平面アンテナ
【課題】 回路基板への表面実装が可能であり、共振周波数の調整が容易で、放射特性、利得に優れ、かつ小型の平面アンテナを提供する。
【解決手段】 上下面と上下面間を繋ぐ側面を備えた矩形の基板と、基板の一方の上面に形成した矩形の放射電極と、基板の下面に形成した第1接地電極と、基板の側面に形成し下面側から上面側へ延びる帯状の給電電極と、給電電極と同じ側面に形成し、給電電極を挟んで対向し第1接地電極から延び、その端部と放射電極との間隔が等しい一対の第2接地電極を備え、放射電極の端部を給電電極の端部と対向して容量結合により給電し、第2接地電極の放射電極側の端部を櫛歯状に形成した。
【解決手段】 上下面と上下面間を繋ぐ側面を備えた矩形の基板と、基板の一方の上面に形成した矩形の放射電極と、基板の下面に形成した第1接地電極と、基板の側面に形成し下面側から上面側へ延びる帯状の給電電極と、給電電極と同じ側面に形成し、給電電極を挟んで対向し第1接地電極から延び、その端部と放射電極との間隔が等しい一対の第2接地電極を備え、放射電極の端部を給電電極の端部と対向して容量結合により給電し、第2接地電極の放射電極側の端部を櫛歯状に形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はWLAN(Wireless Local Area Network)などの直線偏波の電波を利用した通信システムや、GPS(Global Positioning System)などの円偏波の電波を利用した通信システムに用いられる平面アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、薄型化、軽量化などの動向を反映して平面アンテナに間する研究が盛んに行われている。平面アンテナの一種であるマイクロストリップアンテナ(MSA)は、帯域が狭く、指向性が大きいという特性を持つ。マイクロストリップパッチアンテナ、パッチアンテナとも呼ばれ、アンテナの放射電極は、絶縁物の基板上に貼り付けた金属にエッチングしたり、セラミック基板上にAgやCuなどの導体ペーストを印刷して焼き付けたりして形成される。平面アンテナの放射電極の形状は、矩形や円形など単純であって、共振周波数における波長によって大きさが決まるため、UHF帯以上の周波数で用いられることが多い。
【0003】
図10に従来の平面アンテナの例を斜視図として示す。平面アンテナ10は平板状の基板70の一方主面に矩形の放射電極50を備え、他方の主面のほぼ全面に接地電極100が形成され、他方主面側から基板70を貫通して放射電極50と接続する給電線路60が形成されて構成されている。放射電極50の各辺は給電周波数における実効波長(基板を構成する材料による波長短縮効果を含む)のほぼ1/2になるように形成されている。給電線路60と放射電極50との接続点の位置によって電圧と電流とが異なる為、給電点Fを放射電極50の中心部からはずれた位置にとることで、入力インピーダンスを50Ωで整合を取ることが出来る。また図中、給電点Fの位置を放射電極50の対角線上としているが、例えば中心線上など他の位置に設けても良い。
【0004】
放射電極50の各辺の長さを同じとした場合に、給電点Fの位置を放射電極50の対角線上として、二つの対角線と45度の角度をなす位置の給電点Fから給電すると直線偏波が励振される。放射電極50の各辺の長さを異ならせ、長辺を実効波長の1/2よりも少し長くし、短辺を短くすると、放射電極50に互いに90度の位相差を持ち、振幅が等しい二つの共振モードの電流(矢印)が発生して、円偏波の電磁波を励振することが出来る。
【0005】
給電点Fの位置を放射電極50の中心線上とした場合、放射電極50の対角線の長さが同じであれば、直線偏波が励振される。対角線の一方の長さを他方の対角線の長さを異ならせると、放射電極50に互いに90度の位相差を持ち、振幅が等しい二つの共振モードの電流が発生して、円偏波の電磁波を励振することが出来る。放射電極50の対角線の長さを異ならせる方法としては、放射電極50の対向する2箇所の隅部にカットを設けたり、放射電極50を菱形としたり、放射電極50の内部に、長方形や楕円形、あるいは十字形状のスリットを設けるなどの縮退分離手段によって電流経路の長短を調整する。
【0006】
このアンテナの利点は、さまざまな偏波に対応できる点であるものの、放射電極50への給電は、その面内に給電点Fを設ける構造のため、ピン給電方式としたり、あるいは放射電極50を支持する基板に貫通穴を形成し、そこに給電線路を設けたりする等の構造を取らざるを得ず、表面実装が困難であるとの問題がある。またインピーダンス調整のため、給電点の位置が制限される問題があった。
【0007】
この様な問題に対して特許文献1には、表面実装性やインピーダンス整合と容易とする平面アンテナが開示されている。図11はその斜視図である。この平面アンテナ10は、誘電体よりなる平板状の基板70の上面に放射電極50が形成され、前記基板70の側面から上面にかけて、一端側が開放となるマイクロストリップ状の給電電極(給電線路)60を備え、底面に接地電極100が形成されており、給電電極の開放端と放射電極の縁端部である1つの辺とを、ギャップを介して近接して配置するものである。
この平面アンテナは基板の側面を利用して給電することが出来るため、貫通する給電線路や給電ピンを用いなくても良く、回路基板への表面実装が容易となる。また給電電極と放射電極とが容量結合する構成であるため、インピーダンスの調整が比較的容易となる利点もある。
【0008】
また特許文献2には、底面側の接地電極100と連続し、側面に形成された給電電極60の両側に位置するように他の接地電極100a、100bを形成した平面アンテナが記載されている(図12)。接地電極100a、100bと放射電極50との間には容量が形成され、容量の増加により共振周波数が低下する。一方、放射電極を小型とすれば共振周波数は増加するので、接地電極100a、100bによる容量の付加によって、接地電極100a、100bを設けないアンテナに対して小型なものとすることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−074721号公報
【特許文献2】特開2000−183637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
