説明

床仕上パネル及びその設置構造

【課題】目地間隙から下地板が透けて見えることを石質板自体の構成によって防止することができる床仕上パネル及び床仕上パネル設置構造を提供する。
【解決手段】躯体床面1上に施工される床仕上パネル2は、下地板3と、該下地板3上に貼り付けられた石質板4とを備えている。石質板4の隣接する2辺にあっては、側面Aは上方ほど床仕上パネル2の板央側となるように傾斜した傾斜面となっている。側面Bはその下部が側面Aに重なるように側面Aと同一傾斜角にて側外方へ張り出して傾斜した傾斜面4bとなっている。側面Bの上部は上方ほど床仕上パネル2の板央側となるように傾斜した傾斜面4aとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル、石板等の石質板を下地板に取り付けてなる床仕上パネルと、この床仕上パネルを躯体床面上に設置した床仕上パネル設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
タイル、天然石板、人工石板などの石質板を下地板に接着剤等によって取り付けた床仕上パネルが特開平3−275343に記載されている。なお、同号公報ではこの床仕上パネルを石質複合板と称している。
【特許文献1】特開平3−275343
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この特開平3−275343では、下地板同士を突き合わせると石質板同士の間に空の目地間隙が生じるので、下地板が見えてしまい、美観に劣る。
【0004】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、目地間隙から下地板が透けて見えることを石質板自体の構成によって防止することができる床仕上パネル及び床仕上パネル設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の床仕上パネルは、石質板を下地板に取り付けてなる方形の床仕上パネルにおいて、該床仕上パネルの第1の辺においては、該石質板の側面Aの少なくとも上部が上向きの傾斜面となっており、該床仕上パネルの該第1の辺と反対側の第2の辺にあっては、該石質板の側面Bの少なくとも上下方向の途中部分が下向きの傾斜面となっていることを特徴とするものである。
【0006】
請求項2の床仕上パネルは、請求項1において、該床仕上パネルの4辺のうち隣接する2辺においては前記石質板の側面Aが配置されており、残りの2辺においては前記石質板の側面Bが配置されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3の床仕上パネルは、請求項1又は2において、該石質板の側面Aの下縁が下地板の上縁から後退していることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4の床仕上パネルは、請求項1ないし3のいずれか1項において、該側面Aの下部が下地板の上面と略垂直となっていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5の床仕上パネルは、請求項4において、該側面Bの下部が下地板の上面と略垂直となっていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項6の床仕上パネルは、請求項1ないし5のいずれか1項において、該側面Bの上部は上向きの傾斜面となっており、該側面Bの上向き傾斜面と下向き傾斜面との境界部が、石質板の側方に向って突出した突部となっていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項7の床仕上パネル設置構造は、請求項1ないし6のいずれか1項の床仕上パネルを複数枚突き合わせるように躯体床面に設置した床パネル設置構造であって、突き合わされた一方の床仕上パネルの石質板の側面Aが、他方の床仕上パネルの石質板の側面Bに対面しており、該側面Bのうち最も側方へ突出した突部の先端の鉛直下方に側面Aの下部が存在することを特徴とするものである。
【0012】
請求項8の床仕上パネル設置構造は、請求項7において、突き合わされた側面A,B間の少なくとも下部に弾性材が介在していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の床仕上げパネル及び請求項7の床仕上パネル設置構造にあっては、床仕上パネルの側面Aの少なくとも上部が上向きの傾斜面となっており、側面Bの少なくとも上下方向の途中部分が下向きの即ちオーバーハング状の傾斜面となっている。そして、この側面A,Bを対面させるようにして床仕上パネルを躯体床面上に設置施工した場合、側面Aの上向き傾斜面と側面Bの下向き傾斜面とが対面し、側面Bの突部先端の下方には側面Aの上向き傾斜面の下部が存在する。そのため、上方から見たときに下地板が透けて見えない。
【0014】
請求項2の通り、床仕上パネルの隣接する2辺に側面Aが配置され、残りの2辺に側面Bを配置することが好ましい。
【0015】
請求項3の床仕上げパネルにあっては、側面Aの下縁部が下地板から突出しないので、側面Aの下部の破損が防止される。
【0016】
請求項4床仕上パネルにあっては、石質板の側面Aの下部の破損が防止される。また、請求項5の床仕上パネルにあっては、石質板の側面Bの突部の破損が防止される。
【0017】
請求項6の床仕上パネルによれば、側面Bの上縁部が面取り状となり、破損が防止される。
【0018】
