説明

平面アンテナの製造方法及び平面アンテナ

【課題】指向性が鋭く、良好な電波特性を有する安価な平面アンテナ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の平面アンテナの製造方法は、基板1の表面に、複数の凸部からなるパターン3,4を形成する工程と、パターン3,4に対応する孔22,24を有するマスク23,25を、パターン3,4が形成された基板1の表面上に密着させる工程と、基板1とマスク23,25とを密着させた状態で強度な紫外線照射26を行い、孔22,24から露出している基板表面の導体膜に対する密着力を低下させる処理を行う工程と、マスク23,25を取り除いた後、適度な紫外線照射28を行い、密着力が低下した部分27以外の基板表面の導体膜に対する密着力を向上させる処理を行う工程と、基板表面に所定の膜厚で導体膜2を形成する工程と、基板1の導体膜に対する密着力が低下した部分27上に形成された導体膜29,30を除去する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面アンテナの製造方法及び平面アンテナに関し、特に、パターン表面の導体膜を剥離するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化社会を背景に無線を利用した通信システムが汎用されており、とりわけ情報量の多いマイクロ波やミリ波領域を使用した通信システムの発展が著しい。このような通信システムにおいて、平面アンテナは短波長無線システムの入出力装置として好適である。
【0003】
ところで、アンテナの大きさは電(磁)波の波長の大きさにあわせて作る必要があり、波長を短波長化すると入出力装置であるアンテナの形状も小型化する必要がある。これにより、近年のアンテナではアンテナの寸法精度も微細加工技術が要求されるようになっている。従来では、エッチング技術を用いてアンテナの例えばスロットパターンやパッチパターンを形成していたが、微細加工がそのアンテナ特性に与える影響は大きく、従来のエッチング技術では精度良く大量に生産できないという欠点があった。特に、ミリ波における寸法は少なくとも波長の1%以上は必要とされ、例えば、50GHzにおいては数十μmの寸法が必要とされる。このような要求に対してLSIの製造工程に適用可能な微細加工技術を適用することも考えられるが、かかる技術では安価なアンテナを製造することはできない。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、基板上の導体を被覆しない領域である所定のパターンと基板とを射出成形法により一体に形成することにより、所定のパターンを有する平面アンテナのスロットを寸法精度良く形成する方法が提案されている。射出成形法で誘電体を作製することは、一度所定のパターンを含む誘電体の金型を成形してしまえばアンテナの量産が容易であり、安価にアンテナを成形することができる。また、射出成形法はミクロン単位で所定のパターンを成形可能であり、短波長化に好適な小型のアンテナを提供できる。
【0005】
また、特許文献1では、電気的なアンテナパターンとして機能させるために、凸部のスロットパターンや給電用スロットパターンの上に形成されている導体膜を除去している。具体的には、機械的な手段である研削や研磨作業を実施し、凸部上の導体膜と共に誘電体の凸部の先端部も同時に除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−115718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、研磨や研削などの機械的な手段を利用して導体膜の除去を行っているが、機械的な手段として、例えば研削装置を用いた場合、基板表面の平坦性が充分でないと研削により削られた凸部の高さが場所により異なり、電波特性にバラツキが生じる。また、研削装置自体が高価であるために、結果的にアンテナの価格が高くなってしまう。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、指向性が鋭く、良好な電波特性を有する安価な平面アンテナ及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の平面アンテナの製造方法は、樹脂からなる誘電体である基板と、上記基板上に形成された所定のパターンと、上記所定のパターン以外の上記基板の表面を被覆する導体膜とを備える平面アンテナの製造方法であって、平板状の基板の表面に、複数の凸部からなるパターンを形成するパターン形成工程と、上記パターンに対応する孔を有するマスクを、上記パターンが形成された上記基板の表面上に密着させるマスク密着工程と、上記基板と上記マスクとを密着させた状態で、上記孔から露出している上記基板表面の導体膜に対する密着力を低下させる処理を行う基板密着力低下処理工程と、上記マスクを取り除いた後、上記密着力が低下した部分以外の基板表面の導体膜に対する密着力を向上させる処理を行う基板密着力向上処理工程と、上記基板表面に所定の膜厚で導体膜を形成する導体膜形成工程と、上記基板の上記導体膜に対する密着力が低下した部分上に形成された導体膜を除去する導体膜除去工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の平面アンテナの製造方法は、樹脂からなる誘電体である基板と、上記基板上に形