引用文献1や引用文献2に開示されたアンテナでは、放射電極が形成された主面に給電電極が形成されるため、その分、アンテナの上面面積を大きくせざるを得ない。その結果、アンテナの外形寸法が大きくなってしまう。また給電電極が長く形成されると、給電電極から実装される回路基板の接地電極へ向かう電界が大きくなり易く、アンテナ効率が低下するといった問題がある。
【0011】
また特許文献2の開示のアンテナでは、接地電極と放射電極とが異なる面に形成されている。このような場合には、個々のアンテナでの電極形成時の電極間寸法がばらつき易く、それに伴って共振周波数が様々にばらつき、所望の周波数帯域が確保できず、市場に供せないといった問題もあるが、特許文献2においては何等認識されていない。接地電極と放射電極とを同一面に形成する場合には、アンテナの上面面積を大きくする必要がある。
【0012】
そこで本発明では、回路基板への表面実装が可能であり、共振周波数の調整が容易で、放射特性、利得に優れ、かつ小型の平面アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上下面と前記上下面間を繋ぐ側面を備えた矩形の基板と、前記基板の一方の上面に形成された矩形の放射電極と、基板の下面に形成された第1接地電極と、基板の側面に形成され下面側から上面側へ延びる帯状の給電電極と、給電電極と同じ側面に形成され、前記給電電極を挟んで対向し前記第1接地電極から延び、その端部と前記放射電極との間隔が等しい一対の第2接地電極を備え、前記放射電極の端部を前記給電電極の端部と対向させて容量結合により給電し、前記第2接地電極の放射電極側の端部が櫛歯状に形成されていることを特徴とする平面アンテナである。
前記放射電極は、その一辺から前記側面にまで延長する帯状の延長部を有し、その端部を前記給電電極の端部と対向させて容量結合により給電するのが好ましい。
【0014】
更に本発明においては、放射電極の一辺から側面にまで延長する帯状の延長部を複数とし、延長部の一つの端部を給電電極の端部と対向させて容量結合により給電し、他の延長部の端部を第2接地電極と対向させてもよい。
【0015】
放射電極は平面視で矩形であるのが好ましく、縮退分離のため周縁、あるいは内部を一部スリットを形成して切り欠いても良い。また外周長を長く見せるように外周を櫛歯状に形成しても良い。本願発明の平面アンテナでは、給電点を放射電極の中心線上においている。このような構成の場合には、電流はその中心線と平行な放射電極のエッジに強く流れる。スリットによって電流経路が長くなり共振周波数が低下するため、平面アンテナを小型化することが出来る。スリットは一辺に複数設けて櫛歯状としても良いし、対向する2辺にそれぞれ設けても良い。
【0016】
第2接地電極端部の櫛歯電極は、対向する放射電極の一辺と略平行に延びるように構成するのが好ましい。ここで略平行とは、厳密に平行ではなくても櫛歯電極が延びる線分方向が放射電極の対向する辺と全体としておおよそ揃っていれば良く、課題の解決に寄与する程度に平行であるといえる場合を含むものである。従って、各電極形成時のばらつき等によって厳密には非平行となっても、放射電極の外周が櫛歯状であっても良い。
【0017】
本発明の平面アンテナは、第2接地電極端部の櫛歯電極をトリミングすることで共振周波数を変化させることができる。櫛歯電極の端部は第2接地電極の帯状部と連接電極によって接続される。櫛歯電極の自由端側は給電電極側でも逆側でも良い。
【0018】
基板はプリント基板やセラミック基板が用いられ、基板を構成する誘電性材料は、絶縁体であり、電界強度や、基板内部を進行する電磁波の速度に効果的に影響を及ぼすことができる材料から選択される。
プリント基板としてはテフロン(登録商標)グラスファイバ基板(PTFE基板)やポリフェニレンエーテル基板(PPE基板)などが一般的に用いられる。これらの基板は低誘電率(εr=1.1〜5.0)であり、小型化には不向きであるものの、誘電体損失tanδが10−3〜10−4と小さく、利得に優れたアンテナとなる。
【0019】
プリント基板の平面アンテナは、車載用途など比較的形状限定が少ない場合には好適であるが、携帯電話等の通信機器や小型のGPS端末などへの搭載は困難である場合がある。このような場合にはεrが200以下の高誘電率を有する誘電体セラミックスを用いたセラミック基板とするのが好ましい。比誘電率が高ければ、放射電極の一辺の長さLを短くなり、もって平面アンテナを小型化することが出来る。比誘電率の選択は平面アンテナが要求される外形寸法や特性によるが、εrが200を超える場合には、帯域幅の減少と利得の低下が大きくなる。
【0020】
本発明においては、一対の第2接地電極を、給電電極に沿ってその先端部に至るまで等間隔に配置するのが好ましい。この様に給電電極をコプレーナ構造にて構成することで給電電極での損失が少なくなり、アンテナ特性が向上する。また放射電極に他の延長部を設けるなどして、第2接地電極との容量結合を強めることで放射電極への電力供給量を大きくすることが出来る。
本発明においては、給電電極の端部と放射電極の延長部とを対向させ、ギャップを持たせて容量結合により給電するのが好ましい。また容量結合部におけるギャップ長は第2接地電極と給電電極との間の幅よりも十分に狭く構成する。このような構成によればギャップ長の調整によって、容易にインピーダンスの調整が行え、かつ比帯域幅の減少を防ぐことが出来る。特に基板を構成する誘電体が高比誘電率である場合に、顕著に効果を発揮する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、回路基板への表面実装が可能であり、共振周波数の調整が容易で、放射特性、利得に優れ、かつ小型の平面アンテナを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例に係る平面アンテナの斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係る平面アンテナの正面図である。
【図3】本発明の他の実施例に係る平面アンテナの正面図である。
【図4】本発明の一実施例に係る平面アンテナのトリミングによる共振周波数の変化を示す図である。
【図5】本発明の一実施例に係る平面アンテナのトリミングによるVSWR特性、帯域幅を示す図である。
【図6】本発明の一実施例に係る平面アンテナを実装した評価ボードの斜視図である。
