説明

平版印刷版用支持体の製造方法

【課題】使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を含む原材料を用いて平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法であって、原材料の溶解性に優れる平版印刷版用支持体の製造方法の提供。
【解決手段】使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を含む原材料を小片化する小片化工程と、小片化された前記原材料を溶解炉で溶解させ、アルミニウム溶湯を得る溶解工程と、前記アルミニウム溶湯からアルミニウム合金板を得る鋳造工程と、前記アルミニウム合金板に表面処理を施して平版印刷版用支持体を得る表面処理工程とを具備する平版印刷版用支持体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版用支持体の製造方法に関する。詳しくは、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を含む原材料を用いて平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平版印刷版、特に、オフセット印刷用の平版印刷版の原材料として、アルミニウム合金板が用いられている。
平版印刷版は、一般に、所定の組成のアルミニウム合金板に粗面化処理等の表面処理を施して得られる平版印刷版用支持体に、画像記録層を設けて得られる。平版印刷版は、露光および現像を経た後、印刷機上に装着され、インキおよび湿し水を供給されて、印刷に供される。
印刷に用いられた後の使用済み平版印刷版は、その大部分がアルミニウム合金成分であるため、アルミニウム合金板の原材料として再利用することが望まれている。
【0003】
また、平版印刷版を得る際には、工程トラブル、抜き取り検査等により、未使用の平版印刷版が生じる場合がある。また、平版印刷版を所望の幅および長さに切断するため、未使用の平版印刷版の切断屑が発生する場合がある。
更に、未使用の平版印刷版が、製造後に、表面保護材料、包装材料、粘着材料等を有する状態で、不要となる場合もある。
これらの未使用平版印刷版は、その大部分がアルミニウム合金成分であるため、アルミニウム合金板の原材料として再利用することが望まれている。
【0004】
特許文献1には、包装材料等が混入している使用済み平版印刷版等を原材料として用いる平版印刷版用支持体の製造方法として、使用済み平版印刷版等を溶解させて得られるアルミニウム溶湯を鋳造する前に不純物、ガス等の不要物の除去を行う方法が記載されている。
特許文献2には、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を原材料として用いて平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法であって、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版の画像記録層および付着物を除去する工程と、画像記録層および付着物を除去された使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を溶解炉で溶解させ、アルミニウム溶湯を得る工程と、前記アルミニウム溶湯からアルミニウム合金板を得る工程と、前記アルミニウム合金板に表面処理を施して平版印刷版用支持体を得る工程とを具備する平版印刷版用支持体の製造方法が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−205534号公報
【特許文献2】特開2005−186415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者が検討した結果、特許文献1に記載されている方法および特許文献2に記載されている方法は、いずれも原材料の溶解性に改善の余地があることを見出した。
したがって、本発明は、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を含む原材料を用いて平版印刷版用支持体を得る、平版印刷版用支持体の製造方法であって、原材料の溶解性に優れる平版印刷版用支持体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を含む原材料を溶解させる前に小片化することにより、原材料の溶解性が向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(5)を提供する。
(1)使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を含む原材料を小片化する小片化工程と、
小片化された前記原材料を溶解炉で溶解させ、アルミニウム溶湯を得る溶解工程と、
前記アルミニウム溶湯からアルミニウム合金板を得る鋳造工程と、
前記アルミニウム合金板に表面処理を施して平版印刷版用支持体を得る表面処理工程と
を具備する平版印刷版用支持体の製造方法。
(2)前記小片化工程において小片化された前記原材料の最も長い部分の長さが150mm以下である、上記(1)に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
(3)前記小片化工程と前記溶解工程との間に、更に、小片化された前記原材料から、表面保護材料、包装材料および粘着材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の付着物の少なくとも一部を分離させる分離工程を具備する、上記(1)または(2)に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
