説明

幹細胞の加齢化を調節するための方法及び組成物

本方法は、p16INK4a抑制剤を用いることにより、p16INK4aを発現する又は発現すると見込まれる幹細胞の自己再生を促進すること又は維持することに関して記載する。本方法は、非乳児期の対象における自己再生する幹細胞の量を増加させることに関して、更にp16INK4aを発現する幹細胞の移植を増進することに関しても記載する。更には、本方法は、p16INK4a抑制剤を同定することに関して記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願/特許及び参照としての組込み)
本出願は、米国仮特許出願第60/734,336号(2005年11月7日出願)の優先権を主張し、その全体を参照として本明細書に組み込まれる。
本明細書に引用する各出願及び特許、更に各出願及び特許に引用する各文書又は参照文献(各交付済み特許の手続過程中のもの、「出願被引用文書」を含む)、並びに各PCT及び外国出願又は対応する特許及び/又はこれらの出願及び特許の何れかの優先権主張、そして各出願被引用文書が引用する又は参照する各文書は、これにより明白に参照として本明細書に組み込まれる。より一般には、文書及び参照文献は、本明細書に、特許請求の範囲の後に参照文献一覧又は本明細書内のどちらかに、引用されて、及びこれらの各文書又は参照文献(「本明細書に引用する参照文献」)更に本明細書引用の参照文献に引用の各文書及び参照文献(製造者用仕様書、指示書等の何れかを含む)は、これにより明白に参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
(政府の支援)
本発明に至る検討は、国立衛生研究所から、助成番号第5R01HL65909号及び同第5R01DK50234号により一部を資金援助されている。従って米国政府は、本発明に関して特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
哺乳動物のINK4a/ARF遺伝子座(cdkn2a)は、2つの連結された腫瘍抑制タンパク質、サイクリン依存性キナーゼ抑制剤p16INK4a及びARF、並びにp53の安定性の重要な調節因子をコードする。p16INK4a及びARFをコードする2つのオープン・リーディング・フレームは、異なるプロモーター、及び共用エクソン2における代替リーディング・フレームに挿入する第一エクソンを有し、それによりこれら2つの細胞遺伝学的に連結された、しかし機能的には関連性のない、癌関連のタンパク質を生成する(Sharpless, Exp. Gerontol. 39, 1751-1759 (2004))。INK4a/ARF遺伝子座の欠失は、様々な悪性腫瘍で高い頻度で観察される(Rocco, J.W. et al., Exp. Cell Res. 264, 42-55 (2001))。若いヒト及び齧歯動物の複数の組織では、16INK4aは、実質的に検出できないが、一方でその発現は、年齢と共に劇的に増加する(Krishnamurthy, J. et al., J. Clin. Invest. 114, 1299-1307 (2004))(Zindy, F., et al., Oncogene 15, 203-211 (1997))。p16INK4aの高度発現は、多様な刺激(例えば、酸化的ストレス、癌遺伝子の活性化及びテロメアの短縮化)により誘発された複製老化を伴う細胞で観察されている(Campisi, J. Cellular, Trends Cell Biol. 11, S27-31 (2001))。更に、多くのヒト細胞型は、複製老化を促進する培養状態の間に高いレベルのp16INK4a発現をもたらし、そしてp16INK4aの不活性化により多くの培養した細胞型において老化を遅延させる又は無効にする(Campisi, J. Cellular, Trends Cell Biol. 11, S27-31 (2001))。増加する証拠によって、老化が加齢と共に増大し、そして幹細胞の自己再生を含む幹細胞機能の低下が誘導されることが示唆される(Ogden, D.A. et al., Transplantation 22, 287-293 (1976))、(Morrison, S.J., Wandycz, et al., Nat. Med. 2, 1011-1016 (1996))、(Liang, Y., Van Zant, G. et al., Blood (2005))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
p16INK4a発現は最近、複数組織における加齢の分子不随物として規定されているが、p16INK4aが、幹細胞機能の年齢依存性の低下を管理する役割を持つことは今まで知られてない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
p16INK4aが非乳児期の幹細胞(例えば、造血幹細胞)の原始的、静止状態の画分で発現することは確定されている。p16INK4aの欠損は、幹細胞の周期又はアポトーシスを混乱させることなく年齢関連の様式で幹細胞の自己再生を改良する。非乳児期の対象由来のp16INK4a欠損の造血幹細胞が、造血再構成及び骨髄移植後の改良された生存率を提供できることは更に確定されている。従って現在、p16INK4aが幹細胞の加齢表現型に関与していること及びp16INK4aの抑制が幹細胞の加齢への生理学的影響を改善できることは理解されるであろう。
【0006】
一態様では、本発明は、p16INK4aを発現する幹細胞の自己再生を促進する方法を提供し、当該方法は、幹細胞に有効量のp16INK4aの抑制剤を接触させること、それにより幹細胞の自己再生を促進することの段階を含んでなる。
別の態様では、本発明はp16INK4aを発現しない幹細胞の自己再生を維持する予防的方法を提供し、当該方法は、幹細胞にp16INK4aの抑制剤を接触させること、それにより幹細胞の自己再生を維持することを含んでなる。幹細胞は、p16INK4aの抑制剤とエクスビボ又はインビボで接触させる。好ましくは、幹細胞は、非乳児期対象のものである。
【0007】
更に別の態様では、本発明は、対象の組織中にp16INK4aを発現する幹細胞の移植を増進するための方法を提供し、当該方法は、幹細胞に有効量のp16INK4aの抑制剤をエクスビボで接触させること、及び幹細胞を対象に提供すること、それにより対象の組織中への幹細胞の移植を増進させることを含んでなる。組織は、好ましくは骨髄を包含する。
【0008】
本発明の一態様では、p16INK4aの抑制剤は、p16INK4aの発現を減少させる。p16INK4aの発現を減少させるp16INK4aの抑制剤は、これらに限定はされないが、p16INK4amRNAのレベルを不安定化する又は低減することのできる化合物、p16INK4amRNAの翻訳を低減することのできる化合物、並びにp16INK4a、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、DNA結合/分化抑制剤(Id又はId−1)、潜伏感染膜タンパク質(LMP1)、へリックス・ループ・へリックス転写因子TAL1/SCL、ダイオキシン及びシクロオキシゲナーゼ 2(COX−2)を高メチル化できる化合物を含む。
【0009】
本発明の別の態様では、p16INK4aの抑制剤は、p16INK4aの活性を低減する。p16INK4aの活性を低減するp16INK4aの抑制剤は、これらに限定はされないが、p16INK4a抗体、並びにp16INK4a、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、皮膚性ヒトパピローマ・ウイルス16型(HPV16)E7タンパク質、及びサイクリンD1を高メチル化できる化合物を含む。
本発明の更に別の態様では、幹細胞は、骨髄由来の幹細胞、又は造血幹細胞である。
本発明の更に別の態様では、幹細胞は、間葉、皮膚、神経、腸、肝臓、心臓、前立腺、乳腺、腎臓、膵臓、網膜及び肺の幹細胞である。
【0010】
本発明の更に別の態様では、hes−1及びgfi−1の発現は、p16INK4aの抑制剤と接触する幹細胞で増加させることができる。
更に別の態様では、本発明は、それを必要とする非乳児期の対象における自己再生する幹細胞の量を増加させる方法を提供し、当該方法は、幹細胞を包含する単離された細胞集団に有効量のp16INK4aの抑制剤をエクスビボで接触させること、そして細胞を非乳児期の対象に投与すること、それにより非乳児期の対象における自己再生する幹細胞の量を増加させること、の段階を含んでなる。
【0011】
本発明の一態様では、細胞集団は、非乳児期の対象から得られる。本発明の更に別の態様では、細胞集団は、骨髄細胞を含んでなる。細胞集団は、Lin、cKit及びScalであってもよい。hes−1及びgfi−1の発現は、p16INK4aの抑制剤と接触する幹細胞で増加させることができる。
本発明の別の態様では、非乳児期の対象は、ヒトである。
本発明の更に別の態様では、非乳児期の対象は、少なくとも18歳である。
本発明の更に別の態様では、幹細胞は、骨髄移植時に非乳児期の対象に投与される。
【0012】
更に別の態様では、対象は、これらに限定はされないが、血小板減少症、貧血症、リンパ球減少症、リンパ漏、リンパうっ滞、赤血球減少症、赤血球変性疾患、赤芽球減少症、白赤芽球症、赤血球崩壊、サラセミア、骨髄線維症、血小板減少症、播種性血管内凝固症(DIC)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、HIV合併ITP、骨髄異形成症、血小板性疾患(thrombocytotic disease)、血小板増加症、好中球減少症、骨髄異形成症候群、感染症、免疫不全症、リウマチ性関節炎、ループス、免疫抑制、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、自己免疫性甲状腺炎、強皮症、又は炎症性腸疾患を含む疾患を有する。
更に別の態様では、本発明の多様な処置は、p16INK4aの抑制剤を得ることを更に含んでなる。
【0013】
更に別の態様では、本発明は、抑制剤が幹細胞の自己再生を促進するp16INK4aの抑制剤を特定する方法を提供し、当該方法が、p16INK4aを発現する幹細胞を包含する単離された細胞集団に、p16INK4aの抑制剤であると思われる薬剤を接触させること、そして長期間に再増殖する細胞の総数の増加を検出すること、それにより幹細胞の自己再生を促進するp16INK4aの抑制剤を特定することを含んでなる。更に別の態様では、本発明は、p16INK4aの抑制剤であると思われる薬剤を得ることを更に含んでなる。
【0014】
本発明の一態様では、細胞集団は、非乳児期の対象から得られる。本発明の別の態様では、細胞集団は、骨髄細胞を含んでなる。細胞集団は、Lin、cKit及びScalであってもよい。hes−1及びgfi−1の発現は、p16INK4aと接触する幹細胞で増加させることができる。
更に別の態様では、本発明は、本発明の方法の実施に用いるためのキット又は包装された医薬品を提供する。
【0015】
一態様では、本発明は、p16INK4aの抑制剤、及び本発明の方法に従ってp16INK4aを発現する幹細胞の自己再生を促進するために16INK4aの抑制剤を使用することに関する説明書を含んでなる、p16INK4aを発現する幹細胞の自己再生を促進するキット又は包装された医薬品を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、p16INK4aの抑制剤、及び本発明の方法に従ってそれを必要とする非乳児期の対象における自己再生する幹細胞の量を増加させるために16INK4aの抑制剤を使用することに関する説明書を含んでなる、それを必要とする非乳児期の対象において自己再生する幹細胞の量を増加させるためのキット又は包装された医薬品を提供する。
【0017】
更なる別の態様では、本発明は、p16INK4aの抑制剤、及び本発明の方法に従ってp16INK4aを発現しない幹細胞の自己再生を維持するためにp16INK4aの抑制剤を使用することに関する説明書を含んでなる、p16INK4aを発現しない幹細胞の自己再生を維持するためのキット又は包装された医薬品を提供する。
【0018】
更に別の態様では、本発明は、p16INK4aの抑制剤、及び本発明の方法に従って対象の組織へのp16INK4aを発現する幹細胞の移植を増進するためにp16INK4aの抑制剤を使用することに関する説明書を含んでなる、対象の組織へのp16INK4aを発現する幹細胞の移植を増進するためのキット又は包装された医薬品を提供する。
本発明のその他の態様は、以下に記述され、そして本発明の範囲内である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(本発明の詳細な記述)
I.定義
本明細書に用いる「同種異系」という用語は、相対的に当該細胞と遺伝学的に異なる同種の細胞を示す。
本明細書に用いる「自己」という用語は、同じ対象由来の細胞を示す。
本明細書に用いる「移植する」という用語は、組織の生存する細胞との接触を通して、インビボで目的の組織に幹細胞を取り込む過程を示す。
本明細書に用いる「非乳児期の対象」という用語は、すでに授乳する必要のない対象を示す。非乳児期の対象がヒトである場合には、その男性又は女性は少なくとも6ヶ月齢である。
【0020】
本明細書に用いる「p16INK4aの抑制剤を得ること」のような「得ること」という用語は、診断用薬剤(指示された材料又は物質)を購入すること、合成すること又は別な方法で入手することを含むことを意図している。
本明細書に用いる「p16INK4aの抑制剤」という用語は、低減すること又は完全に除去することのどちらか一方により、p16INK4aの発現又は活性を低減する薬剤を示す。
【0021】
本明細書に用いる「自己再生」という用語は、幹細胞が分裂して、成長の可能性を伴い母細胞の区別できない1つの娘細胞(非対称分裂)又は2つの娘細胞(対称分裂)を生成する過程を示す。自己再生は、増殖及び未分化状態の維持の両方を含有する。
本明細書に用いる「幹細胞」という用語は、自己再生する又は複数の細胞系統に分化する能力を有する多分化能の又は多能性の細胞を示す。
【0022】
本明細書に用いる「対象」という用語は、マウス、ウサギ、豚、山羊、牛及び高等霊長類のような、ヒト、家畜及び飼育動物、並びに動物園、競技用及びペットの動物を含む哺乳類の何れかを示す。
本明細書に用いる「同系」という用語は、相対的に当該細胞と遺伝学的に同一である異なる対象の細胞を示す。
【0023】
本明細書に用いる「処置(治療)」、「処置(治療)すること」等の用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを示す。効果は、疾患又は症状を完全に又は部分的に防ぐことに関して予防的なものであってもよく、そして/又は疾患及び/又は疾患に起因する悪影響の部分的又は完全な治癒に関して治療的であってもよい。本明細書で用いる「処置(治療)」という用語は、哺乳動物、特にヒトの疾患における治療の何れかを網羅し、(a)疾患に罹りやすいかもしれないが、未だそれに罹っていると診断されていない対象に疾患が生じるのを予防すること、(b)疾患を抑制すること、即ちその進行を止めること、そして(c)疾患を軽減すること、例えば、疾患の症状を完全に又は部分的に取り除くために、例えば、疾患の退行をもたらすことを包含する。