成された所定のパターンと、上記所定のパターン以外の上記基板の表面を被覆する導体膜とを備える平面アンテナの製造方法であって、上記パターンに対応する孔を有するマスクを、平板状の基板の表面上に密着させるマスク密着工程と、上記基板と上記マスクとを密着させた状態で、上記孔から露出している上記基板表面の導体膜に対する密着力を低下させる処理を行う基板密着力低下処理工程と、上記マスクを取り除いた後、上記密着力が低下した部分以外の基板表面の導体膜に対する密着力を向上させる処理を行う基板密着力向上処理工程と、上記基板表面に所定の膜厚で導体膜を形成する導体膜形成工程と、上記基板の上記導体膜に対する密着力が低下した部分上に形成された導体膜を除去する導体膜除去工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の平面アンテナは、上記本発明の平面アンテナの製造方法を用いて製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の平面アンテナの製造方法によれば、高価な研磨装置や研削装置を必要とせず、かつ短時間で所定のパターン上の導体膜を除去でき、指向性が鋭く、良好な電波特性を有する平面アンテナを安価に製造できる。
【0013】
また、本発明の平面アンテナは、上記本発明の平面アンテナの製造方法を用いることにより、指向性が鋭く、良好な電波特性を有する安価な平面アンテナを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係る平面アンテナの構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態1における、凸部のパターンを有する基板の製造方法を説明するための断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る平面アンテナの製造方法を説明するための断面図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る平面アンテナの製造方法を説明するための断面図である。
【図5】本発明の実施形態3に係る平面アンテナの製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の平面アンテナの製造方法は、樹脂からなる誘電体である基板と、上記基板上に形成された所定のパターンと、上記所定のパターン以外の上記基板の表面を被覆する導体膜とを備える平面アンテナの製造方法であって、平板状の基板の表面に、複数の凸部からなるパターンを形成するパターン形成工程と、上記パターンに対応する孔を有するマスクを、上記パターンが形成された上記基板の表面上に密着させるマスク密着工程と、上記基板と上記マスクとを密着させた状態で、上記孔から露出している上記基板表面の導体膜に対する密着力を低下させる処理を行う基板密着力低下処理工程と、上記マスクを取り除いた後、上記密着力が低下した部分以外の基板表面の導体膜に対する密着力を向上させる処理を行う基板密着力向上処理工程と、上記基板表面に所定の膜厚で導体膜を形成する導体膜形成工程と、上記基板の上記導体膜に対する密着力が低下した部分上に形成された導体膜を除去する導体膜除去工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の平面アンテナの製造方法は、樹脂からなる誘電体である基板と、上記基板上に形成された所定のパターンと、上記所定のパターン以外の上記基板の表面を被覆する導体膜とを備える平面アンテナの製造方法であって、上記パターンに対応する孔を有するマスクを、平板状の基板の表面上に密着させるマスク密着工程と、上記基板と上記マスクとを密着させた状態で、上記孔から露出している上記基板表面の導体膜に対する密着力を低下させる処理を行う基板密着力低下処理工程と、上記マスクを取り除いた後、上記密着力が低下した部分以外の基板表面の導体膜に対する密着力を向上させる処理を行う基板密着力向上処理工程と、上記基板表面に所定の膜厚で導体膜を形成する導体膜形成工程と、上記基板の上記導体膜に対する密着力が低下した部分上に形成された導体膜を除去する導体膜除去工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
上記基板密着力低下処理工程において、基板表面の導体膜に対する密着力を低下させる処理としては、顔料インクなどの離型剤を塗布する方法や紫外線を照射する方法を用いることができる。特に、紫外線照射を行う場合、樹脂基板は、ある程度のエネルギー(所定量の紫外線照射量)の紫外線を照射することにより基板表面が改質され、導体膜に対する密着力が向上することが知られている。今回、本発明者は、紫外線照射量が上記所定量を超えて更に多量の紫外線の照射を行うことにより基板表面が脆くなる事を実験により確認した。そこで、上記基板密着力低下処理工程では、基板表面と導体膜との密着力を低下させる目的で、上記密着力が向上する紫外線照射量よりも多量の紫外線の照射を行うこととした。具体的には、照射時間を長くすれば良い。
【0018】
上記基板密着力向上処理工程において、基板表面の導体膜に対する密着力を向上させる処理として、逆スパッタ法やプラズマ処理あるいは紫外線照射による界面改質法などを用いることができる。特に、上記基板密着力低下処理工程と同じ紫外線照射を用いて上記密着力を向上させると、プロセスがより簡単になるため、好ましい。
