説明

広幅写真感光材料用遮光部材

【課題】 細幅裁断時に張力を掛けてもパイル植え込み部の歪みの発生を防止した広幅遮光部材の提供。
【解決手段】 織り構造の基布と、該基布に植え込まれたパイルと、両端に耳部とを有する広幅写真感光材料用遮光部材において、前記基布と該耳部とはフィラメント糸からなる経糸と緯糸とを有する同じ織り構造を有し、前記耳部を構成している該経糸の弾性率が、前記基布を構成している前記経糸の弾性率に対して50〜100%であることを特徴とする広幅写真感光材料用遮光部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパイルを有する遮光部材に関し、詳しくは写真感光材料の収納容器に取り付けられる広幅写真感光材料用遮光部材(以下、単に広幅遮光部材ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にロール状写真感光材料は使用するに際して、出し入れ自在の遮光容器に収納された状態で使用されている。例えば、35mmロールフイルムは、筒状の胴部と、該胴部内に収納されフイルムをロール状に巻くための巻芯としてのスプールと、胴部の両端を閉じるキャップとから構成され、出入口からフイルムの巻き出し、巻き入れが可能なパトローネと呼ばれる遮光容器に収納し使用されている。そして、出入口にはパトローネ内部の遮光性を保つために写真感光材料用遮光部材(以下、単に遮光部材ともいう)が設けられている。
【0003】
遮光部材は、パトローネ内部の遮光性を保ち、収納されているロール状写真感光材料の感光を防止できることは勿論、ロール状写真感光材料の引き出し及び巻き戻し操作が円滑にできることを必要とするため、基布表面にパイルを有し、かつ柔軟な材料からなる遮光布帛構造物が用いられている。遮光容器に使用される遮光部材としては、特開昭62−125346号、同62−65036号、同62−201432号、特開平2−15254号に記載されている織方式、特開平4−73642号に記載されている編み方式、特開平152114号、同9−120116号に記載されている起毛方式で作製された物が知られている。これらの方式の内、生産性の面から織方式の遮光部材が多く使用されている。
【0004】
従来、この種の遮光部材の構造としては、例えば、経糸と緯糸とから織られた基布を重ねた織布をパイル糸で織り込み連結し、二枚重ねの織布とし、次いで、上下の織布の略中央付近のパイル糸を布面に沿って裁断することによって製造することが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
従来の織方式による広幅遮光部材について図3で説明する。
【0006】
図3は従来の広幅遮光部材の概略図である。図3の(a)は広幅遮光部材の概略平面図である。図3の(b)は図3の(a)のA−A′に沿った概略部分断面図である。
【0007】
図中、1は広幅遮光部材を示す。広幅遮光部材1は緯糸101aと、経糸101bとを有する織構造の基布101と、緯糸101aに掛けられパイル糸102aにより形成されたパイル102を有するパイル植え込み部103と、基布101と同じ織構造を有し、パイルが無い耳部104a(104b)とを両端に有している。
【0008】
本図に示される遮光部材は、パイルが写真フイルムに接触することにより遮光するものであり、また柔軟性や写真フイルムの引き出し抵抗も通常の使用には十分耐え得るものとなっている。
【0009】
本図に示される広幅遮光部材を遮光容器のロール状写真感光材料の出し入れ口に使用する場合は、パイル植え込み部を織り方向に、一定の幅に裁断しリボン状とした後、出し入れ口の大きさに合わせて適宜小片に裁断した状態で接着剤により貼着している。遮光容器に使用する遮光部材の生産方式としては、生産効率の面から300〜1000mmの図3に示される様な広幅遮光部材を作製し、必要に応じた幅に裁断して使用しているのが一般的となっている。
【0010】
遮光容器に使用するために裁断される遮光部材には、1)裁断面からパイルの脱落が無いこと、2)幅寸法が安定であることが要求されている。裁断面からパイルの脱落が生じた場合、ロール状写真感光材料に付着してしまうことで、故障の原因になる。又、幅寸法が安定しない場合、ロール状写真感光材料の引き出し性が重くなったり(幅が広い場合)、引き出し口の遮光性が劣り、容器内のロール状写真感光材料を曝射させてしまう。
【0011】
