説明

庇構造

【課題】日差しを必要以上に遮ることなく、突出長さを長くすることが可能な庇構造を提供することを目的とする。
【解決手段】開口部1a,1bが形成された外壁パネル1の上端面に床パネル2が水平に設置されるとともに、この床パネル2の端部が外壁パネル1の外側面よりも前方に所定の長さ突出しており、この突出部分は建物の勾配屋根5の傾斜方向の下端部と結合しており、この突出部分のうち、勾配屋根5の下端部と結合する部分よりも前方に突出した部分が庇部3とされていることを特徴とする庇構造。これにより、この庇部によって開口部への日差しを必要以上に遮ることを防ぐことができ、開口部から建物内部へと打ち込む雨水の量や、地面から建物側に跳ね返る雨水や泥の量が少なくなり、勾配屋根の表面を滑り落ちる雪の重みにも十分に耐えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物の庇構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物を建築する際に、屋根の傾斜方向の下端部を外壁よりも突出させて軒の出を形成することが知られている。
しかし、軒の出が大きいと、外壁に設けられた窓に覆いかぶさるような状態となり、必要以上に日差しを遮ってしまう場合があるため、近年では、軒の出を小さくしたり、ほとんどない状態にした建物が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−002227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1のように軒の出があまりに小さい場合、例えば雨の日に窓を開けると、多くの雨水が窓から建物内部に直接打ち込みやすくなり、窓が1階の地面に近い位置にあると、地面から跳ね返った多くの雨水や泥が窓から建物内部に浸入しやすくなってしまうという問題がある。そこで、特に、窓等の開口部の上方に、建物の外壁よりも外部に突出する庇を設けたいという要望がある。
しかしながら、この庇が屋根の傾斜方向に沿って配設されるものであれば、窓に覆いかぶさるので、従来と同じく必要以上に日差しを遮ってしまう場合がある。また、従来のような雨水や泥の浸入を防ぐために、この庇の外壁からの突出長さを長くしたいという要望があるが、この庇を、単に外壁に固定するだけでは雪の重みなどに耐えられないという問題がある。
【0004】
本発明の課題は、日差しを必要以上に遮ることなく、突出長さを長くすることが可能な庇構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、庇構造であって、例えば図1〜図6に示すように、開口部1a,1bが形成された外壁パネル1の上端面に床パネル2が水平に設置されるとともに、この床パネル2の端部が前記外壁パネル1の外側面よりも前方に所定の長さ突出しており、
この突出部分は建物の勾配屋根5の傾斜方向の下端部と結合しており、
この突出部分のうち、前記勾配屋根5の下端部と結合する部分よりも前方に突出した部分が庇部3とされていることを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、前記外壁パネル1の上端面に水平に設置された床パネル2の突出部分のうち、前記勾配屋根5の下端部と結合する部分よりも前方に突出した部分が庇部3とされているので、例えば、前記勾配屋根5の傾斜方向に沿って庇部を配設する場合に比して、この庇部3によって前記開口部1a,1bへの日差しを必要以上に遮ることを防ぐことができる。
さらに、この庇部3を前記勾配屋根5よりも屋外側に突出させることができるので、従来に比して、この庇部3の前記外壁パネル1の外側面からの突出長さを長くすることができる。これによって、前記開口部1a,1bから建物内部へと打ち込む雨水の量や、地面から建物側に跳ね返る雨水や泥の量が少なくなるので、雨仕舞を向上させることが可能となる。
また、前記庇部3は、前記床パネル2を前記外壁パネル1の上端面に水平に設置するとともに、端部を前記外壁パネル1の外側面よりも前方に所定の長さ突出させることで形成されるので、例えば外壁パネル1の外側面に庇部を固定する場合に比して、前記勾配屋根5の表面を滑り落ちる雪の重みにも十分に耐えることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項1に記載の庇構造において、