【0019】
上記導体膜形成工程において、導体膜の形成には、無電解メッキ処理、蒸着又はスパッタリング法を用いる。例えば、銅の導体膜を形成する場合には、スパッタ法を用いた方がメッキ法などで成膜した膜に比べて緻密な膜が得られ導電率も高くなるので好ましい。ただ、スパッタ法により厚く導電体を形成すると応力によりクラックなどが入りやすいため、基板表面に近い方の導電体をスパッタ法により薄めに形成し、それの上に電解メッキ法により目的の厚さまで導電体を形成しても良い。ここでのスパッタ法により形成した導電体の膜厚は、表皮効果よりも厚い方が好ましい。もちろん、導体膜として、銅に限らず、例えば、アルミニウム、銀、ニッケルなどを用いても同様に機能する。また、導体膜は表皮効果を考慮して基板表面上に所定の厚さに形成されるが、基板表面の所定の領域(スロットパターン及び給電用スロットパターンの形成位置)には形成されておらず、この所定の領域をスロットとすることでアンテナとして機能する。
【0020】
上記導体膜除去工程において、有機溶剤などによる超音波洗浄、粘着テープなどの接着力を利用した導体膜の除去を行う。特に、最初に超音波洗浄を短時間実施後、粘着テープの接着力を利用して導体膜除去を行うことにより容易にパターン上に形成された導体膜を除去することができる。その結果、導体膜を除去する前後において、除去した部分の基板表面状態(キズやRaなど)に変化は無い。また、パターンが凸部の場合には、従来から用いられていた研磨装置や研削装置で問題となっていた凸部の高さの変化も導体膜を除去する前後でほとんど無く、凸部先端部の基板表面の加工傷も発生しない。また、超音波洗浄を用いることにより、両面側のパターン上の導体膜を同時に剥離することができ、更に、一度に多数の基板の剥離が可能となる。従って、本発明により、高価な研磨装置や研削装置を必要とせず、かつ短時間で導体膜の除去ができるので最終的には安価なアンテナが得られる。
【0021】
以下、本発明にかかる平面アンテナの製造方法、及び平面アンテナの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
(実施形態1)
まず、本発明の平面アンテナ及びその製造方法の一例を、実施形態1として説明する。図1は、本実施形態の平面アンテナの構成を示す概略断面図を示す図である。
【0023】
本実施形態の平面アンテナ100は、図1に示すように、樹脂からなる誘電体である基板1と、基板1上に形成された所定のパターン(スロットパターン3及び給電用スロットパターン4)と、上記所定のパターン以外の基板1の表面を被覆する導体膜2とを有する。本実施形態では、導体膜2で覆われない基板1の所定の位置に複数の凸部からなるパターン(スロットパターン3及び給電用スロットパターン4)を有する共振スロットを形成している。なお、図1では、平面アンテナ100の理解を補助するためスロットパターン3及び給電用スロットパターン4はその大きさが誇張されかつ一部省略して描いている。
【0024】
また、本実施形態の平面アンテナ100は、例えば、直径60mm、厚さ1.2mmのディスク形状を有し、小型のラジアルスロットアンテナとして実現される。但し、本発明の平面アンテナ100の適用はこれに限定されることは無く、例えば、パッチアンテナ、マイクロストリップアンテナなど導体被覆面の一部に導体を被覆しない領域を有する誘電体として構成されるいかなるアンテナに関しても適用することができ、またその大きさにおいて限定を有するものではない。このような平面アンテナ100は、小型であっても寸法精度良く製造することができるという長所を有する。
【0025】
基板1は、所定の厚みを有し、かかる厚み部分が導波路となって各スロットへの給電回路として機能する。なお、本明細書においては、基板1の表面において、スロットパターン3及び給電用スロットパターン4が形成される部分を除き、導体膜2が形成される部分を基板の導体被覆面5と定義する。図1では、上面(放射面)にスロットパターン3が、下面(給電面)に給電用スロットパターン4が凸型形状のパターンとしてそれぞれ基板1に一体成形されている。この凸型形状のパターンの高さは、誘電体の基板平坦部からの高さ、つまり導体被覆面5からの高さであって、その値は導体膜2の厚さよりも大きいものでなくてはならない。更にその高さは誘電体内を伝搬する波長の少なくとも1/10以下とすることで凸部の高さ方向に共振回路を構成することもない。
【0026】
スロットパターン3及び給電用スロットパターン4となる、複数の凸部からなるパターンは、柱型状を有することが好ましい。断面積がほぼ一定の柱状であればスロットが腐食した場合でも、スロット形状の同一性は保たれ、長期間に亘って安定した特性を維持することができる。
【0027】
スロットパターン3は、例えば断面凸部形状を有し、基板1の上面にスパイラル状に形成されている。一方、給電用スロットパターン4は、例えばプラス形状で断面凸部形状を有し、基板1の下面の中心位置に形成されている。なお、給電用スロットパターン4の形状は、プラス形状に限られず、場合によっては円形でも良い。また、給電用スロットパターン4がアンテナ100のスロット中心に給電できないと放射電力パターンが偏った特性となるため、給電用スロットパターン4は、上述したススパイラル状のスロットパターン3の中心に対向する位置に精度良く設けられている。
【0028】
