説明

平面ディスプレイ

【課題】電子放出源の損傷を防ぐことができる平面ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】基板リブ12の側面には、導電性を有しており、かつ、カソード電極14と接触している導電層13が、カソード電極14の上面より高い位置まで形成されている。このため、動作時やエージング工程の際に、カソード電極14から基板リブ12に向かって放出された電子は、導電層13を介してカソード電極14に吸収される。したがって、従来のように、基板リブ12が帯電しないので、基板リブ12とカソード電極14との間で放電が発生するのを防ぐことができる。結果として、カソード電極14のCNT膜が損傷するのを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面ディスプレイに関するものであり、特に、電界電子放出型の平面ディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電界放出型ディスプレイ(Field Emission Display:FED)や平型蛍光表示管のような、陰極となる電子放出源から放出された電子を対向電極に形成された蛍光体からなる発光部に衝突させて発光させるフラットパネル(平面)ディスプレイ(Flat Panel Display)において、電子放出源にカーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube)やカーボンナノファイバー(Carbon Nano Fiber)などのナノチューブ状繊維を用いたものが各種提案されている(例えば、特許文献1参照。)。図6は、ナノチューブ状繊維を電子放出源に用いた従来の平面ディスプレイの一例を示す部分分解図である。
【0003】
図6に示す平面ディスプレイは、ガラス等からなる基板101を有するカソード基板100と、少なくとも一部が透過性を有するフロントガラス201を有するアノード基板200と、基板101およびフロントガラス201それぞれに対して略平行に配設されたゲート基板300とを有する。カソード基板100の基板101とアノード基板200のフロントガラス201とは、枠状のスペーサガラス(図示せず)を介して対向配置されており、低融点のフリットガラスでそれぞれスペーサガラスに接着されることにより外囲器を構成する。この外囲器内は10-5Pa台の真空度に保持されている。
【0004】
カソード基板100は、基板101と、ゲート基板300と対向する面に互いに平行に所定間隔で垂設された棒状または板状の有する複数の基板リブ102とを備えている。基板101上の基板リブ102に挟まれた領域には、42−6合金等の金属部材の表面にカーボンナノチューブやカーボンナノファイバー等のナノチューブ状繊維からなる電子放出源を固着させた棒状または板状のカソード電極103が配設されている。
【0005】
アノード基板200は、フロントガラス201と、このフロントガラス201のゲート基板300と対向する面上に所定間隔で基板リブ102と平行な方向に形成された複数の短冊状の導電部材202と、各導電部材202上に導電部材202の長手方向に沿って所定間隔で形成された矩形断面を有する黒色の複数の部材からなるブラックマトリックス203と、フロントガラス201および導電部材202上のブラックマトリックス203に挟まれた領域に形成された赤色発光蛍光体膜204R、緑色発光蛍光体膜204Gおよび青色発光蛍光体膜204Bと、これら蛍光体膜204R,204G,204B上に挟まれた領域に形成された陽極となるメタルバック膜205と、ブラックマトリックス203上に形成された矩形断面を有する複数のフロントリブ206とを有する。
【0006】
外囲器内部に配設されるゲート基板300は、電界制御電極として作用する平面電極301を備えており、この平面電極301のフロント基板201側の面上には、矩形断面を有し、フロントリブ206と直交する方向に所定間隔で形成されたアノード側リブ302が、平面電極301のカソード基板100側の面上には、アノード側リブ302の直下に形成された中間リブ303が設けられている。この中間リブ303の下面には、カソード基板100の基板リブ102と直交する方向に沿ってカソード側リブ304が形成されている。このカソード基板304に挟まれた領域には、カソード基板304の側面により支持されたゲート電極305が設けられている。
【0007】
ここで、平面電極301は、導体から構成され、平面視略矩形の板の形状を有し、縦方向および横方向に所定間隔離間して平面視略円形の複数の貫通孔301aが形成されている。アノード側リブ302および中間リブ303は、全体として板状または棒状の絶縁性材料から構成され、カソード基板100に対向する端面には、カソード側リブ304の長手方向に所定間隔離間した複数の凸部304aが形成されている。ゲート電極305は、例えば短冊状など平面視略矩形の板状の導体から構成され、長手方向に所定間隔離間して複数の貫通孔305aが形成されている。このようなゲート電極305は、中間リブ303の下面におけるカソード側リブ304に挟まれた領域に配設される。このとき、貫通孔305aは、高さ方向から見た場合において、平面電極301の貫通孔301aと重なるように配設される。
【0008】
このような平面ディスプレイは、次のように動作する。まず、カソード電極103よりも正の電位となるよう各平面電極301に外部回路から電圧を一様に印加する。さらにカソード電極103よりも正の電位となるようゲート電極305に外部回路から選択的に電圧を印加すると、電子通過孔305aを構成するゲート電極305の周面からカソード電極103に電界が印加され、カソード電極103の表面に配設された電子放出源から電子が引き出される。この電子は、ゲート電極305に対して正の電位となるよう電圧が印加された平面電極302により加速され、電子通過孔305からフロントガラス11側に放出される。
【0009】
導電部材102およびメタルバック膜105に平面電極302よりも正の電位(加速電圧)が印加されていると、電子通過孔305aから放出された電子は、アノード基板100側に向かって加速される。メタルバック膜205に向かって加速された電子は、メタルバック膜205を貫通して蛍光体膜204G,204B,204Rに衝突する。これにより、蛍光体膜が発光する。蛍光体膜から発生した光のうち、フロントガラス201側に放出された光は、フロントガラス201を透過し、平面ディスプレイ外部に放出される。一方、カソード基板100側に放出された光は、メタルバック膜205により反射されてフロントガラス201側に放出され、フロントガラス201を透過して平面ディスプレイ外部に放出される。
【0010】
【特許文献1】特開2006−324127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した平面ディスプレイ装置において、動作時やエージング工程の際、図7に示すように、カソード電極103から放出された電子が基板リブ102に衝突することがある。すると、基板リブ102から複数の二次電子が放出される。これにより、基板リブ102の表面が正電位に帯電し、近傍の平面電極301やゲート電極305と同等の正電位にまでなることがある。この結果、カソード電極103と基板リブ102との間で微小な放電(符号a)が発生し、電子放出源となるカソード電極103のCNT膜が損傷して、電子放出能力が劣化しすることがあった。
【0012】
そこで、本願発明は、電子放出源の損傷を防ぐことができる平面ディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る平面ディスプレイは、少なくとも一部が透過性を有するフロントガラスおよびこのフロントガラスと対向配置された基板を有する真空外囲器と、フロントガラスの基板側の面上に積層された蛍光体膜および陽極と、電子通過孔を有しフロントガラスと基板との間に配置されたゲート電極と、基板のフロントガラス側の面上に形成された複数のリブと、このリブの側面から基板上にかけて形成された導電層と、電子放出源を有し、基板上のリブに挟まれた領域に、リブよりも低く形成されたカソード電極とを備え、導電層は、リブの側面においてカソード電極の上面よりも高い位置まで形成され、カソード電極と電気的に接続されることを特徴とする。
【0014】
上記平面ディスプレイにおいて、導電層は、リブの側面および基板上のリブに挟まれた全領域に形成されるようにしてもよい。
【0015】
また、上記平面ディスプレイにおいて、リブは、基板上に形成された第1のリブと、この第1のリブ上に形成された第2のリブとから構成され、導電層は、第1のリブに形成されるようにしてもよい。
【0016】
また、上記平面ディスプレイにおいて、第1のリブは、絶縁性材料から構成され、第2のリブは、導電性材料を含む材料から構成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導電層を設けることにより、基板リブの方向に放出された電子が導電層に衝突してカソード電極に導かれるので基板リブが帯電するのを防ぐことができる。これにより、カソード電極と基板リブとの間で放電が発生するのを防ぐことができるので、結果として、電子放出源が損傷するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態に係る平面ディスプレイは、図6を参照して説明した従来の平面ディスプレイとカソード基板100の構成が異なるもののその他は同一である。したがって、本実施の形態において、従来の平面ディスプレイと同等の構成要素については、同じ名称および符号を付し適宜その説明を省略する。
【0019】
<平面ディスプレイの構成>
図1に示すように、本実施の形態に係る平面ディスプレイ1は、ガラス等からなる基板11を有するカソード基板10と、少なくとも一部が透過性を有するフロントガラス201を有するアノード基板200と、基板11およびフロントガラス201それぞれに対して略平行に配設されたゲート基板300とを有する。カソード基板10の基板11とアノード基板200のフロントガラス201とは、枠状のスペーサガラス(図示せず)を介して対向配置されており、低融点のフリットガラスでそれぞれスペーサガラスに接着されることにより外囲器を構成する。この外囲器内は10-5Pa台の真空度に保持されている。
【0020】
≪カソード基板の構成≫
カソード基板10は、基板11と、ゲート基板300と対向する面に互いに平行に所定間隔で垂設された板状の複数の基板リブ12とを備えている。基板11上の基板リブ12に挟まれた領域および基板リブ12の側面には、導電層13が設けられている。また、導電層13上の基板リブ12に挟まれた領域には、42−6合金等の金属部材の表面にカーボンナノチューブやカーボンナノファイバー等のナノチューブ状繊維からなる電子放出源を固着させた棒状または板状のカソード電極14が配設されている。
【0021】
ここで、基板リブ12は、カソード電極14の上面より高く形成されている。
【0022】
また、導電層13は、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2,カーボン、Al、Agなどの導電性材料からなり、基板リブ12の側面に位置する部分が、カソード電極14の上面よりも高い位置まで形成されている。また、導電層13は、厚さ0.1μm〜10μm程度に形成される。このような導電層13は、少なくとも一部がカソード電極14と接触しており、カソード電極14と電気的に接続されている。
【0023】
<カソード基板の製造方法>
次に、図3A〜図3Dを参照して、カソード基板10の製造方法について説明する。まず、図3Aに示すようなガラス等からなる基板11上に、スクリーン印刷などの公知の印刷法により所定のマスクパターンを用いてガラス質等の絶縁ペースト(例えば、NP−7833,NP−7834E、ノリタケ機材株式会社製)等を導電層13を形成する高さまで繰り返し印刷し、焼成する。これにより、図3Bに示すように、基板リブ12’が形成される。
【0024】
基板リブ12’が形成されると、スクリーン印刷等の公知の印刷法、基板を溶液に漬けた後に引き上げて膜を作る公知のディップ法などにより、インク化したITOなどの導電材料からなる溶液を、基板リブ12の側面を含む基板11上の基板リブ12に挟まれた領域に塗布する。これは、例えばスクリーン印刷を行う場合には、その溶液を基板11上の基板リブ12に挟まれた領域に落とし込むことにより行うことができる。このとき、その溶液は、カソード電極14を配置した際に、このカソード電極14の表面よりも高い位置まで塗布される。その溶液を塗布した後、必要に応じて乾燥および焼成を行うと、図3Cに示すように、導電層13が形成される。
【0025】
導電層13が形成されると、スクリーン印刷などの公知の印刷法により所定のマスクパターンを用いて、再度、絶縁ペーストを基板リブ12’上に所定の高さまで繰り返し印刷し、焼成する。これにより、図3Dに示すように、基板リブ12が形成される。ここで、基板リブ12’は、10〜100μm以上の高さで形成することが望ましい。このように、導電層13とゲート電極とを所定間隔離間させることにより、これらの間で放電が発生するのを防ぐことができる。
【0026】
基板リブ12が形成されると、図3Eに示すように、CVD法などにより電子放出源が表面に配設されたカソード電極14を、基板11上の基板リブ12に挟まれた領域に配設する。これにより、カソード基板10が生成される。
【0027】
このように製造されたカソード基板10を用いた平面ディスプレイ1では、動作時やエージング工程の際に、カソード電極14から基板リブ12に向かって放出された電子は、基板リブ12の側面においてカソード電極14の上面より高い位置まで導電層13が形成されているので、この導電層13に衝突する。この導電層13は、導電性を有しており、かつ、カソード電極14と接触している。このため、その電子は、導電層13を介してカソード電極14に吸収される。したがって、従来のように、基板リブ12が帯電しないので、基板リブ12とカソード電極14との間で放電が発生するのを防ぐことができる。結果として、カソード電極14のCNT膜が損傷するのを防ぐことができ、電子放出能力が劣化したり、放電による大電流で平面ディスプレイの駆動回路が破壊されたりするのを防ぐことができる。
【0028】
なお、本実施の形態では、導電層13を基板リブ12の側面を含む基板11上の基板リブ12に挟まれた領域に形成する場合を例に説明したが、導電層13がカソード電極14の上面よりも高い位置まで形成され、かつ、導電層13とカソード電極14とが接触しているのであれば、導電層13を形成する領域は適宜自由に設定することができる。例えば、図4に示すように、カソード電極14の下面の中央部の領域には形成しないようにしてもよい。これにより、導電層13を形成するために用いる材料を削減することができるので、低コスト化を実現することができる。
【0029】
また、図5に示すように、基板リブ12を、基板11上に形成される第1のリブ12aと、この第1のリブ12a上に形成される第2のリブ12bとから構成するようにしてもよい。ここで、導電層13は、第1のリブ12aの側面に形成され、第2のリブ12bには形成されていない。第1のリブ12aは上述した場合と同等の絶縁性材料、第2のリブ12bは導電性材料を混入させた絶縁性材料から構成される。このような構成にすることにより、第2のリブ12bに電子が衝突すると、この電子が第2のリブ12bを介してゲート電極に吸収されるので、基板リブ12が帯電するのを防ぐことができる。なお、この場合においても、図1と同様、導電層13をカソード電極14の下面全体に形成するようにしてもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、電子放出型の表示装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の平面ディスプレイの構成を模式的に示す部分分解図である。
【図2】カソード基板の構成を模式的に示す断面図である。
【図3A】カソード基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図3B】カソード基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図3C】カソード基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図3D】カソード基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図3E】カソード基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図4】カソード基板の変形例を模式的に示す断面図である。
【図5】カソード基板の変形例を模式的に示す断面図である。
【図6】従来の平面ディスプレイの構成を模式的に示す部分分解図である。
【図7】従来のカソード基板の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…平面ディスプレイ、10…カソード基板、11…基板、12…基板リブ、12a…第1のリブ、12b…第2のリブ、13…導電層、14…カソード電極、200…アノード基板、300…ゲート基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が透過性を有するフロントガラスおよびこのフロントガラスと対向配置された基板を有する真空外囲器と、
前記フロントガラスの前記基板側の面上に積層された蛍光体膜および陽極と、
電子通過孔を有し前記フロントガラスと前記基板との間に配置されたゲート電極と、
前記基板の前記フロントガラス側の面上に形成された複数のリブと、
このリブの側面から前記基板上にかけて形成された導電層と、
電子放出源を有し、前記基板上の前記リブに挟まれた領域に、前記リブよりも低く形成されたカソード電極と
を備え、
前記導電層は、前記リブの側面において前記カソード電極の上面よりも高い位置まで形成され、前記カソード電極と電気的に接続される
ことを特徴とする平面ディスプレイ。
【請求項2】
前記導電層は、前記リブの側面および前記基板上の前記リブに挟まれた全領域に形成される
ことを特徴とする請求項1記載の平面ディスプレイ。
【請求項3】
前記リブは、前記基板上に形成された第1のリブと、この第1のリブ上に形成された第2のリブとから構成され、
前記導電層は、前記第1のリブに形成される
ことを特徴とする請求項1または2記載の平面ディスプレイ。
【請求項4】
前記第1のリブは、絶縁性材料から構成され、
前記第2のリブは、導電性材料を含む材料から構成される
ことを特徴とする請求項3記載の平面ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−135086(P2010−135086A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307196(P2008−307196)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】