説明

広い表面積接触用途のための高度に接触可能なナノチューブ電極

高多孔質導電性フィルムには、複数のカーボンナノチューブ、ナノワイヤーまたは両方の組み合わせが含まれる。高多孔質導電性フィルムは、25℃で0.1Ω・cm未満の電気抵抗および0.05〜0.70g/cmの密度を示す。フィルムは、0.50〜0.85g/cmの密度および25℃で6x10−3Ω・cm未満の電気抵抗を示しうる。カーボンナノチューブまたはナノワイヤーおよび犠牲ナノ粒子または微粒子を用いてコンポジットフィルムを形成することによりこれらの高多孔質導電性フィルムを形成する方法もまた含まれる。次いで、少なくとも一部のナノ粒子または微粒子は、コンポジットフィルムから除去され、高多孔質導電性フィルムを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高多孔質ナノチューブフィルム、かかるフィルムを形成する方法、およびかかるフィルムの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
電気接触を必要とする多数のデバイスおよび用途において、必要な接触は、電極と接触を受ける物質の間の本質的平面(2D)インターフェースで生じる。長い長さスケールで平面的に見えるものは、一般に、短い長さスケールでいくつかの波形を得る。しかしながら、該波形は、一般に、インターフェースに特異的に設計された特徴というよりむしろ物質がもたらした当然の結果である。しかしながら、多数の用途は、3次元分散型である電気接触から利益を受けうる。
【0003】
3次元分散型接触から利益を受けうる用途の例として、水からの水素の産生および水素燃料電池の陽極でのプロトン発生などの、電気化学反応についての電極が挙げられる。かかる用途において、増加した表面積電極は、電気化学的に生成された生成物の増加を提供する。スーパーコンデンサについて、電極表面積の増加は、デバイス静電容量を非常に増加させる。太陽電池または光検出器などに関する、他の用途は、陰極に対する光生成電子を促進する内蔵型電位を有する半導体結合領域内で光を吸収しなければならない場合、3次元分散型電極が提供しうる広範な活性化領域体積から同様に利益を受けうる。エレクトロルミネセント素子用途について、活性物質に対する増加した表面積電気接触は、同時に発光の増加を伴って、増加した電流注入を提供しうる。
【0004】
最近になって、単層カーボンナノチューブ(SWNT)のフィルムは、伝導性であり、広範囲の用途についての有望な電極として持ち上がっている。かかるフィルムは、本発明者らの一人を含む一群の発明者らの公開された米国出願番号第20040197546号(以下、「’546出願」)に記載の方法を含む種々の方法により製造されうる。’546出願は、出典明示によりその全体を本出願の一部とする。つまり、’546出願に記載の方法は、あまりに小さすぎてSWNTを通過できない細孔を有する濾過膜の表面上のSWNTの界面活性剤懸濁液の濾過を含む。ナノチューブは、フィルムを形成する膜の表面で蓄積する。その後、洗浄し、残存表面活性剤を除去する一方、乾燥し、ナノチューブフィルムを強化する。フィルムの選択基質に対する移動は、移動が行われる基質により許容されうる溶媒中でその溶解を可能にする膜媒体の適当な選択を必要とする。かかる移動は、一般に、膜支持ナノチューブフィルムを基質に接着させ、次いで、選択溶媒中で膜を溶解することにより進行する。
【0005】
そうして製造されたSWNTフィルムは、ナノチューブ間の細孔が、重複および交差ナノチューブ束により定義される蛇行性経路の、開放細孔率を有する。ナノチューブは、約10nmの典型的直径を有する、直径約3ないし20nm、数〜数百の並行ナノチューブの幅にわたって種々のナノチューブを各々有する、束中に自己組織化される傾向にある。図1は、典型的70nm厚のフィルム表面の走査原子間力顕微鏡法(AFM)画像(チップ−サンプル回旋だからこそ、束直径は約10nm以上に見える)。該開口細孔率は、いくつかの所望の、高表面積、別の物質との3次元分散型電気接触を有する構造を提供しうる。
【0006】
図1の試験は、交差ナノチューブ束間の空隙が直径で数十〜数百ナノメートルの大きさを有することを示唆する。しかしながら、かかる表面画像からの細孔体積の推測は、誤った方向に導く。’546出願に開示のフィルム形成工程において、ナノチューブ束は、希釈、水性懸濁液中で均一に分散される。平面濾過膜表面上で得る第1の束は、本質的に表面に平行となる。フィルムは、(それらの前に析出したものを通過するナノチューブ束を伴って)定率で大きくなるので、その後、析出した束は同一平面方向で得る。結果は、フィルム形態であり、ここで、ナノチューブは面方向にランダムであるが、2軸延伸ポリマーフィルムと同様の2次元異方性を有する、積層面になる。このことは、濾過膜表面に垂直の方向(フィルムの厚さ方向)における、束間の細孔の平均次元が、ほんのわずかなナノチューブ束直径のものであることを示唆するであろう。しかしながら、該分析は、ナノチューブ束が硬性ロッドであることを想定する。