【図7】本発明の一実施例に係る平面アンテナの評価方法を説明するための図である。
【図8】本発明の他の実施例に係る平面アンテナの斜視図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る平面アンテナの正面図である。
【図10】従来の平面アンテナの斜視図である。
【図11】従来の他の平面アンテナの斜視図である。
【図12】従来の他の平面アンテナの斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する平面アンテナにおいて用いた材料や作製法は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができる。
図1は本願発明の一実施例に係る平面アンテナの斜視図であって、図1(a)は放射電極が形成された上面側から見た斜視図であり、同(b)は接地電極が形成され実装面となる下面側から見た斜視図である。図2は第2の接地電極が形成された面を示す正面図であり、図3は他の態様で形成された正面図である。
【0024】
平面アンテナ10は、直方体状の誘電体からなる基板70と、基板70の下面に形成された第1接地電極100と、上面に形成された一辺の長さがλ/2近似の放射電極50と、側面に形成された給電電極60で構成されている。このうち第1接地電極は基板70の側面にまで延長に形成されて、給電電極60を挟んで対抗する第2接地電極110a、110bを構成している。また、放射電極50の一部が帯状となり、側面に回り込んで開放端を形成する延長部55となる。給電電極60は、一端が基板70の側面上に形成された放射電極50の延長部55の開放端に近接して、ギャップ120を介して形成され、他端は基板70の下面に回り込んで、第1接地電極とギャップを介して形成されている。第2接地電極110a、110bの端部200は櫛歯状に形成されており、櫛歯電極210(210a、210b、210c、210d)を繋ぐ連接電極220で帯状電極と接続される。
【0025】
櫛歯電極210の数や形成間隔は調整すべき容量値に応じて適宜設定される。各櫛歯電極210は帯状で上面の放射電極50の対向する一辺と平行に形成され、放射電極50と近接する櫛歯電極210の開放端側から、第2接地電極110a、110bの端部200をレーザ等でVSWRの周波数特性を計測しながらトリミングして、共振周波数を調節する。櫛歯電極210の自由端は、給電電極側でも良いし、その逆側で有っても良い。
【0026】
基板70の側面に形成された第2接地電極110a、110bによって、放射電極50と接地電極との間に容量が形成されるが、容量値が低下すると共振周波数は増加する。従って、各電極の形成ばらつきや、基板70を構成する誘電体材料の誘電特性のばらつきを考慮し、所望の共振周波数よりも低くなるように各電極を形成し、共振周波数を確認しながら第2接地電極110a、110bの端部200をトリミングすれば、所望の共振周波数と周波数帯域が確保される。
【0027】
基板を構成する誘電体材料は、目的とする周波数に応じて適宜選択され得るものであるが、小型でありながら、アンテナ特性として十分な利得が得られるようにするには、比誘電率εrが5〜200程度の誘電体材料を用いる。セラミックス材料としてεrが10程度であればアルミナ系セラミックス、40以下であればチタン酸カルシウム系セラミックス、チタン酸マグネシウム系セラミックが、200以下であればチタン酸バリウム系セラミックスが挙げられる。他に温度特性や損失を考慮しながら選択される。
【0028】
放射電極50及びその延長部55、第1、第2接地電極100、110a、110b、給電電極60は銀ペーストなどの良伝導体を基板に印刷して焼き付けることで、厚みが数μm〜20μmの導体膜として形成される。伝導体としては銀のほかに、金、銅、パラジウム、白金や銀パラジウム合金、銀白金合金を含むペーストが用いられる。その形成はスクリーン印刷法など公知の製造方法を採用でき、他の方法としてはメッキやエッチングが挙げられる。
図1においては、放射電極50や第1接地電極100を、基板の側面から内側に間隔を持って形成している。これは外力による電極の剥離を防ぐなどの目的によるものだが、それぞれ基板と同じ大きさに形成しても良く、その場合には更に平面アンテナを小型に出来る。
【0029】
放射電極50と第2接地電極110a、110bとを近接させ過ぎると、放射電極50からの帰還電流が第2接地電極110a、110bに集中するため、所望のVSWR値が得られる帯域幅が低下するので、基板70を構成する誘電体の比誘電率等を考慮しながら間隔や対向する長さを設定する。
第2接地電極110a、110bの形状は、図示したI字状に限定されず、放射電極と対応する側が幅広となるT字やL字の帯状電極など、他の形状としてもかまわない。ただし放射電極50との間で形成される容量が大きくなりすぎないように、第2接地電極110a、110bの幅を、対向する放射電極50の一辺の長さに対して1/4以下とするのが好ましい。
また、基板70の側面(第2接地電極110a、110bが形成された側面を含む)において、回路基板への実装性や固着強度を向上するように、第1接地電極100と連続する端子電極を形成しても良い。この場合の端子電極はアンテナ特性に影響を与えない程度の大きさ、位置にて形成される。
【0030】
本実施形態による平面アンテナ10は、基板70の上面には放射電極50のみが形成される構成である。従って、給電電極を上面にまで形成する従来の平面アンテナに比べて基板70を小さくすることができるため、平面アンテナ10そのものも小型化することが出来る。
【実施例】
【0031】
本実施例の平面アンテナの基本構造は図1と同一なのでその説明を省略する。この平面アンテナは周波数帯域が1575.42±1.023MHzのGPS用アンテナである。本実施例では基板の誘電体材料としてTi−Ba−Sm系セラミックス材料を用いた。このセラミックス材料の比誘電率εrは79であり、tanδ(at 4.8GHz)が4×10−4である。
所定の組成で原料となるTiO2,BaCO3,Sm2O3などの酸化物を秤量して、ボールミルで湿式にて均一となるように混合する。その後、仮焼、粉砕を経て得られた造粒粉を加圧成形にて板状に形成し、1350℃で焼成し、得られた板状体をダイサー(切断機)によって所定の形状(12.0mm×12.0mm×3.0mm)に切り出して平面アンテナに用いる基板70を作製した。