(4)前記分離工程が、吸引分離法、磁力分離法および遠心分離法からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いる、上記(3)に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
(5)前記分離工程が、吸引分離法およびその後の磁力分離法を用いる、上記(3)に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法は、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を含む原材料を用いて平版印刷版用支持体を製造する際に、原材料の溶解性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法は、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を含む原材料を小片化する小片化工程と、
小片化された前記原材料を溶解炉で溶解させ、アルミニウム溶湯を得る溶解工程と、
前記アルミニウム溶湯からアルミニウム合金板を得る鋳造工程と、
前記アルミニウム合金板に表面処理を施して平版印刷版用支持体を得る表面処理工程と
を具備する平版印刷版用支持体の製造方法である。
【0011】
<小片化工程>
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法においては、初めに、小片化工程を行う。小片化工程は、表面保護材料、包装材料および粘着材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の付着物が付着した使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を含む原材料を小片化する工程である。
【0012】
本発明に用いられる原材料は、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を含む。使用済み平版印刷版には、運搬時の取扱い等により付着物が付着している場合がある。一方、平版印刷版の製造工程での工程トラブル、抜き取り検査等により生じた未使用平版印刷版や、未使用平版印刷版の切断屑には、表面保護材料、包装材料、粘着材料等が付着している場合がある。本発明においては、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版が、このような表面保護材料、包装材料および粘着材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の付着物が付着したものであってもよい。
【0013】
表面保護材料としては、例えば、紙、ラミネ−ト材が挙げられる。
包装材料としては、例えば、ボール紙、クラフト紙、段ボールが挙げられる。
粘着材料としては、例えば、粘着テープ、製品ラベルが挙げられる。
【0014】
小片化工程においては、上述した原材料を小片化する。本発明において、「小片化する」とは、原材料の大きさを小さくすることをいう。原材料を小片化することにより、後述する溶解工程における溶解性が優れたものになる。したがって、小片化工程を行うことにより、溶解工程の処理時間を短くすることができる。
また、原材料として用いられる使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版が、表面保護材料、包装材料および粘着材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の付着物が付着したものである場合には、後述する任意に行われる分離工程において、付着物との分離が容易となる。
【0015】
小片化された原材料の大きさは、特に限定されないが、溶解性の点からは、小さいほど好ましい。この点で、得られる小片の最も長い部分の長さが150mm以下であるのが好ましい。一方、小片化工程のコストの点からは、大きいほど好ましい。
また、分離工程を行う場合において、付着物と使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版との比重の差を利用して両者を分離させる方法を用いるときは、付着物との分離の容易性の点から、得られる小片の最も長い部分の長さが1〜100mmであるのが好ましく、5〜50mmであるのがより好ましい。上記範囲であると、溶解性および小片化工程のコストのバランスにも優れる。
【0016】
小片化の方法は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、プレス切断機、パネルソー、カットソー、ハンドソー、電動シャー、シュレッダ−等による切断;種々の破砕機による破砕が挙げられる。
中でも、小片の大きさのばらつきを小さくすることができる点で、切断が好ましく、プレス切断機または電動シャーによる切断がより好ましい。
【0017】
使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版が、表面保護材料、包装材料および粘着材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の付着物が付着したものである場合は、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版とともに、付着物も小さくすることができる。