前記床パネル2の突出部分のうち、前記勾配屋根5の下端部と結合する部分よりも建物側の部分が軒天井部4とされており、
この軒天井部4には、この軒天井部4と前記勾配屋根5との間の軒天裏空間と屋外とを連通する連通孔が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、前記軒天井部4に、前記連通孔が形成されているので、この連通孔を介して、前記軒天裏空間の換気を行うことができる。
また、例えば、前記外壁パネル1の開口部1a,1bの前方に、簾等の日除け用の覆いを設けたいという要望があった際に、この連通孔を、日除け用の覆いを取り付けるフック等の取付金具等を設けるために利用することもできるので、好ましい。
【0009】
請求項3に記載の発明は、例えば図2〜図4に示すように、請求項2に記載の庇構造において、
前記外壁パネル1の横方向両端部には、この外壁パネル1と直交するとともに、互いに対向する袖壁6,6がそれぞれ連結されており、これら対向する袖壁6,6間に前記軒天井部4が架設されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、前記対向する袖壁6,6間に前記軒天井部4が架設されていることから、この軒天井部4と連続する前記庇部3は、この庇部3の突出方向と直交する方向の長さが、前記外壁パネル1の横方向の長さと略等しくなるので、前記外壁パネル側の間口に対する前記庇部3の大きさを大きくすることができる。
また、前記対向する袖壁6,6によって、前記軒天井部4を、延いては前記床パネル2の突出方向と直交する方向の両端部を支持することができるので、例えば外壁パネル1の外側面に庇部を固定する場合に比して、前記勾配屋根5の表面を滑り落ちる雪の重みにも、より十分に耐えることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項2または3に記載の庇構造において、
前記対向する袖壁6,6間に、上端面が前記外壁パネル1の上端面と略等しい高さに位置する梁材7が架設されており、この梁材7によって前記軒天井部4が支持されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、前記梁材7によって前記軒天井部4が支持されているので、この梁材7によって、前記軒天井部4を、延いては前記床パネル2の突出部分を支持することができる。また、この梁材7は前記対向する袖壁6,6間の長さを有することになり、前記床パネル2の突出部分の両端部だけでなく、中央部分も支持することができるので、この床パネル2の中央部分の撓みを防ぐことができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、例えば図3および図4に示すように、請求項1〜4のいずれか一項に記載の庇構造において、
前記庇部3には、この庇部3上の雨水等を排水するための排水手段が設けられており、
この排水手段は、前記庇部3の上面の長さ方向に沿って、かつ該庇部3の上面の上方に配置されるとともに、該庇部3の突端側および建物側のそれぞれから庇部3の中央に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜板部8,8と、
これら双方の傾斜板部8,8の傾斜方向下端部と前記庇部3の上面との間に設けられる溝壁9a,9aとによって前記庇部3の中央に形成される凹溝部9と、
上端部が前記凹溝部9に接続されるとともに、下端部が地面近傍に位置する竪樋10とを備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、前記庇部3の上面に降り注いだ雨が、前記庇部3の中央に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜板部8,8を流れて、前記庇部3の中央に形成される凹溝部9に流れ込み、この凹溝部9内の雨水が前記竪樋10を通じて地面へと排出されることとなる。したがって、前記庇部3の上面に降り注いだ雨を、前記庇部3の周縁部から地面へと落とさずに、前記竪樋10を通じて地面へと排水することができるので、地面から建物側に跳ね返る雨水や泥の量を少なくすることができ、雨仕舞をより向上させることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、例えば図5および図6に示すように、請求項1〜5のいずれか一項に記載の庇構造において、