例えばパトローネに使用する場合は、約9mm、10mm幅に裁断し、リボン状とした遮光部材を長さ40〜50mmの小片に裁断し、パトローネのフィルム引き出し口に貼着して使用している。パトローネの場合、パトローネの構造から幅ゆとりがないこと及びフィルムはプリントする際、拡大するためゴミ付着を避けなければならないため、パイル脱落に対してに特に注意を払って、広幅遮光部材から細幅へ裁断されている。一般的に、広幅遮光部材では、パイル部(基布にパイル糸が植え込まれている部分)とパイル部の両側に耳部(基布にパイル糸が植え込まれていない部分)が存在する。このため、パイル部は基布の目が粗くなっているため基布が伸び易く、耳部は延び難くなっている。
【0012】
広幅遮光部材から細幅へ裁断する方法としては、例えば、特開平10−104798号に記載されている様に、パトローネの遮光部材に使用する細幅の遮光部材をロール状の広幅テレンプ材を連続的に給装し、加熱しながら連続的に裁断する方法が知られている。
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載の広幅遮光部材を特開平10−104798号に記載されている裁断方法で細幅に裁断する時、広幅遮光部材の蛇行による裁断寸法のバラツキを防止するため張力を広幅遮光部材の全面に掛けながら行うのであるが、特許文献1に記載の従来の広幅遮光部材は次の問題点を有している。
【0014】
1)広幅遮光部材を細幅へ裁断する時、全幅に張力を掛けると、パイル部と耳部とで延び率に差が生じることで、次の現象が発生し、裁断幅が不安定となる。例えば、パイル部の伸びが耳部の伸びより大きい場合、パイル部が弛み裁断幅が不安定となる。又、パイル部の伸びが耳部の伸びより小さい場合、耳部に弛みが発生し、パイル部の両端部の裁断幅が不安定となる。
【0015】
2)裁断幅が不安定となることで、これらの細幅に裁断した遮光部材を遮光容器のロール状写真感光材料の出し入れ口に使用した場合、安定した遮光性が得られなくなる。
このため、パイル部の両側に耳部を有する広幅遮光部材を細幅に裁断する時、必要とする張力を掛けることが出来ないため、裁断速度を下げ、生産効率を低くして裁断を行っているのが現状である。この様な状況から、細幅裁断時に張力を掛けてもパイル植え込み部の歪みの発生を防止し、裁断幅が安定する広幅遮光部材の開発が望まれている。
【特許文献1】特開昭62−98347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は、広幅遮光部材を細幅へ裁断する時、全幅に張力を掛けてもパイル植え込み部の歪みの発生を防止した広幅遮光部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0018】
(請求項1)
織り構造の基布と、該基布に植え込まれたパイルと、両端に耳部とを有する広幅写真感光材料用遮光部材において、
前記基布と該耳部とはフィラメント糸からなる経糸と緯糸とを有する同じ織り構造を有し、
前記耳部を構成している該経糸の弾性率が、前記基布を構成している前記経糸の弾性率に対して50〜100%であることを特徴とする広幅写真感光材料用遮光部材。
【0019】
(請求項2)
織り構造の基布と、該基布に植え込まれたパイルと、両端に耳部とを有する広幅写真感光材料用遮光部材において、
前記基布と該耳部とはフィラメント糸からなる経糸と緯糸とを有する同じ織り構造を有し、
前記耳部を構成している前記経糸と、基布を構成している前記経糸との関係が式1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の広幅写真感光材料用遮光部材。
【0020】
式1) 0.5p<P<p
式中、Pは耳部を構成している経糸の太さ((デニール(D)×フィラメント数)×使用糸の本数)を示し、pは基布を構成している経糸の太さ((デニール(D)×フィラメント数)×使用糸の本数)を示す。
【0021】
(請求項3)
前記パイルは、太さ100〜150デニール(D)、フィラメント数20〜70本のフィラメント糸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の広幅写真感光材料用遮光部材。
【0022】
(請求項4)
前記パイルの植え込みフィラメント密度は20,000〜35,000本/cm2であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の広幅写真感光材料用遮光部材。
【発明の効果】
【0023】
広幅遮光部材を細幅へ裁断する時、全幅に張力を掛けてもパイル植え込み部の歪みの発生を防止した広幅遮光部材を提供することが出来、裁断速度を上げても細幅寸法精度が安定した細幅裁断が可能となり、生産効率があげることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態を図1〜図3を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
