよび非ランダムパターンであり、ランダムパターンは、概ね支持体全体またはその大部分にわたって延びている。
【0037】
図1には、本発明に従って形成されるセキュリティ特徴の第1形態を概略的に示した。好適には紙、厚紙またはプラスチックから成る概ね平らな支持体1(たとえば枚葉紙または厚紙シートまたはプラスチックラベル)は、好適には印刷範囲2、たとえば活字および/または画像を有している。したがって好適には、支持体は、印刷製品、たとえば平版オフセット印刷で製作された製品、たとえば包装を形成する。支持体は、スペース的に制限された、好適には約50〜約500平方ミリメートルの面積に制限された、たとえば約20×20ミリメートルサイズのセキュリティ特徴3を有している。セキュリティ特徴は、暗号技術によるランダムパターン4とランダムパターン4に対応する署名5とを有している。選択的にセキュリティ特徴は、好適にはたとえば暗色または黒色で印刷された枠6またはその他のマーク、たとえば十字線を有することができる。枠は、ランダムパターンを検出して評価する際に、実質的に印として用いられる。部分Aには、セキュリティ特徴を拡大して示した。
【0038】
セキュリティ特徴3の暗号技術によるランダムパターン4は、本発明の第1形態によれば、柔軟な線材または繊維材7、つまり長さの制限された線材または繊維材がセキュリティ特徴に対応する特徴範囲8内で支持体上に付着されることにより、形成される。線材のみならず繊維材も、長さに対して薄く、したがって柔軟な造形物である。繊維材は、線材とは、主に小さな直径で異なっている。繊維材は、短繊維とも呼ばれる。好適には約3〜約20までの材料片が付着される。
【0039】
使用される柔軟な線材7は、好適には金属線材であるが、プラスチック線材を用いてもよい。銅線材が特に好適であり、銅線材は、たとえば約50〜100マイクロメートルの厚さ、特に約80マイクロメートルの厚さで、約3〜約30ミリメートルの長さを有している。横断面は、好適には円形である。銅は、形状安定性(ほぼ不変の曲率)に基づいて、後続のプロセスに対する丈夫さ、固有の色、光沢およびこれによって得られる簡単な識別もしくは検出に基づいて好適である。同時に、金属線材の視覚的(および触覚的)な外観は、たとえばコールド箔を取り付ける従来慣用の方法ではほとんど模造不可能である。上下に置かれた線材は、隆起した、したがって容易に検出可能な交点を有しており、丸まりにくい。
【0040】
使用される柔軟な繊維材7は、好適には人造繊維(たとえば繊維は、天然ポリマーまたは合成ポリマー、たとえばナイロン、グラスファイバ、炭素ファイバ、金属ファイバ、またはセラミックファイバから成る)であるが、天然ファイバ(たとえば植物繊維、絹糸、動物および人間由来の繊維、毛、または鉱物繊維)を用いてもよい。さらに単繊維から製造された繊維束(本明細書では繊維とはそのような繊維束とも解される)も考えられる。
【0041】
図1に示したセキュリティ特徴3の製作は、好適には以下のように行うことができる。特徴範囲8が、接着剤9(判り易くするために単に一部を線として示した)、たとえばUV接着剤で前処理され、つまり、接着剤9の、特徴範囲に限定された局所的な塗布によって、粘着状態にもたらされる。このために塗布装置10、たとえばスプレー装置またはローラ装置を用いることができる。次いで線材または繊維材7が、処理された特徴範囲に撒布(分配)される。
【0042】
分配は、たとえばエアジェットまたは搬送ベルトにより、一般的には塗布装置11により行うことができる。このために材料片7は、貯蔵部からエアジェットに調量され、エアジェットは、広げて特徴範囲8に向けられるか、または材料片7は、貯蔵部から搬送ベルト(搬送ベルトの搬送速度は変化させることができる)にもたらされ、特徴範囲に搬送される。分配は、特徴範囲内でランダムな材料片の空間的分配および方向付けをもたらす。さらに特徴範囲における材料片の数は、時間単位および面積単位ごとに供給される材料片に関して制御可能である。
【0043】
さらに材料片7は、加圧成形体として貯蔵して、回転ブラシなどによって加圧成形体から剥離して、個別化して支持体1に供給することもできる。
【0044】
選択的に材料片7は、追加的に、または専ら、後付けのラッカ付けまたは箔付け(対応する適切な装置12による)によって、たとえば透明なまたは少なくとも部分的に透明なラミネート13(判り易くするために単に一部を線で示した)によって定着され、擦過または破損に対して保護することができる。代替的に不透明な保護層が設けられる場合、材料片に由来し、好適には着色によって良好に認識される、保護部の隆起を検出することができる。