前記勾配屋根5の両側縁部に、この勾配屋根5の傾斜方向に沿ってパラペット壁11,11が立設されており、これらパラペット壁11,11は前記庇部3の上面と結合していることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、前記勾配屋根5の両側縁部に、この勾配屋根5の傾斜方向に沿ってパラペット壁11,11が立設されており、これらパラペット壁11,11は前記庇部3の上面と結合しているので、前記勾配屋根5の表面を流れる雨水が、この勾配屋根5の傾斜方向と直交する方向の両端部から地面へと流れ落ちることを防ぐことができるとともに、この勾配屋根5の傾斜方向の下端部側へと誘導することができる。
このように前記勾配屋根5の表面を流れる雨水を、この勾配屋根5の傾斜方向と直交する方向の両端部から地面へと落とさずに済むので、この勾配屋根5の傾斜方向と直交する方向の両端部側に位置する建物の外壁側に跳ね返る雨水や泥の量を少なくすることができ、雨仕舞をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、開口部が形成された外壁パネルの上端面に水平に設置された床パネルの突出部分のうち、勾配屋根の下端部と結合する部分よりも前方に突出した部分が庇部とされているので、例えば、勾配屋根の傾斜方向に沿って庇部を配設する場合に比して、この庇部によって開口部への日差しを必要以上に遮ることを防ぐことができる。
さらに、この庇部を勾配屋根よりも屋外側に突出させることができるので、従来に比して、この庇部の外壁パネルの外側面からの突出長さを長くすることができる。これによって、開口部から建物内部へと打ち込む雨水の量や、地面から建物側に跳ね返る雨水や泥の量が少なくなるので、雨仕舞を向上させることが可能となる。
また、庇部は、床パネルを外壁パネルの上端面に水平に設置するとともに、端部を外壁パネルの外側面よりも前方に所定の長さ突出させることで形成されるので、例えば外壁パネルの外側面に庇部を固定する場合に比して、勾配屋根の表面を滑り落ちる雪の重みにも十分に耐えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
本実施の形態の庇構造は、図1〜図6に示すように、開口部1a,1bが形成された外壁パネル1の上端面に床パネル2が水平に設置されるとともに、この床パネル2の端部が前記外壁パネル1の外側面よりも前方に所定の長さ突出しており、この突出部分は建物の勾配屋根5の傾斜方向の下端部と結合しており、この突出部分のうち、前記勾配屋根5の下端部と結合する部分よりも前方に突出した部分が庇部3とされている。
【0020】
なお、本実施の形態の庇構造を備える建物は、壁や床、屋根といった建物の構成要素を予め工場にてパネル化しておき、施工現場でこれらのパネルを組み立てて構築するパネル工法で構築されている。
また、このパネルとは、図示はしないが、縦横の框材が矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助桟材が縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面もしくは片面に、面材が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。さらに、その内部中空な部分には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填されるものである。
【0021】
ここで、前記外壁パネル1は、図1〜図3に示すように、前記勾配屋根5の傾斜方向の下端部側に、この勾配屋根5の傾斜方向と直交する方向に配置されるものであり、建物の1階の床パネル13上に立設されている。また、この外壁パネル1は、複数のパネルを連結して大型化したものである。