【0024】
本明細書に用いる「異種」という用語は、相対的に当該細胞とは異なる種の細胞を示す。
本発明の開示では、「含んでなる」「包含している」「含有している」及び「有している」等の用語は、米国特許法でのそれらの用語に帰する意味を有していてよく、「含む」「含んでいる」等を意味していてもよく、「基本的に〜から成っている」又は「基本的に〜から成る」は、同様に米国特許法に帰する意味を有していてよく、そしてその用語は、引用されるものの基本的又は新規な特性が、引用されるもの以上の存在により変えらず、そして先行技術の態様を除外しない限り、引用されるもの以上の存在を容認して、種々の解釈が可能である。
【0025】
II.本発明の組成物及び方法
p16INK4a抑制剤の使用
本発明による幹細胞は、幹細胞の再生を促進するためにエクスビボでp16INK4a抑制剤と接触してもよい。本明細書に記載のように、本発明の方法によるp16INK4a抑制剤で処理するとすぐに、幹細胞は、患者の幹細胞集団を補完する、補充する等のために人体に戻すことができる。そのような幹細胞のp16INK4a処理は、幹細胞の貯蔵を増大させ、そして投与時に幹細胞の移植能を増進するであろう。
【0026】
好ましくは、p16INK4aは、未だ発現していない場合、ストレスの結果として誘発され得ると認識されているので、単離した細胞は、細胞に対するストレスを起こしやすい治療法の開始に先行して(具体的には、拡張、再移植又は移植)、p16INK4a抑制剤で処理される。これに関して、そのような処理が所望しないp16INK4a発現の誘発を妨ぐことができるので、p16INK4aを未だ発現していない細胞を処理することも望ましい。
【0027】
いくつかの態様では、p16INK4a抑制剤の有効量は、インビボで対象に直接的に投与することができる。そのような状態下で、抑制剤は、インビボで幹細胞の貯蔵を保護してそして最終的に増加させるように機能する。好適な抑制剤は、多様な経路で投与することができる。概して、投与の方法は、医薬的に許容される投与の何れかの様式を用いて実施されてもよく、臨床的に許容できない悪影響を起こすことなく、活性化合物の有効なレベルを生じさせる何れかの様式を示す。そのような投与の様式は、経口、直腸的、局所的、眼球内、口腔内、膣内、嚢内、脳室内、気管内、鼻腔内、経皮的、移植片内/上で(例えば、コラーゲンのような繊維体)、浸透性ポンプ、適切な形質変換の細胞等を包含する移植片、又は非経口的経路を含む。「非経口的」という用語は、皮下的、静脈、筋肉内、腹膜内、又は点滴を含む。
【0028】
本発明の方法に従って用いることのできるp16INK4a抑制剤は、p16INK4aの発現又は活性を低減するために、当該技術分野で公知の全てのそのような薬剤を含む。そのような薬剤は、それらに限定はされないが、p16INK4a抗体、並びにp16INK4a(Zochbauer-Muller, S., et al. 2001 Cancer Res 61(1): 249-55; Wong, L., et al. 2002 Lung Cancer 38(2): 131-6) 、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)(Veitonmaki, N., et al. 2003 FASEB J17(6): 764-6; Taylor, L.M., et al., 2004 J Biol Chem 279(42): 43634-45)、皮膚性ヒトパピローマ・ウイルス16型(HPV16)E7タンパク質(Giarre, M., et al. 2001 J Virol 75(10): 4705-12)、DNA結合/分化の抑制剤(Id又はId−1)(Sakurai, D., et al. 2004 J Immunol 173(9): 5801-9; Lee, T.K., et al. 2003 Carcinogenesis 24(11): 1729-36)、潜伏感染膜タンパク質(LMP1)(Yang, X., et al. 2000 Oncogene 19(16): 2002-13)、へリックス・ループ・へリックス転写因子TAL1/SCL(Hansson, A., et al. 2003 Biochem Biophys Res Commun 312(4): 1073-81)、サイクリンD1(D'Amico, M., et al. 2004 Cancer Res 64(12): 4122-30)、ダイオキシン(Ray, S.S., et al. 2004 J Biol Chem 279(26): 27187-93)及びシクロオキシゲナーゼ2(COX−2)(Crawford, Y.G., et al. 2004 Cancer Cell 5(3): 263-73)の高メチル化をもたらす化合物の何れかを含む。
【0029】
本発明の方法に従って用いることのできる、p16INK4aの発現を減少させるためのp16INK4a抑制剤は、p16INK4amRNAのレベルを不安定化する又は低減することのできる化合物を含む。具体的には、p16INK4amRNAを標的にするshRNA、siRNA又はマイクロRNAによるRNAi媒介遺伝子サイレンシングは、p16INK4amRNAを不安定にするために用いることができる。RNAi媒介遺伝子サイレンシングは、特異的なmRNA配列(例えば、p16INK4amRNA)を標的にするsiRNA又はマイクロRNA(miRNA)に2次的に処理される、合成低分子干渉RNA(siRNA)又は長い二本鎖RNA分子のどちらかを細胞に導入することにより開始する。ショートヘアピンRNA(shRNA)を産生する低分子ステムループのRNAは、細胞に導入することができ、そして更に特異的なmRNAを標的とするように処理することができる。ShRNAは、内因的miRNA前駆体と同様の機構により処理されて、カリオフェリン・エクスポーチン−5により細胞質に輸送される(ここにおいて、3’ジヌクレオチド・オーバーハングを伴う21〜28個のヌクレオチド(nt)二本鎖フラグメントが次いでRNaseIII様酵素Dicerにより産生される)。RNA誘導のサイレンシング複合体内の巻き戻し及び標的配列へのアニーリングで、後者はスライサーArgonaut−2タンパク質により開裂されて、更に細胞質エキソヌクレアーゼにより消化される。前駆体のmiRNAは、Dicerにより処理されるが、その翻訳を抑制するために、特異的なmRNA配列を標的にするmiRNAに組み込まれる。
【0030】
本発明の方法に従って用いることのできる、p16INK4aの発現を減少させるためのp16INK4aの抑制剤は、p16INK4aの翻訳を低減することのできる化合物も含む。具体的には、p16INK4amRNAへアニールするRNAの相補的鎖(アンチセンスRNA)は、p16INK4amRNAの翻訳を阻止するために細胞に導入することができる。
【0031】
p16INK4a抑制剤は、キットの付加的試薬と共に提供されてもよい。キットは、治療法又はアッセイに関する説明書、試薬、装置(試験管、反応容器、注射針、注射器等)及び測定すること又は治療若しくはアッセイを較正又は実施するための基準を含有してもよい。本発明によるキットに提供される説明書は、ラベル又は折り込みの形態で好適な操作パラメータを指示していてもよい。任意的に、キットは、標準又は対照の情報を更に包含していてもよく、それによりテストサンプルを対照情報の基準と比較して、矛盾のない結果に到達できたかどうか判定することができる。
【0032】
幹細胞
本発明の幹細胞は、哺乳動物の器官又は組織で確認されている当該技術分野で公知の全てを含有する。最も特徴的なものは、造血幹細胞である。骨髄、血液、臍帯血、胎児肝臓及び卵黄嚢から単離した造血幹細胞は、(血液細胞を産生するか又は続いての移植が複数の造血系統を再開する)前駆細胞であり、そして移植者の生命のための造血を再開することができる(Fei,R.らの米国特許第5,635,387号、McGlaveらの米国特許第5,460,964号、Simmons,P.らの米国特許第5,677,136号、Tsukamotoらの米国特許第5,750,397号、Schwartzらの米国特許第5,759,793号、DiGuistoらの米国特許第5,681,599号、Tsukamotoらの米国特許第5,716,827号、Hill,B.らの1996を参照されたい)。致死的に照射された動物又はヒトに移植する場合、造血幹細胞は、赤血球、好中球マクロファージ、巨核球及びリンパ球様造血細胞の貯蔵を再増殖することができる。インビトロで、造血幹細胞は、少なくともいくつかの自己再生する細胞分裂が起こるように誘導することができ、そしてインビボで観察される同じ系統に分化するよう誘導できる。
【0033】
造血細胞は、多分化能の幹細胞、多能性の前駆細胞(例えば、リンパ球系幹細胞)、及び/又は特異的な造血系統に拘束された前駆細胞を含むことは、当該技術分野で公知である。特異的な造血系統に拘束された前駆細胞は、T細胞系統、B細胞系統、樹状突起細胞系統、ランゲルハンス細胞系統、及び/又はリンパ球系組織に特異的なマクロファージ細胞系統であってもよい。
【0034】
造血幹細胞は、血液製剤から得ることができる。本発明で用いる「血液製剤」は、造血系の細胞を含んでいる身体又は身体の器官から得られる製剤を定義する。そのような供給源は、未分画の骨髄、臍帯、末梢血、肝臓、胸腺、リンパ液及び脾臓を含む。上記の粗製物又は未分画の血液製剤が、多くの方法で「造血幹細胞」の特性を有する細胞に濃縮できることは、当業者に理解されるであろう。具体的には、血液製剤は、より分化した子孫が涸渇していてもよい。より成熟した、分化した細胞は、それらが発現する細胞表面分子に対して、又は介して選択することができる。更に、血液製剤は、CD34細胞を選択して分画することができる。CD34細胞は、当該技術分野で、自己再生が可能な、多能性の細胞亜集団であると見なされている。そのような選択は、例えば市販の磁性の抗CD34ビーズ(Dynal, Lake Success, NY)を用いて、達成することができる。未分画の血液製剤は、提供者から直接的に得るか、又は冷凍保存の貯蔵所(cryopreservative storage)から入手することができる。
【0035】
本発明の好ましい態様では、造血幹細胞は、p16INK4a抑制剤での処理の前に採取されてもよい。造血前駆細胞を「採取すること」は、マトリックスからの細胞の取り出し又は分離と定義される。これは、酵素的、非酵素的、遠心分離的、電気的又はサイズベースの方法のような数多くの方法を用いて、又は好ましくは培地(例えば、ここで細胞を培養する培地)を用いて細胞をフラッシングすることにより達成することができる。細胞は、更に収集され、分離され、そしてより大きい分化した子孫の集団であっても産生するように拡張することができる。
【0036】
造血幹細胞の単離に関する方法は、当該技術分野で公知であり、一般に細胞表面マーカー及び機能的特性に基づく、それに続く精製技術を包含する。造血幹及び前駆細胞は、骨髄、血液、臍帯血、胎児肝臓及び卵黄嚢から単離し、複数造血系統を生じさせることができ、そして移植者の生命のための造血を再開することができる(Fei,R.らの米国特許第5,635,387号、McGlaveらの米国特許第5,460,964号、Simmons,Pらの米国特許第5,677,136号、Tsukamotoらの米国特許第5,750,397号、Schwartzらの米国特許第5,759,793号、DiGuistoらの米国特許第5,681,599号、Tsukamotoらの米国特許第5,716,827号;Hill,B.らの1996を参照されたい)。具体的には、末梢血由来の造血幹及び前駆細胞の単離に関して、PBS中の血液は、Ficollのチューブ(Ficoll-Paque, Amersham)に負荷し、そして25〜30分間1500rpmで遠心分離する。遠心分離後、造血幹細胞を含有している白色のセンタリングを回収する。
【0037】
本発明の幹細胞は、胚幹細胞も含む。胚幹(ES)細胞は、限定されない自己再生及び多分化能を有している(Thomson, J. et al. 1995; Thomson, J. A. et al. 1998; Shamblott, M. et al. 1998; Williams, R. L. et al. 1988; Orkin, S., 1998; Reubinoff, B. E., et al. 2000)。これらの細胞は、移植前の胚盤胞の内部細胞塊(ICM)由来であり(Thomson, J. et al. 1995; Thomson, J. A. et al. 1998; Martin, G. R. 1981)、又は移植後の胚からの始原生殖細胞(胚性細胞又はEG細胞)由来であってもよい。ES及び/又はEG細胞は、マウス、ネズミ、ウサギ、羊、山羊、豚を含む複数種由来であり、より最近にはヒト並びにヒト及び非ヒト霊長類由来である(米国特許第5,843,780号及び同第6,200,806号)。
【0038】
胚幹細胞は、当該技術分野で公知である。例えば、米国特許第6,200,806号及び同第5,843,780号は、ヒトを含む霊長類の胚幹細胞を示す。米国特許出願番号第20010024825号及び同第20030008392号は、ヒト胚幹細胞を記載する。米国特許出願番号第20030073234号は、クローンヒト胚幹細胞株を記載する。米国特許第6,090,625号及び米国特許出願番号第20030166272号は、多能性であると提示される未分化細胞を記載する。米国特許出願番号第20020081724号は、細胞培養物由来の胚幹細胞であると規定されるものを記載する。
【0039】
本発明の幹細胞は、間葉幹細胞も包含する。間葉幹細胞又は「MSCs」は、当該技術分野で公知である。MSCsは、元来胚性の中胚葉由来であり、そして成熟した骨髄から分化したものは、筋肉、骨、軟骨、脂肪、骨髄基質、及び腱の形態に分化できる。胚形成時に、中胚葉は、骨、軟骨、脂肪、骨格筋及び内皮を産生する組織、肢芽中胚葉となる。中胚葉は、心筋、平滑筋、又は内皮及び造血前駆細胞からなる血島になることができる、内臓中胚葉にも分化できる。よって、原始中胚葉又はMSCsは、数多くの細胞及び組織型に対する供給源を提供できるであろう。数多くのMSCsが単離されている(Caplan,A.らの米国特許第5,486,359号、Young,H.らの米国特許第5,827,735号、Caplan,A.らの米国特許第5,811,094号、Bruder,S.らの米国特許第5,736,396号、Caplan,A.らの米国特許第5,837,539号、Masinovsky,B.らの米国特許第5,837,670号、Pittenger,M.らの米国特許第5,827,740号、「Jaiswal, N. et al.(1997) J. Cell Biochem. 64(2) :295-312」、「Cassiede P., et al., (1996). J Bone Miner Res. 9: 1264-73」、「Johnstone, B., et al., (1998) Exp Cell Res. 1: 265-72」、「Yoo, et al., (1998) J Bon Joint Surg Am. 12: 1745-57」、「Gronthos, S. et al., (1994). Blood 84: 4164-73」及び「Pittenger, et al., (1999). Science 284: 143-147」を参照されたい)。
