説明

平面表示装置の製造方法

【課題】機械的な加圧を用いずに封止材と基板との密着性を向上させることができる平面表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】平面表示装置の製造方法において、発光素子を有する素子基板と封止基板とを、発光素子を内側にし、発光素子を囲う枠形状の封止材及び封止材を囲う枠形状のシール材を間にして減圧雰囲気下で貼り合わせる工程(ステップS11)と、貼り合わせた素子基板と封止基板との間に位置するシール材を大気圧雰囲気下で硬化させる工程(ステップS13)と、シール材が硬化した素子基板と封止基板との間に位置する封止材を大気圧雰囲気下で溶着し、発光素子を封止する工程(ステップS15)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平面表示装置は、コンピュータディスプレイや携帯端末など、様々な装置で使用されている。この平面表示装置としては、例えば、有機EL(Electro Luminescence:エレクトロルミネッセンス)表示装置が開発されている。この有機EL表示装置は、液晶表示装置やプラズマ表示装置などよりも薄型化が可能であって、プラズマ表示装置と同様に自発光が可能な表示装置である。
【0003】
平面表示装置においては、水分と酸素による発光素子の劣化を防止するため、封止基板と素子基板とが封止材であるフリット材により接合され、素子基板上の発光素子が封止される。このとき、基板とフリット材との密着性を向上させるため、加圧ジグなどの加圧機構により基板が機械的に加圧されながら、レーザ光がフリット材に照射されてフリット材と基板とが溶着される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−123966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のような機械的な加圧では、基板全体を均一に加圧することが困難であり、さらに、一枚のマザー基板から複数枚の基板を取る多面取り用の基板においては、フリット材の塗布パターン毎に加圧を行うために複数個の加圧機構が必要となり、装置重量の増加や機構の複雑化が生じてしまう。したがって、機械的な加圧を用いずに封止材と基板との密着性を向上させることが求められている。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、機械的な加圧を用いずに封止材と基板との密着性を向上させることができる平面表示装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、平面表示装置の製造方法において、発光素子を有する素子基板と封止基板とを、発光素子を内側にし、発光素子を囲う枠形状の封止材及び封止材を囲う枠形状のシール材を間にして減圧雰囲気下で貼り合わせる工程と、貼り合わせた素子基板と封止基板との間に位置するシール材を大気圧雰囲気下で硬化させる工程と、シール材が硬化した素子基板と封止基板との間に位置する封止材を大気圧雰囲気下で溶着し、前記発光素子を封止する工程とを有することである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機械的な加圧を用いずに封止材と基板との密着性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0009】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る平面表示装置の製造工程は、ガラス基板などの封止基板1上にフリット材1aを枠形状に塗布して焼成するフリット塗布焼成工程と(図2参照)、複数の発光素子2aを有する素子基板2上にシール材2bを枠形状に塗布するシール塗布工程と(図3参照)、フリット材1aが焼成された封止基板1と、シール材1bが塗布された素子基板2とを貼り合わせる貼り合わせ工程と(図4及び図5参照)、貼り合わせ状態の封止基板1と素子基板2との間に位置する枠形状のフリット材1aを素子基板2に溶着して各発光素子2aを封止する封止工程と(図6参照)を有している。
【0010】
フリット塗布焼成工程では、図1及び図2に示すように、封止基板1がフリット塗布装置のステージ11上に載置され(ステップS1)、その封止基板1上に封止材であるフリット材1aがフリット塗布装置の塗布ヘッド12により所定領域を囲むように枠形状に塗布され(ステップS2)、フリット材1a塗布済の封止基板1が焼成炉内に入れられて封止基板1上のフリット材1aが焼成され(ステップS3)、最後に、フリット材1a焼成済みの封止基板1が反転される(ステップS4)。
【0011】
フリット塗布においては、フリット材1aを吐出する塗布ヘッド12がステージ11上の封止基板1に対して相対移動し、基板貼り合わせ後にフリット材1aが各発光素子2aの全体の周囲を囲うように、すなわち各発光素子2aの全体を囲う大きさの枠形状に封止基板1上に塗布される。
【0012】