請求項8のように弾性材3を介在させることにより、下地板が透けて見えることが防止されると共に、目地間隙にゴミが溜ることが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0020】
第1図(a)は実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図であり、(b)は(a)の一部の拡大図、(c)は石質板端部の拡大図である。
【0021】
第1図(a)の通り、躯体床面1上に施工される床仕上パネル2は、下地板3と、該下地板3上に貼り付けられた石質板4とを備えている。
【0022】
躯体床面1は、合板などの木質床材料、コンクリートなどよりなる。
【0023】
下地板3としては、合板、MDF(中密度繊維板)、バードボードなどの木質基材、珪酸カルシウム板、スレートボード、木片混入セメント板などのセメントボード、合成樹脂板などが用いられる。下地板3の厚さは5〜15mm程度が好適である。この実施の形態では、下地板3の隣接する2辺に雄実3aが設けられ、残りの2辺に雌実2bが設けられている。なお、実部は図示以外の形状であってもよい。
【0024】
石質板4としては、陶磁器製タイルや、天然石又は人工石よりなる石板が好適である。石質板4の厚さは3〜6mm程度が好適である。
【0025】
なお、石質板4としてタイルを用いる場合、下地板3とタイルの寸法の一例を挙げると、次の通りである。
(1) 300×300mmの下地板に300×300mmのタイルを張る。
(2) 300×600mmの下地板に300×300mmのタイルを2枚又は300×600mmのタイルを1枚張る。
(3) 300×1800mmの下地板に300×300mmのタイルを6枚又は300×600mmのタイルを3枚張る。
【0026】
ただし、上記(1)〜(3)の寸法はあくまでも一例であり、本発明を何ら限定するものではない。
【0027】
この実施の形態では、石質板4の隣接する2辺が側面Aとされ、残りの2辺が側面Bとされている。側面Aは上方ほど床仕上パネル2の板央側となるように傾斜した傾斜面となっている。この傾斜面の傾斜角θは好ましくは30〜75°特に好ましくは48〜71°である。この実施の形態では、側面Aの下端縁は下地板3の上縁と合致している。
【0028】
請求項4の残りの2辺を構成する側面Bは、その下部が側面Aの下部に重なるように側面Aと同一傾斜角にて側外方へ張り出してオーバーハング状に傾斜した傾斜面4bとなっている。側面Bの上部は上方ほど床仕上パネル2の板央側となるように傾斜して面取り状の傾斜面4aとなっている。
【0029】
傾斜面4aの下縁と傾斜面4bの上縁とが交わる箇所が、最も側外方へ突出した突部4cである。この突部4cは、石質板4の辺方向に延在する突条を構成している。傾斜面4aの傾斜角は前記θと同一であることが好ましい。突部4cの位置(石質板4の底面からの高さ)は、石質板4の表面から0.3〜3mm、特に0.5〜1.5mmであることが好ましい。
【0030】
各床仕上パネル2を躯体床面1上に施工するには、躯体床面1上に複数枚の床仕上パネル2を各々の下地板3,3間に間隙があくように載置する。
【0031】
次いで、床仕上パネル2を押して移動させ、床仕上パネル2,2の下地板3,3同士を突き合わせ、雄実3aと雌実3bとを係合させる。次いで、床仕上パネル2を釘などによって躯体床面1に固定する。
【0032】
なお、予め躯体床面1又は下地板3の下面に接着剤を塗着しておき、床仕上パネル2を接着剤によって躯体床面1に固着させるようにしてもよい。
【0033】
床仕上パネル2,2同士を突き合わせた状態では、側面Aと側面Bの傾斜面4bとが重なるか、又は微小な間隙を介して対面しており、突部4cの鉛直下方には側面Aの下部が存在するものとなっている。そのため、上方から見たときに下地板3は視認されず、美観が良い。
【0034】
この実施の形態にあっては、床仕上パネル2の側面Bの上部が面取り状の傾斜面4aとなっているので、側面Aとの間にV字形断面形状の溝状目地が形成される。そのため、石質板の輪郭がくっきりとしたものとなり、美観が良い。また、側面Bの上縁の欠けなどの損傷も防止される。
【0035】
第2図〜第9図はそれぞれ本発明の別の実施の形態を示す断面図である。
【0036】
第2図の実施の形態では、床仕上パネル2’の下地板3’として実部のないものが用いられている。その他の構成は第1図と同様である。
【0037】
第3図(a),(b)の実施の形態では、床仕上パネル5の石質板6として、側面A,Bの下部に略鉛直な縦面6b,6fを設けたものが用いられている。側面Aの上部は傾斜面6aとなっている。傾斜面6aの傾斜角θは上記と同様であることが好ましい。傾斜面6aと縦面6bとの交点の高さは、石質板6の底面から0.3〜5mm、特に1.0〜2.0mm程度が好適である。
【0038】
側面Bは、下部の縦面6fの上側に、側外方へオーバーハング状に傾斜した傾斜面6eが設けられ、上部には、上方ほど板央側へ傾斜した傾斜面6cが設けられている。傾斜面6c,6eの交わる部分が突部6dである。縦面6fの上下長さは縦面6bと同一か又はそれよりも若干大きいものとなっている。傾斜面6e,6cの傾斜角度は前記θと同一であることが好ましい。突部6dの高さは、石質板6の表面から0.3〜3mm特に0.5〜1.5mm程度が好ましい。その他の構成は第1図と同様である。なお、(b)は石質板端部の断面図である。
【0039】
第4図の実施の形態では、床仕上パネル2”の石質板4の側面Aの下縁が下地板3の上縁から所定長さ(好ましくは10mm以下、特に好ましくは0.3〜2.5mm)だけ後退している。側面Bの下縁は、下地板3の上縁からこの所定長さ分だけ突出している。その他の構成は第1図と同様である。