本実施形態では、スロットパターン3の中心と給電用スロットパターン4の中心(電位的意味の中心)のずれがλ(波長)/50以内であることが好ましい。このように放射電磁波の位相のずれを抑えることにより、それら放射電磁波が合成されることにより形成される放射パターンが良好なものとなる。
【0029】
上面(放射面)側のスロットパターン3と下面(給電面)側の給電用スロットパターン4とを別々に成形を行っても良いが、位置合せジグなどを用いてスロットパターン3及び給電用スロットパターン4を同時に一体成形した方が中心位置のずれが少なくて好ましい。
【0030】
本実施形態において、基板1を構成する誘電体としては、例えば、シクロオレフィンポリマー樹脂を用いることができるが、これに限らず低誘電率や低吸水性のある樹脂であれば適用可能で、耐水性、耐腐食性を高めることができる。低誘電率の樹脂は、一般に分子内に親水性の高い極性基を持たないため、飽和吸水量が小さく疎水性である。また、低誘電率の樹脂は、多孔質でもないために、アルミナなどの無機材料と比較して撥水性である。具体的な材料としては、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などのフッ素系樹脂、ポリスチレンなどの芳香族系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ノルボルネンなどのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。コストやプロセスを考慮すると、炭化水素系樹脂が特に好ましい。なお、これらの材料には熱膨張率などのため必要に応じて二酸化ケイ素などのフィラーやファイバー、シートを混入することも可能である。50GHz以上の高周波での使用を考えた場合、ジメタノナフタレン系樹脂が優れている。
【0031】
また、基板1を構成する誘電体は、吸水率が0.01%以下である材料から構成されていても良い。これにより、耐水性、耐腐食性を高めることができる。このような材料には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ノルボルネンなどのポリオレフィン系樹脂が含まれる。
【0032】
また、基板1を構成する誘電体は、熱膨張率が7×10-5以下である材料から構成されていても良い。これにより、耐水性、耐腐食性を高めることができる。このような材料には、例えば、ジメタノナフタレン系樹脂が含まれる。
【0033】
本実施形態において、導体膜2は、基板1の導体被覆面5上に表皮効果の影響を受けないように所定の厚さに形成されている。本実施形態では60GHzの平面アンテナを想定しているので、導体膜の厚さは、例えば、2μm程度と設定できる。導体材料としては、銅や銀、ニッケルなどを用いることができる。
【0034】
以下に、本実施形態の平面アンテナの製造方法について説明する。
【0035】
まず、本実施形態の平面アンテナの製造に用いられる凸部のパターンを有す基板の製造方法(パターン形成工程)の一例を図2を用いて説明する。
【0036】
まず、図2Aに示すように、誘電体の平板基板6と、スロットパターン3(図1)に対応する凹部7を有する金型8と、給電用スロットパターン4(図1)に対応する凹部9を有する金型10とを用意し、金型8の凹部7が形成されている面と、金型10の凹部9が形成されている面との間に、平板基板6を配置する。このとき、基板1(図1)の完成時にスロットパターン3(図1)と給電用スロットパターン4(図1)の中心位置が合うように金型8及び金型10の位置を調整する。
【0037】
そして、平板基板6と、金型8及び金型10とを密着させ、図2Bに示すように、熱ナノインプリント装置(図示せず)により、金型8の上面側及び金型10の下面側から平板基板6に対して所定の熱と圧力11を同時に加える。例えば、170℃で30kNの圧力を加える。これにより、金型8の凹部7及び金型10の凹部9に対応するスロットパターン3(図1)及び給電用スロットパターン4(図1)をそれぞれ平板基板6の上面及び下面に転写させることができる。
【0038】
上記転写の終了後、金型8及び金型10を取り除くと、図2Cに示すように、スロットパターン3及び給電用スロットパターン4が一体に形成された基板1が得られる。
【0039】
このように、所定のパターンに対応する凹部7,9を有する金型8,10と誘電体の基板6とを、ある特定の温度下で圧力をかけながら密着させ、基板表面に所定のパターンを転写させることにより、基板表面にミクロン単位の高精度で例えばスロットやパッチなどを形成することができ、最終的には短波長化に好適な小型のアンテナを製造できる。更に、所定のパターンに対応する凹部7,9を有する金型8,10を用いることで、高精度でアンテナの指向性に優れる基板1の量産が容易であり、最終的には安価にアンテナを製造可能となる。この製造方法は、アンテナに必要なフィルタの製造にも活用できる。
【0040】
なお、複数の凸部からなる所定のパターンを有する基板の成形方法は、上記熱ナノインプリント法に限られず、光ナノインプリント法や射出成形法を用いることもできる。
【0041】
次に、図2で得られた基板1を用いた平面アンテナの製造方法の一例を、図3を用いて説明する。
【0042】
まず、図3Aに示すように、複数の凸部からなる所定のパターンを有する基板1と、スロットパターン3に対応するに孔12を有するマスク13と、給電用スロットパターン4に対応する孔14を有するマスク15とを用意する。マスク13の孔12及びマスク15の孔14の大きさはそれぞれ、スロットパターン3及び給電用スロットパターン4が貫通可能なように、それら各パターンの形状よりも多少大きくしている。