シール塗布工程では、図1及び図3に示すように、素子基板2がトランスファベッセルなどの搬送用容器に投入され(ステップS5)、その搬送用容器により素子基板2は真空中に維持されて搬送される(ステップS6)。その後、素子基板2は搬送用容器から取り出されてシール塗布装置のステージ21上に載置され(ステップS7)、その素子基板2上にシール材2bがシール塗布装置の塗布ヘッド22により所定領域を囲むように枠形状に塗布される(ステップS8)。
【0013】
このシール塗布においては、シール塗布装置内は窒素などの不活性ガス雰囲気に維持されており、シール材2bを吐出する塗布ヘッド22はステージ21上の素子基板2に対して相対移動し、基板貼り合わせ後にシール材2bが枠形状のフリット材1aを囲うように、すなわち枠形状のフリット材1aを囲う大きさの枠形状に素子基板2上に外周に沿って塗布される。シール材2bとしては、例えば、紫外線硬化性樹脂(UV硬化性樹脂)などの光硬化性樹脂が用いられる。
【0014】
なお、素子基板2には、有機発光素子膜やその素子膜に通電するための電極層などからなる発光素子(例えば、有機発光ダイオード(OLED)素子)2aを画素ごとに積層した有機EL回路が形成されている。発光素子2aは水分や酸素により劣化するため、素子基板2は露点管理された不活性ガス雰囲気下や真空中で管理される必要がある。したがって、前述の基板搬送は真空中で行われており、前述のシール塗布は窒素などの不活性ガス雰囲気中で行われている。
【0015】
貼り合わせ工程では、図1及び図4に示すように、シール材2b塗布済みの素子基板2が貼り合わせ装置の減圧チャンバ31内のステージ32上に載置され、反転された封止基板1がそのステージ32上の素子基板2に対向するように減圧チャンバ31内に投入され(ステップS9)、減圧チャンバ31内が真空引きにより減圧され(ステップS10)、位置決め及び貼り合わせが行われる(ステップS11)。
【0016】
この貼り合わせにおいては、減圧チャンバ31内は窒素(N)雰囲気に維持されており、封止基板1はフリット材1aが素子基板2に向けられて保持移動機構(図示せず)により保持されている。この保持移動機構は、保持した封止基板1をステージ32に対して往復移動可能に形成されている。封止基板1及び素子基板2が減圧チャンバ31内に投入された状態で、減圧チャンバ31内の雰囲気が減圧ポンプ(図示せず)により吸引されて所定の真空圧まで減圧される。その後、封止基板1と素子基板2との位置合わせが行われ、封止基板1が保持移動機構によりステージ32上の素子基板2に向かって移動し、窒素の減圧雰囲気中で封止基板1と素子基板2との貼り合わせが行われる。
【0017】
貼り合わせ後、図1及び図5に示すように、減圧チャンバ31内に窒素(N)ガスが供給されて大気開放が行われ(ステップS12)、貼り合わせ状態の封止基板1と素子基板2との間に位置する枠形状のシール材2bがUV照射部33のUV照射により硬化し(ステップS13)、シール材2b硬化済の封止基板1及び素子基板2が減圧チャンバ31外に取り出される(ステップS14)。なお、シール材2bとして紫外線硬化樹脂と異なる光硬化性樹脂を用いた場合には、それを硬化可能な光を照射する光照射部がUV照射部33にかえて用いられる。
【0018】
このシール硬化工程により、枠形状のシール材2bが硬化し、そのシール材2bにより封止基板1と素子基板2とが接合され、さらに、封止基板1、素子基板2及びシール材2bにより形成される内部空間がシール材2bにより減圧状態で封止される。したがって、その後工程においては、シール材2b硬化状態の封止基板1及び素子基板2を大気中にさらすことが可能となるので、後工程で真空や不活性ガスを用いるための複雑な装置を用いることなく、後工程の封止工程(フリット溶着工程)を大気中で行うことができ、その結果、製造を容易化することができる。
【0019】
封止工程では、図1及び図6に示すように、シール材2b硬化済の封止基板1及び素子基板2が大気雰囲気中で封止装置のステージ41上に載置され、その状態でシール材2b硬化状態の封止基板1と素子基板2との間に位置するフリット材1aがレーザ照射部42のレーザ照射により溶融されて素子基板2に接着され(ステップS15)、貼り合わせ基板が完成する(ステップS16)。このとき、封止基板1と素子基板2とはフリット材1a及びシール材2bにより接合されている。
【0020】
ここで、レーザ照射時には、シール材2b硬化済の封止基板1及び素子基板2が大気圧により、封止基板1と素子基板2とが密着する方向に均一に加圧されており、その状態でレーザ照射が行われる(図6参照)。すなわち、封止基板1、素子基板2及びシール材2bにより形成される内部空間は減圧状態であるため、封止基板1及び素子基板2のパネル外面に作用する大気圧により、フリット材1aが素子基板2に対して均一に密着する。この密着状態でフリット材1aが素子基板2に溶着されて各発光素子2aの封止が行われるので、素子基板2に対するフリット材1aの溶着を確実に行うことができる。さらに、大気圧による加圧を行うので、素子基板2が多面取りのマザー基板である場合にも、一括封止を容易に行うことができる。
