説明

広い温度範囲および圧力範囲において使用可能な液圧シリンダ密封システム

【課題】ロッドと液圧式往復運動シリンダのハウジングとの間の開口を介する流体のリークを阻止するのに使用される密封システムのシールコンポーネントの改良を提示する。
【解決手段】往復シリンダのシールシステムは、バッファシールと、ロッドシールと、ワイパシールとを含む。バッファシールは、シールボデーから半径方向内方へ且つ軸線方向へ延びる動的シールリップと上記シールボデーから半径方向外方へ且つ軸線方向へ延びる静的リップとを有し、上記静的リップが、上記シールボデーに結合するためのヒンジ部分を有し、上記ヒンジ部分が、上記静的リップの密封エッジに関して軸線方向へ離間されており、上記静的リップの上記密封エッジが、上記シールリップから半径方向外方に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、往復運動部材のシール、更に詳細に云えば、往復運動ロッドを密封するためのシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本項における記述は、単に、本開示に関する背景情報を提示するに過ぎず、先行技術を構成するものではない。
【0003】
各種の機械は、作業実施のため、液圧シリンダやピストン装置を使用する。ピストンは、典型的に、外部の液圧シリンダまで延びる往復運動ロッドに接続されている。液圧流体を液圧シリンダ内に保持するため且つ汚染物が液圧システムに入るのを阻止するため、シリンダハウジングに関して往復運動ロッドを密封する必要がある。
【0004】
液圧システムの往復運動ロッドを密封する密封システムの実施例は、米国特許No.5088745;6116613;6609716;6626437;および6896296に開示されている。これらの実施例のシステムの場合、往復運動ロッドの密封のため、典型的に、バッファシール、ロッドシールおよびワイパシールが設けてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5088745号公報
【特許文献2】米国特許第6116613号公報
【特許文献3】米国特許第6609716号公報
【特許文献4】米国特許第6626437号公報
【特許文献5】米国特許第6896296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、ロッドと液圧式往復運動シリンダのハウジングとの間の開口を介する流体のリークを阻止するのに使用される密封システムのシールコンポーネントの改良を提示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特に、往復運動ロッドを密封するためのバッファシールは、シールボデーから半径方向内方へ且つ軸線方向へ延びるシールリップとシールボデーから半径方向外方へ且つ軸線方向へ延びる静的リップとを有する環状シールボデーを含む。静的リップは、シールボデーに結合するためのヒンジ部分を有し、このヒンジ部分は、静的リップの密封エッジに対して軸線方向へ離間されている。静的リップの密封エッジは、シールリップから半径方向外方へ配置されている。静的リップのヒンジ部分は、ロッドが引込んだ場合(システムの高圧側へ引込んだ場合)、放圧を行うことができ、かくして、ロッドシールとバッファシールとの間に形成された圧力が最小化される。動的シールリップの軸線方向面部分は、内部に半径方向へ延びるノッチを含む。ノッチは、表面張力の成分としての付着効果にもとづきシールがミゾの半径方向壁に固着されるのを阻止し、バッファシールは、内蔵され、流体のもどり路を提供し、かくして、バッファシールとロッドシールとの間に形成される圧力を上昇するのに使用される通気システムの一部分をなす。バックアップリングは、バッファシールの組込部分であり、シールの主ボデーの構成に使用される材料が加え得る(ロッドとハウジングとの間に形成された間隙内への)押出抵抗よりも大きい押出抵抗を加えるのに使用される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の他の特徴によると、往復運動ロッドを密封するためのロッドシールは、シールボデーから半径方向内方へ且つ軸線方向へアングル状に延びる動的シールリップとシールボデーから半径方向外方へ且つ軸線方向へアングル状に延びる静的シールリップとを有する環状弾性シールボデーを含む。環状ミゾは、動的シールと静的シールとの間に半径方向へ形成されている。動的シールリップおよび静的リップの軸線方向面部分は、それぞれ、内部に、半径方向へ延びるノッチを含む。ノッチは、表面張力の成分としての付着効果にもとづきシールがミゾの半径方向壁に固着されるのを阻止し、ロッドシールは、内蔵され、システムに流体のもどり路を提供し、かくして、ワイパシールとロッドシールとの間に形成される圧力を軽減するのに使用される通気システムの一部分をなす。バックアップリングは、ロッドシールの組込部分であり、シールの主ボデーの構成に使用される材料が加え得る(ロッドとハウジングとの間に形成された間隙内への)押出抵抗よりも大きい押出抵抗を加えるのに使用される。