【0032】
得られた基板70に、銀ペーストを用いて放射電極50、第1接地電極100、第2接地電極110a、110b、給電電極60をスクリーン印刷にて印刷形成して焼き付けて平面アンテナを作製した。
放射電極50は正方形(延長部除く)に形成され、一辺の長さを11.8mmとしている。この長さは、給電周波数1575.42MHzにおける実効波長の略1/2の寸法を考慮して設定している。延長部の幅は0.65mm、上面から端部までの長さを0.5mmとしている。給電電極60は幅を前記延長部と同じとし、対向する幅を0.65mm、底面からの長さを2.0mmとし、ギャップGを0.5mmとしている。給電電極60の両側には1.525mmの間隔Wをもって第2接地電極110a、110bを形成した。第2接地電極110a、110bの底面からの長さHは共に2.0mmである。第1接地電極100も正方形に形成され、一辺の長さを11.8mmとしている。
【0033】
第2接地電極110a、110bは、その端部と上面までの間が0.1mmであり、幅0.2mm、長さ1.5mmの3本の櫛歯電極が0.1mmの間隔で形成されている。第2接地電極110a、110bのそれぞれの櫛歯電極を一緒に上面側から順にレーザトリミングした時のVSWRのピーク周波数、ピーク値、VSWRが3.0以下の帯域幅を、ネットワークアナライザイにて測定した。結果を図4及び図5に示す。図中「なし」とはトリミングを行っていない初期状態であり、1段目とは、第2接地電極110a、110bの櫛歯電極210aをトリミングし、櫛歯電極210bが放射電極50の一辺と平行となるようにした状態である。2段目以降も同様に櫛歯電極210b、210cと順次トリミングしていった状態である。トリミングするに従い共振周波数は高周波側に移動し、VSWRのピーク値が低下するとともに帯域幅が広がった。本実施例では各櫛歯電極をトリミングして除いた場合のVSWR特性を示したが、放射電極50の一辺と対向する櫛歯電極の一部をトリミングするに従いVSWR特性も変化するので、平面アンテナの共振周波数を容易に所望の周波数とすることが出来る。
【0034】
共振周波数が1575.42MHzに調整された平面アンテナ10を試料とし、縦横それぞれ35mmで厚みが0.6mmのプリント基板200に半田付けして実装し、電波暗室(電波無響室)内にてアンテナ特性を評価した。図6に平面アンテナを実装した評価ボードの斜視図を示す。基板70の給電電極60と接続される線路パターン以外の領域は、全て接地導体パターンGNDが形成されている。前記線路パターンには整合回路を構成するリアクタンス素子(チップ部品)250が実装され、その端部は同軸線路300が接続されるように、同軸コネクタ(図示せず)が形成されている。
【0035】
図7はアンテナ特性の評価方法を説明する為の図である。内壁に電波吸収体が隙間なく敷設された暗室500に、測定用アンテナ(右旋回円偏波型ログ・スパイラル・アンテナ)300を配置し、3m離れて配置されたターンテーブル上で回転するアンテナ試料200へ電波を送信し、平面アンテナ10で受信する構成であり、得られた受信電力をもとに利得および放射指向性、VSWRを求めた。測定用アンテナ300とアンテナ試料200は、それぞれ室外に配置されたネットワークアナライザのポートに同軸ケーブルで接続されている。測定用アンテナ300への給電はネットワークアナライザにて行った。Y−Z面、X−Y面、Z−X面を含めた全平均利得は−5.40dBicであった。トリミングによる共振周波数の調整が容易であり、個々の平面アンテナにおいて、ばらつきが少なく、優れた利得特性を得ることが出来る。
【0036】
他の実施態様として、給電電極60と第2接地電極110a、110bとの間隔Wを0.5mm〜2.675mmとして変更し、他の寸法形状は前記平面アンテナと同じとした試料を同様の手順で作製し、測定評価した。間隔Wが1.525mmを超えると、VSWRと特性に顕著な差は見られないが、利得が緩やかに低下した。また間隔Wが狭まると利得が著しく低下し、Wが0.5mmであると実用に供し得ない程度に利得が低下した。
【0037】
次に給電電極60と放射電極50の延長部55とのギャップGを0.1〜0.5mmとして変更し、他の寸法形状は前記平面アンテナと同じとした試料を同様の手順で作製し、測定評価した。ギャップGを狭めていくと、VSWRと特性に顕著な差は見られないが、利得が緩やかに向上した。
【0038】
次に第2放射電極100a、110bの長さHを変更し、他の寸法形状は前記平面アンテナと同じとした試料を同様の手順で作製し、測定評価した。長さHが短いほどVSWRは広帯域化するが、長さHが1.5mm未満(基板厚みの1/2)では実用に供し得ない程度に利得が低下した。
【0039】
次に図8の斜視図に示すように、放射電極に3つの延長部55、56a、56bを形成し、内2つの延長部56a、56bを0.5mmのギャップを介して第2接地電極110a、110bと対向させ、他の寸法形状は前記平面アンテナと同じとした試料を同様の手順で作製し、測定評価した。その結果、延長部56a、56bを形成しない場合よりも利得が向上した。
また図9の正面図に示すように、延長部56a、56bと第2接地電極110a、110bと対向部を傾斜して形成すれば容量が増加するとともに、トリミングによる調整しろも増加させることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、回路基板への表面実装が可能であり、共振周波数の調整が容易で、放射特性、利得に優れ、かつ小型の平面アンテナを提供することが出来る。
【符号の説明】
【0041】
10 平面アンテナ
50 放射電極
55、56a、56b 放射電極の延長部
60 給電電極
70 基板
100 第1接地電極
110a、110b 第2接地電極
200 プリント基板(評価ボード)
【技術分野】
【0001】