図1は本発明の広幅遮光部材の概略図である。図1の(a)は本発明の広幅遮光部材の概略平面図である。図1の(b)は図1の(a)のB−B′に沿った概略部分断面図である。図1の(c)は図1の(a)のC−C′に沿った概略部分断面図である。
【0026】
図中、2は広幅遮光部材を示す。広幅遮光部材2は緯糸201aと、経糸201bとを有する織構造の基布201と、緯糸201aに掛けられパイル糸202aにより形成されたパイル202を有するパイル植え込み部203と、基布201と同じ織構造を有し、基布201と異なった経糸201cを使用し、パイルが無い耳部204a(204b)とを両端に有している。
【0027】
図2は本発明の他の形態の広幅遮光部材の概略図である。図2の(a)はパイルの植え込み部が2箇所有している広幅遮光部材の概略図である。図2の(b)はパイルの植え込み部が3箇所有している広幅遮光部材の概略図である。
【0028】
図中、3は2箇所のパイルの植え込み部301a(301b)と、パイルの植え込み部301aの両端のパイルが無い耳部302a、302b(パイルの植え込み部301bの片側のパイルが無い耳部を共用)と、パイルの植え込み部301bの片側のパイルが無い耳部302cとを有する広幅遮光部材を示す。
本図に示される広幅遮光部材3の総幅は図1に示される広幅遮光部材2の総幅と同じであり、パイルの植え込み部301aとパイルの植え込み部301bとの幅は同じである。
【0029】
4は3箇所のパイルの植え込み部401a〜401cと、各パイルの植え込み部401a〜401cの両端のパイルが無い耳部402a〜402d(耳部402b、402cは共用の耳部)とを有する広幅遮光部材を示す。本図に示される広幅遮光部材4の総幅は図1に示される広幅遮光部材2の総幅と同じであり、パイルの植え込み部401a〜401cの幅は同じである。
【0030】
本図に示される広幅遮光部材のパイルの植え込み部の基布と耳部とは図1と同じように同じ織り構造をしており、基布とは異なった経糸を使用している。
【0031】
図1、図2で示される広幅遮光部材の耳部に使用する経糸と、基布に使用されている経糸とは次の2つの関係を有している。
【0032】
1)耳部に使用されている経糸の弾性率は、基布に使用されている経糸の弾性率に対して50〜100%となっている。経糸の弾性率が、基布に使用されている経糸の弾性率に対して50%未満の場合は、細幅裁断時に必要とする張力を掛けることでパイル部の伸びが耳部の伸びより小さいため、耳部に弛みが発生し、パイル部の両端部の裁断幅が不安定となるため好ましくない。経糸の弾性率が、基布に使用されている経糸の弾性率に対して100%を越えた場合は、パイル部の伸びが耳部の伸びより大きいため、パイル部が弛み裁断幅が不安定となるため好ましくない。
【0033】
2)耳部に使用されている経糸の太さ((デニール(D)×フィラメント数)×使用糸の本数)をP、基布に使用されている経糸の太さ((デニール(D)×フィラメント数)×使用糸の本数)をpとしたとき、式1)で表される関係を有している。
【0034】
式1) 0.5p<P<p
耳部に使用されている経糸の太さ及び基布に使用されている経糸の太さが0.5p未満の場合、細幅裁断時に必要とする張力を掛けることでパイル部の伸びが耳部の伸びより小さいため、耳部に弛みが発生し、パイル部の両端部の裁断幅が不安定となるため好ましくない。耳部に使用されている経糸の太さPが経糸の太さpを越えた場合、パイル部の伸びが耳部の伸びより大きいため、パイル部が弛み裁断幅が不安定となるため好ましくない。
【0035】
本発明に係わる遮光部材のパイルの植え込みフィラメント密度は20,000〜35,000本/cm2が好ましい。パイルの植え込みフィラメント密度が20,000本/cm2未満の場合は、パイルが植え込まれている基布の伸びが小さく、パイル植え込み部の両端で細幅に断裁することが不安定になる場合がある。パイルの植え込みフィラメント密度が35,000本/cm2を越える場合は、パイルが植え込まれている基布の伸びが大きくなり、全体的に細幅に断裁するときに幅が不安定になる場合がある。
【0036】
本発明に係わる遮光部材の基布に使用する経糸は太さが50〜200デニール(D)で、フィラメント数が20〜60本であることが好ましい。更に、糸の太さが70〜150デニール(D)で、フィラメント数が24〜52本が好ましい。経糸及び緯糸の太さが50デニール(D)未満の場合は、細幅裁断時に必要とする張力を掛けることでパイル部の伸びが耳部の伸びより小さくなるため、耳部に弛みが発生し、パイル部の両端部の裁断幅が不安定となる場合がある。経糸及び緯糸の太さが200デニール(D)を越えた場合は、パイル部の伸びが耳部の伸びより大きくなるため、パイル部が弛み裁断幅が不安定となるなる場合がある。勿論、加工糸を使用してもかまわない。フィラメント数が20本未満の場合は、パイルが植え込まれている基布の伸びが小さく、パイル植え込み部の両端で細幅に断裁することが不安定になる場合がある。フィラメント数が60本を越えた場合は、パイル部の伸びが耳部の伸びより大きくなるため、パイル部が弛み裁断幅が不安定となるなる場合がある。
【0037】
本発明の遮光部材のパイルに使用する糸は太さが50〜150デニール(D)で、フィラメント数が25〜100本であることが好ましい。更に、糸の太さが70〜120デニール(D)で、フィラメント数が45〜60本であることがより好ましい。糸の太さが50デニール(D)未満の場合は、細幅裁断時に必要とする張力を掛けることでパイル部の伸びが耳部の伸びより小さくなるため、耳部に弛みが発生し、パイル部の両端部の裁断幅が不安定となる場合がある。糸の太さが150デニール(D)を越えた場合は、パイル部の伸びが耳部の伸びより大きくなるため、パイル部が弛み裁断幅が不安定となるなる場合がある。フィラメント数が25本未満の場合は、パイルが植え込まれている基布の伸びが小さく、パイル植え込み部の両端で細幅に断裁することが不安定になる場合がある。フィラメント数が100本を越えた場合は、パイル部の伸びが耳部の伸びより大きくなるため、パイル部が弛み裁断幅が不安定となるなる場合がある。
【0038】
本発明に係わる経糸、緯糸及びパイル糸には「フィラメント加工技術マニュアル 上下巻」(日本繊維機械学会編)に記載されている加工糸を使用してもかまわない。
【0039】
本図に示す如き耳部を有する広幅遮光部材にすることで次の効果が挙げられる。
【0040】
1)細幅に裁断時に必要とする張力を掛けても、パイル植え込み部に発生する歪みが抑制されるため、弛みが発生することが無いため細幅の裁断寸法が安定となり、裁断された細幅の遮光部材を遮光容器(例えば、パトローネの出入口への貼着)に使用しても安定した遮光性能を得ることが可能となった。
【0041】
2)細幅に裁断時に必要とする張力を掛けることが可能となったため、裁断速度を上げることが可能となり、生産効率を上げることが可能となった。
【0042】
3)寸法精度が上がり、且つ安定したことで使用する遮光容器の漏光に対する品質が向上し、安心して使用することが可能となった。
【0043】
本発明に係わる遮光部材の基布の織構造は特に限定は無く、例えば、繊維工学II 織物 実教出版株式会社に記載されている平織、斜文織、朱子織及びこれらの変形等が挙げられる。これらの中でも平織、斜文織の変形の綾織が好ましい。
【0044】
本発明の遮光部材の経糸、緯糸及びパイル糸に使用する素材としては特に限定されず全てに用いることが出来る。例えばナイロン6,6等のポリアミド系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、ポリエチレン等のポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル系、ポリシアン化ビニリデン系、ポリフルオロエチレン系、ポリウレタン系などの合成繊維、絹、綿、羊毛、セルロース系、セルロースエステル系等の天然繊維、再生繊維(レーヨン、アセテート等)の中から選ばれる1種もしくは2種以上を組み合わせた繊維が挙げられる。これらの繊維素材において好ましくは、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、再生繊維としてのセルロース系、セルロースエステル系であるレーヨンおよびアセテート等が挙げられる。
【0045】
本発明に係わる遮光部材は、基本的にパイルと織り構造の基布とから構成されており、繊維工学II 織物 日本繊維工業教育研究会 実教出版株式会社、繊維工学(1980年、Vol.33、No.7、390〜397頁)に記載されている如き一般的な方法で製造することが可能である。
【0046】
本発明に係わる遮光部材は、黒色系に着色することが好ましい。着色する段階としては、糸を紡績する時にカーボンブラックを混練し紡績するか、または紡績した後に染料により染色する方法および遮光部材が出来上がった後に特開平9−152682号、実開平4−28643号に記載してある方法により染色することが出来が、生産効率の面から、基布に使用する経糸、緯糸及びパイルに使用するフィラメント糸は糸を紡績する再にカーボンブラックを混練した原着糸が好ましい。カーボンブラックを原料により分類すると、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アントラセンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンカーボンブラック、導電性カーボンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、油煙、松煙、アニマルブラック、ベジタブルブラック等がある。
【0047】
これらのカーボンブラックの中でも遊離イオウ含有量が200ppm以下、平均粒子径が10〜120nm、pHが6.0〜9.0、吸油量が60ml/100g以上、揮発成分が3.0%以下のファーネスカーボンブラックが特に好ましい。
【0048】
添加量は0.5〜5.0質量%が好ましい。添加量が0.5質量%未満の場合では、基布の経糸、緯糸の織り密度及びパイルの密度によっては遮光性が不足して、遮光部材を貼着した遮光容器に収納されているロール状写真感光材料が、遮光容器のロール状写真感光材料の出し入れ口から入り込む光により曝射され、使用不可となる場合がある。添加量が5.0質量%を越えた場合は、パイルに使用する糸のヤング率が高くなり、遮光部材を貼着した遮光容器に収納されているロール状写真感光材料を、遮光容器のロール状写真感光材料の出し入れ口から出したり入れたりする時、ロール状写真感光材料の表裏に傷が付く危険がある。
【0049】
糸を紡績する再にカーボンブラックを混練するときのカーボンブラックの使用形態はドライカラー、リキッドカラー、ペーストカラー、マスターバッチペレット、コンパウンドカラーペレット、顆粒状カラーペレット等があるが、マスターバッチペレットを使用するマスターバッチ法がコスト、作業場の汚染防止等の点で好ましい。
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定される物ではない。
【実施例】
【0051】
実施例1
図1に示す広幅遮光部材を準備した。
【0052】
〈糸の準備〉
広幅遮光部材を製造するのに次の経糸、緯糸、パイル用フィラメント糸を準備した。
【0053】
(経糸)
パイル植え込み部用の基布用として使用素材がポリエステルで、太さが170デニール(D)、フィラメントの本数が28本の弾性率40cN/デニール(D)の経糸を準備した。耳部用としてパイル植え込み部用の経糸の弾性率に対して表1に示す様な弾性率を有する経糸を準備し、1−a〜1−gとした。尚、使用素材はポリエステルを使用し、弾性率の変化は、デニール(D)を変化することで調整し、弾性率は、JIS L 1013:1999 引張り強さ測定方法に準じて測定した伸び率、引張り強度から算出して求めた。
【0054】
【表1】

【0055】
(緯糸)
使用素材がポリエステルで、太さが170デニール(D)、フィラメントの本数が30本の緯糸を準備した。
【0056】
(パイル用フィラメント糸)
使用素材がポリエステルで、太さが120デニール(D)、フィラメントの本数が50本のパイル用フィラメント糸を準備した。
【0057】
(広幅遮光部材の準備)
準備した経糸、緯糸、パイル用フィラメント糸をレピア式織機を用いて、図1の形態の広幅遮光部材(耳部の織り幅20mm、パイル植え込み部の織り幅320mm)を50m製織した後、パイル長を1.5mmにシャーリングした。基布、耳部の織り組織は平織りとした。この後、以下に示す染色方法により分散染料を用い黒色系に染色した後、裏面にエチレン−酢酸ビニル系の目止め樹脂を40g/m2ロールコーターで塗工、乾燥し広幅遮光部材1−1〜1−7とした。
【0058】
(染色方法)
CI.Disperse Orange 30 0.3%
CI.Disperse Red 167 0.1%
CI.Disperse Blue 120 8.0%
分散剤としてSun Soft RM−340(日華化学製)0.4g/lを使用し、浴比1:30、染色温度130℃で60分間染色を行った後、水洗−乾燥処理を行った。
【0059】
尚、遮光部材の基布の経糸、緯糸の密度及びパイル植え込み本数を以下に示す。
【0060】
経糸 32本/cm
緯糸 30本/cm
パイル植え込みフィラメント密度 25,000本/cm2
(細幅裁断)
準備した各広幅遮光部材1−1〜1−7を特開平10−104798号に記載されている方法により、幅11mmに裁断し試料101〜107とした。
【0061】
(評価)
作製した試料101〜107に付き、蛇行性を以下に示す方法で検査し、以下に評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。
【0062】
蛇行性の検査方法
細幅に裁断した遮光部材の1mを、基準線を引いた平面に基準線と平行に置き、基準線からの最大の隔たりを測定し蛇行性とした。
【0063】
評価ランク
◎:基準線からの最大の隔たりが0〜0.1mm未満
○:基準線からの最大の隔たりが0.1以上〜0.3mm未満
△:基準線からの最大の隔たりが0.3mm以上〜0.5mm未満
×:基準線からの最大の隔たりが0.5mm以上
【0064】
【表2】

【0065】
本発明の有効性が確認された。
【0066】
実施例2
図1に示す広幅遮光部材を準備した。
【0067】
〈糸の準備〉
広幅遮光部材を製造するのに次の経糸、緯糸、パイル用フィラメント糸を準備した。
【0068】
(経糸)
パイル植え込み部用の基布用の経糸と、耳部を構成している経糸との糸の太さとの関係を表3になるように変えた経糸を準備し2−a〜2−gとした。表中、Pは耳部を構成している経糸の太さ((デニール(D)×フィラメント数(F))×使用糸の本数)を示し、pは基布を構成している経糸の太さ((デニール(D)×フィラメント数(F))×使用糸の本数)を示す。
【0069】
【表3】

【0070】
(緯糸)
使用素材がポリエステルで、太さが150デニール(D)、フィラメントの本数が32本の緯糸を準備した。
【0071】
(パイル用フィラメント糸)
使用素材がポリエステルで、太さが120デニール(D)、フィラメントの本数が40本のパイル用フィラメント糸を準備した。
【0072】
(広幅遮光部材の準備)
準備した経糸、緯糸、パイル用フィラメント糸をレピア式織機を用いて、図1の形態の広幅遮光部材(耳部の織り幅30mm、パイル植え込み部の織り幅600mm)を50m製織した後、パイル長を1.5mmにシャーリングした。基布、耳部の織り組織は綾織りとした。この後、以下に示す染色方法により分散染料を用い黒色系に染色した後、裏面にエチレン−酢酸ビニル系の目止め樹脂を40g/m2ロールコーターで塗工、乾燥し広幅遮光部材2−1〜2−7とした。
【0073】
(染色方法)
CI.Disperse Orange 30 0.3%
CI.Disperse Red 167 0.1%
CI.Disperse Blue 120 8.0%
分散剤としてSun Soft RM−340(日華化学製)0.4g/lを使用し、浴比1:30、染色温度130℃で60分間染色を行った後、水洗−乾燥処理を行った。
【0074】
尚、遮光部材の基布の経糸、緯糸の密度及びパイル植え込み本数を以下に示す。
【0075】
経糸 34本/cm
緯糸 20本/cm
パイル植え込みフィラメント密度 27,000本/cm2
(細幅裁断)
準備した各広幅遮光部材2−1〜2−7を特開平10−104798号に記載されている方法により、幅11mmに裁断し試料201〜207とした。
【0076】
(評価)
作製した試料201〜207に付き、蛇行性を実施例1と同じ方法で検査し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表4に示す。
【0077】
【表4】

【0078】
本発明の有効性が確認された。
【0079】
実施例3
図2の(a)に示す広幅遮光部材を準備した。
【0080】
〈糸の準備〉
遮光部材を製造するのに次のカーボンブラックで原着した経糸、緯糸、パイル用フィラメント糸を準備した。
【0081】
(経糸)
パイル植え込み部用の基布用として使用素材がポリエステルで、太さが140デニール(D)、フィラメントの本数が35本の弾性率35cN/デニール(D)の経糸を準備した。耳部用としてパイル植え込み部用の経糸の弾性率に対して表5に示す様に低い弾性率を有する経糸を準備し、3−a〜3−eとした。尚、使用素材はナイロン6を使用し、弾性率の変化は、デニール(D)を変化することで調整し、弾性率の測定は、実施例1と同じ方法で測定した。
【0082】
【表5】

【0083】
(緯糸)
使用素材がポリエステルで、太さが140デニール(D)、フィラメントの本数が35本の緯糸を準備した。
【0084】
(パイル用フィラメント糸)
使用素材がポリエステルで、太さが115デニール(D)、フィラメントの本数が45本のパイル用フィラメント糸を準備した。
【0085】
(広幅遮光部材の準備)
準備した経糸、緯糸、パイル用フィラメント糸をレピア式織機を用いて、図2の(a)に示す形態の広幅遮光部材(耳部の織り幅20mm、パイル植え込み部の織り幅300mm)を50m製織した後、パイル長を1.5mmにシャーリングした後、裏面にエチレン−酢酸ビニル系の目止め樹脂を40g/m2ロールコーターで塗工、乾燥し広幅遮光部材3−1〜3−5とした。尚、基布、耳部の織り組織は綾織りとし、又、遮光部材の基布の経糸、緯糸の密度及びパイル植え込み本数を以下に示す。
【0086】
経糸 34本/cm
緯糸 46本/cm