【0022】
また、本実施の形態において、この外壁パネル1は、図2に示すように、開口部1aと開口部1bとを備えている。
前記開口部1aは、部屋と屋外とを連通するものであり、窓サッシが取り付けられている。一方、前記開口部1bは、玄関と屋外とを連通するものであり、玄関ドアが取り付けられている。
【0023】
また、前記床パネル2は、建物の2階の床パネルであり、複数のパネルを連結して大型化したものであり、図3に示すように、この大型パネルからなる床パネル2の端部を、前記外壁パネル1の外側面よりも前方に突出させるようにして、前記外壁パネル1の上端面に水平設置されている。
なお、この床パネル2は、前記外壁パネル1だけでなく、この外壁パネル1と直交する方向に配置される他の外壁パネルの上端面にも設置されている。
【0024】
そして、この床パネル2の突出部分のうち、前記勾配屋根5の下端部と結合する部分よりも前方に突出した部分が前記庇部3とされており、建物側の部分が軒天井部4とされている。すなわち、前記庇部3は、前記勾配屋根5よりも屋外側に突出しており、前記軒天井部4は、前記勾配屋根5の軒先の下部に位置し、この勾配屋根5の裏面を隠している。
【0025】
また、前記外壁パネル1の横方向両端部には、図2および図4に示すように、この外壁パネル1と直交するとともに、互いに対向する袖壁6,6がそれぞれ連結されており、これら対向する袖壁6,6間に前記軒天井部4が架設されている。
また、前記床パネル2は、これら袖壁6,6の上端面に水平に設置されるようにして、これら対向する袖壁6,6間に架設されている。
なお、これら袖壁6,6は、前記外壁パネル1を始め、建物の外壁パネルと同じく、建物の基礎上に設置されている。また、前記外壁パネル1と同じく、パネルによって構成されている。
【0026】
そして、このように前記対向する袖壁6,6間に前記軒天井部4が架設されていることから、この軒天井部4と連続する前記庇部3は、この庇部3の突出方向と直交する方向の長さが、前記外壁パネル1の横方向の長さと略等しくなるので、前記外壁パネル側の間口に対する前記庇部3の大きさを大きくすることができる。
また、前記対向する袖壁6,6によって、前記軒天井部4を、延いては前記床パネル2の突出方向と直交する方向の両端部を支持することができるので、例えば外壁パネル1の外側面に庇部を固定する場合に比して、前記勾配屋根5の表面を滑り落ちる雪の重みにも十分に耐えることができる。
【0027】
さらに、図3に示すように、前記対向する袖壁6,6間に、上端面が前記外壁パネル1の上端面と略等しい高さに位置する梁材7が架設されており、この梁材7によって前記軒天井部4が支持されている。なお、本実施の形態の梁材7は、例えばマグサであるが、これに限られるものではなく、H形鋼やI形鋼を用いた鋼製梁等でもよい。
また、前記床パネル2の突出部分が前記勾配屋根5の下端部と結合する部分の近傍の、該床パネル2の軒天井部4の下面に取り付けられる桟材7aを介して、前記床パネル2の軒天井部4を支持している。
【0028】
これにより、この梁材7によって、前記軒天井部4を、延いては前記床パネル2の突出部分を支持することができる。また、この梁材7は前記対向する袖壁6,6間の長さを有することになり、前記床パネル2の突出部分の両端部だけでなく、中央部分も支持することができるので、この床パネル2の中央部分の撓みを防ぐことができる。
【0029】
前記庇部3は、上述のように前記外壁パネル1の外側面よりも前方に所定の長さ突出するように形成されている。ここで、所定の長さとは、この庇部3によって前記開口部1a,1bへの日差しを必要以上に遮ることのない長さであるとともに、従来に比して、また、この庇部3がない場合に比して、前記開口部1a,1bから建物内部へと打ち込む雨水の量や、地面から建物側に跳ね返る雨水や泥の量が少なくなるような長さである。
【0030】
ここで、この床パネル2が突出する具体的な長さは、前記建物を構築するパネルの基準長さに従うことが望ましい。例えば、パネルを形成する上での基準長さMを910mmとすれば、前記床パネル2が前記外壁パネル1の外側面よりも前方に突出する長さを2M=1820mm程度に設定する。また、基準長さMを1000mmとすれば、前記床パネル2の突出長さを2M=2000mm程度に設定する。