【0040】
第5図の実施の形態では、石質板5”の側面Aの下縁が下地板3の上縁から所定長さ(好ましくは10mm以下特に好ましくは0.1〜0.25mm)だけ後退している。側面Bの下縁は、下地板3の上縁からこの所定長さ分だけ突出している。その他の構成は第3図と同様である。
【0041】
第6図の実施の形態では、石質板4の側面Aと側面Bの下部の傾斜面4bとの間に弾性材10が介在されている。
【0042】
弾性材5としては、発泡ゴム(例えば発泡EPDM)、ウレタンフォーム、フォームメルト、シリコンシーラントなどが好適である。
【0043】
このように弾性材10を介在させることにより、目地間隙から下地板が透けて見えることが確実に防止されると共に、目地間隙にゴミ等が溜まることが防止される。
【0044】
第7図の実施の形態では、第3図の実施の形態において、側面Aの傾斜面6aの下部及び縦面6bと、側面Bの傾斜面6e及び縦面6fとの間に弾性材10が介在されている。
【0045】
第8図の実施の形態では、第4図の実施の形態において、側面Aの下部と側面Bの傾斜面4bとの間に弾性材10を介在させている。
【0046】
第9図の実施の形態では、第5図の実施の形態において、側面Aの傾斜面6aの下部及び縦面6bと、側面Bの傾斜面6e及び縦面6fとの間に弾性材10を介在させている。
【0047】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば、第3図〜第9図においても実部を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図である。
【図2】実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図である。
【図3】実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図である。
【図4】実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図である。
【図5】実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図である。
【図6】実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図である。
【図7】実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図である。
【図8】実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図である。
【図9】実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 躯体床面
2,2’,2”,5,5” 床仕上パネル
3,3’ 下地板
4,6 石質板
10 弾性材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石質板を下地板に取り付けてなる方形の床仕上パネルにおいて、
該床仕上パネルの第1の辺においては、該石質板の側面Aの少なくとも上部が上向きの傾斜面となっており、
該床仕上パネルの該第1の辺と反対側の第2の辺にあっては、該石質板の側面Bの少なくとも上下方向の途中部分が下向きの傾斜面となっていることを特徴とする床仕上パネル。
【請求項2】
請求項1において、該床仕上パネルの4辺のうち隣接する2辺においては前記石質板の側面Aが配置されており、残りの2辺においては前記石質板の側面Bが配置されていることを特徴とする床仕上パネル。
【請求項3】
請求項1又は2において、該石質板の側面Aの下縁が下地板の上縁から後退していることを特徴とする床仕上パネル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該側面Aの下部が下地板の上面と略垂直となっていることを特徴とする床仕上パネル。
【請求項5】
請求項4において、該側面Bの下部が下地板の上面と略垂直となっていることを特徴とする床仕上パネル。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、該側面Bの上部は上向きの傾斜面となっており、該側面Bの上向き傾斜面と下向き傾斜面との境界部が、石質板の側方に向って突出した突部となっていることを特徴とする床仕上パネル。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項の床仕上パネルを複数枚突き合わせるように躯体床面に設置した床仕上パネル設置構造であって、
突き合わされた一方の床仕上パネルの石質板の側面Aが、他方の床仕上パネルの石質板の側面Bに対面しており、該側面Bのうち最も側方へ突出した突部の先端の鉛直下方に側面Aの下部が存在することを特徴とする床仕上パネル設置構造。
【請求項8】
請求項7において、突き合わされた側面A,B間の少なくとも下部に弾性材が介在していることを特徴とする床仕上パネル設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−90594(P2010−90594A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260863(P2008−260863)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】