本発明はWLAN(Wireless Local Area Network)などの直線偏波の電波を利用した通信システムや、GPS(Global Positioning System)などの円偏波の電波を利用した通信システムに用いられる平面アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、薄型化、軽量化などの動向を反映して平面アンテナに間する研究が盛んに行われている。平面アンテナの一種であるマイクロストリップアンテナ(MSA)は、帯域が狭く、指向性が大きいという特性を持つ。マイクロストリップパッチアンテナ、パッチアンテナとも呼ばれ、アンテナの放射電極は、絶縁物の基板上に貼り付けた金属にエッチングしたり、セラミック基板上にAgやCuなどの導体ペーストを印刷して焼き付けたりして形成される。平面アンテナの放射電極の形状は、矩形や円形など単純であって、共振周波数における波長によって大きさが決まるため、UHF帯以上の周波数で用いられることが多い。
【0003】
図10に従来の平面アンテナの例を斜視図として示す。平面アンテナ10は平板状の基板70の一方主面に矩形の放射電極50を備え、他方の主面のほぼ全面に接地電極100が形成され、他方主面側から基板70を貫通して放射電極50と接続する給電線路60が形成されて構成されている。放射電極50の各辺は給電周波数における実効波長(基板を構成する材料による波長短縮効果を含む)のほぼ1/2になるように形成されている。給電線路60と放射電極50との接続点の位置によって電圧と電流とが異なる為、給電点Fを放射電極50の中心部からはずれた位置にとることで、入力インピーダンスを50Ωで整合を取ることが出来る。また図中、給電点Fの位置を放射電極50の対角線上としているが、例えば中心線上など他の位置に設けても良い。
【0004】
放射電極50の各辺の長さを同じとした場合に、給電点Fの位置を放射電極50の対角線上として、二つの対角線と45度の角度をなす位置の給電点Fから給電すると直線偏波が励振される。放射電極50の各辺の長さを異ならせ、長辺を実効波長の1/2よりも少し長くし、短辺を短くすると、放射電極50に互いに90度の位相差を持ち、振幅が等しい二つの共振モードの電流(矢印)が発生して、円偏波の電磁波を励振することが出来る。
【0005】
給電点Fの位置を放射電極50の中心線上とした場合、放射電極50の対角線の長さが同じであれば、直線偏波が励振される。対角線の一方の長さを他方の対角線の長さを異ならせると、放射電極50に互いに90度の位相差を持ち、振幅が等しい二つの共振モードの電流が発生して、円偏波の電磁波を励振することが出来る。放射電極50の対角線の長さを異ならせる方法としては、放射電極50の対向する2箇所の隅部にカットを設けたり、放射電極50を菱形としたり、放射電極50の内部に、長方形や楕円形、あるいは十字形状のスリットを設けるなどの縮退分離手段によって電流経路の長短を調整する。
【0006】
このアンテナの利点は、さまざまな偏波に対応できる点であるものの、放射電極50への給電は、その面内に給電点Fを設ける構造のため、ピン給電方式としたり、あるいは放射電極50を支持する基板に貫通穴を形成し、そこに給電線路を設けたりする等の構造を取らざるを得ず、表面実装が困難であるとの問題がある。またインピーダンス調整のため、給電点の位置が制限される問題があった。
【0007】
この様な問題に対して特許文献1には、表面実装性やインピーダンス整合と容易とする平面アンテナが開示されている。図11はその斜視図である。この平面アンテナ10は、誘電体よりなる平板状の基板70の上面に放射電極50が形成され、前記基板70の側面から上面にかけて、一端側が開放となるマイクロストリップ状の給電電極(給電線路)60を備え、底面に接地電極100が形成されており、給電電極の開放端と放射電極の縁端部である1つの辺とを、ギャップを介して近接して配置するものである。
この平面アンテナは基板の側面を利用して給電することが出来るため、貫通する給電線路や給電ピンを用いなくても良く、回路基板への表面実装が容易となる。また給電電極と放射電極とが容量結合する構成であるため、インピーダンスの調整が比較的容易となる利点もある。
【0008】
また特許文献2には、底面側の接地電極100と連続し、側面に形成された給電電極60の両側に位置するように他の接地電極100a、100bを形成した平面アンテナが記載されている(図12)。接地電極100a、100bと放射電極50との間には容量が形成され、容量の増加により共振周波数が低下する。一方、放射電極を小型とすれば共振周波数は増加するので、接地電極100a、100bによる容量の付加によって、接地電極100a、100bを設けないアンテナに対して小型なものとすることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−074721号公報
【特許文献2】特開2000−183637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
引用文献1や引用文献2に開示されたアンテナでは、放射電極が形成された主面に給電電極が形成されるため、その分、アンテナの上面面積を大きくせざるを得ない。その結果、アンテナの外形寸法が大きくなってしまう。また給電電極が長く形成されると、給電電極から実装される回路基板の接地電極へ向かう電界が大きくなり易く、アンテナ効率が低下するといった問題がある。
【0011】
また特許文献2の開示のアンテナでは、接地電極と放射電極とが異なる面に形成されている。このような場合には、個々のアンテナでの電極形成時の電極間寸法がばらつき易く、それに伴って共振周波数が様々にばらつき、所望の周波数帯域が確保できず、市場に供せないといった問題もあるが、特許文献2においては何等認識されていない。接地電極と放射電極とを同一面に形成する場合には、アンテナの上面面積を大きくする必要がある。
【0012】
そこで本発明では、回路基板への表面実装が可能であり、共振周波数の調整が容易で、放射特性、利得に優れ、かつ小型の平面アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上下面と前記上下面間を繋ぐ側面を備えた矩形の基板と、前記基板の一方の上面に形成された矩形の放射電極と、基板の下面に形成された第1接地電極と、基板の側面に形成され下面側から上面側へ延びる帯状の給電電極と、給電電極と同じ側面に形成され、前記給電電極を挟んで対向し前記第1接地電極から延び、その端部と前記放射電極との間隔が等しい一対の第2接地電極を備え、前記放射電極の端部を前記給電電極の端部と対向させて容量結合により給電し、前記第2接地電極の放射電極側の端部が櫛歯状に形成されていることを特徴とする平面アンテナである。
前記放射電極は、その一辺から前記側面にまで延長する帯状の延長部を有し、その端部を前記給電電極の端部と対向させて容量結合により給電するのが好ましい。