なお、この基準長さMは、パネルを形成する上で用いられるだけでなく、建物を構築する際の基準の長さとしても用いられることになる。
【0031】
また、本実施の形態の床パネル2が突出する長さの半分の位置には、前記桟材7aが取り付けられており、この部分は、前記梁材7によって支持されている。また、前記軒天井部4は、前記対向する袖壁6,6によって支持されている。
すなわち、前記床パネル2の突出長さの半分は、前記袖壁6,6と梁材7とによって支持されているので、前記庇部3の部分のみが張り出していることとなる。したがって、以上のように、前記床パネル2突出長さが長く設定されていたとしても、その半分の長さの位置で、前記対向する袖壁6,6および梁材7によって支持されているので、残りの半分、つまり庇部3が長く突出していても十分に支持できることとなる。
【0032】
一方、本実施の形態の庇部3には、図3および図4に示すように、この庇部3上の雨水等を排水するための排水手段が設けられている。
この排水手段は、前記庇部3の上面の長さ方向に沿って、かつ該庇部3の上面の上方に配置されるとともに、該庇部3の突端側および建物側のそれぞれから庇部3の中央に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜板部8,8と、これら双方の傾斜板部8,8の傾斜方向下端部と前記庇部3の上面との間に設けられる溝壁9a,9aとによって前記庇部3の中央に形成される凹溝部9と、上端部が前記凹溝部9に接続されるとともに、下端部が地面近傍に位置する竪樋10とを備えている。
【0033】
前記庇部3の突端側の傾斜板部8は、前記溝壁9aと、前記庇部3の上面の突端側に前記溝壁9aと対向して設けられる支持壁8aとの間に架設されている。また、この支持壁8aは前記溝壁9aよりも高く形成されることで、該突端側の傾斜板部8が、前記凹溝部9に向かって傾斜している。
さらに、前記庇部3の建物側の傾斜板部8は、前記凹溝部9に向かって傾斜するようにして、前記溝壁9aと、前記勾配屋根5との間に架設されている。
【0034】
前記凹溝部9は、前記庇部3の上面と、前記溝壁9a,9aとによって凹状に形成される横樋であり、前記庇部3の上面の長さ方向に沿って形成されている。
また、前記竪樋10は、上述のように上端部が前記凹溝部9に接続されるとともに、下端部が地面近傍に位置しており、さらに、上部が前記床パネル2を貫通しており、前記床パネル2の庇部3の裏面と、前記袖壁6に沿って設けられている。
【0035】
このような排水手段によれば、前記庇部3の上面に降り注いだ雨が、前記庇部3の中央に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜板部8,8を流れて、前記庇部3の中央に形成される凹溝部9に流れ込み、この凹溝部9内の雨水が前記竪樋10を通じて地面へと排出されることとなる。したがって、前記庇部3の上面に降り注いだ雨を、前記庇部3の周縁部から地面へと落とさずに、前記竪樋10を通じて地面へと排水することができるので、地面から建物側に跳ね返る雨水や泥の量を少なくすることができ、雨仕舞を向上させることができる。
【0036】
また、前記庇部3の下面には、この庇部3の下面を覆う防水のための下面仕上げ材3aが取り付けられており、前記庇部3の突出方向の端面を覆う防水のための正面仕上げ材3bが取り付けられている。
さらに、この庇部3には、防水シートやコーキング材等によって防水処理が施されている。すなわち、前記傾斜板部8,8と溝壁9aとの継ぎ目や、傾斜板部8と勾配屋根5との継ぎ目等を始めとする各部同士の継ぎ目や、前記凹溝部9の内側面などに防水処理が施されており、前記庇部3を構成する床パネル2が水に濡れないようになっている。
【0037】
一方、前記軒天井部4には、この軒天井部4と前記勾配屋根5との間の軒天裏空間と屋外とを連通する連通孔が形成されており、この連通孔を介して、前記軒天裏空間の換気を行うことができるようになっている。
また、例えば、前記外壁パネル1の開口部1a,1bの前方に、簾等の日除け用の覆いを設けたいという要望があった際に、この連通孔を、日除け用の覆いを取り付けるフック等の取付金具等を設けるために利用することもできるので、好ましい。
