説明

平版印刷版原版用中間層塗布液、平版印刷版原版の製造方法及び平版印刷版原版

【課題】過酷条件で長期間の保存を行った場合にも、良好な耐刷性を維持しつつ、且つ、良好な汚れ防止性を達成しうる平版印刷版原版用中間層塗布液、及びそれを用いた平版印刷版原版の製造方法及び平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】アルミニウム支持体上に、中間層及び画像記録層をこの順に有する平版印刷版原版用の中間層塗布液であって、該中間層塗布液が、一般式(I)で表される化合物、及びアルミニウム支持体吸着性の官能基を少なくとも1種有する化合物を含有することを特徴とする、平版印刷版原版用中間層塗布液。


(式中、R1は炭素数2〜10の有機置換基を表し、R2〜R7はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の有機置換基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版の製造に用いる中間層用の塗布液(中間層塗布液)に関する。更に、本発明は、該中間層塗布液を用いた平版印刷版原版の製造方法、及び平版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像部に対応する画像記録層を残存させ、非画像部に対応する不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤含有現像液によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
従来の平版印刷版原版の製版工程においては、露光の後、不要な画像記録層を現像液などによって溶解除去する工程が必要であるが、このような付加的に行われる湿式処理を不要化又は簡易化することも課題の一つとして挙げられている。特に、近年、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっており、上記課題解決への要請は一層強くなってきている。
【0004】
これに対して、簡易な製版方法の一つとして、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の中で行えるような画像記録層を用い、露光後、印刷機上で画像記録層の不要部分を除去して平版印刷版を得る、機上現像と呼ばれる方法が提案されている。
機上現像の具体的方法としては、例えば、湿し水、インキ溶剤又は湿し水とインキとの乳化物に溶解し又は分散することが可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を用いる方法、印刷機のローラ類やブランケットとの接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法、湿し水、インキ溶剤などの浸透によって画像記録層の凝集力又は画像記録層と支持体との接着力を弱めた後、ローラ類やブランケットとの接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法が挙げられる。
なお、本発明においては、特別な説明がない限り、「現像処理工程」とは、印刷機以外の装置(通常は自動現像機)を使用し、液体(通常はアルカリ性現像液、界面活性剤含有現像液、および、親水性ポリマー含有水溶液など)を接触させることにより、平版印刷版原版の未露光部分の画像記録層を除去し、親水性支持体表面を露出させる工程を指し、「機上現像」とは、印刷機を用いて、液体(通常は印刷インキ及び/又は湿し水)を接触させることにより、平版印刷版原版の未露光部分の画像記録層を除去し、親水性支持体表面を露出させる方法及び工程を指す。
【0005】
一方、近年、画像情報をコンピュータで電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート技術(CTP)が注目されてきている。したがって、このような技術に適応した平版印刷版原版を得ることもまた、重要な技術課題の一つとなっている。
【0006】
上述したような製版作業の簡素化、乾式化又は無処理化では、露光後の画像記録層が現像処理によって定着されていないので感光性を有し、印刷までの間にかぶってしまう可能性があるため、明室又は黄色灯下で取り扱い可能な画像記録層及び光源が好ましく用いられる。
そのようなレーザー光源としては、波長760〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザー及びYAGレーザー等の固体レーザーは、高出力かつ小型のものを安価に入手できるようになったことから、極めて有用である。また、UVレーザーも用いることができる。
【0007】
平版印刷で耐刷性と汚れ防止性とを両立するためには、平版印刷版原版において支持体表面と相互作用する官能基を有する繰返し単位と、画像記録層と相互作用する官能基とを有する繰返し単位を有する共重合体を中間層に設ける方法がある。画像記録層が重合系である場合、特に機上現像型の刷版の場合、例えば、特許文献1には支持体表面と相互作用する官能基を有する繰返し単位と、エチレン性不飽和結合を少なくとも有する繰返し単位とを有する共重合体を中間層として用いることが提案されている。
また、画像記録層において赤外線レーザー照射部の溶解性が、未露光部よりも高くなることを特徴とするポジ型の場合は、例えば、特許文献2には、支持体表面と相互作用する官能基を有する繰返し単位と、画像録層と水素結合あるいはファンデルワールス力などにより相互作用するような繰返し単位とを有する共重合体を中間層として用いることが提案されている。
これらの方法は、非常に有効な技術ではあるが、平版印刷版を高温高湿条件で長期間保存した際には、製造直後に比べて非画像部の汚れ防止性が悪化する場合があった。
更に、機上現像型CTPの場合は、高温高湿条件で長期間保存した際に機上現像性が悪化する場合があり、製品寿命及び汎用性の点からこれらの改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−78999号公報
【特許文献2】特開平10−282645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、過酷条件で長期間の保存を行った場合にも、良好な耐刷性を維持しつつ、且つ、良好な機上現像性あるいは汚れ防止性を達成しうる平版印刷版原版用の中間層塗布液、及びそれを用いた平版印刷版原版の製造方法及び平版印刷版原版を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、種々の中間層組成物を検討した結果、特定の環状アミド化合物を含有する中間層組成物から中間層を形成させた平版印刷版原版が、過酷条件で長期間の保存を行った場合にも、充分な耐刷性を有し、且つ、良好な機上現像性および汚れ防止性を発揮できることを見出し、本発明に到達した。
従って本発明は、アルミニウム支持体上に中間層及び画像記録層をこの順に有する平版印刷版原版用の中間層塗布液であって、該中間層塗布液が、下記一般式(I)で表される化合物、及びアルミニウム支持体吸着性の官能基を少なくとも1種有する化合物を含有することを特徴とする、平版印刷版原版用中間層塗布液。
【化1】

