説明

床の配管又は機器の貫通部構造に用いるグレーチング

【課題】グレーチングへの配管の貫通部の構造を容易に施工する。
【解決手段】床に敷詰めたグレーチング1a,1bの縁に半円形状の切欠きを貫通孔2として形成し、その貫通孔2に垂直なフラットバー3に水平な鍔7をつけた鍔付きフラットバーを設置し、そのフラットバー3によって配管6を囲み、且つ鍔7でフラットバー3を支持する。貫通孔2を拡大して配管6と貫通孔2の縁との接触事故を防いだ場合には、貫通孔2の余分な開口を鍔7が覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床に配管を貫通するための方法及び構造並びにその構造に用いる部品に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所のタービン建屋内には、電動機駆動原子炉給水ポンプがある区画された室内に設置され、そのポンプに接続された配管がその室内に三次元的に配置されている。
【0003】
その配管を保守点検する場合に必要な操作架台が同室内に設置され、その操作架台の床を配管や弁等の機器が上下に貫通して配置されている。このような操作架台の床は室内の天井と床との間の中間高さ領域に設けられることから中間床とも称せられ、その架台の床面には床材として通気性や配光性を考慮してグレーチングが敷設される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
床の床面に床材としてグレーチングを敷設する際には、直交する4辺の縁を有する構成の複数個のグレーチングを床面に敷き詰めることも公知である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−086037号公報
【特許文献2】特開平11−241489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原子力発電所のタービン建屋の室内に操作架台を設けて、その操作架台の床に原子力発電プラントを構成する配管や機器を上下方向に貫通させる場合には、次のようなことが考えれる。
【0007】
即ち、操作架台の床面に敷設した複数個のグレーチングの内、配管が貫通する箇所のグレーチングに配管の外形よりも大径の貫通孔を設け、その貫通孔に配管を通して、配管を配置する。
【0008】
その貫通孔の縁には、グレーチングと配管や、配管の周囲に設けた保温構造部材との接触を避け、且つ床上の器具や作業員がその貫通孔に落下することを抑制できるように、平板を湾曲させたフラットバーを縁取り部材として溶接固定し、フラットバーの上部を操作架台の床面よりも上方に突き出しておく。
【0009】
この場合、配管を室内に敷設してからグレーチングを敷設することや、配管を貫通させた後にグレーチングを外すことを考慮して、図1のように、グレーチングの縁に半円状の貫通孔を貫通孔の一部分として形成し、その貫通孔の他部分を隣接する他のグレーチングの縁に形成して、合わせて一つの共通の貫通孔とするようにグレーチングを敷設することが考えられる。
【0010】
その場合、貫通する部材が配管の場合を想定すると、その配管がグレーチングを貫通する箇所では、図1に示す通り、配管6が貫通する箇所に敷設されるグレーチング1は、配管6に対して対称に2つに分けて、それぞれに配管6の口径より大きな半円形の貫通孔2を設ける。
【0011】
そしてグレーチング1には作業員の落下防止用として、貫通孔2の孔形状に合わせて半円形に加工されたフラットバー3を縁取り部材としてそれぞれの貫通孔の縁に溶接してグレーチング1と一体化する。
【0012】
この場合には、グレーチング1は格子状であり、フラットバー3とグレーチング1の接する箇所には全て溶接4及び溶接5を実施することになる。
【0013】
また、配管6の位置が変動し、配管6とフラットバー3が干渉した場合には、フラットバー3とグレーチング1両方を全部撤去して、配管6と干渉することがないようにフラットバー3とグレーチング1両方を全部再製作することが考えられる。
【0014】
このような技術では、施工のし易さの点について配慮がされておらず、フラットバー3をグレーチング1に設置するためには、グレーチング1との接触箇所全てにおいて溶接4及び溶接5を実施する必要があり、フラットバー3設置に時間がかかるという問題があった。
【0015】
