説明

床パネルの敷設構造

【課題】強風を受けても床パネルが捲れ上がるようなことはなく敷設位置に確実に固定し、メンテンスの際には簡単な操作で固定を解除して床パネルの取り外しができるようにする。
【解決手段】上面に装飾タイル6を並設固定してなる床パネル4を、構造物2、2で周囲が囲われた床面3上に敷き詰めて装飾床面1を構成する床パネルの敷設構造において、装飾タイル6、6間の目地部52の向きを揃えて床パネル4を並設し、この目地部52内に上方から固定棒8を嵌め入れてこれを両構造物2、2の壁面間に架け渡し、固定棒8の両端部を両壁面にそれぞれ連結して床パネルを床面に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に装飾加工が施された床パネルをベランダやバルコニーなどの床面に敷き詰めて一体の装飾床面を構成する床パネルの敷設構造に係り、強風を受けても捲れ上がったり分離飛散したりせずに床面上に確実に固定しておけるようにした構造のものに関する。
【背景技術】
【0002】
ベランダや軒下などの建物の外壁から張り出した部分の床面は、水捌けを良くするためコンクリートを剥き出しにすることが多く、このようなモルタル床面は見栄えが悪く、歩行の際に足裏に伝わる感触もすぐれない。そこで、モルタル床面に表面装飾が施された床パネルを敷き詰め、床面を建物の外壁と調和のとれた外観のものに加工することが行われている。
かかる床パネルは、合成樹脂材を用いて軽量に形成されており、図8に示されるように、マンションの高層階のベランダ100に床パネル101を敷設した場合などに、強風を受けて床パネル101が煽られ、捲れ上がったり分離飛散したりする虞があることから、敷設した床パネル101を床面に固定する手段を施す必要がある。
【0003】
従来、床パネルを床面に固定する手段としては、例えば床面上に構成された装飾床面の周辺部の床パネルとその近傍の構造物とをステンレスワイヤーなどの接続部材で接続して固定する手段(特許文献1、2参照)や、床面に支持板を固着しておき、この支持板を跨いで敷設した床パネルを支持板に留め付けて床面に固定する手段(特許文献3参照)、或いは床パネルの下側に吹き込んだ風をパネル上方へ誘導する導風板を床パネルの端部に取り付け、強風を受けたときの負圧を抑制することで床パネルの捲れ上がりを防止する手段(特許文献4参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−172898号公報
【特許文献2】特開平11−223007号公報
【特許文献3】特開2009−84778号公報
【特許文献4】特開2003−56166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記床パネルを固定する手段において、装飾床面を構成する周辺部の床パネルと構造物とを接続部材を介して接続する手段では、構造物に接続した周辺部の床パネルは捲れ上がる虞はないものの、装飾床面の中央部寄りの床パネルは、床パネルの下側に吹き込んだ風に煽られて床パネル同士の連結が外れ、捲れ上がってしまうという問題がある。
また、床面に固着された支持板に床パネルを固定する手段では、予め床パネルの敷設位置に合わせて支持板を床面に固着しておく必要あるなど施工が面倒であり、各床パネルを支持板に固定するため床パネルの分離飛散の防止に有効である反面、支持板から床パネルを取り外し難く、装飾床面のメンテナンス作業やレイアウトの変更に手間を要するという問題がある。
さらに、何れの固定手段であっても、風速50m/Sもの強風が吹き付けたときには、床パネル同士の連結が外れて床パネルが捲れ上がってしまい、床パネルの分離飛散を防止することができなかった。
【0006】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、床面に敷設した床パネル全体を簡易な作業で固定することができ、強風を受けても床パネルが捲れ上がるようなことはなく敷設位置に確実に固定し、また、メンテンスの際には簡単な操作で固定を解除して床パネルの取り外しができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明は、周辺に継手部を備えたベースパネルの上面に装飾タイルを並設固定してなる床パネルを、構造物で周囲が囲われた床面上に敷き詰めて装飾床面を構成する床パネルの敷設構造において、
前記床面を挟んで対向する構造物の壁面間に装飾タイル間の目地部の向きを揃えて床パネルを並設し、当該目地部内に上方から固定棒を嵌め入れてこれを前記壁面間に架け渡すとともに固定棒の両端部を両壁面にそれぞれ連結して床パネルを床面に固定することを特徴とする。
固定棒はその一側の端部又は両端部に伸張機構が設けられ、伸張させた端部を構造物に圧接させて両構造物に連結するように構成されていることが好ましい。
【0008】
本発明による装飾床面の施工は、構造物で囲われた床面上に複数枚の床パネルを敷き詰め、隣接する床パネル同士を互いに連結して一体の装飾床面を所定の広さに形成した後、この装飾床面の上方から、装飾床面を横切る長さを有する固定棒を前記床パネルの装飾タイル間の目地部内に嵌め入れるとともに固定棒の両端部を装飾床面の両側縁から外方へ突出させて構造物の壁面間に架設し、両壁面に固定棒の両端部をそれぞれ連結して装飾床面を固定棒で固定する作業手順により行うことができる。
これによれば、床面に並設された各床パネルの目地部に固定棒が嵌り込み、各床パネルはその全体が固定棒で下方向きに押さえ付けられるので、強風を受けても装飾床面の端部や中央部の床パネルが捲れ上がるようなことはなく、装飾床面全体を敷設位置に確実に固定しておくことができる。床パネルの目地部に嵌め込まれる固定棒は、パネル面よりも下側に没入して表面には露出しないので装飾床面上を歩行する際の邪魔とはならず、パネル外観を損なうこともない。
【0009】
固定棒の端部と構造物との連結は、構造物の壁面に接合する固定棒の端部を留めネジなどで前記壁面に留め付けるなど、適宜な固定手段を用いて行うことができる。
固定棒の一側の端部又は両端部に伸張機構を設け、伸張させた端部を構造物壁面に圧接させることにより固定棒を構造物に連結し、伸張を解除して固定棒の端部が構造物から外れるように構成すれば、床面をメンテンスする際などに固定棒の取り付け及び取り外しを簡易な操作で行うことができて好ましい。
なお、構造物間に床パネルを複数列に並べて敷き詰めた場合、各列毎の床パネルに固定棒を嵌め込んで固定することが好ましい。各列の床パネルには少なくとも一本の固定棒を嵌め込まれるが複数本の固定棒を嵌め込んで固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の床パネルの敷設構造の一実施形態の平面図である。
【図2】図1の床パネルの表裏半面図(A)と側面図(B)である。
【図3】図1の固定棒の概略外観図である。
【図4】(A)、(B)は固定棒の端部に設ける伸張機構の構成例を示した図である。
【図5】固定棒の他の形態の概略外観図である。
【図6】床パネルの目地部に固定棒を嵌め込んだ状態を示す拡大断面図である。
【図7】隙間調整パネルに設けた切り欠き部に固定棒を嵌め込んだ状態を示す要部拡大外観図である。
【図8】図1の敷設構造における床パネルの概略断面であって構造物の壁面間に固定体を架け渡して床パネルを固定した状態を示した図である。
【図9】バルコニーに床パネルを敷設した状態を示すバルコニーの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の敷設構造により床面に敷設される装飾床面の構成を示している。
この装飾床面1は、バルコニーなどの周囲が構造物2、2で囲われた床面3上に、複数枚の床パネル4を複数列に並べて敷き詰め、列の端に位置する床パネル4と構造物2との隙間には隙間調整パネル7を配置し、隣接する床パネル4、4同士と隙間調整パネル7とを互いに連結して敷設パネルを一体化させるとともに、構造物2、2の対向壁面間の間隔と略同じ長さを有する固定棒8を、前記一体化させた敷設パネルに上方からパネル内部に嵌め入れ、固定棒8の両端を両構造物2、2の壁面にそれぞれ連結し、固定棒8で敷設パネル全体を下方へ押さえ付けて固定したものである。
【0012】
床パネル4は、塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂材料を用いて平面視正方形に形成されたベースパネル5の上面に、表面に装飾が施された装飾タイル6を縦横3列に並べて載せ、各タイルをエポキシ樹脂などの接着剤で接着固定して形成してある。
詳しくは、図2に示されるように、ベースパネル5は、下面に複数の脚部51aを突設させた平面視正方形状の小型のユニット基板51を、目地部52を挟んで縦横3列に並べ、且つ目地部52を横切る連結部53を介して各ユニット基板51の側端部同士を接続して一体のパネルとして形成してある。装飾タイル6は、目地部52で仕切られた各ユニット基板51の上面に接着固定してある。
また、ベースパネル5の周側辺には、対角コーナー部を挟む隣接二辺に継手部54としての水平突起54aと垂直突起54bが各々所定の間隔を開けて複数設けてある。
そして、図1に示されるように、床面3上に複数の床パネル4を敷き詰め、隣り合う床パネル4、4同士で、一方の床パネル4の側辺に設けられた垂直突起54bと他方の床パネル4の側辺に設けられた水平突起54aとを凹凸嵌合させて両床パネル1の隣接側辺部を接続することにより、床面3上に一体の装飾床面1を構成するようになっている。
【0013】
隙間調整パネル7は、前記床パネル4と同様に合成樹脂材料を用い、その対向二辺が床パネル4の側辺と同じ長さ、他の対向二辺がそれよりも短い長さを有する矩形状に形成されており、その上面には床パネル4の目地部52と位置対応する目地部71が格子状に形成してある。
隙間調整パネル7は、床面3に床パネル4を敷き詰めた際に端の床パネル4と構造物2との間にできた隙間を埋めて装飾床面1の幅を調整するために設置され、その長手側辺部に設けた継手片72を端の床パネル4の水平突起54a又は直突起54bに係合させて当該長手側辺部が床パネル4の側辺部に一体に接続するように設けてある。
【0014】
固定棒8は、図3に示されるように、断面円形の細長い棒状の軸部81の両端に伸張機構82、82を一体に設けて構成してある。
詳しくは、棒状の軸部81は、床パネル4の目地部52と隙間調整パネル7の目地部71内に上方から嵌入可能な太さを有し、その全長は構造物2、2の対向壁面間の距離よりも若干短い長さに設定してある。
伸張機構82は、軸部81の端部に蓋部82aを一体に取り付けるとともに、この蓋部82aを軸方向に沿って外方へ伸張させ又は内方へ縮退させて変位させることにより固定棒8の両端部間の長さを調整する機構であり、例えば図8(A)に示されるように、軸部81の端部外周と蓋部82aの内周にネジ溝81a、82bを形成し、蓋部82aの螺合深さを適宜に設定することにより蓋部82aの位置を調整する機構や、同図(B)に示されるように、軸部81と蓋部82aとをバネ82cで連結し、バネ82cが伸張した位置から蓋部82aを軸内方へ押し込んでバネ82cを圧縮させることにより、蓋部82aの突出幅を調整する機構を用いることができる。何れの機構も、軸部81の両端の伸張機構82の蓋部82aを軸内方へ変位させたときは固定棒8の全長が構造物2、2の対向壁面間の距離よりも短くなり、蓋部82aを軸外方へ変位させたときには固定棒8の全長が前記対向壁面間の距離よりも長くなるように構成される。
固定棒8の軸部81は、床パネル4の目地部52と隙間調整パネル7の目地部71の内側に没入可能な太さであれば、断面正方形や円筒形に形成してもよく、また、図5に示されるように、前記目地部52、71内の凹凸部に係合する凹凸を軸部81の下部に設けてもよい。伸張機構82は固定棒8の一側の端部にのみ設けてあってもよい。
【0015】
こられの部材を用いて装飾床面1を床面3に敷設し固定する作業は以下の手順により行うことができる。
先ず、床面2に複数枚の床パネル4を敷き並べ、隣接する各床パネル4の側辺同士を前記水平突起54aと垂直突起54bを嵌合させて全ての床パネル4を一体に連結し、さらに端の床パネル4と構造物2の間の隙間に隙間調整パネル7を設置し、これを端の床パネル4に連結する。一体に連結して床面3に敷設された床パネル4と隙間調整パネル7の表面には、図1に示されるように、目地部52、71の凹部が格子状に露出し、当該凹部の一方は構造物2、2の壁面に対して平行な方向に、他方は垂直な方向にそれぞれ連続して延びた形態となる。
【0016】
次に、図6に示されるように、敷設した床パネル4の上方から構造物2、2の壁面に対して平行に延びた目地部52、71内に固定棒8を嵌め入れ、固定棒8の両端を構造物2、2の壁面間に架け渡す。
【0017】
そして、固定棒8の伸張機構82を操作して固定棒8の端部に取り付けられた蓋部82aを外方へ張り出し、構造物2の壁面に蓋部82aを圧接させて固定棒8の両端部を構造物2、2の壁面に連結し固定する。この際、固定棒8の端部伸張操作がし易いように、図7に示されるように、隙間調整パネル7の固定棒8が嵌入する目地部71に沿った端部を切り欠いておくことが好ましい。
【0018】
このような作業手順で床面3に敷設された装飾床面1は、図8に示されるように、目地部52、71に嵌り込み、且つ両端部が構造物2、2の壁面に固定された固定棒8によって各床パネル4と隙間調整パネル7が下方向きに押さえ付けられるので、強風を受けても床パネル4や隙間調整パネル7が捲れ上がるようなことはなく、床面3上に前記両パネルを確実に固定して安定的に敷き並べておくことができる。
固定棒8は、目地部52、71内に嵌め込まれ、パネル面の下側に没入させてあるので、装飾床面1上を歩行する際の邪魔とはならず、床面の上方から固定棒8が目に付くこともない。
また、装飾床面1のメンテナンスの際には、伸張機構82を操作して固定棒8と構造物2との連結を解除すれば、固定棒8を簡易な操作で取り外して床パネル4を捲ったり分離したりすることができ、また、メンテナンス後には再び伸張機構82を操作して固定棒8の両端部を構造物2に連結し固定することができ、取り扱いが極めて簡便である。
【0019】
なお、図示した床パネル4や固定棒8の形態は一例であり、これらは装飾床面1の敷設位置や広さなど、設置条件に応じて適宜な形態に設けることが可能である。また、図示した形態では、端の床パネル4と構造部2との隙間を埋めるため隙間調整パネル7を設置したが、構造物2、2間に隙間なく床パネル4を敷き詰めることが可能な場合、隙間調整パネル7は不要である。
【符号の説明】
【0020】
1 装飾床面、2 構造物、3 床面、4 床パネル、5 ベースパネル、51 ユニット基板、52 目地部、53 連結部、54 継手部、54a 水平突起、54b 垂直突起、6 装飾タイル、7 隙間調整パネル、71 目地部、8 固定棒、81 軸部、82 伸張機構、82a 蓋部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺に継手部を備えたベースパネルの上面に装飾タイルを並設固定してなる床パネルを、構造物で周囲が囲われた床面上に敷き詰めて装飾床面を構成する床パネルの敷設構造において、
前記床面を挟んで対向する構造物の壁面間に装飾タイル間の目地部の向きを揃えて床パネルを並設し、当該目地部内に上方から固定棒を嵌め入れてこれを前記壁面間に架け渡すとともに固定棒の両端部を両壁面にそれぞれ連結して床パネルを床面に固定することを特徴とする床パネルの敷設構造。
【請求項2】
固定棒はその一側の端部又は両端部に伸張機構が設けられ、伸張させた端部を構造物に圧接させて両構造物に連結するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の床パネルの敷設構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−26822(P2011−26822A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173012(P2009−173012)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】