【0007】
ナノチューブ柔軟性、およびファンデルワールス接触による表面エネルギー最小化は、これらの細孔体積をさらに減少しようと作用する接触を最大にする。利用可能な空隙率の定量的測定は、(原型的直径1.356nmの(10,10)ナノチューブを用いて)ナノチューブの六方最密配列の理論密度と濾過法で形成されたSWNTフィルムの実験的に得られた密度との比較により得られる。前者は約1.33g/cmであり、一方、後者は約0.71g/cmになるように測定された。したがって、’546出願に記載の製造時の濾過法は、その理論的最大密度の約53%を達成するSWNTフィルムを製造する。該空隙率は、一般に、フィルムに通して均一に分散されるので、平均細孔体積は、一般に、平均束体積よりはるかに小さい大きさである。
【0008】
’546出願に記載の工程を用いて製造されるフィルムの空隙率に電気活性媒体を浸透させ、電極としてナノチューブを用いることに有用でありうる。しかしながら、小さい大きさのこれらの細孔は、3次元分散型電極用途についての該構造の有用性を制限する。小さい細孔径に関連する制限は、特異的用途に依存し、2つの典型的制限は、以下のとおりである:
【0009】
1.電気化学的電極として、小孔は、取り出さなければならない反応生成物の逆電流に対して、化学種をフィルムの体積中に透過させるのに低い力学を得る。これは、所望の種の生成率を制限するであろう。
【0010】
2.ナノチューブ−半導体インターフェースで内蔵型電位を生じる半導体で浸透する光起電性電極として、細孔を定義するナノチューブが相互のデバイ長近接内のどこにあろうとも、その電位は、電位勾配を減少させながら、相互にスクリーンするであろう。電位勾配がインターフェースから離れて電荷移動に対する起電力を提供するので、かかるスクリーニングは、光電流、したがって、光起電装置により生じた力を制限するであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0197546号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、’546出願に記載の方法により製造されるフィルムに比べて高水準の細孔率、著しく高い細孔体積、および表面積のフィルム体積に対する高比率を有するナノチューブおよび/またはナノワイヤーフィルム、あるいはスプレーコーティングまたはラングミュア−プロジェットアセンブリーなどのナノチューブフィルム製造の他の方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
電極用途におけるナノチューブフィルムの想定した利点の一つは、そのナノスケール幅から得る、電気接触についての高表面積である。しかしながら、本発明者らにより認識されるように、ナノチューブフィルムは、低い細孔率を有するので、予測されうるより接触可能な表面積は小さい。該理解に基づき、ナノチューブまたはナノワイヤー表面積の近接性を増加させ、その結果、ナノチューブまたはナノワイヤーと浸透物質との間の界面接触面積および体積を最大にするための高多孔質ナノチューブまたはナノワイヤーフィルムを形成する方法が本明細書に記載されている。
【0014】
多孔質カーボンナノチューブまたはより一般的ナノワイヤーフィルムを形成する方法は、(i)カーボンナノチューブまたはナノワイヤーおよび(ii)犠牲ナノ粒子または微粒子を含むコンポジットフィルムを形成する工程、およびコンポジットフィルムから少なくとも一部の犠牲ナノ粒子または微粒子を除去し、高多孔質ナノチューブまたはナノワイヤーフィルムを形成する工程を含む。本発明に記載のフィルムは、ナノチューブまたはナノワイヤーフィルムの体(体積)内で改善された細孔体積および高水準の接触可能な表面積を提供する。得られたフィルムは、高細孔率ならびに高伝導率両方を提供することを見出している。
【0015】
本発明のより十分な理解ならびにその特徴および利点は、添付の図面と一緒に以下の詳細な記載の総説で得られるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、’546出願に開示の方法に基づく厚さ70nmのSWNTフィルムの走査AFM画像である。色の度合い、走査画像の縦の変化は、縦軸(右側)の中央近辺の小さな位置のみを占有する。