また、配管6の位置が変動して、配管6とフラットバー3が干渉した場合には、フラットバー3及び配管6に隣接する2個のグレーチング1を全部撤去して再製作せざるを得ず、多くのコストと時間がかかるという問題が発生する。
【0016】
従って、本発明の目的は、配管や機器が貫通する床の貫通部分の構造を、それらの配管や機器の位置の変位の有無にかかわらず、極力容易に施工することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の課題を解決する手段は、配管又は機器を貫通させる床の箇所に床材として隣りあわせで敷設された少なくとも2個のグレーチングにおいて、前記配管貫通孔の一部分が一方の前記グレーチングの縁に設けられ、前記貫通孔の他の部分が前記縁に隣接する他方のグレーチングの縁に設けられている床の配管又は機器の貫通部構造に用いるグレーチングである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、貫通孔の一部を覆うように鍔部を床材に置いて簡単に貫通部構造を施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】グレーチングに対する配管の貫通部構造を示しており、(a)図はグレーチングの上面図、(b)図はフラットバーを示す斜視図、(c)図はフラットバーを据付たグレーチングの上面図、(d)図は配管の貫通部構造の上面図である。
【図2】(a)図は、本発明の実施例による配管貫通部に採用される鍔付きフラットバーの斜視図であり、(b)図は(a)図の鍔付きフラットバーを採用した配管の貫通部構造の上面図である。
【図3】(a)図は、本発明の実施例における配管とフラットバーとの干渉状態を示した配管貫通部構造の上面図であり、(b)図は、その干渉事故を防ぐように貫通孔を拡大した状態のグレーチングと配管との関係を上方からみた上面図である。
【図4】図3(b)図のグレーチングに鍔付きフラットバーを据付た状態の配管の貫通部構造の上面図である。
【図5】本発明の実施例を適用して操作架台床近傍の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
原子力発電所のタービン建屋内の室内には、電動機駆動原子炉給水ポンプが設置され、そのポンプに接続された配管6が、図5のように、その室内に三次元的に配置されている。
【0021】
その配管6を保守点検する場合に必要な操作架台10が同室内の床11に設置され、その操作架台10の床12を配管6や図示していない弁等の機器が上下に貫通して配置されている。
【0022】
操作架台10は、床11に立てた支柱13と、その支柱13で支持された梁14と、その梁14に梁14と直交して支持された根太15と、根太15上にボルトなどで着脱自在に敷き詰めた複数個のグレーチング1とで構成されている。
【0023】
このようなグレーチング1で床面が構成された操作架台10の床12は、室内の天井と床11との間の中間高さ領域に位置する。このようにして、その操作架台10の床面には床材として通気性や配光性を考慮してグレーチング1が敷設される。床材は、通気性や配光性を考慮し無ければ、グレーチングに限定される必要は無い。
【0024】
配管が貫通する床12の部分を上方から見ると、図2のように、配管6を挟んで左右対称に配置された二個のグレーチング1が存在する。説明の便宜上、一方のグレーチングをグレーチング1aとし、それに隣接する他方のグレーチング1をグレーチング1bとして説明する。
【0025】
グレーチング1aとグレーチング1bとはいずれも4辺の縁を有する長方形の形状である。隣接しあうグレーチング1aとグレーチング1bとには、お互いに対面しあう縁に部分円弧状である半円形の切欠きが加工されている。
【0026】
グレーチング1aに形成されたその切欠きは、配管6を通すための貫通孔2の一部、約半分を形成している。グレーチング1bに形成されたその切欠きは、配管6を通すための貫通孔2の他部、約半分を形成している。
【0027】
グレーチング1aとグレーチング1bとには、鍔付きフラットバーが半円形の切欠き部分に組み合わされる。鍔付きフラットバーは、図2のように、鋼板製の平板をグレーチング1aとグレーチング1bに形成した半円形の切欠きの、その円形の曲率に合わせて半円形に曲げたフラットバー3を縁取り部材として備え、そのフラットバー3の外周囲であって上下方向の途中部分に鋼板製の水平な鍔7を溶接などによって固定して構成されている。
【0028】