【0038】
なお、この軒天井部4に形成される連通孔は、図3に示すように、前記軒天井部4に取り付けられた連通部材4aが備える孔と、前記床パネル2に形成された孔との位置が重なり合うことで、前記軒天裏空間と屋外とを連通できるようになっている。
また、例えば、前記連通部材4aにネジ部を形成しておき、前記取付金具とネジ接合できるようにしておいてもよい。
【0039】
また、前記勾配屋根5は、下端部が前記床パネル2に結合しているとともに、前記外壁パネル1の上方に位置するとともに前記床パネル2上に立設される2階の壁パネル14上に設置されている。さらに、この勾配屋根5は、図示はしないが、建物の2階の空間を囲む壁パネル上に設置されているものとする。
また、この勾配屋根5の傾斜角度は1/1に設定された切妻屋根であり、比較的急な角度に設定されている。なお、この勾配屋根5の傾斜角度は適宜変更可能である。
【0040】
さらに、この勾配屋根5の傾斜方向の下端部には、この勾配屋根5の傾斜方向の長さを調整する調整材5aが取り付けられており、この調整材5aには、この調整材5aと前記庇部3の上面とを結合する結合材5bが設けられている。
【0041】
なお、本実施の形態の勾配屋根5には設けられていないが、前記勾配屋根5の両側縁部には、図5および図6に示すように、この勾配屋根5の傾斜方向に沿ってパラペット壁11,11を立設するようにしてもよい。これらパラペット壁11,11は前記庇部3の上面と結合している。
【0042】
また、このパラペット壁11は、図5に示すように、前記勾配屋根5の傾斜方向に沿って長尺な壁本体11aと、この壁本体11aの上端部に沿って取り付けられる長尺な上端部材11bと、前記壁本体11aの傾斜方向下端部の端面に取り付けられるとともに前記パラペット壁11の傾斜方向下端部に鉛直面を形成する調整材11cと、この調整材11cの鉛直面に取り付けられる端部仕上げ材11cと、この端部仕上げ材11cの上端部と前記上端部材11bとを結合する結合材11eと、この端部仕上げ材11cの下端部と前記庇部3の上面とを結合する結合材11fとを備えている。
【0043】
このようなパラペット壁11が、前記勾配屋根5の両側縁部に、この勾配屋根5の傾斜方向に沿って立設されており、前記庇部3の上面と結合しているので、前記勾配屋根5の表面を流れる雨水が、この勾配屋根5の傾斜方向と直交する方向の両端部から地面へと流れ落ちることを防ぐことができるとともに、この勾配屋根5の傾斜方向の下端部側へと誘導することができる。
また、このように前記勾配屋根5の表面を流れる雨水を、この勾配屋根5の傾斜方向と直交する方向の両端部から地面へと落とさずに済むので、この勾配屋根5の傾斜方向と直交する方向の両端部側に位置する建物の外壁側に跳ね返る雨水や泥の量を少なくすることができ、雨仕舞をさらに向上させることができる。
【0044】
なお、前記勾配屋根5の両側縁部だけでなく、図6に示すように、前記勾配屋根5の傾斜方向下端部に、この勾配屋根5の傾斜方向と直交する方向に配置されるパラペット壁12を立設するようにしてもよい。
このパラペット壁12は、前記庇部3の上面と結合しているとともに、前記パラペット壁11,11の傾斜方向の下端部間に架設されている。
【0045】
なお、このようなパラペット壁12が設けられることによって、このパラペット壁12と、前記勾配屋根5と、前記勾配屋根5の両側縁部のパラペット壁11,11とで囲まれる部分を内樋として利用することができる。また、内樋として利用する際には、図示しない排水手段が設けられるものとする。
【0046】
なお、図4に示す建物の妻側の外壁の表面や袖壁6表面には、図示はしないが、外壁材や仕上げ材が取り付けられる。また、前記床パネル2の側面にも、前記庇部3に該当する位置に側面仕上げ材3cが取り付けられ、軒天井部4よりも建物側の側面には外壁材が取り付けられる。さらに、図5および図6に示すパラペット壁11,11の表面にも外壁材が取り付けられるものとする。
【0047】
本実施の形態によれば、前記外壁パネル1の上端面に水平に設置された床パネル2の突出部分のうち、前記勾配屋根5の下端部と結合する部分よりも前方に突出した部分が庇部3とされているので、例えば、前記勾配屋根5の傾斜方向に沿って庇部を配設する場合に比して、この庇部3によって前記開口部1a,1bへの日差しを必要以上に遮ることを防ぐことができる。