【0021】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、封止基板1と素子基板2とを、各発光素子2aを内側にし、それらの発光素子2aを囲う枠形状のフリット材1a及びそのフリット材1aを囲う枠形状のシール材2bを間にして減圧雰囲気下で貼り合わせ、貼り合わせた封止基板1と素子基板2との間に位置するシール材2bを大気圧雰囲気下で硬化させ、シール材2bが硬化した封止基板1と素子基板2との間に位置する封止材1aを大気圧雰囲気下で溶着して各発光素子2aを封止することによって、封止材1aの溶着を行う際には、シール材2b硬化済の封止基板1及び素子基板2は大気圧により密着する方向に均一に加圧される。すなわち、封止基板1、素子基板2及びシール材2bにより形成される内部空間は減圧状態であるため、封止基板1及び素子基板2のパネル外面に作用する大気圧によりフリット材1aが素子基板2に均一に密着する。この密着状態でフリット材1aが溶融されて封止が行われるので、フリット材1aは素子基板2に確実に固着することになる。
【0022】
このようにして、素子基板2に対してフリット材1aを確実に密着させることが可能になるので、機械的な加圧を用いずにフリット材1aと素子基板2との密着性を向上させることができる。したがって、加圧機構を必要とせず、貼り合わせ基板全体を均一に加圧することができ、さらに、多面取り用のマザー基板に対しても、フリット材1aの塗布パターン毎に加圧を行うための複数個の加圧機構を必要とせず、装置重量の増加や機構の複雑化を抑えることができる。
【0023】
また、封止工程前に、封止基板1、素子基板2及びシール材2bにより形成される内部空間はシール材2bにより減圧状態で封止されることから、その後工程では、シール材2b硬化状態の封止基板1及び素子基板2を大気中にさらすことが可能となる。これにより、後工程の封止工程を大気中で行うことが可能となり、さらに、真空や不活性ガスを用いるための複雑な装置を用いる必要がなくなるので、製造を容易化することができ、加えて、製造コストを抑えることができる。
【0024】
また、フリット材1aに加え枠形状のシール材2bにより封止基板1と素子基板2とが接合されていることから、封止基板1と素子基板2の接合力が向上するので、衝撃による破損を抑え、製品の信頼性をより向上させることができる。
【0025】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、前述の実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0026】
前述の実施の形態においては、フリット材1aを封止基板1上に塗布し、シール材2bを素子基板2上に塗布しているが、これに限るものではなく、例えば、シール材2bを封止基板1上に塗布し、フリット材1aを素子基板2上に塗布してもよく、あるいは、フリット材1a及びシール材2bの両方を封止基板1上又は素子基板2上に塗布するようにしてもよい。
【0027】
ただし、シール材2bが塗布される基板は、貼り合わせ時にステージ32上に載置される基板である方が好ましいが、シール材2bが基板反転により垂れない粘性を有している場合には、どちらでもよい。また、貼り合わせ時には、封止基板1及び素子基板2のどちらを反転させて貼り合わせを行ってもよい。
【0028】
また、前述の実施の形態においては、フリット材1a及びシール材2bを基板上に塗布する塗布方式を採用しているが、これに限るものではなく、例えば、フリット材1a及びシール材2bを基板上に印刷する印刷方式を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る平面表示装置の製造工程を説明するための説明図である。
【図2】図1に示す製造工程におけるフリット塗布焼成工程を説明するための説明図である。
【図3】図1に示す製造工程におけるシール塗布工程を説明するための説明図である。
【図4】図1に示す製造工程における貼り合わせ工程の一部を説明するための説明図である。
【図5】図1に示す製造工程における貼り合わせ工程の一部を説明するための説明図である。
【図6】図1に示す製造工程における封止工程を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1…封止基板、1a…封止材(フリット材)、2…素子基板、2a…発光素子、2b…シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を有する素子基板と封止基板とを、前記発光素子を内側にし、前記発光素子を囲う枠形状の封止材及び前記封止材を囲う枠形状のシール材を間にして減圧雰囲気下で貼り合わせる工程と、
貼り合わせた前記素子基板と前記封止基板との間に位置する前記シール材を大気圧雰囲気下で硬化させる工程と、
前記シール材が硬化した前記素子基板と前記封止基板との間に位置する前記封止材を大気圧雰囲気下で溶着し、前記発光素子を封止する工程と、
を有することを特徴とする平面表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−113830(P2010−113830A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283174(P2008−283174)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】