このような鍔付きフラットバーは、グレーチング1aとグレーチング1bとの二個一組を製作する。その二個の鍔付きフラットバーの形状は概ね左右対称である。
【0029】
このような鍔付きフラットバーは、以下のようにグレーチング1aとグレーチング1bとの上に置かれる。即ち、根太15の間に上下方向に通された配管6の周囲に、グレーチング1aとグレーチング1bとを、配管を半円形の切欠きで囲うようにして配置する。その根太15にそのグレーチング1aとグレーチング1bとをボルトなどによって着脱自在に設置する。
【0030】
このようにすると、配管6を貫通させることの出来る貫通孔2が円形状に床12に現れる。その貫通孔2の直径は配管と貫通孔の縁との間に予め定めたクリアランスが生じるように決められる。
【0031】
次に、鍔付きフラットバーの鍔7を、図2のように、各グレーチング1a,1bに乗せて各フラットバー3を貫通孔2の縁沿いに配置する。その配置状態で一旦各グレーチング1a,1bに鍔付きフラットバーを紐や針金や仮溶接で仮据付する。
【0032】
現実的には、鍔付きフラットバーの製作及びグレーチング1a,1bの切欠きの製作及びグレーチング1a,1bへの鍔付きフラットバーの仮据付作業は、制作設備や製作環境の良い工場で行い、鍔付きフラットバーが仮据付されたグレーチング1a,1bをその工場から据付現場の操作架台10上に搬入して、配管6の周囲をフラットバー3が囲むようにグレーチング1a,1bを根太15上にボルトなどで着脱自在に設置して、フラットバー3と配管6との間隔を予め定めた値以上か否かを測定する。
【0033】
その測定値が予め定めた値以上であれば正常であるから、貫通孔2の縁と配管6の外周囲との間の間隔は正常値であるとして本据付を施工する。本据付は以下の通りである。
【0034】
即ち、鍔7がグレーチング1aに接触する鍔7の最低3箇所をグレーチング1aに本溶接する。もう一方の鍔付きフラットバーは、同様にグレーチング1bに溶接する。このような溶接施工によれば、フラットバー3が鍔7でグレーチング1aやグレーチング1bに落下しないように支持されるので、その落下を確実に防止するためにフラットバー3をグレーチング1aやグレーチング1bに多数点で溶接することの要求が回避でき、溶接施工が容易である。
【0035】
このようにすると、フラットバー3の一部分が貫通孔2からグレーチング1aとグレーチング1bの上方に突き出て、グレーチング1aやグレーチング1b上の器具や作業員が貫通孔2に落下する事故を防げる。その事故防止のために必要な突き出し高さは予め決めてフラットバー3に鍔7を取り付ける。なお、鍔7よりも下方のフラットバー3の部分は貫通孔2の開口の内側に入っていて、水平方向でグレーチング1aやグレーチング1bに重なっている。
【0036】
配管6が貫通孔2の中央部分から外れて、図3のように、配管6が一方のグレーチング1b側にずれて貫通している場合には、配管6の外周囲とフラットバー3との間の最短間隔を測る。その測定結果、配管6の外周囲とフラットバー3との間の最短間隔が予め決めた値を超えない場合には、再据付作業を行う。
【0037】
再据付作業は、まず、グレーチング1a,1bに対する鍔付きフラットバーの仮据付を解除して、グレーチング1a,1bから鍔付きフラットバーを取り外す。次に、配管6の貫通箇所が貫通孔2の中心から外れた方向のグレーチング1bを根太15から取り外す。
【0038】
次に、図3のように、グレーチング1bの縁にU字状の切欠きを貫通孔2の一部分として形成することで配管の貫通箇所が外れた方向へ貫通孔2を拡大する。そのU字状の切欠きの丸みの部分はグレーチング1aに形成した半円形と同じ曲率の半円形である。
【0039】
次に、図3のように、U字状の切欠きが形成されたグレーチング1bを、U字状の切欠きの開口部分がグレーチング1aの切欠きに連続するように、グレーチング1aに隣接して敷詰める。そのグレーチング1bを根太15にボルトなどで着脱自在に固定する。
【0040】
次に、図4のように、配管6の外周囲に外してあった鍔付きフラットバーを、フラットバー3の囲いの中心部に配管6が通過するように配置し、既述の要領で各グレーチング1a,1bに仮据付する。このような配置によって、フラットバー3と配管6との間の間隔が所望の所定の距離に保たれることを確認する。その後に、鍔付きフラットバーを既述の要領でグレーチング1a,1bに本据付する。
【0041】
本据付後においては、図4のように、グレーチング1a寄りのフラットバー3の外周囲に、グレーチング1aの切欠きの縁との間で、隙間が発生するが、その隙間は、鍔7で上方から覆われて器具や作業員の落下事故を防止できる。
【0042】
本実施例では、配管6が設置されてから各グレーチング1a,1bと鍔付きフラットバーを設置することについて述べたが、配管を設置する前に各グレーチング1a,1bと鍔付きフラットバーを据付て、貫通孔2に配管6を貫通させる際に、配管とフラットバーとの間隔を測定して本据付に移行するか再据付に移行するかを決めても良い。さらに、グレーチング1aの切欠きを再作成するようにしたが、U字状の切欠きが施された新たなグレーチングにグレーチング1aを置き換えるようにしても良い。
【0043】
また、原子力発電所の運転が開始される、あるいは運転前の試験で、配管6を使用してみた際に、配管の膨張等で配管6の位置が変位して、フラットバー3と配管6との間隔が所望の間隔を保てない場合には、既述のように再据付を行って、フラットバー3と配管6との干渉事故が発生しないようにしても良い。
【0044】
本実施例での、各グレーチング1a,1bに対する鍔7の取り付けは、溶接によったが、ボルトとナットによって着脱自在に取り付けても良い。
【0045】
本実施例によれば、フラットバー3は図2に示す通り、グレーチング1を貫通する配管の周りに、貫通孔2へ作業員が落下するのを防止することを目的として設置され、フラットバー3の外周に鍔7を溶接し、鍔7をグレーチング1a,1b上に置くことでフラットバー3を据付る。そのためにその据付が容易である。
【0046】
さらに、鍔付きフラットバーが同じ形状の2つの部品から構成され、フラットバー3は貫通孔2の形状に一致するように加工されており、配管6の貫通部のグレーチング1a,1bが、配管6に対して対称に2つに別れており、配管6側の境界において配管6の口径より大きい半円形の貫通孔2を有している。
【0047】
さらに、フラットバー3の外周の鍔7が、フラットバー3の外周の全体を覆う長さで、鍔7の幅が一定でグレーチング1a,1bの格子の短辺一つ分以上の長さであり、フラットバー3をグレーチング1a,1bに据付る際に、フラットバー3をグレーチング1a,1b上に設置し、鍔7とグレーチング1a,1bが接する箇所の内、最低3箇所を溶接することでグレーチング1a,1bに固定できる。この点も、配管貫通部構造の据付の容易化に貢献する。
【0048】
さらに、配管6の位置が移動したときに、図3のように配管6と干渉した方のグレーチング1bの貫通孔2を広げ、配管6と貫通孔2の縁取りとしてのフラットバー3との間のクリアランスを確保した上で、図4のように再び2つの鍔付きフラットバーをグレーチング1a,1b上に置くことで、グレーチング1a,1b及び鍔付きフラットバーを再製作することなく配管6との干渉を回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば、原子力発電所のタービン建屋内に設置される配管が操作架台の床面を操作架台に接触することなく貫通する貫通部構造に適用される。
【符号の説明】
【0050】
1,1a,1b…グレーチング、2…貫通孔、3…フラットバー、4…すみ肉溶接、5…全周すみ肉溶接、6…配管、7…鍔、10…操作架台、12…床。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管又は機器を貫通させる床の箇所に床材として隣りあわせで敷設された少なくとも2個のグレーチングにおいて、
前記配管貫通孔の一部分が一方の前記グレーチングの縁に設けられ、前記貫通孔の他の部分が前記縁に隣接する他方のグレーチングの縁に設けられている床の配管又は機器の貫通部構造に用いるグレーチング。
【請求項2】
前記請求項1において、前記配管貫通孔の一部分が部分円弧状であり、前記配管貫通孔の他の部分がU字状である床の配管又は機器の貫通部構造に用いるグレーチング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−270589(P2010−270589A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157433(P2010−157433)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2005−166323(P2005−166323)の分割
【原出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】