【0045】
選択的に線材料または繊維材料は、押し出すか、または送り出して、所定の長さまたはランダムな長さに切断することができる。この場合材料片7に、所定の曲率またはランダムな曲率を形成することができる。
【0046】
線材または繊維材7もしくは適切な材料は、簡単な検出のために、追加的に、着色し、金属コーティングしてよく、蛍光性または燐光性にしてよい。好適には、材料片は、支持体1に対して良好な視覚的コントラストを有しており、たとえば白色の支持体上に存在する暗色または黒色の材料片である。
【0047】
このように形成された暗号方式のランダムパターン4は、ドイツ連邦共和国特許出願第102008014322号明細書に開示された方法によれば、そこに詳しく開示されたコールド箔ランダムパターンの代わりに、適切な方法で、製造者側で検出され、署名5に変更され、署名5は、支持体1上に取り付けられる。利用者側で、暗号方式のランダムパターンまたは署名は検出可能であり、所有の鍵を用いて、認証比較することができる。この場合カメラを備えた移動無線機器を使用することができ、移動無線機器は、ランダムパターンの巨視的な性質を検出する。
【0048】
記録された画像から、線材または繊維材7の位置、方向性、曲率、交点などを抽出することができ、好適には、僅かにカーブした材料片は、好適には5つまでの基準点のポリゴン線によって近似することができる。基準点の座標ごとに9Bitのデータ量(40マイクロメートルの精度に相当する)では、10個の線材または繊維材および36Bitの追加的なフォーマット情報を前提として、単に117Byteの極めて僅かな全体量が生じ、これでランダムパターン4は十分な程度に精確に描写することができる。
【0049】
選択的に線材または繊維材は、不織布に織り込んで、支持体1に取り付けることができる。このために先ず好適には別の色の線材または繊維材7を含有する色付の不織布が、たとえば熱溶接によって製作され、不織布の一部が、支持体1上の特徴範囲8に配置され、たとえば接着される。たとえば数千、好適には約5000の暗色または黒色の繊維(約20から200ミリメートル長さ、約10〜100マイクロメートル厚さ、約5ミリメートルよりも大きな曲率半径)が、明色または白色の繊維から成る不織布内に存在する。
【0050】
別の形態では、線材または繊維材7は、好適には透明の支持材料内、たとえば箔内に織り込まれるか、もしくは支持材料(箔)に混合され、支持体1上に取り付けられる。したがってたとえば提供される箔のプラスチック粒子は、線材または繊維材と混合することができ、この材料から成る箔は、引抜加工、押出加工、または流込加工される。この場合好適には、材料片の分配および定着を省略することができ、その代わりに本発明に従って製作された箔が、特徴範囲8内で支持体上に取り付けられる。
【0051】
選択的な別の形態では、線材または繊維材7は、包装、たとえばプラスチック瓶を製造するために、直に素材に織り込むことができるので、ランダムパターン4は、好適には局所的に、包装材料内に認められる。
【0052】
図2には、本発明に従って製作されたセキュリティ特徴の第2形態を概略的に示した。部分Aには、セキュリティ特徴3を拡大して示した。本形態によれば、繊維材7は、流体(図示を判り易くするために単に一部を線として示した)13と共に、もしくは流体13内で、特にインキまたはラッカと共に、支持体1上に付着される。換言すると、好適には明色のインキまたは透明のラッカに、印刷前に、繊維材が混合される。そのようにして準備された流体によって、個別の印刷過程(適切な装置1による)で、暗号方式のランダムパターン4が印刷により形成される。そこで使用される繊維材は、好適には流体および支持体に対して識別可能で良好なコントラストを形成する固有色を有している。さらに繊維材は、好適には蛍光特性を有することができるので、UV光線下で良好な検出が実現される。
【0053】
使用される繊維材7は、概ね平滑または捲縮した材料片として提供することができる。さらに枝分かれした単繊維材(典型的には天然繊維)または大体において枝分かれしたまたは枝分かれしない単繊維材から成る繊維束を使用することができる。
【0054】
印刷過程は、繊維材によって損なわれない、たとえば網目形成されない簡単なインキ装置に関して、好適にはフレキソ印刷用版14を用いて行うことができる。繊維材7の印刷によって、材料片のランダムな位置決めおよび方向付けが保証されている。
【0055】