【図2】図2(A)および(B)は、ポリスチレンスフィアの溶解前および後の本発明に記載のポリスチレンスフィア/SWNTコンポジットフィルムの走査AFM画像である。全ての目盛りは、図1と同一である。図1に示される走査画像に比べると縦の変化ははるかに大きいことに留意する。
【図3】図3(A)−(C)は、標準SWNTフィルム、本発明に記載のスフィア溶解前、およびスフィア溶解後、各々のコンポジットポリスチレンスフィア/SWNTフィルムの走査傾斜AFM画像表面プロットである。
【図4】図4(A)および(B)は、ナノ粒子溶解前および後、各々のコンポジットナノ粒子/SWNTフィルムのスキャンされた走査型電子顕微鏡写真(SEMS)である。高解像度AFMイメージングは、図4(b)においてコーティングに対する細い部分であるように見えるものは、実際には、溶解能の悪いナノチューブであることを示す。
【図5】図5は、一方が2種の多孔質SWNTフィルム電極からなり、他方が2種の標準SWNTフィルム電極からなる、2種の電解コンデンサに対する時間関数として(μCoulで)蓄積された電荷量を比較する。示される曲線は、標準フィルムデバイス上の対応する瞬間電荷により分割される多孔質フィルムデバイス上の瞬間電荷である。幾何学的表面積当たりのナノチューブの同一質量は、2種のデバイス間の相違のみがSWNT電極フィルムの形態である(多孔質対標準)ように各デバイス中で電解質(0.1M KCl)に曝される。
【図6】図6は、図5のデータから、2秒の放電サイクル中、時間関数として、標準フィルム上の電荷に対する多孔質フィルム上の電荷の比率を示す。多孔質膜デバイスは、標準膜デバイスのものを42%超える静電容量を有するとみなされる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一の実施態様において、均一粒子サイズ(平均サイズの±5%と均一に定義される)の犠牲粒子を利用する。別の実施態様において、ナノ粒子および微粒子両方を含む分布など、多数の粒子サイズが用いられる。
【0018】
本明細書に用いられる、「ナノ粒子」は、100nm未満の少なくとも一の軸を有する粒子の意味で用いられる。本明細書に用いられる、「微粒子」は、100nm〜100μmの少なくとも一の軸を有する粒子の意味で用いられる。ナノ粒子または微粒子両方が一般的に本発明に用いられうるけれども、かかる粒子は便宜上、ナノ粒子として本明細書に表されるであろう。
【0019】
本発明に有用なナノ粒子は、それを含めて、10ナノメートル〜100ミクロンの軸を有しうる。本発明に有用なナノ粒子は、10ナノメートル〜100ミクロンの直径を有しうる。
【0020】
一の実施態様において、形成工程は、カーボンナノチューブまたはナノワイヤーおよび犠牲ナノ粒子を共析出することを含む。別の実施態様において、形成工程は、カーボンナノチューブまたはナノワイヤーの析出および犠牲ナノ粒子の析出を交互に行うことを含みうる。
【0021】
さらに別の実施態様において、形成工程は、’546出願に記載の濾過法に基づく濾過法を含む。濾過法は、多孔質膜を提供し、犠牲ナノ粒子と一緒に複数のナノチューブまたはナノワイヤーをナノチューブまたはナノワイヤーおよび犠牲ナノ粒子を懸濁液の凝集から阻止するための少なくとも1種の表面安定剤を含む、溶液中に分散し、溶液を膜に適用し、溶液を除去することを含み、ここで、ナノチューブまたはナノワイヤーおよび犠牲ナノ粒子は、膜表面上のコンポジットフィルムを形成するために多孔質膜の表面上に強要される。
【0022】
濾過法を用いて、犠牲ナノ粒子が大きすぎて濾過膜を浸透することはできないが、フィルム形成中にナノチューブと共析出するには十分小さくなるように犠牲ナノ粒子および膜を選択する。濾過法のフィルム形成工程は、’546出願に記載のナノチューブを伴う対応工程に密接に付随する手法におけるナノ粒子を用いて進行しうる。
【0023】
得られたフィルムを過剰の界面活性剤を除去するために洗浄し、乾燥するとすぐに、膜表面上のナノチューブフィルムを含むナノチューブ間にランダムに封入された犠牲ナノ粒子または微粒子のコンポジットフィルムを含む。ナノチューブフィルム内の空隙体積の増加をもたらすために、空隙形成工程は、犠牲ナノ粒子をフィルムから除去する場合に利用される。
【0024】
犠牲ナノ粒子は、溶解、蒸発、熱分解、酸化またはエッチング工程を含む種々の方法によりコンポジットフィルム形成後に除去されうる。濾過法の場合において、除去工程は、フィルムの基質への移動前、中または後に生じうる。
【0025】