【0009】
他の適用分野は、ここに提示の記述から明らかであろう。ここで注意するが、記述および実施例は、説明目的のみを意図するに過ぎず、本開示の範囲の限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
ここに記載の図面は、説明目的のみのためであり、全く本開示の範囲の限定を意図するものではない。
【0011】
【図1】液圧コンポーネントの本開示の実施例にもとづくシールシステムの部分横断面図である。
【図2】本開示の原理にもとづくバッファシールの部分横断面図である。
【図3】本開示の原理にもとづくロッドシールの部分横断面図である。
【図4】本開示の原理にもとづくワイパシールの部分横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
すなわち、本発明の往復シリンダのシールシステムは、バッファシールと、ロッドシールと、ワイパシールとを含む。バッファシールは、動的シールリップと、ヒンジ部分から延びる静的リップとを含む。静的リップのヒンジ部分は、ロッドの引込時に、シールの外径を介する流体の流出を実現できる。動的シールリップの軸線方向面部分は、内部に、軸線方向へ延びるノッチを含む。ノッチは、ミゾの軸線方向壁に対するバッファシールの固着を阻止し、動的リップの機能に必要な伸張段階の間に、静的リップと動的リップとの間の環状ミゾへのエネルギ供給のための不変の流路を提供する。バックアップリングは、バッファシールの組込部分であり、大きい押出抵抗を加えるのに使用される。ロッドシールは、シールボデーから半径方向内方へ且つ軸線方向へアングル状に延びる動的シールリップとシールボデーから半径方向外方へ且つ軸線方向へアングル状に延びる静的シールリップとを有する環状シールボデーを含む。動的シールリップおよび静的リップの軸線方向面部分はそれぞれ、内部に、半径方向へ延びるノッチを含む。ノッチは、シールがミゾの半径方向壁に固着されるのを阻止し、ロッドシールは、内蔵され、伸張段階の間に静的リップおよび動的リップによって形成される環状ミゾへのエネルギ供給のために不変の流路を形成する。バックアップリングは、バッファシールの組込部分であり、大きい押出抵抗を加えるのに使用される。
【実施例】
【0013】
以下の記述は、全く例に過ぎず、本開示、用途または使用の限定を意図するものではない。図面を通じて、対応する参照符号は、同一のまたは対応する部分および特徴を示すものであると云うことを理解されたい。
【0014】
さて、図1〜4を参照して液圧コンポーネントのシールシステム(図1)を説明する。シールシステムは、ハウジングまたは他の支持構造内に設けたくぼんだ環状ミゾ18,20,22にそれぞれ支持されたバッファシール12と,ロッドシール14と、ワイパシール16とを含む。バッファシール12,ロッドシール14およびワイパシール16は、それぞれ、液圧システムの往復運動ロッド24または他の部材と係合するよう設計されている。
【0015】
特に図2を参照して説明する。バッファシール12は、往復運動ロッド24を密封し、シールボデー30から半径方向内方へ且つ軸線方向へ延びる動的シールリップ32を有する環状シールボデー30を含む。静的リップ34は、シールボデー30から半径方向外方へ且つ軸線方向へ延びる。シールボデー30,動的シールリップ32および静的リップ34は、ウレタン材料から一体に構成するのが好ましい。静的リップ34は、シールボデー30に結合するためのヒンジ部分36を有し、このヒンジ部分36は、静的リップ34の密封エッジ38に対して軸線方向へ離間されている。静的リップ34の密封エッジ38は、シールリップ32から半径方向外方へ配置されている。静的リップ34のヒンジ部分36は、シールの外側に沿って流体を流動させることができ、かくして、ロッド24が引込んだ場合(システムの高圧側40へ引込んだ場合)、放圧を行うことができ、かくして、ロッドシール14とバッファシール12との間に形成された圧力が最小化される。動的シールリップ32の軸線方向面部分32aは、内部に、半径方向へ延びる1つまたは複数のノッチ41を含む。これらノッチ41は、表面張力の成分としての付着効果にもとづきシール面32aがミゾ18の最寄りの半径方向壁に固着されるのを阻止し、バッファシール12は、内蔵され、動的リップ32の機能に必要な(図1の空気側への)伸張段階の間に環状ミゾ43へのエネルギ供給(加圧)のための不変の流路を提供する。半径方向ノッチ41は、ロッド24が引込んだ場合(システムの高圧側40へ引込んだ場合)、静的リップ34を介する通気を実施する放圧を可能にする。
【0016】
環状バックアップリング42は、シールボデー30から半径方向内方へ且つ動的シールリップ32に軸線方向へ隣接させて設けてある。バックアップリング42は、シールボデー30の半径方向外方へくぼんだポケット26に設置され、シールの一体部分をなす。バックアップリング42は、通常、ロッド24とハウジングとの間に形成された間隙内への材料のより大きい押出抵抗を提供するため、シールボデー30の材料に対比して押出抵抗を改善する材料から形成されている。
【0017】
動的シールリップ32および静的リップ34は、相互間に、環状チャンネル43を形成する。動的シールリップ32は、図2に示した如く、静的シールリップ34よりも大きい程度に軸線方向へ延びることができる。シールボデー30は、軸線方向厚さt1を有し、静的シールリップ34は、シールボデー30の軸線方向厚さt1よりも大きい長さt2を有する。即ち、距離t2は、概ね、環状チャンネル43の深さを定める。動的シールリップ32は、シールボデー30の軸線方向厚さt1よりも大きい軸線方向長さt3を有する。シールリップ32は、往復運動ロッド24と係合するのに適した鋭いエッジ部分44を含む。
【0018】
特に図3を参照して説明する。ロッドシール14は、往復運動ロッド24を密封し、シールボデー50から半径方向内方へ且つ軸線方向へアングル状に延びる動的シールリップ52とシールボデー50から半径方向外方へ且つ軸線方向へアングル状に延びる静的リップ54とを有する環状弾性シールボデー50を含む。環状ミゾ56は、動的シールリップ52と静的リップ54との間に半径方向へ形成されている。動的シールリップ52の軸線方向面部分52aおよび静的リップ54の軸線方向面部分54aは、それぞれ、内部に、半径方向へ延びる1つまたは複数のノッチ58を含む。ノッチ58は、表面張力の成分としての付着効果にもとづきシールがミゾの軸線方向壁に固着されるのを阻止し、ロッドシール14は、環状ミゾ20に設置されており、動的リップ52および静的リップ54の機能に必要な伸張段階(図1の空気側へのロッド24の移動)の間に環状ミゾ56へのエネルギ供給(加圧)のための不変の流路を提供する。かくして、ワイパシール16とロッドシール14との間に圧力が形成されている場合、図1に示した如く、ロッドが引込んだ際(システムの高圧側40へのロッド24の移動時)、静的リップ54を介する通気を実施する放圧を可能とする。動的シールリップ52および静的リップ54は、図示の如く、環状ミゾ56に関して概ね対称であってよい。対称配置は、軸線方向のロッドシール14のねじれを最小化するのに役立つ。なぜならば、対称配置は、それ自体、くぼんだ環状ミゾ20に中心を置く傾向を示すからである。
【0019】
環状バックアップリング60は、シールボデー50の半径方向外方へくぼんだポケット62に設置されている。環状バックアップリング60は、シールボデー50の軸線Aに関して角度をなす半径方向内面64を有する。バックアップリング60は、通常、ロッド24とハウジングとの間に形成された間隙内への材料のより大きい押出抵抗を提供するため、シールボデー50の材料に対比して押出抵抗を改善する材料から形成されている。
【0020】
図4を参照して説明する。ワイパシール16は、2つの動的シールリップ(72および78)を有する環状シールボデー70を含む。内方へ向くシールリップ72は、ロッド24との係合のため、システムの高圧側へ向って軸線方向および半径方向へ延びる(図1)。シールリップ72は、ロッド24と係合する鋭い接触エッジ74を含む。シールリップ72は、それを介して延びる1つまたは複数の通気路76を含む。通気路76は、接触エッジ74とワイパエッジ80との間に圧力が形成されるのを阻止する。通気路76は、更に、ロッドシール14とワイパシール16との間に圧力が形成されるのを阻止する。外方へ向くワイパリップ78は、ロッド24との係合のため軸線方向および半径方向へアングル状に延び、シールリップ72とは反対の軸線方向へ延びる。ワイパリップ78は、ロッド24と係合する接触部分80を有し、擦過作業にもとづき汚染物がシステム内に入るのを阻止するが、さらに、ロッド24の引込ストローク中に薄い潤滑被膜の再導入を実現できる。金属ケース82は、シールボデー70を囲み、ハウジング22に嵌合された場合、有効な外径シールを提供する。
【符号の説明】
【0021】
12 バッファシール
14 ロッドシール
16 ワイパシール
18,20,22,56 環状ミゾ
24 往復運動ロッド
26 ポケット
30,50,70 環状シールボデー
32,52 動的シールリップ
34,54 静的リップ
36 ヒンジ部分
38 密封エッジ
41,58 ノッチ
42,60 環状バックアップリング
43 環状チャンネル
72 シールリップ
74 接触エッジ
76 通気路
78 ワイパリップ
80 ワイパエッジ
82 金属ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動ロッドを密封するためのバッファシールにおいて、該バッファシールが、シールボデーから半径方向内方へ且つ軸線方向へ延びる動的シールリップと上記シールボデーから半径方向外方へ且つ軸線方向へ延びる静的リップとを有し、上記静的リップが、上記シールボデーに結合するためのヒンジ部分を有し、上記ヒンジ部分が、上記静的リップの密封エッジに対して軸線方向へ離間されており、上記静的リップの上記密封エッジが、上記シールリップから半径方向外方に配置されていることを特徴とするバッファシール。
【請求項2】
更に、上記シールボデーから半径方向内方に且つ上記動的シールリップに軸線方向へ隣接状態に配設された環状バックアップリングを含むことを特徴とする請求項1のバッファシール。
【請求項3】
上記動的シールリップおよび上記静的リップが、相互間に、環状チャンネルを形成することを特徴とする請求項1のバッファシール。
【請求項4】
上記環状シールボデーが、ウレタンから作成されていることを特徴とする請求項1のバッファシール。
【請求項5】
上記シールボデーが、軸線方向厚さを有し、上記静的シールが、上記シールボデーの上記軸線方向厚さよりも大きい長さを有することを特徴とする請求項1のバッファシール。
【請求項6】
上記動的シールリップが、上記シールボデーの上記軸線方向厚さよりも大きい軸線方向長さを有することを特徴とする請求項1のバッファシール。
【請求項7】
上記動的シールリップが、上記静的シールよりも大きい程度に軸線方向へ延びることを特徴とする請求項6のバッファシール。
【請求項8】
上記動的シールリップの上記軸線方向面部分が、内部に、複数の半径方向ノッチを含むことを特徴とする請求項6のバッファシール。
【請求項9】
上記動的シールリップが、往復運動ロッドと係合するのに適した鋭いエッジ部分を含むことを特徴とする請求項6のバッファシール。
【請求項10】
往復運動ロッドを密封するためのロッドシールにおいて、該ロッドシールが、上記シールボデーから半径方向内方へ且つ軸線方向へアングル状に延びる動的シールリップと上記シールボデーから半径方向外方へ且つ軸線方向へアングル状に延びる静的リップとを有し、環状ミゾが、上記動的シールリップと上記静的リップとの間に半径方向へ形成され、上記動的シールリップおよび上記静的リップの軸線方向面部分が、それぞれ、内部に、半径方向へ延びるノッチを含むことを特徴とするロッドシール。
【請求項11】
更に、上記シールボデーの半径方向外方へくぼんだポケットに設置された環状バックアップリングを含むことを特徴とする請求項10のロッドシール。
【請求項12】
上記環状バックアップリングが、上記シールボデーの軸線に関して角度をなす半径方向内面を有することを特徴とする請求項11のロッドシール。
【請求項13】
上記動的シールリップおよび上記静的リップが、上記環状ミゾに関して、概ね、対称であることを特徴とする請求項10のロッドシール。
【請求項14】
上記動的シールリップおよび上記静的リップの上記軸線方向面部分が、それぞれ内部に、複数の半径方向ノッチを含むことを特徴とする請求項13のロッドシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−520984(P2010−520984A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553599(P2009−553599)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/003202
【国際公開番号】WO2008/112215
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(596104016)フロイデンベルク−エヌオーケー ジェネラル パートナーシップ (6)
【出願人】(501479868)カール・フロイデンベルク・カーゲー (73)
【氏名又は名称原語表記】Carl Freudenberg KG
【住所又は居所原語表記】Hoehnerweg 2−4, D−69469 Weinheim, Germany
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】