【0043】
次に、図3Bに示すように、マスク13の孔12に基板1のスロットパターン3が貫通するように、マスク13を基板1の上面に積層(密着)させるとともに、マスク15の孔14に基板1の給電用スロットパターン4が貫通するように、マスク15を基板1の下面に密着させる(マスク密着工程)。
【0044】
また、離型剤として例えば顔料インク16が塗布されている面を有するガラス基板17を2つ用意して、2つのガラス基板17の顔料インク16が塗布されている面の間に、マスク13及びマスク15が密着した状態の基板1を配置し(図3B)、ガラス基板17を基板1に近づけ、顔料インク16を、マスク13,15の孔12,14から露出している凸部3,4の先端の表面に塗布する。(基板密着力低下処理工程)。ここでは、ガラス基板17上に約10μmの厚さとなるよう顔料インク16を塗布した。これにより、顔料インク16が塗布された部分18(後述の図3C)の導体膜に対する密着力は低下する。なお、本実施形態では、離型剤として顔料インクを用いたが、染料インク、油性ペンのインクなども用いることができる。また、これら以外にも有機溶剤に溶けるものや基板と導体膜との密着力を下げるものであれば良い。
【0045】
その後、基板1に密着しているマスク13,15を剥がすと、図3Cに示すように、顔料インクの塗布により導体膜に対する密着力が低下した部分18を有する基板1が得られる。
【0046】
次に、図3Dに示すように、凸部のパターン3,4以外の基板表面と導体膜との密着力を向上させる処理として、例えば逆スパッタ法による表面処理19を行う(基板密着力向上処理工程)。これにより、基板表面の粗さ(例えばRa)が大きくなり密着力が向上する。表面処理19は、具体的には、マグネトロンスパッタ装置を用い、アルゴン雰囲気中で、パワー500W、スパッタ時間60秒の条件で逆スパッタを行うことにより実行できる。
【0047】
次に、図3Eに示すように、スパッタ法により、基板1の表面全体に導体膜を形成する(導体膜形成工程)。これにより、スロットパターン3及び給電用スロットパターン4と基板1本体に一様に導体膜2,20,21が形成される。実際には凸部の側面にも導体膜は形成されるが、図面上省いている。
【0048】
しかし、図3Eに示す状態では、スロットパターン3及び給電用スロットパターン4はそれぞれ、導体膜20,21により被覆された凹凸パターンであって、電気的なアンテナパターンとしては機能していない。そこで、スロットパターン3及び給電用スロットパターン4を電気的なアンテナパターンとするために、導体膜に対する密着力が低下した部分18上に形成された導体膜20,21を剥離する(導体膜除去工程)。また、この導体膜の剥離処理により、各パターンの先端表面(18)に塗布された顔料インクも洗浄される。
【0049】
ここで、導体膜の剥離方法としては、有機溶剤などによる超音波洗浄、粘着テープなどの接着力を用いて剥離する方法が挙げられる。具体的には、最初に例えばアセトンで超音波洗浄を数分間実施後、例えばセロハンテープの接着力を利用して導体膜を除去することにより短時間で容易に、導体膜に対する密着力が低下した部分18上に形成された導体膜20,21を除去することができる。これにより、従来から用いられていた研磨装置や研削装置で問題となっていた凸部の高さのバラツキもほとんど無く、基板表面の加工傷も発生しない。また、超音波洗浄を用いることにより、基板1の上面及び下面に形成されたパターン3,4上の導体膜20,21を同時に剥離することができ、更に、一度に多数の基板の剥離が可能となる。従って、高価な研磨装置や研削装置を必要とせず、かつ短時間で導体膜の除去ができるので最終的には安価なアンテナが得られる。
【0050】
以上のプロセスを得て、図3Fに示すように、基板1上の所定の領域に、導体膜が被覆されていないスロットパターン3及び給電用スロットパターン4を有する平面アンテナ100を得ることができる。なお、図3Fに示す平面アンテナを得た後、さらに導体膜2上に保護層としてSiO2膜やSiN膜などの薄膜を形成しても良い。ただし、保護層としてはアンテナの電波特性に影響を及ぼさないものを使用する必要がある。
【0051】
このように、本実施形態の平面アンテナの製造方法によれば、指向性が鋭く、良好な電波特性を有するアンテナを得ることができる。また、量産性にも優れるため、製造コストの削減をもたらすことができる。
【0052】
(実施形態2)
次に、本発明の平面アンテナの製造方法の他の例を、実施形態2として説明する。本実施形態の平面アンテナの製造に用いられる凸部のパターンを有する基板の製造方法については上記実施形態1で図2を用いて説明したので、ここではその説明を省略し、図2で得られた基板1を用いた平面アンテナの製造方法の他の例を図4を用いて説明する。
【0053】
まず、図4Aに示すように、複数の凸部からなる所定のパターンを有する基板1と、スロットパターン3に対応する孔22を有するマスク23と、給電用スロットパターン4に対応する孔24を有するマスク25とを用意する。マスク23の孔22及びマスク25の孔24の大きさはそれぞれ、スロットパターン3及び給電用スロットパターン4が貫通可能なように、それら各パターンの形状よりも多少大きくしている。
【0054】
次に、図4Bに示すように、マスク23の孔22に基板1のスロットパターン3が貫通するように、マスク23を基板1の上面に積層(密着)させるとともに、マスク25の孔24に基板1の給電用スロットパターン4が貫通するように、マスク25を基板1の下面に密着させる(マスク密着工程)。そして、得られた積層体の両主面側に強度な紫外線26を照射する(基板密着力低下処理工程)。例えば、波長が185nmの紫外線照射用ランプを用い、このランプと基板1との距離を5cm離間させた状態で、照度が約15mW/cm2の紫外線照射を5分間行う。これにより、強度な紫外線26が照射された部分27(後述の図4C)の導体膜に対する密着力は低下する。
【0055】
ここで、紫外線を照射することによって基板表面と導体膜との密着力を低下させることが重要である理由を説明する。樹脂基板は、紫外線照射量が所定量の紫外線を照射すると(適度な紫外線照射)、基板表面が改質され、導体膜に対する密着力が向上し、更に上記所定量を超えて強度な紫外線照射を続けると、基板表面が脆くなり、導体膜に対する密着力が低下することが知られている。そこで、本発明では、基板表面の導体膜に対する密着力を低下させる目的で、紫外線照射量が上記所定量よりも多くなるよう紫外線照射を実施することとした。ここで、本実施形態の樹脂基板を用いて紫外線照射の実験を行ったところ、上記紫外線照射用ランプを用いて紫外線照射を2分間行った場合、基板表面の導体膜に対する密着力が向上し、紫外線照射をさらに3分間行うと、導体膜に対する密着力が低下するという結果が得られた。そのため、本実施形態の基板密着力低下処理工程では、紫外線照射時間を5分と設定した。なお、波長254nmのランプでも照射条件を変えることにより同様な結果が得られている。
【0056】
その後、基板1に密着しているマスク23,25を剥がすと、図4Cに示すように、強度な紫外線26の照射により導体膜に対する密着力が低下した部分27を有する基板1が得られる。
【0057】
次に、図4Dに示すように、凸部のパターン3,4以外の基板表面と導体膜との密着力を向上させる処理として、基板密着力低下処理工程で用いた紫外線照射用ランプを用いて適度な紫外線照射28を行う(基板密着力向上処理工程)。ここでは、紫外線照射時間を2分間とした。これにより、パターン3,4が形成された部分以外の基板表面の導体膜に対する密着力を向上させることができる。ここで、基板密着力向上処理工程で導体膜に対する密着力が向上した状態とは、複数の基板に対し紫外線照射を行い、それら複数の基板をセロハンテープに接触させた場合に全ての基板がセロハンテープに引っ付いている状態のことをいう。
【0058】
次に、図4Eに示すように、スパッタ法により、基板1の表面全体に導体膜を形成する(導体膜形成工程)。これにより、スロットパターン3及び給電用スロットパターン4と基板1本体に一様に導体膜2,29,30が形成される。実際には凸部の側面にも導体膜は形成されるが、図面上省いている。
【0059】
しかし、図4Eに示す状態では、スロットパターン3及び給電用スロットパターン4はそれぞれ、導体膜29,30により被覆された凹凸パターンであって、電気的なアンテナパターンとしては機能していない。そこで、スロットパターン3及び給電用スロットパターン4を電気的なアンテナパターンとするために、導体膜に対する密着力が低下した部分27上に形成された導体膜29,30を剥離する(導体膜除去工程)。導体膜の剥離方法としては、上記実施形態1で説明した、有機溶剤などによる超音波洗浄、粘着テープなどの接着力を用いて剥離する方法を用いることができる。
【0060】
以上のプロセスを得て、図4Fに示したように、基板1上の所定の領域に、導体膜が被覆されないスロットパターン3及び給電用スロットパターン4を有するアンテナを得ることができる。なお、導体膜除去工程を行っても、基板密着力低下処理工程で生じた導体膜に対する密着力が低下した部分27が残ることもあるが、電波特性に影響は無い。また、図4Fに示すアンテナを得た後、さらに導体膜2上に保護層としてSiO2膜やSiN膜などの薄膜を形成しても良い。ただし、保護層としてはアンテナの電波特性に影響を及ぼさないものを使用する必要がある。
【0061】
このように、本実施形態の平面アンテナの製造方法によれば、指向性が鋭く、良好な電波特性を有するアンテナを得ることができる。また、量産性にも優れるため、製造コストの削減をもたらすことができる。
【0062】
(実施形態3)
次に、本発明の平面アンテナの他の例を、実施形態3として説明する。上記実施形態1,2と異なる点は、基板が平板基板であること、所定のパターンは凹部形状であることである。図5は、本実施形態の平面アンテナの製造方法を説明するための図である。
【0063】
本実施形態の平面アンテナは、図5Fに示すように、樹脂からなる誘電体である平板状の基板31と、基板31上に形成された所定のパターン(スロットパターン39及び給電用スロットパターン40)と、上記所定のパターン以外の基板31の表面を被覆する導体膜2とを有する。本実施形態では、導体膜2で覆われない基板31の所定の位置に所定のパターン(スロットパターン39及び給電用スロットパターン40)を有する共振スロットを形成している。
【0064】
また、本実施形態の平面アンテナは、例えば、直径60mm、厚さ1.2mmのディスク形状を有し、小型のラジアルスロットアンテナとして実現される。但し、本発明の平面アンテナの適用はこれに限定されることは無く、例えば、パッチアンテナ、マイクロストリップアンテナなど導体被覆面の一部に導体を被覆しない領域を有する誘電体として構成されるいかなるアンテナに関しても適用することができ、またその大きさにおいて限定を有するものではない。このような平面アンテナは、小型であっても寸法精度良く製造することができるという長所を有する。