溶解と称される、第1除去の実施態様において、用いるために選択される犠牲ナノ粒子または微粒子は、フィルムを形成する濾過膜として同一溶媒中で溶解される。犠牲ナノ粒子は、フィルムの基質への移動における膜の溶解中に同時に溶解する。
【0026】
エッチングと称される、第2除去の実施態様において、用いるために選択される犠牲ナノ粒子がフィルムを形成する濾過膜を溶解するために用いられる溶媒中で不溶であるならば、フィルムを含有する粒子は、基質に移動され、次いで、犠牲ナノ粒子が溶解、エッチングまたは揮発除去され、所望の高多孔質のフィルムが得られうる。
【0027】
第3除去の実施態様において、膜が、犠牲ナノ粒子除去法により悪影響を受けないならば、粒子は、最初に、溶解、エッチングまたは揮発除去され、次いで、多孔質フィルムは基質に移動され、次いで、膜を溶解しうる。
【0028】
さらに、方法は、’546出願に記載のSWNTフィルムをドープし、n−ドープまたはp−ドープフィルムのいずれかを提供する工程を含みうる。ドーパメントは、ハロゲン、アルカリ金属またはより複合的分子から選択され、その全ては、電荷移動するとナノチューブにイオン結合しうるか、または、電荷移動と一緒に、非共有piスタッキング相互作用により結合しうるか、あるいは、最終的に共有結合するので、電荷移動をもたらしうる。
【0029】
フィルムの伝導率は、細孔率に依存する。本発明を実施するのに必要ではなく、該理論に結び付けるのに望ましくないけれども、本出願人らは、本発明に記載のフィルムの電気的性質を明らかにする、操作可能であると考えられるメカニズムを提供する。ナノチューブフィルムにおける電流に対する主要なインピーダンスは、ナノチューブからナノチューブまでの電荷移動に生じる(チューブ上の抵抗性は、前者が本質的にごくわずかであるチューブ−チューブ「接触抵抗性」よりかなり小さい)。さらに、フィルム中の2種のナノチューブ間の重なりを小さくすればするほど、「接触抵抗性」は逆に接触領域に依存するのでそれらの間の電荷移動はより一層大きくなる。その結果として、一方のフィルムが’546出願に記載の標準平面フィルムであり、他方が本明細書に記載のとおりに製造された多孔質フィルムである、同一幾何学的面積の2種のフィルムを、同一量(質量)のナノチューブから製造すれば、その結果、多孔質フィルムは、より多量の細孔を包含するために、それ自体を多量に包含する。ナノチューブの量は同一であるので、これが起こりうる唯一の方法は、多孔質フィルム中のナノチューブが標準平面フィルム中に存在するより相互の重なりが少ないかどうかである。その結果として、多孔質フィルムは、より高いシート抵抗性を有するであろう。しかしながら、以下の実施例に示されるように、標準から多孔質フィルムになることにおけるシート抵抗性の変化は、その有用性を低下させる程度まで増加されない。
【0030】
上記のように、先行技術フィルムは、ナノチューブは、フィルム面に平行する傾向にある形態を有する(2−D規則化)。しかしながら、多孔質フィルム中のナノチューブは、フィルム面に垂直である多数のナノチューブが適当な長さを有するより3次元形態を有する。このことは、コンポジットフィルム中にて、犠牲ナノ粒子の溶解前に、ナノチューブが、その形成におけるコンポジットフィルム面に垂直である側面を含む、ランダム配列における全ての側面上の犠牲ナノ粒子を包含するという事実により必要とされる。コンポジットフィルムを形成するとすぐに、ナノチューブは、ファンデルワールス力により相互に閉じ込められる。犠牲ナノ粒子が除去される場合(例えば、溶解により)、いくつかの緩和(粒子径による程度)があるが、ナノチューブは堅く、一緒に閉じ込められているので、3次元フィルム形態の変化は小さくなりうる。
【0031】
一の実施態様において、フィルムは本質的に、ナノチューブまたはナノワイヤー(例えば、>95%)からなる。しかしながら、他の実施態様において、本発明に記載のフィルムは、ナノチューブおよびナノワイヤーの混合物または所望の任意の比率の異なる物質のナノワイヤーの混合物を含みうる。フィルムはまた、犠牲的ではなく、最終多孔質フィルムの機能性に関与するいくつかの画分ナノ粒子において含みうる。
【0032】