【0014】
更に本発明においては、放射電極の一辺から側面にまで延長する帯状の延長部を複数とし、延長部の一つの端部を給電電極の端部と対向させて容量結合により給電し、他の延長部の端部を第2接地電極と対向させてもよい。
【0015】
放射電極は平面視で矩形であるのが好ましく、縮退分離のため周縁、あるいは内部を一部スリットを形成して切り欠いても良い。また外周長を長く見せるように外周を櫛歯状に形成しても良い。本願発明の平面アンテナでは、給電点を放射電極の中心線上においている。このような構成の場合には、電流はその中心線と平行な放射電極のエッジに強く流れる。スリットによって電流経路が長くなり共振周波数が低下するため、平面アンテナを小型化することが出来る。スリットは一辺に複数設けて櫛歯状としても良いし、対向する2辺にそれぞれ設けても良い。
【0016】
第2接地電極端部の櫛歯電極は、対向する放射電極の一辺と略平行に延びるように構成するのが好ましい。ここで略平行とは、厳密に平行ではなくても櫛歯電極が延びる線分方向が放射電極の対向する辺と全体としておおよそ揃っていれば良く、課題の解決に寄与する程度に平行であるといえる場合を含むものである。従って、各電極形成時のばらつき等によって厳密には非平行となっても、放射電極の外周が櫛歯状であっても良い。
【0017】
本発明の平面アンテナは、第2接地電極端部の櫛歯電極をトリミングすることで共振周波数を変化させることができる。櫛歯電極の端部は第2接地電極の帯状部と連接電極によって接続される。櫛歯電極の自由端側は給電電極側でも逆側でも良い。
【0018】
基板はプリント基板やセラミック基板が用いられ、基板を構成する誘電性材料は、絶縁体であり、電界強度や、基板内部を進行する電磁波の速度に効果的に影響を及ぼすことができる材料から選択される。
プリント基板としてはテフロン(登録商標)グラスファイバ基板(PTFE基板)やポリフェニレンエーテル基板(PPE基板)などが一般的に用いられる。これらの基板は低誘電率(εr=1.1〜5.0)であり、小型化には不向きであるものの、誘電体損失tanδが10−3〜10−4と小さく、利得に優れたアンテナとなる。
【0019】
プリント基板の平面アンテナは、車載用途など比較的形状限定が少ない場合には好適であるが、携帯電話等の通信機器や小型のGPS端末などへの搭載は困難である場合がある。このような場合にはεrが200以下の高誘電率を有する誘電体セラミックスを用いたセラミック基板とするのが好ましい。比誘電率が高ければ、放射電極の一辺の長さLを短くなり、もって平面アンテナを小型化することが出来る。比誘電率の選択は平面アンテナが要求される外形寸法や特性によるが、εrが200を超える場合には、帯域幅の減少と利得の低下が大きくなる。
【0020】
本発明においては、一対の第2接地電極を、給電電極に沿ってその先端部に至るまで等間隔に配置するのが好ましい。この様に給電電極をコプレーナ構造にて構成することで給電電極での損失が少なくなり、アンテナ特性が向上する。また放射電極に他の延長部を設けるなどして、第2接地電極との容量結合を強めることで放射電極への電力供給量を大きくすることが出来る。
本発明においては、給電電極の端部と放射電極の延長部とを対向させ、ギャップを持たせて容量結合により給電するのが好ましい。また容量結合部におけるギャップ長は第2接地電極と給電電極との間の幅よりも十分に狭く構成する。このような構成によればギャップ長の調整によって、容易にインピーダンスの調整が行え、かつ比帯域幅の減少を防ぐことが出来る。特に基板を構成する誘電体が高比誘電率である場合に、顕著に効果を発揮する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、回路基板への表面実装が可能であり、共振周波数の調整が容易で、放射特性、利得に優れ、かつ小型の平面アンテナを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例に係る平面アンテナの斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係る平面アンテナの正面図である。
【図3】本発明の他の実施例に係る平面アンテナの正面図である。
【図4】本発明の一実施例に係る平面アンテナのトリミングによる共振周波数の変化を示す図である。
【図5】本発明の一実施例に係る平面アンテナのトリミングによるVSWR特性、帯域幅を示す図である。
【図6】本発明の一実施例に係る平面アンテナを実装した評価ボードの斜視図である。
【図7】本発明の一実施例に係る平面アンテナの評価方法を説明するための図である。
【図8】本発明の他の実施例に係る平面アンテナの斜視図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る平面アンテナの正面図である。
【図10】従来の平面アンテナの斜視図である。
【図11】従来の他の平面アンテナの斜視図である。
【図12】従来の他の平面アンテナの斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する平面アンテナにおいて用いた材料や作製法は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができる。
図1は本願発明の一実施例に係る平面アンテナの斜視図であって、図1(a)は放射電極が形成された上面側から見た斜視図であり、同(b)は接地電極が形成され実装面となる下面側から見た斜視図である。図2は第2の接地電極が形成された面を示す正面図であり、図3は他の態様で形成された正面図である。
【0024】
平面アンテナ10は、直方体状の誘電体からなる基板70と、基板70の下面に形成された第1接地電極100と、上面に形成された一辺の長さがλ/2近似の放射電極50と、側面に形成された給電電極60で構成されている。このうち第1接地電極は基板70の側面にまで延長に形成されて、給電電極60を挟んで対抗する第2接地電極110a、110bを構成している。また、放射電極50の一部が帯状となり、側面に回り込んで開放端を形成する延長部55となる。給電電極60は、一端が基板70の側面上に形成された放射電極50の延長部55の開放端に近接して、ギャップ120を介して形成され、他端は基板70の下面に回り込んで、第1接地電極とギャップを介して形成されている。第2接地電極110a、110bの端部200は櫛歯状に形成されており、櫛歯電極210(210a、210b、210c、210d)を繋ぐ連接電極220で帯状電極と接続される。
【0025】
櫛歯電極210の数や形成間隔は調整すべき容量値に応じて適宜設定される。各櫛歯電極210は帯状で上面の放射電極50の対向する一辺と平行に形成され、放射電極50と近接する櫛歯電極210の開放端側から、第2接地電極110a、110bの端部200をレーザ等でVSWRの周波数特性を計測しながらトリミングして、共振周波数を調節する。櫛歯電極210の自由端は、給電電極側でも良いし、その逆側で有っても良い。
【0026】
基板70の側面に形成された第2接地電極110a、110bによって、放射電極50と接地電極との間に容量が形成されるが、容量値が低下すると共振周波数は増加する。従って、各電極の形成ばらつきや、基板70を構成する誘電体材料の誘電特性のばらつきを考慮し、所望の共振周波数よりも低くなるように各電極を形成し、共振周波数を確認しながら第2接地電極110a、110bの端部200をトリミングすれば、所望の共振周波数と周波数帯域が確保される。
【0027】
基板を構成する誘電体材料は、目的とする周波数に応じて適宜選択され得るものであるが、小型でありながら、アンテナ特性として十分な利得が得られるようにするには、比誘電率εrが5〜200程度の誘電体材料を用いる。セラミックス材料としてεrが10程度であればアルミナ系セラミックス、40以下であればチタン酸カルシウム系セラミックス、チタン酸マグネシウム系セラミックが、200以下であればチタン酸バリウム系セラミックスが挙げられる。他に温度特性や損失を考慮しながら選択される。
【0028】
放射電極50及びその延長部55、第1、第2接地電極100、110a、110b、給電電極60は銀ペーストなどの良伝導体を基板に印刷して焼き付けることで、厚みが数μm〜20μmの導体膜として形成される。伝導体としては銀のほかに、金、銅、パラジウム、白金や銀パラジウム合金、銀白金合金を含むペーストが用いられる。その形成はスクリーン印刷法など公知の製造方法を採用でき、他の方法としてはメッキやエッチングが挙げられる。
図1においては、放射電極50や第1接地電極100を、基板の側面から内側に間隔を持って形成している。これは外力による電極の剥離を防ぐなどの目的によるものだが、それぞれ基板と同じ大きさに形成しても良く、その場合には更に平面アンテナを小型に出来る。
【0029】
放射電極50と第2接地電極110a、110bとを近接させ過ぎると、放射電極50からの帰還電流が第2接地電極110a、110bに集中するため、所望のVSWR値が得られる帯域幅が低下するので、基板70を構成する誘電体の比誘電率等を考慮しながら間隔や対向する長さを設定する。
第2接地電極110a、110bの形状は、図示したI字状に限定されず、放射電極と対応する側が幅広となるT字やL字の帯状電極など、他の形状としてもかまわない。ただし放射電極50との間で形成される容量が大きくなりすぎないように、第2接地電極110a、110bの幅を、対向する放射電極50の一辺の長さに対して1/4以下とするのが好ましい。
また、基板70の側面(第2接地電極110a、110bが形成された側面を含む)において、回路基板への実装性や固着強度を向上するように、第1接地電極100と連続する端子電極を形成しても良い。この場合の端子電極はアンテナ特性に影響を与えない程度の大きさ、位置にて形成される。
【0030】
本実施形態による平面アンテナ10は、基板70の上面には放射電極50のみが形成される構成である。従って、給電電極を上面にまで形成する従来の平面アンテナに比べて基板70を小さくすることができるため、平面アンテナ10そのものも小型化することが出来る。
【実施例】
【0031】
本実施例の平面アンテナの基本構造は図1と同一なのでその説明を省略する。この平面アンテナは周波数帯域が1575.42±1.023MHzのGPS用アンテナである。本実施例では基板の誘電体材料としてTi−Ba−Sm系セラミックス材料を用いた。このセラミックス材料の比誘電率εrは79であり、tanδ(at 4.8GHz)が4×10−4である。
所定の組成で原料となるTiO2,BaCO3,Sm2O3などの酸化物を秤量して、ボールミルで湿式にて均一となるように混合する。その後、仮焼、粉砕を経て得られた造粒粉を加圧成形にて板状に形成し、1350℃で焼成し、得られた板状体をダイサー(切断機)によって所定の形状(12.0mm×12.0mm×3.0mm)に切り出して平面アンテナに用いる基板70を作製した。
【0032】
得られた基板70に、銀ペーストを用いて放射電極50、第1接地電極100、第2接地電極110a、110b、給電電極60をスクリーン印刷にて印刷形成して焼き付けて平面アンテナを作製した。
放射電極50は正方形(延長部除く)に形成され、一辺の長さを11.8mmとしている。この長さは、給電周波数1575.42MHzにおける実効波長の略1/2の寸法を考慮して設定している。延長部の幅は0.65mm、上面から端部までの長さを0.5mmとしている。給電電極60は幅を前記延長部と同じとし、対向する幅を0.65mm、底面からの長さを2.0mmとし、ギャップGを0.5mmとしている。給電電極60の両側には1.525mmの間隔Wをもって第2接地電極110a、110bを形成した。第2接地電極110a、110bの底面からの長さHは共に2.0mmである。第1接地電極100も正方形に形成され、一辺の長さを11.8mmとしている。
【0033】
第2接地電極110a、110bは、その端部と上面までの間が0.1mmであり、幅0.2mm、長さ1.5mmの3本の櫛歯電極が0.1mmの間隔で形成されている。第2接地電極110a、110bのそれぞれの櫛歯電極を一緒に上面側から順にレーザトリミングした時のVSWRのピーク周波数、ピーク値、VSWRが3.0以下の帯域幅を、ネットワークアナライザイにて測定した。結果を図4及び図5に示す。図中「なし」とはトリミングを行っていない初期状態であり、1段目とは、第2接地電極110a、110bの櫛歯電極210aをトリミングし、櫛歯電極210bが放射電極50の一辺と平行となるようにした状態である。2段目以降も同様に櫛歯電極210b、210cと順次トリミングしていった状態である。トリミングするに従い共振周波数は高周波側に移動し、VSWRのピーク値が低下するとともに帯域幅が広がった。本実施例では各櫛歯電極をトリミングして除いた場合のVSWR特性を示したが、放射電極50の一辺と対向する櫛歯電極の一部をトリミングするに従いVSWR特性も変化するので、平面アンテナの共振周波数を容易に所望の周波数とすることが出来る。