【0018】
<分離工程>
使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版が、表面保護材料、包装材料および粘着材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の付着物が付着したものである場合には、上述した小片化工程と後述する溶解工程との間に、分離工程を行うのが好ましい。分離工程は、小片化された原材料から、表面保護材料、包装材料および粘着材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の付着物の少なくとも一部を分離させる工程である。
【0019】
本発明者が特許文献1に記載されている方法について検討した結果、表面保護材料等の付着物が付着した原材料を用いる場合、表面保護材料等の付着物が原材料の溶解時に多量に混入するため、溶解後に不純物の除去にかかる時間、工程および費用が多く、これらに改善の余地があることが分かった。
これに対し、本発明においては、分離工程を行うことにより、溶解工程前に表面保護材料等の付着物の一部または全部を取り除くことができるため、後述するアルミニウム溶湯の清浄化処理の処理時間を短くすることができ、また、清浄化処理のコストを低くすることができる。
【0020】
原材料から付着物を分離させる方法は、特に限定されないが、吸引分離法、磁力分離法および遠心分離法からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましい。
本発明者が特許文献2に記載されている方法について検討した結果、画像記録層および付着物を除去する工程において、好ましくは研磨ブラシとパミス等の研磨材とを用いるため、平版印刷版が摩耗し、また、研磨材が平版印刷版の表面に残留するため、この工程後のアルミニウム合金の含有率が小さくなり、この点で改善の余地があることが分かった。
これに対し、吸引分離法、磁力分離法および遠心分離法からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いると、平版印刷版の摩耗および研磨材の残留が起こらないため、アルミニウム合金の含有率を高くすることができる。
【0021】
吸引分離法は、小片化された原材料のうち、比較的比重が小さい付着物(例えば、表面保護材料として用いられる紙、包装材料として用いられる紙)を、空気等とともに吸引して、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版ならびに比較的比重が大きい付着物から分離させる方法である。この際、小片化された原材料に風を吹き付けたり、ベルトコンベア等で搬送させながら振動を与えたりして、分離を促進させる方法を用いることもできる。
【0022】
図1は、吸引分離法に用いられる吸引分離装置の一例を示す模式図である。
図1に示される吸引分離装置10は、小片を載せるためのベルトコンベア12と、ベルトコンベア12の上部に位置する吸引用フード14と、吸引用フードに連結されたブロア16と、回収容器18と、回収容器20とを具備する。
ブロア16が稼働すると、矢印aの向きに動くベルトコンベア12により搬送されてきた小片のうち、比重が比較的小さい小片PLが吸引用フード14から吸引される。吸引された小片PLはブロア16を通じて回収容器18に回収される。一方、吸引されなかった比重が比較的大きい小片PHは、ベルトコンベア12から落下して、回収容器20に回収される。このようにして、小片が分離される。
【0023】
磁力分離法は、磁力により生じる電磁誘導を利用する方法である。これにより、アルミニウム合金板を含む小片化された使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版と付着物とを分離させることができる。磁力分離法は、例えば、三菱長崎機工社製の磁力選別機(アルミ選別機)を用いて行うことができる。
【0024】
遠心分離法は、空気中または液体中で、遠心分離の原理により、比重の小さいものと比重の大きいものとを分離させる方法である。遠心分離法は、例えば、サイクロン(遠心分離機)を用いて行うことができる。
【0025】
図2は、遠心分離法に用いられる遠心分離装置の一例を示す模式図である。
図2に示される遠心分離装置30は、サイクロン32と、回収容器34と、回収容器36とを具備する。
小片が投入されたサイクロン32が稼働すると、比重が比較的小さい小片PLはサイクロン32の上部から排出され、回収容器34に回収される。一方、比重が比較的大きい小片PHは、サイクロン32の下部から排出され、回収容器36に回収される。このようにして、小片が分離される。
【0026】
本発明においては、上述した吸引分離法、磁力分離法および遠心分離法からなる群から選ばれる少なくとも1種を、ベルトコンベア等によりラインで搬送しながら行うのが好ましい態様の一つである。この態様は、分離工程の効率に優れる。
より具体的には、例えば、ベルトコンベア上に、吸引装置を設置し、比較的比重が小さい紙等の表面保護材料等を吸引分離により分離させる態様が好適に挙げられる。この際、更に、搬送時にベルトコンベアのベルトを振動させる方法等により、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版と、紙等の表面保護材料等とを分離させやすくすることもできる。