【0048】
さらに、この庇部3を前記勾配屋根5よりも屋外側に突出させることができるので、従来に比して、この庇部3の前記外壁パネル1の外側面からの突出長さを長くすることができる。これによって、前記開口部1a,1bから建物内部へと打ち込む雨水の量や、地面から建物側に跳ね返る雨水や泥の量が少なくなるので、雨仕舞を向上させることが可能となる。
【0049】
また、前記庇部3は、前記床パネル2を前記外壁パネル1の上端面に水平に設置するとともに、端部を前記外壁パネル1の外側面よりも前方に所定の長さ突出させることで形成されるので、例えば外壁パネル1の外側面に庇部を固定する場合に比して、前記勾配屋根5の表面を滑り落ちる雪の重みにも十分に耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の庇構造を備える建物を示す側面図である。
【図2】図1に示す建物の1階部分を示す平断面図である。
【図3】本発明の庇構造の要部を示す側断面図である。
【図4】図3に示す庇構造の立面図である。
【図5】勾配屋根の両側縁部にパラペット壁を立設した状態を示す斜視図である。
【図6】勾配屋根の両側縁部と、勾配屋根の下端部の横方向に沿ってパラペット壁を立設した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 外壁パネル
1a 開口部
1b 開口部
2 床パネル
3 庇部
4 軒天井部
5 勾配屋根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された外壁パネルの上端面に床パネルが水平に設置されるとともに、この床パネルの端部が前記外壁パネルの外側面よりも前方に所定の長さ突出しており、
この突出部分は建物の勾配屋根の傾斜方向の下端部と結合しており、
この突出部分のうち、前記勾配屋根の下端部と結合する部分よりも前方に突出した部分が庇部とされていることを特徴とする庇構造。
【請求項2】
請求項1に記載の庇構造において、
前記床パネルの突出部分のうち、前記勾配屋根の下端部と結合する部分よりも建物側の部分が軒天井部とされており、
この軒天井部には、この軒天井部と前記勾配屋根との間の軒天裏空間と屋外とを連通する連通孔が形成されていることを特徴とする庇構造。
【請求項3】
請求項2に記載の庇構造において、
前記外壁パネルの横方向両端部には、この外壁パネルと直交するとともに、互いに対向する袖壁がそれぞれ連結されており、これら対向する袖壁間に前記軒天井部が架設されていることを特徴とする庇構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載の庇構造において、
前記対向する袖壁間に、上端面が前記外壁パネルの上端面と略等しい高さに位置する梁材が架設されており、この梁材によって前記軒天井部が支持されていることを特徴とする庇構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の庇構造において、
前記庇部には、この庇部上の雨水等を排水するための排水手段が設けられており、
この排水手段は、前記庇部の上面の長さ方向に沿って、かつ該庇部の上面の上方に配置されるとともに、該庇部の突端側および建物側のそれぞれから庇部の中央に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜板部と、
これら双方の傾斜板部の傾斜方向下端部と前記庇部の上面との間に設けられる溝壁とによって前記庇部の中央に形成される凹溝部と、
上端部が前記凹溝部に接続されるとともに、下端部が地面近傍に位置する竪樋とを備えていることを特徴とする庇構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の庇構造において、
前記勾配屋根の両側縁部に、この勾配屋根の傾斜方向に沿ってパラペット壁が立設されており、これらパラペット壁は前記庇部の上面と結合していることを特徴とする庇構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate