説明

平面型ディスプレイのガラス補強構造

【課題】低コストで生産性が極めて高い平面型ディスプレイのガラス補強構造を提供する。
【解決手段】厚さが100μmから700μmであるガラス基板1と、ガラス基板の少なくとも一部分の辺縁に配置され、厚さが60μmから150μmである少なくとも一つ補強繊維ユニット2とを備える。ガラス基板1は、表示区域と非表示区域を有するように設けられ、補強繊維ユニット2は非表示区域に配置されている。ガラス基板1上に厚さが30μmから250μmの偏光片3を増設可能である。炭素繊維を超薄ガラスの強化材としガラスの外縁に貼り付けることにより、荷重及び湾曲試験の下で得た平均強度を50%以上増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイのガラスパネル、詳しく言えば、薄型化した平面型ディスプレイのガラス補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラスをブラウン管の材料としてテレビ、コンピューターの端末機映像出力の端末に応用することは、従来知られている常識である。近年、電子製品の軽薄短小、携帯化と無線通信化の発展に伴い、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイ、電界放出ディスプレイなどの平面型ディスプレイまたは各種の平面型電気泳動ディスプレイにおいて、ガラスパネルを使用した基板材料が汎用され、大量生産されるようになっている。特に、平面型液晶ディスプレイにおいて、近年、アクティブマトリクスTFT液晶パネルの製品が盛んになり、ディスプレイの軽量、薄型化が求められる傾向が強くなり、かつ薄型ガラスパネルの需要が日増しに高まっている。従来のアクティブ型平面型液晶ディスプレイは、液晶を載せる基板としてガラス材料を採用する。ガラス材料は、脆く、比重が高いという欠点がある。平面型液晶ディスプレイの液晶パネルを軽量化するために、ガラスの厚さを0.5mm以下にする場合、ガラス基板は外力を受けて破損しやすい。従って、歩留りが低下するだけでなく、新世代のディスプレイ用基板材料の薄型化の需要を満足させることができない。それに対し、本発明は、ディスプレイのガラス補強構造を提供する。
【0003】
また、20世紀半ばに入ってから、電子計算機(Calculator、即ち、コンピューター。一台目の電子計算機ENIACが1945年アメリカ合衆国のビン州大学に研究開発された)と通信伝送技術が使用され始めたのに伴い、文明の発展過程が加速され、かつ激しくなったのが即ち第三次工業革命である。三回の工業革命を経た後、次にどんな時代を迎えるだろう。人口成長率の激増に伴い、地球資源が日増しに少なくなりつつある状況下で、軽薄型短小で多機能な家電製品はもっとも人気があるものとなっている。また、コンピューターの軽薄短小化は必然の趨勢であるため、デスクトップ用コンピューターの体積がより軽量小型化されるにとどまらず、パーソナルデジタルアシスタント、即ち、PDAが大量生産され、市場全体がさらに軽薄短小化の趨勢に足並みをあわせつつある。
【0004】
従来のガラス材質は、高透明度、高剛性、低材質収縮率及び抗化学薬剤性などの特性を有するため、光学用レンズ、建築材料、交通運輸車両または飛行機の透光用ユニット、装飾用ランプのハウジングなどに汎用されている。かつ五十年近くの間に家電、通信または様々な電子製品の発展に伴い、ガラス材料のこれらの領域における役割はより重要性を増す。また、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイ、電界放出ディスプレイまたは様々な電気泳動式平面ディスプレイパネルなどの平面型ディスプレイにおいて、ガラス材料を使用した基板材料が汎用され、大量生産されるようになっている。特に、平面型液晶ディスプレイにおいて、近年、アクティブ型薄膜トランジスタ液晶パネルの製品が盛んになり、かつ超薄型ガラスパネルの需要が日増しに高まっている。従来のアクティブ型平面型液晶ディスプレイは、液晶を載せる基板としてガラス材料を採用する。また、軽量、薄型、可撓性などの特性がディスプレイなどの製品に求められる傾向が日増しに強くなっているが、ガラス材料は比重が高く、割れ易く、湾曲が不可能であるという欠点を有するため、新世代のディスプレイ用基板材料の薄型化の需要を満足させることができない。特に、ガラス基板は、第6世代以後、耐衝撃、操作性、薄型化などの問題がTFT−LCD大手メーカにおいて最大の関心事となっている。ガラス補強材料の発展について以下の通り分類して述べる。
【0005】
1、安全ガラス(多層ガラス)。
1903年フランス化学者Edouard Benedictusにより発明された。Edouard Benedictusは、実験中、はからずもガラス瓶の中に一層の硝酸セルロース(Cellulose nitrate)を敷いたが、そののち、そのガラス瓶が滑って地面に落ちたにもかかわらず、ひびを生じたものの、割れていないことを発見した。そのことをきっかけに、プラスチック層を含有したガラスを自動車のフロントガラスに応用することにより、交通事故による死傷者を減少させることを考え始めた。
【0006】
Edouard Benedictusの発明は、最初、自動車製造業界に関心を持ってもらえず、第一次世界大戦の毒ガス防御用マスクに応用された。1936年にEdouard Benedictusは再び中間層としてポリビニルブチラ−ル(Polyvinvl butyral、PVB)を使用し、改良を進め、その結果、多層ガラスは自動車に汎用され、多層ガラスを採用することは安全基準として政府から強制されるようになっている。
【0007】
現今の多層ガラスの製造は、二層または多層の一般のガラスの製造とあまり変わらず、中間層としてPVB層を使用することが殆どである。PVB層を二層のガラスの間に配置し、70度前後に至るまで加熱し、そののち、ローラーにより中間の空気を抜き出すことにより、PVB層と二層のガラスとを密着させる。一般の多層ガラスは、二層の3mmのガラスと一層の0.38mmの中間層から構成される。厚さの合計は、6.38mmである。また、より多層の厚さが大きいガラスにより強度を増加させることが可能である。例えば、防弾ガラスは、多層の厚いガラスを採用し、その厚さの合計は50mmに達する。多層ガラス上のガラスが割れても、中間層は二層のガラスにくっついているため、割れたかけらが人を傷付けることを防止することが可能である。従って、多層ガラスは安全ガラスとも呼ばれる。
【0008】
2、爆破防御用安全ガラス。
爆破防御用安全ガラス、即ち、防犯及び爆破防御用安全ガラスは、一枚または二枚以上の浮式ガラスパネルとポリエステルフィルム(Polyester film)またはポリカーボネイド(Polycarbonate)を採用し、柔軟性と強靭性を有し、構造破壊力を凝集することを可能にする高分子樹脂の中間膜に鋼プラスチック複合を形成することにより、一体成型される。優れた強靭性、耐衝撃(金属製槌、斧、コンクリートブロックなどの衝撃に耐えられる)、耐圧力などの特性を有するため、防弾ガラス類の製品、超強力の爆破防御のハイテク製品に適用することが可能である。また、複合と接着による安全処理のため、安全効果がより良好になり、割れても、かけらが室内に落ちたり、人を傷付けたりすることがない。従って、安全性は非常に高い。
しかし、上述の二種のガラス補強方法は、いずれもガラスの厚さを増加させてしまうため、あまり平面型ディスプレイのガラス補強に適用されていない。
【0009】
現今、平面型ディスプレイまたは平面型テレビのガラスに採用されている補強方法は、物理強化法と化学強化法に分けられている。まず、表1に基づいて二種の異なる方法の加工原理およびその製品の特性を説明する。化学強化法は、ナトリウムガラスを採用するため、STN型液晶ディスプレイ用のガラス強化に適用するが、無アルカリガラスを採用するTFT型液晶ディスプレイに適用することができない。それに対し、物理強化法は厚さが2mm以上のガラスにしか適用できない。現今、ナノ浸漬コーティング工程により0.5mm以下の無アルカリガラスを強化する方法が提出されたが、強化効果がでるまで製造工程を何回も繰り返す必要があるため、非常に手間がかかる。従って、低コストで性能が極めて良好な超薄強化ガラスを製造することを実現させることはできない。
【0010】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の主な目的は、先行技術の欠点を解決し、低コストで生産性が極めて高い平面型表示パネル用超薄ガラスの製造を実現させることを可能にする超薄ガラスの強化構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するために、本発明は、炭素繊維を超薄ガラスの強化材とし、炭素繊維をガラスの外縁に貼り付けることにより、荷重及び湾曲試験の下で得た平均強度を50%以上増加させることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の平面型ディスプレイのガラス補強構造について二つの実施例を挙げ、説明を進める。
図1と図2に示すように、本発明の第一実施例による平面型ディスプレイのガラス補強構造は、ガラス基板と補強繊維を含む。
ガラス基板1は、TFT−LCD用の無アルカリガラス基板などであり、その厚さは100μmから700μmの間であり、そのうち100μmから500μmの間であれば好ましく、特に、100μmから400μmの間であれば最も好ましい。補強繊維2は、ガラス基板の四つの縁辺に配置される。本実施例では、補強繊維は炭素繊維であり、その厚さは60μmから150μmの間であり、そのうち60μmから120μmの間であれば好ましく、特に、60μmから100μmの間であれば最も好ましい。また、ガラス基板上にTFT−LCD用の偏光フィルム3を増設することが可能である。偏光フィルムの厚さは、30μmから250μmの間であり、そのうち30μmから150μmの間であれば好ましく、特に、30μmから120μmの間であれば最も好ましい。
【0014】
炭素繊維をガラス基板の四辺に貼り付けるには、接着剤が必要である。接着剤は、エポキシ系接着樹脂、感圧接着剤、熱可塑性接着剤、ポリアミノエステル系接着樹脂、有機けい素系接着樹脂、不飽和ポリエステル系接着樹脂、無機接着剤、天然重合体接着樹脂、ポリブタジエン接着樹脂、ブチルゴム接着樹脂などのいずれか一つである。
また、本実施例では、炭素繊維は炭素の含有量が90%以上の高強度及び高弾性率繊維である。炭素の含有量が99%以上であれば、黒鉛繊維とも呼ばれる。炭素繊維は、炭素の良好な性能を有する。例えば、比重が小さく、耐熱性が極めて高く、熱膨脹係数が小さく、導熱係数が大きく、耐腐食性と導電性が良好である。また、繊維のように柔軟可撓性を有するため、編織加工と巻き取り成型に適用することが可能である。そして、炭素繊維の比強度と比弾性率は一般の増強繊維を超え、かつ樹脂とともに形成された複合材料の比強度と比弾性率は鋼とアルミニウム合金と比べて3倍も高いことが炭素繊維の最も優れた性能である。また、炭素繊維複合材料を宇宙航空、ミサイル、運動器材などに応用すれば、重量を確実に減少させ、載荷効果を高め、性能を改善することが可能である。従って、炭素繊維複合材料は、宇宙航空工業において重要な構造材料であるとされる。また、コストが安くなればなるほど、炭素繊維が自動車工業、運動器材などの一般の工業に汎用されるようになっている。
【0015】
図3から図5に示すように、本発明の第二実施例による平面型ディスプレイのガラス補強構造は、ガラス基板と補強繊維を含む。
ガラス基板1は、TFT−LCD用の無アルカリガラス基板であり、その厚さは100μmから700μmの間であり、そのうち100μmから500μmの間であれば好ましく、特に、100μmから400μmの間であれば最も好ましい。補強繊維2は、ガラス基板の向かい合う両縁辺に配置される。本実施例では、補強繊維は炭素繊維であり、その厚さは60μmから150μmの間であり、そのうち60μmから120μmの間であれば好ましく、特に、60μmから100μmの間であれば最も好ましい。また、ガラス基板上にTFT−LCD用の偏光フィルム3を増設することが可能である。偏光フィルムの厚さは、30μmから250μmの間であり、そのうち30μmから150μmの間であれば好ましく、特に、30μmから120μmの間であれば最も好ましい。
【0016】
続いて、以下の試験により本実施例と従来のものとの差異を確認する。まず組立済みの液晶パネルを用意し、ガラス基板1の長い両側に接着剤を塗布し、そののち、厚さが80μmで幅が1mmの炭素繊維2を貼り付け、続いて、150度で蒸し焼きにする。続いて、JISCの型番Max Intelligentのサーバー自動荷重試験機により、四点の荷重湾曲試験を行う。図6に示すのは、試験の対象とする液晶パネルと試験治具の組み合わせを示す模式図である。
試験結果は、表二と表三(別紙参照)に列挙したデータの通りである。データから本実施例が達成した効果を明確に判断することが可能である。
【0017】

【0018】

【0019】