【0065】
基板31は、所定の厚みを有し、かかる厚み部分が導波路となって各スロットへの給電回路として機能する。
【0066】
本実施形態では、スロットパターン39の中心と給電用スロットパターン40の中心(電位的意味の中心)のずれがλ(波長)/50以内であることが好ましい。放射電磁波の位相のずれを抑えることにより、それら放射電磁波が合成されることにより形成される放射パターンが良好なものとなる。
【0067】
本実施形態において、基板31を構成する誘電体としては、例えば、シクロオレフィンポリマー樹脂を用いることができるが、これに限らず低誘電率や低吸水性のある樹脂なら適用可能である。この誘電体の具体的な材料については、上記実施形態1で説明した通りである。
【0068】
本実施形態において、導体膜2は、基板31の表面上に表皮効果の影響を受けないように所定の厚さに形成されている。本実施形態では60GHzの平面アンテナを想定しているので、導体膜2の厚さは、例えば、2μm程度と設定できる。導体材料については、上記実施形態1で説明した通りである。
【0069】
以下に、本実施形態の平面アンテナの製造方法について図5を用いて説明する。図5には、平板基板31を用いて、かつ紫外線照射量の異なる2種類の紫外線照射を実施して導体膜に対する密着力を制御した場合の例を示す。
【0070】
まず、図5Aに示すように、誘電体の平板基板31と、最終的に得られるスロットパターン39(後述の図5F)に対応する孔32を有するマスク33と、最終的に得られる給電用スロットパターン40(後述の図5F)に対応する孔34を有するマスク35とを用意する。
【0071】
次に、図5Bに示すように、最終的に形成されるスロットパターン39と給電用スロットパターン40の中心が合うように、マスク33,35を平板基板31の両主面上に積層(密着)させる(マスク密着工程)。そして、得られた積層体の両主面側に強度な紫外線36を照射する(基板密着力低下処理工程)。例えば、波長が185nmの紫外線照射用ランプを用い、このランプと基板31との距離を5cm離間させた状態で、照度が約15mW/cm2の紫外線照射を5分間行う。これにより、強度な紫外線36が照射された部分37(後述の図5C)の導体膜に対する密着力は低下する。なお、紫外線を照射することによって基板表面と導体膜との密着力が低下または向上する理由については、上記実施形態2で説明した通りである。
【0072】
その後、基板31に密着しているマスク33,35を剥がすと、図5Cに示すように、強度な紫外線36の照射により導体膜に対する密着力が低下した部分37を有する基板31が得られる。
【0073】
次に、図5Dに示すように、導体膜に対する密着力が低下した部分37以外の基板表面と導体膜との密着力を向上させる処理として、基板密着力低下処理工程で用いた紫外線照射用ランプを用いて適度な紫外線照射38を行う(基板密着力向上処理工程)。ここでは、紫外線照射時間を2分間とした。これにより、導体膜に対する密着力が低下した部分37以外の基板表面の導体膜に対する密着力を向上させることができる。
【0074】
次に、図5Eに示すように、スパッタ法により、基板31の表面全体に導体膜2を形成する(導体膜形成工程)。
【0075】
しかし、図5Eに示す状態では、最終的に得られるスロットパターン39(後述の図5F)及び給電用スロットパターン40(後述の図5F)に対応する部分37は導体膜2により被覆されているため、電気的なアンテナパターンは得られていない。そこで、電気的なアンテナパターンを得るために、密着力が低下した部分37上の導体膜2を剥離する(導体膜除去工程)。導体膜の剥離方法としては、上記実施形態1で説明した、有機溶剤などによる超音波洗浄、粘着テープなどの接着力を用いて剥離する方法を用いることができる。
【0076】
以上のプロセスを得て、図5Fに示したように、基板31上の所定の領域に、導体膜2で被覆されないスロットパターン39及び給電用スロットパターン40を有するアンテナを得ることができる。なお、導体膜除去工程で導体膜の除去を行っても、基板密着力低下処理工程で生じた導体膜に対する密着力が低下した部分37が残ることもあるが、電波特性に影響は無い。また、図5Fに示すアンテナを得た後、さらに導体膜2上に保護層としてSiO2膜やSiN膜などの薄膜を形成しても良い。ただし、保護層としてはアンテナの電波特性に影響を及ぼさないものを使用する必要がある。
【0077】
このように、本実施形態の平面アンテナの製造方法によれば、指向性が鋭く、良好な電波特性を有するアンテナを得ることができる。また、量産性にも優れるため、製造コストの削減をもたらすことができる。
【0078】
なお、本実施形態では、スロットアンテナを例として示したが、例えば、パッチアンテナではスロットパターンが導体膜として構成されるだけでその他において製造方法に変わりは無い。また、本発明の製造方法はアンテナに限らず、バンドパスフィルターなどにも適用できる。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はその要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の平面アンテナは、ミリ波帯(周波数30乃至300GHz、波長1乃至10mmの電波)に適した小型な平面アンテナである。特に、大容量で低コストな多様な無線システムに適用可能である。このようなアンテナは、例えば、自動車衝突防止用のレーダ、短距離通信システム、無線LAN、及び家庭の屋内配線の無線化などに好適である。