【0034】
共振周波数が1575.42MHzに調整された平面アンテナ10を試料とし、縦横それぞれ35mmで厚みが0.6mmのプリント基板200に半田付けして実装し、電波暗室(電波無響室)内にてアンテナ特性を評価した。図6に平面アンテナを実装した評価ボードの斜視図を示す。基板70の給電電極60と接続される線路パターン以外の領域は、全て接地導体パターンGNDが形成されている。前記線路パターンには整合回路を構成するリアクタンス素子(チップ部品)250が実装され、その端部は同軸線路300が接続されるように、同軸コネクタ(図示せず)が形成されている。
【0035】
図7はアンテナ特性の評価方法を説明する為の図である。内壁に電波吸収体が隙間なく敷設された暗室500に、測定用アンテナ(右旋回円偏波型ログ・スパイラル・アンテナ)300を配置し、3m離れて配置されたターンテーブル上で回転するアンテナ試料200へ電波を送信し、平面アンテナ10で受信する構成であり、得られた受信電力をもとに利得および放射指向性、VSWRを求めた。測定用アンテナ300とアンテナ試料200は、それぞれ室外に配置されたネットワークアナライザのポートに同軸ケーブルで接続されている。測定用アンテナ300への給電はネットワークアナライザにて行った。Y−Z面、X−Y面、Z−X面を含めた全平均利得は−5.40dBicであった。トリミングによる共振周波数の調整が容易であり、個々の平面アンテナにおいて、ばらつきが少なく、優れた利得特性を得ることが出来る。
【0036】
他の実施態様として、給電電極60と第2接地電極110a、110bとの間隔Wを0.5mm〜2.675mmとして変更し、他の寸法形状は前記平面アンテナと同じとした試料を同様の手順で作製し、測定評価した。間隔Wが1.525mmを超えると、VSWRと特性に顕著な差は見られないが、利得が緩やかに低下した。また間隔Wが狭まると利得が著しく低下し、Wが0.5mmであると実用に供し得ない程度に利得が低下した。
【0037】
次に給電電極60と放射電極50の延長部55とのギャップGを0.1〜0.5mmとして変更し、他の寸法形状は前記平面アンテナと同じとした試料を同様の手順で作製し、測定評価した。ギャップGを狭めていくと、VSWRと特性に顕著な差は見られないが、利得が緩やかに向上した。
【0038】
次に第2放射電極100a、110bの長さHを変更し、他の寸法形状は前記平面アンテナと同じとした試料を同様の手順で作製し、測定評価した。長さHが短いほどVSWRは広帯域化するが、長さHが1.5mm未満(基板厚みの1/2)では実用に供し得ない程度に利得が低下した。
【0039】
次に図8の斜視図に示すように、放射電極に3つの延長部55、56a、56bを形成し、内2つの延長部56a、56bを0.5mmのギャップを介して第2接地電極110a、110bと対向させ、他の寸法形状は前記平面アンテナと同じとした試料を同様の手順で作製し、測定評価した。その結果、延長部56a、56bを形成しない場合よりも利得が向上した。
また図9の正面図に示すように、延長部56a、56bと第2接地電極110a、110bと対向部を傾斜して形成すれば容量が増加するとともに、トリミングによる調整しろも増加させることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、回路基板への表面実装が可能であり、共振周波数の調整が容易で、放射特性、利得に優れ、かつ小型の平面アンテナを提供することが出来る。
【符号の説明】
【0041】
10 平面アンテナ
50 放射電極
55、56a、56b 放射電極の延長部
60 給電電極
70 基板
100 第1接地電極
110a、110b 第2接地電極
200 プリント基板(評価ボード)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下面と前記上下面間を繋ぐ側面を備えた矩形の基板と、前記基板の一方の上面に形成された矩形の放射電極と、基板の下面に形成された第1接地電極と、基板の側面に形成され下面側から上面側へ延びる帯状の給電電極と、給電電極と同じ側面に形成され、前記給電電極を挟んで対向し前記第1接地電極から延び、その端部と前記放射電極との間隔が等しい一対の第2接地電極を備え、前記放射電極の端部を前記給電電極の端部と対向させて容量結合により給電し、前記第2接地電極の放射電極側の端部が櫛歯状に形成されていることを特徴とする平面アンテナ。
【請求項2】
第2接地電極端部の櫛歯電極は、対向する放射電極の一辺と略平行に延びることを特徴とする請求項1に記載の平面アンテナ。
【請求項3】
第2接地電極端部の櫛歯電極をトリミングして共振周波数を変化させることを特徴とする請求項2に記載の平面アンテナ。
【請求項1】
上下面と前記上下面間を繋ぐ側面を備えた矩形の基板と、前記基板の一方の上面に形成された矩形の放射電極と、基板の下面に形成された第1接地電極と、基板の側面に形成され下面側から上面側へ延びる帯状の給電電極と、給電電極と同じ側面に形成され、前記給電電極を挟んで対向し前記第1接地電極から延び、その端部と前記放射電極との間隔が等しい一対の第2接地電極を備え、前記放射電極の端部を前記給電電極の端部と対向させて容量結合により給電し、前記第2接地電極の放射電極側の端部が櫛歯状に形成されていることを特徴とする平面アンテナ。
【請求項2】
第2接地電極端部の櫛歯電極は、対向する放射電極の一辺と略平行に延びることを特徴とする請求項1に記載の平面アンテナ。
【請求項3】
第2接地電極端部の櫛歯電極をトリミングして共振周波数を変化させることを特徴とする請求項2に記載の平面アンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−239496(P2010−239496A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86722(P2009−86722)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]