(式中、R1は炭素数2〜10の有機置換基を表し、R2〜R7はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10の有機置換基を表す。)
【0011】
上記一般式(I)で表される化合物の例として、R1が炭素数2〜8のアルキル基を表し、例えばエチル基、プロピル基又はブチル基を表し、R2〜R7が水素原子である化合物がある。
本発明の実施態様では、上記アルミニウム支持体吸着性の官能基を少なくとも1種有する化合物として、アルミニウム支持体吸着性の官能基を少なくとも1種有する繰返し単位を含む高分子化合物を用いることができる。該化合物のさらなる具体例として、カルボキシル基、ホスホン酸基、リン酸エステル基、アンモニウム基、ホスホニウム基、N−オキシド基、及び−C=O-CH2-C=O−から選択される官能基を少なくとも1種有する繰返し単位を含む高分子化合物が挙げられる。
本発明の実施態様では、該中間層塗布液がさらに、1気圧における沸点が50℃〜130℃の有機溶剤、例えばエタノールを10.0〜99.5質量%含有することができる。
本発明の中間層塗布液はさらに水を含んでもよい。
【0012】
本発明はさらに、アルミニウム支持体上に、上記平版印刷版原版用中間層塗布液を塗布してなる中間層を設けた後、さらに、画像記録層を設けることを特徴とする、平版印刷版原版の製造方法に向けられている。本発明はさらに、アルミニウム支持体上に、上記平版印刷版原版用中間層塗布液を塗布してなる中間層、及び画像記録層をこの順に有することを特徴とする平版印刷版原版に向けられている。本発明の平版印刷版原版の例として、画像記録層がラジカル重合系であるネガ型平版印刷版原版が挙げられる。本発明の平版印刷版原版の別の例として、画像記録層において赤外線レーザー照射部の溶解性が未露光部よりも高くなる、ポジ型平版印刷版原版が挙げられる。本発明の平版印刷版原版の実施態様としてまた、画像記録層が、露光後、印刷機上で印刷インキと湿し水とが供給されて未露光部分が除去されることにより画像形成可能である、平版印刷版原版がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の平版印刷版原版用中間層塗布液を用いて中間層を設けた平版印刷版原版によれば、過酷条件で長期間の保存を行った場合にも、製版後、良好な耐刷性を維持しつつ、且つ、良好な汚れ防止性を達成することができる。また、本発明の平版印刷版原版用中間層塗布液を用いて中間層を設けた平版印刷版原版によれば、優れた機上現像性及び耐刷性を発揮でき、該平版印刷版原版を長期間保存したとしても機上現像性が悪化しない。本発明の平版印刷版原版用中間層塗布液によれば、経時安定性の高い平版印刷版原版が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の平版印刷版原版用中間層塗布液は、平版印刷版原版の製造において画像記録層と支持体との間に中間層(下塗り層ともいう)を塗設するための塗布液である。
中間層は、ネガ型の平版印刷版原版であれば、未露光部においては、画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせることにより機上現像性ならびに汚れ防止性を向上させるとともに、画像部においては、画像記録層と支持体との密着性を向上させることで耐刷性を向上させる機能を有する。
本発明の平版印刷版原版用中間層塗布液は、(i)下記一般式(I)で表される化合物、及び(ii)アルミニウム支持体吸着性の官能基を少なくとも1種有する化合物(化合物(ii))を、必須成分として含有する。
【0015】
(i)一般式(I)で表される化合物
【化2】

(式中、R1は炭素数2〜10の有機置換基を表し、R2〜R7はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10の有機置換基を表す。)
【0016】
一般式(I)の化合物を中間層塗布液に含有させることで、化合物(ii)におけるアルミニウム支持体吸着性官能基(基板吸着性官能基)である極性基と相互作用し、化合物(ii)が高分子化合物であると該高分子中の基板吸着性基同士の相互作用が抑制され、該高分子が収縮した高次構造をとることなく塗布され、基板を有効に覆い尽くすことが可能となり、汚れ防止性と耐刷性を両立できると推定される。
一般式(I)において、R1は炭素数2〜10の置換基を表し、窒素原子に置換可能な基であれば任意のものを選択できるが、好ましくは、炭素数2〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基又は炭素数6〜10のアリール基である。
【0017】
1で表されるアルキル基は、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜8、さらに好ましくは炭素数2〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。R1で表されるアルキル基は無置換でも、置換基を有していても良い。
1で表されるアルキル基が無置換であるとき、その具体例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などが挙げられる。
1が置換基を有する場合(すなわち、置換アルキル基である場合)、置換アルキル基のアルキル部分としては、上述した炭素数2〜10のアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましい炭素原子数の範囲についても上記アルキル基と同様である。
【0018】
1で表されるアルキル基に導入可能な置換基としては、以下に例示する非金属原子から構成される1価の置換基も挙げられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N−アルキルウレイド基、N,N−ジアルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N,N−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、
【0019】
アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィイナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、
【0020】
シアノ基、ニトロ基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基など)、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基などが挙げられる。
【0021】
上記置換アルキル基の好ましい具体例としては、メトキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、s−ブトキシブチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、アセチルオキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、ピリジルメチル基、トリメチルシリルメチル基、メトキシエチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、
【0022】
カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、ホスホノブチル基、ジエチルホスホノブチル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナトブチル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基などを挙げることができる。
【0023】
1で表されるアルケニル基は炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜8、特に好ましくは炭素数2〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基を挙げることができる。R1で表されるアルケニル基は無置換でも、更に置換基を有していても良い。
1で表されるアルケニル基が無置換であるとき、その具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−オクテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−ブテニル基、アリル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基などが挙げられる。
【0024】
1で表されるアルケニル基が置換基を有する場合(すなわち、置換アルケニル基である場合)、置換アルケニル基のアルケニル部分としては、上述した炭素数2〜10のアルケニル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましい炭素原子数の範囲についても上記アルケニル基と同様である。
1で表されるアルケニル基に導入可能な置換基としては、上記置換アルキル基の説明中に記載の置換基を挙げることができる。
【0025】
1で表されるアルキニル基は、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜8、特に好ましくは炭素数2〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキニル基を挙げることができる。R1で表されるアルキニル基は無置換でも、更に置換基を有していても良い。
1で表されるアルキニル基が無置換であるとき、その具体例としては、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基などが挙げられる。
1で表されるアルキニル基が置換基を有する場合(すなわち、置換アルキニル基である場合)、置換アルキニル基のアルキニル部分としては、上述した炭素数2〜10のアルキニル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましい炭素原子数の範囲についても上記アルキニル基と同様である。
1で表されるアルキニル基に導入可能な置換基としては、上記置換アルキル基の説明中に記載の置換基を挙げることができる。
【0026】
1で表されるアリール基は炭素数6〜10、好ましくは炭素数6〜9、特に好ましくは炭素数6〜8の無置換又は置換アリール基である。このようなアリール基の例としてフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ジメチルフェニル基、クロロフェニル基などがある。
1で表されるアリール基が置換基を有する場合(すなわち、置換アリール基である場合)、置換アリール基のアリール部分としては、上述した炭素数6〜10のアリール基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましい炭素原子数の範囲についても上記アリール基と同様である。
1で表されるアリール基に導入可能な置換基としては、上記置換アルキル基の説明中に記載の置換基を挙げることができる。また、ベンゼン環に、更にベンゼン環や、ヘテロ環が縮合して縮合環を形成していてもよい。具体例としては、フェニル基、ナフチル基などを挙げることもできる。
【0027】
1は好ましくはアルキル基であり、より具体的にはエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが好ましく、特にエチル基、プロピル基及びブチル基が好ましい。
【0028】
2〜R7はそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜10の有機置換基を表す。R2〜R7が置換基を表すとき、炭素原子に置換可能な基であれば任意のものを選択できる。
2〜R7で表される置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルキニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のヘテロ環基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N−アルキルウレイド基、N,N−ジアルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N,N−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、
【0029】
アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィイナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、などが挙げられる。
2〜R7は互いに結合して環を形成していても良い。
【0030】
2〜R7は、好ましくは水素原子、又は炭素数1〜8のアルキル基であり、更に好ましくは水素原子、又は炭素数1〜し6のアルキル基であり、特に好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など)である。
【0031】
一般式(1)において、R1、及びR2〜R7の特に好ましい組み合わせは、R1がエチル基、プロピル基、又はブチル基であり、R2〜R7が全て水素原子であるときである。
以下に、一般式(1)で表される化合物の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【化3】

(n)は分岐していない直鎖状の基を意味する。
【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
本発明の平版印刷版原版用中間層塗布液において、一般式(I)の化合物の含有量は一般的に0.01〜80質量%が適当であり、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%である。本発明の平版印刷版原版用中間層塗布液を用いて中間層を塗設後、一般式(I)の化合物は中間層中に残存しない方が好ましい。すなわち、一般式(I)の化合物は、塗布溶剤として機能できるものが好ましい。
【0037】
(ii)アルミニウム支持体吸着性の官能基を少なくとも1種有する化合物
本発明の平版印刷版原版用中間層塗布液は、さらにアルミニウム支持体への吸着性官能基を有する化合物(以下、化合物(ii)ともいう)を含有する。
化合物(ii)の例として、アルミニウム支持体吸着性の官能基を少なくとも1種有する繰返し単位を含む高分子化合物(高分子化合物(ii)ともいう)が挙げられる。
化合物(ii)はアルミニウム支持体吸着性の官能基の他に、親水性基、架橋性基あるいは、これらを共に有することが好ましい。化合物(ii)としてはさらに具体的に、アルミニウム支持体吸着性基を有するモノマーと親水性基を有するモノマーを共重合してなる高分子化合物、又はアルミニウム支持体吸着性基を有するモノマーと架橋性基を有するモノマーを共重合してなる高分子化合物が好ましく、アルミニウム支持体吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、及び架橋性基を有するモノマーを共重合してなる高分子化合物であることが特に好ましい。
また、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物なども好適に用いられる。
【0038】
化合物(ii)のアルミニウム支持体表面への吸着性は、例えば、以下の方法で判断できる。
試験化合物を易溶性の溶媒に溶解させた塗布液を作製し、その塗布夜を乾燥後の塗布量が30mg/m2となるように支持体上に塗布・乾燥させる。次に、試験化合物を塗布した支持体を、易溶性溶媒を用いて十分に洗浄した後、洗浄除去されなかった試験化合物の残存量を測定して支持体吸着量を算出する。ここで残存量の測定は、残存化合物量を直接定量してもよいし、洗浄液中に溶解した試験化合物量を定量して算出してもよい。化合物の定量は、例えば、蛍光X線測定、反射分光吸光度測定、液体クロマトグラフィー測定などで実施できる。本発明においてアルミニウム支持体吸着性がある化合物とは、上記のような洗浄処理を行っても1mg/m2以上残存する化合物である。
【0039】
アルミニウム支持体の表面への吸着性基は、アルミニウム支持体表面に存在する物質(例えば、アルミニウム、アルミニウム酸化物、シリケートなど)と、相互作用(例えば、イオン結合、水素結合、配位結合、分子間力による結合)を引き起こすことができる官能基である。吸着性基としては、酸基又はカチオン性基が好ましい。
酸基の例としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基(−CO2H)、スルホン酸基(−SO3H)、硫酸エステル基(−OSO3H)、ホスホン酸基(−PO32)、リン酸エステル基(−OPO32)、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−、−C=O-CH2-C=O−などが挙げられる。酸基は、酸解離定数(pKa)が7以下であることが好ましい。
酸基として、更に好ましくは、カルボキシル基、ホスホン酸基、リン酸エステル基、または、−C=O-CH2-C=O−であり、特に好ましくは、ホスホン酸基、またはリン酸エステル基である。これらの基は、単独でも2種類以上が組み合わされていてもよく、対イオンを有していてもよい。
【0040】
カチオン性基は、オニウム基、あるいはN−オキシド基であることが好ましい。オニウム基の例としては、アンモニウム基、ホスホニウム基、アルソニウム基、スチボニウム基、オキソニウム基、スルホニウム基、セレノニウム基、スタンノニウム基、ヨードニウム基が挙げられる。中でも、アンモニウム基、ホスホニウム基、及びスルホニウム基が好ましく、アンモニウム基、及びホスホニウム基が更に好ましく、アンモニウム基が最も好ましい。カチオン性基として特に好ましくは、アンモニウム基、あるいはN−オキシド基である。これらの基は、単独でも2種類以上が組み合わされていてもよく、対イオンを有していてもよい。
【0041】
化合物(ii)として好適な高分子化合物を合成する際に用いられる、アルミニウム支持体吸着性基を有するモノマーの特に好ましい例としては、下記一般式(U1)又は一般式(U2)で表される化合物が挙げられる。
【化7】


上記一般式(U1)及び(U2)中、R1、R2、及びR3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。
1、R2、及びR3は、各々独立に、水素原子、又は炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は炭素原子数が1乃至3のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子、又はメチル基であることが最も好ましい。R2及びR3は、水素原子であることが特に好ましい。
Zは、アルミニウム支持体表面に吸着する官能基であり、該吸着性の官能基については、前述した通りである。
【0042】
一般式(U1)及び(U2)において、Lは、単結合、又は2価の連結基である。
Lは、2価の脂肪族基(アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(アリレン基、置換アリレン基)、又は2価の複素環基であるか、或いはそれらと、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、イミノ(−NH−)、置換イミノ(−NR−、Rは脂肪族基、芳香族基、又は複素環基)、又はカルボニル(−CO−)との組み合わせであることが好ましい。
【0043】
前記2価の脂肪族基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。2価の脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20が好ましく、1乃至15が更に好ましく、1乃至10が最も好ましい。また、2価の脂肪族基は、不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。更に、2価の脂肪族基は、置換基を有していてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
前記2価の芳香族基の炭素原子数は、6乃至20が好ましく、6乃至15が更に好ましく、6乃至10が最も好ましい。また、2価の芳香族基は、置換基を有していてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、脂肪族基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
前記2価の複素環基は、複素環として5員環又は6員環を有することが好ましい。また、複素環に他の複素環、脂肪族環又は芳香族環が縮合していてもよい。2価の複素環基は、置換基を有していてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N−R、Rは脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、脂肪族基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
【0044】
Lは、複数のポリオキシアルキレン構造を含む二価の連結基であることが好ましい。ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン構造であることが更に好ましい。Lがポリオキシアルキレン構造を表す時の具体例としては、−(OC24n−、−(OC36m−、−(OC24n−(OC36m−(n、mは2以上の整数)などを挙げることができる。
【0045】
一般式(U1)において、Xは、酸素原子(−O−)、又はイミノ(−NH−)である。Xは、酸素原子であることが更に好ましい。
一般式(U2)において、Yは炭素原子又は窒素原子である。Y=窒素原子でY上にLが連結し四級ピリジニウム基になった場合、それ自体が吸着性を示すことからZは必須ではなく、Zが水素原子でもよい。
【0046】
以下に、アルミニウム支持体吸着性基を有するモノマーの特に好ましい例を示す。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【0047】
化合物(ii)としては、更に、親水性基を有することが好ましい。好ましい親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基など)、ポリオキシアルキレン基(ポリオキシエチル基、ポリオキシプロピル基、アルキルポリオキシエチル基、アルキルポリオキシプロピル基)、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホンアミド基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、およびその塩などが挙げられる。
更に好ましくは、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基など)、ポリオキシアルキレン基(ポリオキシエチル基、ポリオキシプロピル基、アルキルポリオキシエチル基、アルキルポリオキシプロピル基)、アミド基、スルホンアミド基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、およびその塩などが挙げられる。
特に好ましくは、ポリオキシアルキレン基(ポリオキシエチル基、ポリオキシプロピル基、アルキルポリオキシエチル基、アルキルポリオキシプロピル基)、スルホン酸基、およびその塩などが挙げられる。
【0048】
ポリオキシアルキレン基を有するモノマーの好ましい例としては、メタクリル酸(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)、アクリル酸(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)、メタクリル酸(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル)、アクリル酸(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル)、メタクリル酸(2−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、アクリル酸(2−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、メタクリル酸(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)、アクリル酸(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)、メタクリル酸(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、アクリル酸(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、メタクリル酸(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、アクリル酸(2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、メタクリル酸(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)、メタクリル酸(2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロピル)、アクリル酸(2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロピル)、メタクリル酸(2−(2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ)プロピル)、アクリル酸(2−(2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ)プロピル)、メタクリル酸(2−(2−(2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ)プロポキシ)プロピル)、アクリル酸(2−(2−(2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ)プロポキシ)プロピル)、メタクリル酸(2−(2−メトキシプロポキシ)プロピル)、アクリル酸(2−(2−メトキシプロポキシ)プロピル)、メタクリル酸(2−(2−(2−メトキシプロポキシ)プロポキシ)プロピル)、アクリル酸(2−(2−(2−メトキシプロポキシ)プロポキシ)プロピル)、メタクリル酸(2−(2−(2−(2−メトキシプロポキシ)プロポキシ)プロポキシ)プロピル)、アクリル酸(2−(2−(2−(2−メトキシプロポキシ)プロポキシ)プロポキシ)プロピル)、メタクリル酸(2−(2−メトキシプロポキシ)プロピル)などを挙げることができる。
【0049】
スルホン酸基を有するモノマーの好ましい例としては、メタリロイルオキシベンゼンスルホン酸、アクリロイルオキシベンゼンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(3−アクリロイルオキシプロピル)ブチルスルホン酸、およびその塩が挙げられる。更に好ましくは、ビニルスルホン酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびその塩が挙げられる。
親水性基を有するモノマーとして特に好ましくは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩である。
【0050】
高分子化合物である化合物(ii)は、画像記録層が重合系の場合は、更に重合性基を有することが好ましい。重合性基によって画像部との密着の向上が得られる。高分子化合物(ii)に架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の側鎖中に導入したり、高分子樹脂の極性置換基と対荷電を有する置換基とエチレン性不飽和結合を有する化合物で塩構造を形成させたりして導入することができる。
【0051】
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有する高分子化合物の例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−COOR又は−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有する高分子化合物を挙げることができる。
【0052】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2nCR1=CR23、−(CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2nNH−CO−O−CH2CR1=CR23、−(CH2n−O−CO−CR1=CR23、及び−(CH2CH2O)2−X(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基若しくはアリールオキシ基を表し、R1とR2又はR3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
【0053】
エステル残基の具体例としては、−CH2CH=CH2(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C65、−CH2CH2OCOCH=CH−C65、−CH2CH2NHCOO−CH2CH=CH2、及び−CH2CH2O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2CH=CH2、−CH2CH2O−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2CH2OCO−CH=CH2が挙げられる。
高分子化合物(ii)を構成する架橋性基を有するモノマーとしては、上記架橋性基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドが好適である。
【0054】
高分子化合物(ii)における架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、高分子樹脂1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と汚れ防止性の両立、及び良好な保存安定性が得られる。
【0055】
高分子化合物(ii)は、重量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
高分子化合物(ii)は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
中間層塗布液において、化合物(ii)は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の中間層塗布液中の化合物(ii)の含有量は、0.01〜50質量%が適当であり、好ましくは0.1〜40質量%であり、特に好ましくは0.5〜30質量%である。
【0056】
以下に、本発明の中間層塗布液に用いることのできる高分子化合物(ii)の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化13】

【化14】

【化15】

【0057】
本発明の中間層塗布液は、上記一般式(I)で表される化合物に、上述の化合物(ii)が溶解、又は分散された溶液、乳化物、又は分散物であることが好ましく、溶液であることが更に好ましい。本発明の中間層塗布液は、化合物(ii)の構成要素となる上述したようなモノマーから適宜選んだ1種又は2種以上を、上記一般式(I)で表される化合物中で反応させる、あるいは、別の溶媒中で反応させた上で、一般式(I)で表される化合物と混合することによって調製することができる。
本発明の中間層塗布液は、取扱い性、塗布適性、乾燥性の観点から、更に、1気圧における沸点が50℃〜130℃の有機溶剤を、含有することが好ましい。このような有機溶剤の好ましい例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパン−2−イル・アセテート、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノールなどを挙げることができる。これらの溶媒は、単独で用いても、複数の混合物として用いても良い。これらの中で、特にメタノールが好ましい。
本発明の中間層塗布液における上記有機溶剤の含有量は、10〜99.5質量%が適当であって、好ましくは20〜95質量%であり、より好ましくは30〜92質量%である。
本発明の中間層塗布液は、さらに水を含んでいても良い。水の含有量は0.5〜40.0質量%の範囲が適当であり、好ましくは1.0〜30質量%であり、より好ましくは2.0〜25質量%である。
【0058】
本発明の中間層塗布液を支持体に塗布する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
中間層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
【0059】
本発明の中間層塗布液は、公知の任意の方式の平版印刷版原版に用いることができる。好ましい例としては、特開2001-264991号公報などに記載のラジカル重合型アルカリ現像平版印刷版原版、特開2007-233071号公報などに記載のラジカル重合型簡易現像平版印刷版原版、特開2006-116941号公報、特開2006-111860号公報、又はUS7153632B2などに記載のラジカル重合型機上現像平版印刷版原版、特開2004-341141号公報、あるいは、特開2003-241388号公報に記載のサーマルポジ型平版印刷版原版など、あるいは、熱融着型の平版印刷版原版を挙げることができるが、好ましくはラジカル重合型平版印刷版原版またはサーマルポジ型平版印刷版原版である。ラジカル重合型平版印刷版原版においては、機上現像平版印刷版原版が特に好ましい。
【0060】
(画像記録層)
以下、本発明の中間層塗布液を用いて製造する平版印刷版原版における画像記録層の構成について、具体例によって詳細に説明する。
<ラジカル重合型>
フォトポリマータイプの光重合型感光性組成物(以下「光重合性組成物」という)は、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物(以下、単に「エチレン性不飽和結合含有化合物」という)と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを必須成分として含有し、必要に応じて、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を含有する。
光重合性組成物に含有されるエチレン性不飽和結合含有化合物は、光重合性組成物が活性光線の照射を受けた場合に、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋し硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体およびオリゴマー)、これらの混合物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。またウレタン系付加重合性化合物も好適である。
【0061】
光重合性組成物に含有される開始剤としては、使用する光源の波長により、種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができ、例えば、特開2001−22079号公報〔0021〕〜〔0023〕で示されている開始系が好ましい。光重合性組成物に含有される高分子結合剤は、光重合性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、感光層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が使用される。上記高分子としては同公報〔0036〕〜〔0063〕で示されている物が有用である。その他光重合性組成物には、同公報〔0079〕〜〔0088〕で示されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることも好ましい。
また、上記感光層の上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることが好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、ポリビニルアルコール又はその共重合体が挙げられる。さらにフォトポリマータイプの感光層の下層として特開2001−228608号公報〔0124〕〜〔0165〕で示されているような中間層もしくは接着層を設けるのも好ましい。
かかるフォトポリマータイプの光重合型感光性組成物を用いた感光性平版印刷版は高圧水銀灯などの紫外線、アルゴンレーザーおよび紫外線レーザーを用いて画像様露光された後、現像液で現像される。好ましい現像液としては、必要に応じアルカリ剤、有機溶剤、界面活性剤、硬水軟化剤、還元剤、有機カルボン酸、無機塩、消泡剤や更に必要に応じて当業界で知られた種々の添加剤を含有した水溶液が用いられる。特に好ましい例としては、特公昭58−54341号公報、特開平8−248643号公報、特開2002−91015号公報、および特開平8−171214号公報記載の現像液などが挙げられる。
【0062】
サーマルネガタイプの感熱層は、赤外線レーザ照射部が硬化して画像部を形成するネガ型の感熱層である。
このようなサーマルネガタイプの感熱層の一つとして、重合型の層が好適に挙げられる。重合層は、(A)赤外線吸収剤と、(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物と、(D)バインダーポリマーとを含有する。
重合層においては、赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルが発生する。ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化する。(A)赤外線吸収剤としては、例えば、前述したサーマルポジタイプの感熱層に含有される前記光熱変換物質が挙げられるが、特にシアニン色素の具体例としては特開2001−133969号公報の段落番号〔0017〕〜〔0019〕に記載されたものを挙げることができる。(B)ラジカル発生剤としては、オニウム塩が挙げられ、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号〔0030〕〜〔0033〕に記載されたものを挙げることができる。(C)ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。(D)バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましくい、水または弱アルカリ水に可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。特にこれらの中で、ベンジル基またはアリル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れており、好適である。(C)ラジカル重合性化合物および(D)バインダーポリマーに関しては同公報〔0036〕〜〔0060〕に詳しく記載された物が使用できる。その他の添加物としては、同公報〔0061〕〜〔0068〕で示されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることも好ましい。
【0063】
<サーマルポジタイプ>
サーマルポジタイプの感熱層は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。このアルカリ可溶性高分子化合物は、高分子中に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、およびこれらの混合物を包含し、特に下記(1)や(2)のような酸性基を有するものが、アルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい:(1)フェノール性ヒドロキシ基(−Ar−OH)、(2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R)。とりわけ、赤外線レーザ等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有することが好ましく、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂;ピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。さらに詳しくは特開2001−305722号公報の〔0023〕〜〔0042〕で示されている高分子が好ましく用いられる。
【0064】
光熱変換物質は、露光エネルギーを熱に変換して感熱層の露光部領域の相互作用解除を効率よく行うことを可能とする。記録感度の観点から、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好ましい。染料としては。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)等の染料を用いることができる。中でも、シアニン染料が好ましく、特開2001−305722号公報の一般式(I)で示されたシアニン染料を挙げることができる。サーマルポジタイプの組成物中には、前記コンベンショナルポジタイプで記述した物と同様の感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましく、詳しくは特開2001−305722号公報の〔0053〕〜〔0059〕で示されている化合物が好ましい。
【0065】
サーマルポジタイプの感熱層は単層でもよいし、特開平11−218914号公報に記載されているような2層構造として設けてもよい。
サーマルポジタイプの感熱層と支持体との間には、下塗層を設けることが好ましい。下塗層に含有される成分としては特開2001−305722号公報の〔0068〕で示された種々の有機化合物が挙げられる。
これらアルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する感熱性組成物を支持体上に設けたサーマルポジ型感熱性平版印刷版原版は赤外線レーザを用いて画像様露光された後、アルカリ性現像液で現像される。かかる現像液としては、特公昭57−7427号公報、特許第3086354号公報、特開平11−216962号公報、特開2001−51406号公報、特開2001−174981号公報、および特開2002−72501号公報記載の現像液などが好ましい例として挙げられる。
【0066】
<ラジカル重合型機上現像に対応した平版印刷版原版>
(A)赤外線吸収剤(B)ラジカル重合開始剤、(C)重合性化合物、および、(D)バインダーポリマーを含有して、重合反応を利用して画像部を硬化させる態様が挙げられる。以下に画像記録層に含まれ得る各成分について説明する。
<赤外線吸収剤>
このような平版印刷版原版は、760〜1200nmの赤外線を発するレーザー等を光源にして画像形成する場合は、画像記録層に赤外線吸収剤を含有することが好ましい。
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述の光開始剤に電子移動及び/またはエネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料または顔料である。
【0067】
特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【化16】

一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−N(R9)(R10)、−X2−L1または以下に示す基を表す。ここで、R9およびR10は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数1〜8のアルキル基、水素原子またはR9とR10とが互いに結合して環を形成してもよい。なかでもフェニル基が好ましい。X2は酸素原子または硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。以下に示す基において、Xa-は後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0068】
【化17】

1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。画像記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0069】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7
よびR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、画像記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0070】
好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−023360号公報の段落番号[0012]〜[0021]、特開2002−040638号公報の段落番号[0012]〜[0037]に記載されたものを挙げることができる。
【0071】
画像記録層中の赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全固形分の0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。
【0072】
<ラジカル重合開始剤>
(B)ラジカル重合開始剤としては、(C)ラジカル重合性化合物の重合を開始、促進する化合物を示す。本発明において使用しうる光開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(h)有機ホウ酸塩化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物、が挙げられる。
【0073】
特にオニウム塩化合物が好ましく、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩、特開2008−195018号公報に記載のアジニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
【0074】
上記の中でもより好ましいものとして、オニウム塩、なかでもヨードニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。以下に、これらの化合物の具体例を示すが、これに限定されない。
【0075】
ヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム塩が好ましく、特に電子供与性基、例えばアルキル基またはアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩が好ましく、さらに好ましくは非対称のジフェニルヨードニウム塩が好ましい。ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。
【0076】
スルホニウム塩の例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナートが挙げられる。
【0077】
ラジカル重合開始剤は、画像記録層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは0.8〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で、良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。
【0078】
<重合性化合物>
(C)ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれることが好ましい。このような化合物群は当該産業分野において広く知られているものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、またはそれらの混合物並びにそれらの(共)重合体などの化学的形態をもつ。
【0079】
具体例としては、特開2008−105018号公報の段落番号[0089]〜[0098]に記載の化合物が挙げられる。なかでも好ましいものとして、脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)とのエステルが挙げられる。別の好ましいラジカル重合性化合物としては特開2005−329708号公報に記載のイソシアヌル酸構造を有する重合性化合物が挙げられる。
【0080】
上記の中でも、機上現像性に関与する親水性と耐刷性に関与する重合能のバランスに優れる点から、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸エチレンオキシド変性アクリレート類が特に好ましい。
【0081】
(C)ラジカル重合性化合物は、画像記録層の全固形分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。
【0082】
<バインダーポリマー>
画像記録層には、画像記録層の膜強度を向上させるため、バインダーポリマーを用いることができる。バインダーポリマーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有するポリマーが好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
なかでも好適なバインダーポリマーとしては、特開2008−195018号公報に記載のような、画像部の皮膜強度を向上するための架橋性官能基を主鎖または側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。架橋性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
【0083】
架橋性官能基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、これらの基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するアクリルポリマーやポリウレタンとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
【0084】
また、バインダーポリマーは、さらに親水性基を有することが好ましい。親水性基は画像記録層に機上現像性を付与するのに寄与する。特に、架橋性基と親水性基を共存させることにより、耐刷性と現像性の両立が可能になる。
親水性基としては、たとえば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホ基、リン酸基等などがあり、なかでも、炭素数2または3のアルキレンオキシド単位を1〜100個有するアルキレンオキシド構造が好ましい。特に好ましくは、2〜12個有するアルキレンオキシド構造が好ましく、最も好ましくは、2〜8個有するアルキレンオキシド構造である。バインダーポリマーに親水性基を付与するには親水性基を有するモノマーを共重合すればよい。
また、バインダーポリマーには、着肉性を制御するため、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などの親油性の基を導入できる。具体的には、メタクリル酸アルキルエステなどの親油性基含有モノマーを共重合すればよい。
【0085】
バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分に対して、5〜90質量%であり、5〜80質量%であるのが好ましく、10〜70質量%であるのがより好ましい。この範囲で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
また、(C)重合性化合物と(D)バインダーポリマーは、質量比で0.4/1〜1.8/1となる量で用いることが好ましい。さらに好ましくは0.7/1〜1.5/1である。この範囲で本発明の効果である、耐刷性を維持したまま、機上現像性またはガム現像性を向上させる効果が顕著に発現する。
なお、バインダーポリマーは質量平均モル質量(Mw)が2000以上であることが好ましく、5000以上であるのがより好ましく、1万〜30万であるのがより好ましい。
例えば、特開2008−195018号公報に記載のように親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することもできる。
【0086】
<疎水化前駆体>
機上現像性を向上させるため、画像記録層に疎水化前駆体を用いることができる。疎水化前駆体とは、熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できる微粒子を意味する。微粒子としては、疎水性熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及びミクロゲル(架橋ポリマー微粒子)から選ばれる少なくともひとつの粒子が好ましい。なかでも、重合性基を有するポリマー微粒子及びミクロゲルが好ましい。
【0087】
疎水性熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。
このようなポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレートまたはメタクリレートなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマーまたはそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
【0088】
疎水性熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。
熱反応性ポリマー微粒子としては、熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられ、これらは、熱反応による架橋、及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
熱反応性基を有するポリマー微粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基またはそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基またはアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基またはヒドロキシ基などを好適なものとして挙げることができる。
【0089】
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の全てまたは一部をマイクロカプセルに内包させたものである。なお、画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。さらに、マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
架橋樹脂粒子、すなわちミクロゲルを含有する態様であってもよい。このミクロゲルは、その中及び/または表面に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができ、特に、(C)ラジカル重合性化合物をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化、もしくはミクロゲル化する方法としては、公知の方法が適用できる。
上記のマイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
疎水化前駆体の含有量としては、画像記録層の固形分濃度で5〜90質量%の範囲であることが好ましい。
【0090】
<その他の成分>
(1)低分子親水性化合物
本発明における画像記録層は、耐刷性を低下させることなく機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、グリコール類及びそのエーテルまたはエステル誘導体類、ポリヒドロキシ類、有機アミン類及びその塩、有機スルホン酸類及びその塩、有機スルファミン酸類及びその塩、有機硫酸類及びその塩、有機ホスホン酸類及びその塩、有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類、等が挙げられる。
【0091】
上記の低分子親水性化合物は、疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持できる。
これら低分子親水性化合物の画像記録層への添加量は、画像記録層全固形分量の0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上8質量%以下である。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0092】
(2)感脂化剤
本発明における画像記録層には、着肉性を向上させるために、画像記録層にホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーなどの感脂化剤を用いることができる。特に、保護層に無機質の層状化合物を含有させる場合、これらの化合物は、無機質の層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機質の層状化合物による印刷途中の着肉性低下を防止する。
上記感脂化剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して0.01〜30.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15.0質量%、1〜5質量%がさらに好ましい。
【0093】
その他の成分として、界面活性剤、着色剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、無機質層状化合物などを添加することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落番号[0114]〜[0159]に記載の化合物及び添加量が好ましい。
【0094】
<画像記録層の形成>
本発明における画像記録層は、例えば、特開2008−195018号公報の段落番号[0142]〜[0143]に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散または溶解して塗布液を調製し、中間層を塗設した支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することで形成される。塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
【0095】
<支持体>
本発明の中間層塗布液を適用する平版印刷版原版に用いられる支持体としては、公知の支持体が用いられる。なかでも、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
また、上記アルミニウム板は必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、及び米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートあるいは米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行うことができる。
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。
【0096】
本発明で用いる支持体には必要に応じて、裏面に、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平5−45885号公報に記載されているケイ素のアルコキシ化合物を含むバックコート層を設けることができる。
【0097】
<保護層>
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層)を設けることが好ましい。保護層は酸素遮断によって画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止、および高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
このような特性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0098】
また、保護層には酸素遮断性を高めるため、特開2005−119273号公報に記載のように天然雲母、合成雲母等の無機質の層状化合物を含有することが好ましい。
また、保護層には、可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御する無機微粒子など公知の添加物を含むことができる。また、画像記録層の説明に記載した感脂化剤を保護層に含有させることもできる。特に無機質の層状化合物を含有させる場合には、変性ポリビニルアルコール、特にスルホン酸変性のポリビニルアルコールを用いることが、無機質の層状化合物を分散させる上で、好ましい。
【0099】
保護層は、公知の方法で塗布される。保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.01〜10g/m2の範囲であることが好ましく、0.02〜3g/m2の範囲がより好ましく、最も好ましくは0.02〜1g/m2の範囲である。
【0100】
<製版−画像形成>
平版印刷版原版に対する画像様の露光に用いられる光源としては、レーザーが好ましい。本発明に用いられるレーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を照射する固体レーザー及び半導体レーザー、250〜420nmの光を照射する半導体レーザーなどが好適に挙げられる。
赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10〜300mJ/cm2であるのが好ましい。250〜420nmの光を照射する半導体レーザーにおいては、出力は0.1mW以上であることが好ましい。いずれのレーザーにおいても、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
【0101】
機上現像を行う場合、露光された平版印刷版原版は、印刷機の版胴に装着される。レーザー露光装置付きの印刷機の場合には、平版印刷版原版を印刷機の版胴に装着したのち画像様に露光してもよい。
平版印刷版原版を赤外線レーザー等で画像様に露光した後、湿式現像処理工程等の現像処理工程を経ることなく印刷インキと湿し水とを供給して印刷すると、画像記録層の露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する印刷インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された湿し水及び/又は印刷インキによって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。その結果、湿し水は露出した親水性の表面に付着し、印刷インキは露光領域の画像記録層に着肉して印刷が開始される。
【0102】
ここで、最初に版面に供給されるのは、湿し水でもよく、印刷インキでもよいが、湿し水が除去された画像記録層の構成成分によって汚染されることを防止する点で、最初に印刷インキを供給するのが好ましい。湿し水及び印刷インキとしては、通常の平版印刷用の湿し水と印刷インキが用いられる。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
【0103】
なお、本発明の平版印刷版原版は、湿式現像処理工程等の現像処理工程を経る態様で製版されてもよく、その場合には、前述の露光工程と、印刷工程との間に、現像処理を行う。適用する現像処理の方式は特に限定されるものではなく、画像形成層の種類によって適宜決定することができる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<中間層塗布液の調製>
〔調製例1:高分子化合物(ii)(10)のN−エチル−2−ピロリドン溶液〕
(中間体Aの合成)
コンデンサー、攪拌器を取り付けた反応容器に、N−エチル−2−ピロリドン 708.7質量部、ホスマーPE(ユニケミカル製) 47.4質量部、ブレンマーPE200(日油製) 17.1質量部を取り、50℃にて攪拌した。更に、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸 86.0質量部を徐々に加え、完全に溶解させた。74℃まで昇温し、V−601(和光純薬製) 1.3質量部をN−エチル−2−ピロリドン 22.3質量部に溶解した溶液を加え、2時間攪拌した。更に、V−601(和光純薬製) 0.14質量部をN−エチル−2−ピロリドン 10.9質量部に溶解した溶液を加え、2時間攪拌した後に、25℃に冷却して、中間体AのN−エチル−2−ピロリドン溶液を得た。固形分濃度は17%であった。
(高分子化合物(ii)(10)の合成)
コンデンサー、攪拌器を取り付けた反応容器に、中間体AのN−エチル−2−ピロリドン溶液 59.1質量部、メタクリル酸−2−イソシアナトエチル 3.6質量部、ベンゾキノン 0.033質量部、ネオスタンU−600(日東化成製) 0.06質量部、を取り、55℃で6時間攪拌した。メタノール2.3質量部を加え、更に2時間攪拌し、高分子化合物(ii)(10)の溶液(以下表1のI−5)を得た。
【0105】
〔調製例2:比較用中間層塗布液:高分子化合物(ii)(9)のN−メチルピロリドン溶液〕
調製例1の反応溶媒をN-メチルピロリドンにした以外は調製例1と全く同様にして、高分子化合物(ii)(9)を合成し、比較用の中間層塗布液(以下表2のC−1)を作成した。
【0106】
上記の調製例に準じて、以下の表1〜2に示す中間層塗布液を調製した。表中、本発明に従った中間層塗布液I−1〜10の調製には、溶媒として一般式(I)で示される化合物を用いた。
以下の実施例及び比較例で、これらの中間層塗布液を使用した。
【0107】
【表1】

【表2】

【0108】
[実施例1〜6、及び比較例1〜2]
1.平版印刷版原版の作製
(1)支持体(1)の作製
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄し
た。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
【0109】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温5℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2 、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0110】
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、この板に15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて70℃で12秒間、シリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m2であった。その後、水洗して、支持体(1)を得た。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0111】
(2)中間層の形成
次に、上記支持体上に、下記中間層用塗布液を乾燥塗布量が28mg/m2になるよう塗布して、中間層を設けた。
<中間層用塗布液>
・表3記載の中間層塗布液 0.18g
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.10g
・メタノール 55.24g
・水 6.15g
【0112】
(3)画像記録層の形成
上記のようにして形成された中間層上に、下記組成の画像記録層塗布液をバー塗布した後、100℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成した。
画像記録層塗布液は下記感光液(1)およびミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
<感光液(1)>
・高分子化合物(1)〔下記構造〕 0.162g
・赤外線吸収剤(1)〔下記構造〕 0.030g
・ラジカル重合開始剤(1)〔下記構造〕 0.162g
・重合性化合物
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.192g
・低分子親水性化合物
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 0.062g
・低分子親水性化合物(1)〔下記構造〕 0.050g
・感脂化剤 ホスホニウム化合物(1)〔下記構造〕 0.055g
・感脂化剤
ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF6塩 0.018g
・トリメチルグリシン 0.01g
・フッ素系界面活性剤(1)〔下記構造〕 0.008g
・メチルエチルケトン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
【0113】
<ミクロゲル液(1)>
・ミクロゲル(1) 2.640g
・蒸留水 2.425g
【0114】
上記の、高分子化合物(1)、赤外線吸収剤(1)、ラジカル重合開始剤(1)、ホスホニウム化合物(1)、低分子親水性化合物(1)、及びおよびフッ素系界面活性剤(1)の構造は、以下に示す通りである。
高分子化合物(1)
【化18】

【0115】
【化19】

【0116】
上記に記載のミクロゲル(1)は、以下のようにして合成されたものである。
<ミクロゲル(1)の合成>
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート〔(C)成分〕(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、およびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、これを前記ミクロゲル(1)とした。ミクロゲルの平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.2μmであった。
【0117】
(4)保護層(1)の形成
上記のようにして形成された画像記録層上に、さらに下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2の保護層(1)を形成した。
<保護層用塗布液(1)>
・無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性、
けん化度99モル%以上、 重合度300)6質量%水溶液 0.55g
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−405、
けん化度81.5モル%重合度500)6質量%水溶液 0.03g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤
(エマレックス710)1質量%水溶液 8.60g
・イオン交換水 6.0g
【0118】
(無機質層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0119】
2.平版印刷版原版の評価
得られた平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像及び20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を100枚行った。
【0120】
(A)機上現像性
上記のように印刷を行い、画像記録層の未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。これらの結果を表3に示す。
【0121】
(B)耐刷性
上述した機上現像性の評価を行った後、更に印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で計測した値が印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。結果を表3に示す。
【0122】
(C)経時後の機上現像性
得られた平版印刷版原版を、45℃相対湿度75%に設定した恒温恒湿槽中に3日間放置した後、上記と同様にして露光し、印刷して機上現像性を求めた。
上記(A)の強制経時しない場合の機上現像枚数に近い枚数であるほど経時安定性が良好であると判断できる。
(D)経時後の汚れ防止性
得られた平版印刷版原版を、45℃相対湿度75%に設定した恒温恒湿槽中に4日間放置した後、上記と同様にして露光し、印刷して非画像部の汚れ防止性を以下のように評価した。
汚れ防止性が実用上問題がないもの:○
汚れ防止性が悪く、実用上問題となるもの:×
【0123】
【表3】

【0124】
[実施例7〜9及び比較例3及び4]
<サーマルネガ型平版印刷版原版>
特開2001−264991号公報の実施例1の中間層塗布液の代わりに、表1の中間層塗布液I-1、I-2、I-3、比較用塗布液C-1、C-2を用いた以外は特開2001−264991号公報の実施例1と全く同様にして、平版印刷版原版(実施例7〜9、比較例3及び4)を作成し、耐刷性評価を行った。結果を表4に示す。
<経時後の汚れ防止性>
平版印刷版原版を、45℃相対湿度75%に設定した恒温恒湿槽中に4日間放置した後、上記と同様にして露光し、印刷して非画像部の汚れ防止性を3段階で評価した。未露光部に残色があるか現像後、平版印刷版用原版をハイデル製印刷機SOR−Mに装着し、50枚印刷した際、未露光部にインキの汚れがあるか目視で確認し、以下のように評価した。
経時後の汚れ防止性:○…実用上問題がないもの、×…実用上問題となるもの
【0125】
【表4】

本発明の中間層塗布液によれば、特に耐刷性が高く、かつ、他の性能とのバランスの点でも優れていることがわかる。
【0126】
[実施例10〜13及び比較例5及び6]
<サーマルネガ型・簡易現像処理平版印刷版原版>
特開2007−316598号公報の実施例1の下塗り液の代わりに、本発明の中間層塗布液I-1、I-2、I-5、I-10、比較用塗布液C-1、C-2を用いた以外は全く同様にして、平版印刷版原版(実施例10〜13及び比較例5及び6)を作成し、特開2007−316598号公報の実施例記載の方法により、耐刷性評価を行った。
なお、経時後の汚れ防止性については、45℃相対湿度75%に設定した恒温恒湿槽中に4日間放置した後、特開2007−316598号公報[0338]記載の条件により印刷を行い、印刷物の非画像部へのインキの付着を評価し、以下のように判定した。
経時後の汚れ防止性:○…実用上問題がないもの、×…実用上問題となるもの
結果を表5に示す。
【0127】
【表5】

本発明の中間層塗布液によれば耐刷性が高く、かつ、経時後の汚れ防止性とのバランスの点でも優れていることがわかる。
【0128】
[実施例14〜16及び比較例7]
<サーマルポジ型平版印刷版原版>
特開2003−241388号公報の実施例1記載の下塗り液の代わりに、本発明の中間層塗布液I-7、I-8、I-9ならびに比較用塗布液C-3を用いた他は全く同様にして平版印刷版原版(実施例14〜16及び比較例7)を作成し、得られた感熱性平版印刷版をCreo社製Trendsetterにてビーム強度9W、ドラム回転速度150rpmでテストパターンを画像状に描き込みを行った。次に富士写真フイルム(株)製現像液DT−1希釈液及び富士写真フイルム(株)製フィニッシャーFP2W(1:1で希釈したもの)を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間12秒で現像した。この時の現像液は希釈率を操作することにより、48mS/cmに設定した。
現像後の平版印刷版を、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mに取り付け、湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
【0129】
<耐刷性>
上記の通り印刷を行ったところ、印刷枚数の増加と共に徐々に画像部が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。
<経時後の汚れ防止性>
平版印刷版原版を、45℃相対湿度75%に設定した恒温恒湿槽中に4日間放置した後、上記と同様にして露光し、印刷して非画像部の汚れ防止性を評価した。未露光部に残色があるか現像後、平版印刷版用原版をハイデル製印刷機SOR−Mに装着し、50枚印刷した際、未露光部にインキの汚れがあるか目視で確認し、以下のように評価した。
経時後の汚れ防止性:○…実用上問題がないもの、×…実用上問題となるもの
【0130】
【表6】

本発明の平版印刷版原版は、比較例に対して耐刷性と汚れ防止性のバランスが特に優れるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム支持体上に、中間層及び画像記録層をこの順に有する平版印刷版原版用の中間層塗布液であって、該中間層塗布液が、一般式(I)で表される化合物、及びアルミニウム支持体吸着性の官能基を少なくとも1種有する化合物を含有することを特徴とする、平版印刷版原版用中間層塗布液。
【化1】

(式中、R1は炭素数2〜10の有機置換基を表し、R2〜R7はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の有機置換基を表す。)
【請求項2】
アルミニウム支持体吸着性の官能基を少なくとも1種有する化合物が、アルミニウム支持体吸着性の官能基を少なくとも1種有する繰返し単位を含む高分子化合物である、請求項1記載の平版印刷版原版用中間層塗布液。
【請求項3】
アルミニウム支持体吸着性の官能基を少なくとも1種有する繰返し単位を含む化合物が、カルボキシル基、ホスホン酸基、リン酸エステル基、アンモニウム基、ホスホニウム基、N−オキシド基、または、−C=O-CH2-C=O−から選択される官能基を少なくとも1種有する繰返し単位を含む高分子化合物である、請求項1又は2に記載の平版印刷版原版用中間層塗布液。
【請求項4】
一般式(I)で表される化合物のR1が炭素数2−8のアルキル基を表し、R2〜R7が水素原子を表す、請求項1〜3のいずれか1項記載の平版印刷版原版用中間層塗布液。
【請求項5】
一般式(I)で表される化合物のR1がエチル基、プロピル基又はブチル基である、請求項4に記載の平版印刷版原版用中間層塗布液。
【請求項6】
さらに、1気圧における沸点が、50℃ないし130℃の有機溶剤を、10〜99.5質量%含有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の平版印刷版原版用中間層塗布液。
【請求項7】
1気圧における沸点が50℃ないし130℃の有機溶剤がメタノールである、請求項6記載の平版印刷版原版用中間層塗布液。
【請求項8】
さらに、水を含有することを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項記載の平版印刷版原版用中間層塗布液。
【請求項9】
アルミニウム支持体上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の平版印刷版原版用中間層塗布液を塗布してなる中間層を設けた後、さらに、画像記録層を設けることを特徴とする、平版印刷版原版の製造方法。
【請求項10】
アルミニウム支持体上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の平版印刷版原版用中間層塗布液を塗布してなる中間層、及び画像記録層をこの順に有することを特徴とする、平版印刷版原版。
【請求項11】
画像記録層がラジカル重合系である、請求項10記載のネガ型平版印刷版原版。
【請求項12】
画像記録層が赤外線レーザー照射部の溶解性が、未露光部よりも高くなることを特徴とする、請求項10記載のポジ型平版印刷版原版。
【請求項13】
画像記録層が、露光後、印刷機上で印刷インキと湿し水とが供給されて未露光部分が除去されることにより画像形成可能である、請求項11記載の平版印刷版原版。

【公開番号】特開2010−234650(P2010−234650A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85238(P2009−85238)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】