図2に示した形態でも、ランダムパターン4の記録および暗号方式の評価は、原則的にあらゆる消費者が入手可能な従来慣用の技術、たとえばカメラ移動無線機器で実現される。特に両形態の共通点によれば、形成されるランダムパターンは、肉眼でも認識可能であるので、最初の真贋性検査は、技術的な補助手段がなくても可能である。さらに両形態の共通点によれば、形成されるランダムパターンは、簡単で安価に製作可能であり、各製造プロセスは、容易に既存の印刷プロセスもしくは印刷機に組み込むことができる。
【0056】
図3のa〜eには、本発明による、偽造または模造から製品を保護する好適な方法を示した。先ず図3のaに示したように、予め生産されて、たとえば貯蔵ローラから提供された、好適には1cm2の小さな2次元の暗号方式のランダムパターン4(柔軟な線材または繊維材7から成る)が、製造者側で、つまりセキュリティ特徴3の生産中に、カメラ15によって検出され、そこで形成されたランダムパターン4の画像もしくは対応する画像データが、計算機16に送られる。
【0057】
計算機16は、画像データから、好適には2進数の特性ベクトルもしくは識別子を計算して求め、特性ベクトルもしくは識別子は、好適には約5つまでの基準点を備えたポリゴン線によって近似された線材または繊維材に関するデータを受け取る。特性ベクトルは、別のデータ(いわゆる追加情報、たとえば製造業者、製品、品質最低保証期間、地域コードなど)を補足することができる。次いで特性ベクトルの暗号化が、秘密の、つまり非公開、もしくは公には提供されない鍵を用いて行われる。暗号化された特性ベクトルは、ここでは署名として提供される。したがって署名は、識別子から推測され、識別子は、ランダムパターンから推測される。署名は、あとで、つまり真正性検査において、秘匿されていない、つまり公開された、もしくは公に提供された対応する鍵を用いて、再び識別子に変更される。暗号化および復号化のために、好適にはいわゆる公開鍵暗号方式(Public Key-Kryptographie)の原理に基づいて、さらに好適にはいわゆるRSA−暗号化(Rivest-Shamir-Adelman)に基づいて、従来慣用の方法が用いられる。RSA−暗号化は、たとえば別に用いられるソフトウェア「Pretty Good Privacy(PGP)」にも用いられる。
【0058】
現在最も安全で非対称の暗号方式として認められるRSA−暗号化を用いる場合、署名は、暗号化に用いられる鍵と少なくとも同じ長さである。現在一般的な、安全であると認められる鍵サイズは、約640Bit〜2048Bitである。署名長さに基づいて、好適には、署名は、たとえば1次元または好適には2次元の符合(2Dバーコード、データマトリックスコード)として、機械読取可能に印刷製品に取り付けることができる。
【0059】
このようにして形成された署名5は、図3のbに示したように、製造者側で計算機16から印刷機17(好適にはインクジェットプリンタ)に送られ、印刷機17によって、好適には特徴範囲8の隣で支持体上1に取り付けられ、特に印刷される。好適には、署名5は、2次元の符合(2Dバーコードまたはデータマトリックスコード)として取り付けられる。セキュリティ特徴3は、追加的に保護層、たとえばラミネートを備えることができ、これによって線材または繊維材7もしくは線材または繊維材7の位置および署名が、破損に対して保護される。
【0060】
セキュリティ特徴3は、次いで図3のcに示したように、保護しようとする製品18上、多くの場合包装(たとえば薬品包装、電子装置包装など)またはラベル上(たとえば衣服、靴用など)に取り付けられ、好適には接着され、製品18は販売され、そこで利用者側で、つまり消費者または顧客によって真正性検査することができる。
【0061】
真正性検査は、図3のdに示したように、セキュリティ特徴3が利用者側でカメラ19によって検出することにより行われる。好適には、表示装置を備えた、市販の移動無線機器(ハンディ)20の十分な解像度を有するカメラ19である。商用による使用者、いわゆる販売員または抽出(抜き取り)方式で行われる検査によって偽造を発見しようとする人員には、比較的高い解像度および比較的大きな表示装置を備えたプロ用の検査機器を提供することができる。
【0062】