【0040】
間葉幹細胞は、骨髄の外へ移動し、特異的な組織に関連しており、そこでそれらは最終的に複数系統に分化すると信じられている。インビトロ又はエクスビボでの間葉幹細胞の成長の増進及び維持は、胸部、皮膚、筋肉、内皮、骨、呼吸器、泌尿生殖器、胃腸結合性又は線維芽の組織を含む、新しい組織を産生するために用いることのできる拡張した集団を提供できるであろう。
本発明の幹細胞は、皮膚、神経系、腸、肝臓、心臓、前立腺、乳腺、腎臓、膵臓、網膜又は肺の幹細胞のような、当該技術分野で公知の全ての成熟した幹細胞も包含する。
【0041】
本発明の方法に従って用いられる幹細胞は、投与の前に精製又は未精製のどちらかの画分としてp16INK4aと処理することができる。生体サンプルは、細胞の混合された集団を包含していてもよく、それは所望の効果を生じさせるのに十分な程度にまで精製することができる。当業者は、蛍光活性化細胞分別法(FACS)のような多様な公知の方法を用いて、集団における幹細胞又はそれらの前駆体の比率を容易に測定できる。幹細胞の純度は、集団内の遺伝的マーカープロフィール(genetic marker profile)に従い測定できる。用量は、当業者により容易に調節できる(例えば、純度が下がると、用量を増やす必要があるかもしれない)。
【0042】
いくつかの態様では、第一に細胞を精製することが望ましい。望ましくは本発明の幹細胞は、約50〜55%、55〜60%、60〜65%及び65〜70%の純度を有する細胞集団を包含する(例えば、非幹及び/又は非前駆細胞は除去されている、又はそうでなければ集団に存在しない)。より好ましくは純度は、約70〜75%、75〜80%、80〜85%、そして更により好ましくは純度は、約85〜90%、90〜95%及び95〜100%である。精製した本発明の幹細胞集団は、精製段階の前に、後に又は同時にp16INK4a抑制剤と接触させ、そして対象に投与されてもよい。
【0043】
一旦所望の供給源から得られると、細胞をp16INK4a抑制剤と接触させることは、一般に培養物中で行われるであろう。用いる培養条件は、より詳細に以下に記述するが、本発明の幹細胞を保護すること、並びに幹細胞の数及び/又はコロニー形成の単位能の拡張を活性化することができる。本発明の全てのインビトロ及びエクスビボでの培養方法では、別段に規定されている場合を除いて、用いる培地は、従来の細胞を培養するためのものである。適切な培養培地は、化学的に規定された培地RPMI、DMEM、Iscove’s等のような化学的に規定された無血清培地、又はいわゆる「完全培地」であってもよい。一般に、無血清培地は、ヒト又は動物の血漿又は血清を補給される。そのような血漿又は血清は、少量の造血性成長因子を含んでいてもよい。しかし本発明に従い用いる培地は、先行技術において従来用いていた物から外れていてもよい。好適な化学的に規定された無血清培地は、米国シリアル番号第08/464,599号及び国際公開第96/39487号、並びに「完全培地」は、米国特許第5,486,359号に記載されている。
【0044】
本発明の幹細胞のp16INK4a抑制剤での処理は、用いる抑制剤の特定のタイプに依存する可変のパラメータを含んでいてもよい。具体的には、RNAi構築物での幹細胞のエクスビボでの処理は、迅速に効果があるかもしれない(例えば、形質移入後1〜5時間以内)、一方、化学的薬剤での処理は、長時間の培養期間を必要とするかもしれない(例えば、24〜48時間)。本発明に従い処理した幹細胞を、幹細胞の維持及び拡張を促進する追加の薬剤と共に共培養することもできる。実施者がそれに従いパラメータを変化させることは、当該技術分野の従来技術のレベル内で十分可能である。
【0045】
本発明に関する特別な目的の成長剤は、造血性成長因子である。造血性成長因子とは、造血幹細胞の生存又は増殖に影響を与える因子を示す。生存及び増殖にのみ影響を与えるが、しかし分化を促進しないと見なされている成長剤は、インターロイキン3、6及び11、幹細胞因子並びにFLT−3リガンドを含む。前記因子は、当該技術分野で公知であり、大部分は市販されている。それらは、精製若しくは組み換え法により得ることができ、又は誘導若しくは合成されてもよい。
【0046】
従って、細胞を前記薬剤が何れもない状態で培養する場合、本明細書では、細胞は、血清、通常の栄養培地、又は造血幹及び前駆細胞を含有する、未分画若しくは分画された血液製剤の単離物内に存在する場合を除き、そのような薬剤の付加無しで培養することを示す。
本発明の単離した幹細胞は、遺伝的に組み換えを行うことができる。具体的には、本明細書に記載の幹細胞は、p16INK4aを破壊して、結果的にp16INK4a−/−細胞をもたらすように遺伝的に修飾することができる。或いは、本発明の幹細胞は、p16INK4aの発現を抑制するタンパク質又はmRNAをコードする遺伝子を発現するよう操作することができる。
【0047】
幹細胞の遺伝子変化は、細胞の遺伝物質の全ての一時的及び安定した変化を含み、それは外来性の遺伝物質の付加により生み出される。遺伝子変化の具体例は、突然変異又は非発現の遺伝子を入れ替えるための機能的遺伝子の導入、優性阻害の遺伝子産物をコードするベクターの導入、リボザイムを発現するように操作されたベクターの導入、及び治療的遺伝子産物をコードする遺伝子の導入のような、遺伝子の治療的手順の何れかを含む。外来性の遺伝物質は、自然又は合成の何れかの核酸又はオリゴヌクレオチドを含み、幹細胞に導入される。外来性の遺伝物質は、細胞中に自然に存在する物のコピーであってもよく、又は細胞に自然には見出されなくてもよい。一般にそれは、少なくとも、ベクター構築物に、プロモーターの操作可能な管理の下に置かれている自然発生的な遺伝子の一部である。
【0048】
多様な技術が、核酸を細胞の中に導入するために用いられてもよい。そのような技術は、核酸−CaPO沈着物の形質移入、DEAEに関連する核酸の形質移入、目的の核酸を含有するレトロウィルスでの形質移入、リポソーム媒介形質移入等を含む。ある特定の使用に関して、特別な細胞を核酸の標的にすることが好ましい。この場合、本発明による核酸を細胞(例えば、レトロウィルス又は他のウィルス、リポソーム)に送達するために用いる媒体は、それらに付着する標的分子を有していてもよい。具体的には、標的細胞における表面膜タンパク質に対して特異的な抗体、又は標的細胞における受容体に対するリガンドのような分子は、核酸送達の媒体に結合する又は組み込まれてもよい。具体的には、リポソームが本発明の核酸を送達するために用いられる場合、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質は、標的にする及び/又は組み込みを容易にするために、リポソーム製剤に組み込まれてもよい。そのようなタンパク質は、特別な細胞型を指向するタンパク質又はそのフラグメント、サイクリングに内在性をもたらすタンパク質の抗体、細胞内の局在化を標的とするタンパク質、及び細胞内半減期を増進するタンパク質等を含む。多因子の送達システムも、当業者に公知のように、核酸を細胞に首尾よく送達するのに用いられている。そのようなシステムは、核酸の経口送達も可能にする。
【0049】
外来性の遺伝物質を細胞に導入する一つの方法は、複製欠損性のレトロウィルスを用いるマトリクスにおけるインサイチュ(in situ)の細胞を形質導入することを含む。複製欠損性のレトロウィルスは、全てのウイルス粒子タンパク質の合成を指向することができるが、しかし感染性粒子を生成することはできない。従って、遺伝子組み換えのレトロウィルスベクターは、培養細胞中の遺伝子の有効性の高い形質導入のための一般的な有用性、及び本発明の方法に用いるための特異的な有用性を持つ。レトロウィルスは、遺伝物質の細胞への導入に広く用いられている。複製欠損性のレトロウィルスを産生するための標準的な手順(外来性の遺伝物質のプラスミドへの取り込み、パッケージング細胞株のプラスミドとの形質移入、パッケージング細胞株による組み換えレトロウィルスの産生、組織培養培地からのウィルス性粒子の収集、及び標的細胞のウイル性粒子での感染の段階を含む)は、当該技術分野で提供される。
【0050】
ウィルスは、治療薬剤をコードする遺伝子の単一配列を宿主細胞ゲノムに効果的に挿入するので、レトロウィルスは、細胞が分裂する際にその子孫に外来性の遺伝物質が移るのを可能にする。さらに、LTR領域の遺伝子プロモーター配列は、多様な細胞型に挿入されたコード配列の発現を増大させることが報告されている。しかしながら、レトロウィルスの発現ベクターの使用は、(1)挿入性突然変異、即ち、例えば無秩序な細胞増殖を導く、治療的遺伝子の標的細胞ゲノム中の望ましくない位置への挿入、及び(2)ベクターにより運ばれる治療的遺伝子が標的ゲノムに組み込まれるための標的細胞の増殖の必要性、をもたらすかもしれない。これらの明白な制限があるにもかかわらず、形質導入の有効性が高く、そして/又は形質導入に使用できる標的細胞の数が多い場合には、レトロウィルスを介する治療的有効量の治療薬剤の送達は、有効であり得る。
【0051】
細胞の形質変換の発現ベクターとして有用な更に別のウィルス候補物は、アデノウィルス、二本鎖DNAウィルスである。レトロウィルスと同様に、アデノウィルスゲノムは、遺伝子形質導入の発現ベクターとして、即ちウィルス自身の産生を制御する遺伝的情報を取り除くことにより、使用に適合できる。アデノウィルスは、通常、染色体外の様式で機能するので、組み換えアデノウィルスは、挿入突然変異の理論上の問題を有さない。他方、標的細胞のアデノウィルス形質転換は、安定した形質導入をもたらさないかもしれない。しかしながら、最近では、ある特定のアデノウィルス配列が、キャリア配列に対して染色体内組込みの特異性を与え、それにより外来性の遺伝物質の安定した形質導入をもたらすと報告されている。
【0052】
従って、当該技術分野の通常の技術の一つに明らかなように、多様な好適なベクターは、外来性の遺伝物質を細胞に導入するために使用できる。薬剤を送達する好適なベクターの選択及び選択された発現ベクターの細胞への挿入のための状態の最適化は、過度の実験を必要とせず、当該技術分野の通常の技術範囲内である。プロモーターは特徴的に、転写を開始するのに好ましい特異的なヌクレオチド配列を有する。任意的に、外来性の遺伝物質は、所望の遺伝子転写の活性を得るために用いる、付加的配列(即ち、エンハンサー)を更に含む。本検討の目的のために、「エンハンサー」は、プロモーターにより指示される基底転写レベルを変化させるために、コード配列(シスに)と接触して作用する、単純な非翻訳のDNA配列の何れかである。好ましくは、外来性の遺伝物質はプロモーターからの下流で細胞ゲノムに迅速に導入され、それによりプロモーター及びコード配列は、コード配列の転写を可能にするように動作可能に連結される。好ましいレトロウィルスの発現ベクターは、挿入する外来性の遺伝子の転写を制御するための外来性のプロモーター要素を含む。そのような外来性のプロモーターは、構成的及び誘導性のプロモーターの両方を含む。
【0053】
自然に発生する構成的プロモーターは、主要な細胞機能の発現を制御する。結果として、構成的プロモーターの制御下の遺伝子は、全ての細胞成長の状態下で発現する。例示的な構成的プロモーターは、ある特定の構成的又は「ハウスキーピング」機能をコードする、以下の遺伝子のプロモーターを含み、例として、ヒポキサンチンホスホリボシル転移酵素(HPRT)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)(Scharfmann et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 4626-4630)、アデノシン・デアミナーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ、ホスホグリセリン酸ムターゼ、アクチンプロモーター(Lai et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 10006-10010)、及び他の当該技術分野で公知の構成的プロモーターが挙げられる。更に、多くのウィルス性プロモーターは、真核細胞で構成的に機能する。これらには、他の多くの中で、SV40の初期及び後期プロモーター、モロニー白血病ウイルス(Moloney Leukemia Virus)及び他のレトロウィルスの長い末端重複(LTRS)、並びに単純ヘルペスウイルス(Herpes Simplex Virus)のチミジンキナーゼ プロモーターを含む。従って、上記の構成的プロモーターの何れかは、異種遺伝子挿入の転写を制御するために用いることができる。
【0054】
誘導性プロモータの制御下にある遺伝子は、単独で、又は誘導剤の存在でより高い程度に発現する(例えば、メタロチオネインプロモーターの制御下の転写は、ある特定の金属イオンの存在で大いに増加する)。誘導プロモーターは、それらの誘導因子が結合する場合に転写を刺激する応答配列(REs)を含む。具体的には、血清因子、ステロイドホルモン、レチノイン酸及びサイクリックAMPに対するREsがある。特定のREを含むプロモーターは、誘導応答を得るために選択することができ、そしていくつかの場合、REそれ自身が異なるプロモータに付着していてもよく、それにより誘導性を組み換え遺伝子に与えてもよい。従って、適切なプロモータ(構成的対誘導性、強い対弱い)を選択することにより、遺伝的に修飾された細胞における薬剤の生存及び発現レベルの両方を制御することが可能である。送達に関するこれらの因子の選択及び最適化は、上記に開示の因子を考慮して、過度の実験を必要とせず当該技術分野の通常の技術の範囲内と思われる。
【0055】
少なくとも1つのプロモーター及び少なくとも1つの異種の核酸の付加では、発現ベクターは、発現ベクターで形質移入又は形質導入されている細胞の選択を容易にするために、好ましくは選択遺伝子、具体的にはネオマイシン耐性遺伝子を含む。或いは、細胞は、2つ又はそれ以上の発現ベクターで形質移入され、少なくとも一つのベクターが、治療薬剤(複数も)をコードする遺伝子(複数も)を含有し、他方のベクターが選択遺伝子を含有している。好適なプロモータ、エンハンサー、選択遺伝子及び/又はシグナル配列の選択は、過度の実験を必要とせず当該技術分野の通常の技術の範囲内と思われる。
【0056】
治療方法
本発明の方法は、幹細胞の量を増加すること及び幹細胞の維持又は生存を支援することが望ましい疾患又は疾病の何れかを治療するために用いることができる。好ましくは、幹細胞は、非乳児期対象の造血幹細胞である。