パイル植え込みフィラメント密度 27,000本/cm2
(細幅裁断)
準備した各広幅遮光部材3−1〜3−5を特開平10−104798号に記載されている方法により、幅11mmに裁断し試料301〜305とした。
【0087】
(評価)
作製した試料301〜305に付き、蛇行性を実施例1と同じ方法で検査し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表6に示す。
【0088】
【表6】

【0089】
本発明の有効性が確認された。
【0090】
実施例4
実施例3の広幅遮光部材3−3をするとき、パイル糸のデニール(D)、フィラメント(F)数を表7に示すように変えた他は全て同じ条件で広幅遮光部材を作製し、4−1〜4−10とした。この後、実施例3の広幅遮光部材3−3と同じ条件で細幅裁断行い試料を作製し、401〜410とした。
【0091】
(評価)
作製した試料401〜410に付き、蛇行性を実施例1と同じ方法で検査し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表7に示す。
【0092】
【表7】

【0093】
本発明の有効性が確認された。
【0094】
実施例5
実施例3の広幅遮光部材3−3をするとき、パイル糸の植え込み密度を表7に示すように変えた他は全て同じ条件で広幅遮光部材を作製し、5−1〜5−8とした。この後、実施例3の広幅遮光部材3−3と同じ条件で細幅裁断行い試料を作製し、501〜508とした。
【0095】
(評価)
作製した試料501〜508に付き、蛇行性を実施例1と同じ方法で検査し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表8に示す。
【0096】
【表8】

【0097】
本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の広幅写真感光材料用遮光部材の概略図である。
【図2】本発明の他の形態の広幅遮光部材の概略図である。
【図3】従来の広幅遮光部材の概略図である。
【符号の説明】
【0099】
1〜3 広幅遮光部材
101、201 基布
101a、201a 緯糸
101b、201b 経糸
102、202 パイル
102a、202a パイル糸
103、203、301a、301b、401a〜401c パイル植え込み部
104a、104b、204a、204b、302a、302b、402a〜402d 耳部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織り構造の基布と、該基布に植え込まれたパイルと、両端に耳部とを有する広幅写真感光材料用遮光部材において、
前記基布と該耳部とはフィラメント糸からなる経糸と緯糸とを有する同じ織り構造を有し、
前記耳部を構成している該経糸の弾性率が、前記基布を構成している前記経糸の弾性率に対して50〜100%であることを特徴とする広幅写真感光材料用遮光部材。
【請求項2】
織り構造の基布と、該基布に植え込まれたパイルと、両端に耳部とを有する広幅写真感光材料用遮光部材において、
前記基布と該耳部とはフィラメント糸からなる経糸と緯糸とを有する同じ織り構造を有し、
前記耳部を構成している前記経糸と、基布を構成している前記経糸との関係が式1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の広幅写真感光材料用遮光部材。
式1) 0.5p<P<p
式中、Pは耳部を構成している経糸の太さ((デニール(D)×フィラメント数)×使用糸の本数)を示し、pは基布を構成している経糸の太さ((デニール(D)×フィラメント数)×使用糸の本数)を示す。
【請求項3】
前記パイルは、太さ100〜150デニール(D)、フィラメント数20〜70本のフィラメント糸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の広幅写真感光材料用遮光部材。
【請求項4】
前記パイルの植え込みフィラメント密度は20,000〜35,000本/cm2であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の広幅写真感光材料用遮光部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−17985(P2006−17985A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195389(P2004−195389)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】