移動無線機器20に設けられた計算機/メモリは、既に、署名を解読するための公開鍵を有している。公開鍵は、(好適には予め)一時的な、好適には暗号化された(機能−)データ接続を解して、好適にはセキュリティ特徴製造者の公共のサーバーから、移動無線機器にロードすることができる。本発明によれば、好適には、秘匿鍵を伝達する必要はなく、公開鍵だけを伝達すればよい。公開鍵によって、署名5は「現場で」、つまり移動無線機器または検査機器を用いて、貯蔵場所または売買場所で復号化することができる。本発明の別の利点によれば、移動無線機器または検査機器は、検査時に、製造者のサーバーへの接続を形成する必要がない。なぜならば公開鍵は、予めサーバーからダウンロードできるからである。したがってこのような方法は、継続してまたは一時的に接続が不可能であるような場所でも利用可能である。さらに本発明の利点によれば、公開鍵ひいては極めて小さなデータ量だけを現場に(移動無線機器または検査機器に)提供すればよい。とりわけ現場で予め製造者側で記録した検査目的のランダムパターンの全ての画像を含む広範囲の収集データを提供する必要はない。
【0063】
復号化によって、署名5は、特性ベクトルに戻されるか算出され、特性ベクトルは、暗号方式のランダムパターン4の画像に戻されるか算出され、その際算出された画像は、次いで比較特徴21として用いられる。真正性検査は、比較特徴21と暗号方式のランダムパターン4との間の合致について計算機でサポートして検査することにより終了する。このために比較特徴21が、好適には移動無線機器20の表示部22に示され、暗号方式のランダムパターン4の記録された画像23に重畳される。図3のeには、比較特徴21および画像23は、容易に理解するために僅かにずらして示した。比較特徴21と画像23とが一致すると、比較特徴21は、たとえば緑で表し、他の場合はたとえば赤で表し、使用者に視覚的に判りやすく真偽を伝えることができる。本物の場合は、追加的に「OK」または比較的判り易い視覚的または音響的な信号を出力することができる。真正性検査の結果に応じて、使用者、たとえばマーク付けされた製品の考えられる販売者が、購入決定をする。
【0064】
記載した方法によって、偽造された製品を、本物の製品、たとえばオリジナルの証書または薬品包装から問題なく区別することができる。偽造者は、線材または繊維材7を用いてランダムパターン4を形成して、(任意の)署名5を印刷することができる。しかしながら偽造者は、オリジナルの製造者の秘匿鍵に対するアクセスを有していないので、署名5は、ランダムパターン4から規則正しく導出されていない。したがって検査、たとえば比較特徴21の形成およびランダムパターン4もしくはその画像23との比較によって、偽造は疑いなく、ほとんど時間の遅れなく発見される。逆の方向でも、オリジナルの署名5が偽造者に伝達されても成功しない。なぜならば考えられる偽造者は、対応するランダムパターン4を所望に形成できないからである。
【0065】
考えられる偽造者が単数または複数のセキュリティ特徴を保有し、セキュリティ特徴を偽造または模造した製品に取り付ける場合でも、ごまかしは、復号化された追加情報から偽造の示唆が得られると、発見することができる。たとえば追加情報は、製品コード(つまり製品に関する販売許可制限)、耐用期間/品質保持期間(つまり時間的な販売許可制限)、地域コード/販売地域(つまり位置的な販売許可制源)または販売コード(つまり人に関する販売許可制源)を含んでいてよく、これによって考えられる偽造者は、偽物をお金にすることが極めて困難になる。たとえば復号化されて使用者に示された追加情報が指定するところによれば、製品Pは日付Tまで国Lにおいて販売者Vによる提供しか認められない。使用者が示されたデータP,T,L,V(図3のe参照)と、直に販売状況から得られたデータ(どの製品が何時何処で誰によって提供されるか)との間に相違点を見出すと、使用者は、購入を放棄することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 支持体、 2 印刷範囲、 3 セキュリティマーク、 4 暗号方式のランダムパターン、 5 署名、 6 枠、 7 線材または繊維材、 8 特徴範囲、 9 接着剤、 10 接着剤塗布装置、 11 線材または繊維材−取付装置、 12 ラッカまたは箔−取付装置、 13 インキまたはラッカ、 14 印刷装置、 15 カメラ、 16 計算機、 17 印刷機、 18 製品、 19 カメラ、 20 移動無線機器、 21 比較特徴、 22 表示部、 23 画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平らな支持体上にセキュリティ特徴を製作する方法であって、
暗号方式のランダムパターン(4)を形成する小片(7)を支持体(1)上に取り付ける方法において、