【符号の説明】
【0081】
1 凸部を有する誘電体の基板
2 導体膜
3 凸部のスロットパターン
4 凸部の給電用スロットパターン
5 導体被覆面
6、31 誘電体の平板基板
7 スロットパターンに対応する凹部
8 スロットパターン用金型
9 給電用スロットパターンに対応する凹部
10 給電用スロットパターン用金型
11 熱ナノインプリント時の加圧方向
12、22、32 スロットパターンに対応する孔
13、23、33 マスク
14、24、34 給電スロットパターンに対応する孔
15、25、35 マスク
16 顔料インク
17 ガラス基板
18 顔料インクが塗布された部分(密着力が低下した部分)
19 逆スパッタによる表面処理
20、29 スロットパターン上の導体膜
21、30 給電用スロットパターン上の導体膜
26、36 紫外線照射
27、37 密着力が低下した部分
28、38 紫外線照射
39 スロットパターン
40 給電スロットパターン
100 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなる誘電体である基板と、前記基板上に形成された所定のパターンと、前記所定のパターン以外の前記基板の表面を被覆する導体膜とを備える平面アンテナの製造方法であって、
平板状の基板の表面に、複数の凸部からなるパターンを形成するパターン形成工程と、
前記パターンに対応する孔を有するマスクを、前記パターンが形成された前記基板の表面上に密着させるマスク密着工程と、
前記基板と前記マスクとを密着させた状態で、前記孔から露出している前記基板表面の導体膜に対する密着力を低下させる処理を行う基板密着力低下処理工程と、
前記マスクを取り除いた後、前記密着力が低下した部分以外の基板表面の導体膜に対する密着力を向上させる処理を行う基板密着力向上処理工程と、
前記基板表面に所定の膜厚で導体膜を形成する導体膜形成工程と、
前記基板の前記導体膜に対する密着力が低下した部分上に形成された導体膜を除去する導体膜除去工程とを含むことを特徴とする平面アンテナの製造方法。
【請求項2】
樹脂からなる誘電体である基板と、前記基板上に形成された所定のパターンと、前記所定のパターン以外の前記基板の表面を被覆する導体膜とを備える平面アンテナの製造方法であって、
前記パターンに対応する孔を有するマスクを、平板状の基板の表面上に密着させるマスク密着工程と、
前記基板と前記マスクとを密着させた状態で、前記孔から露出している前記基板表面の導体膜に対する密着力を低下させる処理を行う基板密着力低下処理工程と、
前記マスクを取り除いた後、前記密着力が低下した部分以外の基板表面の導体膜に対する密着力を向上させる処理を行う基板密着力向上処理工程と、
前記基板表面に所定の膜厚で導体膜を形成する導体膜形成工程と、
前記基板の前記導体膜に対する密着力が低下した部分上に形成された導体膜を除去する導体膜除去工程とを含むことを特徴とする平面アンテナの製造方法。
【請求項3】
前記導体膜は、銅の薄膜である請求項1または2に記載の平面アンテナの製造方法。
【請求項4】
前記導体膜除去工程の前後で前記導体膜を除去した部分の基板表面状態に変化が無い請求項1または2に記載の平面アンテナの製造方法。
【請求項5】
前記導体膜除去工程の前後で凸部の高さに変化が無い請求項1に記載の平面アンテナの製造方法。
【請求項6】
前記基板は、紫外線照射量が所定量までは導体膜に対する密着力が向上し、前記所定量を超えると導体膜に対する密着力が低下する性質を有し、
前記基板密着力低下処理工程は、前記基板に対し、紫外線照射量が前記所定量よりも多くなるよう紫外線照射を行うことにより、前記基板表面の前記密着力を低下させる請求項1または2に記載の平面アンテナの製造方法。
【請求項7】
前記基板密着力低下処理工程は、顔料インクを塗布することにより、前記基板表面の前記密着力を低下させる請求項1または2に記載の平面アンテナの製造方法。
【請求項8】
前記基板は、紫外線照射量が所定量までは導体膜に対する密着力が向上し、前記所定量を超えると導体膜に対する密着力が低下する性質を有し、
前記基板密着力向上処理工程は、前記基板に対し、紫外線照射量が前記所定量となるよう紫外線照射を行うことにより、前記基板表面の前記密着力を向上させる請求項1または2に記載の平面アンテナの製造方法。
【請求項9】
前記導体膜除去工程は、前記基板を超音波洗浄した後、粘着テープを用いて前記パターン上の導体膜を除去する請求項1に記載の平面アンテナの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載された製造方法により製造される平面アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−244401(P2011−244401A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117370(P2010−117370)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】