多孔質フィルムは、標準ナノチューブフィルムの光透過性の大部分を保持する。しかしながら、透過性の程度は、フィルムの形成に用いられる犠牲ナノ粒子径に依存する。幾何学的表面積当たり同一質量のナノチューブ物質を含有する1種が標準および1種が多孔質の2種のフィルムについて、各フィルムを通過するのに吸収される入射光の量が(一次的に)同一であるように、吸収性、ナノチューブ物質、フィルムを介する経路長は、同一(ナノチューブ方向依存性コンプリケーションを無視すること)である。にもかかわらず、多孔質フィルムにより伝達される光は、前方向のビームから入射光を分散させることによってより小さくなるであろう。目視観測において、かかる分散は、いくつかの多孔質フィルムの陰影(haziness)として生じる。フィルムは、異なる屈折率を有する異種物質(ナノチューブおよび空気で充填された空隙)からなるため分散が生じる。分散の程度は、放射線の波長と比べて、屈折率の不均一性の大きさに依存する。多孔質フィルム中の約200nm空隙について、不均一性の大きさはそれ自体、あまりに小さすぎて可視光の分散をもたらすことができないが、200nm空隙の密度の統計的変化はそれ自体、いくつかの分散を誘導し、200nmの統計的ナノ粒子で製造されたフィルムを濁らせるのに十分な大きさである。用途によって、かかる分散は、必ずしも不利益ではない。太陽電池用途において、光吸収のさらなる機会を得るため、フィルムを通して光を分散することは、実際には有益である。濁っているのが望ましくない場合の用途において、フィルムは、典型的には、空気以外の物質で浸透されるであろう。かかる物質の屈折率は、ナノチューブのものに当然近くてもよく、またはそうするように合わせてもよい。かかる屈折率整合は、分散に関与する界面反射を回避するので、任意の濁りを回避する。この具体例として、メタノール中に浸された多孔質フィルム(200nmの犠牲粒子を用いて製造される)により提供され、標準フィルムと区別できない透明度を示す(すなわち、濁っていない)。
【0033】
本発明に記載のナノチューブまたはナノワイヤーフィルムの体内に改善された細孔体積および高水準の接触可能な表面積から利益を受けうる広範囲の可能な分散型電極用途である。例えば、燃料電池の使用を含む電気化学反応に関与する用途は、本発明から利益を受けうる。また、コンデンサおよびバッテリーなどの電荷蓄積に関与する用途は、本発明から利益を受けうる。そのため、光起電力変換などの電荷注入に関与する用途および発光に関与する用途は、本発明から利益を受けうる。最終的に、本発明から利益を受けうる生成物には、限定されるものではないが、スーパーコンデンサ、バッテリー、燃料電池電極、太陽電池、および固体照明が含まれる。
【実施例】
【0034】
下記の実施例は、説明するためのみに提供され、本発明の範囲を決して定義するものではないことを理解すべきである。
【0035】
濾過法の実施態様を用いる本発明の実験として、ナノ粒子は、ポリスチレンナノ粒子(約200nmの均一直径)および混合セルロースエステルの濾過膜(100nm孔)を含み、アセトンに可溶性である両方を利用した。用いられるナノ粒子の量は、六方最密(hcp)スフィアの約3種の単分子層(ナノチューブを有しない約520nm厚さ)を形成すると推定されることに基づいていた。用いられるナノチューブの量は、ナノ粒子が存在しない場合には厚さ約80nmのフィルムを形成するように計算された。図2(a)は、膜表面上(フィルム移動前)のポリスチレンスフィアの溶解前のコンポジットフィルム表面の走査AFM画像を示す。図2(b)は、ポリスチレンスフィアが溶解する工程の間に、マイラー基質に対するフィルムの移動後のフィルムの走査画像を示す。図3(a)−(c)は、図1,2(a)および2(b)の各フィルムの走査傾斜AFM画像表面プロットである。
【0036】
コンポジットフィルム中のナノ粒子の溶解、次いで、任意の残存ポリマーを除去するための溶媒洗浄の後に、フィルムをイメージングのために乾燥することが知られている。液体は乾燥させるように表面張力を及ぼし、これらの力は可動性ナノ構造を崩壊させる傾向にあるので、乾燥前のフィルム細孔率および接触可能な表面積は、得られた画像で観測されたものより一層大きい。接触の最大表面積を、ナノチューブと多孔質ナノチューブフィルムに浸透させるべきである第2物質との間に必要とするならば、可能であれば、ナノ粒子の溶解後にナノチューブフィルムを乾燥することなくかかる浸透が生じることが重要である。
【0037】
標準フィルムと多孔質フィルムとの間のシート抵抗性の相違を測定するために、同等の幾何学的面積の標準(平面)フィルムおよび多孔質フィルム両方をSWNT物質の同一質量から形成した。平面フィルム厚は約80nmであり、そのシート抵抗性(表面抵抗率)は、約75Ω/平方となるように測定された。硝酸により精製されたナノチューブが、p型導体となる酸によりドープされるが、ドーピングの程度が時間とともに変化しうることにも注目すべきである。したがって、ナノチューブの抵抗率は、その精製工程に依存する。公正な比較を確保するために、平面かつ多孔質フィルムを、同一群のナノチューブ物質から同時に製造した。該実施例の多孔質フィルムは、200nmポリスチレンスフィアを用いて製造され、フィルムはその基質(両フィルムのマイラー)に移動する間に溶解除去された。フィルムは、幾何学的表面積当たりのナノチューブの同一質量を得たけれども、多孔質フィルムシート抵抗性が100Ω/平方になるように測定された。予測されるように、これは、標準フィルムのシート抵抗性(75Ω/平方)より大きいが、多孔質フィルム厚が、平面フィルムより約8倍大きい、厚さ約600nmであることはあまり大きな違いであるとは考えられていない。したがって、多孔質フィルムは、標準フィルムの伝導性の主要分画を保有しうる。
【0038】
多孔質フィルム中の改善された接触可能表面積の定量的測定として、電解コンデンサは、標準フィルムデバイス中の電極として2種の標準SWNTフィルムおよび第2の多孔質フィルムデバイス中の電極として2種の多孔質フィルムを用いて製造された。各電極は幾何学的表面積当たり同質量のナノチューブ物質を用い、電解質(0.1M KCl)に曝された各電極の幾何学的面積は、0.866cmであった。標準フィルムは、厚さ80nmを有していた。多孔質フィルムは、(それらのみで520nmのhcp最密厚になるであろう)200nmポリスチレンスフィアと製造された、上記のものと同種類であった。コンデンサは、各々、180秒間0.5Vに充填された。180秒後に、電位を即座に(5ミリ秒以内に)2秒間0ボルトに切り替え、その後、電位を2秒間0.5Vに切り替えた。図5は、2秒の放電と2秒の充電サイクルの間の各コンデンサ上の電荷の量を比較する。図6は、放電サイクルについて多孔質フィルム上の電荷の標準フィルム上の電荷に対する比率をプロットする。約1.25秒で達成された1.42の比率は、これらの多孔質フィルムが、標準フィルムより42%以上の接触可能表面積を有することを示す。多孔質および標準フィルムは、同質量のナノチューブを同幾何学的表面積を超える同電解質に曝すので、測定は、標準フィルム中の表面積の大部分が接触可能ではなく、本明細書に記載の方法により著しく増加しうるという明確な証拠を提供する。
【0039】
さらなる実施例として、複数のさらなる犠牲粒子システムおよびナノ粒子除去法は、以下に記載される:
1.HFで溶解されたシリカナノ粒子。
2.酸で溶解された金属ナノ粒子、例えば、HClで溶解された亜鉛ナノ粒子。
3.天井温度効果を用いてポリマー粒子の脱重合。
【0040】
本発明が、その好ましい具体的な実施例とともに記載されている場合、前述の説明ならびにその後の実施例は、説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内の他の態様、利点および修正が、本発明に関することは当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質カーボンナノチューブまたはナノワイヤーフィルムを形成する方法であって、
カーボンナノチューブまたはナノワイヤーおよび犠牲ナノ粒子または微粒子を含むコンポジットフィルムを形成すること、および
少なくとも一部の該ナノ粒子または微粒子を該フィルムから除去し、高多孔質ナノチューブまたはナノワイヤーフィルムを形成することを特徴とする、方法。
【請求項2】
形成工程が、該カーボンナノチューブまたはナノワイヤーおよび該微粒子または該ナノ粒子の共析出を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
形成工程が、該カーボンナノチューブまたはナノワイヤーの析出および該微粒子または該ナノ粒子の析出を交互に行うことを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
形成工程が、
多孔質フィルムを得ること;
複数の該ナノチューブまたはナノワイヤーおよび微粒子または該ナノ粒子を該ナノチューブまたはナノワイヤーを懸濁液からの凝集から阻止するための少なくとも1種の表面安定剤を含む、溶液中に分散させること;
該溶液を該フィルムに適用すること、および
該溶液を除去することを特徴とし、ここで、該ナノチューブまたはナノワイヤーおよび微粒子または該ナノ粒子が、該多孔質フィルムの表面上に強要され、該フィルム上に位置する該コンポジットフィルムを形成する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
25℃の該多孔質フィルムの電気抵抗が、6x10−3Ω・cm未満であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該ナノチューブまたはナノワイヤーが、95%より大きい単層カーボンナノチューブ(SWNT)を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
該形成工程が、噴霧析出方法を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
該形成工程が、電着方法を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
該形成工程が、ラングミュア−ブロジェット析出方法を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項10】
該ナノ粒子または微粒子が、均一な大きさを有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
該ナノ粒子または微粒子が、種々の大きさを有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項12】
該ナノ粒子または微粒子の表面上の該ナノチューブまたはナノワイヤーのアセンブリーを強化する該形成工程前にナノチューブまたはナノワイヤーに対する特異的アフィニティーを有する種で該ナノ粒子または微粒子の表面を機能化することをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項13】
該機能化工程が、一定期間、該ナノ粒子または微粒子を該ナノチューブまたはナノワイヤーで混合およびインキュベートすることを含むことを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
該機能化工程前に、該ナノ粒子または微粒子の相分離を該ナノチューブまたはナノワイヤーで阻止する添加物である、該表面安定剤以外の添加物を該懸濁液に加えることをさらに特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項15】
該添加物が、強酸を含むことを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
該ナノ粒子または微粒子が、液体に関与する方法で除去されることを特徴とし、該フィルムが、後で用いる次の処理のために浸され続ける、請求項1記載の方法。
【請求項17】
複数のカーボンナノチューブ、ナノワイヤー、または両方の組み合わせを特徴とする、伝導性高多孔質フィルムであって、25℃で0.1Ω・cm未満の電気抵抗および0.05〜0.70g/cmの密度を提供するところの、フィルム。
【請求項18】
該密度が、0.50〜0.85g/cmであり、該電気抵抗が、25℃で6x10−3Ω・cm未満であることを特徴とする、請求項17記載のフィルム。
【請求項19】
該ナノチューブまたはナノワイヤーが、95%より大きい単層カーボンナノチューブ(SWNT)を含むことを特徴とする、請求項17記載のフィルム。
【請求項20】
該フィルムが本質的に該ナノチューブからなることを特徴とする、請求項17記載のフィルム。

【図1】
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【図2(A)】
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【図2(B)】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図3(C)】
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【図4(A)】
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【図4(B)】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−510945(P2010−510945A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528441(P2009−528441)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/078230
【国際公開番号】WO2008/033889
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(508055353)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション、インク. (10)
【Fターム(参考)】