また、本発明は前述の実施例に制限されず、需要に応じて変更をすることが可能である。例えば、本発明による補強ガラスは、必ずしもTFT−LCDに適用するとは限らず、別の液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイ、電界放出ディスプレイまたは様々な電気泳動式平面ディスプレイパネルなどのディスプレイに適用することが可能である。補強材料は、必ずしも炭素繊維であるとは限らず、ガラス繊維、ナイロン繊維(nylon)、有機(高分子)繊維、無機繊維、有機無機混合繊維または天然繊維などの補強効果がある繊維でさえあればよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施例による平面型ディスプレイのガラス補強構造を示す正面図である。
【図2】本発明の第一実施例による平面型ディスプレイのガラス補強構造を示す底面図である。
【図3】本発明の第二実施例による平面型ディスプレイのガラス補強構造を示す正面図である。
【図4】本発明の第二実施例による平面型ディスプレイのガラス補強構造を示す底面図である。
【図5】本発明の第二実施例による平面型ディスプレイのガラス補強構造を示す側面図である。
【図6】本発明の第一実施例または第二実施例による平面型ディスプレイのガラス補強構造の試験の最中の状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0021】
1:ガラス基板、2:補強繊維、3:偏光フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが100μmから700μmであるガラス基板と、
ガラス基板の少なくとも一部分の縁辺に配置され、厚さが60μmから150μmである少なくとも一つの補強繊維ユニットと、
を備えることを特徴とする平面型ディスプレイのガラス補強構造。
【請求項2】
ガラス基板は、表示区域と非表示区域を有するように設けられ、補強繊維ユニットは非表示区域に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の平面型ディスプレイのガラス補強構造。
【請求項3】
ガラス基板の向かい合う両縁辺に別々に配置されている二つの補強繊維ユニットを含むことを特徴とする請求項1に記載の平面型ディスプレイのガラス補強構造。
【請求項4】
補強繊維ユニットは、連続式または不連続式でガラス基板の四つの縁辺を囲むように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の平面型ディスプレイのガラス補強構造。
【請求項5】
ガラス基板の好ましい厚さは、100μmから500μmであることを特徴とする請求項1に記載の平面型ディスプレイのガラス補強構造。
【請求項6】
ガラス基板の最も好ましい厚さは、100μmから400μmであることを特徴とする請求項5に記載の平面型ディスプレイのガラス補強構造。
【請求項7】
補強繊維ユニットの好ましい厚さは、60μmから120μmであることを特徴とする請求項1に記載の平面型ディスプレイのガラス補強構造。
【請求項8】
補強繊維ユニットの最も好ましい厚さは、60μmから100μmであることを特徴とする請求項7に記載の平面型ディスプレイのガラス補強構造。
【請求項9】
偏光フィルムの好ましい厚さは、80μmから150μmであることを特徴とする請求項1に記載の平面型ディスプレイのガラス補強構造。
【請求項10】
偏光フィルムの最も好ましい厚さは、80μmから100μmであることを特徴とする請求項9に記載の平面型ディスプレイのガラス補強構造。
【請求項11】
補強繊維ユニットは、炭素繊維、ガラス繊維、ナイロン繊維、有機繊維、無機繊維、有機無機混合繊維と天然繊維のいずれか一つまたは前記材質の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の平面型ディスプレイのガラス補強構造。
【請求項12】
ガラス基板上に厚さが30μmから250μmの偏光片を増設可能であることを特徴とする請求項1に記載の平面型ディスプレイのガラス補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−224847(P2008−224847A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60232(P2007−60232)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(506170937)上緯企業股▲分▼有限公司 (3)
【出願人】(501029319)勝華科技股▲分▼有限公司 (12)
【Fターム(参考)】