頻繁に、本発明の治療方法を必要とする対象は、化学療法のような免疫細胞消耗の治療を受けている又は受けることが予想される人達であろう。用いられる化学療法剤の殆どは、細胞分裂を行う全ての細胞を死滅することにより作用する。骨髄は、身体の最も多産な組織の1つであり、そしてそれ故にしばしば化学療法剤により初めに損傷される器官である。その結果、化学療法時に血球産生物が急激に破壊されて、化学療法が終了し、そして患者が化学療法の再治療を受ける前に、造血システムが血球供給物の補充を受けることになる。
【0057】
従って、本発明の方法は、例えば、化学及び/又は放射線療法を受けている癌患者のような、骨髄移植又は造血幹細胞移植を必要とする患者を治療するために用いることができる。本発明の方法は、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫又は白血病に罹っている患者を含む、癌に対する化学療法又は放射線療法を受けている患者の治療に特に有用である。
p16INK4a抑制の有益な効果は、乳児期の対象には期待されないので、好ましくは、治療を受ける対象及び提供する対象は、非乳児期の対象である。好ましくは、非乳児期の対象は、ヒトである。
【0058】
本発明の方法に従って治療される疾患は、放射線療法、化学療法、又はジドバジン(zidovadine)、クロラムフェニカル(chloramphenical)若しくはガンシクロビル(ganciclovir)のような骨髄抑制剤での治療法のような別の主要な治療法の、望ましくない副作用又は合併症の結果的ものであってもよい。そのような疾患は、好中球減少症、貧血症、血小板減少症、及び免疫性機能不全症を含む。更に、本発明の方法は、毒性物質又は放射線への意図しない露出に起因する骨髄の損傷を治療するために用いてもよい。
【0059】
本発明の方法は、造血幹細胞(例えば、赤血球)由来の成熟細胞の量を増加する手段として更に用いることができる。具体的には、血球の欠如若しくは血球の欠損によって特徴付けられる疾患又は疾病は、造血幹細胞の貯蔵を増加することにより治療できる。そのような症状は、血小板減少症(血小板不足)、並びに再生不良性貧血症、鎌状赤血球貧血症、ファンコニ貧血症及び急性リンパ性貧血症のような貧血症を含む。上記に加えて、本発明の方法を用いる治療法が有効であり得る更なる症状は、これらに限定されないが、リンパ球減少症、リンパ漏、リンパうっ滞、赤血球減少症、赤血球変性疾患、赤芽球減少症、白赤芽球症、赤血球崩壊、サラセミア、骨髄線維症、血小板減少症、播種性血管内凝固症(DIC)、免疫性(自己免疫性)血小板減少性紫斑病(ITP)、HIV誘導のITP、骨髄異形成症、血小板性疾患(thrombocytotic disease)、血小板増加症、(コストマン症候群及びシュワックマン−ダイアモンド症候群のような)先天性好中球減少症、腫瘍関連の好中球減少症、小児及び成人周期性好中球減少症、感染後好中球減少症、骨髄異形成症候群、並びに化学療法及び放射線療法に関連する好中球減少症を含む。
治療される疾患は、幹細胞の損傷を引き起こす感染症(例えばウィル感染症、細菌感染症又は真菌感染症)の結果であってもよい。
【0060】
T及び/又はBリンパ球欠乏症のような免疫不全症、又はリウマチ性関節炎、ループスのような他の免疫性疾患も、本発明の方法に従って治療することができる。そのような免疫不全症は、感染症(例えば、AIDSをもたらすHIVの感染)、又は放射線、化学療法若しくは毒素への露出の結果であってもよい。
【0061】
本発明の方法による治療の便益は、健康であるが、本明細書に記載の疾患又は疾病の何れかに罹かるリスクのある個体(「リスクのある」個体)である。「リスクのある」個体は、これに限定はされないが、血球減少症又は免疫不全症になる一般の集団の可能性よりも高い可能性を有する個体を含む。免疫不全症になるリスクのある個体は、これらに限定はされないが、HIVに感染した個体との性的交渉によりHIV感染のリスクのある個体;静注薬物の使用者;HIV感染血液、血液製剤又は他のHIV汚染体液に曝されたかもしれない個体;HIV感染の母親から生まれた乳児;以前に例えば化学療法又は放射線療法による癌の治療を受けた、及び以前に治療された癌の再発に関して観察されている個体;並びに骨髄移植若しくは他の器官の移植の何れかを受けたことのある個体、又は化学療法若しくは放射線療法を受ける若しくは移植に関する幹細胞の提供者になることが今後予想される患者を含む。
【0062】
正常な対象と比較した免疫機能のレベルの低下は、白血病、腎不全に起因する免疫抑制症状;これらに限定されないが、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、自己免疫性甲状腺炎、強皮症、炎症性腸疾患を含む自己免疫疾患;多様な癌及び腫瘍;これに限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含むウィルス感染;細菌感染;及び寄生虫性感染を含む、多様な疾患、疾病の感染又は症状に起因するものであってよい。
【0063】
正常な対象と比較した免疫機能のレベルの低下は、遺伝的起源若しくは加齢による、免疫不全性疾患又は疾病に起因するものであってもよい。これらの具体例は、これらに限定はされないが、高免疫グロブリンM症候群、CD40リガンド欠損症、IL−2受容体欠損症、γ−鎖欠損症、一般変異型免疫不全症、チェディアック・東(Chediak-Higashi)症候群、及びウィスコット・アルドリッチ(Wiskott-Aldrich)症候群を含む、加齢に関連する免疫不全性疾患並びに遺伝的起源の疾患である。
【0064】
正常な対象と比較した免疫機能のレベルの低下は、それらに限定はされないが、癌を治療するための化学療法薬剤;ある特定の免疫療法薬剤;放射線療法;骨髄移植と併せて用いる免疫抑制剤;及び器官移植と併せて用いる免疫抑制剤を含む、特異的な薬理学的薬剤での治療に起因するものであってもよい。
【0065】
そのような治療の必要のある対象に(エクスビボで)提供される幹細胞が造血幹細胞である場合、それらは大部分が共通してその対象又は適合性のある提供者の骨髄から得られる。骨髄細胞は、当該技術分野で公知の方法を用いて、容易に単離できる。具体的には、骨髄幹細胞は、骨髄穿刺法を用いて単離されてもよい。本明細書に参照として明白に組込まれる、米国特許第4,481,946号は、骨髄穿刺の方法及び装置を記載しており、ここにおいて提供者からの骨髄の効率的な回収は、一対の穿刺針を摘出の目的とする部位に挿入することにより達成できる。一対の注入器と連結して、圧力を調節して一方の注射針を通して骨髄及びシヌソイドの血液を摘出して、同時に他方の注射針を通して静脈注射液に正方向に加圧してその部位から摘出される骨髄と置き替えることができる。骨髄及びシヌソイドの血液はチェンバーに吸い込み、別の静脈注射液と混合して、そしてその後収集バックに押し込む。異種の細胞集団は、細胞表面のマーカーの同定により更に精製されて、目的の生殖器官に投与するための、骨髄由来の生殖系幹細胞組成物を得ることができる。
【0066】
米国特許第4,486,188号は、骨髄穿刺の方法及び装置を記載しており、ここにおいて、一連のラインは、チェンバー部分から、静脈注射液の供給源、穿刺針、第2の静脈注射液の供給源、及び好適な分離又は収集源へ向かっている。チェンバー部分は、同時に静脈注射液の供給源から導かれる溶液のラインに負の圧力を加えて、ラインを満たし、全ての空気をパージすることができる。次いで溶液のラインを閉じて、正の圧力を加えて、静脈注射液を提供者へ向けて流し、一方で負の圧力を加えて、骨髄物質をチェンバーに回収して静脈注射液と混合する、続いて正の圧力を加えて、静脈注射液と骨髄物質との混合物を分離又は収集源に輸送する。
【0067】
粗製及び未分画の骨髄が、所望の「幹細胞」特性を有する細胞に濃縮できることは、当業者には理解されるであろう。いくつかの濃縮の方法は、例えば、より分化した子孫から骨髄を涸渇することを含む。より成熟した、分化した細胞は、それらが発現する細胞表面分子に対して、介して選択されてもよい。濃縮した骨髄免疫表現型の亜集団は、これに限定はされないが、Lin、cKit及びSca−1(例えば、LK+S+(Lin−cKitScal)、LK−S+(Lin−cKitScal)及びLK+S−(Lin−cKitScal)のそれらの表面発現に従い分別された集団を含む。
【0068】
骨髄は、対象の生存の間に採取されてもよい。しかし、病気(例えば癌)の前の採取が望ましく、そして細胞傷害性手段による治療(例えば、放射線又は化学療法)の前の採取は、収率を改善し、そしてそれゆえに又望ましい。
【0069】
幹細胞の投与
好適なp16INK4a抑制剤でのエクスビボの処理に続いて、本発明の幹細胞は、当該技術分野で公知の方法に従い投与されるであろう。そのような組成物は、注射又は期間をかけた点滴を含む、従来の経路の何れかにより投与されてよい。投与は、投与される組成物に依存して、例えば、肺、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、又は経皮的なものであってよい。幹細胞は、「有効量」、又は単独で若しくは更なる用量と共に所望の治療的応答を生じるような量を投与される。
【0070】
本発明の投与される細胞は、自己の(「自分自身の」)又は非自己の(「非自分自身の」、例えば、同種、同系又は異種)ものであってもよい。一般に、細胞の投与は、p16INK4aの処理に続き短時間以内に(例えば、治療の、1、2、5、10、24又は48時間後)、及び所望の各治療計画に従い実施されてもよい。具体的には、投与の前に放射線又は化学療法が施される場合、本発明の幹細胞の治療及び移植は、好ましくは治療停止の約1ヶ月以内に提供されるのが好ましいであろう。しかし、治療停止後のより遅い時点の移植は、誘導可能な臨床転帰を伴い実施されてもよい。
【0071】
採取及び好適なp16INK4a抑制剤での処理に続いて、投与の前に細胞の保護及び維持を増進するために、幹細胞は当該技術分野で公知の医薬品賦形剤と組合せてもよい。いくつかの態様では、本発明の幹細胞組成物は、減菌液製剤、例えば等張水溶液、懸濁液、乳濁液、分散又は粘性組成物として便利に提供されてもよく、これは選択されたpHに緩衝されていてもよい。液体製剤は、一般には、ジェル、他の粘性組成物及び固形組成物より容易に調製できる。更に、液体組成物は、特に注射によって、投与するのに若干より便利である。他方、粘性組成物は、特異的な組織とのより長い接触期間を提供するために適切な粘性の範囲内に製剤化されてもよい。液体又は粘性組成物は、担体を包含していてもよく、この担体は例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)及び好適なそれらの混合物を含有する、溶媒又は分散媒質であってもよい。
【0072】
減菌注射液は、本発明の実施に用いられる細胞を、必要であれば、種々の量の他の賦形剤と共に、適切な溶媒の量に取り込むことにより調製されてもよい。そのような組成物は、好適な担体、希釈剤、又は減菌水、生理的食塩水、グルコース、ブドウ糖等のような賦形剤と混合されていてもよい。組成物は、凍結乾燥されていてもよい。組成物は、投与の経路及び所望の製剤に依存して、湿潤剤、分散又は乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化又は粘性増強添加剤、保存剤、甘味剤、着色剤等のような補助剤を含有してもよい。「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE」17版 1985(本明細書に参照として取り込まれている)のような標準テキストを、過度の実験を必要とせず、好適な製剤を調製するために参照することができる。
【0073】
抗菌性保存剤、酸化防止剤、キレート剤及び緩衝剤を含む、組成物の安定性及び無菌度を増強する多様な添加剤は添加されてもよい。微生物の活性防止は、種々の抗細菌性及び抗真菌性剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等、により確保されてもよい。
組成物は等張性であってよい、即ち、それらは血液及び涙液と同じ浸透圧を有していてよい。本発明の組成物の望ましい等張性は、塩化ナトリウム、又はブドウ糖、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール又は他の無機若しくは有機溶質のような他の薬学的に許容される薬剤を用いて達成されてもよい。塩化ナトリウムは、ナトリウムイオンを含有する緩衝剤として特に好ましい。
【0074】
それを必要とする対象に細胞を導入する場合に、細胞の生存率を増大させるための方法は、目的の幹細胞を生体高分子又は合成高分子に組み込むことである。生体高分子の具体例は、これらに限定されないが、フィブロネクチン、フィブリン、フィブリノゲン、トロンビン、コラーゲン及びプロテオグリカンと混合した細胞を含む。これは、含有する拡張又は分化因子と共に又は無しで、構築することができる。更に、これらは懸濁状態でもよく、しかし、流れに曝される部位の滞留時間はほんの僅かであるだろう。別の方法は、細胞と生体高分子の混合物の隙間に閉じこめた細胞を用いる3次元ゲル法である。この場合もやはり、拡張又は分化因子は、細胞に含有されていてもよい。これらは、本明細書に記載の多様な経路を介して、注射により展開されてもよい。
【0075】
当業者は、組成物の成分が、化学的に不活性であり、及び本発明に記載の幹細胞若しくはそれらの前駆体の生存性又は有効性に影響を与えないであろうものを選択すべきであることを理解されるであろう。これは、化学的及び薬学的原理に精通した者にとって問題はないであろう、又は問題は、標準のテキストを参照することにより、若しくは本発明の開示及び本明細書に添付の文書が提供する簡単な実験(過度の実験を含まない)により、容易に回避できる。
【0076】
幹細胞の治療的使用に関する1つの検討要素は、最適な効果に到達するために必要な細胞の数である。異なる状況では、目的の組織に注入する細胞の量の最適化が必要であるかもしれない。よって、投与される細胞の数は、治療している対象に関して変化するであろう。有効量を考慮するべきものの正確な確定は、特定の患者の体格、年齢、性別、体重及び状態を含む、各患者の個別の因子に基づいていてよい。わずか100〜1000の細胞が、所望の一定の適用に関して選ばれた患者に投与されてもよい。よって、用量は、本発明の開示及び当該技術分野の知識から、当業者にはより容易に確定できるであろう。
【0077】
当業者は、組成物中の細胞、及び任意の添付剤、賦形剤及び/又は担体の量、及び本発明の方法で投与すべき量を容易に確定できる。当然ながら、動物又はヒトに投与する組成物の何れかに対して、特定の投与方法の何れかに対して、好適な動物モデル、例えばマウスのような齧歯動物において、致死量(LD)及びLD50を確定することによる毒性;並びに、組成物(複数も)の用量、その中の構成要素の濃度及び組成物(複数も)の投与の時期(これは、好適な応答を導き出す)を確定することが好ましい。そのような確定は、当業者の知識、本発明の開示及び本明細書に添付する文書により、過度の実験を必要としない。そして、順次的な投与に関する時間は、過度の実験無しで確認できる。
【0078】
スクリーニングアッセイ
本発明のスクリーニング方法は、幹細胞の自己再生を促進するp16INK4a抑制剤の特定を包含していてもよい。そのような方法は、一般に、p16INK4aを発現する幹細胞を包含する細胞集団を培養物中の被検の抑制剤と接触させること、及び結果として産生される長期的に再増殖する細胞の数を定量することを包含する。限界希釈分析法と組み合わせた競合的な再増殖をベースとする、定量的インビボ・アッセイ法(長期的に再増殖する幹細胞の相対頻度の確定に関する)は、以前に「Schneider, T.E., et al. (2003) PNAS 100(20):11412-11417」に記載されている。同様に、「Zhang, J., et al. (2005) Gene Therapy 12:1444-1452)」には、NOD/SCIDマウスにsiRNA処理のレンチウィルス形質導入ヒトCD34+細胞を注入し、続いてマウスを犠牲にし、そして骨髄単核細胞を採取することが記載されている。細胞は、順次的に抗ヒト白血球マーカー抗体で染色し、FACS分析を実施し、マーカーを検出する(及び、よって目的の細胞の定量化を行う)。未処理の対照との比較を同時に評価できる。対照と比較して長期的に再増殖する細胞の数の増加が検出される場合、被検の抑制剤は、所望の活性を有すると確定される。
【0079】
更なる態様では、本発明のスクリーニング方法は、幹細胞におけるhes−1及び/又はgfi−1の遺伝子発現の検出及び定量化を包含する。hes−1及びgfi−1のレベル両方が幹細胞において増加した場合、幹細胞の自己再生が増加したことが期待される。
本発明のスクリーニング方法の実施では、精製した幹細胞集団を用いるのが望ましい。他の方法では、テスト薬剤は、精製した幹細胞の集団よりもむしろ生体サンプルを用いてアッセイされてもよい。「生体サンプル」という用語は、対象から単離した組織、細胞及び体液、更には対象内に存在する組織、細胞及び体液を含む。好ましい生体サンプルは、骨髄及び末梢血である。
【0080】
長期的に再増殖する細胞の量の増加は、これらに限定はされないが、Hes−1、Bmi−1、Gfi−1、SLAM遺伝子、CD51、GATA−2、Scl、P2y14及びCD34を含む、ある特定のマーカーの遺伝子発現の増加により検出することができる。これらの細胞は、分化に関連する遺伝子の発現の減少又は低下によって特徴付けされてもよい。
目的の遺伝子(例えば、hes−1、gfi−1)の発現レベルは、これらに限定されないが、遺伝子にコードされるmRNAを測定すること、遺伝子にコードされるタンパク質の量を測定すること、又は遺伝子にコードされるタンパク質の活性を測定することを含む、数多くの方法で測定できる。
【0081】
目的の遺伝子に対応するmRNAのレベルは、インサイチュ及びインビトロの様式の両方により測定できる。単離したmRNAは、これらに限定はされないが、サザン又はノーザン分析法、ポリメラーゼ連鎖反応分析法及びプローブアレイ法を含む、ハイブリダイゼーション又は増幅アッセイに用いることができる。mRNAレベルの検出に関する1つの診断的方法は、検出される遺伝子によりコードされるmRNAとハイブリダイズできる核酸分子(プローブ)を単離したmRNAに接触させることを含む。核酸プローブは、mRNA又はゲノムDNAに対して厳しい条件下で、十分に特異的にハイブリダイズを行う。プローブは、アレイ、例えば、下記のアレイのアドレスに配置することができる。診断的アッセイに用いるのに好適な他のプローブは、本明細書に記載する。
【0082】
一様式では、mRNA(又はcDNA)は、表面上に固定化され、そして具体的には、単離したmRNAをアガロース・ゲル上で走査すること、及びmRNAをゲルからニトロセルロースのような膜まで形質導入することにより、プローブと接触させる。更なる様式では、プローブは表面上に固定化して、そして具体的には、下記の2次元遺伝子チップアレイ法にて、mRNA(又はcDNA)はプローブと接触させる。更に別の様式では、「J. Lu et al. 2005 Nature 435:834-838」に記載のようなビーズベースの分析法を用いるが、ここでは、個別のmiRNAと相補的なDNA配列は、カラーコードされたビーズに付着しており、そして標的細胞から増幅されるmiRNAは、その後ビーズに付加し、染色し、そして細胞分別法を介して特定される。当業者は、本明細書に記載の目的の遺伝子にコードされるmRNAのレベルの検出に用いるために、公知のmRNA検出方法を適合させることができる。
【0083】
サンプルのmRNAレベルは、核酸増幅、例えば、rtPCR法(Mullisの米国特許第4,683,202号(1987))、リガーゼ連鎖反応法(Barany, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 189-193 (1991))、自己持続性配列複製法(Guatelli et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 1874-1878 (1990))、転写増幅システム(Kwoh et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 1173-1177 (1989))、Q−ベータ・レプリカーゼ(Lizardi et al. Bio/Technology 6: 1197 (1988))、ローリングサークル複製(Lizardiらの米国特許第5,854,033号)又は他の核酸増幅法の何れかを適用した後に、当該技術分野において公知の技術を用いて増幅された核酸分子を検出することにより評価することができる。本明細書で用いる増幅プライマーは、遺伝子の5’又は3’領域(各々プラス鎖及びマイナス鎖、又はその逆)にアニールでき、及びその間の短い領域を含む一対の核酸分子として規定される。一般に、増幅プライマーは約10〜30ヌクレオチドの長さであり、長さ約50〜200ヌクレオチドの領域の側面に位置する。適切な条件下及び適切な試薬を用いると、そのようなプライマーは、プライマーに挟まれたヌクレオチド配列を包含する核酸分子の増幅を可能にする。
【0084】
インサイチュ法に関して、細胞又は組織のサンプルは、調製/処理して支持体(一般的にはガラススライド)上に固定化し、次いで分析されるべき目的の遺伝子をコードするmRNAにハイブリダイズできるプローブと接触させてもよい。
本発明は、本発明のよりよい理解と多くの利点の理解を提供するように、以下の例示的であり、限定するものではない、実施例を用いて更に詳細に記載される。
(実施例)
【実施例1】
【0085】
p16INK4a及びp16INK4a−/−マウスにおける造血幹細胞の分析
p16INK4aの発現は、複数の組織で加齢の分子的不随物として最近規定されているので、p16INK4aが幹細胞機能における年齢依存性の減退を支配することにおいて顕著な役割を果たすかどうかを検討した(Krishnamurthy, J. et al. J. Clin. Invest. 114, 1299-1307 (2004))。p16INK4aの発現は、若齢(8〜12週齢)及び高齢(52〜78週齢)のマウスの両方での異なるマウス骨髄の亜集団でテストした。
【0086】
マウス
FVB/n、C57B1/6野生型及びp16INK4a−/−のマウスは、無菌環境で自家養育した。FVB/nのp16INK4aKOマウスは、上記のように産生して(Harrison, D. E. Nat. New Biol. 237, 220-222 (1972))、C57B1/6と6世代の交配を行った。ノースカロライナ大学の動物管理使用委員会(The Institutional Animal Care and Use Committee of the University of North Carolina)及びマサチューセッツ総合病院の動物保護調査小委員会(the Subcommittee on Research Animal Care of the Massachusetts General Hospital(MGH))が、連邦及び機関の方針及び規定(federal and institutional policies and regulations)に従い全ての動物の検討を承認した。
【0087】
LKSのレトロウィルス遺伝子導入
HPV16−E7及びE7△21〜24配列をコードするcDNA(Phelps,W.C.,et al.J.Virol.66,2418-2427(1992))は、レトロウィルスベクターMSCVにサブクローニングされた。分別したLKS細胞のウィルス産生及び形質導入は、上記のように実施した(Stier, S., et al. Blood 99, 2369-2378 (2002))。ウィルスの形質導入の2日後、LKS細胞は、GFP+細胞に関して分別して、そしてHSC培地中で更に8日間培養して、次のRNA単離及び遺伝子発現分析に備えた。
【0088】
細胞及び細胞培養
骨髄は、上記のように採取して(Cheng, T. et al. Science 287, 1804-1808 (2000))、そして製造者作成手順(Stem Cell Technologies)に従いCFU−C及びCFU−Mkアッセイ法で培養した。分別したLK+S+細胞は、HSC培地:10%の無毒化したBSA(Stem Cell Technologies, Inc.)、100U/mlのペニシリン(Bio Whittaker)、100U/mlのストレプトマイシン(Cellgro)、2mMのL−グルタミン(Bio Whittaker)、及び0.1mMの2−メルカプトエタノール(Sigma-Aldridge)を補充したX−Vivo15(登録商標)(Cambrex)中で培養した。ウィルスの形質導入の前に、LKS細胞は、50ng/mlのrmSCF、50ng/mlのrmTPO、50ng/mlのrmFlt−3L及び20ng/mlのrmIL3(全てPepro Tech社から購入)の存在下で培養した。ウィルス形質導入の24時間後、細胞は、10ng/mlのrmSCF、10ng/mlのrmTPOの存在する新しいHSC培地中で培養した。
【0089】
フローサイトメトリー分析及び亜集団の分別化
Mac−1α(CD11b)、Gr−1(Ly−6G及び6C)、Ter119(Ly−76)、CD3ε、CD4、CD8a(Ly−2)及びB220(CD45R)(BD Biosciences)に対するビオチン化抗マウス抗体は、系統染色に用いた。検出及び分別に関して、PE/Cy7(BD Biosciences)、Sca1−PE(Ly 6A/E、Caltag)、c−Kit−APC(CD117、BD Biosciences)と結合するストレプトアビジンを用いた。細胞周期分析に関して、製造者作成説明書(Molecular Probes)に従い、Hoechst33342色素を用いた。BrdUの取り込みに関して、体重6g当たり1mgのBrdU(BD Biosciences)及び1mg/mlのBrdU(Sigma)と飲料水の混合物の7日間の腹膜内単回投与の後に、APC−BrdUフローキット(BD Biosciences)を用いた。系統マーカーに対する表面染色は、上記のように、Scal−PE、c−Kit−APC/Cy5.5(eBiosciences)、及びCD34−FITC(BD Biosciences)を含み、実施した。アポトーシスアッセイに関して、DAPI染色法及びAnnexin V(BD Biosciences)を用いた。
【0090】
p16INK4a遺伝子型の決定は、Sharplessらの記載のように(Sharpless, N.E.et al.Nature 413,86-91(2001))、またY染色体PCRは以前に記載のように(Cheng T.et al.Science 287, 1804-1808(2000))実施した。末梢血の計数は、Drew Hema Vet 850で実施した。
【0091】
遺伝子発現の分析
RNAは、手順に従いPicoPure Kit(Arcturus Bioscience)を用いて分別した骨髄集団から単離した。第一鎖の相補的DNA合成物は、High Capacity cDNA Archive Kit(Applied Biosystems)を用いて100ngのサンプルRNAから合成して、そして増幅プロットは、Mx4000 Multiplex Quantitative QPCR System(Stratagene)を用いて作成した。標準曲線を作成するために、RB−/−細胞株RNA(100ng)からのcDNAを、5倍希釈シリーズのテンプレートとして用いた。サンプルcDNAは、希釈せずに用いた。相対的な発現は、デルタCt法を用いて算出した。Hprt−1、Bmi−1、Gfi−1及びhes−1の発現前アッセイ(Pre-developed assay)類は、Applied Biosystems社からアッセイId番号(Mm00446968、Mm00776122、Mm00515853及びMm00468601)で購入した。p16INK4a及びARFに対するプライマー並びにプローブは、上記の通りである(Krishnamurthy, J. et al. J. Clin. Invest. 114, 1299-1307 (2004))。
【0092】
若齢動物では、p16INK4amRNAのレベルは、原始造血細胞が濃縮されたFACS分別集団と同様に、全骨髄において検出限界以下であった。しかし高齢動物の骨髄では、p16INK4amRNAは、Lin陰性/cKit陰性/Sca1陽性(LK−S+)集団では検出可能になった。この集団は、LK+S+集団よりは、より未成熟で、強い静止状態のHSCを含有すると特定されている(Doi, H. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94, 2513-2517 (1997))(Ortiz, M. et al. Immunity 10, 173-182 (1999))。p16INK4aの発現と対照的に、ARFは、LK−S+集団ではより高いレベルであるが、LK+S+細胞でも検出された。「Krishnamurthy, J. et al. J. Clin. Invest. 114, 1299-1307 (2004)」のLin−細胞における以前の発見と一致して、ARF mRNAも又、p16INK4aの観察よりは低い程度ではあるが、加齢に伴う増加が実証された(図1a)。Hprt−1の発現は、ハウスキーピング対照として用いた。
【0093】
これらのコンパートメントにおけるp16INK4aの機能的役割を評価するために、ARFの無傷発現を有する選択的なp16INK4a欠損のマウス(Sharpless, N.E. et al. Nature 413, 86-91 (2001))を用いた。p16INK4a欠損は、ARF発現における代償的増加には関連しないことが確認され、WT及びp16INK4a−/−BMから単離された原始造血集団において、ほぼ同じレベルのARFメッセージが示された(図1a)。骨髄細胞性は、各々の動物の脛骨及び大腿骨の両方からの細胞の数を数えることにより評価した。加齢に伴い、p16INK4a−/−及びWTマウスは、比較できる程度の体格、末梢血数、及び骨髄細胞性を表した(図4)。細胞集団の何れかにおいて年齢の一致する動物を比較した場合(若齢n=12、高齢n=5、p=n.s)、血球百分率では遺伝子型間の差異がないことを示した(図4a)。骨髄細胞性は、各々の動物の脛骨及び大腿骨の両方からの細胞の数を数えることにより評価した(図4b)。骨髄細胞性において差異がないことが観察された(若齢:n=12、高齢:n=4、p=n.s)
【0094】
更に、WT及びp16INK4a−/−マウス由来の骨髄亜集団(LK+S+、LK−S+又はLK+S−)において若齢では、免疫表現型の差異はないことが観察された(図1b)。しかし、両方の遺伝子型からのマウスは、年齢と共に、LK−S+集団において著しく増加することが観察された(図1b、各々の遺伝子型に関してn=9、p<0.01)。この集団において、p16INK4aの発現が加齢した野生型動物に顕著であり、p16INK4aの発現における年齢誘導の増加は、インビボのLK+S−細胞の数を制限することを示唆している。よって、HSC含有の集団の免疫表現型分析では、野生型において、Lin−Scal−c−kit+及びLin−Scal+c−kit+細胞ではなく、Lin−Scal+c−kit−細胞の長期間の著しい増加が示され、そしてp16INK4a骨髄が検出可能であった(n=9、p(若齢/高齢)<0.01)。
【0095】
免疫表現型のサブセットが機能的サブセットに厳密に一致するかどうか判定する検討では、突然変異動物に存在する一時的に増幅する又は前駆体の細胞の数は、インビトロのコロニー形成アッセイを実施して計数した。若齢p16INK4a−/−マウスは、それらの対応する野生型よりも、コロニー形成細胞(CFC)のわずかな増加を示した。しかし、年齢の増加と共に、遺伝子型間の前駆体の活性に差異は検出できなかった(図1c)。従って、加齢に伴い全体的にCFCの頻度は増加するが、p16INK4aはそれらの前駆的な利点を失う。
【0096】
p16INK4a欠損マウスが骨髄内の機能的HSCsの数に変化があるのかどうか判定するために、競合的な移植を限界希釈分析法と共に実施した。
【0097】
移植アッセイ
連続移植に関して、8〜12又は52〜67のどちらかの週齢の雄FVBp16INK4aWT及びKO同腹仔由来の3〜4×10の全骨髄細胞は、致死照射された(10Gy)6〜8週齢の雌移植マウスに注入された。CBCは、移植の4週間後、尾静脈を狭窄して得た。移植の6週間後、移植体(recipients)は、次の移植サイクル及びインビトロアッセイのドナーとして用いた。生存率が50%を下回った場合、移植は中止した。
【0098】
競合的再増殖アッセイ
若齢マウス由来の骨髄細胞を用いた競合的再増殖アッセイ(CRA)に関して、5×10、5×10及び5×10のWT又はKO全骨髄細胞は、5×10のCD45.1(競合物)WT細胞(8週齢)と混合したCD45.2同腹仔(8週齢)から得たものを用いた。移植体は、8〜10週齢のCD45.1 B6.SJL雌マウスであった。高齢マウス由来の骨髄細胞を用いた競合的再増殖アッセイ(CRA)に関して、1×10、1×10及び1×10のWT又はKO全骨髄細胞は、2×10のCD45.1WT細胞(12週齢)と混合したCD45.2同腹仔(52〜60週齢)から得たものを用いた。移植体は、8〜10週齢のCD45.1 B6.SJL雌マウスであった。再増殖は、移植の6及び12週間後、フローサイトメトリー法により評価した。
【0099】
末梢血は、移植の6〜12週間後に、CD45.2由来のドナー細胞による造血性の再構成及び特異的系統の寄与の程度を判定するために分析した。WTのCD45.1競合細胞と1:1に注入した場合、高齢マウス由来のp16INK4a−/−のドナー細胞は、それらのWTのCD45.2対応物よりも、著しく高い全末梢血の画分を産生し(p=0.00006)、p16INK4aが存在しない状態での競合及び移植の優れた能力を示した。高齢マウスからの骨髄と対照的に、骨髄が若齢マウス由来のものである場合、WT及びp16INK4a−/−の間に差異が無いことが示された(p=0.9)。限界希釈アッセイでは、移植の12週間後の高齢マウスで、p16INK4a欠損のドナーBMにおける複数系統の再増殖細胞がより高い頻度で示されたが(p<0.04)、一方で若齢のWT及びKO(移植の12週間後)の間には幹細胞の頻度レベルに差異は検出できなかった(図1d)。従って、高齢(58週C57B1/6)のp16INK4a−/−マウスは、野生型の対照と比較して、長期的に再増殖する造血幹細胞の数の増加を示した。
【0100】
大腿骨当たりの単核細胞の総数が遺伝子型の間で変化しなかったことから、これらのデータは、p16INK4a無しの高齢動物における長期的に再増殖する細胞の絶対数の増加を示す。WT及びKOのドナー細胞の間で異なる系統の成熟細胞の分布における差異は観察されなかったので、p16INK4aの欠損は、分化能に悪影響を及ぼさなかった。よって、造血幹細胞の数において、p16INK4aの年齢依存性の効果があった。p16INK4aの存在は、加齢する有機体において造血幹細胞の貯蔵を抑制する。
【0101】
造血亜集団の頻度及び貯蔵サイズは、細胞周期、アポトーシス、又は分化を経てのより成熟したコンパートメントへの移行速度の変化に影響される。p16INK4aがインビトロの細胞周期の調節において重要な役割を果たしていることは公知であるので、原始造血細胞の分布におけるp16INK4a欠損の影響を、細胞周期の様々な段階で分析した。Hoechst33342を用いたフローサイトメトリー分析では、WT及びp16INK4a−/−マウス由来の骨髄集団における、異なる細胞周期段階での細胞の頻度レベルに差異は検出されなかった。
【0102】
細胞周期活性における僅かな差異を、本方法による「スナップショット」的検出は見逃すかもしれないことから、より長期間にわたる細胞周期の頻度を計数する検討を行った。よって、5−ブロモデオキシウリジン(BrdU)を7日間にわたり投与して、原始造血BM亜集団内に存在するBrdU+細胞の比率を評価した(n=4,p=n.s)。若齢のWT及びp16INK4a−/−動物の間には、処置期間中に分裂を開始した細胞の画分における差異は検出されなかった(図1e)。事実上、原始造血亜集団における増殖速度へのp16INK4aの影響は、BrdU組み込みを用いたp16INK4aの存在又は存在しない状態では検出できなかった。まれな造血幹細胞への僅かな影響を厳密に除外することはできないが、これらのデータは、p16INK4a発現が若齢動物におけるHSCの細胞周期の動態に影響しないことを示す。
【実施例2】
【0103】
順次的5−フルオロウラシル(5−FU)処置の増殖性ストレス下で骨髄幹細胞のサイクリングに影響しないp16INK4a
加齢した骨髄機能へのp16INK4a発現の生物学的インパクトが、骨髄の恒常性に外因的ストレスを与えることにより見出されるか確認するために、3×10のWT又はKOの全骨髄細胞は、若齢動物から致死的に照射されたWT移植体に移植して、そして再構成した移植体を繰り返し、週毎に150mg/kgの5−フルオロウラシル(5−FU)用量、これは明確にサイクリング細胞に損傷を与える、に曝した。この手順は、サイクリング細胞を涸渇させ、そして残存する静止状態の細胞の拡張及び分化を誘発する。各一連の処置は、非サイクリングの原始細胞の集団に更にストレスを加え、そして静止状態の幹細胞貯蔵の相対的「深度」を検査する。移植マウスでは、生存率及びCFCの産生における変化に関してアッセイを行い、何れのパラメータにおいても差異がないことが明らかになった(図5A及び5B)。総合すれば、これらのデータは、p16INK4a−/−の原始造血細胞又は幹細胞が、それらの野生型同腹仔と同様の速度で細胞周期に入ることを示唆する。しかし、極めて高い増殖性の、より成熟した前駆体のコンパートメントは増加した割合で、ヌルマウスで循環していると見なされる。インビトロの細胞周期の調節におけるp16INK4aの役割はよく知られているにもかかわらず、そしてp16INK4a−/−動物の幹細胞の貯蔵における明確な増加にもかかわらず、p16INK4a欠損動物の幹細胞周期を変化さているとは見なされない。
【実施例3】
【0104】
原始造血細胞におけるアポトーシス事象の頻度に影響しないp16INK4a
幹細胞の数における観察された差異が、代わりにアポトーシス速度の変化に起因しているかどうか判定するために、Annexin V/DAPIアッセイ法を用いた。新しく単離した骨髄は、Lineage陰性、Sca−1陽性、c−Kit陽性の細胞を染色して、そしてAnnexin V及びDAPIと共染色した。若齢並びに高齢マウスにおけるLKS、LK−S+又はLK+S−集団のWT及びKO間では、アポトーシス細胞の比率に差異がないことが検出された(即ち、p16INK4aからの影響はない)(図6)。総合すれば、これらのデータは、骨髄の幹細胞を濃縮した集団が、p16INK4aの存在しない状態で年齢に伴い不釣り合いに増加することを示唆する。上記アッセイの定量的限界内で、この見い出しが、細胞周期、アポトーシス又は分化能の変化を認識できると見なすことができない。
【実施例4】
【0105】
幹細胞の自己再生能における年齢依存性の効果を有するp16INK4a
幹細胞の特徴的な機能は、細胞分裂を自己再生する能力であり、一生を通じて組織を維持又は修復するための持続した能力にとって重要な特性である。更には、連続移植の検討では、骨髄細胞の単一コロニーが、致死量を照射された宿主を、ドナーの寿命を超える累積期間にわたり、2次、3次、4次移植で再構成できると示している(Siminovitch, L. et al. J. Cell. Physiol., 23-31 (1964))(Harrison, D.E. Nat. New Biol. 237, 220-222 (1972))。よって、HSCは、重要な自己再生能を有している。しかしながら、今までの多くの証拠で、自己再生を含む造血幹細胞の機能が、年齢の進行に伴い測定できるほどの、そして容赦なく低下することを示している(Ogden, D.A. et al. Transplantation 22, 287-293 (1976)(de Haan, G. et al. Blood 93, 3294-3301 (1999))。幹細胞機能は、寿命に影響を与え(Schlessinger, D. et al. Mech. Ageing Dev. 122, 1537-1553 (2001))、そしてVan Zantらは、幹細胞機能と動物の寿命とのマウス系統の特異的な相関を明示した(Van Zant, G., et al. J. Exp. Med. 171, 1547-1565 (1990) )。特に、短命のDBA/2マウスのHSCは、長命のC57B1/6マウスのHSCと競合した場合、時間依存性の不利な点を示した(Van Zant, G., et al. J. Exp. Med. 171, 1547-1565 (1990))。
【0106】
p16INK4aがHSCの自己再生に影響を与えるかどうかに明確に取り組むために、骨髄の連続移植の検討を、若齢(8〜12週齢)又は高齢(52〜67週齢)のドナーマウスを用いて実施した。このアッセイは、生理学的な圧力の下で分化の運命よりもむしろ自己再生を引き受けるように、限定数のHSCコロニーの能力を試験するように設計した。FVB/n WT又はp16INK4a−/−マウス由来の4〜6×10の骨髄細胞は、致死照射された6〜8週齢の雌FVB/n WTマウスに移植され、6週間後、移植体を安楽死させて、4〜6×10の採取した骨髄細胞を新たな雌の照射された移植体に注入した。この段階を、更に2回繰り返した。
【0107】
高齢ドナー由来のWT細胞は、若齢WTドナーと比較した場合、移植した移植体を救済する能力が低下した(図2aの3回の連続移植後の低下した生存率に注目されたい)。若齢WTを若齢KOのドナーと比較すると、移植されたKO細胞で死亡率の増加が観察された。3回目の移植期間後には、その差異は大幅なレベルに達し(p<0.0001)、そしてBMTの約10日後には最高に達した(図2a)。実際、3回目の移植サイクル後には、若齢p16INK4a骨髄の移植体は、その野生型の対応物に比べて、生存率において著しい不利な点を示した。対照的に、高齢p16INK4a骨髄の移植体は、3回目の移植後に、極めて優れた生存率を示した。インビトロアッセイは、前駆細胞の活性を評価するために各連続移植後に実施した。CFC頻度の著しい減少が、3回目のBMT後の6〜12週間目にp16INK4a−/−BM移植体から検出され、p16INK4a−/−細胞は、3回のインビボの拡張に続く短期間の再構成でさえも提供できないことを示した。これらのデータは、p16INK4a欠損の若齢マウス由来のHSCにおける、続く幹細胞の涸渇を伴う自己再生の減少を示唆する。
【0108】
対照的に、高齢マウス由来のドナー骨髄を用いた骨髄の連続移植は、実質的に相互的な結果を明示した。KO移植体は、全系統に関して末梢血の数により測定した場合、極めて優れた生存率(図2aの3回目のサイクル:n=20、P=0.02)、及び優れた再構成を示した(図2b)。これらの結果と一致して、CFC頻度は、3回目の移植でのKO移植体においてより高かった(図2b)。若齢p16INK4a−/−骨髄の2回目の移植での移植体は、末梢血白血球及び血小板の減少の傾向を示した。高齢マウス由来の骨髄の3回目の移植体は、反対の結果である、p16INK4a−/−の移植体がより多くの白血球及びより多くの血小板を有していることを示した。
【0109】
3回の移植の後で、若齢p16INK4a−/−移植体の骨髄細胞は、それらの野生型対応物の移植体よりも劣ってCFCコロニーを産生し、一方でp16INK4a欠損の高齢骨髄は、より多くのCFCコロニーを産生した。これらの観察は、p16INK4aが、非常に重要な機能において、HSCに高度に年齢依存性の影響を与えることを示唆する。特に、順次的移植では、変化する。幹細胞機能の他の特徴が関与しているかもしれないとは認識されているが、これらのデータは、自己再生の集団ベースの測定で検討した。変化した増殖、分化又はアポトーシスの証拠は、恒常状態下では全く検出されなかったので、結果は、より高齢のp16INK4a欠損の幹細胞のより高い頻度での自己再生の分裂を反映しているらしい。
【0110】
若齢対高齢のp16INK4a−/−動物の連続移植能における差異は、著しかった。p16INK4a発現が、恒常状態下の若齢HSCに見出せなかったので、若齢動物における影響は予期しないものであった。しかし、移植後の若齢マウス由来の骨髄をテストした場合、他のストレス状態下の他により見られるように、低いレベルのp16INK4a発現が見られた(データは示さず)(Chkhotua, A.B. et al. Am. J. Kidney Dis. 41, 1303-1313 (2003))(Chimenti, C. et al. Circ. Res. 93, 604-613 (2003))。この場合のHSCにおけるp16INK4a欠損の有害な影響は、p16INK4aとARFの間の公知のプロモーターの競合によるかもしれないが、結果的にp16INK4a欠損及びARFにおいてわずかな増加をもたらした(Sharpless, et al. Oncogene 22, 5055-5059 (2003))。ARFの発現は、HSCの死を著しく増加させることが示されている(Park, I.K. et al. Nature 423, 302-305 (2003))。逆に、p16INK4a及びARFの2つの欠如又はARF単独では、若齢動物の連続移植において何れの欠損ももたらさないことが示されている(Stepanova, L. et al. Blood (2005))。現実に、二重に欠損の動物は、自己再生において僅かな増加を有する(Stepanova, L. et al. Blood (2005))。p16INK4aが存在しない状態での年齢に伴う自己再生が目立って改善されたことは、p16INK4aの年齢依存性の増加により誘導される分子の事象が軽減することに起因しているという仮説を立てた。
【実施例5】
【0111】
骨髄細胞の原始亜集団における自己再生の関連遺伝子の発現に年齢依存性の影響を与えるp16INK4a
年齢関連の発現は、第一に、HSCの自己再生に関与する選択遺伝子に関して評価された。ポリコーム遺伝子のbmi−1は、造血幹細胞の貯蔵を維持するために必須であることは公知である(Park, I.K. et al. Nature 423, 302-305 (2003))。更にbmi−1は、Ink4a/Arf遺伝子座の両方の遺伝子であるp16INK4a及びARFの発現を抑制することが知られている(Jacobs, J.J., et al. Nature 397, 164-168 (1999))。しかし、若齢及び高齢マウスのWT及びp16INK4a−/−の原始細胞の間のbmi−1発現に差異は観察されなかった(図3a〜b)。
【0112】
Hes−1は、notch−1の下流エフェクターであると知られていて、造血幹細胞の自己再生において重要な役割を果たすことが確立されている(Kunisato, A. et al. Blood 101, 1777-1783 (2003))。よって、hes−1の発現は、原始HSCコンパートメント内で評価した。高齢マウスの骨髄から単離したLK+S+及びLK−S+の亜集団では、それらのWT対応物と比較して、p16INK4a−/−のLK+S+において、顕著な、約2倍のhes−1の発現の増加が見られた(図3a−b)。p16INK4aの発現を定常状態下の若齢細胞において検出しなかったという観察と一致して、若齢のWT及びKOマウスの間のhes−1の発現における差異は全く検出されなかった。
【0113】
転写因子gfi−1は、幹細胞の自己再生を調節することも示されている(Hock, H. et al. Nature 431, 1002-1007 (2004))。上記のhes−1での見い出しと同様に、若齢動物のWT及びp16INK4a−KOの原始造血細胞間にgfi−1の発現における差異は検出されなかった。対照的に、高齢のp16INK4a−/−の骨髄LK+S+細胞は、それらのWT同腹仔と比較して、gfi−1発現の増加を示した(図3a〜b)。端的に、リアルタイムRT−PCR分析は、若齢及び高齢のFVB/nマウスの骨髄におけるFACS分別のLin−c−Kit−Scal+及びLin−c−Kit+Scal+集団においてのbmi−1、hes−1及びgfi−1の発現を評価するために実施した。若齢のp16INK4a+/+及びp16INK4a−/−の間でそれらの遺伝子の何れかの発現に差異は検出されなかったが、p16INK4aのKOマウスのそれらの集団において、それらの野生型の同腹仔と比較して、hes−1(n=3)及びgfi−1(n=3)は上方制御された。同時に、これらのデータは、年齢の増加に伴い、p16INK4aの発現が、hes−1及びgfi−1の発現を変化させ、そしてp16INK4aの欠損、hes−1及びgfi−1のレベルの両方は、幹細胞の自己再生の増加に関連して、幹細胞において増加することを示唆する。
【0114】
更に、ヒト乳頭種ウィルスの形質転換タンクパク質HPV16−E7のコード配列は、レトロウィルス・プラスミドMSCVにサブクローニングした。空のMSCVプラスミド(MSCV−GFP)、及びRb−タンパク質MSCV−e7(△21〜24)と結合することができないHPV−E7の突然変異体を、対照として用いた。高齢のp16INK4aFVB/nの骨髄由来の分別したLin−c−Kit+Scal+細胞は、HPV16−E7構築物又は対照を含有するMSCV−ウィルスと共に形質導入され、8日間培養し、続いてRNA単離し、そしてRT−PCR分析を実施した。HPV−E7の発現は、Rb−経路上のp16INK4aの影響の回避をもたらし、そして対照細胞と比較して(n=3)、bim−1及びgfi−1の発現は変化しないものの、より高いhes−1の発現を示した。よって、bmi−1の転写は、少なくとも定常状態でない、非移植の状況では、p16INK4a欠損の高齢マウスにおける自己再生の改良において重要な役割を果たすとは思われない。
【0115】
p16INK4aは、cdk4及びcdk6と結合すること、及びE2Fの転写活性の結果的抑制を伴うRbのリン酸化反応を阻害することを通して作用することが知られているので、gfi−1又はhes−1の転写レベルにおけるp16INK4a欠損の影響は、Rb依存性の効果に媒介されるものかどうか検討した。ヒト乳頭種ウィルス(HPV)の形質転換タンパク質E7は、Rb系タンパク質の活性化E2Fに結合して、下流タンパク質の転写性の活性化をもたらす。HPV−E7タンパク質のコード配列は、MSCVプラスミドにクローニングされ、そして高齢のp16INK4a+/+のLK+S+細胞の安定した形質導入に過剰発現した。LK−S+細胞を用いた同様の実験は、その他(Doi, H. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94, 2513-2317 (1997))(Ortiz, M. et al. Immunity 10, 173-182 (1999))にも示されているように、これらの細胞はインビトロで成長しないために、実施不可能であった。対照として、空のMSCVベクター、及びRbと結合することのできない突然変異体E7(E7△21−24(Phelps, W.C., et al. J. Virol. 66, 2418-2427 (1992)))を用いた。
【0116】
形質導入の2日後、LK+S+細胞は、GFP+細胞に関して分別し、更に8日間培養し、次いでRNA単離し、そして遺伝子発現分析を行った。この追加の細胞培養の期間は、LK+S+細胞におけるp16INK4aの発現の上方制御を可能にした。3つの独立した実験では、MSCV−E7構築物で形質導入された細胞は、MSCVが空のベクター対照と比較して、2倍に増加したhes−1の発現を示した。しかし、MSCV−E7及びベクター対照の間にgfi−1又はbmi−1の発現における差異は検出されず、エクスビボの加齢したp16INK4aKO細胞に観察されるgfi−1の増加は、Rbに依存しない又は間接的な、より下流の経路に起因するかもしれない、又はgfi−1はp16INK4aの細胞非内因性の標的であるかもしれない(図3c)。
【0117】
総合すれば、これらのデータは、造血幹細胞の自己再生におけるp16INK4aの年齢依存性の影響を示す。これらのデータは、幹細胞の加齢する表現型と特にp16INK4aとの関連性を実証している。幹細胞は、長期にわたって組織維持の基盤を提供するので、p16INK4aは、組織機能での年齢の兆候の幾つかに対する分子的に重要な焦点であると考えられる。変化するp16INK4aは、高齢マウスの幹細胞の自己再生を高め、そして移植の生理学的ストレスに対する動物の耐性を増進した。本明細書で観察される幹細胞の自己再生におけるp16INK4aの影響は、増殖動態における変化に関連したものではなく、むしろ増殖転帰、自己再生における変化に関連したものであった。従って、これは、特異的なサイクリング要素との直接的な相互作用よりもむしろ、p16INK4aのE2F及び非E2Fが媒介する転写事象に起因するものであると思われる。p16INK4aは、自己再生の遺伝子発現の年齢依存性の変性と関連して自己再生する、幹細胞の能力を変性することにより、幹細胞の加齢を修正する。従って、p16INK4aを調節することは、幹細胞レベルにおける年齢関連の表現型を減衰させる手段として提供することができる。
【0118】
上記の本発明は、明確にすること及び理解することを目的として説明図と実施例によりある程度詳細に記述してきたが、当業者であれば、ある特定の変更及び修飾が実施可能であることを理解されるであろう。従って、詳細な説明及び実施例は、添付の番号付けされた特許請求の範囲に記された本発明の範囲を限定すると解釈されるものではない。
【0119】
以下の詳細な説明は、実例として示されるが、本発明を記載の特別な態様に限定するものではなく、付随の図面と組み合わせて理解することができ、参照して本明細書に組み込まれる。本発明の多様な好ましい特徴及び態様は、限定するものではない実施例により、そして添付する図面を参照して記述されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1a】図1aは、若齢及び高齢のFVB/nマウスの原始造血細胞の分別した亜集団におけるp16INK4a及びARFの遺伝子発現分析を表す免疫ブロットを示す。
【図1b】図1bは、系統的陰性の細胞にゲートするSca1及びc−Kitの染色を表すFACSプロットを示す。比率(%)は、1つの代表的な実験(若齢のFVB/nマウス=8週齢、高齢のFVB/nマウス=63週齢)における全骨髄中の頻度を表す。
【図1c】図1cは、加齢に伴うCFC頻度の変化における分析結果を、棒グラフ形態で示す。
【図1d】図1dは、野生型の対照と比較した長期的に再増殖する造血幹細胞の数の変化に続く、競合的な再増殖アッセイの結果を表すグラフを示す。
【図1e】図1eは、p16INK4aの存在又は存在しないことで影響を受ける時の、原始造血性亜集団における増殖比の定量を、棒グラフ形態で示す。
【図2a】図2aは、野生型対応物と比べた長期間の生存率に関して、幹細胞の自己再生能におけるp16INK4aの年齢依存性の影響を表す2つのグラフを示す。
【図2b】図2bは、移植サイクルでの末梢血白血球及び血小板の定量を表す、一連の棒グラフを示す。
【図3a】図3aは、骨髄細胞の原始亜集団(Lin−c−Kit−Scal+及びLin−c−Kit+Scal+)での自己再生に関連する遺伝子の発現におけるp16INK4aの年齢依存性の影響を表す一連の棒グラフを示す。
【図3b】図3bは、レトロウィルス・プラスミドMSCVにサブクローニングしたヒト乳頭種ウィルスの形質転換タンクパク質HPV16−E7、並びに空のMSCVプラスミド(MSCV−GFP)、及びRb−タンパク質MSCV−e7(△21〜24)と結合することができないHPV−E7の突然変異体の、コード配列の概略図を提供する。概略図の下の棒グラフは、3つの構築物に関するbmi−1、hes−1及びgfi−1の相対的発現を示す。データは、hprt−1で正規化した相対的発現の変化として表わされる。
【図3c】図3cは、造血幹細胞の自己再生の調節におけるp16INK4aの役割に関する提案モデルを概略的に表す。p16INK4aは、cdk4/cdk6と結合し、そしてサイクリンDのキナーゼ活性を抑制し、E2F系の転写因子を結合する低リン酸化状態のRbの連続的な累積を伴い、そして下流遺伝子の転写活性を抑制する。E7発現の影響が、Rbのリン酸化におけるp16INK4aの影響の回避を導き、p16INK4aによるhes−1発現のRbに媒介される抑制を示した。p16INK4aによるgfi−1発現の抑制は、Rb非媒介性の経路に起因するかもしれない。
【図4】図4A及び4Bは、若齢及び高齢のWT及びp16INK4a−/−マウスにおける末梢血数及び骨髄単核細胞の分析を表す、一連の棒グラフを示す。
【図5】図5Aは、長期間の全骨髄細胞移植(n=10、p=n.s)の移植マウスを評価した生存率の変化を表す。図5bは、5−FU投与の3回目のサイクル(n=3、p=n.s)後の同じマウスにおけるCFCの産生物の変化を、棒グラフ形態に表す。
【図6】図6は、新たに単離した骨髄をLineage陰性、Sca−1陽性、c−Kit陽性細胞に対して染色し、更にAnnexin V及びDAPIと共染色することを、棒グラフ形態に示す。アポトーシス細胞は、LKS細胞のAnnexin V陽性、及びDAPI陰性の画分として規定した(n=5、p=n.s)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞に有効量のp16INK4aの抑制剤を接触させること、それにより幹細胞の自己再生を促進すること、の段階を含んでなる、
p16INK4aを発現する幹細胞の自己再生を促進する方法。
【請求項2】
p16INK4aの抑制剤がp16INK4aの発現を減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
p16INK4aの抑制剤が、p16INK4amRNAのレベルを不安定化する又は低減することのできる化合物、p16INK4amRNAの翻訳を低減することのできる化合物、並びにp16INK4a、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、DNA結合/分化抑制因子(Id又はId−1)、潜伏感染膜タンパク質(LMP1)、へリックス・ループ・へリックス転写因子TAL1/SCL、ダイオキシン及びシクロオキシゲナーゼ 2(COX−2)を高メチル化できる化合物よりなる群から選ばれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
p16INK4aの抑制剤がp16INK4aの活性を低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
p16INK4aの抑制剤が、p16INK4a抗体、並びにp16INK4a、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、皮膚性ヒトパピローマ・ウイルス16型(HPV16)E7タンパク質及びサイクリンD1を高メチル化できる化合物よりなる群から選ばれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
幹細胞が骨髄由来の幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
幹細胞が造血幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
幹細胞が、間葉、皮膚、神経、腸、肝臓、心臓、前立腺、乳腺、腎臓、膵臓、網膜及び肺の幹細胞よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
幹細胞がエクスビボで接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
幹細胞がインビボで接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
hes−1及びgfi−1の発現が幹細胞で増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の抑制剤、及びp16INK4aを発現する幹細胞の自己再生を促進するために当該抑制剤を使用することに関連する説明書、を含んでなる包装された医薬品。
【請求項13】
幹細胞を包含する単離された細胞集団に、有効量のp16INK4aの抑制剤をエクスビボで接触させること、及び
当該細胞を非乳児期の対象に投与すること、それにより非乳児期の対象において自己再生する幹細胞の量を増加させること、の段階を含んでなる、
それを必要とする非乳児期の対象における自己再生する幹細胞の量を増加させる方法。
【請求項14】
p16INK4aの抑制剤が、p16INK4aの発現を減少させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
p16INK4aの抑制剤が、p16INK4amRNAのレベルを不安定化する又は低減することのできる化合物、p16INK4amRNAの翻訳を低減することのできる化合物、並びにp16INK4a、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、DNA結合/分化抑制因子(Id又はId−1)、潜伏感染膜タンパク質(LMP1)、へリックス・ループ・へリックス転写因子TAL1/SCL、ダイオキシン及びシクロオキシゲナーゼ 2(COX−2)を高メチル化できる化合物よりなる群から選ばれる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
p16INK4aの抑制剤がp16INK4aの活性を低減する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
p16INK4aの抑制剤が、p16INK4a抗体、並びにp16INK4a、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、皮膚性ヒトパピローマ・ウイルス16型(HPV16)E7タンパク質及びサイクリンD1を高メチル化できる化合物よりなる群から選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
細胞集団が非乳児期の対象から得られる、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
細胞集団が骨髄細胞を含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
細胞集団が、Lin、cKit及びScalである、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
幹細胞が造血幹細胞を含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
hes−1及びgfi−1の発現が幹細胞で増加する、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
非乳児期の対象がヒトである、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
非乳児期の対象が少なくとも18歳である、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が、骨髄移植時に非乳児期の対象に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
請求項13に記載の抑制剤、及びそれを必要とする非乳児期の対象における自己再生する幹細胞の量を増加するために当該抑制剤を使用することに関連する説明書、を含んでなる包装された医薬品。
【請求項27】
幹細胞にp16INK4aの抑制剤を接触させること、それにより幹細胞の自己再生を維持すること、を含んでなる、
p16INK4aを発現しない幹細胞の自己再生を維持する方法。
【請求項28】
p16INK4aの抑制剤が、p16INK4aの発現を減少させる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
p16INK4aの抑制剤が、p16INK4amRNAのレベルを不安定化する又は低減することのできる化合物、p16INK4amRNAの翻訳を低減することのできる化合物、並びにp16INK4a、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、DNA結合/分化抑制因子(Id又はId−1)、潜伏感染膜タンパク質(LMP1)、へリックス・ループ・へリックス転写因子TAL1/SCL、ダイオキシン及びシクロオキシゲナーゼ 2(COX−2)を高メチル化できる化合物よりなる群から選ばれる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
p16INK4aの抑制剤がp16INK4aの活性を低減する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
p16INK4aの抑制剤が、p16INK4a抗体、並びにp16INK4a、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、皮膚性ヒトパピローマ・ウイルス16型(HPV16)E7タンパク質及びサイクリンD1を高メチル化できる化合物よりなる群から選ばれる、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
幹細胞が骨髄由来の幹細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
幹細胞が造血幹細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
幹細胞が、間葉、皮膚、神経、腸、肝臓、心臓、前立腺、乳腺、腎臓、膵臓、網膜及び肺の幹細胞よりなる群から選ばれる、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
幹細胞がエクスビボで接触する、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
幹細胞が、エクスビボで処理された後、骨髄移植の対象に提供される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
幹細胞がインビボで接触する、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
hes−1及びgfi−1の発現が幹細胞で増加する、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
請求項27に記載の抑制剤、及びp16INK4aを発現しない幹細胞の自己再生を維持するために当該抑制剤を使用することに関連する説明書、を含んでなる包装された医薬品。
【請求項40】
幹細胞に有効量のp16INK4aの抑制剤をエクスビボで接触させること、及び、
当該幹細胞を対象に提供すること、それにより対象の組織中への幹細胞の移植を増進させること、を含んでなる、
対象の組織中にp16INK4aを発現する幹細胞の移植を増進するための方法。
【請求項41】
p16INK4aの抑制剤が、p16INK4aの発現を減少させる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
p16INK4aの抑制剤が、p16INK4amRNAのレベルを不安定化する又は低減することのできる化合物、p16INK4amRNAの翻訳を低減することのできる化合物、並びにp16INK4a、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、DNA結合/分化抑制因子(Id又はId−1)、潜伏感染膜タンパク質(LMP1)、へリックス・ループ・へリックス転写因子TAL1/SCL、ダイオキシン及びシクロオキシゲナーゼ 2(COX−2)を高メチル化できる化合物よりなる群から選ばれる、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
p16INK4aの抑制剤がp16INK4aの活性を低減する、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
p16INK4aの抑制剤が、p16INK4a抗体、並びにp16INK4a、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、皮膚性ヒトパピローマ・ウイルス16型(HPV16)E7タンパク質及びサイクリンD1を高メチル化できる化合物よりなる群から選ばれる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
幹細胞が骨髄由来の幹細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
幹細胞が造血幹細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
幹細胞が、間葉、皮膚、神経、腸、肝臓、心臓、前立腺、乳腺、腎臓、膵臓、網膜及び肺の幹細胞よりなる群から選ばれる、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
hes−1及びgfi−1の発現が幹細胞で増加する、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
組織が骨髄を含んでなる、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
p16INK4aの抑制剤を得る工程を更に含んでなる、請求項1、13、27、及び40の何れか一項に記載の方法。
【請求項51】
請求項40に記載の抑制剤、及びp16INK4aを発現する幹細胞の対象の組織への移植を増進するために当該抑制剤を使用することに関連する説明書、を含んでなる包装された医薬品。
【請求項52】
p16INK4aを発現する幹細胞を包含する単離された細胞集団に、p16INK4aの抑制剤であると思われる薬剤を接触させること、及び
長期的に再増殖する細胞の総数の増加を検出すること、それにより幹細胞の自己再生を促進するp16INK4aの抑制剤を特定すること、を含んでなる、
当該抑制剤が幹細胞の自己再生を促進する、p16INK4aの抑制剤を特定する方法。
【請求項53】
p16INK4aの抑制剤がp16INK4aの発現を減少させる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
p16INK4aの抑制剤がp16INK4aの活性を低減する、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
細胞集団が非乳児期の対象から得られる、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
細胞集団が骨髄細胞を含んでなる、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
細胞集団が、Lin、cKit及びScalである、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
幹細胞が造血幹細胞を含んでなる、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
hes−1及びgfi−1の発現が幹細胞で増加する、請求項52に記載の方法。
【請求項60】
薬剤を得る工程を更に含んでなる、請求項52に記載の方法。
【請求項61】
p16INK4aの抑制剤、及び請求項1に記載の方法に従ってp16INK4aを発現する幹細胞の自己再生を促進するためにp16INK4a抑制剤を使用することに関する説明書を含んでなる、p16INK4aを発現する幹細胞の自己再生を促進するキット。
【請求項62】
p16INK4aの抑制剤、及び請求項13に記載の方法に従ってそれを必要とする非乳児期の対象において自己再生する幹細胞の量を増加させるためにp16INK4a抑制剤を使用することに関する説明書を含んでなる、それを必要とする非乳児期の対象において自己再生する幹細胞の量を増加させるためのキット。
【請求項63】
p16INK4aの抑制剤、及び請求項27に記載の方法に従ってp16INK4aを発現しない幹細胞の自己再生を維持するためにp16INK4a抑制剤を使用することに関する説明書を含んでなる、p16INK4aを発現しない幹細胞の自己再生を維持するためのキット。
【請求項64】
p16INK4aの抑制剤、及び請求項40に記載の方法に従って対象の組織へのp16INK4aを発現する幹細胞の移植を増進するためにp16INK4a抑制剤を使用することに関する説明書を含んでなる、p16INK4aを発現する幹細胞の対象の組織への移植を増進するためのキット。
【請求項65】
対象が、血小板減少症、貧血症、リンパ球減少症、リンパ漏、リンパうっ滞、赤血球減少症、赤血球変性疾患、赤芽球減少症、白赤芽球症、赤血球崩壊、サラセミア、骨髄線維症、血小板減少症、播種性血管内凝固症(DIC)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、HIV合併ITP、骨髄異形成症、血小板性疾患(thrombocytotic disease)、血小板増加症、好中球減少症、骨髄異形成症候群、感染症、免疫不全症、リウマチ性関節炎、ループス、免疫抑制、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、自己免疫性甲状腺炎、強皮症及び炎症性腸疾患よりなる群から選ばれる疾病を有する、請求項13に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−514967(P2009−514967A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540147(P2008−540147)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/043430
【国際公開番号】WO2007/056423
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(506286973)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (27)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITALCORPORATION
【住所又は居所原語表記】55 Fruit Street, Boston, MA02114 (US).
【出願人】(508137051)ユニバーシティ オブ ノースカロライナ アト チャペル ヒル (1)
【Fターム(参考)】