柔軟な線材または繊維材(7)を、セキュリティ特徴(3)に対応する特徴範囲(8)で支持体(1)上に付着させることを特徴とする、平らな支持体上にセキュリティ特徴を製作する方法。
【請求項2】
平らな支持体内にセキュリティ特徴を製作する方法であって、
暗号方式のランダムパターン(4)を形成する小片(7)を支持体(1)内に取り付ける方法において、
柔軟な線材または繊維材(7)を、セキュリティ特徴(3)に対応する特徴範囲(8)で支持体(1)内に付着させることを特徴とする、平らな支持体上にセキュリティ特徴を製作する方法。
【請求項3】
プラスチック線材または金属線材(7)、特に銅線材(7)を、支持体(1)上または支持体(1)内に付着させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
線材または繊維材(7)を、支持体(1)の、接着剤(9)の付いた特徴範囲(8)上に付着させる、特に撒布する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
線材または繊維材(7)を、保護層(13)、特にラミネート(13)で覆う、請求項1記載の方法。
【請求項6】
液体(13)、特にインキ(13)またはラッカ(13)と共に繊維材(7)を、支持体(1)上に付着させる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
線材または繊維材(7)は、少なくとも湾曲を有している、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
着色された、または蛍光性の線材または繊維材(7)を、支持体(1)上に付着させるか、もしくは支持体(1)内に付着させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
線材または繊維材(7)を、不織布または箔内に取り付けて、支持体(1)上に取り付ける、請求項1記載の方法。
【請求項10】
セキュリティ特徴を備えた印刷製品において、
セキュリティ特徴(3)が、支持体(1)上に付着された、ランダムパターン(4)を形成する柔軟な線材または繊維材(7)を備えていることを特徴とする、印刷製品。
【請求項11】
製品の真正性を検査する方法において、
−製品(18)に割り当てられた署名(5)を検出し、
−署名(5)を、復号化によって識別子に変化させ、
−識別子から、比較特徴(21)を形成し、
−比較特徴(21)を、計算機でサポートしながら、製品(18)に割り当てられたランダムパターン(4)の画像(23)と比較する、
ことを特徴とする、製品の真正性を検査する方法。
【請求項12】
署名(5)を、移動無線機器(20)のカメラ(19)で検出し、比較特徴(21)を、移動無線機器(20)の表示部(22)に示す、請求項11記載の方法。
【請求項13】
比較特徴(21)を、移動無線機器(20)の表示部(22)で、ランダムパターン(4)の画像に重畳して示す、請求項12記載の方法。
【請求項14】
偽造から製品を保護する方法において、
−柔軟な線材または繊維材(7)から成る、暗号方式のランダムパターン(4)を形成し、
−ランダムパターン(4)をカメラ(15)で検出し、
−ランダムパターン(4)の画像から識別子を形成し、
−識別子を、秘密鍵を用いて、署名(5)に変化させ、
−ランダムパターン(4)および署名(5)を、保護しようとする製品上に取り付け、
−署名(5)を、カメラ(19)で検出し、
−署名(5)を、公開鍵を用いて復号化することにより識別子に変化させ、
−識別子から、比較特徴(21)を形成し、
−比較特徴(21)を、計算機でサポートしながら、ラダムパターン(4)の画像(23)に重畳して、比較する、
ことを特徴とする、偽造から製品を保護する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a−3e】
image rotate


【公表番号】特表2011−520644(P2011−520644A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505423(P2011−505423)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002914
【国際公開番号】WO2009/130009
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】