また、本発明においては、分離工程において、吸引分離法およびその後の磁力分離法を用いるのが好ましい態様の一つである。この態様においては、上述した方法等により、比較的比重が小さい紙等の表面保護材料等を吸引分離により分離させた後、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版と、ボール紙、クラフト紙、段ボール等の包装材料等とを容易に分離させることができる。
【0027】
分離工程においては、付着物の全部を分離させることもできるが、付着物の少なくとも一部を分離させればよい。分離される付着物の割合は、分離工程にかかるコストおよび時間、清浄化処理にかかるコストおよび時間等を考慮して、適宜選択することができる。
【0028】
<溶解工程>
小片化工程の後、所望により分離工程を行った後、溶解工程を行う。溶解工程は、小片化された原材料を溶解炉で溶解させ、アルミニウム溶湯を得る工程である。
溶解工程においては、アルミニウム溶湯の原材料として、上述した小片化された原材料のみを用いてもよいが、そのほかにFe、Si、Cu、Mg、Mn、Zn等の元素を含むアルミニウム母合金を用いて、組成を調整してもよい。また、アルミニウム溶湯の原材料として、アルミニウムインゴットを用いてもよい。
例えば、アルミニウムインゴットおよびアルミニウム母合金を溶解させてアルミニウム溶湯を得た後、このアルミニウム溶湯に、上述した小片化された原材料を投入して溶解させる方法、上述した小片化された原材料を溶解させてアルミニウム溶湯を得た後、このアルミニウム溶湯にアルミニウムインゴットおよびアルミニウム母合金を投入して溶解させる方法を用いることができる。
本発明においては、アルミニウム溶湯中のアルミニウム合金のうち小片化された原材料に由来するものの割合が1質量%以上であるのが、原料コストを低くすることができる点で好ましい。
上述した小片化された原材料は、その支持体部分が既に所定の組成に調整されているものであるが、所望の組成と異なっている場合があるため、アルミニウム母合金により、組成を調整するのが好ましい。
【0029】
アルミニウム溶湯の調製は、溶解炉で行うが、溶解炉に投入された際、小片化された原材料のうち、平版印刷版の表面にある画像記録層は、そのほとんどが燃焼し、炭化する。
【0030】
本発明においては、上述したようにして得られたアルミニウム溶湯に清浄化処理を行うのが好ましい。清浄化処理は、アルミニウム溶湯中の非金属不純物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯にとけ込んだガスによる欠陥を防ぐことを目的として行われる。
清浄化処理としては、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、または、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
【0031】
<鋳造工程>
溶解工程の後、鋳造工程を行う。鋳造工程は、上述したアルミニウム溶湯からアルミニウム合金板を得る工程である。
鋳造の方法としては、例えば、DC鋳造法に代表される固定鋳型を用いる方法、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法が挙げられる。低コスト、短期間で平版印刷版用支持体を製造するためには、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法が好ましい。
【0032】
DC鋳造法は、一般に、鋳造、表面研削、均熱処理(均質化処理)、熱間圧延、焼鈍、冷間圧延および矯正を順次経てアルミニウム合金板を得る方法である。焼鈍は、冷間圧延の間に行ってもよい。また、熱間圧延の温度条件を最適化することで焼鈍を省略することもできる。この場合、熱間圧延の終了温度を300〜400℃にするのが好ましい。
【0033】
連続鋳造法としては、例えば、ハンター法、ハズレー法が代表的に挙げられる。連続鋳造法は、一般に、連続鋳造、熱間圧延、焼鈍、冷間圧延および矯正を順次経てアルミニウム合金板を得る方法である。焼鈍は、冷間圧延の間に行ってもよい。また、焼鈍は省略することもできる。
ハンター法は、冷却ロ−ルを用いるため、板厚1〜10mmに連続的に圧延することができるので、熱間圧延を省略することができるという利点を有する。
ハズレー法は、冷却ベルトを用いるため、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置して連続的に圧延して板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板を得る。
鋳造直後に熱間圧延ロールを必要としない点で、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法が、工程がより簡易であり、低コストで平版印刷版用支持体を得ることができる点で優れている。
【0034】
<表面処理工程>
鋳造工程の後、表面処理工程を行う。表面処理工程は、アルミニウム合金板に表面処理を施して平版印刷版用支持体を得る工程である。
表面処理は、特に限定されず、後述する粗面化処理、アルカリエッチング処理、デスマット処理、陽極酸化処理、親水化処理等を適宜組み合わせて行うことができる。
【0035】
粗面化処理の方法としては、例えば、機械的粗面化処理、化学的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電解粗面化処理)およびそれらの組み合わせを用いることができる。本発明においては、アルミニウム合金板は、電解粗面化処理を含む粗面化処理を施されるのが好ましいが、電解粗面化処理のみを施されてもよく、電解粗面化処理と、機械的粗面化処理および/または化学的粗面化処理とを組み合わせて施されてもよい。
機械的粗面化処理法としては、例えば、ボールグレイン、ワイヤーグレイン、ブラシグレイン、液体ホーニング法が挙げられる。また、電解粗面化処理法としては、交流電解エッチング法が一般的に採用されている。この場合、電流としては、普通の正弦波交流電流や、矩形波等の特殊交番電流が用いられる。また、この電解粗面化処理の前または後に、カセイソーダ等を用いてアルカリエッチング処理を行うこともできる。また、電解粗面化処理は、塩酸または硝酸を含有する酸性の水溶液で交番電流を用いて行うのが好ましい。以下、好ましい粗面化処理その他の処理の方法について、詳細に説明する。
【0036】
まず、アルミニウム合金板にアルカリエッチング処理を施す。アルカリエッチング処理に用いられるアルカリ剤としては、カセイソーダ、カセイカリ、メタケイ酸ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、グルコン酸ソーダ等が好ましい。アルカリエッチング処理は、アルカリ溶液の濃度が0.01〜20質量%、アルカリ溶液の温度が20〜90℃、時間は5秒〜5分の範囲から選択されるのが適当である。エッチング量は、一般に、0.1〜5g/m2であるのが好ましいが、アルミニウム合金板の組成がアルミニウム以外の元素を多く含む場合は、0.01〜1g/m2であるのが好ましい。
【0037】
引き続き、アルカリエッチング処理により、アルミニウム合金板の表面にアルカリに不溶な物質(スマット)が残存するので、必要に応じて、デスマット処理を行う。
【0038】
つぎに、電解粗面化処理を行う。電解粗面化処理は、塩酸または硝酸を主体とする電解液中で交流電解エッチングにより行うのが好ましい。交流電解電流の周波数は、0.1〜100Hzであるのが好ましく、0.1〜1.0Hzまたは10〜60Hzであるのがより好ましい。電解液濃度は、3〜150g/Lであるのが好ましく、5〜50g/Lであるのがより好ましい。電解浴内のアルミニウムの溶解量は、50g/L以下であるのが好ましく、2〜20g/Lであるのがより好ましい。電解浴には、必要に応じて、添加物を入れることもできる。また、電流密度は、5〜100A/dm2であるのが好ましく、10〜80A/dm2であるのがより好ましい。電源波形は、求められる品質、用いられるアルミニウム合金板の成分等によって適宜選択することができるが、特公昭56−19280号公報および同昭55−19191号公報に記載されている特殊交番波形を用いるのが好ましい。これらの波形、液条件等は、電気量とともに求められる品質、用いられるアルミニウム合金板の成分等によって適宜選択される。
【0039】
更に、粗面化処理されたアルミニウム合金板をアルカリエッチング処理するのが好ましい。アルカリエッチング処理は、アルミニウム合金板をアルカリ溶液に浸せきさせて、または、スプレーでアルカリ溶液を供給して行う。アルカリ剤としては、カセイソーダ等の各種のアルカリを用いることができる。アルカリ剤による処理は、アルカリ溶液がpH10以上、温度25〜60℃で行うのが好ましく、また、処理時間は1〜10秒の極めて短時間とするのが好ましい。
引き続き、アルカリエッチング処理を施したアルミニウム合金板の表面にアルカリに不溶な物質(スマット)が残存するので、酸溶液で溶解除去するデスマット処理を行うのが好ましい。デスマット処理は、アルミニウム合金板を酸溶液に浸せきさせて、または、スプレーで酸溶液を供給して行う。酸溶液としては、硫酸、塩酸、硝酸等が用いられる。中でも、硫酸が好ましい。酸溶液の濃度は、50〜400g/Lであるのが好ましい。酸溶液による処理は、温度25〜65℃で行われるのが好ましい。また、処理時間は1〜10秒とするのが好ましい。デスマット処理によるアルミニウム合金板の溶解量は、多くなりすぎると耐刷性が低下する傾向があるので、0.2g/m2以下とするのが好ましい。
【0040】
引き続き、アルミニウム合金板の表面の耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を行うのが好ましい。陽極酸化処理は、アルミニウム合金板を硫酸を主体とする液に浸せきすることにより行う。陽極酸化処理に使用される電解質は、多孔質酸化皮膜を形成することができるものであれば、いかなるものでもよい。一般には、硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、またはこれらの混合物が用いられる。電解質の濃度は、電解質の種類等によって適宜決められる。陽極酸化処理の条件は、電解質によってかなり変動するので、特定しにくいが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間1〜300秒であればよい。アルミニウム合金板の表面に形成される陽極酸化皮膜の量は、0.1〜10g/m2であるのが好ましく、0.3〜5g/m2であるのがより好ましい。
【0041】
このようにして得られた陽極酸化皮膜を有する粗面化処理されたアルミニウム合金板は、それ自身安定で親水性に優れたものであるから、そのまま画像記録層を上に設けることもできるが、必要に応じて、更に親水化処理を施すこともできる。例えば、先に記載したアルカリ金属ケイ酸塩によるシリケート層、または、親水性高分子化合物よりなる下塗層を設けることができる。下塗層の塗布量は5〜150mg/m2であるのが好ましい。
【0042】
<平版印刷版用支持体>
上述したように、アルミニウム合金板に、表面処理を行うことにより、平版印刷版用支持体が得られる。
【0043】
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法により得られる平版印刷版用支持体を平版印刷版とするには、表面に感光剤を塗布し乾燥して、画像記録層を形成すればよい。感光剤は、特に限定されるものではなく、通常、平版印刷版に用いられるものを使用することができる。そして、得られた平版印刷版に、リスフィルムを用いて画像を焼き付け、更に、現像処理およびガム引き処理を行うことで、印刷機に取り付け可能な平版印刷版とすることができる。また、例えば、高感度な画像記録層を設けると、レーザを使って画像を直接焼き付けることもできる。
【0044】
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法は、使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を含む原材料を用いて平版印刷版用支持体を製造する際に、原材料の溶解性に優れる。したがって、低コストで平版印刷版用支持体を得ることができる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
1.平版印刷版用支持体の製造
(実施例1)
原材料として、表面保護材料、包装材料および粘着剤料からなる付着物が付着した、使用済みの平版印刷版および未使用の平版印刷版原版を用い、以下のように、小片化工程、分離工程、溶解工程、地金添加工程、ろ過工程、鋳造工程および表面処理工程を順次行い、平版印刷版用支持体を得た。
【0046】
<小片化工程>
表面保護材料、包装材料および粘着剤料からなる付着物が付着した、使用済みの平版印刷版および未使用の平版印刷版原版からなる原材料を、得られる小片の最も長い部分の長さが5〜50mmとなるように電動シャーを用いて裁断し、小片化を行った。
【0047】
<分離工程>
小片化工程後の原材料について、吸引分離法による付着物の分離を行い、その後、磁力分離法による付着物の分離を行うことにより、使用済みの平版印刷版および未使用の平版印刷版原版に由来する材料(支持体および画像記録層)と、表面保護材料、包装材料および粘着材料を分離させた。
吸引分離法による付着物の分離は、図1に示される装置を用いて行った。
磁力分離法による付着物の分離は、磁力選別機(非鉄金属分別装置、三菱長崎機工社製)を用いて行った。
【0048】
<溶解工程>
分離工程後の原材料を750℃の溶解炉に投入して溶解させ、アルミニウム溶湯を得た。
【0049】
<地金添加工程>
アルミニウム溶湯に、更に、地金(1050材)を、上記原材料と地金との質量比が1:9となるように、添加した。
【0050】
<ろ過工程>
地金添加工程後のアルミニウム溶湯(温度750℃)を、セラミックチューブフィルタにより、ろ過した。
【0051】
<鋳造工程>
ろ過工程後のアルミニウム溶湯(温度750℃)を用い、厚さ500mmの鋳塊をDC鋳造法で作製した。表面を平均15mmの厚さで面削機により削り取った後、500℃で、5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ3mmの圧延板とした。更に、温度200℃以下での冷間圧延で、厚さ1mmとした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を350℃で行った後、温度200℃以下での冷間圧延で、厚さ0.3mmに仕上げ、アルミニウム合金板を得た。
【0052】
<表面処理工程>
得られたアルミニウム合金板に、以下の(a)〜(j)の各種処理を連続的に行うことにより表面処理を行い、平版印刷版用支持体を得た。
【0053】
(a)機械的粗面化処理
パミス(平均粒径20μm)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム合金板の表面にスプレー管で供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。ナイロンブラシとしては8号ブラシ(毛径0.5mm)を用いた。ブラシの回転数は250rpmであった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0054】
(b)アルカリ水溶液中でのエッチング処理(第1エッチング処理)
アルミニウム合金板に、カセイソーダ濃度26質量%、温度60℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム合金板の後に電気化学的粗面化処理を施す面のエッチング量は、5g/m2であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0055】
(c)酸性水溶液中でのデスマット処理(第1デスマット処理)
アルミニウム合金板に、硝酸濃度1質量%、温度35℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、10秒間デスマット処理を行った。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0056】
(d)酸性水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理(第1電気化学的粗面化処理)
電解液として、硝酸濃度1質量%、温度50℃の水溶液を用い、アルミニウム合金板に交流電流を流し、電気化学的粗面化処理を行った。交流電流は、周波数60Hzの矩形波であった。交流のピーク時におけるアルミニウム合金板のアノード反応時の電流密度は、15A/dm2であった。電気量は、アルミニウム合金板のアノード反応時の電気量の総和で、200C/dm2であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0057】
(e)アルカリ水溶液中でのエッチング処理(第2エッチング処理)
アルミニウム合金板に、カセイソーダ濃度26質量%、温度60℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム合金板の後に電気化学的粗面化処理を施す面のエッチング量は、3g/m2であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0058】
(f)酸性水溶液中でのデスマット処理(第2デスマット処理)
アルミニウム合金板に、硫酸濃度30質量%、温度35℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、10秒間デスマット処理を行った。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0059】
(g)酸性水溶液中での交流を用いた電気化学的粗面化処理(第2電気化学的粗面化処理)
電解液として、塩酸濃度1質量%、温度35℃の水溶液を用い、アルミニウム合金板に交流電流を流し、電気化学的粗面化処理を行った。交流電流は、周波数60Hzの矩形波であった。交流のピーク時におけるアルミニウム合金板のアノード反応時の電流密度は、20A/dm2であった。電気量は、アルミニウム合金板のアノード反応時の電気量の総和で、50C/dm2であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0060】
(h)アルカリ水溶液中でのエッチング処理(第3エッチング処理)
アルミニウム合金板に、カセイソーダ濃度26質量%、温度60℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、エッチング処理を行った。アルミニウム合金板の後に電気化学的粗面化処理を施す面のエッチング量は、0.3g/m2であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0061】
(i)酸性水溶液中でのデスマット処理(第3デスマット処理)
アルミニウム合金板に、硝酸濃度1質量%、温度35℃の水溶液をスプレー管から吹き付けて、10秒間デスマット処理を行った。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0062】
(j)陽極酸化処理
電解液として、硫酸濃度15質量%、温度35℃の水溶液を用いて、陽極酸化処理を行い、平版印刷版用支持体を得た。最終的な酸化皮膜量は2.5g/m2であった。
【0063】
(実施例2)
上記分離工程を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、平版印刷版用支持体を得た。
(実施例3)
上記分離工程において、磁力分離法による付着物の分離を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、平版印刷版用支持体を得た。
(実施例4)
上記分離工程において、吸引分離法による付着物の分離および磁力分離法による付着物の分離の代わりに、遠心分離法による付着物の分離を行った以外は、実施例1と同様の方法により、平版印刷版用支持体を得た。
遠心分離法による付着物の分離は、図2に示される装置を用いて行った。
【0064】
(実施例5)
上記分離工程において、吸引分離法による付着物の分離を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、平版印刷版用支持体を得た。
(実施例6)
上記ろ過工程を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、平版印刷版用支持体を得た。
【0065】
(比較例1)
上記小片化工程を行わなかった以外は、実施例2と同様の方法により、平版印刷版用支持体を得た。
(比較例2)
上記小片化工程を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、平版印刷版用支持体を得た。
(比較例3)
上記小片化工程を行わなかった以外は、実施例4と同様の方法により、平版印刷版用支持体を得た。
【0066】
2.平版印刷版用支持体の製造方法の評価
上述した実施例1〜6および比較例1〜3の平版印刷版用支持体の製造方法について、以下のようにして評価を行った。
【0067】
(1)不純物の混入の程度
溶解工程前において、原材料が表面保護材料、包装材料および粘着材料からなる付着物に起因する不純物を含有する程度を目視により観察した。
結果を第1表に示す。表中、まったく問題ないレベルを○、少量含有するがほとんど問題ないレベルを○△、ある程度含有するが実用上問題ないレベルを△で示した。
【0068】
(2)溶解性
溶解工程において、原材料を溶解炉に投入して溶解させた際の溶解性を目視により観察した。
結果を第1表に示す。表中、まったく問題ないレベルを○、溶解性が悪く実用上問題となるレベルを×で示した。
【0069】
(3)表面処理性
得られた平版印刷版用支持体の表面を目視で観察し、面質および砂目形状により、表面処理性を評価した。
結果を第1表に示す。表中、まったく問題ないレベルを○、やや劣るが問題ないレベルを○△、劣っているが実用上問題がないレベルを△で示した。
【0070】
【表1】

【0071】
第1表から明らかなように、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法(実施例1〜6)は、原材料の溶解性に優れている。
これに対し、小片化工程を行わない場合(比較例1〜3)は、原材料の溶解性に劣っていた。
【0072】
3.小片化工程の条件の検討
原材料として、表面保護材料、包装材料および粘着材料からなる付着物が付着した、使用済みの平版印刷版および未使用の平版印刷版原版を用い、以下のように、小片化工程および分離工程を順次行い、小片化工程において得られる小片の大きさと、小片化工程にかかるコスト、小片化工程後の溶解性および分離工程における分離の適用のしやすさとの関連性を調べた。
【0073】
(実験例1〜5)
<小片化工程>
表面保護材料、包装材料および粘着材料からなる付着物が付着した、使用済みの平版印刷版(最も長い部分の長さが150mmを超える。)および未使用の平版印刷版原版(最も長い部分の長さ150mmを超える。)からなる原材料を、得られる小片の大きさ(最も長い部分の長さ)が第2表に示す値となるように電動シャーを用いて裁断し、小片化を行った。
【0074】
<分離工程>
小片化工程後の原材料について、吸引分離法による付着物の分離、磁力分離法による付着物の分離および遠心分離法による付着物の分離をそれぞれ別途行った。
吸引分離法による付着物の分離および磁力分離法による付着物の分離は、それぞれ実施例1と同様の方法により行った。
遠心分離法による付着物の分離は、実施例4と同様の方法により行った。
【0075】
(実験例6)
小片化工程を行わなかった以外は、実験例1〜5と同様の方法により、原材料の分離工程を行った。
【0076】
(1)小片化工程のコスト
結果を第2表に示す。表中、コストが極めて安い場合を◎、若干コストが高いが問題ないレベルを○、コストがやや高いが実施可能であるレベルを○△、コストが高く許容される限度であるレベルを△で示した。
【0077】
(2)小片化工程後の溶解性
小片化工程後の原材料の一部を溶解炉に投入し、溶解性を目視により観察した。
結果を第2表に示す。表中、極めて短時間で溶解するレベルを◎、短時間で溶解するレベルを○、やや時間はかかるが実用上問題ないレベルを○△、時間がかかり許容される限度であるレベルを△で示した。
【0078】
(3)分離工程における分離の容易さの程度
分離工程において、原材料のアルミニウム材料(支持体および画像記録層)と、表面保護材料、包装材料等の付着物との分離の容易さの程度を分離効率により評価した。
結果を第2表に示す。表中、分離効率が極めてよいものを○、分離効率がよいものを○△、分離効率がやや悪いが実用上許容することができるレベルを△、分離性が悪く許容することができないレベルを×で示した。
【0079】
【表2】

【0080】
第2表から明らかなように、小片の大きさが小さくなるにつれて小片化工程のコストが高くなる一方で、溶解性が高くなる。また、分離工程における分離の容易さは、小片の大きさが10〜50mmである場合(実験例4)に最も優れたものになっている。
なお、小片化工程を行わなかった場合(実験例6)は、溶解性が低く、また、分離工程における分離が困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】吸引分離法に用いられる吸引分離装置の一例を示す模式図である。
【図2】遠心分離法に用いられる遠心分離装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0082】
10 吸引分離装置
12 ベルトコンベア
14 吸引用フード
16 ブロア
18、20、34、36 回収容器
30 遠心分離装置
32 サイクロン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み平版印刷版および/または未使用平版印刷版を含む原材料を小片化する小片化工程と、
小片化された前記原材料を溶解炉で溶解させ、アルミニウム溶湯を得る溶解工程と、
前記アルミニウム溶湯からアルミニウム合金板を得る鋳造工程と、
前記アルミニウム合金板に表面処理を施して平版印刷版用支持体を得る表面処理工程と
を具備する平版印刷版用支持体の製造方法。
【請求項2】
前記小片化工程において小片化された前記原材料の最も長い部分の長さが150mm以下である、請求項1に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
【請求項3】
前記小片化工程と前記溶解工程との間に、更に、小片化された前記原材料から、表面保護材料、包装材料および粘着材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の付着物の少なくとも一部を分離させる分離工程を具備する、請求項1または2に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
【請求項4】
前記分離工程が、吸引分離法、磁力分離法および遠心分離法からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いる、請求項3に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
【請求項5】
前記分離工程が、吸引分離法およびその後の磁力分離法を用いる、請求項3に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−12718(P2008−12718A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184202(P2006−184202)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】